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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1347977
審判番号 不服2017-12457  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-23 
確定日 2019-01-10 
事件の表示 特願2015-244964号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年6月22日出願公開、特開2017-108882号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月16日の出願であって、平成28年11月9日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月15日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年5月23日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年8月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、これに対し、当審において、平成30年4月23日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月19日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月20日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年10月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 平成30年10月18日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年10月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、本件補正前の平成30年6月19日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1が、
「【請求項1】
取得条件の成立により判定情報を取得する判定情報取得手段と、
前記判定情報に基づき遊技者に有利な特別遊技を行うか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段と、
前記判定情報に対して前記特別遊技判定が行われる前に、前記特別遊技を行うか否かの事前判定を行う事前判定手段と、
前記特別遊技判定が行われると、図柄を図柄表示手段にて変動表示させ、前記特別遊技判定の結果を示す態様で停止表示させる図柄表示制御手段と、
前記判定情報を所定数を上限として記憶可能な記憶手段と、
前記判定情報が前記記憶手段に記憶されていることを示す保留表示を所定の保留表示領域にて行う演出を含む、所定の演出を行う演出実行手段と、を備え、
前記保留表示領域は前記所定数分の複数の保留表示領域を含み、前記保留表示は前記記憶手段に記憶された前記判定情報ごとに行われ、
前記保留表示が行われる各保留表示領域内の表示の態様として、通常表示態様と特殊表示態様とがあり、
前記演出実行手段は、前記事前判定の結果に基づき、前記図柄の複数回の変動期間に跨って行われる所定の特殊演出を実行することが可能であって、複数の判定情報が記憶されているときに前記特殊演出を実行する際、前記複数の判定情報に含まれる2以上の判定情報についての前記保留表示が行われる2以上の保留表示領域内の表示の態様を、全て前記特殊表示態様とすることが可能である
ことを特徴とする遊技機。」
から、本件補正後の請求項1として、
「【請求項1】
A 取得条件の成立により判定情報を取得する判定情報取得手段と、
B 前記判定情報に基づき遊技者に有利な特別遊技を行うか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段と、
C 前記判定情報に対して前記特別遊技判定が行われる前に、前記特別遊技を行うか否かの事前判定を行う事前判定手段と、
D 前記特別遊技判定が行われると、図柄を図柄表示手段にて変動表示させ、前記特別遊技判定の結果を示す態様で停止表示させる図柄表示制御手段と、
E 前記判定情報を所定数を上限として記憶可能な記憶手段と、
F 前記判定情報が前記記憶手段に記憶されていることを示す保留表示を所定の保留表示領域にて行う演出を含む、所定の演出を行う演出実行手段と、を備え、
G 前記保留表示領域は前記所定数分の複数の保留表示領域を含み、前記保留表示は前記記憶手段に記憶された前記判定情報ごとに行われ、前記複数の保留表示領域は第1、第2及び第3保留表示領域を含み、
H 前記保留表示が行われる各保留表示領域内の表示の態様として、通常表示態様と特殊表示態様とがあり、
I 前記演出実行手段は、前記判定情報の1つである対象判定情報に対する前記事前判定の結果に基づき、前記図柄の複数回の変動期間に跨って行われる所定の特殊演出を実行することが可能であって、前記対象判定情報と前記対象判定情報よりも先に前記判定情報取得手段にて取得された先行判定情報とが前記記憶手段に記憶されているときに前記特殊演出を実行する際、前記先行判定情報についての前記保留表示が行われる前記第1保留表示領域内の表示の態様及び前記対象判定情報についての前記保留表示が行われる前記第2保留表示領域内の表示の態様を全て前記特殊表示態様とする一方で、前記第3保留表示領域内の表示の態様を前記通常表示態様とすることが可能な、遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。また、当審においてA?Iに分説した。)。

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数の保留表示領域」に関して、「第1、第2及び第3保留表示領域を含」むことを限定するとともに、「演出実行手段」に関して、特殊演出を実行する際に行われる事前判定の対象を「前記判定情報の1つである対象判定情報」に限定するとともに、特殊演出を実行する際に記憶されている複数の判定情報を「前記対象判定情報と前記対象判定情報よりも先に前記判定情報取得手段にて取得された先行判定情報」に限定するとともに、特殊演出を実行する際に全て特殊表示態様とする複数の判定情報に含まれる2以上の判定情報についての保留表示が行われる2以上の保留表示領域を「前記先行判定情報についての前記保留表示が行われる前記第1保留表示領域及び前記対象判定情報についての前記保留表示が行われる前記第2保留表示領域」に限定するとともに、特殊演出を実行する際に所定の保留表示領域内の表示の態様を特殊表示態様とする一方で、「前記第3保留表示領域内の表示の態様を前記通常表示態様とする」ことを限定するものであって、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、本件補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面の段落【0228】?【0232】、図36、図37等の記載に基づいており、新規事項を追加するものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)引用例
ア 引用例の記載事項
平成30年8月20日付け拒絶理由通知に引用文献1として引用された特開2010-155026号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の(1-1)?(1-10)の事項が記載されている。

(1-1)「【0032】
「大当たり」の場合に「長当たり」が設定されると、その大入賞口開放遊技では、役物23が大入賞口22を開放する1回当たりの開放時間が比較的長い時間(例えば30秒など)に設定される。そして「長当たり」の大入賞口開放遊技では、その1回当たりの開放設定時間が経過するか或いは開放中に所定球数(例えば9個)の入球がカウントされれば大入賞口22を閉鎖するラウンドが所定回数(例えば15ラウンド)繰り返される。そのため、この「長当たり」の大入賞口開放遊技では、役物23が大入賞口22を開放している間に遊技球が大入賞口22に入球する可能性が高くなり、遊技者にとって多くの賞球を獲得し得る遊技状態となる。そして大当たりの場合に「長当たり」が設定されると、その大入賞口開放遊技後の遊技状態として、その後の大当たり抽選での大当たりの当選確率が通常確率よりも高確率に変動する確変モード(確変遊技状態(高確率状態))と、大当たりの当選確率が通常確率のままである通常モード(通常遊技状態(通常確率状態))とのいずれか一方が設定される。また「長当たり」が設定された場合の大入賞口開放遊技後の遊技状態には、通常遊技状態と比較して普通図柄の変動表示時間が短縮された「時短遊技」が付与される。」

(1-2)「【0054】
遊技データ取得部111は、第1始動口スイッチ41又は第2始動口スイッチ42が遊技球の入球を検知した場合、乱数格納領域103aにおいて逐次更新されている大当たり乱数RN1、図柄乱数RN2およびリーチ乱数RN3を遊技データとして取得する処理部である。遊技データ取得部111が取得するこれら乱数の値によって、その後の大当たり抽選における当否、大当たりの場合の大当たりの種類、ハズレの場合のリーチ演出の有無などが確定する。」

(1-3)「【0065】
特別図柄変動処理部115は、変動表保留部112による保留を消化して特別図柄の変動表示を行う処理部である。特別図柄変動処理部115は、第1変動表示保留記憶部104の保留を読み出して特別図柄の変動表示を行う場合は、第1特別図柄表示器63において変動表示を行う。また第2変動表示保留記憶部105の保留を読み出して特別図柄の変動表示を行う場合は、第2特別図柄表示器65において変動表示を行う。この特別図柄変動処理部115は、保留記憶領域103bに格納された遊技データを読み出して大当たり判定を行い、当選していればその当たりの種類に応じた特別図柄で変動表示を停止させる。この停止図柄の決定は、図8(b-1)?(b-3)に示したテーブルに基づいて行われる。またハズレの場合はハズレ図柄で変動表示を停止させる。」

(1-4)「【0071】
また本実施形態1の遊技機1は、メイン制御基板100において第1始動口19又は第2始動口21に遊技球が入球したことに基づき遊技データが取得されると、その遊技データを演出制御基板130に出力する。そして演出制御基板130は、メイン制御基板100と同様にして保留数を管理すると共に、メイン制御基板100から取得する遊技データの事前判定を行う。そしてその事前判定の結果に基づいて、保留数分に対応した複数回の特別図柄の変動表示にわたって連続的に行われる演出であって、特別図柄の変動表示が行われる度に段階的にステップアップしていくステップアップ連続演出を設定するように構成される。このステップアップ連続演出は、例えば第1始動口19に入球したことによって行われる事前判定において当選した場合、当該入球に基づく特別図柄の変動表示が消化されるまでの間に、それ以前に消化される特別図柄の変動表示を含み、複数回の特別図柄の変動表示にわたって連続的に、且つ段階的にステップアップしていく演出である。それ故、このステップアップ連続演出が設定されると、事前判定に当選した当該入球に基づく特別図柄の変動表示時には、ステップアップ連続演出の最終ステップに対応する演出が行われる。」

(1-5)「【0085】
ステップS504とステップS507のいずれか一方で遊技データの読み出した行われた場合、大当たり判定処理(ステップS509)と変動パターン選択処理(ステップS510)とを順に実行する。これらの大当たり判定処理および変動パターン選択処理により、演出制御基板130に出力するための変動開始コマンドに含まれる設定情報(図柄、遊技状態、変動パターンなど)が決定される。尚、これら大当たり判定処理および変動パターン選択処理の詳細については後述する。
【0086】
そして遊技制御部110は、大当たり判定処理および変動パターン選択処理で決定された設定情報を含んだ変動開始コマンドを生成し、RAM103にセットする(ステップS511)。そしてこの設定情報に基づき、第1特別図柄表示器63又は第2特別図柄表示器65における特別図柄の変動表示を開始する(ステップS512)。このとき第2変動表示保留記憶部105の保留に基づく変動表示の場合には、第2特別図柄表示器65における特別図柄の変動表示を開始する。また第1変動表示保留記憶部104の保留に基づく変動表示の場合には、第1特別図柄表示器63における特別図柄の変動表示を開始する。そして変動パターンで設定された時間だけ特別図柄の変動表示を継続させるために、変動時間の計測を開始する(ステップS513)。尚、ステップS511でRAM103にセットされた変動開始コマンドは、図11の出力処理(ステップS111)で演出制御基板130に出力される。」

(1-6)「【0096】
そして遊技制御部110が、大当たり開始コマンドをRAM103にセットして(ステップS585)、大当たりの動作制御を開始する(ステップS586)。これにより、遊技機1は大当たり中となって大入賞口開放遊技に移行し、所定のオープニングが行われた後、役物23がRAM103にセットされた大当たりに種類に対応した開放パターンに基づいて大入賞口22を所定ラウンド数だけ開閉するようになる。」

(1-7)「【0115】
図26は、演出制御基板130における保留記憶領域133aの一構成例を示す図である。図26に示すように、演出制御基板130における保留記憶領域133aは、メイン制御基板100における保留記憶領域103b(図9参照)とほぼ同様の構成となっている。すなわち、第1変動表示保留記憶部211は、図26(a)に示すように、第1記憶領域211a、第2記憶領域211b、第3記憶領域211cおよび第4記憶領域211dを備えている。それぞれの記憶領域211a?211dには、第1始動口19に遊技球が入球して取得された遊技データが格納される。つまり、第1始動口19に遊技球が入球して遊技データが取得された順に、第1記憶領域211aから第4記憶領域211dまで順次遊技データが格納されていく。
・・・
【0117】
事前判定部203は、メイン制御基板100から遊技データを受信したタイミングで、その受信した遊技データの事前判定を行う処理部である。つまり、事前判定部203は、第1始動口19又は第2始動口21に遊技球が入球した場合、当該入球に基づく特別図柄の変動表示が開始される前に、当該入球を契機として、メイン制御基板100で取得された遊技データの事前判定を行う。この事前判定部203は複数の条件に基づいて事前判定を行う。それら複数の条件に適合している場合、事前判定部203は、乱数格納領域133bに格納されている事前判定乱数RN5を読み出し、その乱数値が所定の値であるか否かによって事前判定の当否を決定する。そして事前判定の結果は保留記憶領域133aに格納された当該保留の事前判定結果記憶領域に格納される。尚、乱数格納領域133bに格納されている事前判定乱数RN5は、CPU131の他の処理部により、逐次更新されている。
【0118】
連続演出設定部204は、事前判定部203における事前判定結果に基づいてステップアップ連続演出を設定する処理部である。すなわち、メイン制御基板100から遊技データを受信したタイミングで行われる事前判定に当選した場合、その受信した遊技データに基づく特別図柄の変動表示が実行されるまでに消化される保留数N(ただし、Nはその受信した遊技データに基づく保留を含む)に基づいて、N回の特別図柄の変動表示にわたって段階的にステップアップしていくステップアップ連続演出を設定する。例えば、第1変動表示保留記憶部211に3つの保留が記憶されており、第2変動表示保留記憶部212に保留が記憶されていない状態で、更に第1始動口19に入球したことに伴う遊技データを受信して事前判定に当選した場合、保留数は「4」となるので、連続演出設定部204は、4回の特別図柄の変動表示にわたって4段階でステップアップしていくステップアップ連続演出を設定する。つまり、事前判定に当選した保留に基づく特別図柄の変動表示時には、最終ステップに対応する演出が行われるようにステップアップ連続演出を設定する。これにより、複数回の連続した特別図柄の変動表示にわたって段階的にステップアップしていく演出が行われるようになるので、遊技者は、特別図柄の変動表示が行われる都度、大当たりへの期待感を徐々に高揚させていくようになる。そしてステップアップ連続演出の最終ステップに対応する演出が行われるときには、遊技者の大当たりへの期待感が最高潮に達するようになり、効果的な連続演出が可能になる。」

(1-8)「【0144】
第1始動口19に入球した遊技データである場合(ステップS1201でYES)、事前判定部203は、当該保留(すなわち、その受信した遊技データ)がリーチ又は大当たりのいずれかに当選しているか否かを判断する(ステップS1202)。この判断では、遊技データに含まれる大当たり乱数RN1とリーチ乱数RN3とに基づいてメイン制御基板100における判断と同様にして行われる。そして当該保留が、大当たりでなく、且つ、リーチでもない場合(ステップS1202でNO)は、処理を終了する。これに対し、当該保留が、大当たりに当選しているか、或いは、リーチ演出ありであれば、次のステップに進む。」

(1-9)「【0154】
次にCPU131は、メイン制御基板100から受信した遊技データが第1始動口19に入球したものであるか否かを判断する(ステップS1406)。この判断は、受信した遊技データに含まれる入球始動口に関する情報に基づいて行われる。そして第1始動口19に入球した遊技データでない場合(ステップS1406でNO)、この処理は終了する。これに対し、第1始動口19に入球した遊技データである場合(ステップS1406でYES)、CPU131は次に、当該保留(すなわち、受信した遊技データに基づく保留)が事前判定に当選したか否かを判断する(ステップS1407)。ここでの判断は、当該保留が格納された記憶領域の事前判定結果記憶領域を確認することにより行われる。そして当該保留が事前判定に当選した場合には、ステップアップ連続演出の再設定は行う必要がないので処理を終了する。これに対し、当該保留が事前判定に当選していない場合は、既にステップアップ連続演出が設定されているか否かを判断する(ステップS1408)。ここでステップアップ連続演出が設定されていなければ(ステップS1408でNO)、ステップアップ連続演出の再設定は行う必要がないので処理は終了する。一方、既にステップアップ連続演出が設定されている場合(ステップS1408でYES)、CPU131は既に事前判定に当選している保留を特定し、その保留が「大当たり」であるか否かを判定する(ステップS1409)。事前判定に当選した保留が「大当たり」である場合(ステップS1409でYES)、ステップアップ連続演出を継続させる必要はないため、処理は終了する。一方、事前判定に当選した保留が「大当たり」でない場合(ステップS1409でNO)、CPU131は、事前判定に当選した保留消化後もステップアップ連続演出を継続させるべく、連続演出延長設定処理(ステップS1410)を実行する。」

(1-10)「【0164】
次に図34は、連続演出延長設定処理(図31のステップS1410)の詳細を示すフローチャートである。第1始動口19に遊技球が入球した時点で、既にステップアップ連続演出が設定されており、且つ、事前判定に当選した保留が「大当たり」でない場合に、この処理が開始される。この処理ではまず、事前判定に当選した保留に設定されている最終ステップの段階を取得し、その最終ステップの段階が上限値(本実施形態では第6段階)となっているか否かを判断する(ステップS1471)。そして最終ステップの段階が既に上限値として設定されていれば(ステップS1471でYES)、この処理は終了する。一方、最終ステップの段階が上限値でない場合(ステップS1471でNO)、CPU131は、第1始動口19への当該入球に基づく特別図柄の変動表示時の演出として、最終ステップに続くステップアップ連続演出を追加設定する(ステップS1472)。例えば、事前判定に当選した保留の最終ステップが第4段階として設定されている場合、CPU131は、当該入球に基づく特別図柄の変動表示時の演出として、ステップアップ連続演出の第5段階の演出を設定する。これにより、ステップアップ連続演出の延長設定が行われ、事前判定に当選した保留消化後も引き続きステップアップ連続演出が行われるようになる。」

(1-11)「【0178】
以上のような演出制御基板130の動作により、遊技機1において種々の演出が行われる。特に、特別図柄の変動表示中、画像表示器8において装飾図柄の変動表示が行われると共に、ステップアップ連続演出が設定された場合には複数回の連続した変動表示にわたって段階的にステップアップしていく予告演出が行われる。そしてステップアップ連続演出の最終ステップの演出が行われると、その装飾図柄の変動表示は必ずリーチとなるので、遊技者に大当たりを期待させることができる。
・・・
【0180】
このような画像表示器8において、装飾図柄81,82,83が表示される装飾図柄表示領域の下方に、第1変動表示保留記憶部211の保留を表示する第1保留表示部84が設けられている。第1保留表示部84は、4つの保留表示部84a,84b,84c,84dを有しており、第1変動表示保留記憶部211に1個の保留がある場合は保留表示部84aのみが点灯し、2個の保留がある場合は保留表示部84aと84bとが点灯し、3個の保留がある場合は保留表示部84aと84bと84cとが点灯し、4個の保留がある場合は全ての保留表示部84a,84b,84c,84dが点灯する。尚、第1変動表示保留記憶部211に保留が記憶されていない場合、保留表示部84a,84b,84c,84dは点灯しない。図38(a)の場合は、第1変動表示保留記憶部211に3個の保留がある場合を示している。
・・・
【0182】
そして図38(a)に示すように、ステップアップ連続演出が設定されていない場合、第1保留表示部84および第2保留表示部85の保留表示の態様は、通常の表示態様であるランプ状の表示態様となっている。
【0183】
一方、例えば第1変動表示保留記憶部211に4つ目の保留が記憶されたタイミングで事前判定に当選し、ステップアップ連続演出が設定された場合、演出制御基板130より保留表示に関する連続演出表示コマンドが出力されるので、画像表示器8における保留表示は図38(b)に示すように切り替わる。尚、図38(b)の例では第2変動表示保留記憶部212に保留が記憶されていない状態を示している。
【0184】
図38(b)に示すように、ステップアップ連続演出が設定されると、ステップアップ連続演出が実行される保留表示が段階的にステップアップしていく表示態様に変化する。図例の場合、第1変動表示保留記憶部211の第1保留に対応する保留表示部84aには「たまご」の画像が表示され、第2保留に対応する保留表示部84bには「ひよこ」の画像が表示される。また第3保留に対応する保留表示部84cには「にわとり小」の画像が表示され、第4保留に対応する保留表示部84dには「にわとり大」の画像が表示される。つまり、特別図柄の変動表示待ちの保留が4つある場合にステップアップ連続演出が設定されると、それら4つの保留に対して4段階のステップアップ連続演出を予告するための保留表示が行われる。したがって、画像表示器8の保留表示が通常の表示態様から段階的な表示態様に変化すると、遊技者はステップアップ連続演出が行われることを把握することができる。またステップアップ連続演出の最終ステップが行われる保留についても画像表示器8の表示態様から把握することができる。」

(1-12)「【0208】
次に、第2の演出態様として、ステップアップ連続演出が設定された後、第1始動口19に遊技球が入球する場合の演出態様を例示する。図49?図51は、ステップアップ連続演出を行う場合の画像表示器8における第2の演出態様を示す図である。以下、図49?図51を参照しつつ順を追って第2の演出態様を説明する。
【0209】
図49(a)に示すように、画像表示器8における装飾図柄81,82,83の変動表示中において、第1変動表示保留記憶部211に4つ目の保留が記憶され、その4つ目の保留が事前判定に当選すると、第1保留表示部84における4つの保留表示がそれぞれ「たまご」、「ひよこ」、「にわとり小」、「にわとり大」の4段階の表示に切り替わる。尚、ここでは、事前判定に当選した4つ目の保留は、「大当たり」に当選していないとする。この状態で、ステップアップ連続演出が開始すると、第1変動表示保留記憶部211の保留消化に伴い画像表示器8において、上述した第1の演出態様と同様に、ステップアップ連続演出の各段階の演出が行われる。図49(b)は、第1変動表示保留記憶部211の2つ目の保留が消化され、画像表示器8においてステップアップ連続演出の第2段階の演出として、「ひよこ」の演出用画像86が画面右側から左側に横切っていく状態を示している。このとき、事前判定に当選した保留は、保留表示部84bに表示されている。
【0210】
この第2段階の演出が行われたときの特別図柄の変動表示中に、第1始動口19に対して2個の遊技球が連続して入球した場合、事前判定に当選した保留(保留表示部84b)は「大当たり」ではないので、第1始動口19に遊技球が入球することにより、当該入球に基づく特別図柄の変動表示における演出として、ステップアップ連続演出の最終ステップに続く連続演出が追加設定される。そのため、図49(c)に示すように、事前判定に当選した保留の第4段階に対応した「にわとり大」の保留表示部84bに続き、3つ目の保留の保留表示部84cには第5段階を示す「にわとり尾黒」の画像による保留表示が行われ、4つ目の保留の保留表示部84dには第6段階を示す「にわとり首黒」の画像による保留表示が行われる。したがって、遊技者は大当たりに当選するかもしれないステップアップ連続演出が長く継続されることを把握することができ、より一層大当たりへの期待感が大きくなる。
【0211】
そして次の特別図柄の変動表示に移行すると、画像表示器8では、図50(a)に示すように、ステップアップ連続演出の第3段階の演出として「にわとり小」の演出用画像86が出現し、画面右側から左側に横切っていく。この変動表示は、リーチ演出が行われることなく、ハズレ図柄で停止する。そして更に次の特別図柄の変動表示が行われると、画像表示器8では、図50(b)に示すように、ステップアップ連続演出の第4段階の演出として「にわとり大」の演出用画像86が出現し、画面右側から左側に横切っていく。この演出は、事前判定に当選した保留に設定された演出であるため、画像表示器8は装飾図柄81,82,83の変動表示がリーチ演出に移行する。尚、このとき、第1始動口19に遊技球が入球すると、ステップアップ連続演出は既に上限値の第6段階まで設定されているので、当該入球に基づく保留にはステップアップ連続演出は設定されず、保留表示部84cの表示態様は通常の表示態様となる。」

イ 認定事項
上記「ア」から、次の(1-a)?(1-i)の事項が認定できる。

(1-a)段落【0054】には、「遊技データ取得部111は、第1始動口スイッチ41又は第2始動口スイッチ42が遊技球の入球を検知した場合、乱数格納領域103aにおいて逐次更新されている大当たり乱数RN1、図柄乱数RN2およびリーチ乱数RN3を遊技データとして取得する処理部である。」と記載されているから、引用例には、第1始動口スイッチ41が遊技球の入球を検知した場合に遊技データを取得する遊技データ取得部111が記載されているといえる。

(1-b)段落【0032】には、「この「長当たり」の大入賞口開放遊技では、役物23が大入賞口22を開放している間に遊技球が大入賞口22に入球する可能性が高くなり、遊技者にとって多くの賞球を獲得し得る遊技状態となる。」と記載され、段落【0065】には、「この特別図柄変動処理部115は、保留記憶領域103bに格納された遊技データを読み出して大当たり判定を行い、当選していればその当たりの種類に応じた特別図柄で変動表示を停止させる。」と記載され、段落【0096】には、「これにより、遊技機1は大当たり中となって大入賞口開放遊技に移行し、所定のオープニングが行われた後、役物23がRAM103にセットされた大当たりに種類に対応した開放パターンに基づいて大入賞口22を所定ラウンド数だけ開閉するようになる。」と記載されているから、引用例には、遊技データを読み出して、遊技者にとって多くの賞球を獲得し得る大入賞口開放遊技に移行する大当たりに当選したか否かを判定する大当たり判定を行う特別図柄変動処理部115が記載されているといえる。

(1-c)段落【0085】?【0086】には、「ステップS504とステップS507のいずれか一方で遊技データの読み出した行われた場合、大当たり判定処理(ステップS509)と変動パターン選択処理(ステップS510)とを順に実行する。・・・そして遊技制御部110は、大当たり判定処理および変動パターン選択処理で決定された設定情報を含んだ変動開始コマンドを生成し、RAM103にセットする(ステップS511)。そしてこの設定情報に基づき、第1特別図柄表示器63又は第2特別図柄表示器65における特別図柄の変動表示を開始する(ステップS512)。」と記載され、段落【0117】には、「事前判定部203は、メイン制御基板100から遊技データを受信したタイミングで、その受信した遊技データの事前判定を行う処理部である。つまり、事前判定部203は、第1始動口19又は第2始動口21に遊技球が入球した場合、当該入球に基づく特別図柄の変動表示が開始される前に、当該入球を契機として、メイン制御基板100で取得された遊技データの事前判定を行う。」と記載され、段落【0144】には、「第1始動口19に入球した遊技データである場合(ステップS1201でYES)、事前判定部203は、当該保留(すなわち、その受信した遊技データ)がリーチ又は大当たりのいずれかに当選しているか否かを判断する(ステップS1202)。」と記載されているから、引用例には、遊技データを読み出して大当たり判定処理を行って特別図柄の変動表示を開始する遊技制御部110と、第1始動口19に遊技球が入球した場合、当該入球に基づく特別図柄の変動表示が開始される前に、当該入球を契機として取得された遊技データが大当たりに当選したか否かの事前判定を行う事前判定部203が記載されているといえる。

(1-d)段落【0065】には、「特別図柄変動処理部115は、第1変動表示保留記憶部104の保留を読み出して特別図柄の変動表示を行う場合は、第1特別図柄表示器63において変動表示を行う。・・・この特別図柄変動処理部115は、保留記憶領域103bに格納された遊技データを読み出して大当たり判定を行い、当選していればその当たりの種類に応じた特別図柄で変動表示を停止させる。この停止図柄の決定は、図8(b-1)?(b-3)に示したテーブルに基づいて行われる。またハズレの場合はハズレ図柄で変動表示を停止させる。」と記載されているから、引用例には、大当たり判定を行って、第1特別図柄表示器63において特別図柄の変動表示を行うとともに、当たりの種類に応じた特別図柄又はハズレ図柄で変動表示を停止させる特別図柄変動処理部115が記載されているといえる。

(1-e)段落【0115】には、「第1変動表示保留記憶部211は、図26(a)に示すように、第1記憶領域211a、第2記憶領域211b、第3記憶領域211cおよび第4記憶領域211dを備えている。それぞれの記憶領域211a?211dには、第1始動口19に遊技球が入球して取得された遊技データが格納される。つまり、第1始動口19に遊技球が入球して遊技データが取得された順に、第1記憶領域211aから第4記憶領域211dまで順次遊技データが格納されていく。」と記載されているから、引用例には、取得された遊技データを4つの記憶領域に順次格納する第1変動表示保留記憶部211が記載されているといえる。

(1-f)段落【0115】には、「第1変動表示保留記憶部211は、図26(a)に示すように、第1記憶領域211a、第2記憶領域211b、第3記憶領域211cおよび第4記憶領域211dを備えている。それぞれの記憶領域211a?211dには、第1始動口19に遊技球が入球して取得された遊技データが格納される。」と記載され、段落【0118】には、「例えば、第1変動表示保留記憶部211に3つの保留が記憶されており」と記載され、段落【0178】には、「以上のような演出制御基板130の動作により、遊技機1において種々の演出が行われる。」と記載され、段落【0180】には、「このような画像表示器8において、装飾図柄81,82,83が表示される装飾図柄表示領域の下方に、第1変動表示保留記憶部211の保留を表示する第1保留表示部84が設けられている。」と記載されているから、引用例には、遊技データを第1変動表示保留記憶部211に保留として記憶し、第1変動表示保留記憶部211に記憶された保留を第1保留表示部84で表示するとともに、種々の演出を行う演出制御基板130が記載されているといえる。

(1-g)段落【0180】には、「このような画像表示器8において、装飾図柄81,82,83が表示される装飾図柄表示領域の下方に、第1変動表示保留記憶部211の保留を表示する第1保留表示部84が設けられている。第1保留表示部84は、4つの保留表示部84a,84b,84c,84dを有しており、第1変動表示保留記憶部211に1個の保留がある場合は保留表示部84aのみが点灯し、2個の保留がある場合は保留表示部84aと84bとが点灯し、3個の保留がある場合は保留表示部84aと84bと84cとが点灯し、4個の保留がある場合は全ての保留表示部84a,84b,84c,84dが点灯する。」と記載され、段落【0209】には、「図49(a)に示すように、画像表示器8における装飾図柄81,82,83の変動表示中において、第1変動表示保留記憶部211に4つ目の保留が記憶され、その4つ目の保留が事前判定に当選すると、第1保留表示部84における4つの保留表示がそれぞれ「たまご」、「ひよこ」、「にわとり小」、「にわとり大」の4段階の表示に切り替わる。尚、ここでは、事前判定に当選した4つ目の保留は、「大当たり」に当選していないとする。」と記載されているから、引用例には、第1保留表示部84は、4つの保留表示部84a、84b、84c、84dを有しており、第1変動表示保留記憶部211の保留の個数と同じになるように保留表示部を点灯して表示するとともに、第1保留表示部84には、事前判定に当選した4つ目の保留を含む4段階の保留表示が行われること、が記載されているといえる。

(1-h)段落【0184】には、「つまり、特別図柄の変動表示待ちの保留が4つある場合にステップアップ連続演出が設定されると、それら4つの保留に対して4段階のステップアップ連続演出を予告するための保留表示が行われる。したがって、画像表示器8の保留表示が通常の表示態様から段階的な表示態様に変化すると、遊技者はステップアップ連続演出が行われることを把握することができる。」と記載されているから、引用例には、保留表示の表示態様には、通常の表示態様と、通常の表示態様とは異なった段階的な保留表示の表示態様があることが記載されているといえる。

(1-i)段落【0071】には、「また本実施形態1の遊技機1は、メイン制御基板100において第1始動口19又は第2始動口21に遊技球が入球したことに基づき遊技データが取得されると、その遊技データを演出制御基板130に出力する。そして演出制御基板130は、メイン制御基板100と同様にして保留数を管理すると共に、メイン制御基板100から取得する遊技データの事前判定を行う。そしてその事前判定の結果に基づいて、保留数分に対応した複数回の特別図柄の変動表示にわたって連続的に行われる演出であって、特別図柄の変動表示が行われる度に段階的にステップアップしていくステップアップ連続演出を設定するように構成される。このステップアップ連続演出は、例えば第1始動口19に入球したことによって行われる事前判定において当選した場合、当該入球に基づく特別図柄の変動表示が消化されるまでの間に、それ以前に消化される特別図柄の変動表示を含み、複数回の特別図柄の変動表示にわたって連続的に、且つ段階的にステップアップしていく演出である。」と記載され、段落【0118】には、「例えば、第1変動表示保留記憶部211に3つの保留が記憶されており、第2変動表示保留記憶部212に保留が記憶されていない状態で、更に第1始動口19に入球したことに伴う遊技データを受信して事前判定に当選した場合、保留数は「4」となるので、連続演出設定部204は、4回の特別図柄の変動表示にわたって4段階でステップアップしていくステップアップ連続演出を設定する。つまり、事前判定に当選した保留に基づく特別図柄の変動表示時には、最終ステップに対応する演出が行われるようにステップアップ連続演出を設定する。」と記載され、段落【0154】には、「第1始動口19に入球した遊技データである場合(ステップS1406でYES)、CPU131は次に、当該保留(すなわち、受信した遊技データに基づく保留)が事前判定に当選したか否かを判断する(ステップS1407)。ここでの判断は、当該保留が格納された記憶領域の事前判定結果記憶領域を確認することにより行われる。そして当該保留が事前判定に当選した場合には、ステップアップ連続演出の再設定は行う必要がないので処理を終了する。これに対し、当該保留が事前判定に当選していない場合は、既にステップアップ連続演出が設定されているか否かを判断する(ステップS1408)。ここでステップアップ連続演出が設定されていなければ(ステップS1408でNO)、ステップアップ連続演出の再設定は行う必要がないので処理は終了する。一方、既にステップアップ連続演出が設定されている場合(ステップS1408でYES)、CPU131は既に事前判定に当選している保留を特定し、その保留が「大当たり」であるか否かを判定する(ステップS1409)。事前判定に当選した保留が「大当たり」である場合(ステップS1409でYES)、ステップアップ連続演出を継続させる必要はないため、処理は終了する。一方、事前判定に当選した保留が「大当たり」でない場合(ステップS1409でNO)、CPU131は、事前判定に当選した保留消化後もステップアップ連続演出を継続させるべく、連続演出延長設定処理(ステップS1410)を実行する。」と記載され、段落【0164】には、「次に図34は、連続演出延長設定処理(図31のステップS1410)の詳細を示すフローチャートである。第1始動口19に遊技球が入球した時点で、既にステップアップ連続演出が設定されており、且つ、事前判定に当選した保留が「大当たり」でない場合に、この処理が開始される。この処理ではまず、事前判定に当選した保留に設定されている最終ステップの段階を取得し、その最終ステップの段階が上限値(本実施形態では第6段階)となっているか否かを判断する(ステップS1471)。そして最終ステップの段階が既に上限値として設定されていれば(ステップS1471でYES)、この処理は終了する。一方、最終ステップの段階が上限値でない場合(ステップS1471でNO)、CPU131は、第1始動口19への当該入球に基づく特別図柄の変動表示時の演出として、最終ステップに続くステップアップ連続演出を追加設定する(ステップS1472)。」と記載され、段落【0183】には、「一方、例えば第1変動表示保留記憶部211に4つ目の保留が記憶されたタイミングで事前判定に当選し、ステップアップ連続演出が設定された場合、演出制御基板130より保留表示に関する連続演出表示コマンドが出力されるので、画像表示器8における保留表示は図38(b)に示すように切り替わる。」と記載され、段落【0184】には、「図38(b)に示すように、ステップアップ連続演出が設定されると、ステップアップ連続演出が実行される保留表示が段階的にステップアップしていく表示態様に変化する。図例の場合、第1変動表示保留記憶部211の第1保留に対応する保留表示部84aには「たまご」の画像が表示され、第2保留に対応する保留表示部84bには「ひよこ」の画像が表示される。また第3保留に対応する保留表示部84cには「にわとり小」の画像が表示され、第4保留に対応する保留表示部84dには「にわとり大」の画像が表示される。つまり、特別図柄の変動表示待ちの保留が4つある場合にステップアップ連続演出が設定されると、それら4つの保留に対して4段階のステップアップ連続演出を予告するための保留表示が行われる。したがって、画像表示器8の保留表示が通常の表示態様から段階的な表示態様に変化すると、遊技者はステップアップ連続演出が行われることを把握することができる。またステップアップ連続演出の最終ステップが行われる保留についても画像表示器8の表示態様から把握することができる。」と記載され、段落【0208】?【0211】には、「ステップアップ連続演出が設定された後、第1始動口19に遊技球が入球する場合の演出態様を例示する。・・・第1変動表示保留記憶部211に4つ目の保留が記憶され、その4つ目の保留が事前判定に当選すると、第1保留表示部84における4つの保留表示がそれぞれ「たまご」、「ひよこ」、「にわとり小」、「にわとり大」の4段階の表示に切り替わる。尚、ここでは、事前判定に当選した4つ目の保留は、「大当たり」に当選していないとする。この状態で、ステップアップ連続演出が開始すると、第1変動表示保留記憶部211の保留消化に伴い画像表示器8において、上述した第1の演出態様と同様に、ステップアップ連続演出の各段階の演出が行われる。・・・この第2段階の演出が行われたときの特別図柄の変動表示中に、第1始動口19に対して2個の遊技球が連続して入球した場合、事前判定に当選した保留(保留表示部84b)は「大当たり」ではないので、第1始動口19に遊技球が入球することにより、当該入球に基づく特別図柄の変動表示における演出として、ステップアップ連続演出の最終ステップに続く連続演出が追加設定される。そのため、図49(c)に示すように、事前判定に当選した保留の第4段階に対応した「にわとり大」の保留表示部84bに続き、3つ目の保留の保留表示部84cには第5段階を示す「にわとり尾黒」の画像による保留表示が行われ、4つ目の保留の保留表示部84dには第6段階を示す「にわとり首黒」の画像による保留表示が行われる。・・・尚、このとき、第1始動口19に遊技球が入球すると、ステップアップ連続演出は既に上限値の第6段階まで設定されているので、当該入球に基づく保留にはステップアップ連続演出は設定されず、保留表示部84cの表示態様は通常の表示態様となる。」と記載されているから、引用例には、演出制御基板130は、保留の事前判定の結果に基づいて、複数回の特別図柄の変動表示にわたって連続的に行われるステップアップ連続演出を設定し、事前判定に当選した4つ目の保留を含む4つの保留が記憶されているときにステップアップ連続演出を行い、ステップアップ連続演出を行う際には、第1保留表示部84の事前判定に当選した4つ目の保留を含むステップアップ連続演出が実行される4つの保留に対して4段階のステップアップ連続演出を予告するために4つの保留表示を段階的な保留表示の表示態様に変化させ、既にステップアップ連続演出が設定されている場合に第1始動口19に入球すると、事前判定に当選した保留が大当たりである場合、ステップアップ連続演出を継続させる必要はないため最終ステップに続くステップアップ連続演出を追加設定する連続演出延長設定処理を実行せずに処理を終了する一方、事前判定に当選した保留が大当たりでない場合事前判定に当選した保留消化後もステップアップ連続演出を継続させるべく、連続演出延長設定処理を実行して、最終ステップに続くステップアップ連続演出を追加設定し第5段階や第6段階を示す保留表示が行われるとともに、第1始動口19に遊技球が入球してもステップアップ連続演出が上限値の第6段階まで設定されている場合には、入球に基づく保留にはステップアップ連続演出は設定されず、入球に基づく保留の保留表示の表示態様は通常の表示態様となる、遊技機1が記載されているといえる。

ウ 引用例に記載された発明
上記(1-1)?(1-12)の記載事項及び(1-a)?(1-i)の認定事項を総合すると、引用例には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「a 第1始動口スイッチ41が遊技球の入球を検知した場合に遊技データを取得する遊技データ取得部111と、(認定事項1-a)
b 遊技データを読み出して、遊技者にとって多くの賞球を獲得し得る大入賞口開放遊技に移行する大当たりに当選したか否かを判定する大当たり判定を行う特別図柄変動処理部115と、(認定事項1-b)
c 遊技データを読み出して大当たり判定処理を行って特別図柄の変動表示を開始する遊技制御部110と、第1始動口19に遊技球が入球した場合、当該入球に基づく特別図柄の変動表示が開始される前に、当該入球を契機として取得された遊技データが大当たりに当選したか否かの事前判定を行う事前判定部203と、(認定事項1-c)
d 大当たり判定を行って、第1特別図柄表示器63において特別図柄の変動表示を行うとともに、当たりの種類に応じた特別図柄又はハズレ図柄で変動表示を停止させる特別図柄変動処理部115と、(認定事項1-d)
e 取得された遊技データを4つの記憶領域に順次格納する第1変動表示保留記憶部211と、(認定事項1-e)
f 遊技データを第1変動表示保留記憶部211に保留として記憶し、第1変動表示保留記憶部211に記憶された保留を第1保留表示部84で表示するとともに、種々の演出を行う演出制御基板130と、を備え、(認定事項1-f)
g 第1保留表示部84は、4つの保留表示部84a、84b、84c、84dを有しており、第1変動表示保留記憶部211の保留の個数と同じになるように保留表示部を点灯して表示するとともに、第1保留表示部84には、事前判定に当選した4つ目の保留を含む4段階の保留表示が行われ、(認定事項1-g)
h 保留表示の表示態様には、通常の表示態様と、通常の表示態様とは異なった段階的な保留表示の表示態様があり、(認定事項1-h)
i 演出制御基板130は、保留の事前判定の結果に基づいて、複数回の特別図柄の変動表示にわたって連続的に行われるステップアップ連続演出を設定し、事前判定に当選した4つ目の保留を含む4つの保留が記憶されているときにステップアップ連続演出を行い、ステップアップ連続演出を行う際には、第1保留表示部84の事前判定に当選した4つ目の保留を含むステップアップ連続演出が実行される4つの保留に対して4段階のステップアップ連続演出を予告するために4つの保留表示を段階的な保留表示の表示態様に変化させ、既にステップアップ連続演出が設定されている場合に第1始動口19に入球すると、事前判定に当選した保留が大当たりである場合、ステップアップ連続演出を継続させる必要はないため最終ステップに続くステップアップ連続演出を追加設定する連続演出延長設定処理を実行せずに処理を終了する一方、事前判定に当選した保留が大当たりでない場合事前判定に当選した保留消化後もステップアップ連続演出を継続させるべく、連続演出延長設定処理を実行して、最終ステップに続くステップアップ連続演出を追加設定し第5段階や第6段階を示す保留表示が行われるとともに、第1始動口19に遊技球が入球してもステップアップ連続演出が上限値の第6段階まで設定されている場合には、入球に基づく保留にはステップアップ連続演出は設定されず、入球に基づく保留の保留表示の表示態様は通常の表示態様となる、遊技機1。(認定事項1-i)」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(下記の(a)?(i)は、引用発明の構成に対応している。)。

(a)引用発明の「遊技データ取得部111」は、「第1始動口スイッチ41が遊技球の入球を検知した」ことを条件に「遊技データ」を取得するものであるから、引用発明の「遊技データ」、「遊技データ取得部111」は、本願発明の「判定情報」、「判定情報取得手段」にそれぞれ相当するといえる。
してみると、引用発明のaは、本願発明のAに相当するといえる。

(b)引用発明の「遊技者にとって多くの賞球を獲得し得る大入賞口開放遊技」は遊技者に有利なものであり、このような大入賞口開放遊技に移行する大当たりに当選したか否かを遊技データを読み出して判定する「大当たり判定」は、本願発明の「特別遊技判定」に相当する。よって、引用発明の「特別図柄変動処理部115」は、本願発明の「特別遊技判定手段」に相当する。
してみると、引用発明のbは、本願発明のBに相当するといえる。

(c)引用発明においては、特別図柄の変動表示を行う際に遊技データを読み出して大当たり判定処理を行っていることから、引用発明の「特別図柄の変動表示が開始される前」に行う「事前判定」は、遊技データを読み出して大当たり判定が行われる前に行っているものであるといえる。よって、引用発明の「当該入球に基づく特別図柄の変動表示が開始される前に、当該入球を契機として取得された遊技データが大当たりに当選したか否かの事前判定を行う事前判定部203」は、本願発明の「前記判定情報に対して前記特別遊技判定が行われる前に、前記特別遊技を行うか否かの事前判定を行う事前判定手段」に相当する。
してみると、引用発明のcは、本願発明のCに相当するといえる。

(d)引用発明の「第1特別図柄表示器63」は、図柄の変動表示を行うものであるから、本願発明の「図柄表示手段」に相当する。そして、引用発明の第1特別図柄表示器63において変動表示を行うとともに「当たりの種類に応じた特別図柄又はハズレ図柄で変動表示を停止させる特別図柄変動処理部115」は、本願発明の図柄表示手段にて変動表示させ、「前記特別遊技判定の結果を示す態様で停止表示させる図柄表示制御手段」に相当する。
してみると、引用発明のdは、本願発明のDに相当するといえる。

(e)引用発明の「第1変動表示保留記憶部211」には4つの記憶領域が設けられており、遊技データを4つを上限として記憶可能であるといえる。
してみると、引用発明のeは、本願発明のEに相当するといえる。

(f)引用発明において「第1変動表示保留記憶部211に記憶された保留を第1保留表示部84で表示する」ことは、本願発明の「前記判定情報が前記記憶手段に記憶されていることを示す保留表示を所定の保留表示領域にて行う」ことに相当する。また、このような保留表示を行うことは演出の一種であるといえるから、保留表示を行うとともに種々の演出を行う「演出制御基板130」は、本願発明の「演出実行手段」に相当する。
してみると、引用発明のfは、本願発明のFに相当するといえる。

(g)引用発明の第1保留表示部84が有する「4つの保留表示部84a、84b、84c、84d」は、本願発明の保留表示領域に含まれる「前記所定数分の複数の保留表示領域」に相当する。そして、引用発明において、第1変動表示保留記憶部211の保留の個数と同じになるように保留表示部を点灯して表示することは、4つの保留表示部のそれぞれに対応する保留の有無を示していることから、4つの保留表示部における保留表示は対応するそれぞれの保留毎に行われているといえる。したがって、引用発明の「変動表示保留記憶部211の保留の個数と同じになるように保留表示部を点灯して表示」することは、本願発明の「前記保留表示は前記記憶手段に記憶された前記判定情報ごとに行われ」ることに相当する。
また、引用発明の第1保留表示部84には事前判定に当選した4つ目の保留の保留表示が行われる表示領域と、1?3つ目の保留の保留表示部の表示領域とが含まれており、これらは、それぞれ、本願発明の「第2保留表示領域」及び「第1保留表示領域」に相当する。

(h)引用発明の「通常の表示態様」は、本願発明の「通常表示態様」に相当する。そして、引用発明の「通常の表示態様とは異なった段階的な保留表示の表示態様」は通常の表示態様とは異なる特殊な表示態様であるといえるから、引用発明の「通常の表示態様とは異なった段階的な保留表示の表示態様」は、本願発明の「特殊表示態様」に相当する。よって、引用発明の「保留表示の表示態様には、通常の表示態様と、通常の表示態様とは異なった段階的な保留表示の表示態様があ」ることは、本願発明の「前記保留表示が行われる各保留表示領域内の表示の態様として、通常表示態様と特殊表示態様とがあ」ることに相当する。
してみると、引用発明のhは、本願発明のHに相当するといえる。

(i)「保留の事前判定の結果に基づいて、複数回の特別図柄の変動表示にわたって連続的に行われるステップアップ連続演出」は本願発明の「前記判定情報の1つである対象判定情報に対する前記事前判定の結果に基づき、前記図柄の複数回の変動期間に跨って行われる所定の特殊演出」に相当する。
そして、引用発明の4段階のステップアップ演出が行われる4つの保留のうち「事前判定に当選した4つ目の保留」は本願補正発明の「前記判定情報の1つである対象判定情報」に相当する。さらに、引用発明の4つの保留のうち1?3つ目の保留は4つめの保留よりも先に取得されたものであるから本願補正発明の「前記対象判定情報と前記対象判定情報よりも先に前記判定情報取得手段にて取得された先行判定情報」に相当する。
また、引用発明は、ステップアップ連続演出を行う際に、演出が実行される第1保留表示部84の1?4つ目の保留の保留表示の4つ全てを4段階のステップアップ連続演出を予告するために段階的な保留表示の表示態様に変化させていることから、ステップアップ連続演出を行う際には、第1保留表示部84の4つ目の保留の保留表示が行われる表示領域と1?3つ目の保留の保留表示部の表示領域とを、全て段階的な保留表示の表示態様に変化させているといえる。
したがって、引用発明の「事前判定に当選した4つ目の保留を含む4つの保留が記憶されているときにステップアップ連続演出を行い、ステップアップ連続演出を行う際には、第1保留表示部84の事前判定に当選した4つ目の保留を含むステップアップ連続演出が実行される4つの保留に対して4段階のステップアップ連続演出を予告するために4つの保留表示を段階的な保留表示の表示態様に変化させ」ることは、本願補正発明の「前記対象判定情報と前記対象判定情報よりも先に前記判定情報取得手段にて取得された先行判定情報とが前記記憶手段に記憶されているときに前記特殊演出を実行する際、前記先行判定情報についての前記保留表示が行われる前記第1保留表示領域内の表示の態様及び前記対象判定情報についての前記保留表示が行われる前記第2保留表示領域内の表示の態様を全て前記特殊表示態様とする」ことに相当する。
さらに、引用発明の「遊技機1」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「A 取得条件の成立により判定情報を取得する判定情報取得手段と、
B 前記判定情報に基づき遊技者に有利な特別遊技を行うか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段と、
C 前記判定情報に対して前記特別遊技判定が行われる前に、前記特別遊技を行うか否かの事前判定を行う事前判定手段と、
D 前記特別遊技判定が行われると、図柄を図柄表示手段にて変動表示させ、前記特別遊技判定の結果を示す態様で停止表示させる図柄表示制御手段と、
E 前記判定情報を所定数を上限として記憶可能な記憶手段と、
F 前記判定情報が前記記憶手段に記憶されていることを示す保留表示を所定の保留表示領域にて行う演出を含む、所定の演出を行う演出実行手段と、を備え、
G’ 前記保留表示領域は前記所定数分の複数の保留表示領域を含み、前記保留表示は前記記憶手段に記憶された前記判定情報ごとに行われ、前記複数の保留表示領域は第1及び第2保留表示領域を含み、
H 前記保留表示が行われる各保留表示領域内の表示の態様として、通常表示態様と特殊表示態様とがあり、
I’ 前記演出実行手段は、前記判定情報の1つである対象判定情報に対する前記事前判定の結果に基づき、前記図柄の複数回の変動期間に跨って行われる所定の特殊演出を実行することが可能であって、前記対象判定情報と前記対象判定情報よりも先に前記判定情報取得手段にて取得された先行判定情報とが前記記憶手段に記憶されているときに前記特殊演出を実行する際、前記先行判定情報についての前記保留表示が行われる前記第1保留表示領域内の表示の態様及び前記対象判定情報についての前記保留表示が行われる前記第2保留表示領域内の表示の態様を全て前記特殊表示態様とすることが可能な、遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明は、複数の保留表示領域に第1及び第2保留表示領域に加えて、第3保留表示領域を含むとともに、特殊演出を実行する際に第1保留表示領域及び第2保留表示領域内の表示の態様を全て特殊表示態様とする一方で、第3保留表示領域内の表示の態様を通常表示態様とするのに対して、引用発明はそのような特定がなされていない点。(構成G、I)

(3)判断
ア 相違点についての検討
引用発明は、ステップアップ連続演出を行う際には、第1保留表示部84の事前判定に当選した4つ目の保留を含むステップアップ連続演出が実行される4つの保留に対して4段階のステップアップ連続演出を予告するために4つの保留表示を段階的な保留表示の表示態様に変化させ、既にステップアップ連続演出が設定されている場合に第1始動口19に入球すると、事前判定に当選した保留が大当たりである場合、ステップアップ連続演出を継続させる必要はないため最終ステップに続くステップアップ連続演出を追加設定する連続演出延長設定処理を実行せずに処理を終了する一方、事前判定に当選した保留が大当たりでない場合事前判定に当選した保留消化後もステップアップ連続演出を継続させるべく、連続演出延長設定処理を実行して、最終ステップに続くステップアップ連続演出を追加設定し第5段階や第6段階を示す保留表示が行われるとともに、第1始動口19に遊技球が入球してもステップアップ連続演出が上限値の第6段階まで設定されている場合には、入球に基づく保留にはステップアップ連続演出は設定されず、入球に基づく保留の保留表示の表示態様は通常の表示態様となるとの構成を含むものである。(構成i)

そして、引用発明においては、4つの保留表示を段階的な保留表示の表示態様に変化させ、既にステップアップ連続演出が設定されている場合に第1始動口19に入球すると、事前判定に当選した保留が大当たりである場合、最終ステップに続くステップアップ連続演出を追加設定せずに処理を終了することになるが、その後、入球に基づく保留の保留表示の表示態様がどのような表示態様となるかは明らかではない。
しかしながら、引用発明における、ステップアップ連続演出が設定された後に第1始動口19に遊技球が入球してもステップアップ連続演出が既に上限値の第6段階まで設定されている場合には、ステップアップ連続演出を行う保留の後の入球に基づく保留の保留表示の表示態様を通常の表示態様としている点を参酌すれば、ステップアップ連続演出が設定されて第1保留表示部84の事前判定に当選した保留を含む4つの保留表示を全て段階的な保留表示の表示態様に変化させた後に第1始動口19に遊技球が入球した際、事前判定に当選した保留が大当たりである場合に、ステップアップ連続演出が設定された4つ目の保留の後の入球に基づく保留の保留表示の表示態様を通常の表示態様とするように構成することは当業者が容易になし得たことである。

即ち、引用発明において、ステップアップ連続演出の実行の対象となる事前判定に当選した4つ目の保留の保留表示が行われる表示領域(第2保留表示領域)とそれ以前に入球した保留の保留表示が行われる表示領域(第1保留表示領域)の表示態様を全て段階的な保留表示の表示態様(特殊表示態様)で表示する一方で、ステップアップ連続演出が設定された保留の後の入球に基づく保留の保留表示が行われる表示領域(第3保留表示領域)の表示態様を通常の表示態様(通常表示態様)とすることを可能に構成し、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 本願補正発明が奏する効果について
上記相違点によって本願補正発明が奏する効果は、当業者が引用発明から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、平成30年10月18日付けの意見書において
「(2-1)
・本願請求項1に今回導入された特徴FT“前記対象判定情報と前記対象判定情報よりも先に前記判定情報取得手段にて取得された先行判定情報とが前記記憶手段に記憶されているときに前記特殊演出を実行する際、前記先行判定情報についての前記保留表示が行われる前記第1保留表示領域内の表示の態様及び前記対象判定情報についての前記保留表示が行われる前記第2保留表示領域内の表示の態様を全て前記特殊表示態様とする一方で、前記第3保留表示領域内の表示の態様を前記通常表示態様とすることが可能”は、引用文献1に開示及び示唆されていません。
(2-2)
・引用文献1の遊技機では、ステップアップ連続演出が実行可能となっており、図43等に、その演出例が示されています。
・拒絶理由通知書では、引用文献1のステップアップ連続演出が本願請求項の“特殊演出”に対応付けられ、且つ、引用文献1の「通常の表示態様」(例えば図40(a)の84a)が本願請求項の“通常表示態様”に対応付けられると共に引用文献1の「通常の表示態様とは異なった段階的な保留表示の表示態様」(図39)が本願請求項の“特殊表示態様”に対応付けられています。
・引用文献1の図40(a)を起点とする演出例では、図40(c)等に示されるように、1つの保留表示の表示態様が「通常の表示態様とは異なった段階的な保留表示の表示態様」(図39)とされるとき、他の全ての保留表示の表示態様も「通常の表示態様とは異なった段階的な保留表示の表示態様」(図39)とされます。これは、特徴FTによる演出方法とは明確に相違します。」と主張しており(意見書の「(2)本願が特許されるべき理由」参照。)、引用文献1(引用例)に記載の発明は、1つの保留表示の表示態様が通常の表示態様とは異なった段階的な保留表示の表示態様(特殊表示態様)とされるとき、他の全ての保留表示の表示態様も通常の表示態様とは異なった段階的な保留表示の表示態様(特殊表示態様)とされるものであって、本願補正発明のような、先行判定情報についての保留表示が行われる第1保留表示領域及び対象判定情報についての保留表示が行われる第2保留表示領域内の表示の態様を全て前記特殊表示態様とする一方で、第3保留表示領域内の表示の態様を通常表示態様とするものとは異なる旨主張している。
しかしながら、上記第2の3(2)で検討したとおり、引用発明において、ステップアップ連続演出を行う事前判定に当選した保留の保留表示が行われる表示領域とそれ以前に入球した保留の保留表示が行われる表示領域の表示態様を全て特殊表示態様で表示する一方で、ステップアップ連続演出が設定された保留の後の入球に基づく保留の保留表示が行われる表示領域の表示態様を通常表示態様とすることを可能に構成することは、当業者が容易になし得たものであり、請求人の上記主張は採用できない

また、請求人は、意見書において、
「(2-3)
・特徴FTを具備する本願請求項1によれば、いわゆる先読み対象である対象判定情報と、それよりも先に消化される先行判定情報に対応する保留表示の部分を特殊表示態様としつつ、他の保留表示の部分を通常表示態様とすることができますので、何れの保留表示(判定情報)が先読み対象となっているかが遊技者にとって明確となり、分かりやすい演出を提供することができます。分かりやすい演出は遊技者にとって好ましいものと考えられ、以って、遊技の興趣向上が図られます。遊技者にとって明確となった先読み対象の変動に向けて(対象判定情報に対する図柄の変動表示に向けて)遊技者の気分を徐々に盛り上げてゆく効果も促進されます。」との、主張も行っているが(意見書の「(2)本願が特許されるべき理由」参照。)、引用例の段落【0118】には、「事前判定に当選した保留に基づく特別図柄の変動表示時には、最終ステップに対応する演出が行われるようにステップアップ連続演出を設定する。これにより、複数回の連続した特別図柄の変動表示にわたって段階的にステップアップしていく演出が行われるようになるので、遊技者は、特別図柄の変動表示が行われる都度、大当たりへの期待感を徐々に高揚させていくようになる。そしてステップアップ連続演出の最終ステップに対応する演出が行われるときには、遊技者の大当たりへの期待感が最高潮に達するようになり、効果的な連続演出が可能になる。」と記載されているとともに、段落【0184】には、「特別図柄の変動表示待ちの保留が4つある場合にステップアップ連続演出が設定されると、それら4つの保留に対して4段階のステップアップ連続演出を予告するための保留表示が行われる。したがって、画像表示器8の保留表示が通常の表示態様から段階的な表示態様に変化すると、遊技者はステップアップ連続演出が行われることを把握することができる。またステップアップ連続演出の最終ステップが行われる保留についても画像表示器8の表示態様から把握することができる。」と記載されており、引用発明は、事前判定に当選した保留である最終ステップの保留(対象判定情報)を把握可能に表示するとともに、最終ステップの変動表示に向けて遊技者の期待感を徐々に高揚させることが可能となる点が記載されており、引用発明は請求人が主張する本願補正発明の効果と同様の効果を奏するものである。

よって、請求人の上記主張は採用できない。

(4)まとめ
以上のように、本願補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、平成30年6月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
A 取得条件の成立により判定情報を取得する判定情報取得手段と、
B 前記判定情報に基づき遊技者に有利な特別遊技を行うか否かの特別遊技判定を行う特別遊技判定手段と、
C 前記判定情報に対して前記特別遊技判定が行われる前に、前記特別遊技を行うか否かの事前判定を行う事前判定手段と、
D 前記特別遊技判定が行われると、図柄を図柄表示手段にて変動表示させ、前記特別遊技判定の結果を示す態様で停止表示させる図柄表示制御手段と、
E 前記判定情報を所定数を上限として記憶可能な記憶手段と、
F 前記判定情報が前記記憶手段に記憶されていることを示す保留表示を所定の保留表示領域にて行う演出を含む、所定の演出を行う演出実行手段と、を備え、
G’ 前記保留表示領域は前記所定数分の複数の保留表示領域を含み、前記保留表示は前記記憶手段に記憶された前記判定情報ごとに行われ、
H 前記保留表示が行われる各保留表示領域内の表示の態様として、通常表示態様と特殊表示態様とがあり、
I’ 前記演出実行手段は、前記事前判定の結果に基づき、前記図柄の複数回の変動期間に跨って行われる所定の特殊演出を実行することが可能であって、複数の判定情報が記憶されているときに前記特殊演出を実行する際、前記複数の判定情報に含まれる2以上の判定情報についての前記保留表示が行われる2以上の保留表示領域内の表示の態様を、全て前記特殊表示態様とすることが可能である
ことを特徴とする遊技機。」(当審においてA?Iに分説した。)。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、本願発明は、引用例に記載された発明から、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された引用例の記載事項は、上記第2の3(1)に記載したとおりである。

4 対比・判断
(1)本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「複数の保留表示領域」に関して、「第1、第2及び第3保留表示領域を含」むという限定を省くとともに(構成G)、「演出実行手段」に関して、特殊演出を実行する際に行われる事前判定の対象が「前記判定情報の1つである対象判定情報」であるとの限定を省き、特殊演出を実行する際に記憶されている複数の判定情報が「前記対象判定情報と前記対象判定情報よりも先に前記判定情報取得手段にて取得された先行判定情報」であるとの限定を省き、特殊演出を実行する際に全て特殊表示態様とする複数の判定情報に含まれる2以上の判定情報についての保留表示が行われる2以上の保留表示領域が「前記先行判定情報についての前記保留表示が行われる前記第1保留表示領域及び前記対象判定情報についての前記保留表示が行われる前記第2保留表示領域」であるとの限定を省き、特殊演出を実行する際に所定の保留表示領域内の表示の態様を特殊表示態様とする一方で、「前記第3保留表示領域内の表示の態様を前記通常表示態様とする」との限定を省いて、「演出実行手段」に関して、「前記事前判定の結果に基づき、前記図柄の複数回の変動期間に跨って行われる所定の特殊演出を実行することが可能であって、複数の判定情報が記憶されているときに前記特殊演出を実行する際、前記複数の判定情報に含まれる2以上の判定情報についての前記保留表示が行われる2以上の保留表示領域内の表示の態様を、全て前記特殊表示態様とすることが可能である」との記載に戻したものである(構成I)。

(2)本願発明の構成A?F、Hは、本願補正発明と同じものであるので、上記第2の3(2)で対比したとおり、引用発明の構成a?f、hは、本願発明の構成A?F、Hに相当する。

(3)本願発明の構成G’と、引用発明の構成gとを対比する。
引用発明の第1保留表示部84が有する「4つの保留表示部84a、84b、84c、84d」は、本願発明の保留表示領域に含まれる「前記所定数分の複数の保留表示領域」に相当する。そして、引用発明において、第1変動表示保留記憶部211の保留の個数と同じになるように保留表示部を点灯して表示することは、4つの保留表示部のそれぞれに対応する保留の有無を示していることから、4つの保留表示部における保留表示は対応するそれぞれの保留毎に行われているといえる。よって、引用発明の「変動表示保留記憶部211の保留の個数と同じになるように保留表示部を点灯して表示」することは、本願発明の「前記保留表示は前記記憶手段に記憶された前記判定情報ごとに行われ」ることに相当する。
してみると、引用発明のgは、本願発明のG’に相当するといえる。

(4)本願発明の構成I’と、引用発明の構成iとを対比する。
引用発明の「保留の事前判定の結果に基づいて、複数回の特別図柄の変動表示にわたって連続的に行われるステップアップ連続演出」は本願発明の「前記事前判定の結果に基づき、前記図柄の複数回の変動期間に跨って行われる所定の特殊演出」に相当する。
そして、引用発明においては保留が4つある場合にステップアップ連続演出をしており、複数の保留が記憶されているときに実行するものであり、また、「4つの保留表示を段階的な保留表示の表示態様に変化させ」ることは、2以上の保留である4つの保留に対応する保留表示を全て段階的な保留表示の表示態様に変化させることであるから、引用発明の「事前判定に当選した4つ目の保留を含む4つの保留が記憶されているときにステップアップ連続演出を行い、ステップアップ連続演出を行う際には、第1保留表示部84の事前判定に当選した4つ目の保留を含む4つの保留表示を段階的な保留表示の表示態様に変化させ」ることは、本願発明の「複数の判定情報が記憶されているときに前記特殊演出を実行する際、前記複数の判定情報に含まれる2以上の判定情報についての前記保留表示が行われる2以上の保留表示領域内の表示の態様を、全て前記特殊表示態様とすること」に相当する。
してみると、引用発明のiは、本願発明のI’に相当するといえる。

よって、本願発明は、引用発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
仮に、本願発明と引用発明に相違点があるとしても、本願発明は引用発明から当業者が容易に発明をすることのできたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号、又は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-11-09 
結審通知日 2018-11-13 
審決日 2018-11-27 
出願番号 特願2015-244964(P2015-244964)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 113- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 蔵野 いづみ
田付 徳雄
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人 佐野特許事務所  

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