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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1348440
審判番号 不服2017-6737  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-10 
確定日 2019-02-25 
事件の表示 特願2015-515396「位置合わせ誤差を求めるための装置と方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日国際公開,WO2013/182236,平成27年 9月 3日国内公表,特表2015-525477,請求項の数(7)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年(平成24年)6月6日を国際出願日とする出願であって,平成28年4月20日付け拒絶理由通知に対し,同年7月14日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが,同年12月19日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,平成29年5月10日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたところ,平成30年7月19日付けで当審から拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,これに対し,同年10月11日に意見書が提出されるとともに手続補正(以下,「本件補正」という。)がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の理由の概要は以下のとおりである。
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1?7
・引用文献 1?3
<引用文献等一覧>
1.特開昭61-44429号公報
2.特開昭56-146242号公報
3.特開2002-228415号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし7に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は,本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であって,以下のとおりである。

「【請求項1】
基板(5)上に設けられているか又は存在している構造体(6)の位置合わせ精度及び/又は歪みを検査するために,前記設けられているか又は存在している構造体(6)の位置合わせ誤差を求めるための方法であって,
前記基板(5)を基板ホルダ(2)に固定するステップと,
前記基板ホルダ(2)を収容装置によって収容するステップと,
前記収容装置の並進運動及び/又は回転運動を行い,それによって,少なくとも1つの光学系(3)に対する相対的な前記基板(5)の位置決めを第1のX-Y座標系において行う,ステップと,
前記少なくとも1つの光学系(3)が,前記構造体(6)上のマーキング(11,11’)のX-Yポジションを検出するステップであって,前記基板(5)の第1のX-Y座標系に依存しない第2のX-Y座標系には,前記構造体(6)に関する理想的なX’-Y’構造体ポジション(9)が設定されている,ステップと,
前記構造体(6)上の前記マーキング(11,11’)の検出された前記X-Yポジションからの,前記理想的なX’-Y’構造体ポジション(9)の各距離を求め,それによって,前記マーキング(11,11’)の検出された前記X-Yポジションと,前記構造体(6)に関する前記理想的なX’-Y’構造体ポジション(9)との間の偏差ベクトル(v1,v2)を求めるステップと,
前記構造体(6)が更なる加工に適しているか否かを,所定の限界値を基準にして,前記偏差ベクトル(v1,v2)に基づいて判定するステップと,
前記構造体(6)が更なる加工に適していると判定された場合に,前記基板(5)に,前記構造体(6)へ更なる加工を行うための処理をするステップと,
前記処理後に,前記少なくとも1つの光学系(3)が,前記構造体(6)上の前記マーキング(11,11’)のX-Yポジションを検出するステップと,
前記構造体(6)上の前記マーキング(11,11’)の検出された前記X-Yポジションからの,前記理想的なX’-Y’構造体ポジション(9)の各距離を求めるステップであって,求められた前記距離を,前記位置合わせ誤差を求めるために使用する,ステップと,
を,記載の順序で備えていることを特徴とする,位置合わせ誤差を求めるための方法。
【請求項2】
その都度少なくとも1個の構造体(6)を同時に検出する,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光学系(3)を,前記第1のX-Y座標系の原点を設定するために,前記第1のX-Y座標系に対応付けられている光学系収容部を用いて少なくともX方向及びY方向に移動させ,続いて前記第1のX-Y座標系において前記検出のために固定する,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板ホルダ(2)を収容し,且つ,前記第1のX-Y座標系の少なくともX方向及びY方向において移動可能である前記収容装置の形態の位置合わせ手段によって,前記基板ホルダ(2)上に固定された前記基板(5)を前記第2のX-Y座標系に対して位置合わせする,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板ホルダ(2)上に固定された前記基板(5)を,前記基板(5)上のマーキング(7)を前記少なくとも1つの光学系(3)によって検出することによって位置合わせする,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
複数の前記X-Yポジション及び/又は前記理想的なX’-Y’構造体ポジション(9)を,一つのポジションマップに記憶する,請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数の前記X-Yポジション及び/又は前記理想的なX’-Y’構造体ポジション(9)を,前記第2のX-Y座標系に対応付けられているか,又は,該第2のX-Y座標系に相関付けられている一つのポジションマップに記憶する,請求項6に記載の方法。」

第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で加筆した。以下,同じ。)。

ア 「(発明の技術分野)
本発明は半導体装置製造用のステツプアンドリピート方式の露光装置,又はステツプアンドリピート方式で順次検査を行なう装置に好適な位置合せ方法に関し,特に露光用の原版となるマスクやレチクルと,露光対象である半導体ウエハ等との精密な位置合せを行なう方法に関する。」(第1頁右下欄第6行ないし同欄第12行)

イ 「(発明の背景)
近年,ICやLSI等の半導体装置は急速に微細化,高密度化が進み,これを製造する装置,特にマスクやレチクルの回路パターンを半導体ウエハに形成された回路パターンの上に重ね合せて転写する露光装置にも増々,高精度なものが要求されてきている。マスクの回路パターンとウエハ上の回路パターンとは例えば0.1μm以内の精度で重ね合せることが要求され,このため現在,その種の露光装置はマスクの回路パターンをウエハ上の局所領域(例えば1チツプ分)に露光したら,ウエハを一定距離だけ歩進(ステツピング)させては再びマスクの回路パターンを露光することを繰り返す,所謂ステツプアンドリピート方式の装置,特に縮小投影型の露光装置(ステツパー)が主流になつている。このステツプアンドリピート方式では,ウエハを2次元移動するステージに載置してマスクの回路パターンの投影像に対して位置決めするため,その投影像とウエハ上の各チツプとを精密に重ね合せることができる。また縮小投影型露光装置の場合,マスクやレチクルに設けられた位置合せ用のマークと,ウエハ上のチツプに付随したマークとを投影レンズを介して直接観察又は検出して位置合せするスルーザレンズ方式のアライメント方法と,投影レンズから一定距離だけ離して設けた位置合せ用の顕微鏡を使つてウエハ全体の位置合せを行なつた後,そのウエハを投影レンズの直下に送り込むオフアクシス方式のアライメント方法との2つの方法がある。一般にスルーザレンズ方式はウエハ上の各チツプ毎に位置合せすることから,重ね合せ精度は高くなるものの1枚のウエハの露光処理時間が長くなるという問題がある。オフアクシス方式の場合は,一度ウエハ全体の位置合せが完了したら,チツプの配列に従つてウエハをステツピングさせるだけなので,露光処理時間は短縮される。しかしながら,各チツプ毎の位置合せを行なわないため,ウエハの伸縮,ウエハのステージ上の回転誤差,ステージ自体の移動の直交度等の影響で,必らずしも満足な重ね合せ精度が得られなかつた。」(第1頁右下欄第13行ないし第2頁右上欄第12行)

ウ 「(発明の目的)
本発明はステツプアンドリピート方式の位置合せにおいて,ウエハ等の被処理基板上に配列された複数のチツプの全てについて,マスクのパターンの投影位置等の基準位置との位置合せをすることなく,単にステツピングだけでより精密な位置合せを可能とする方法を提供することを目的とする。」(第2頁右上欄第13行ないし同欄第19行)

エ 「(発明の概要)
本発明は,被処理基板(ウエハやフオトマスク)に設計上の配列座標(αβ)に沿つて規則的に整列した複数のチツプパターンの夫々を,所定の基準位置(露光装置であればマスクやレチクルのパターン投影位置,検査装置であれば検査視野や検査プローブ針等の検査位置)に対してステツプアンドリピート方式で順次位置合せする方法において,チツプパターンの設計上の配列座標値(Dxn,Dyn)に基づいて被処理基板を移動させ,複数のチツプパターンのいくつかを基準位置に合せたときの各位置(「Fxn-」,「Fyn-」)(審決注;「Fxn-」及び「Fyn-」は,それぞれ,Fxn及びFynの上方に「-」が付されている。以下,「*-」について同じ。)を実測する工程(ステツプ103,104,105,106)と,その設計上の配列座標値とステツプアンドリピート方式で位置合せすべき実際の配列座標値(Fxn,Fyn)とが所定の誤差パラメータ(ウエハの残存回転θ,ステージの直交度W,ウエハの線形伸縮Rを含む変換行列Aと,ウエハの2次元的な位置のオフセツト量の行列O)を含んで一義的な関係(行列式Fn=A・Dn+O)にあるものとしたとき,複数の実測値(Fxn,Fyn)と実際の配列座標値(Fxn,Fyn)との平均的な偏差(アドレス誤差E)が最小になるように,誤差パラメータ(A,O)を決定する工程(ステツプ107)と,その決定された誤差パラメータ(A,O)と設計上の配列座標値(Dxn,Dyn)とに基づいて,上記一義的な関係式から実際の配列座標値(「Fxn」,「Fyn」)を算出し(ステツプ108),ステツプアンドリピート方式の位置合せ時に,その算出された実際の配列座標値(Fxn,Fyn)に応じて,被処理基板を位置決めする工程(ステツプ109,110,112)とを含むことを技術的要点としている。」(第2頁右上欄第20行ないし右下欄第12行)

オ 「ウエハホルダー2はウエハWAを真空吸着するとともにx方向とy方向に2次元移動するステージ3に対して微小回転可能に設けられている。駆動モータ4はステージ3上に固定され,ウエハホルダー2を回転させる。またステージ3のx方向の移動はモータ5の駆動によつて行なわれ,y方向の移動はモータ6の駆動によつて行なわれる。ステージ3の直交する2辺には,反射平面がy方向に伸びた反射ミラー7と,反射平面がx方向に伸びた反射ミラー8とが各々固設されている。レーザ光波干渉測長器(以下単にレーザ干渉計と呼ぶ)9は反射ミラー8にレーザ光を投射して,ステージ3のy方向の位置(又は移動量)を検出し,レーザ干渉計10は反射ミラー7にレーザ光を投射して,ステージ3のx方向の位置(又は移動量)を検出する。投影レンズ1の側方には,ウエハWA上の位置合せ用のマークを検出(又は観察)するために,オフアクシス方式のウエハアライメント顕微鏡(以下,WAMと呼ぶ)20,21が設けられている。・・・そしてWAM20,21はマークからの散乱光や回折光を受光する光電素子と,その光電信号をスポツト光の振動周期で同期整流する回路とを有し,スポツト光θSP(YSP)のy方向の振動中心に対するマークのy方向のずれ量に応じたアライメント信号を出力する。従つてWAM20,21は所謂スポツト光振動走査型の光電顕微鏡と同等の構成のものである。
さて,本装置には投影レンズ1を介してウエハWA上のマークを検出するレーザステツプアライメント(以下LSAと呼ぶ)光学系が設けられている。」(第3頁左上欄第1行ないし同頁右上欄第20行)

カ 「次に,この装置を使つた本発明による位置合せ方法を装置の動作とともに第3図のフローチャート図を使つて説明する。尚,この位置合せはウエハWAの第2層目以降について行なわれるものであり,ウエハWA上にはチツプと位置合せ用のマークとがすでに形成されている。
まず,ウエハWAはステツプ100で不図示のプリアライメント装置を使つて,ウエハWAの直線的な切欠き(フラツト)が一定の方向に向くように粗く位置決めされる。ウエハWAのフラツトは第1図に示したように,x軸と平行になるように位置決めされる。次にステツプ101でウエハWAはステージ3のウエハホルダー2上に搬送され,フラツトがx軸と平行を保つようにウエハホルダー2上に載置され,真空吸着される。そのウエハWAには例えば第4図に示すように複数のチツプCnがウエハWA上の直交する配列座標αβに沿つてマトリツクス状に形成されている。配列座標αβのα軸はウエハWAのフラツトとほぼ平行である。第4図では複数のチツプCnのうち,代表して配列座標αβのウエハWAのほぼ中心を通るα軸上に一列に並んだチツプC_(0)?C_(6)のみを表わしてある。各チツプC_(0)?C_(6)にはそれぞれ4つの位置合せ用のマークGY,Gθ,SX,SYが付随して設けられている。今,チツプC_(0)?C_(6)の中央のチツプC_(3)の中心を配列座標αβの原点としたとき,α軸上にはα方向に線状に伸びた回折格子状のマークSY_(0)?SY_(6)が,夫々チツプC_(0)?C_(6)の右脇に設けられている。またチツプC_(3)の中心を通るβ軸上にはβ方向に線状に伸びた回折格子状のマークSX_(3)がチツプC_(3)の下方に設けられ,他のチツプC_(0),C_(1),C_(2),C_(4),C_(5),C_(6)についても同様にチツプの中心を通りβ軸と平行な線分上にマークSX_(0)?SX_(2),SX_(4)?SX_(6)が設けられている。これらマークSYn,SXnはそれぞれスポツト光LYS,LXSによつて検出されるものである。また各チツプC_(0)?C_(6)の下方にはウエハWAの全体の位置合せ(グローバルアライメント)を行なうために使われるマークGY_(0)?GY_(6),Gθ_(0)?Gθ_(6)が設けられている。これらマークGYn,Gθnはα軸と平行な線分上にα方向に線状に伸びた回折格子状のパターンで形成されている。さらにα方向に一列に並んだチツプC_(0)?C_(6)のうち,例えば左端のチツプC_(0)のマークGY_(0)と右端のチツプC_(6)のマークGθ_(6)とのα方向の間隔が,WAM20,21によるスポツト光θSP,YSPの間隔DXと一致するように定められている。すなわち本実施例では離れた2ケ所のマークGY_(0)とマークGθ_(6)を使つてオフアクシス方式でウエハWAのグローバルアライメントを行なう。」(第4頁左下欄第8行ないし第5頁左上欄第18行)

キ 「そこで実際のショツト(チツプ)位置がマークの検出により測定され,その実測値が「Fn-」として検出されたとき,位置決めすべきショツト位置Fnとの位置ずれ,すなわちアドレス誤差En(=「Fn-」-Fn)を最小にするように誤差パラメータA(変換行列),O(オフセツト)を決定する。そこで評価関数として最小二乗誤差をとるものとすると,アドレス誤差Eは式(9)で表わされる。
E=・・・
・・・(9)
そこで,アドレス誤差Eを最小にするように誤差パラメータA,Oを決定する。」(第7頁左上欄第3行ないし同欄第15行)

ク 「そこで,第3図のフローチャート図に戻つて動作の説明を続ける。主制御装置50はグローバルアライメントが終了した後,ウエハWAの複数のチツプの位置を計測する。まずステツプ103で主制御装置50はX-LSA系のスポツト光LXSが第4図中の左端のチツプC_(0)に付随したマークSX_(0)と平行に並ぶように,配列設計値に基づいてステージ3を位置決めした後,マークSX_(0)がスポツト光LXSを横切るようにステージ3をx方向に一定量だけ移動(走査)する。この移動の間,主制御装置50は光電素子48の時系列的な光電信号の波形をレーザ干渉計10からのx方向の位置情報に対応付けて記憶し,波形状態からマークSX_(0)とスポツト光LXSとがx方向に関して一致した時点の位置x_(0)を検出する。
次に主制御装置50はステツプ104でY-LSA系のスポツト光LYSがチツプC_(0)に付随したマークSY_(0)と平行に並ぶように配列設計値に基づいてステージ3を位置決めする。その後,マークSY_(0)がスポツト光LYSを横切るようにステージ3をy方向に一定量だけ移動する。このとき主制御装置50は光電素子38の時系列的な光電信号の波形をレーザ干渉計9からのy方向の位置情報と対応付けて記憶し,波形状態からマークSY_(0)とスポツト光LYSとがy方向に関して一致した時点の位置y_(0)を検出する。そして主制御装置50はステツプ105でm個のチツプについて同様の位置検出を行なつたか否かを判断して,否のときはステツプ106に進み,ウエハWA上の別のチツプまで配列設計値に基づいてステージ3を移動させ,ステツプ103から再び同様の位置検出動作を繰り返す。本実施例では例えば第5図に示すように配列座標αβの各軸上に沿つてウエハWAの中心からほぼ等距離に位置する4つのチツプC_(0),C_(6),C_(7),C_(8)と中央のチツプC_(3)の計5つのチツプの各々について,ステツプ103,104の位置検出が行なわれるものとする。従つてステツプ105でm=5と判断された時点で主制御装置50には,5つの実測値(Fxn-,Fyn-)が記憶されることになる。すなわち,
(「Fx_(1)-」,「Fy_(1)-」)=(x_(0),y_(0))・・・チツプC_(0)
(「Fx_(2)-」,「Fy_(2)-」)=(x_(3),y_(3))・・・チツプC_(3)
(「Fx_(3)-」,「Fy_(3)-」)=(x_(6),y_(6))・・・チツプC_(6)
(「Fx_(4)-」,「Fy_(4)-」)=(x_(7),y_(7))・・・チツプC_(7)
(「Fx_(5)-」,「Fy_(5)-」)=(x_(8),y_(8))・・・チツプC_(8)
の5つの実測値が順次検出される。」(第8頁右上欄第17行ないし第9頁左上欄第2行)

ケ 「次に主制御装置50はステツプ107において先の式(10),(11),及び式(14)?(17)に基づいて誤差パラメータA,Oを決定する。この決定にあたつて,主制御装置50は上記5つの実測値を検出した各チツプの5つの設計値を予め選出しており,その設計値(Dxn,Dyn)を以下のように記憶しているものとする。
(Dx_(1),Dy_(1))=(x_(0)′,y_(0)′)・・・チツプC_(0)
(Dx_(2),Dy_(2))=(x_(3)′,y_(3)′)・・・チツプC_(3)
(Dx_(3),Dy_(3))=(x_(6)′,y_(6)′)・・・チツプC_(6)
(Dx_(4),Dy_(4))=(x_(7)′,y_(7)′)・・・チツプC_(7)
(Dx_(5),Dy_(5))=(x_(8)′,y_(8)′)・・・チツプC_(8)
また実際の誤差パラメータA,Oの決定に先立つて,5つのチツプの各位置計測(所謂,ステツプアライメント)が終る毎に,例えば第3図のステツプ106でステージ3を移動している間に,式(10),(11),(14)?(17)の一部の演算を同時に実行していくことができる。すなわち,式(10),(11),(14)?(17)の中で各チツプ毎のデータ(実測値,設計値)の代数和を表わす演算要素については,1つのチツプの実測(ステツプアライメント)が終了する毎に順次加算する。その演算要素は以下の通りである。
・・・
さらにこれら演算要素のうち,ウエハWA上の実測すべきチツプが予め決まつていて,変更がない場合は,設計値(Dxn,Dyn)のみを含む演算要素について第3図中のステツプ103,104,105,106の実行前に算出しておくこともできる。このように実測値の計測動作と並行して,一部の演算を行なつていけば,総合的なアライメント時間はそれほど長くならない。そして,5つの実測値が得られた段階で主制御装置50は上記演算要素の結果を使つて,式(10),(11)でオフセツト量(Ox,Oy)を算出した後,そのオフセツト値と上記演算要素の結果を使つてさらに式(14)?(17)で配列の要素a11,a12,a21,a22を算出する。以上の演算動作により,誤差パラメータA,Oが決定されるので,主制御装置50は次のステツプ108で先の式(4)を使つて,ウエハWAの各チツプについて位置決めすべき位置,すなわち誤差パラメータによつて補正されたショツトアドレス(Fxn,Fxy)を算出し,記憶手段(半導体メモリ)上に,設計値(Dxn,Dyn)に対して補正されたチツプの配列マツプ(シヨツトアドレス表)を作成する。この配列マツプは例えばチツプC_(0)に対しては位置(Fx_(0),Fy_(0)),チツプC_(1)に対しては位置(Fx_(1),Fy_(1)),・・・・・・という具合に,チツプの番号に対応して,各位置データを記憶している。」(第9頁右上欄第5行ないし第10頁左上欄第1行)

(2) 引用発明
したがって,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「半導体装置製造用のステツプアンドリピート方式の露光装置,又はステツプアンドリピート方式で順次検査を行なう装置に好適な位置合せ方法に関し,特に,露光用の原版となるマスクやレチクルと,露光対象である半導体ウエハ等との精密な位置合せを行なう方法であつて,前記装置には,
ウエハホルダー2が,ウエハWAを真空吸着するとともにx方向とy方向に2次元移動するステージ3に対して微小回転可能に設けられており,
投影レンズ1を介して前記ウエハWA上のマークを検出するレーザステツプアライメント(LSA)光学系が設けられ,
前記ウエハWA上にはチツプと位置合せ用のマークとが形成され,各チツプC_(0)?C_(6)にはそれぞれ4つの位置合せ用のマークGY,Gθ,SX,SYが付随して設けられており,
各チツプC_(0)?C_(6)の下方には,前記ウエハWAの全体の位置合せ(グローバルアライメント)を行なうために使われるマークGY_(0)?GY_(6),Gθ_(0)?Gθ_(6)が設けられており,これらのマークを使つてグローバルアライメントを行い,
主制御装置50は,グローバルアライメントが終了した後,前記ウエハWAの複数のチツプの位置を計測するものであつて,X-LSA系のスポット光LXSがチツプC_(0)に付随したマークSX_(0)と平行に並ぶように,配列設計値に基づいて前記ステージ3を位置決めした後,前記マークSX_(0)が前記スポット光LXSを横切るように前記ステージ3をx方向に一定量だけ移動(走査)して,前記マークSX_(0)と前記スポット光LXSとがx方向に関して一致した時点の位置x_(0)を検出し,次に,Y-LSA系のスポット光LYSが前記チツプC_(0)に付随したマークSY_(0)と平行に並ぶように配列設計値に基づいて前記ステージ3を位置決めした後,前記マークSY_(0)が前記スポット光LYSを横切るように前記ステージ3をy方向に一定量だけ移動して,前記マークSY_(0)と前記スポット光LYSとがy方向に関して一致した時点の位置y_(0)を検出するものであり,前記ウエハWAの中心からほぼ等距離に位置する4つのチツプC_(0),C_(6),C_(7),C_(8)と中央のチツプC_(3)の計5つのチツプの各々について,位置検出動作を繰り返すことによつて,5つの実測値(「Fxn-」,「Fyn-」)が検出され,
また,主制御装置50は,前記5つの実測値(「Fxn-」,「Fyn-」)を検出した各チツプの設計上での座標位置である5つの設計値(Dxn,Dyn)を記憶している,
位置合せ方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

「本発明による基板上のボンディング位置を定位置に位置せしめる方法は,かかる目的を達成するために,あらかじめ2個以上のターゲットマークを基板上の設計された位置に配置して,該ターゲットマークを固定位置にある撮像装置によって観察して,該観察したターゲットマークの位置と,あらかじめ配置した位置との差から計算によって,前記基板上のボンディング位置を定位置に位置させるためのX-Yテーブルの移動量を求めることを特徴とする。
次に本発明の方法を実施するのに最も好適な一例について図に基づいて詳細に説明する。あらかじめ基板上に仮の座標系XおよびYを設定し,その座標系の点(X_(1),Y_(1))および点(X_(2),Y_(2))を中心とする,例えば正方形であって各辺はX軸又はY軸に平行なターゲットマークM_(1),M_(2)を基板上に配置する。また設計上この基板上のボンディング位置は前記点(X_(1),Y_(1))と点(X_(2),Y_(2))を結ぶ線分の中点(「X-」_(0),「Y-」_(0))からX軸方向にX’_(n)Y軸方向にY’_(n)の位置にある様に設計されているものとする。そして焼成によって収縮し,歪を受けた基板をX-Yテーブル上に固定して,固定位置にある撮像装置例えばテレビカメラで観察する。すると第1図に示す如く固定座標上の(x_(1),y_(1)),(x_(2),y_(2))を中心とするターゲットマークM_(1),M_(2)が観測できる。後述する方法によって(x_(1),y_(1)),(x_(2),y_(2))を上記観測に基づいて計算によって求める。ターゲットマーク間の距離の設計値をL_(0)とし,基板の収縮率をα(収縮率αは基板上で一定であるとみなす)とすると
α=・・・
また基板の傾きθは,設計上のターゲットマーク間の傾きをθ_(0)とすると
θ=・・・ である。
また前記計算によって求めたターゲットマークM_(1),M_(2)の中心(x_(1),y_(1)),(x_(2),y_(2))から両ターゲットマークの中心を結ぶ線分の中点(X_(0),Y_(0))を求めると,該線分の中点の前記設計値(「X-」_(0),「Y-」_(0))からのずれは,
ΔX=・・・
ΔY=・・・
ただしΔX;前記線分の中点のX方向のずれ
ΔY;前記線分の中点のY方向のずれ
として求めることができる。従ってボンディング位置に前記(「X-」_(0),「Y-」_(0))を原点として
X_(n)=・・・
Y_(n)=・・・
だけX方向Y方向に移動した点として求められる。これによりX-Yテーブルを移動させて上記ボンディング位置を設計上のボンディング位置に合わせれば,基板上のボンディング位置を定位置に位置せしめることができる。」(第1頁右下欄第18行ないし第2頁左下欄第10行)

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0018】上記の実施の形態では,上記ベース1上には,さらに,上記Xステージ4を跨いで門状(あるいは,「コ」の字状)のサブベース12が固定されており,このサブベース12上には,上記Xステージ4に直交して,Yステージ13が取り付けられている。なお,このYステージ13は,ボールねじ14によって図のY軸方向に移動可能となっている。なお,この駆動機構としては,比較的安価なボールねじに,さらに,やはり比較的小形で安価な電動モータを結合し,もって,自動的にX軸方向に駆動することも可能であり,これによれば,装置を比較的安価に構成することが可能になる。
【0019】このYステージ13上には,さらに,Z粗動ステージ15が設けられ,かつ,このZ粗動ステージ15上にはテレビ顕微鏡16が取り付けられている。なお,このテレビ顕微鏡16により得られた映像信号は,図の画像処理装置17に接続され,さらに,例えば,コンピュータ装置18に接続されている。また,図からも明らかなように,このコンピュータ装置18には,上記レーザ干渉計11によって測定される平面鏡10の位置データも入力されている。」

第5 対比及び判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 本願発明1は,「基板(5)上に設けられているか又は存在している構造体(6)の位置合わせ精度及び/又は歪みを検査するために,前記設けられているか又は存在している構造体(6)の位置合わせ誤差を求めるための方法」であるところ,本願発明4は,「前記基板ホルダ(2)を収容し,・・・前記収容装置の形態の位置合わせ手段によって,前記基板ホルダ(2)上に固定された前記基板(5)を前記第2のX-Y座標系に対して位置合わせする,請求項1に記載の方法。」,本願発明5は,「前記基板ホルダ(2)上に固定された前記基板(5)を,前記基板(5)上のマーキング(7)を前記少なくとも1つの光学系(3)によって検出することによって位置合わせする,請求項4に記載の方法。」であるから,本願発明1の方法は,位置合わせを行うことを前提として,位置合わせ誤差を求めているということができる。そうすると,本願発明1と引用発明とは,「位置合わせのための方法」である点で共通する。

イ 引用発明の「ウエハWA」,「チツプ」,「ウエハホルダー2」,「ステージ3」及び「レーザステツプアライメント(LSA)光学系」は,本願発明1の「基板(5)」,「構造体(6)」,「基板ホルダ(2)」,「収容装置」及び「光学系(3)」に相当する。

ウ 引用発明では,「ウエハホルダー2は,ウエハWAを真空吸着するとともにx方向とy方向に2次元移動するステージ3に対して微小回転可能に設けられて」いるから,引用発明は,本願発明1の「基板(5)を基板ホルダ(2)に固定するステップ」及び「基板ホルダ(2)を収容装置によって収容するステップ」に相当するステップを有しているということができる。

エ 引用発明では,「投影レンズ1を介して前記ウエハWA上のマークを検出するレーザステツプアライメント(LSA)光学系が設けられ」ており,また,「ウエハホルダー2」は,「ステージ3に対して微小回転可能に設けられて」いるから,本願発明1とは,「前記収容装置の並進運動及び/又は回転運動を行い,それによって,少なくとも1つの光学系(3)に対する相対的な前記基板(5)の位置決めを行う,ステップ」を有している点で共通する。

オ 引用発明では,「前記ウエハWA上にはチップと位置合せ用のマークとが形成され,各チツプC_(0)?C_(6)にはそれぞれ4つの位置合せ用のマークGY,Gθ,SX,SYが付随して設けられて」いるから,引用発明の「ウエハWA上」に形成された「位置合せ用のマークGY,Gθ,SX,SY」と,本願発明1の「構造体(6)上のマーキング(11,11’)」とは,「位置合わせマーク」である点で共通する。
また,引用発明では,上記エのとおり,「レーザステツプアライメント(LSA)光学系」が,「ウエハWA上のマークを検出」しており,「ウエハWA上のマーク」には,「位置合せ用のマークSX,SY」が含まれるものである。
そして,引用発明では,「各チツプの設計上での座標位置である5つの設計値(Dxn,Dyn)」を記憶しているところ,引用発明の「チツプの設計上での座標位置」は,本願発明1の「理想的なX’-Y’構造体ポジション(9)」に相当するといえる。
そうすると,本願発明1と,引用発明とは,「前記少なくとも1つの光学系(3)が,位置合わせマークのX-Yポジションを検出するステップであって,前記構造体(6)に関する理想的なX’-Y’構造体ポジション(9)が設定されている,ステップ」を有する点で共通する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「 位置合わせのための方法であって,
基板(5)を基板ホルダ(2)に固定するステップと,
前記基板ホルダ(2)を収容装置によって収容するステップと,
前記収容装置の並進運動及び/又は回転運動を行い,それによって,少なくとも1つの光学系(3)に対する相対的な前記基板(5)の位置決めを行う,ステップと,
前記少なくとも1つの光学系(3)が,位置合わせマークのX-Yポジションを検出するステップであって,前記構造体(6)に関する理想的なX’-Y’構造体ポジション(9)が設定されている,ステップと,
を,備えている位置合わせのための方法。」

(相違点)
(相違点1)
「位置合わせのための方法」について,本願発明1は,「基板(5)上に設けられているか又は存在している構造体(6)の位置合わせ精度及び/又は歪みを検査するために,前記設けられているか又は存在している構造体(6)の位置合わせ誤差を求めるための方法」であるのに対し,引用発明は,「ウエハWA上に設けられているか又は存在しているチツプの位置合わせ精度及び/又は歪みを検査するため」に,「前記設けられているか又は存在しているチツプの位置合わせ誤差を求め」ているのか不明である点。

(相違点2)
「前記収容装置の並進運動及び/又は回転運動を行い,それによって,少なくとも1つの光学系(3)に対する相対的な前記基板(5)の位置決めを行う,ステップ」について,本願発明1は,位置決めを「第1のX-Y座標系において」行うのに対し,引用発明は,「第1のX-Y座標系において」行っているか否か不明である点。

(相違点3)
「前記少なくとも1つの光学系(3)が,位置合わせマークのX-Yポジションを検出するステップであって,前記構造体(6)に関する理想的なX’-Y’構造体ポジション(9)が設定されている,ステップ」について,本願発明1は,「(基板(5)上に設けられているか又は存在している)構造体(6)上のマーキング(11,11’)」のX-Yポジションを検出するものであって,「理想的なX’-Y’構造体ポジション(9)」が,「前記基板(5)の第1のX-Y座標系に依存しない第2のX-Y座標系」に設定されているのに対し,引用発明は,「ウエハWA上のチツプに付随して設けられている位置合せ用のマークGY,Gθ,SX,SY」のX-Yポジションを検出するものであって,「理想的なX’-Y’構造体ポジション(9)」が,「前記ウェハWAの第1のX-Y座標系に依存しない第2のX-Y座標系」に設定されているか否か不明である点。

(相違点4)
本願発明1は,「前記構造体(6)上の前記マーキング(11,11')の検出された前記X-Yポジションからの,前記理想的なX'-Y'構造体ポジション(9)の各距離を求め,それによって,前記マーキング(11,11')の検出された前記X-Yポジションと,前記構造体(6)に関する前記理想的なX'-Y'構造体ポジション(9)との間の偏差ベクトル(v1,v2)を求めるステップと, 前記構造体(6)が更なる加工に適しているか否かを,所定の限界値を基準にして,前記偏差ベクトル(v1,v2)に基づいて判定するステップと, 前記構造体(6)が更なる加工に適していると判定された場合に,前記基板(5)に,前記構造体(6)へ更なる加工を行うための処理をするステップと, 前記処理後に,前記少なくとも1つの光学系(3)が,前記構造体(6)上の前記マーキング(11,11’)のX-Yポジションを検出するステップと, 前記構造体(6)上の前記マーキング(11,11’)の検出された前記X-Yポジションからの,前記理想的なX’-Y’構造体ポジション(9)の各距離を求めるステップであって,求められた前記距離を,前記位置合わせ誤差を求めるために使用する,ステップと, を,記載の順序で備えている」のに対し,引用発明は,これらのステップを備えているか不明である点。

(2) 相違点についての判断
事案にかんがみ,相違点3について検討する。
本願発明1は,上記第3のとおり,「少なくとも1つの光学系(3)」が,「(基板(5)上に設けられているか又は存在している)構造体(6)上のマーキング(11,11’)」のX-Yポジションを検出するものであるところ,本願明細書の【発明を実施するための形態】には,以下の記載がある。

「【0040】
光学系3は,基板5の表面5o上に設けられている第1のマーキング7の検出,及び,基板5上に設けられている構造体6上の第2のマーキング11,11’の検出に使用される。・・・
【0041】
第1のステップにおいては,基板5が収容装置1の基板収容部2上に配置され(図2a,2b),粗く位置合わせされる(図3a,3b)。基板5の粗い位置合わせは特に,基板5の周縁部5uの輪郭8,特にノッチ又はフラット(平坦部)を用いて行われる。・・・ここで粗い位置合わせとは,光学系3が,検出領域(視野:field of view)内の,表面5o上に分散されている第1の位置合わせマーク7に焦点合わせされている,基板5の位置決めであると解される。有利な実施の形態によれば,より精細に解像された第2のマーキング11,11’のみが第2のX-Y座標系の原点及び配向を決定するために使用され,これによって第2のX-Y座標系をより正確に求めることができる。第2のX-Y座標系は特に,X-Y構造体又はマーキングを,対応する所定の(記憶されている)X-Y構造体ポジションと比較し,また必要に応じて位置決めすることによって決定される。」

当該記載によれば,本願明細書の【発明を実施するための形態】では,光学系(3)が検出するマーキングには,「基板5の表面5o上に設けられている第1のマーキング7」と,「基板5上に設けられている構造体6上の第2のマーキング11,11’」の二種類があり,「基板5の表面5o上に設けられている第1のマーキング7」は,粗い位置合わせに用いられているのに対し,「基板5上に設けられている構造体6上の第2のマーキング11,11’」は,より精細に解像されたものであって,第2のX-Y座標系の原点及び配向を決定するために使用されていることが理解でき,当該「基板5上に設けられている構造体6上の第2のマーキング11,11’」を使用することにより,「第2のX-Y座標系をより正確に求めることができる」という有利な効果を奏するものであると理解できる。
そうすると,当該【発明を実施するための形態】に対応する,本願発明1の「前記少なくとも1つの光学系(3)が,前記構造体(6)上のマーキング(11,11')のX-Yポジションを検出するステップ」も,同様の有利な効果を奏するものであると認められる。
これに対し,引用発明の「位置合せ用のマークGY,Gθ,SX,SY」(上述の本願明細書の記載でいえば,「基板5の表面5o上に設けられている第1のマーキング7」に対応する。)は,ウエハWA上のチップに付随して設けられているのであって,ウエハWAのチップ上には設けられていないから,本願発明1が有する上述の効果を奏することはできない。
そして,引用文献1には,ウエハWAのチップ上に「位置合せ用のマークGY,Gθ,SX,SY」を設けることの記載や示唆もないし,引用文献2や引用文献3を含め,本願出願時において,当該技術分野において,周知技術であるということもできない。
したがって,引用発明において,上記相違点3に係る構成を採用することは,当業者であっても容易に想到することはできない。

(3) まとめ
以上によれば,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2及び引用文献3に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7は,本願発明1の構成を含むものであるから,上記1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2及び引用文献3に記載された事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
本件補正で補正された本願発明1ないし7は,上記第5のとおり,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由について
当審では,本件補正前の請求項1ないし7に係る発明は,明確であるとはいえず,本願は,特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていないとの当審拒絶理由を通知したが,本件補正により,当該当審拒絶理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-08 
出願番号 特願2015-515396(P2015-515396)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内田 正和  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 梶尾 誠哉
河合 俊英
発明の名称 位置合わせ誤差を求めるための装置と方法  
代理人 二宮 浩康  
代理人 前川 純一  
代理人 上島 類  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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