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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B65B |
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管理番号 | 1347707 |
異議申立番号 | 異議2018-700811 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-10-04 |
確定日 | 2019-01-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6307218号発明「粉粒体の分包装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6307218号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6307218号の請求項1?5に係る特許についての出願は,平成25年2月18日に出願され,平成30年3月16日にその特許権の設定登録がされ,平成30年4月4日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許に対し,平成30年10月4日に特許異議申立人坂本恵理(以下「申立人」という。)により,特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 特許第6307218号の請求項1?5の特許に係る発明は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 供給した粉粒体を切出すことで所定量ずつ複数包の分包を行う分包装置において、 粉粒体を配置可能な環状凹溝を有するテーブルと、 前記環状凹溝に全周に亘って供給された粉粒体を、前記テーブルの周方向に沿う所定領域分ずつ、前記テーブルの径方向に向けて切出す切出機構と、 前記テーブル及び前記切出機構の動作を制御する制御部と、を備え、 前記テーブルと前記切出機構とは、一方が他方に対して縦軸回りの相対回転をし、 前記切出機構は、前記環状凹溝上の粉粒体を移動させて切出すための切出部と、前記環状凹溝の溝底面に接触して前記環状凹溝上の粉粒体を堰止める堰止部と、を有し、 更に、前記切出機構は、前記堰止部が前記溝底面に接触した切出姿勢と、前記環状凹溝から上方に離れた離間姿勢とに切替え可能であり、 前記切出部と前記堰止部とは、前記テーブルの周方向に沿う横軸回りの一方向に、一体で回転可能であり、前記切出部が切出しを開始する切出開始位置から、前記切出部が切出しを行わない回転範囲内にある基準位置まで回転する間に、前記切出部による切出しが行われるよう構成され、 前記制御部は、粉粒体が前記環状凹溝の全周に亘って供給された後、最初の切出しがされるに先立ち、前記切出部及び前記堰止部が、前記基準位置よりも切出し方向下流側で、且つ前記切出開始位置よりも切出し方向上流側の位置である切出準備位置に位置した状態で、前記切出機構を前記切出姿勢とした上で、前記テーブルと前記切出機構のうちの一方を他方に対して一方向へ相対回転させ、且つ前記切出部及び前記堰止部を前記切出準備位置から前記切出開始位置まで回転させ、 更に、前記制御部は、前記最初の切出しの次以降の切出しに先立ち、前記切出機構を前記切出姿勢にした状態で、前記テーブルと前記切出機構のうちの一方を他方に対して一方向へ相対回転させ、且つ該相対回転中に前記切出部及び前記堰止部を前記基準位置から前記切出開始位置まで回転させることを特徴とする粉粒体の分包装置。 【請求項2】 前記テーブルと前記切出機構のうち一方は他方に対して間欠的に相対回転し、 前記切出部及び前記堰止部の、前記切出準備位置から前記切出開始位置までの回転は、前記相対回転の途中になされることを特徴とする請求項1に記載の分包装置。 【請求項3】 前記切出機構は、前記所定領域における周方向の一方側端部を規定するカバー体を備え、 前記カバー体は、前記切出部及び前記堰止部が前記切出準備位置にある場合に、前記環状凹溝上の粉粒体から離間する形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の分包装置。 【請求項4】 前記切出機構は、前記所定領域における周方向の一方側端部を規定するカバー体を備え、 前記切出準備位置は、前記切出機構を前記切出姿勢としても、前記環状凹溝上の粉粒体に対して前記カバー体が離間する位置に設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の分包装置。 【請求項5】 供給した粉粒体を切出すことで所定量ずつ複数包の分包を行う分包装置において、 粉粒体を配置可能な環状凹溝を有するテーブルと、 前記環状凹溝に全周に亘って供給された粉粒体を、前記テーブルの周方向に沿う所定領域分ずつ、前記テーブルの径方向に向けて切出す切出機構と、 前記テーブル及び前記切出機構の動作を制御する制御部と、を備え、 前記テーブルと前記切出機構とは、一方が他方に対して縦軸回りの相対回転をし、 前記切出機構は、前記環状凹溝上の粉粒体を移動させて切出すための切出部と、前記環状凹溝の溝底面に接触して前記環状凹溝上の粉粒体を堰止める堰止部と、を有し、 更に、前記切出機構は、前記堰止部が前記溝底面に接触した切出姿勢と、前記環状凹溝から上方に離れた離間姿勢とに切替え可能であり、 前記切出部と前記堰止部とは、前記テーブルの周方向に沿う横軸回りの一方向に、一体で回転可能であり、前記切出部が切出しを行わない回転範囲内にある基準位置から1回転する間に、前記切出部による切出しが行われるよう構成され、 前記制御部は、粉粒体が前記環状凹溝の全周に亘って供給された後、最初の切出しがされるに先立ち、前記切出部及び前記堰止部が、前記基準位置よりも切出し方向下流側の位置に位置した状態で、前記切出機構を前記切出姿勢とした上で、前記テーブルと前記切出機構のうちの一方を他方に対して一方向へ相対回転させ、 更に、前記制御部は、前記最初の切出しの次以降の切出しに先立ち、前記切出機構を前記切出姿勢にした状態で、前記テーブルと前記切出機構のうちの一方を他方に対して一方向へ相対回転させ、且つ該相対回転中に前記切出部及び前記堰止部を前記基準位置から回転させることを特徴とする粉粒体の分包装置。」 第3 申立ての理由の概要 申立人の主張する取消理由の概要は次のとおりである。 本件特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。そのため,請求項1?5に係る特許は,特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第113条第4号に該当し,取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1.申立人の主張 申立人は,請求項1及び5の「堰止部」は環状凹溝上の粉粒体を堰止める環状の全周に亘る部位であり,「堰止部」に「基準位置」,「切出準備位置」,「切出開始位置」という概念は存在しないので,請求項1の「前記堰止部が、前記基準位置よりも切出し方向下流側で、且つ前記切出開始位置よりも切出し方向上流側の位置である切出準備位置に位置した状態」及び「前記堰止部を前記切出準備位置から前記切出開始位置まで回転させ」との記載,請求項2の「前記堰止部の、前記切出準備位置から前記切出開始位置までの回転」との記載,請求項3の「前記堰止部が前記切出準備位置にある」との記載,請求項5の「前記堰止部が、前記基準位置よりも切出し方向下流側の位置に位置した状態」との記載はいずれも意味不明であり,請求項1又は2を引用する請求項4の記載も意味不明である旨を主張している(特許異議申立書第5ページ下から第3行?第9ページ第15行)。 2.判断 申立人の主張を踏まえ,請求項1?5の「基準位置」,「切出準備位置」及び「切出開始位置」について,以下検討する。 (1)請求項1には,次の記載がされている。 「前記切出部と前記堰止部とは、前記テーブルの周方向に沿う横軸回りの一方向に、一体で回転可能であり、前記切出部が切出しを開始する切出開始位置から、前記切出部が切出しを行わない回転範囲内にある基準位置まで回転する間に、前記切出部による切出しが行われるよう構成され、 前記制御部は、粉粒体が前記環状凹溝の全周に亘って供給された後、最初の切出しがされるに先立ち、前記切出部及び前記堰止部が、前記基準位置よりも切出し方向下流側で、且つ前記切出開始位置よりも切出し方向上流側の位置である切出準備位置に位置した状態で、前記切出機構を前記切出姿勢とした上で、前記テーブルと前記切出機構のうちの一方を他方に対して一方向へ相対回転させ、且つ前記切出部及び前記堰止部を前記切出準備位置から前記切出開始位置まで回転させ、 更に、前記制御部は、前記最初の切出しの次以降の切出しに先立ち、前記切出機構を前記切出姿勢にした状態で、前記テーブルと前記切出機構のうちの一方を他方に対して一方向へ相対回転させ、且つ該相対回転中に前記切出部及び前記堰止部を前記基準位置から前記切出開始位置まで回転させることを特徴とする粉粒体の分包装置。」 (2)請求項5には,次の記載がされている。 「前記切出部と前記堰止部とは、前記テーブルの周方向に沿う横軸回りの一方向に、一体で回転可能であり、前記切出部が切出しを行わない回転範囲内にある基準位置から1回転する間に、前記切出部による切出しが行われるよう構成され、 前記制御部は、粉粒体が前記環状凹溝の全周に亘って供給された後、最初の切出しがされるに先立ち、前記切出部及び前記堰止部が、前記基準位置よりも切出し方向下流側の位置に位置した状態で、前記切出機構を前記切出姿勢とした上で、前記テーブルと前記切出機構のうちの一方を他方に対して一方向へ相対回転させ、 更に、前記制御部は、前記最初の切出しの次以降の切出しに先立ち、前記切出機構を前記切出姿勢にした状態で、前記テーブルと前記切出機構のうちの一方を他方に対して一方向へ相対回転させ、且つ該相対回転中に前記切出部及び前記堰止部を前記基準位置から回転させることを特徴とする粉粒体の分包装置。」 (3)本件特許明細書には,請求項1及び5の「堰止部」に対応する「仕切板30」と,請求項1及び5の「切出部」に対応する「切出板31」と,「基準位置」,「切出準備位置」及び「切出開始位置」とに関連して,例えば以下のア?ウの記載がされている(下線はいずれも当審で付した)。 ア 「このように一体とされた仕切板30、切出板31、カバー体31Aは、横軸(後述の回転伝達軸60)回りの一方向に回転可能である。」(段落【0026】) イ 「そして、散剤5の供給を終え、回転テーブル3及び回転板22の回転を停止した後には、図5に実線で示すように、切出機構6が離間姿勢Bのままで、仕切板30及び切出板31が基準位置P1から切出準備位置P2まで至るように回転した後停止する(ステップS5)。この後、図5に二点鎖線で示すように、切出機構6を切出姿勢Aとする(ステップS6)。この際、仕切板30及び切出板31は回転せず、切出準備位置P2のまま停止している。」(段落【0060】) ウ 「次に、回転テーブル3及び回転板22を再度回転させつつ、図6に示すように、仕切板30及び切出板31が切出準備位置P2から切出開始位置P3まで至るように回転する(ステップS7)。」(段落【0063】) (4)上記(1)の記載のとおり,請求項1において,切出部と堰止部とが一体で回転可能であることと共に,切出部と堰止部とが切出開始位置から基準位置まで回転することが特定され,切出準備位置が切出部及び堰止部の位置として特定され,切出部及び堰止部を切出準備位置から切出開始位置まで回転させることが特定されているのであるから,請求項1の「基準位置」,「切出準備位置」及び「切出開始位置」は,一体で回転する切出部及び堰止部の回転位置を意味するものであると解釈するのが相当である。同様に,上記(2)の記載のとおり,請求項5において,切出部と堰止部とが一体で回転可能であることと共に,切出部と堰止部とが基準位置から1回転することが特定され,切出部及び堰止部を基準位置から回転させることも特定されているのであるから,請求項5の「基準位置」もまた,一体で回転する切出部及び堰止部の回転位置を意味するものであると解釈するのが相当である。このような解釈は,本件特許明細書の上記(3)ア?ウの記載内容とも整合するものである。 そして,一体で回転する切出部及び堰止部の回転位置について,その切出部が切出しを行わない回転範囲内にある「基準位置」と,その切出部が切出しを開始する「切出開始位置」とを明確に把握することができ,その「基準位置」よりも切出し方向下流側で,かつ,その「切出開始位置」よりも切出し方向上流側の位置である「切出準備位置」も明確に把握することができる。 (5)ここで,上記1.で示したとおり,申立人は,請求項1?5の記載が意味不明であることの根拠として,請求項1及び5の「堰止部」が環状凹溝上の粉粒体を堰止める環状の全周に亘る部位であり,「堰止部」に「基準位置」,「切出準備位置」,「切出開始位置」という概念は存在しない旨を主張している。 しかしながら,請求項1の「基準位置」,「切出準備位置」及び「切出開始位置」と,請求項5の「基準位置」は,いずれも堰止部単独の位置を示す概念ではなく,上記(4)で示したとおり,一体で回転する切出部及び堰止部の回転位置を意味するものであり,かつ,それぞれの示す回転位置についても明確である。 よって,申立人の当該主張を採用することはできない。 3.まとめ 以上のとおりであるから,請求項1?5の記載は明確であり,本件特許請求の範囲の記載について,特許法第36条第6項第2号に適合するものではないとはいえない。 第5 むすび したがって,特許異議の申立ての理由によっては,請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2019-01-07 |
出願番号 | 特願2013-29311(P2013-29311) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(B65B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 長谷川 一郎 |
特許庁審判長 |
井上 茂夫 |
特許庁審判官 |
佐々木 正章 白川 敬寛 |
登録日 | 2018-03-16 |
登録番号 | 特許第6307218号(P6307218) |
権利者 | 株式会社タカゾノテクノロジー |
発明の名称 | 粉粒体の分包装置 |
代理人 | 特許業務法人藤本パートナーズ |