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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1348326
審判番号 不服2018-143  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-05 
確定日 2019-01-23 
事件の表示 特願2015-501635「ゲームマシン、それに用いる制御方法及び、コンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日国際公開、WO2013/141843、平成27年 5月18日国内公表、特表2015-513944〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月20日(米国受理)を国際出願日とする出願であって、平成28年1月21日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月25日付けで手続補正がなされ、同年10月26日付けで拒絶理由通知(最後)がされ、平成29年3月29日付けで手続補正がなされ、同年8月25日付けで同年3月29日付けの手続補正が却下されると同時に、拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年1月5日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 平成30年1月5日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の【請求項1】を、下記(2)に示す本件補正後の【請求項1】へと補正することを含むものである。

(1)本件補正前の【請求項1】
「所定の領域を少なくとも一つのオブジェクトが移動し、当該オブジェクトが特典付与位置に到達した場合に所定の特典を付与するゲームマシンであって、
スロットゲームをプレイヤに提供するステーションユニットと、
前記スロットゲーム中に所定の遊戯条件が満たされた場合に前記所定の領域を含むプッシャーゲームを開始するセンター制御ユニットと、
を備え、前記センター制御ユニットは、
前記所定の領域における前記オブジェクトの状態を判別するためのオブジェクト情報を取得するオブジェクト情報取得手段と、
前記オブジェクト情報取得手段が取得した前記オブジェクト情報に基づいて、前記所定の領域における前記オブジェクトの状態を判別する状態判別手段と、
前記状態判別手段の判別結果に基づいて、前記所定の領域の前記オブジェクトの状態を評価する状態評価手段と、
前記状態評価手段の評価結果に基づいて、当該評価結果が変化するように、前記所定の領域の前記オブジェクトの状態に変化を付与する変化付与手段と、を有する、ゲームマシン。」

(2)本件補正後の【請求項1】
「所定の領域を少なくとも一つのオブジェクトが移動し、当該オブジェクトが特典付与位置に到達した場合に所定の特典を付与するゲームマシンであって、
スロットゲームをプレイヤに提供するステーションユニットと、
前記スロットゲーム中に所定の遊戯条件が満たされた場合に前記所定の領域を含むプッシャーゲームを開始するセンター制御ユニットと、
を備え、前記センター制御ユニットは、
前記所定の領域における前記オブジェクトの状態を判別するためのオブジェクト情報を取得するオブジェクト情報取得手段と、
前記オブジェクト情報取得手段が取得した前記オブジェクト情報に基づいて、前記所定の領域における前記オブジェクトの状態を判別する状態判別手段と、
前記状態判別手段の判別結果に基づいて、前記所定の領域の前記オブジェクトの状態を評価する状態評価手段と、
前記状態評価手段の評価結果に基づいて、当該評価結果が変化するように、前記所定の領域の前記オブジェクトの状態に変化を付与する変化付与手段と、を有し、
前記変化付与手段は、少なくとも1つの前記オブジェクトの状態が所定の条件を満たすと判定された場合に、少なくとも1つの追加オブジェクトを前記所定の領域に追加する、ゲームマシン。」(下線は当審で付した。以下同じ。)

2 補正目的について
本件補正により、本件補正前の請求項1に、「前記変化付与手段は、少なくとも1つの前記オブジェクトの状態が所定の条件を満たすと判定された場合に、少なくとも1つの追加オブジェクトを前記所定の領域に追加する」と補正する事項(以下「補正事項」という。)が追加されたものである。
上記補正事項は、本件補正前の請求項1の「ゲームマシン」における「変化付与手段」を、「前記変化付与手段は、少なくとも1つの前記オブジェクトの状態が所定の条件を満たすと判定された場合に、少なくとも1つの追加オブジェクトを前記所定の領域に追加する」と具体的に特定したものであるから、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に係る「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成30年1月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の【請求項1】」に記載したとおりのものと認める。

(2)引用刊行物
ア 刊行物1
本願の出願日前の平成23年6月30日に頒布された特開2011-125460号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ゲーム空間においてメダルとボール等の種類の異なる複数の遊戯媒体を扱うゲームの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
メダルを扱う遊戯装置の一例として、プッシャが往復動するフィールド(以下、「メダルフィールド」ともいう。)を備えたメダル遊戯装置がある。プレイヤ(遊戯者)は、メダル遊戯装置へメダルを投入することにより、メダルフィールド上のメダルの堆積状態を変化させることができる。当該変化に応じてメダルフィールドにてプッシャの押圧力を直接あるいは間接的に受けるメダルが変化することで、メダルフィールドからいずれかのメダルが落下し得る。メダル遊戯装置は、メダルフィールドから落下したメダル(または落下したメダルに相当する枚数のメダル)をプレイヤに払い出すことができる。」
(イ)「【0247】
(ゲーム内容)
以下、本実施形態のゲーム装置1のゲーム内容(ルール)の一例について説明する。
ゲーム装置1において、共通フィールド81には一定量のメダルと、複数の大ボールと、複数の小ボールとが載置されている。共通フィールド81は、ゲーム制御装置2の制御により、例えば一定速度で回転している。一方、個別フィールド40には、例えば、一定量のメダルと複数の小ボールとが載置されている。個別フィールド40に載置可能な小ボール数は、個別フィールド40の面積や小ボールのサイズにもよるが、例えば30個程度である。
【0248】
大ボールには、例えば赤、青および黄の3色があり、小ボールには、例えば黄、紫、桃および緑の4色がある。本例のゲーム装置1では、個別フィールド40から落下溝60へ落下させたボールの大小や色の相違、落下させた順序等によって、プレイヤが獲得可能な配当等の特典を変えることができる。」
(ウ)「【0256】
このように、ゲーム装置1においては、共通フィールド(以下、「センターフィールド」ともいう)81に存在する大ボールを個別フィールド(以下、「サテライトフィールド」ともいう)40に導き入れて、落下溝60に落下させることで、プレイヤは大きな特典(大量のメダル)あるいはそのチャンスを獲得できる。」
(エ)「【0284】
(ボール振り分け制御)
上述のように、サテライトフィールド40から特定のボールが落下溝60に落下した場合にそのボールの価値に応じた配当を抽選により(あるいは抽選なしに)プレイヤに付与するようなゲームルールにおいては、サテライトフィールド40に存在する小ボール数が少なくなるほど、プレイヤの配当獲得に関する期待が失われ、ゲーム継続の意欲を失う傾向にある。したがって、サテライトフィールド40に存在する小ボール数を制御可能なことは、プレイヤの配当獲得に関する意欲を高める上で有利であり、ひいては、ゲーム装置1の稼働率や収益の向上につながる。
【0285】
サテライトフィールド40の小ボール数は、ボール循環装置90の一部を成すボール振り分け装置95によって振り分け先(センターフィールド81及びサテライトフィールド40のいずれに回収した小ボールを戻すか)を制御する(例えば、既述のフラップ部材953の開閉状態を制御する)ことで調整することができる。
【0286】
ここで、小ボールの振り分け先の決定は、乱数等を用いた抽選によることとしてもよいが、センターフィールド81及びサテライトフィールド40に戻されるボール数に偏りが生じて、サテライトフィールド40に存在するボール数が極端に少なくなったり、場合によっては0になったりするおそれがある。
【0287】
そこで、ボール振り分け制御の一例として、サテライトフィールド40に設けたセンサ等を用いて計数(実測)した小ボール数、あるいは、サテライトフィールド40に向かうボールスロープ91bに設けたセンサ等を用いて計数(実測)した、ボール供給装置(ボール循環装置90)からサテライトフィールド40に供給された小ボール数を基に、サテライトフィールド40に存在する小ボールが一定数になるように制御する方法が考えられる。」
(オ)上記(ウ)より、個別フィールドは、サテライトフィールドに対応することがわかる。

そうすると、上記(ア)乃至(オ)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「ゲーム装置1において、サテライトフィールド40には、一定量のメダルと複数の小ボールとが載置され、サテライトフィールド40から落下溝60へ落下させたボールの色の相違、落下させた順序等によって、プレイヤが獲得可能な配当等の特典を変えることができ、サテライトフィールド40の小ボール数は、ボール循環装置90の一部を成すボール振り分け装置95によって振り分け先(センターフィールド81及びサテライトフィールド40のいずれに回収した小ボールを戻すか)を制御し、サテライトフィールド40に設けたセンサ等を用いて計数(実測)した小ボール数を基に、サテライトフィールド40に存在する小ボールが一定数になるように制御する、ゲーム装置1。」

イ 刊行物2
本願の出願日前の平成21年10月29日に頒布された特開2009-247359号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スロット遊技装置、パチスロ遊技装置、パチンコ遊技装置等の遊技機に関する。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1?3に記載の遊技機は、遊技が繰り返し実行された場合、遊技者にとって新味のある遊技ではなくなり、遊技者を飽きさせてしまう可能性があるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、遊技者に遊技の継続意欲を向上させる遊技機を提供することである。」
(ウ)「【0024】
(遊技機1の機械的構成)
図1は、本実施形態に係る遊技機1の概略構成を示す外観斜視図である。遊技機1は、カジノなどの遊技場に設置されるアップライト型のスロットマシンである。遊技機1は、所定の遊技態様を実行するための電気的又は機械的部品を収容するための筐体3を有している。筐体3は、縦長形状に形成されている。プレイヤーの遊技操作に基づいた遊技情報を表示するための表示部4として、例えば、上段側の可変表示部4Aと中段側の可変表示部4Bと下段側の可変表示部4Cとがあり、縦長の筐体3の前面には、各表示部4A?4Cが取り付けられている。
【0025】
上段側の可変表示部4Aは、単位ゲーム中にプレイヤーが注視する表示部であり、筐体3の前面扉に固定された透明な上側液晶パネル5Aを有している。この上側液晶パネル5Aには、単位ゲーム中に様々な演出画像が表示される。例えば、上側液晶パネル5Aでは、入賞時などに動画の演出が行われる。
【0026】
また、上側液晶パネル5Aには、後述のコイン落下ゲームユニット100に関する演出及び報知画像が表示されるようになっている。上側液晶パネル5Aの表示状態については、後に詳述する。」
(エ)「【0056】
(シンボル、ウイニングコンビネーション等)
スロット遊技において、中央液晶パネル5Bの表示窓151?153に表示されるシンボル180は、図5に示すように、22個のシンボルによりシンボル列を形成している。各シンボル列を構成するシンボルには、00?21の何れかのコード番号が付与される。各シンボル列は、『SUN』181、『HEART』182、『MOON』183、及び、『BONUS』190の絵柄のシンボルと、『J』184、『Q』185、及び『K』186の字柄のシンボルとが組み合わされて構成されている。」
(オ)「【0062】
また、本実施の形態では、ペイラインL上に『SUN』181のウイニングコンビネーションが成立した場合、セカンドゲームが開始されるようになっている。セカンドゲームは、上側液晶パネル5Aに落下口105の順番が表示され、コイン落下ゲームユニット100において表示された順番通りコイン115を落下口105に通過されることでジャックポットが成立するゲームである。」

そうすると、上記(ア)乃至(オ)の記載事項から、刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「カジノなどの遊技場に設置されるアップライト型のスロットマシンである遊技機1であって、遊技機1は、所定の遊技態様を実行するための電気的又は機械的部品を収容するための筐体3を有し、筐体3は、縦長形状に形成され、プレイヤーの遊技操作に基づいた遊技情報を表示するための表示部4として、例えば、上段側の可変表示部4Aと中段側の可変表示部4Bと下段側の可変表示部4Cとがあり、縦長の筐体3の前面には、各表示部4A?4Cが取り付けられており、上段側の可変表示部4Aは、単位ゲーム中にプレイヤーが注視する表示部であり、筐体3の前面扉に固定された透明な上側液晶パネル5Aを有しており、上側液晶パネル5Aには、後述のコイン落下ゲームユニット100に関する演出及び報知画像が表示されるようになっており、
スロット遊技において、中央液晶パネル5Bの表示窓151?153に表示されるシンボル180は、22個のシンボルによりシンボル列を形成しており、各シンボル列を構成するシンボルには、00?21の何れかのコード番号が付与され、各シンボル列は、『SUN』181、『HEART』182、『MOON』183、及び、『BONUS』190の絵柄のシンボルと、『J』184、『Q』185、及び『K』186の字柄のシンボルとが組み合わされて構成されており、ペイラインL上に『SUN』181のウイニングコンビネーションが成立した場合、セカンドゲームが開始されるようになっており、
セカンドゲームは、上側液晶パネル5Aに落下口105の順番が表示され、コイン落下ゲームユニット100において表示された順番通りコイン115を落下口105に通過されることでジャックポットが成立するゲームである、遊技機1。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、
ア 後者の「小ボール」は、サテライトフィールド40から落下溝60へ落下(移動)するものであるから、前者の「オブジェクト」に相当する。
イ 後者の「サテライトフィールド40」は、複数の小ボールが載置され、そこから落下溝60へ小ボールが落下(移動)していくところであるから、前者の「所定の領域」に相当する。
ウ 後者の「サテライトフィールド40の小ボール数」は、その数によって、所定の領域におけるオブジェクトの状態を判別することができるものであるから、前者の「所定の領域におけるオブジェクトの状態を判別するためのオブジェクト情報」に相当し、また、後者の「サテライトフィールド40に設けたセンサ」は、小ボール数を計測(実測)するものであるから、前者の「所定の領域におけるオブジェクトの状態を判別するためのオブジェクト情報を取得するオブジェクト情報取得手段」に相当する。
エ 後者の「配当等の特典」、及び「ゲーム装置1」は、それぞれ、前者の「所定の特典」、及び「ゲームマシン」に相当する。
オ 後者の「落下溝60」は、サテライトフィールド40から小ボールを落下させるところであって、落下させたボールの色の相違、落下させた順序等によって、プレイヤが獲得可能な配当等の特典を変えることができるところであるから、前者の「特典付与位置」に相当する。
カ 後者の「ゲーム装置1」は、サテライトフィールド40から落下溝60へ落下させたボールの色の相違、落下させた順序等によって、プレイヤが獲得可能な配当等の特典を変えることができるものであって、上記ア乃至オを総合すると、後者の「ゲーム装置1」は、前者の「所定の領域を少なくとも一つのオブジェクトが移動し、当該オブジェクトが特典付与位置に到達した場合に所定の特典を付与するゲームマシン」に相当する。
キ 後者の「サテライトフィールド40に存在する小ボールが一定数になるように制御する」について、小ボールがサテライトフィールド40から落下溝60へ落下すると、サテライトフィールド40に存在する小ボールの数が減少することは明らかであるから、後者の「一定数になるように」とは、小ボールの数が一定数より減少した場合に、サテライトフィールド40に小ボールを供給し、小ボールの数が減少した状態を変化させること、すなわち、オブジェクトの状態に変化を付与するといえるから、後者の「『サテライトフィールド40に存在する小ボールが一定数になるように制御する』『ボール振り分け装置95』」は、前者の「所定の領域のオブジェクトの状態に変化を付与する変化付与手段」に相当する。

したがって、両者は、
「所定の領域を少なくとも一つのオブジェクトが移動し、当該オブジェクトが特典付与位置に到達した場合に所定の特典を付与するゲームマシンであって、
前記所定の領域における前記オブジェクトの状態を判別するためのオブジェクト情報を取得するオブジェクト情報取得手段と、
前記所定の領域の前記オブジェクトの状態に変化を付与する変化付与手段と、を有する、ゲームマシン。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、「スロットゲームをプレイヤに提供するステーションユニットと、スロットゲーム中に所定の遊戯条件が満たされた場合に所定の領域を含むプッシャーゲームを開始するセンター制御ユニット」と、を備えるものであるのに対し、引用発明は、そのようなものを備えていない点。

[相違点2]
本願補正発明が、「前記オブジェクト情報取得手段が取得した前記オブジェクト情報に基づいて、前記所定の領域における前記オブジェクトの状態を判別する状態判別手段」と、「前記状態判別手段の判別結果に基づいて、前記所定の領域の前記オブジェクトの状態を評価する状態評価手段」と、を備えるものであるのに対し、引用発明は、そのようなものを備えているのか定かでない点。

[相違点3]
本願補正発明の変化付与手段が、「状態評価手段の評価結果に基づいて、当該評価結果が変化するように」し、「少なくとも1つのオブジェクトの状態が所定の条件を満たすと判定された場合に、少なくとも1つの追加オブジェクトを所定の領域に追加する」ものであるのに対し、引用発明は、そのようなものか定かでない点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。
ア [相違点1]について
引用発明2の「スロット遊技」、及び「アップライト型のスロットマシンである遊技機1」は、それぞれ、本願補正発明の「スロットゲーム」、及び「ステーションユニット」に相当する。
引用発明2の「セカンドゲーム」は、「上側液晶パネル5Aに落下口105の順番が表示され、コイン落下ゲームユニット100において表示された順番通りコイン115を落下口105に通過されることでジャックポットが成立するゲーム」であるから、本願補正発明の「プッシャーゲーム」に相当する。
引用発明2は、「スロット遊技において、中央液晶パネル5Bの表示窓151?153に表示されるシンボル180は、22個のシンボルによりシンボル列を形成しており、各シンボル列を構成するシンボルには、00?21の何れかのコード番号が付与され、各シンボル列は、『SUN』181、『HEART』182、『MOON』183、及び、『BONUS』190の絵柄のシンボルと、『J』184、『Q』185、及び『K』186の字柄のシンボルとが組み合わされて構成されており、ペイラインL上に『SUN』181のウイニングコンビネーションが成立した場合、セカンドゲームが開始されるようになって」いるものであって、上記「ペイラインL上に『SUN』181のウイニングコンビネーションが成立した場合」とは、本願補正発明の「スロットゲーム中に所定の遊戯条件が満たされた場合」に相当するから、引用発明2は、本願補正発明の「スロットゲーム中に所定の遊戯条件が満たされた場合に所定の領域を含むプッシャーゲームを開始するセンター制御ユニット」を有するものであることはあきらかである。
そうすると、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明2に示されているといえる。
そして、引用発明1と、引用発明2とは、遊戯装置という技術分野に属する点で共通し、ゲームの継続意欲を損なわない、もしくは向上させることを課題とする点で共通するものであるから(上記「(2)ア(エ)【0284】」、及び「(2)イ(イ)【0008】」参照。)、引用発明1に、引用発明2を適用することは当業者が容易に想到し得るものである。
そうすると、引用発明1に、引用発明2を適用し、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

イ [相違点2]、及び[相違点3]について
引用発明1の「サテライトフィールド40に存在する小ボール数が一定数になるように制御する」とは、サテライトフィールド40に存在する小ボール数を計数し、該計数値と一定数との比較から、小ボール数が一定数から不足しているか否かを判別するとともに、不足数を算出して評価結果とし、該評価結果に基づいて、該評価結果が変化するように、ボール供給装置(ボール循環装置90)から小ボールを供給制御し、小ボール数が一定数になるようにするものと解するのが自然である。
そして、上記“計数値と一定数との比較から、小ボール数が一定数から不足しているか否かを判別する”とは、本願補正発明の「前記オブジェクト情報取得手段が取得した前記オブジェクト情報に基づいて、前記所定の領域における前記オブジェクトの状態を判別する」に相当し、また、上記“不足数を算出して評価結果とし”とは、本願補正発明の「状態判別手段の判別結果に基づいて、前記所定の領域の前記オブジェクトの状態を評価する」に相当するから、引用発明1は、上記相違点2に係る本願補正発明の「前記オブジェクト情報取得手段が取得した前記オブジェクト情報に基づいて、前記所定の領域における前記オブジェクトの状態を判別する状態判別手段」と、「前記状態判別手段の判別結果に基づいて、前記所定の領域の前記オブジェクトの状態を評価する状態評価手段」と、を有しているといえるから、上記相違点2は実質的な相違点ではない。
また、上記のとおり、引用発明1は、評価結果に基づいて、評価結果が変化するように、ボール供給装置(ボール循環装置90)から小ボールを供給制御し、小ボール数が一定数になるようにするものと解するのが自然であるから、引用発明1は、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項である「状態評価手段の評価結果に基づいて、当該評価結果が変化するように」し、「少なくとも1つのオブジェクトの状態が所定の条件を満たすと判定された場合に、少なくとも1つの追加オブジェクトを所定の領域に追加する」変化付与手段を有しているといえるから、上記相違点3は実質的な相違点ではない。

そして、本願補正発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1、及び引用発明2から、当業者が予測しうる範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ない。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年4月25日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「所定の領域を少なくとも一つのオブジェクトが移動し、当該オブジェクトが特典付与位置に到達した場合に所定の特典を付与するゲームマシンであって、
スロットゲームをプレイヤに提供するステーションユニットと、
前記スロットゲーム中に所定の遊戯条件が満たされた場合に前記所定の領域を含むプッシャーゲームを開始するセンター制御ユニットと、
を備え、前記センター制御ユニットは、
前記所定の領域における前記オブジェクトの状態を判別するためのオブジェクト情報を取得するオブジェクト情報取得手段と、
前記オブジェクト情報取得手段が取得した前記オブジェクト情報に基づいて、前記所定の領域における前記オブジェクトの状態を判別する状態判別手段と、
前記状態判別手段の判別結果に基づいて、前記所定の領域の前記オブジェクトの状態を評価する状態評価手段と、
前記状態評価手段の評価結果に基づいて、当該評価結果が変化するように、前記所定の領域の前記オブジェクトの状態に変化を付与する変化付与手段と、を有する、ゲームマシン。」(以下「本願発明」という。)

2 引用刊行物
平成29年8月25日付けの拒絶査定に引用された刊行物、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用刊行物」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 3 (1)本願補正発明」で検討した本願補正発明の「前記変化付与手段は、少なくとも1つの前記オブジェクトの状態が所定の条件を満たすと判定された場合に、少なくとも1つの追加オブジェクトを前記所定の領域に追加する」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比した場合の相違点は、実質的に、上記「第2 3 (3)対比」で挙げた相違点1乃至相違点3となるから、上記「第2 3 (4)判断」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-08-21 
結審通知日 2018-08-28 
審決日 2018-09-10 
出願番号 特願2015-501635(P2015-501635)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宇佐田 健二  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤本 義仁
森次 顕
発明の名称 ゲームマシン、それに用いる制御方法及び、コンピュータプログラム  
代理人 黒木 義樹  
代理人 阿部 寛  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 大森 鉄平  

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