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審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 G07D 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G07D |
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管理番号 | 1348098 |
審判番号 | 不服2017-17594 |
総通号数 | 231 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-11-28 |
確定日 | 2019-02-05 |
事件の表示 | 特願2013- 24471号「媒体集積装置及び媒体処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月25日出願公開、特開2014-154007号、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年2月12日の出願であって、平成28年7月15日付けで拒絶理由が通知され、同年9月21日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年1月19日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年3月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月28日付けで補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、同年11月28日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成29年8月28日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要 1 補正の却下の決定の概要 (1)平成29年3月27日付け手続補正書でした明細書及び特許請求の範囲についての補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでない。よって、この補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (2)請求項1についての補正が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものと仮定すると、補正後の請求項1に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないが、当該補正後の請求項1に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当するものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。よって、この補正は同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 引用文献1:特開2000-11233号公報 引用文献2:特開2009-46298号公報 2 原査定の概要 平成28年9月21日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 第3 審判請求時の補正について 1 補正の内容 平成29年11月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、請求項1、9及び10について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 なお、平成29年3月27日付けの手続補正は、平成29年8月28日付けの補正の却下の決定により却下されている。 (補正前の請求項1) 「【請求項1】 内部に形成された内部空間に媒体を収容するフレームと、 上記内部空間内に設けられ、載置面上に上記媒体を載置して集積するステージと、 上記内部空間のうち上記ステージの上記載置面側である集積空間内へ上記媒体を放出する放出部と、 上記媒体の一部が所定の叩付可能範囲にあるときに、当該媒体の一部を上記ステージの上記載置面又は当該載置面上に載置された集積済みの媒体上に叩き付ける叩付部と、 上記放出部から上記集積空間内へ放出された上記媒体の一部分を、上記集積済みの媒体に押圧すること無く、上記叩付可能範囲内へ誘導する誘導体と を具えることを特徴とする媒体集積装置。」 ・・・ 【請求項9】 上記ステージの上記載置面又は当該載置面上に載置された上記媒体の最上面である載置最上面と上記放出部との間の高さを所定値以下に収めるように、上記ステージの位置を上記媒体の載置方向に沿って調整するステージ調整部 をさらに具えることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。 【請求項10】 媒体を搬送する搬送部と、 内部に形成された内部空間に上記媒体を収容するフレームと、 上記内部空間内に設けられ、載置面上に上記媒体を載置して集積するステージと、 上記内部空間のうち上記ステージの上記載置面側である集積空間内へ上記媒体を放出する放出部と、 上記媒体の一部が所定の叩付可能範囲にあるときに、当該媒体の一部を上記ステージの上記載置面又は当該載置面上に載置された集積済みの媒体上に叩き付ける叩付部と、 上記放出部から上記集積空間内へ放出された上記媒体の一部分を、上記集積済みの媒体に押圧すること無く、上記叩付可能範囲内へ誘導する誘導体と を具えることを特徴とする媒体処理装置。」 (補正後の請求項1) 「 【請求項1】 内部に形成された内部空間に媒体を収容するフレームと、 上記内部空間内を上方向又は下方向へ移動可能であり、載置面上に上記媒体を載置して集積するステージと、 上記内部空間のうち上記ステージの上記載置面側である集積空間内へ上記媒体を放出する放出部と、 上記媒体の一部が所定の叩付可能範囲にあるときに、当該媒体の一部を上記ステージの上記載置面又は当該載置面上に載置された集積済みの媒体上に叩き付ける叩付部と、 上記媒体の進行路よりも上側に持ち上げられた持上状態と、該進行路よりも下側に下降した下降状態との間を遷移し、上記放出部から上記集積空間内へ放出された上記媒体の一部分を上記叩付可能範囲内へ誘導する誘導体と を具え、 上記ステージの高さは、上記放出部から放出された上記媒体の先端が、上記ステージの上記載置面又は当該載置面に載置された上記集積済の媒体上にまで下降した場合であっても、上記誘導体が上記持上状態から上記下降状態に遷移したときに該誘導体の一部である当接部により上記媒体の末端を上記叩付部の上記叩付可能範囲内に押し入れ得る高さである ことを特徴とする媒体集積装置。 ・・・ 【請求項9】 上記ステージの上記載置面又は当該載置面上に載置された上記媒体の最上面である載置最上面と上記放出部との間の高さを所定値以下に収めるように、上記ステージの位置を上記媒体の載置方向に沿って調整するステージ調整部 をさらに具え、 上記ステージの高さは、上記載置最上面と上記放出部との間の高さが上記所定値である場合の高さである ことを特徴とする請求項1に記載の媒体集積装置。 【請求項10】 媒体を搬送する搬送部と、 内部に形成された内部空間に上記媒体を収容するフレームと、 上記内部空間内を上方向又は下方向へ移動可能であり、載置面上に上記媒体を載置して集積するステージと、 上記内部空間のうち上記ステージの上記載置面側である集積空間内へ上記媒体を放出する放出部と、 上記媒体の一部が所定の叩付可能範囲にあるときに、当該媒体の一部を上記ステージの上記載置面又は当該載置面上に載置された集積済みの媒体上に叩き付ける叩付部と、 上記媒体の進行路よりも上側に持ち上げられた持上状態と、該進行路よりも下側に下降した下降状態との間を遷移し、上記放出部から上記集積空間内へ放出された上記媒体の一部分を上記叩付可能範囲内へ誘導する誘導体と を具え、 上記ステージの高さは、上記放出部から放出された上記媒体の先端が、上記ステージの上記載置面又は当該載置面に載置された上記集積済の媒体上にまで下降した場合であっても、上記誘導体が上記持上状態から上記下降状態に遷移したときに該誘導体の一部である当接部により上記媒体の末端を上記叩付部の上記叩付可能範囲内に押し入れ得る高さである ことを特徴とする媒体処理装置。」 2 補正の目的の適否、新規事項の追加の有無及びシフト補正の有無 (1)請求項1及び10の補正について 請求項1及び10の補正は、補正前の請求項1及び10に記載された発明を特定するために必要な事項である「ステージ」について、「上方向又は下方向へ移動可能であ」ることを、また、「誘導体」について、「上記媒体の進行路よりも上側に持ち上げられた持上状態と、該進行路よりも下側に下降した下降状態との間を遷移」することを限定するとともに、さらに、「上記ステージの高さは、上記放出部から放出された上記媒体の先端が、上記ステージの上記載置面又は当該載置面に載置された上記集積済の媒体上にまで下降した場合であっても、上記誘導体が上記持上状態から上記下降状態に遷移したときに該誘導体の一部である当接部により上記媒体の末端を上記叩付部の上記叩付可能範囲内に押し入れ得る高さである」ことを限定するものであって、補正前の請求項1及び10に係る発明と補正後の請求項1及び10に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題も同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 さらに、請求項1及び10の補正は、補正前にその構成が不明確であった「上記集積済みの媒体に押圧すること無く」との事項を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、請求項1及び10の補正は、本願の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」といい、特許請求の範囲及び図面をも併せて「当初明細書等」という。)の「さらにフレーム21内には、ステージ23を上下方向へ駆動するためのアクチュエータやギア等でなるステージ駆動部30(図3)が設けられている。」(段落【0055】、下線は当審で付した。以下同様。)、「また誘導体61の部分61C、61D及び61Eは、放出部37から放出された紙幣BLがまっすぐ前方へ進行する場合の進行路W2よりも上側に持ち上げられている。以下、このときの誘導体61の状態を持上状態と呼ぶ。・・・その後誘導体61は、紙幣BLが集積空間SC内へ放出されるなどして当該紙幣BLにより持ち上げられなくなると、変形部61Pの復元力(弾性力)の作用により元の状態、すなわち部分61C、61D及び61Eを進行路W2よりも下側に下降させた状態(以下これを下降状態と呼ぶ)に戻る(図11(A))。」(段落【0115】?【0116】)、及び「さらにステージ23は、紙幣BLを集積する際、紙幣制御部11による制御の下で、載置最上面を最も低い場合であっても高さH2に位置させるようにした(図10(C))。このためステージ23は、最短紙幣BLSの前端が載置最上面にまで下降した際であっても、誘導体61が下降状態に遷移したときに、当接部61Qにより当該最短紙幣BLSの後端部分を羽根車38の回転軌跡38R内に押し入れさせることができる(図17)。」(段落【0153】)等の記載に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の補正といえ、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。 さらに、請求項1及び10の補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものである。 (2)請求項9の補正について 請求項9の補正は、当初明細書等の段落【0097】?【0106】及び図10等の記載を根拠に、補正前の請求項9に記載された発明を特定するために必要な事項である「ステージ」について、「上記ステージの高さは、上記載置最上面と上記放出部との間の高さが上記所定値である場合の高さである」ことを限定するものであって、補正前の請求項9に係る発明と補正後の請求項9に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題も同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものである。 さらに、請求項9の補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものである。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項から第5項までの要件を満たしている。 また、「第5 当審の判断」に示すように、補正後の請求項1?10に係る発明は、独立特許要件を満たすものであるから、同法同条第6項にも適合する。 第4 本願発明 本願の請求項1?10に係る発明(以下「本願発明1?10」という。)は、平成29年11月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 内部に形成された内部空間に媒体を収容するフレームと、 上記内部空間内を上方向又は下方向へ移動可能であり、載置面上に上記媒体を載置して集積するステージと、 上記内部空間のうち上記ステージの上記載置面側である集積空間内へ上記媒体を放出する放出部と、 上記媒体の一部が所定の叩付可能範囲にあるときに、当該媒体の一部を上記ステージの上記載置面又は当該載置面上に載置された集積済みの媒体上に叩き付ける叩付部と、 上記媒体の進行路よりも上側に持ち上げられた持上状態と、該進行路よりも下側に下降した下降状態との間を遷移し、上記放出部から上記集積空間内へ放出された上記媒体の一部分を上記叩付可能範囲内へ誘導する誘導体と を具え、 上記ステージの高さは、上記放出部から放出された上記媒体の先端が、上記ステージの上記載置面又は当該載置面に載置された上記集積済の媒体上にまで下降した場合であっても、上記誘導体が上記持上状態から上記下降状態に遷移したときに該誘導体の一部である当接部により上記媒体の末端を上記叩付部の上記叩付可能範囲内に押し入れ得る高さである ことを特徴とする媒体集積装置。 【請求項2】 上記集積空間における上記放出部と対向する位置で上記媒体を衝突させるビルストッパをさらに具え、 上記誘導体は、 上記放出部から上記媒体が放出されるときには上記集積空間内における当該媒体の進行路から待避し、当該媒体が上記放出部から放出され上記ビルストッパに衝突した後に、当該媒体の一部分を上記叩付可能範囲内へ誘導する ことを特徴とする請求項1に記載の媒体集積装置。 【請求項3】 上記放出部へ上記媒体を搬送する放出搬送部 をさらに具え、 上記誘導体は、 上記放出搬送部により上記放出部へ搬送される媒体により、上記集積空間内における上記媒体の上記進行路から待避する ことを特徴とする請求項2に記載の媒体集積装置。 【請求項4】 上記誘導体は、 少なくとも一部分を変形させることにより、上記集積空間内における上記媒体の上記進行路から待避する ことを特徴とする請求項3に記載の媒体集積装置。 【請求項5】 上記ビルストッパは、 上記媒体が衝突する衝突面に、上記ステージから遠い部分よりも上記ステージに近い部分が上記放出部から離れるように段差が形成されている ことを特徴とする請求項2に記載の媒体集積装置。 【請求項6】 上記誘導体は、 上記放出部から放出された上記媒体により、上記集積空間内における上記媒体の進行路から待避する ことを特徴とする請求項1に記載の媒体集積装置。 【請求項7】 上記誘導体は、 少なくとも一部分を変位させることにより、上記集積空間内における上記媒体の進行路から待避する ことを特徴とする請求項1に記載の媒体集積装置。 【請求項8】 上記誘導体は、 上記媒体のうち放出される方向に関する長さが最も短い最短媒体が上記集積空間内に放出された後、当該最短媒体の先端が上記ステージの上記載置面又は当該載置面上に載置された上記媒体の最上面に最も近接すると共に上記放出部から最も離れた場合に、当該最短媒体の末端と当接する当接部を上記叩付可能範囲内に位置させる ことを特徴とする請求項1に記載の媒体集積装置。 【請求項9】 上記ステージの上記載置面又は当該載置面上に載置された上記媒体の最上面である載置最上面と上記放出部との間の高さを所定値以下に収めるように、上記ステージの位置を上記媒体の載置方向に沿って調整するステージ調整部をさらに具え、 上記ステージの高さは、上記載置最上面と上記放出部との間の高さが上記所定値である場合の高さである ことを特徴とする請求項1に記載の媒体集積装置。 【請求項10】 媒体を搬送する搬送部と、 内部に形成された内部空間に上記媒体を収容するフレームと、 上記内部空間内を上方向又は下方向へ移動可能であり、載置面上に上記媒体を載置して集積するステージと、 上記内部空間のうち上記ステージの上記載置面側である集積空間内へ上記媒体を放出する放出部と、 上記媒体の一部が所定の叩付可能範囲にあるときに、当該媒体の一部を上記ステージの上記載置面又は当該載置面上に載置された集積済みの媒体上に叩き付ける叩付部と、 上記媒体の進行路よりも上側に持ち上げられた持上状態と、該進行路よりも下側に下降した下降状態との間を遷移し、上記放出部から上記集積空間内へ放出された上記媒体の一部分を上記叩付可能範囲内へ誘導する誘導体と を具え、 上記ステージの高さは、上記放出部から放出された上記媒体の先端が、上記ステージの上記載置面又は当該載置面に載置された上記集積済の媒体上にまで下降した場合であっても、上記誘導体が上記持上状態から上記下降状態に遷移したときに該誘導体の一部である当接部により上記媒体の末端を上記叩付部の上記叩付可能範囲内に押し入れ得る高さである ことを特徴とする媒体処理装置。」 第5 当審の判断 1 原査定について 原査定は、平成28年9月21日付け手続補正書でした補正について、請求項1において「上記媒体の一部分を上記叩付可能範囲内へ誘導する誘導体 」とあるのを「上記媒体の一部分を、上記集積済みの媒体に押圧すること無く、上記叩付可能範囲内へ誘導する誘導体」とする補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、というものである。 しかし、上記「第2」のとおり、本件補正により、本願の請求項1は補正され、この補正により、上記拒絶の理由は解消した。 2 独立特許要件について 2-1 引用文献の記載事項等 (1)引用文献1の記載事項等 (1-1)引用文献1の記載事項 本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2000-11233号公報)には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。 (1a)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、自動取引機に内部構成されるような紙葉類集積装置に関し、さらに詳しくは紙幣等の紙葉類を一枚ずつ高速に安定して取込み集積する紙葉類集積装置に関する。」 (1b)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかし、図9に示すように、長さが異なる紙葉類を混合集積したとき、短寸紙葉類82aは収納箱83の奥方に移動して羽根車85の回転接触領域外に離れて、羽根車85の強制集積作用を受けずに緩やかに落下するため次搬入紙葉類と衝突してジャムの発生を誘起する。 【0005】さらに、図10に示すように、収納箱83内では既集積紙葉類の上面に連続して紙葉類82が集積するため、折れ癖を有していたり、変形してふわふわしていると、収納箱83内の集積空間を狭めてしまい、規定の枚数を収納できなくなり、紙葉類の収納効率を低下させてしまう。 【0006】このため、図11に示すように、集積部111の前段に、回転羽根112間で紙葉類113を一枚ずつ確実に集積ガイドし、かつ回転羽根112の先端で紙葉類113を押えて集積空間を確保する集積ホイール114を配設し、この集積ホイール114の集積作用によりジャムの発生を抑制する紙葉類集積装置が知られている。ところが、この場合は回転羽根間に紙葉類を導くための集積ホイールの回転制御を必要とし、また大きな集積ホイールのために装置が大型化及びコスト高となる問題を有していた。 【0007】そこでこの発明は、集積部に導かれる紙葉類の搬入力に着目し、この紙葉類の搬入力を集積動作に利用して紙葉類を一枚ずつ安定して集積動作させることができる紙葉類の集積性能を高めた紙葉類集積装置の提供を目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、紙葉類を一枚ずつ集積部に取込んで集積する紙葉類集積装置であって、上記集積部の紙葉類を集積方向に押圧し、この集積部への紙葉類の搬入に基づいて押圧位置より退避する押圧手段を備えたことを特徴とする。 【0009】.請求項2記載の発明は、紙葉類を一枚ずつ集積部に取込んで集積する紙葉類集積装置であって、上記集積部の入口に配設され、ここに導かれた紙葉類の後端部をはたいて取込む羽根車と、集積部の紙葉類を集積方向に押圧し、この集積部への紙葉類の搬入力に連動して押圧位置より一時的に退避する押圧レバーとを備えたことを特徴とする。」 (1c)「【0017】 【実施例】この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。図1及び図2は紙幣集積装置11を示し、この紙幣集積装置11は紙幣A…を上下方向に一枚ずつ積重ねて集積する集積ケース12と、この集積ケース12の上部一側に開口する搬入口13に配設した紙幣取込み機構14と、紙幣Aの搬入動作に応じて上下動する押圧レバー15とから構成される。 【0018】上述の紙幣取込み機構14は、前段に紙幣Aを水平に挟持搬送する上下一対の挟持搬送ローラ16を配設し、ここに導かれた紙幣Aを集積ケース12の搬入口13へと挟持搬送し、この搬入口13を挟む上下位置に集積ローラ17と羽根車18を対設している。そして、前段から導かれた紙幣Aを集積ローラ17と羽根車18で挟持して一枚ずつ取込み処理し、またこの紙幣Aの取込み時に羽根車18で一枚ずつ強制的にはたき落して下方の集積ケース12内に速やかに降下させて集積する。 また、集積ケース12内には集積空間を確保するための押圧レバー15の一端を臨ませている。この押圧レバー15は集積ケース12の外方位置から内方位置に至る長尺板状を有し、この外方位置のレバー基端部15aを外部の支点ピン19を介して傾動自由に取付け、この支点ピン19を傾動支点にレバー先端部15bを上下動させて集積ケース12内の上方より臨ませている。 ・・・ 【0025】このように構成された紙幣集積装置11を、図1?図6の紙幣集積処理動作を参照して説明する。この紙幣集積装置11の集積待機時は、図1及び図2に示すように、押圧レバー15が集積ケース12内の既集積紙幣を上方から集積方向に押圧して圧縮状態に集積保持している。このため、集積ケース12内の上方には十分な集積空間を確保して多数枚の紙幣を集積許容する。 【0026】この待機状態で、今、搬入口13に紙幣Aが導かれると、この導かれた紙幣Aは、図3及び図4に示すように、紙幣取込み機構14の挟持搬送ローラ16に挟持されて水平に搬入し始め、この水平搬入時に紙幣Aの先端が押圧レバー下面の傾斜当接面15cに緩やかに傾斜当接し、このときの紙幣の搬入力に連動して押圧レバー15は支点ピン19を傾動支点に上方に押し上げられ、搬入紙幣に支障のない上方位置に一時退避する。 【0027】これにより、集積ケース12内の上方に集積に適した集積空間を確保し、紙幣Aは搬入口13より略水平方向に搬入してそのまま勢いよく直進し、集積ケース12奥方の垂直壁面に紙幣先端が当って搬入制止される。 【0028】このとき、図5に示すように、搬入された紙幣Aは後端部側が羽根車18ではたき落され、先端部側がレバー先端部15bで押圧されて、下方に向けて平面的に押し下げられて強制集積される。 【0029】また、連続して集積動作する場合は、図6に示すように、紙幣Aが搬入される毎に連動して押圧レバー15が上下動し、この押圧レバー15の上下動に伴う押圧・退避作用により一枚ずつ確実に集積動作を実行する。ことに、外国紙幣のように金種によって大きくサイズの異なる紙幣を混合集積する場合であっても集積ケース12内で確実に集積動作することができる。」 (1d)引用文献1には、以下の図が示されている。 (1-2)引用文献1に記載された発明 ア 摘示(1c)によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「紙幣集積装置11であって、 紙幣集積装置11は紙幣Aを上下方向に一枚ずつ積重ねて集積する集積ケース12と、この集積ケース12の上部一側に開口する搬入口13に配設した紙幣取込み機構14と、紙幣Aの搬入動作に応じて上下動する押圧レバー15とから構成され、 紙幣取込み機構14は、前段に紙幣Aを水平に挟持搬送する上下一対の挟持搬送ローラ16を配設し、ここに導かれた紙幣Aを集積ケース12の搬入口13へと挟持搬送し、この搬入口13を挟む上下位置に集積ローラ17と羽根車18を対設しており、前段から導かれた紙幣Aを集積ローラ17と羽根車18で挟持して一枚ずつ取込み処理し、紙幣Aの取込み時に羽根車18で一枚ずつ強制的にはたき落して下方の集積ケース12内に速やかに降下させて集積し、 集積ケース12内には集積空間を確保するための押圧レバー15の一端を臨ませ、 搬入口13に紙幣Aが導かれると、この導かれた紙幣Aは、紙幣取込み機構14の挟持搬送ローラ16に挟持されて水平に搬入し始め、この水平搬入時に紙幣Aの先端が押圧レバー15下面の傾斜当接面15cに緩やかに傾斜当接し、このときの紙幣の搬入力に連動して押圧レバー15は支点ピン19を傾動支点に上方に押し上げられ、搬入紙幣に支障のない上方位置に一時退避し、これにより、集積ケース12内の上方に集積に適した集積空間を確保し、紙幣Aは搬入口13より略水平方向に搬入してそのまま勢いよく直進し、集積ケース12奥方の垂直壁面に紙幣先端が当って搬入制止され、このとき、搬入された紙幣Aは後端部側が羽根車18ではたき落され、先端部側がレバー先端部15bで押圧されて、下方に向けて平面的に押し下げられて強制集積される、 紙幣集積装置11。」 (2)引用文献2の記載事項 本願出願前に頒布された刊行物である引用文献2(特開2009-46298号公報)には、次の記載がある。 (2a)「【0001】 本発明は、紙幣や伝票等の紙葉類を搬送して紙葉類収納部に収納する紙葉類集積装置に関する。 【背景技術】 【0002】 従来の紙幣や伝票等を取り扱う紙葉類集積装置は、紙葉類収納部へ放出された紙葉類の後端を集積方向の前方に湾曲した舌片を有する舌片ローラにより叩き落して、後続する紙葉類の先端の追突を防ぎ、次々に搬送されてくる紙葉類を紙葉類収納部に収納している。(例えば、特許文献1参照)。 【特許文献1】特開2006-168895号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 一般に舌片ローラの舌片は紙葉類を叩き落した後、紙葉類のくせ等を押えるために舌片の先端により紙葉類収納部に収納した紙葉類の上面を押さえつけるようにして構成される。 【0004】 しかしながら、上述した従来の技術においては、紙葉類に強い折れくせがあった場合など、叩き落す力が不足し、叩き落した紙葉類が集積部に落下する前に後続の紙葉類が搬送されて、集積不良を起こす原因となる。 【0005】 また、叩き落す力が相対的に強い場合は、集積した紙葉類の上面を押さえつけた後、紙葉類を集積面から巻き付けて集積不良を発生する場合があった。さらに、このような集積不良が生じた場合、分離機構を有する紙葉類集積装置の場合には集積した紙葉類を繰り出すときに繰り出し不良を起こす原因となる問題もあった。 【0006】 本発明は、上述の問題を解決するために、紙葉類収納部に集積した紙葉類に折れくせ等があっても、それらの紙葉類を整列させて収納する手段を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明は、前述の課題を解決するために次の手段を採用する。すなわち、紙葉類を積層し収納する紙葉類収納部と、前記紙葉類収納部内に積層された紙葉類を叩き、更に押さえつけることが可能な舌片を有する紙葉類集積装置であって、前記舌片を可撓性材料により形成すると共に、前記紙葉類を前記舌片により押さえつける際の力を増加させる手段を設ける。 【発明の効果】 【0008】 本発明の紙葉類集積装置によれば、紙葉類を押さえつける際の力を変化させる手段を設けたので、紙葉類の状態に応じて整列して集積することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0009】 以下、本発明に係る実施の形態例を、図面を用いて説明する。なお、図面に共通する要素には同一の符号を付す。 【実施例】 【0010】 (構成) 図1は実施例の紙葉類集積装置の要部構成を示す側面図であり、図2は実施例の紙葉類集積装置における紙葉類の取込部の構成を示す正面図である。なお、本実施例では、収納されている紙葉類を1枚ずつ分離して繰り出すことも可能な紙葉類分離繰出機能を有する装置で説明する。 【0011】 1は紙葉類集積装置であり、2は紙葉類収納部である。紙葉類収納部2はフロント板2aとこれに対応して設けられたリア板2b、フロント板2aとリア板2bの側方に設けられた一対の側面板2c、および下方に設けられた後述するステージ昇降用モータ23により昇降可能なステージ3より構成される箱体であって、ステージ3に紙葉類Pを集積して収納する。なお、図1は手前側の側面板2cを取り除いた状態を示している。 【0012】 4は繰出ローラであり、紙葉類収納部2の入口に設けられた繰出ローラシャフト5に所定の間隔で設置されて正逆可能に回転する。そして、繰出ローラ4の外周面の一部に紙葉類Pの搬送のために充分な摩擦力を有する高摩擦部材6が取り付けられると共に、円周方向全域にわたるリング状の溝部Cが2本併設されている。 【0013】 7は分離ローラであり、繰出ローラ4に対向配置されて繰出ローラシャフト5と略並行に配置された分離ローラシャフト8に軸支されている。そして、分離ローラ7の外周面の円周方向にリング状の溝部Dが一本設けられ、対向する繰出ローラ4の溝部Cと溝部Dの横に介在する凸部とが噛み合うように入れ子状に配置されている。この繰出ローラ4と分離ローラ7により、紙葉類収納部2に紙葉類Pを放出するためのローラ対が構成される。 【0014】 また、分離ローラ7には一方向回転部材としての図示しないワンウェイクラッチが設けられており、図1の矢印Aで示す紙葉類Pの集積方向にのみ回転可能となっており、反集積(分離繰出)方向のときは回転しない。 【0015】 10は舌片ローラであり、一方向回転部材としての図示しないワンウェイクラッチを介してそれぞれの分離ローラ7の外側(図2に示す左右)の分離ローラシャフト8に軸支されている。そして、紙葉類Pの集積方向へは分離ローラ7の回転と連動し、反集積方向には空転するように構成されている。 ・・・ 【0030】 (動作) 以上の構成により実施例の紙葉類集積装置は、以下のように動作する。本動作を図4ないし図7の紙葉類集積装置の動作説明図、および図8の紙葉類集積装置の動作フローチャート図を用いて以下詳細に説明する。なお、本説明では上面検知センサ19が紙葉類Pを検出すると、ステージ3を紙葉類P20枚に相当する量(一定量)だけ降下することとし、すでに降下動作してから紙葉類Pが5枚集積されている状態からの動作例とする。 【0031】 先ず、紙葉類Pを紙葉類集積装置1に挿入すると(ステップS1)、図示しない検出器がこれを検知し、制御部20は紙葉類Pの取り込み動作を開始させることになる。 ・・・ 【0039】 続けて集積が続けられると、紙葉類収納部2に設けられた上面センサ19により集積された紙葉類Pの集積上面位置を検知する(ステップS5)。 【0040】 このとき、制御部20は上面センサ19がONとなった場合、集積された紙葉類Pの集積枚数を確認する(ステップS6)。 【0041】 更に、規定枚数(20枚)の集積が完了したか否かの判定を行い(ステップS7)、規定枚数の集積が完了していない場合、すなわち、図5に示すように強い折れくせの多い紙葉類Pなどが集積され、隙間の空いた集積状態の可能性が高いと判断した場合は、規定枚数(20枚)に到らないうちに上面検知センサ19がONしたものと判断する。例えば、10枚でONしたときは折りくせの強い紙葉類Pが集積されたと判定する。 【0042】 制御部20は、反り発生シャフト9を図6に実線で示す紙葉類収納部2側に移動させ、舌片11aないし11dの回転軌跡空間T内に位置づける(ステップS8)。すると、図6に示すように反り発生シャフト9と舌片11dが当接し、可撓性を有する舌片11dが撓められ、舌片11cに示すようにその反発力により強い力で紙葉類Pを押さえつけ紙葉類Pの集積を行いステップS4ないしステップS7の動作を繰り返す。但し、この繰り返し動作時にはステップS8の反り発生シャフト9の更なる移動はない。 【0043】 なお、ステップS7において、規定枚数集積されていると判定された場合に、上面検知センサ19がONしているかチェックして、ONしている場合は次ステップS10へ移る(ステップS9)。上面検知センサ19がOFFの場合はステップS2に戻り、反り発生シャフト9を初期位置に戻して以降の動作を繰り返す。 【0044】 制御部20は、反り発生シャフト9による強い力で押さえつけても上面検知センサ19がONしている場合は集積された紙葉類Pの上面高さが規定枚数以下(20枚)でも、これ以上の集積を行うとジャムする可能性があるとして、ステージ昇降用モータ23を駆動してステージ3を一定量降下させる(ステップS10)。」 (2b)引用文献2には、以下の図が示されている。 2-2 対比・判断 2-2-1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「紙幣A」は、本願発明1の「媒体」に相当する。 イ 引用発明の「紙幣Aを上下方向に一枚ずつ積重ねて集積する集積ケース12」は、「集積ケース12内の上方に集積に適した集積空間を確保」するように構成されるものであるから、上記「集積ケース12」の内部に、紙幣Aを収容する内部空間が形成されていることは明らかである。 したがって、引用発明の上記「集積ケース12」は、上記アをも踏まえると、本願発明1の「内部に形成された内部空間に媒体を収容するフレーム」に相当するものといえる。 ウ 本願明細書の「また紙幣搬送ローラ35は、このとき紙幣BLが搬送路W1上にあれば、当該紙幣BLを紙幣搬送ローラ36をとの間に挟み込んで前方へ送り出し、紙幣搬送ローラ35及び36の当接点である放出点Pから当該紙幣BLを集積空間SC内へ放出する。以下では、紙幣搬送ローラ35及び36を合わせて放出部37と呼ぶ。」(【0065】)との記載によれば、本願発明1の「放出部」とは、少なくとも「搬送路W1上」の「紙幣BL」を「前方へ送り出」すとともに、「当該紙幣BLを集積空間SC内へ放出する」機能を備えた構成と理解することができる。 ここで、引用発明の「紙幣取込み機構14」は、「前段に紙幣Aを水平に挟持搬送する上下一対の挟持搬送ローラ16を配設し、ここに導かれた紙幣Aを集積ケース12の搬入口13へと挟持搬送し、この搬入口13を挟む上下位置に集積ローラ17と羽根車18を対設しており、前段から導かれた紙幣Aを集積ローラ17と羽根車18で挟持して一枚ずつ取込み処理し、紙幣Aの取込み時に羽根車18で一枚ずつ強制的にはたき落して下方の集積ケース12内に速やかに降下させて集積」するものであるから、上記「搬入口13を挟む上下位置に」「対設して」設けられた「集積ローラ17と羽根車18」が、「前段から導かれた紙幣Aを」「挟持して一枚ずつ取込み処理」することで、搬送路にある紙幣Aを前方へ送り出すとともに、当該紙幣Aを集積ケース12の内部空間内へ放出することは技術的に明らかである。 したがって、引用発明の「集積ローラ17」及び「羽根車18」と、本願発明1の「上記内部空間のうち上記ステージの上記載置面側である集積空間内へ上記媒体を放出する放出部」とは、上記ア、イをも踏まえると、「上記内部空間の集積空間内へ上記媒体を放出する放出部」の限度で共通するものといえる。 エ 引用発明は、「搬入された紙幣Aは後端部側が羽根車18ではたき落され」るものであるから、上記「羽根車18」が、紙幣Aの一部を、所定の叩付可能範囲にあるときに、当該紙幣の一部を集積済みの紙幣上に叩き付けることは技術的に明らかである。 したがって、引用発明の「羽根車18」と、本願発明1の「上記媒体の一部が所定の叩付可能範囲にあるときに、当該媒体の一部を上記ステージの上記載置面又は当該載置面上に載置された集積済みの媒体上に叩き付ける叩付部」とは、上記アをも踏まえると、「上記媒体の一部が所定の叩付可能範囲にあるときに、集積済みの媒体上に叩き付ける叩付部」の限度で共通するものといえる。 オ 引用発明の「紙幣集積装置11」は、本願発明1の「媒体集積装置」に相当する。 したがって、本願発明1と引用発明とは、 「内部に形成された内部空間に媒体を収容するフレームと、 上記内部空間の集積空間内へ上記媒体を放出する放出部と、 上記媒体の一部が所定の叩付可能範囲にあるときに、集積済みの媒体上に叩き付ける叩付部と、 を具える、 媒体集積装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点> 本願発明1は、「上記内部空間内を上方向又は下方向へ移動可能であり、載置面上に上記媒体を載置して集積するステージ」を備えるものであって、「放出部」が、上記内部空間のうち「上記ステージの上記載置面側である」集積空間内へ媒体を放出し、「叩付部」が、「当該媒体の一部を上記ステージの上記載置面又は当該載置面上に載置された」集積済みの媒体上に叩き付けるものであり、さらに、「上記媒体の進行路よりも上側に持ち上げられた持上状態と、該進行路よりも下側に下降した下降状態との間を遷移し、上記放出部から上記集積空間内へ放出された上記媒体の一部分を上記叩付可能範囲内へ誘導する誘導体」を備えるものであって、「上記ステージの高さは、上記放出部から放出された上記媒体の先端が、上記ステージの上記載置面又は当該載置面に載置された上記集積済の媒体上にまで下降した場合であっても、上記誘導体が上記持上状態から上記下降状態に遷移したときに該誘導体の一部である当接部により上記媒体の末端を上記叩付部の上記叩付可能範囲内に押し入れ得る高さである」のに対し、 引用発明は、集積ケース12の内部空間内に「ステージ」を備えるものではないが、「紙幣Aの搬入動作に応じて上下動する押圧レバー15」を備え、「搬入口13に紙幣Aが導かれると、この導かれた紙幣Aは、紙幣取込み機構14の挟持搬送ローラ16に挟持されて水平に搬入し始め、この水平搬入時に紙幣Aの先端が押圧レバー15下面の傾斜当接面15cに緩やかに傾斜当接し、このときの紙幣の搬入力に連動して押圧レバー15は支点ピン19を傾動支点に上方に押し上げられ、搬入紙幣に支障のない上方位置に一時退避し、これにより、集積ケース12内の上方に集積に適した集積空間を確保し、紙幣Aは搬入口13より略水平方向に搬入してそのまま勢いよく直進し、集積ケース12奥方の垂直壁面に紙幣先端が当って搬入制止され、このとき、搬入された紙幣Aは後端部側が羽根車18ではたき落され、先端部側がレバー先端部15bで押圧されて、下方に向けて平面的に押し下げられて強制集積される」ものである点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 ア 引用発明は、摘示(1b)のとおり、「長さが異なる紙葉類を混合集積したとき、短寸紙葉類82aは収納箱83の奥方に移動して羽根車85の回転接触領域外に離れて、羽根車85の強制集積作用を受けずに緩やかに落下するため次搬入紙葉類と衝突してジャムの発生を誘起する。」(段落【0004】)、及び「収納箱83内では既集積紙葉類の上面に連続して紙葉類82が集積するため、折れ癖を有していたり、変形してふわふわしていると、収納箱83内の集積空間を狭めてしまい、規定の枚数を収納できなくなり、紙葉類の収納効率を低下させてしまう。」(段落【0005】)といった従来技術の問題に鑑み、「集積部に導かれる紙葉類の搬入力に着目し、この紙葉類の搬入力を集積動作に利用して紙葉類を一枚ずつ安定して集積動作させることができる紙葉類の集積性能を高めた紙葉類集積装置の提供」(段落【0007】)を解決課題とするものである。 そして、かかる課題を解決するために、引用発明は、少なくとも「紙幣Aの搬入動作に応じて上下動する押圧レバー15」を備えたものと理解することができる(段落【0008】、【0009】)。 イ 他方、引用文献2には、摘示(2a)のとおり、「紙幣や伝票等の紙葉類を搬送して紙葉類収納部に収納する紙葉類集積装置」に関する技術について開示されており(段落【0001】)、具体的には、 紙葉類を積層し収納する紙葉類収納部2と(段落【0007】、【0011】)、 紙葉類収納部2の下方に設けられた昇降可能なステージ3と(段落【0011】)、 紙葉類収納部2に紙葉類Pを放出するためのローラ対であって(段落【0013】)、紙葉類収納部2の入口に設けられた繰出ローラシャフト5に設置されて回転する繰出ローラ4(段落【0012】)及び繰出ローラ4に対向配置されて繰出ローラシャフト5と略並行に配置された分離ローラシャフト8に軸支されている分離ローラ7(段落【0013】)と、 分離ローラ7の外側の分離ローラシャフト8に軸支され、紙葉類Pの集積方向へは分離ローラ7の回転と連動し反集積方向には空転する舌片ローラ10と(段落【0015】)、 を備える紙葉類集積装置1において、 紙葉類収納部2に設けられた上面センサ19により集積された紙葉類Pの集積上面位置を検知すること(段落【0039】)、 制御部20は上面センサ19がONとなった場合、集積された紙葉類Pの集積枚数を確認し(段落【0040】)、さらに、規定枚数の集積が完了したか否かの判定を行い、規定枚数の集積が完了していない場合(強い折れくせの多い紙葉類Pなどが集積され、隙間の空いた集積状態の可能性が高いと判断した場合)は、規定枚数に到らないうちに上面検知センサ19がONしたものと判断し(段落【0041】)、制御部20は、反り発生シャフト9を紙葉類収納部2側に移動させ、舌片11aないし11dの回転軌跡空間T内に位置づけること、すると、反り発生シャフト9と舌片11dが当接し、可撓性を有する舌片11dが撓められ、舌片11cに示すようにその反発力により強い力で紙葉類Pを押さえつけ紙葉類Pの集積を行うこと(段落【0042】)、 制御部20は、反り発生シャフト9による強い力で押さえつけても上面検知センサ19がONしている場合、集積された紙葉類Pの上面高さが規定枚数以下でもこれ以上の集積を行うとジャムする可能性があるとして、ステージ昇降用モータ23を駆動してステージ3を一定量降下させる(段落【0044】)、という技術(以下「引用文献2に記載された技術事項」ということもある。)が記載されている。 ウ ここで、引用文献2に記載された技術事項は、紙葉類収納部へ放出された紙葉類の後端を、舌片ローラにより叩き落して収納する紙葉類集積装置において(段落【0002】)、紙葉類に強い折れくせがあった場合などに生じる問題、例えば、叩き落す力が不足し、叩き落した紙葉類が集積部に落下する前に後続の紙葉類が搬送されて集積不良を起こす等の問題に鑑みて(段落【0004】)、紙葉類収納部に集積した紙葉類に折れくせ等があっても、それらの紙葉類を整列させて収納する手段を提供する、という課題を解決するための技術と理解することができるが(段落【0006】)、引用発明は、上記アで述べたとおり、そのような課題は「押圧レバー15」の採用によって既に解決済みということができるから、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用する積極的な動機付けは見いだせない。 また、引用発明の「押圧レバー15」は、「集積ケース12内の上方に集積に適した集積空間を確保」するものであって、「搬入された紙幣A」は、その「先端部側がレバー先端部15bで押圧されて、下方に向けて平面的に押し下げられて強制集積される」というものであるから、本願発明1の「上記放出部から上記集積空間内へ放出された上記媒体の一部分を上記叩付可能範囲内へ誘導する誘導体」とは、その機能において異なることが明らかであるところ、上記「押圧レバー15」は、集積ケース12自体の集積空間を考慮し、紙幣の先端部を押圧し得るようにその配設位置が最適化されたものというべきであるから、そのような集積ケース12内に、引用文献2に記載された「昇降可能なステージ3」を配置することは、むしろ阻害要因が存在するということもできる。 さらに、引用文献2に記載された「昇降可能なステージ3」の昇降を制御する制御部20は、上面センサ19により集積された紙葉類Pの集積上面位置を検知し、反り発生シャフト9による強い力で押さえつけても上面検知センサ19がONしている場合、集積された紙葉類Pの上面高さが規定枚数以下でもこれ以上の集積を行うとジャムする可能性があるとして、ステージ昇降用モータ23を駆動してステージ3を一定量降下させる、というものであるから、上記「昇降可能なステージ3」は、上記相違点にかかる本願発明1の「上記ステージの高さは、上記放出部から放出された上記媒体の先端が、上記ステージの上記載置面又は当該載置面に載置された上記集積済の媒体上にまで下降した場合であっても、上記誘導体が上記持上状態から上記下降状態に遷移したときに該誘導体の一部である当接部により上記媒体の末端を上記叩付部の上記叩付可能範囲内に押し入れ得る高さである」ように構成されるものでもない。 したがって、引用発明に、上記引用文献2に記載された技術事項を適用しても、上記相違点に係る本願発明1の構成には至らない。 エ 以上のとおり、上記相違点に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に想到し得るものということはできないから、本願発明1は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2-2-2 本件発明2?9について 本件発明2?9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定して発明を特定するものであるから、本件発明1と同様に、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 2-2-3 本件発明10について 本願発明10は、実質的に、上記相違点に係る本願発明1の構成を備えているから、本件発明1と同様に、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-01-21 |
出願番号 | 特願2013-24471(P2013-24471) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G07D)
P 1 8・ 55- WY (G07D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 井出 和水 |
特許庁審判長 |
和田 雄二 |
特許庁審判官 |
氏原 康宏 中川 真一 |
発明の名称 | 媒体集積装置及び媒体処理装置 |
代理人 | 奥田 康一 |
代理人 | 田辺 恵基 |