• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1348070
審判番号 不服2018-3117  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-05 
確定日 2019-02-05 
事件の表示 特願2013-234783「半導体試験治具、測定装置、試験方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月18日出願公開、特開2015- 94693、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年11月13日の出願であって、平成28年11月14日付けで拒絶理由が通知され、平成28年12月19日付けで意見書が提出され、平成29年4月27日付けで拒絶理由が通知され、平成29年6月22日付けで意見書が提出されたが、平成29年11月28日付けで拒絶査定がなされ(送達日:平成29年12月5日)、これに対し、平成30年3月5日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の拒絶理由の概要
原査定(平成29年11月28日付け拒絶査定)の拒絶理由の概要は、次のとおりである。
この出願の請求項1-12に係る発明は、下記の刊行物1-3に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2008-101944号公報
2.特開2013-053898号公報
3.特開2000-074990号公報

第3 本願発明
本願の請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、平成30年3月5日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定されるとおりの発明であり、本願発明1、9、10は、次のとおりの発明である。
「【請求項1】
導電性の材料で形成されたベース板と、
前記ベース板に固定され、絶縁性の材料で形成された複数の枠が格子状に設けられた枠体と、を備え、
前記枠体には前記ベース板を露出させる貫通孔が形成されたことを特徴とする半導体試験治具。」

「【請求項9】
位置合わせ部として用いる切り欠き、穴、凹部、又は凸部を有する導電性の材料で形成されたベース板と、前記ベース板に固定され、絶縁性の材料で形成された複数の枠が格子状に設けられた枠体と、を備え、前記枠体には前記ベース板を露出させる貫通孔が形成された半導体試験治具と、
前記位置合わせ部を利用して前記半導体試験治具を予め定められた場所にのせるステージと、
第1プローブと前記第1プローブよりも短い第2プローブを有する測定器と、を備えたことを特徴とする測定装置。 」

「【請求項10】
導電性の材料で形成されたベース板と、前記ベース板に固定され、絶縁性の材料で形成された複数の枠が格子状に設けられた枠体と、を備える半導体試験治具の前記ベース板の前記枠体によって区切られた部分に、上面電極と下面電極を有する縦型半導体チップの前記下面電極を接触させる工程と、
前記半導体試験治具をステージにのせる工程と、
前記枠体に前記ベース板を露出させるように形成された貫通孔に第1プローブをとおして前記第1プローブを前記ベース板にあてつつ、第2プローブを前記上面電極にあてて、前記縦型半導体チップの電気的特性を測定する工程と、を備えたことを特徴とする試験方法。」

本願発明2-8は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用発明、引用文献等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は,パワーデバイスの電気的特性を検査するための検査用保持部材,検査装置及び検査方法に関する。」

「【0022】
以下,本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は,本実施の形態にかかる検査装置としてのプローブ装置1の構成の概略を示す説明図である。
【0023】
プローブ装置1は,例えばプローブカード2と,パワーデバイスが形成されているチップCを保持する検査用保持部材3と,検査用保持部材3を吸着保持するチャック4と,チャック4を移動させる移動機構5と,テスタ6などを備えている。」

「【0027】
チャック4に吸着される検査用保持部材3は,例えば図2に示すように1.5mm程度の薄い円盤状の基台30を有し,その基台30の表面に複数のチップ載置部31が形成されている。基台30は,例えばセラミックスにより形成されている。チップ載置部31は,基台30の表面の例えばX-Y方向に整列されている。
【0028】
各チップ載置部31には,例えば図3及び図4に示すように互いに分離し絶縁した薄い金属膜40,41が並べて形成されている。金属膜40,41は,例えば0.1mm程度の同じ厚みに形成され,例えば銅,ニッケル,銀,金などからなる多層膜構造を有している。」

「【0030】
各チップ載置部31には,チップCの側面に当接してチップCを位置決めする複数のピン42が立てられている。ピン42は,チップCが載置される載置領域R1の外枠に沿って配置されている。」

「【0032】
次に,以上のように構成されたプローブ装置1で行われるパワーデバイスの電気的特性の検査方法について説明する。本実施の形態におけるパワーデバイスPは,例えば図5に示すようにチップCの上面に例えばゲート,ソース又はエミッタなどの上面端子C1を備え,下面に例えばドレイン又はコレクタなどの下面端子C2を備えている。
【0033】
先ず,複数のチップCが図3に示すように検査用保持部材3の各チップ載置部31に載置される。この際,チップCは,各チップ載置部31のピン42により位置決めされる。次に,検査用保持部材3が図1に示すようにチャック4上に吸着保持される。この際,チャック4の吸引力により,チップCが各チップ載置部31の吸引口43から吸引されて固定される。続いて,移動機構5により,チャック4が水平方向に移動されX?Y方向のチップCの位置が調整され,その後チャック4が上昇される。こうして,例えば図3に示すように各チップCの上面端子C1にプローブピン10a,bが接触され,チップCが載置されていない露出領域R2の第1の金属膜40の表面にプローブピン10cが接触される。また,露出領域R2の第2の金属膜41の表面にプローブピン10dが接触される。なお,本実施の形態においては,プローブピン10aが上面端子用プローブピンとなり,プローブピン10cが下面端子用プローブピンとなる。」

「【0036】
以上の実施の形態によれば,検査用保持部材3の基台30に多数のチップ載置部31を形成し,その各チップ載置部31の表面には,チップCが載置される載置領域R1と載置されない露出領域R2に亘る第1の金属膜40を形成した。こうすることによって,一のプローブピン10aをチップCの上面端子C1に接触させ,他のプローブピン10cを露出領域R2の第1の金属膜40に接触させることによって,パワーデバイスPの上下面端子C1,C2間に電圧を印加し,パワーデバイスPの電気的特性の検査を行うことができる。この場合,パワーデバイスPの下面端子C2からプローブピン10cまでの電路が短く,検査の際にテスタ6とパワーデバイスPの間に負荷の小さい電路を形成できるので,要求される検査を高精度で安定的に行うことができる。」

したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「パワーデバイスの電気的特性を検査するための検査用保持部材(段落【0001】より。以下同じ。)であって、パワーデバイスが形成されているチップCを保持する検査用保持部材3(【0023】)は、薄い円盤状の基台30を有し、その基台30の表面に複数のチップ載置部31が形成され、基台30は、例えばセラミックスにより形成され(【0027】)、
各チップ載置部31には、互いに分離し絶縁した薄い金属膜40、41が並べて形成され(【0028】)、
各チップ載置部31には、チップCの側面に当接してチップCを位置決めする複数のピン42が立てられ、ピン42は、チップCが載置される載置領域R1の外枠に沿って配置され(【0030】)、
パワーデバイスPは、チップCの上面に例えばゲート、ソース又はエミッタなどの上面端子C1を備え、下面に例えばドレイン又はコレクタなどの下面端子C2を備え(【0032】)、
複数のチップCが検査用保持部材3の各チップ載置部31に載置され、この際,チップCは,各チップ載置部31のピン42により位置決めされ【0033】)、
パワーデバイスPの上下面端子C1、C2間に電圧を印加し、パワーデバイスPの電気的特性の検査を行うことができる(【0036】)、
検査用保持部材(【0001】)。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用された、引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、下面電極と上面電極を有する複数の縦型半導体装置を試験するための半導体試験治具及びその製造方法に関する。」

「【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体試験治具を示す上面図である。図2は図1のI-IIに沿った断面図である。図1では説明の簡略化のため、基台1と枠部2からなる搬送トレイのみ示している。この半導体試験治具は、下面電極3と上面電極4を有する複数の縦型半導体装置5を試験するために用いられる。縦型半導体装置5は例えば半導体チップであるが、これに限るものではなく、半導体チップを仮組した基板でもよい。
【0011】
基台1は、アルミニウムなどの導電性を持つ板状の金属からなる。基台1は16個の設置部6を有する。設置部6には、下面電極3が接触した状態で複数の縦型半導体装置5がそれぞれ個別に設置される。設置部6は、縦型半導体装置5の下面電極3にダメージを与えないために、洗浄や研磨工程によりバリや突起が除去されたフラットな面であることが望ましい。設置部6の数量は16個に限られず、試験装置や縦型半導体装置5の大きさに応じて増減してもよい。
【0012】
基台1上に格子状の枠部2が設けられている。枠部2は複数の設置部6をそれぞれ囲う。縦型半導体装置5に対向する枠部2の側面が傾斜面である。枠部2は、隣接する縦型半導体装置5が互いに導通しないように、PPS樹脂などの絶縁性材料からなる。
【0013】
機械加工により基台1に位置決め部7,8が設けられている。位置決め部7は、基台1の少なくとも一つの角部に設けられた切り欠きである。4つの位置決め部8は、基台1に設けられた貫通孔であり、ステージ9の凸部と嵌合する。ただし、位置決め部8は、これに限るものではなく、個数も4つに限るものではない。
【0014】
導電性のステージ9に、基台1の裏面が接触した状態で基台1が設置される。導電性のプローブ10が縦型半導体装置5の上面電極4に接触する。試験装置11は、縦型半導体装置5が設置部6に設置された状態で、基台1、ステージ9及びプローブ10を介して縦型半導体装置5の試験を行う。」

したがって、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「下面電極と上面電極を有する複数の縦型半導体装置を試験するための半導体試験治具(段落【0001】より。以下同じ。)であって、
この半導体試験治具は、下面電極3と上面電極4を有する複数の縦型半導体装置5を試験するために用いられ(【0010】)、
基台1は、導電性を持つ板状の金属からなり、基台1は設置部6を有し、設置部6には、下面電極3が接触した状態で複数の縦型半導体装置5がそれぞれ個別に設置され(【0011】)、
基台1上に格子状の枠部2が設けられ、枠部2は複数の設置部6をそれぞれ囲い、枠部2は、隣接する縦型半導体装置5が互いに導通しないように、絶縁性材料からなり(【0012】)、
導電性のステージ9に、基台1の裏面が接触した状態で基台1が設置され、導電性のプローブ10が縦型半導体装置5の上面電極4に接触し、試験装置11は、縦型半導体装置5が設置部6に設置された状態で、基台1、ステージ9及びプローブ10を介して縦型半導体装置5の試験を行う(【0014】)、
半導体試験治具(【0001】)。」

3.引用文献3について
原査定において周知技術を示す文献として新たに引用された引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体チップ用パッケージが備える多数本のパターン片からなるパッド部の微細化が進んでその配列密度が高くなっても、プローブピンを所定のパターン片に確実に接触させてパッケージの良否を正しく検査することができるようにした半導体チップ用パッケージの良否検査方法及びその装置に関する。」

「【0014】また、半導体チップ用パッケージ1は、図2(基本構成は図6におけると同じ)に示すように、半導体チップ(図示せず)が載置さるべき搭載部2と、該搭載部2に載置された半導体チップの側から引き出されるワイヤーの開放端をはんだ付けすべく搭載部2の周縁部に相互が非接触となるように平行に行列配置された多数本のパターン片4からなるパッド部3と、該パッド部3とは離間させた周縁位置にてプリント基板(図示せず)の側と個別にはんだ付けされる多数個の接点6からなる基板用はんだ付け部5とを備えて形成されている。なお、対応関係にある個々のパターン片4と接点6とは、相互に導通する関係となってそれぞれが配設されている。
【0015】さらに、絶縁プレート15は、個々のパターン片4と各別に対面するように正確に位置決めして穿設されたガイド孔16を具備させることにより、検査対象となっている個々の半導体チップ用パッケージ1の種別に対応させて用いるべく用意される。したがって、絶縁プレート15は、検査さるべき特定の半導体チップ用パッケージ1のパッド部3におけるパターン片4の配列態様との関係で定まるガイド孔16を有しているものがその都度選択して用いられることになる。(当審注:「検査さるべき」は、「検査されるべき」の誤記と認められる。また、「ガイド孔16」も「ガイド孔17」の誤記と認められる。)
【0016】これを図2と図3とに即してより詳しく説明すれば、セラミック材や合成樹脂材などの比較的硬質な絶縁素材からなる絶縁プレート15は、図3(イ)に斜線で示されるように半導体チップ用パッケージ1のパッド部3と対面合致する特定領域16にプローブピン21の先鋭部23と略合致する内周面17a形状を呈するテーパーが付されて図3(ロ)の平面形状と図3(ハ)の断面形状とを呈するように穿設された多数個のガイド孔17を有して形成されている。
【0017】図4は、この場合におけるパターン片4とガイド孔17との配置関係を例示する説明図であり、例えば計15本のパターン片4が適宜間隔を介在させて搭載部2の側に向かって平行に行列配置されているとすれば、絶縁プレート15は、これらパターン片4の各上面に個別に位置させるべく斜行配置された計15のガイド孔17がこれらパターン片4と正対する位置関係のもとでその上面の全体を覆い得るようにして形成されることになる。」

「【0022】まず、装置本体(図示せず)に対し位置決め用の絶縁プレート15をその面方向が水平となるようにして機械的に位置固定した後、回転テーブル11を縦横に移動させつつ上昇させ、さらに回転軸13を回転させて位置制御することにより、テーブル部12上の半導体チップ用パッケージ1におけるパッド部3と絶縁プレート15の特定領域16とが対面合致する位置関係を確保して当接させる。
【0023】このようにして半導体チップ用パッケージ1と絶縁プレート15とを当接させることにより、絶縁プレート15は、その特定領域16に穿設されている各ガイド孔17がパッド部3を構成している各パターン片4と個別に正対した位置関係のもとで半導体チップ用パッケージ1のパッド部3の全体を覆うことになる。
【0024】しかる後、一対のプローブピン21,21のうち、一方のプローブピン21は、対応する一のガイド孔17を介して一のパターン片4へと接触させるとともに、他方のプローブピン21は該パターン片4と導通さるべき基板用はんだ付け部5の一の接点6に各別に同時接触させた上で、両者間の導通テストを行うことにより検査が実施される。
【0025】一対のプローブピン21,21を用いて行われるこのような導通検査を、必要とされるパターン片4と接点6とのすべてに対し個別に順次行うことにより、半導体チップ用パッケージ1の良否が検査できることになる。」

したがって、引用文献3には、次の周知技術が記載されていると認められる。
「半導体チップ用パッケージの良否検査装置(段落【0001】より。以下同じ。)において、
絶縁プレート15は、検査されるべき特定の半導体チップ用パッケージ1のパッド部3におけるパターン片4の配列態様との関係で定まるガイド孔17を有し(【0015】)、
半導体チップ用パッケージ1と絶縁プレート15とを当接させ(【0023】)、プローブピン21は、対応する一のガイド孔17を介して一のパターン片4へと接触させる(【0024】)。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「薄い円盤状の基台30」は、「セラミックスにより形成され」、「その基台30の表面に複数のチップ載置部31が形成され」、「各チップ載置部31には、互いに分離し絶縁した薄い金属膜40、41が並べて形成され」ているから、引用発明における「薄い円盤状の基台30」及び「複数のチップ載置部31」と、本願発明1における「導電性の材料で形成されたベース板」とは、「少なくとも表面の一部が導電性の材料で形成されたベース板」の点で共通する。

イ 引用発明の「各チップ載置部31」に「立てられ」た「複数のピン42」は、「チップCの側面に当接してチップCを位置決めする」ためのものであるから、本願発明1における「前記ベース板に固定され、絶縁性の材料で形成された複数の枠が格子状に設けられた枠体」であって「前記枠体には前記ベース板を露出させる貫通孔が形成された」ものとは、「前記ベース板に固定された構造体」の点で共通する。

ウ 引用発明における「パワーデバイスが形成されているチップC」は、「チップCの上面に例えばゲート、ソース又はエミッタなどの上面端子C1を備え、下面に例えばドレイン又はコレクタなどの下面端子C2を備え」ているから、引用発明における「パワーデバイス」は、半導体デバイスであって、本願発明1における「半導体」に相当する。

エ 引用発明における「パワーデバイスの電気的特性を検査するための検査用保持部材」が、本願発明1における「試験治具」に相当する。

すると、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「少なくとも表面の一部が導電性の材料で形成されたベース板と、
前記ベース板に固定された構造体と、を備えた
ことを特徴とする半導体試験治具。」

(相違点1)
本願発明1では、「ベース板」が「導電性の材料で形成され」ているのに対し、引用発明では「薄い円盤状の基台30」が「セラミックスにより形成され」、「各チップ載置部31」に「互いに分離し絶縁した薄い金属膜40、41が並べて形成され」たものである点。

(相違点2)
本願発明1では、「前記ベース板に固定され、絶縁性の材料で形成された複数の枠が格子状に設けられた枠体」であって「前記枠体には前記ベース板を露出させる貫通孔が形成された」ものを備えているのに対し、引用発明では、そのような枠体を備えておらず、「チップCが載置される載置領域R1の外枠に沿って」、「複数のピン42が立てられ」、「複数のピン42」は「チップCの側面に当接してチップCを位置決めする」ものとされている点。

(2)判断
事案に鑑みて、まず、上記相違点2について判断する。
ア 引用文献2には、「半導体試験治具」において、「基台1上に格子状の枠部2が設けられ」、「枠部2は、隣接する縦型半導体装置5が互いに導通しないように、絶縁性材料からな」ることが記載されている。
しかし、引用文献2には、「枠部2」に、「基台1」を露出させる貫通孔を設けることは、記載も示唆もされていない。

イ また、引用文献3には、上記「第4」「3.」のとおり、「半導体チップ用パッケージの良否検査装置において、絶縁プレート15は、・・・ガイド孔17を有し、半導体チップ用パッケージ1と絶縁プレート15とを当接させ、プローブピン21は、対応する一のガイド孔17を介して一のパターン片4へと接触させる」周知技術が記載されているが、引用文献3には、該「絶縁プレート15」を「複数の枠が格子状に設けられた枠体」とすることは記載も示唆もされていない。
また、引用文献3における「絶縁プレート15」の「ガイド孔17」は、「半導体チップ用パッケージ1のパッド部3」の「パターン片4」を露出させるものであって、本願発明1におけるような「ベース板」を露出させるものではない。

ウ よって、引用文献2にも、引用文献3にも、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、記載も示唆もされていない。

エ したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2-8について
本願発明2-8も、本願発明1の「前記ベース板に固定され、絶縁性の材料で形成された複数の枠が格子状に設けられた枠体」であって「前記枠体には前記ベース板を露出させる貫通孔が形成された」ものを備えているから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明9について
本願発明9に係る測定装置が備える「半導体試験治具」は、本願発明1と同じく、「前記ベース板に固定され、絶縁性の材料で形成された複数の枠が格子状に設けられた枠体」であって「前記枠体には前記ベース板を露出させる貫通孔が形成された」ものを備えているから、本願発明9は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

4.本願発明10について
本願発明10に係る試験方法で用いられる「半導体試験治具」は、本願発明1と同様に、「前記ベース板に固定され、絶縁性の材料で形成された複数の枠が格子状に設けられた枠体」を備え、前記枠体は、「前記枠体に前記ベース板を露出させるように形成された貫通孔」を有しているから、本願発明10は、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定について
上記「第5」で述べたとおり、本願発明1-10は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-23 
出願番号 特願2013-234783(P2013-234783)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 櫻井 健太
清水 稔
発明の名称 半導体試験治具、測定装置、試験方法  
代理人 久野 淑己  
代理人 高田 守  
代理人 高橋 英樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ