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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07C
管理番号 1348622
審判番号 不服2018-2120  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-15 
確定日 2019-02-08 
事件の表示 特願2014-512702「ジアミン、重合体、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月31日国際公開、WO2013/161984〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年4月26日(優先権主張 2012年4月26日日本国、優先権主張 2012年6月28日日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年3月15日付けの拒絶理由に対し同年7月11日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年2月15日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年3月30日に手続補正書(方式)及び手続補足書が提出されたものである。

第2 平成30年2月15日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成30年2月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 本件補正
平成30年2月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1である、
「【請求項1】
下記式(a)?(c)で表されることを特徴とするジアミン。
【化1】

(式中、Xは独立して単結合もしくはエーテル(-O-)、エステル(-COO-または-OCO-)及びアミド(-CONH-または-NHCO-)から選択される結合基であり、Yは独立して単結合または炭素数1?5のアルキレン基であり、Zは独立して炭素数1?10のアルキレン基もしくはフェニレン基である。ベンゼン環上のアミノ基の結合位置や、中央のベンゼン環に対する結合基の位置は特に限定されない。)」
を、補正後の特許請求の範囲の請求項1である
「【請求項1】
下記式(c)で表されることを特徴とするジアミン。
【化1】


(式中、Xは独立してエーテル(-O-)、エステル(-COO-または-OCO-)及びアミド(-CONH-または-NHCO-)から選択される結合基であり、Yは独立して単結合または炭素数1?5のアルキレン基である。ベンゼン環上のアミノ基の結合位置は特に限定されない。また、前記アルキレン基は環の一部を構成している場合を除く。)」
とする補正を含むものである。

2 補正の適否
(1)補正の目的
本件補正は、「ジアミン」を本件補正前「式(a)?(c)で表されることを特徴とするジアミン」と特定したものを、「式(c)で表されることを特徴とするジアミン」と式(c)のものに減縮するものであり、また、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「X」を、本件補正前「Xは独立して単結合もしくはエーテル(-O-)、エステル(-COO-または-OCO-)及びアミド(-CONH-または-NHCO-)から選択される結合基」と特定したものを、「Xは独立してエーテル(-O-)、エステル(-COO-または-OCO-)及びアミド(-CONH-または-NHCO-)から選択される結合基」と単結合の場合を削除し、選択肢を減縮するものであり、さらに、「炭素数1?5のアルキレン基」の特定に関して、「また、前記アルキレン基は環の一部を構成している場合を除く。」と末尾に付記することにより減縮するものであり、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される特許を受けようとする発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。

ア 刊行物
刊行物1:国際公開99/51662号
(原審における引用文献5)

イ 刊行物の記載事項
刊行物1には、以下の事項が記載されている。

(1a)「請求の範囲
・・・
17.一般式(5)

で表されるジアミンであって、Jが、-CH_(2)-,-(CH_(2))_(m)-O-,-(CH_(2))_(n)-OCO-、ただしm=1?15、n=1?15から選択される2価の有機基である新規ジアミン。」(クレーム17)

(1b)「特に、種々の有機ポリマーの中でもポリイミド或いはポリアミドは、耐熱性に優れているため、宇宙、航空分野から電子通信分野まで幅広く用いられている優れた樹脂であり、感光性樹脂としての応用が期待されていた。」(第1頁第23行?第25行)

(1c)「以上述べたように、ニトロ化物の還元条件を適正化することは非常に困難であるという問題があり、桂皮酸骨格を有するアミンは、単離されたものは殆ど存在しなかった。
本発明は、上記問題を解決して、生成不可能であった桂皮酸あるいは桂皮酸誘導体骨格を有する新規なアミンを得るため、ニトロ化物の還元条件を最適とする製造方法を提供することを目的とする。
本発明の目的は、桂皮酸あるいは桂皮酸誘導体を有する新規ポリイミド組成物を得るための新規ジアミンまたは新規酸2無水物を提供することにある。
本発明の別の目的は、桂皮酸あるいは、桂皮酸誘導体を有する新規ジアミンまたは新規酸2無水物から新規なポリイミド組成物を提供することにある。
本発明の別の目的は、桂皮酸あるいは、桂皮酸誘導体を有する新規ジアミンの製造方法を提供することにある。」(第3頁第7行?第18行)

(1d)「本発明の新規ジアミンは、一般式(5)

で表されるジアミンであって、K,Lは、H,CH_(3),F,Cl,Br,CH_(3)O-から選択される1の基を示し、Jは、-CH_(2)-,-(CH_(2))_(m)-O-,-(CH_(2))_(n)-OCO-、ただしm=1?15、n=1?15から選択される2価の有機基である。」(第13頁第3行?第8行)

(1e)「発明を実施するための最良の形態
本発明にかかる新規ポリイミド組成物は、桂皮酸あるいは桂皮誘導体骨格を有し、桂皮酸骨格特有の光反応性及び熱反応性を併せ有する新規ポリイミド組成物であることを特徴とする。また、本発明の新規ジアミンおよび酸2無水物は、主として上記桂皮酸骨格を有する新規ポリイミド組成物を製造するのに用いる材料であり、主鎖又は側鎖に桂皮酸骨格または桂皮酸誘導体骨格を有するジアミン及び酸二無水物である。
本発明にかかる新規ポリイミド組成物について、具体的な構造を挙げて実施の形態の1例について説明するが、桂皮酸骨格を有するポリイミド組成物であれば特に構造は規定されない。」(第17頁第14行?第18頁第6行)

(1f)「以下、本発明の桂皮酸骨格を有するポリイミド組成物について、製造方法とともに説明する。
ジアミン残基に桂皮酸骨格を有するポリイミドを製造する方法として、1(審決注:○の中に数字の1)桂皮酸骨格を有するジアミンを予め合成し、任意の酸二無水物と反応させてポリアミド酸としたあとで、脱水閉環してポリイミドとする方法、2(審決注:○の中に数字の2)ジオール末端としたポリイミドのオリゴマーと桂皮酸骨格を含むジカルボン酸あるいはジ酸クロライドと反応させ、エステル結合を生成し高分子量化してポリイミド組成物を得る方法等がある。」(第20頁第3行?第10行)

(1g)「以上述べたような方法により、得られる新規な桂皮酸骨格を有するアミンは、ニトロ基への選択的活性の高い還元触媒を使用することにより非常に高い収率で得ることができる。本発明による新規なアミンは桂皮酸骨格を有するため、アミンを原料とするポリアミドやポリイミド等の優れた特性を有するポリマーに、桂皮酸骨格を導入することを可能とし、これらポリマーの熱硬化性樹脂、感光性樹脂への用途を大きく開くことができる。さらに、高収率高純度のため分離精製の工程を省略することも可能である。従って、アミン製造工程から直接ポリイミド、ポリアミド製造工程への移行を可能とし、経済上非常に有用である。」(第25頁第17行?第24行)

(1h)「一般式(1)中Wが(1-c)の
・・・
の原料として用いられるジアミンは一般式(5)

(但し、Jは2価の有機基、K,LはH,CH_(3),F,Cl,Br,CH_(3)O-を示す。K,Lは同一でも異なってもよい。)である。
ジアミンは、一般式(3-2)

(但し、KはH,CH_(3),F,Cl,Br,CH_(3)O-を示す。)で表される桂皮酸誘導体または、一般式(3-3)

(但し、KはH,CH_(3),F,Cl,Br,CH_(3)O-を示す。)で表される桂皮酸クロライド誘導体と、一般式(3-4)

(但し、LはH,CH_(3),F,Cl,Br,CH_(3)O-をJは2価の有機基を示す。)で表される水酸基を有するニトロ化合物と反応させて、一般式(3-5)

(但し、Jは2価の有機基、K,LはH,CH_(3),F,Cl,Br,CH_(3)O-を示す。)で表されるジニトロ化合物が得られる。
上記得られた一般式(3-5)で表されるジニトロ化合物を還元して、一般式(5)で表されるジアミンが得られる。
一般式(3-4)及び一般式(3-5)中のJは、2価の有機基であれば特に限定されないが、-CH_(2)-,-(CH_(2))_(m)-O-,-(CH_(2))_(n)-OCO-、ただしm=1?15、n=1?15から選択される2価の有機基等が例示できる。」(第33頁第9行?第35頁第9行)

(1i)「以上述べたように製造される本発明に係る新規ポリイミド組成物は、桂皮酸骨格を有するため、従来のポリイミドの種々の優れた特性に加え、熱または光に反応し、架橋反応を起こすという桂皮酸骨格の性質を有する。従って、特定の温度、及び/または特定の波長により反応する優れた熱硬化性樹脂、熱反応性樹脂としての新たな用途を提供する。」(第52頁第7行?第11行)

(1j)「実施例
以下、実施例により本発明を具体的に記載するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
・・・
(実施例1)
・・・
2(審決注:○の中に数字の2)3,5-ジアミノベンジル シンナメートの合成
・・・
約2時間で14.5リットルの水素を吸収し、水素の吸収が止まったので、反応をやめ、反応溶液を濾別して、Pt含有カーボンを除去してから、濃縮して3,5-ジアミノベンジル シンナメート53.6gを得た。
・・・
(実施例2)
・・・
2(審決注:○の中に数字の2)2,4?ジアミノフェニル シンナメートの合成
・・・
約2時間で14.5リットルの水素を吸収し、水素の吸収が止まったので、反応をやめ、反応溶液を濾別して、触媒を除去してから、濃縮して2,4?ジアミノフェニル シンナメート50.8gを得た。
・・・
(実施例3)
・・・
2(審決注:○の中に数字の2)2-(2,4-ジアミノフェノキシ)エチル-1-シンナメートの合成
・・・
実施例2と同様の方法で、還元し2-(2,4-ジアミノフェノキシ)エチル-1-シンナメートを得た。
・・・
(実施例4)
・・・
3(審決注:○の中に数字の2)2-(3,5-ジアミノ安息香酸)プロピル-1-シンナメートの合成
・・・
実施例2と同様の方法で、還元し2-(3,5-ジアミノ安息香酸)プロピル-1-シンナメートを得た。
・・・
(実施例5)
・・・
2(審決注:○の中に数字の2)(4‘-アミノフェニル)-4-アミノシンナメートの合成
・・・
約4時間で3.17リットルの水素を吸収し、水素の吸収が止まったので、反応をやめ、反応溶液を濾別して、Pt含有カーボンを除去してから、濃縮、再結晶して(4‘-アミノフェニル)-4-アミノシンナメート4.9gを得た。
・・・
(実施例6)
・・・
2(審決注:○の中に数字の2)(3‘-アミノフェニル)-3-アミノシンナメートの合成
・・・
約4時間で3.15リットルの水素を吸収し、水素の吸収が止まったので、反応をやめ、反応溶液を濾別して、Pt含有カーボンを除去してから、濃縮、再結晶して(3‘-アミノフェニル)-3-アミノシンナメート4.0gを得た。
・・・
(実施例7)
・・・
2(審決注:○の中に数字の2)1‘-アミノ-2’-ナフチル-(3-アミノシンナメート)の合成
・・・
約4時間で2.9リットルの水素を吸収し、水素の吸収が止まったので、反応をやめ、反応溶液を濾別して、Pt含有カーボンを除去してから、濃縮、再結晶して1‘-アミノ-2’-ナフチル-(3-アミノシンナメート)4.5gを得た。
・・・
(実施例8)
・・・
2(審決注:○の中に数字の2)1,3-ビス(4-アミノ桂皮酸)ベンゼンの合成
・・・
約4時間で3.14リットルの水素を吸収し、水素の吸収が止まったので、反応をやめ、反応溶液を濾別して、Pt含有カーボンを除去してから、濃縮、再結晶して1,3-ビス(4-アミノ桂皮酸)ベンゼン8.0gを得た。
・・・
(実施例9)
・・・
2(審決注:○の中に数字の2)1,2-ビス(4-アミノ桂皮酸)エチルの合成
・・・
約4時間で3.18リットルの水素を吸収し、水素の吸収が止まったので、反応をやめ、反応溶液を濾別して、Pt含有カーボンを除去してから、濃縮、再結晶して1,3-ビス(4-アミノ桂皮酸)エチル7.0gを得た。」(第52頁第12行?第62頁第1行)

(1k)「産業上の利用可能性
本発明は、ポリイミドに桂皮酸骨格を有する新規ポリイミド組成物を提供することができ、本発明にかかる新規ポリイミド組成物は、優れた感光性樹脂としてエッチング加工、樹脂凸板等の印刷分野、さらに、半導体デバイスの微細加工、プリント配線板のレジスト膜の形成や、半導体デバイスの多層配線の層間絶縁膜等電子部品用途、その他、光ディスク基板形成用材料等種々の用途を拡大することに貢献する。」(第69頁第1行?第7行)

ウ 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、摘記(1a)、(1b)に一般式(5)で表されたジアミンとして、
「一般式(5)

で表されるジアミンであって、Jが、-CH_(2)-,-(CH_(2))_(m)-O-,-(CH_(2))_(n)-OCO-、ただしm=1?15、n=1?15から選択される2価の有機基である新規ジアミン。」(摘記(1a))との記載、
「本発明の新規ジアミンは、一般式(5)

で表されるジアミンであって、K,Lは、H,CH_(3),F,Cl,Br,CH_(3)O-から選択される1の基を示し、Jは、-CH_(2)-,-(CH_(2))_(m)-O-,-(CH_(2))_(n)-OCO-、ただしm=1?15、n=1?15から選択される2価の有機基である。」(摘記(1d))との記載がある。
そして、一般式(5)のジアミンの製造方法として、
「ジアミンは、一般式(3-2)

(但し、KはH,CH_(3),F,Cl,Br,CH_(3)O-を示す。)で表される桂皮酸誘導体または、一般式(3-3)

(但し、KはH,CH_(3),F,Cl,Br,CH_(3)O-を示す。)で表される桂皮酸クロライド誘導体と、一般式(3-4)

(但し、LはH,CH_(3),F,Cl,Br,CH_(3)O-をJは2価の有機基を示す。)で表される水酸基を有するニトロ化合物と反応させて、一般式(3-5)

(但し、Jは2価の有機基、K,LはH,CH_(3),F,Cl,Br,CH_(3)O-を示す。)で表されるジニトロ化合物が得られる。
上記得られた一般式(3-5)で表されるジニトロ化合物を還元して、一般式(5)で表されるジアミンが得られる。」と記載されている(摘記(1h))。
そうすると、刊行物1には、一般式(5)のジアミンが製造方法を伴って記載されており、
「一般式(5)

で表されるジアミンであって、K,Lは、H,CH_(3),F,Cl,Br,CH_(3)O-から選択される1の基を示し、Jは、-CH_(2)-,-(CH_(2))_(m)-O-,-(CH_(2))_(n)-OCO-、ただしm=1?15、n=1?15から選択される2価の有機基であるジアミン」の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されていると認める。

エ 対比
そこで、本願補正発明と引用発明Aとを対比する。
本願補正発明の「下記式(c)で表されることを特徴とするジアミン。
【化1】


(式中、Xは独立してエーテル(-O-)、エステル(-COO-または-OCO-)及びアミド(-CONH-または-NHCO-)から選択される結合基であり、Yは独立して単結合または炭素数1?5のアルキレン基である。ベンゼン環上のアミノ基の結合位置は特に限定されない。また、前記アルキレン基は環の一部を構成している場合を除く。)」と、
引用発明Aの「一般式(5)

で表されるジアミンであって、K,Lは、H,CH_(3),F,Cl,Br,CH_(3)O-から選択される1の基を示し、Jは、-CH_(2)-,-(CH_(2))_(m)-O-,-(CH_(2))_(n)-OCO-、ただしm=1?15、n=1?15から選択される2価の有機基であるジアミン」の構成を比較する。
引用発明Aの右端のフェニル基は「アミノ基を有する右端のフェニル基」である限りにおいて、本願補正発明の「アミノ基を有する左端のフェニル基」に相当する。引用発明Aの左端のフェニル基に結合する-CH=CH-C(=O)-O-までの部分構造は、「左端のアミノ基を有するフェニル基に続き-CH=CH-C(=O)-O-まで」である限りにおいて、本願補正発明の「右端のアミノ基を有するフェニル基に結合する-CH=CH-C(=O)-O-まで」の部分構造に相当する。
引用発明Aの「K,L」は、一般式(5)のジアミンにおける結合位置からすると、本願補正発明の式(c)で表されるジアミンの末端の2つのフェニル基にそれぞれ結合する置換基である限りにおいて一致する。引用発明Aの部分構造である「J」は、一般式(5)のジアミンにおける結合位置からすると、本願補正発明の式(c)で表されるジアミンにおける部分構造である「X-Y」に対応し、引用発明Aの「J」における2価の有機基には環の一部を構成しているものはもともと含まれていないため、本願補正発明のYに関する特定である「前記アルキレン基は環の一部を構成している場合を除く。」に該当することになる。
以上のことから本願補正発明と引用発明Aとの一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
引用発明Aが右端のフェニル基に置換基「K」を有し、左端のフェニル基に置換基「L」を有する点を除き、以下の基本骨格を有する化合物である点
「式(c)



(相違点)
相違点1
式(c)の右端のアミノ基を有するフェニル基の置換基が、本願補正発明では、H(水素)であるのに対し、引用発明Aでは、この置換基「K」として、「H,CH_(3),F,Cl,Br,CH_(3)O-から選択される1の基」と特定されている点

相違点2
式(c)の左端のアミノ基を有するフェニル基の置換基が、本願補正発明では、H(水素)であるのに対し、引用発明Aでは、この置換基「L」として、「H,CH_(3),F,Cl,Br,CH_(3)O-から選択される1の基」と特定されている点

相違点3
本願補正発明では、X及びYが、それぞれ「Xは独立して独立してエーテル(-O-)、エステル(-COO-または-OCO-)及びアミド(-CONH-または-NHCO-)から選択される結合基」、「Yは独立して単結合または炭素数1?5のアルキレン基」と特定されているのに対し、引用発明Aでは、「-CH_(2)-,-(CH_(2))_(m)-O-,-(CH_(2))_(n)-OCO-、ただしm=1?15、n=1?15から選択される2価の有機基」と特定されている点

オ 判断
(ア)相違点1について
刊行物1には、「本発明の目的は、桂皮酸あるいは桂皮酸誘導体を有する新規ポリイミド組成物を得るための新規ジアミンまたは新規酸2無水物を提供することにある。」と記載されており(摘記(1c))、引用発明Aの目的は、「桂皮酸あるいは桂皮酸誘導体から新規ジアミンを提供すること」であり、引用発明Aは桂皮酸から誘導された新規なジアミンであるということができる。
ここで桂皮酸とは「

」という化学構造式を有する化合物ということは技術常識であるといえるところ、引用発明Aの左端のアミノ基を有するフェニル基から-CH=CH-C(=O)-O-までの部分構造は桂皮酸由来の部分構造であるということができる。
そして、刊行物1には、具体的な桂皮酸クロライドから誘導された新規ジアミンとして、「3,5-ジアミノベンジル シンナメート」、「2,4?ジアミノフェニル シンナメート」、「2-(2,4-ジアミノフェノキシ)エチル-1-シンナメート」が記載されており(摘記(1j))、これらの桂皮酸から誘導された新規ジアミンの桂皮酸由来の部分構造は、一般式(5)の左端のアミノ基の置換基「K」としてH(水素)であるといえる。
したがって、引用発明Aにおいて、左端のアミノ基を有するフェニル基の置換基「K」として、Kの選択肢として最初に記載され、刊行物1において他の実施例において用いられているHを選択することは当業者であれば容易になし得る技術的事項である。

(イ)相違点2について
刊行物1には、桂皮酸から誘導された新規ジアミンとテトラカルボン酸とを反応させて得られる新規なポリイミドも記載されている(摘記(1c))。
この刊行物1に記載された新規ジアミンは、上記(ア)で述べたように、桂皮酸から誘導されたジアミンであって、刊行物1には、この新規ジアミンとして具体的に実施例に記載されているジアミンは、桂皮酸以外から誘導される部分のアミノ基を有するフェニル基の置換基としては水素原子のみである。
ここで、ポリイミドとは、ジアミンとテトラカルボン酸とが脱水縮合してイミド環を形成して製造される重合体といえるところ、本願発明Aのジアミンも、刊行物1に記載された実施例と同様にポリイミドを製造するには、脱水縮合に係るアミノ基が結合しているフェニル基は実施例と同じイミド環形成反応を生じることができる状態、すなわち、置換基として水素のみを有するフェニル基にすることが自然であるといえる。
そうすると、引用発明Aにおいて右端のアミノ基を有するフェニル基の置換基「L」として、Lの選択肢として最初に記載されているHを選択することは当業者であれば容易になし得る技術的事項である。

(ウ)相違点3について
引用発明Aでは、相違点3に係る化学構造として、具体的に3種の化学構造を選択肢として有しており、そのうち2つ選択肢が本願補正発明の結合基と重複しているということができる。すなわち、引用発明Aは、「Jは、-CH_(2)-,-(CH_(2))_(m)-O-,-(CH_(2))_(n)-OCO-、ただしm=1?15、n=1?15から選択される2価の有機基」と特定されており、本願補正発明との対比において「m」及び「n」の値を除けば、Xがアミドの結合基、Yが単結合である場合以外、全ての選択肢において一致しているといえる。
加えて、Jの3種の結合を、アルキレン基の結合(-CH_(2)-,-(CH_(2))_(m)-,-(CH_(2))_(n)-)と、他の結合(単結合,エーテル(-O-),エステル(-OCO-))に分けてみると、一般式(5)のジアミンの「J」としては、アルキレン基を必ず有するものといえる。
上記のとおり、選択肢の範囲が重複、一致している前提において、まず、このアルキレン基について検討すると、引用発明Aではアルキレン基の炭素数は、1?15と特定されているところ、その範囲の中から炭素数の少ない1?5とすることは当業者であれば当然検討することに過ぎない。
次に、他の結合(単結合、エーテル、エステル)について検討すると、単結合、エーテル、エステルと特定される選択肢の中から、エーテルとエステルを選択することも当業者であれば当然検討することに過ぎない。
したがって、引用発明Aにおいて、「J」として、「mが1?5の-(CH_(2))_(m)-O-」、「nが1?5の-(CH_(2))_(n)-OCO-」の2価の有機基を選択すること、すなわち、式(c)で表されるジアミンにおいて、「Xをエーテル(-O-)、エステル(-COO-または-OCO-)から選択される結合基」とし、「Yを炭素数1?5のアルキレン基」とすることは当業者が容易になし得る技術的事項である。

(エ)効果について
a 本願補正発明はいわゆる化合物の発明である。本願明細書には、その[0006]に、本発明の目的はAC駆動による液晶配向性能変化が低減され、残像特性が良好な液晶素子を構成するポリイミドを得ることができる新規ジアミンを提供することと記載され、具体的には、合成例1?12でジアミン[1]?[12]を合成し、それらを用いてテトラカルボン酸とを反応させポリイミドを合成し、このポリイミドを用いて液晶配向剤A1?15を作製した上で、実施例1?14において各液晶配向剤を用いて液晶セルを作製して液晶配向性能評価や残像評価を実施したことが記載されており、実施例1?6は、交流駆動前後の配向方位角の差が小さく、残像特性が顕著に向上していること、実施例7?14においても残像特性が向上し、良好な液晶配向性能を示すことが記載されている(【0104】?【0187】)。
上記の残像特性が向上し、良好な液晶配向性能を示すという効果は、他の成分と混合し、ポリイミドを合成して液晶配向剤を作製し、さらにその配向剤を用いて液晶セルを作製した場合の効果であるといえ、本願補正発明である化合物自体の発明の効果であるとはいえない。

b また、実施例1?14の残像特性が向上し、良好な液晶配向性能を示すという効果を検討したとしても、上記実施例で用いられているジアミン[1]?[12]は、その化学構造式を見ると、本願補正発明の式(c)に相当するジアミン、すなわち、Xがエーテル、エステル、アミドから選択される結合基を有するジアミンではない。
したがって、本願補正発明の式(c)で表されるジアミンの合成例及び、それを成分として含む液晶配向剤を用いた液晶セルのその残像特性の向上や良好な液晶配向性能を示す実施例は何ら記載されていない。
また、本願明細書では側鎖型のジアミンよりも主鎖型のジアミンを用いると液晶配向力に優れることは記載されているものの、具体的に本願補正発明の式(c)で表されるジアミンが顕著な作用効果を有することを理論的に説明したことも記載されていない。
さらに、本願明細書における実施例や比較例を参酌すると、ジアミン[1]?[12]中の比較でも、化学構造式のわずかな差異により配位方位角が大きく異なっていることを考慮すると、ジアミン[1]?[12]と化学構造式が大きく異なる本願補正発明の式(c)で表されたジアミンの残像特性や液晶配向性能の結果は、本願明細書の実施例の効果と同等であるということはできない。

c 仮に残像特性が向上し、良好な配向性能を示すことが本願補正発明の効果であるとしても、これらの効果は、式(c)のジアミンを他のテトラカルボン酸と反応させたポリイミドを用いた液晶配向剤による効果というべきであるといえる。

d さらに、刊行物1には、引用発明Aのジアミンを原料として新規ポリイミド組成物を得ることができ、熱硬化性樹脂、熱反応樹脂として新たな用途を提供することが記載されており(摘記(1i))、また、新規ポリイミド組成物は、優れた感光性樹脂としてエッチング加工、樹脂凸板等の印刷分野、さらに、半導体デバイスの微細加工、プリント配線板のレジスト膜の形成や、半導体デバイスの多層配線の層間絶縁膜等電子部品用途、その他、光ディスク基板形成用材料等種々の用途を拡大することに貢献することが記載されている(摘記(1k))のであるから、ポリイミド組成物に種々の用途があることを示している。
一方、化合物の発明である本願補正発明は、その化合物であるジアミンに関する有用性の一つとして、ポリイミド合成後に周知の液晶配向剤の成分とすることを想定しているにすぎない。
したがって、本願補正発明の化合物が液晶配向剤分野で使用できたからといって、当業者の予測を超える格別顕著な効果であるということもできない。

カ 審判請求人の主張
審判請求人は、審判請求書の手続補正書(方式)及び手続補足書において、「化学式が類似しているから改変することが容易だとするのは失当である。化学式はその一部を変更したり、追加したりした化学構造が存在するか否かは全く不明であり、作画する如く、自由に改変することはできない。」(手続補正書(方式)第2頁第9行?第11行)ことや、引用文献に記載されている化合物を参考にして改変しても、改変箇所は無数に存在し、式(c)や式[5]を想到するのは当業者といえども容易とはいえないと主張する(以下「主張(ア)」という。)。
また、「本願発明を式(c)・・・に限定したので、引用文献1-6に記載された発明と比較するまでもなく、例えば、式(2-1-42)に相当する式[7]と比較して有利な効果が認められれば十分である。ここで、本件明細書の式[5]に係る化合物を用いた実施例5と、式[7]の化合物を用いた実施例6とを比較すると、液晶配向性能は何れも良好であり、また、残存特性についても何れも優れているが、液晶配向性能についてさらに詳細に比較した実験成績証明書を提出し、本願発明が引用文献3の式(2-1-42)と比較して有利な効果を奏することを示し、本願発明は、引用文献1-3からは示唆されない特異の構成に基づき、当業者が予期できない効果を奏することを示す。」(手続補正書(方式)第2頁第18行?第25行)と主張する(以下「主張(イ)」という。)。

そこで、これらの点について検討する。

(ア)主張(ア)について
上記オ(ア)、(イ)、(ウ)で検討したとおり、引用文献5、すなわち刊行物1における引用発明Aにおいて、大部分の選択肢が重複し、選択肢の数も限られているものであるから、本願補正発明のジアミンを構成することは容易であることはすでに述べたとおりである。
よって、上記主張は採用することはできない。
また、すでに包含されている限られた選択肢から上述の検討のとおり選んだものにすぎないといえるから、本願補正発明の化合物と引用発明Aと重複関係や実施例等の選択肢の記載を前提としない化学式の一部を変更、追加することができないとの主張も採用することはできない。そして、引用発明Aにおける2価の有機基として選択肢に挙げられているのはそれぞれ-CH_(2)-,-(CH_(2))_(m)-O-,-(CH_(2))_(n)-OCO-であり、mやnもわずか1?15から1?5の範囲を選ぶものであることから、改変箇所が無数に存在している訳ではなく、当業者が容易に想到できないという主張も採用することはできない。

(イ)主張(イ)について
上記オ(エ)で検討したとおり、本願補正発明の式(c)で表されるジアミンを用いた実施例は記載されておらず、異なるジアミンに関する残像特性の向上や良好な液晶配向性能を示すことを本願補正発明の効果としてもともと参酌することはできない。
そして、ジアミン[5]に係る化合物「

」は、その化学構造式からすると、式(c)におけるXとして、エーテル、エステル、アミドから選択される結合基を有するものではないから、本願補正発明の式(c)で表されるジアミンに包含されるものでない。
よって、実験成績証明書を参酌して、仮にジアミン[5]に係る化合物が有利な効果を奏しているとしても、本願補正発明とは別のジアミンに関するものであり、本願補正発明の効果ではないのであるから、本願補正発明は当業者が予期できない効果を奏するとの主張は採用することはできない。

キ まとめ
以上のとおりであるので、本願補正発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国で頒布された刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)補正の却下の決定のむすび
よって、審判請求時の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものである。

3 まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、審判請求時の手続補正は、同法159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明
平成30年2月15日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成29年7月11日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
下記式(a)?(c)で表されることを特徴とするジアミン。
【化1】

(式中、Xは独立して単結合もしくはエーテル(-O-)、エステル(-COO-または-OCO-)及びアミド(-CONH-または-NHCO-)から選択される結合基であり、Yは独立して単結合または炭素数1?5のアルキレン基であり、Zは独立して炭素数1?10のアルキレン基もしくはフェニレン基である。ベンゼン環上のアミノ基の結合位置や、中央のベンゼン環に対する結合基の位置は特に限定されない。)」(以下「本願発明」という。)

第4 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は、平成29年3月15日付け拒絶理由通知における理由1及び2であり、その理由1の概要は、この出願の請求項1?6に係る発明は、その出願前に頒布された引用文献1?8に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、というものであり、また、理由2の概要は、この出願の請求項1?6に係る発明は、その出願前に頒布された引用文献1?6に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

そして、引用文献5は、国際公開第99/51662号(上記第2 2(2)アの刊行物1と同じ。以下「刊行物1」という。)である。

第5 当審の判断
1 刊行物、刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、その記載事項は、上記第2 2(2)ア及びイに記載したとおりである。

2 刊行物に記載された発明
(1)引用発明A
第2 2(2)ウに記載されたとおり引用発明Aが記載されている。

(2)引用発明B
刊行物1には、(4‘-アミノフェニル)-4-アミノシンナメートを合成したことが記載されている(摘記(1j))。
そうすると刊行物1には、このジアミンが製造方法を伴って記載されており、「(4‘-アミノフェニル)-4-アミノシンナメート」の発明(以下「引用発明B」という。)が記載されているといえる。

(3)引用発明C
刊行物1には、(3‘-アミノフェニル)-3-アミノシンナメートを合成したことが記載されている(摘記(1j))。
そうすると刊行物1には、このジアミンが製造方法を伴って記載されており、「(3‘-アミノフェニル)-3-アミノシンナメート」の発明(以下「引用発明C」という。)が記載されているといえる。

3 対比・判断
本願発明は、式(a)?(c)で表されることを特徴するジアミンとするものであり、式(c)で表されるジアミンにおいて、本願補正発明と比較すると、本願発明は、Xに「単結合」が含まれており、「炭素数1?5のアルキレン基」の特定に関して、「また、前記アルキレン基は環の一部を構成している場合を除く。」との特定が含まれていないものであり、その余の点では本願補正発明と同じである。

(1)引用発明A
ア 本願発明において、Xは独立してエーテル(-O-)、エステル(-COO-または-OCO-)及びアミド(-CONH-または-NHCO-)から選択される結合基であり、Yは炭素数1?5のアルキレン基である場合について検討すると、上記X及びYで選択された基は、本願補正発明で特定された基をすべて包含するものであるから、本願発明と引用発明Aとの対比、判断については、本願補正発明について前記第2 2(2)エ、オで検討したのと同様に、本願発明は、引用発明Aから当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 上述のとおり、本願発明は、引用発明Aから当業者が容易に発明をすることができたものであるが、本願発明において、Xが単結合であり、Yが炭素数1?5のアルキレン基である場合について、念のためさらに検討すると、引用発明AのJは選択肢として、-CH_(2)-を有しており、これはXが単結合でありYが炭素数1のアルキレン基といえ、前記第2 2(2)オ(ウ)で述べた理由により、Xが単結合であり、Yが炭素数1?5のアルキレン基とする場合でも当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

ウ さらに効果について検討してみても、式(c)で表されるジアミンであって、Xが単結合であり、Yが炭素数1?5のアルキレン基である場合の効果であるとして示されているのは、特定のジアミン[5]と他のテトラカルボン酸と反応させたポリイミドを用いた液晶配向剤としての効果のみであり、一部の化合物における効果を確認しただけであるともに、本願発明である化合物自体の発明の効果であるともいえない。

エ また、手続補正書(方式)及び手続補足書に示された実験成績証明書の結果を参酌したとしても、その結果は、特定のジアミン[5]を他のテトラカルボン酸と反応させたポリイミドを用いた液晶配向剤が、他のジアミンを用いた液晶配向剤と比較して液晶配向性の結果に一定の差を生じていることを示しているにすぎない。用いるジアミンやポリイミドごとに一定の差が生じることは当然予想され、本願発明で特定される化合物の全体に渡って同等の効果を有するものであるとはいえないとともに、一定の差を生じたことを当業者の予測を超えた顕著な効果ということもできない。

(2)引用発明B
本願発明において、式(c)で表されるジアミンとしてXが単結合であり、Yが単結合である場合を検討する。
引用発明Bは、本願発明における式(c)で表されるジアミンにおいて、Xとして単結合、Yとして単結合を選択したものに相当する。
そうすると、引用発明Bは、本願発明の式(c)で表されるジアミンに包含されるものであるから、本願発明と引用発明Bは化学構造式上の差異はない。
よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明である。

(3)引用発明C
引用発明Cは、本願発明における式(c)で表されるジアミンにおいて、Xとして単結合、Yとして単結合を選択したものに相当する。
そうすると、引用発明Cは、本願発明の式(c)で表されるジアミンに包含されるものであるから、本願発明と引用発明Cは化学構造式上の差異はない。
よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明である。

4 まとめ
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないか、または、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許を受けることができないものであるから、この出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-11-28 
結審通知日 2018-12-05 
審決日 2018-12-18 
出願番号 特願2014-512702(P2014-512702)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07C)
P 1 8・ 575- Z (C07C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 薄井 慎矢新留 素子三上 晶子  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 菅原 洋平
瀬良 聡機
発明の名称 ジアミン、重合体、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子  
代理人 山▲崎▼ 雄一郎  
代理人 栗原 浩之  

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