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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1349158
審判番号 不服2017-15713  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-24 
確定日 2019-02-14 
事件の表示 特願2015-235333「無線基地局及び通信制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月19日出願公開、特開2016- 85749〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年11月11日に出願した特願2010-253277号の一部を平成26年8月20日に新たな特許出願とした特願2014-168002号の一部をさらに平成27年12月2日に新たな特許出願としたものであって、平成29年7月19日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成29年10月24日に審判が請求され、その後、平成30年9月11日付けで当審により拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成30年11月14日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明は、平成30年11月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

[本願発明]
「無線基地局であって、
自局が形成する通信エリア内において無線端末との通信を行う無線通信部と、
バックホールネットワークを介した通信を行うネットワーク通信部と、
自局が設置された後、自局の稼働を開始する際に、前記通信エリアに対応する地域で行われているイベントに関するコンテンツデータを自動的に取得する制御部と、
前記取得されたコンテンツデータを記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されているコンテンツデータを無線端末に配信するよう前記無線通信部を制御する、無線基地局。」

第3 当審拒絶理由の概要
この出願の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


1.特開2006-50499号公報
2.特開2008-172536号公報
3.特開2010-147541号公報
4.特開2010-28369号公報
5.特開2009-105791号公報

第4 引用文献の記載事項、引用発明
1.引用文献1
当審拒絶理由で引用された特開2006-50499号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審により付与したものである。

「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り従来システムでは、移動機端末が移動するエリア毎に変化する自身の位置する周辺のローカルエリア情報を取得するために、オペレータが提供する情報格納サーバへいちいち接続し、メニュー画面から選択しなければ取得できないという問題があった。更には、情報を取得するタイミングが集中するような災害等緊急時にネットワーク負荷が増大して回線がパンクすることで必要な情報が得られないといった問題もあった。
【0005】
この発明は移動体通信ネットワークにおいて、ユーザが移動先でオペレータの提供する情報格納サーバに接続する事無く簡単にローカルエリア情報を取得でき、公共性の高い災害緊急情報等も迅速かつ正確に取得できるシステムを実現することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る基地局装置は、
所定のエリアを管轄エリアとし、管轄エリア内の移動端末装置の通信制御を行う基地局装置であって、
管轄エリア内の移動端末装置に提供するための提供情報を格納する提供情報格納部と、
管轄エリア内のいずれかの移動端末装置より、当該移動端末装置に対する通信制御を行うよう要求する制御要求を受信する制御要求受信部と、
前記制御要求受信部が制御要求を受信した場合に、前記提供情報格納部に格納されている提供情報を管轄エリア内の移動端末装置に対してブロードキャスト送信する提供情報送信部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明によれば、移動端末装置から基地局装置への制御要求に基づいて基地局装置が提供情報をブロードキャスト送信するため、無線回線リソースを最小限に抑えることができ、更に、移動端末装置のユーザに提供情報の取得のための操作を強いることなく、移動端末装置のユーザが気付かない間に移動端末装置が提供情報を受信することができ、提供情報の取得における利便性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図を参照しながら説明する。図1は本実施の形態に係る通信システムの構成例を示す図である。図1において、1a?1bは無線制御局RNCであり、配下の無線基地局BTS2a?2dへ、情報格納サーバ6に格納されているローカルエリア情報を5のオペレータの地域ネットワーク(オペレータネットワーク)を介して転送する。無線基地局BTS2a?2dは受信したローカルエリア情報を各々のローカルエリア情報格納部28に格納するとともに、各々配下の移動機端末UE3a?3hへ上記ローカルエリア情報を報知する。移動機端末UE3a?3hでは、無線基地局BTS2a?2dから送信されたローカルエリア情報を受信するとともに、受信したローカルエリア情報を各々のローカルエリア情報格納部31に格納する。ローカルエリア情報は、上述したように、移動機端末UE3a?3hが所在するエリアの情報である。無線基地局BTS2a?2dのそれぞれは所定のエリアを管轄エリアとしており、管轄エリア内の移動機端末UE3a?3hの通信制御を行うとともに、管轄エリアのローカルエリア情報を管轄エリア内に所在する移動機端末UE3a?3hへ送信する。なお、ローカルエリア情報は提供情報の例である。また、情報格納サーバ6は提供情報生成装置の例であり、無線基地局BTS2a?2dは基地局装置の例であり、移動機端末UE3a?3hは移動端末装置例である。
【0009】
次に、情報格納サーバ6と無線基地局BTS2a?2d及び移動機端末UE3a?3hの関係を説明した詳細ブロック図を図2に示す。
【0010】
情報格納サーバ6において、情報更新部20は、各エリアのローカルエリア情報を更新する。ローカルエリア情報格納部21は、情報更新部20により更新されたローカルエリア情報を格納する。呼接続処理部22は、エリア内BTSアドレス帳23を用いて無線基地局BTS2a?2dとの呼接続処理を行う。転送データ送信部24は、ローカルエリア情報格納部21に格納されているローカルエリア情報を対応する無線基地局BTS2a?2dに送信する。
【0011】
無線基地局BTS2a?2dにおいて、呼接続処理部25は、情報格納サーバ6との呼接続処理を行う。転送データ受信部26は、情報格納サーバ6から送信されたローカルエリア情報を受信する。ローカルエリア情報格納部28は、転送データ受信部26が受信したローカルエリア情報を格納する。情報更新監視回路27は、ローカルエリア情報格納部28に格納されているローカルエリア情報の更新の有無を監視し、ローカルエリア情報の更新を検知した場合は、更新されたローカルエリア情報をブロードキャスト送信部29に送信するようにローカルエリア情報格納部28に指示する。位置登録要求受信部33は、別の無線基地局BTSの管轄エリアから当該無線基地局BTSの管轄エリアに移動してきた移動機端末UE又は電源をオンにした移動機端末UEから送信された位置登録要求(制御要求)を受信し、位置登録要求を受信した際に、ローカルエリア情報をブロードキャスト送信部29に送信するようにローカルエリア情報格納部28に指示する。ブロードキャスト送信部29は、ローカルエリア情報格納部28から送信されたローカルエリア情報を管轄エリア内の移動機端末UE3にブロードキャスト送信する。なお、転送データ受信部26は提供情報受信部の例であり、ローカルエリア情報格納部28は提供情報格納部の例であり、ブロードキャスト送信部29は提供情報送信部の例であり、位置登録要求受信部33は制御要求受信部の例である。
【0012】
移動機端末UE3a?3hにおいて、転送データ受信部30は対応する無線基地局BTS2a?2dより送信されたローカルエリア情報を受信する。ローカルエリア情報格納部31は転送データ受信部30により受信されたローカルエリア情報を格納する。位置登録要求送信部32は、移動機端末UEの移動により新たな無線基地局BTSの管轄エリア内に入った際、又は移動機端末UEの電源がオンになった際に、対応する無線基地局BTSに対して位置登録を要求する位置登録要求を無線基地局BTSに送信する。
【0013】
次に、動作を説明する。図3は、情報格納サーバ6においてローカルエリア情報の更新が行われた場合の動作を示している。まず、情報格納サーバ6において、情報更新部20がローカルエリア情報が更新されたか否かを対象となる無線基地局BTS(管轄エリア)ごとに判断する(S40)。ローカルエリア情報が更新されている場合は、呼接続処理部22が対応する無線基地局BTSのアドレスをエリア内BTSアドレス帳23から取得し(S41)、対応する無線基地局BTSに発呼する(S42)。一方、無線基地局BTSでは、呼接続処理部25が情報格納サーバ6からの呼を受け付け(S43)、着呼応答を行い(S44)、この結果、情報格納サーバ6と無線基地局BTSとの間にオペレータネットワーク5と無線制御局RNC1a?bを介してコネクションが張られる(S45)。その後、情報格納サーバ6の転送データ送信部24から無線基地局BTS2にローカルエリア情報が送信され(S46)、無線基地局BTS側では転送データ受信部26がローカルエリア情報を受信し(S47)、ローカルエリア情報格納部28が更新されたローカルエリア情報を格納する(S49)。その後、無線基地局BTS2はローカルエリア情報を受信したことを示す情報受信応答を情報格納サーバ6に送信する(S50)。情報格納サーバ6は更新されたローカルエリア情報を送信した無線基地局BTS2の全てからの情報受信応答を受信することで一連の処理を終了する(S51)。それまでは情報受信応答を受信していない無線基地局BTS2に対して一定周期でS46のローカルエリア情報の送信を継続する(S48)。
【0014】
次に、図4を用いて無線基地局BTS2と移動機端末UE3の動作例を説明する。先ず、無線基地局BTS2では、情報更新監視回路27がローカルエリア情報格納部28に格納されているローカルエリア情報の更新有無を確認し(S54)、ローカルエリア情報の更新が確認されると、情報更新監視回路27はローカルエリア情報格納部28に対して更新されたローカルエリア情報をブロードキャスト送信部29に送信するよう指示し、ローカルエリア情報格納部28は指示に基づいて更新されたローカルエリア情報をブロードキャスト送信部29に送信する。ブロードキャスト送信部29は、自局内エリアに存在する全移動機端末UE3に更新されたローカルエリア情報をブロードキャスト送信する(S56)。ブロードキャストのため無線リソースは1チャネル分しか使用しない。移動機端末UE3では、ブロードキャスト送信されたローカルエリア情報を受信し(S58)、受信したローカルエリア情報を無条件にローカルエリア情報格納部31に格納し(S59)、ローカルエリア情報を受信したことを示す情報受信応答をランダムアクセスチャネルで無線基地局BTS2に送信する(S60)。無線基地局BTS2は配下の全移動機端末UE3からの情報受信応答を受信することで一連の処理を終了する(S61)。それまでは一定周期でS56のブロードキャスト送信を継続する(S57)。」

「【0020】
実施の形態2.
また、実施の形態1に示す通信システムを使ったビジネスモデルの実施の形態として、ユーザが携帯電話でタクシーを呼び出すサービスを説明する。図5は上記ローカルエリア情報の内容とディレクトリ構成の一例であり、通常の携帯電話のメニュー画面から選択が可能で、図においてエリア情報のタクシーの下の○▽タクシーを選択すると、○▽タクシー会社の電話番号が表示され、通話ボタンで発信する。よって、携帯電話でローカルのタクシー会社のタクシーを簡単に呼び出し可能となる。また、オペレータはその時の通話料金とタクシー会社への掲載広告料を取得可能となり、タクシー会社も集客率を向上できる。個人タクシーなども掲載が可能である。その他、図5に戻って、エリア情報の列車情報の下の○○電鉄の最寄駅時刻表を選択すると、いつでもどこでも最寄駅時刻表が見ることができるといったことが可能である。これらはいずれも変更の少ない静的なローカルエリア情報である。また、ローカルエリア情報の他の例として、図10に示すようなショップ情報、イベント情報、天気予報といったものも可能である。つまり、移動機端末UEの所在するエリア内のショップ(レストランや生活用品など)やイベント(映画や美術館など)を移動機端末UEのユーザに提示することも可能である。」

以上、特に下線部の記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「情報格納サーバ6において、情報更新部20がローカルエリア情報が更新されたか否かを対象となる無線基地局BTS(管轄エリア)ごとに判断し、ローカルエリア情報が更新されている場合は、呼接続処理部22が対応する無線基地局BTSのアドレスをエリア内BTSアドレス帳23から取得し、対応する無線基地局BTSに発呼し、一方、無線基地局BTSでは、呼接続処理部25が情報格納サーバ6からの呼を受け付け、着呼応答を行い、この結果、情報格納サーバ6と無線基地局BTSとの間にオペレータネットワーク5と無線制御局RNC1a?bを介してコネクションが張られ、その後、情報格納サーバ6の転送データ送信部24から無線基地局BTSにローカルエリア情報が送信され、無線基地局BTS側では転送データ受信部26がローカルエリア情報を受信し、ローカルエリア情報格納部28が更新されたローカルエリア情報を格納し、
無線基地局BTSでは、情報更新監視回路27がローカルエリア情報格納部28に格納されているローカルエリア情報の更新有無を確認し、ローカルエリア情報の更新が確認されると、情報更新監視回路27はローカルエリア情報格納部28に対して更新されたローカルエリア情報をブロードキャスト送信部29に送信するよう指示し、ローカルエリア情報格納部28は指示に基づいて更新されたローカルエリア情報をブロードキャスト送信部29に送信し、ブロードキャスト送信部29は、自局内エリアに存在する全移動機端末UEに更新されたローカルエリア情報をブロードキャスト送信し、無線基地局BTSは配下の全移動機端末UEからの情報受信応答を受信することで一連の処理を終了し、それまでは一定周期でブロードキャスト送信を継続し、
ローカルエリア情報の他の例として、ショップ情報、イベント情報、天気予報といったものも可能であり、移動機端末UEの所在するエリア内のショップ(レストランや生活用品など)やイベント(映画や美術館など)を移動機端末UEのユーザに提示することも可能である、
通信システムにおける無線基地局BTS。」

2.引用文献2
当審拒絶理由で引用した特開2008-172536号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審により付与したものである。

「【0031】
次に、本発明の一実施形態に係る印刷システム1における、複合機41等及びサーバ2との間におけるデータ通信の概略について説明する。図2は複合機41等及びサーバ2間でのデータ通信の概略を示す図である。
【0032】
ユーザが、例えばコンビニエンスストア4の複合機41(複合機51,61の場合も同様)に、地図を印刷させる指示を入力すると、(1)複合機41は、サーバ2に対して、地図データ送信要求と、ユーザによる操作が行われた当該複合機41が設置されている場所を示す設置地域情報とを送信する。
【0033】
(2)サーバ2は、複合機41から上記地図データ送信要求及び設置地域情報を受信すると、当該受信した設置地域情報に関連付けられている縮尺及び地域の情報を、対応情報記憶部202(後述の図4)から読み出し、当該縮尺及び地域の地図データと、当該縮尺及び地域に対応させて記憶されている広告等の画像データとを複合機41に送信する。なお、サーバ2は、上記地図データからなる地図画像に、当該設置地域情報を送信してきた複合機41の設置位置を示す画像を、当該地図画像上の当該設置位置に対応する箇所に合成する。
【0034】
(3)複合機41は、上記地図データ及び画像データをサーバ2から受信すると、地図データを表面に印刷し、画像データをその裏面に印刷する。」

「【0041】
次に、サーバ2の内部構成の概略を説明する。図4はサーバ2の内部構成の概略を示すブロック図である。サーバ2は、地図データ記憶部201、対応情報記憶部202、通信部203、制御部204、画像合成部205、及び画像データ記憶部(画像データ記憶手段)206を備えている。
・・・中略・・・
通信部(データ送信手段)203は、複合機41等から地図データ送信要求及び設置地域情報を受信すると共に、上記画像合成部205による合成処理後の地図データと、制御部によって読み出された画像データとを、上記当該設置地域情報を送信してきた複合機41等に送信する。
【0046】
画像データ記憶部206は、上記設置地域情報が示す各地域別に対応付けられた広告等の各画像データが、それぞれ異なる縮尺からなる複数パターンで記憶されている。この画像データは、例えば、複合機41等の設置地域についての、航空写真、公共交通機関の時刻表、高速道路マップ、抜け道情報、道路混雑情報、登山道、山岳マップ、地形図、つり場マップ、潮汐表、釣果情報、特売広告や情報等である。」

「【0086】
上記第1乃至第4実施形態では、複合機41等は、操作者から地図の印刷指示が入力される毎に、サーバ2から、設置地域情報に対応する地図データや画像データを受信して印刷するが、第5実施形態では、複合機41等は、データ送受信部413が地図データ送信要求及び設置地域情報(必要に応じて目的地情報又は最大用紙サイズ情報も送信)をサーバ2に送信し(F11)、この設置地域情報(及び目的地情報又は最大用紙サイズ情報)に対応する縮尺及び地域の地図データや、当該設置地域情報に対応する画像データをサーバ2から一旦受信すると(F12)、制御部416が、当該受信した地図データや画像データを印刷データ記憶部4171に記憶させておく。なお、この場合のデータ送受信部413による地図データ送信要求及び設置地域情報のサーバ2への送信は(F11)、ユーザからの地図の印刷指示が操作部412に初めて入力されたときに行われるものでも、複合機41等のコンビニエンスストア4への導入初期に、メンテナンス作業員(導入作業者)が、操作部412を操作することで行われるものであってもよい。」

以上の記載から次のことがいえる。
引用文献2には、【0031】-【0034】の記載によれば、ユーザが、コンビニエンスストア4の複合機41に、地図を印刷させる指示を入力すると、複合機41は、当該複合機41が設置されている地域の地図データと広告等の画像データを印刷する印刷システムが記載されており、この広告等の画像データは、【0046】の記載によれば、例えば、特売広告等である。
また、地域の地図データと広告等の画像データは、引用文献2の【0086】の記載によれば、複合機41等のコンビニエンスストア4への導入初期に、複合機41等が、地図データ送信要求及び設置地域情報をサーバ2に送信し、サーバ2から受信して記憶させたものでもよい。
したがって、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「ユーザが、コンビニエンスストアの複合機に、地図を印刷させる指示を入力すると、複合機は、当該複合機が設置されている地域の地図データと特売広告等の画像データを印刷する印刷システムにおいて、地域の地図データと特売広告等の画像データは、複合機等のコンビニエンスストアへの導入初期に、複合機等が、地図データ送信要求及び設置地域情報をサーバに送信し、サーバから受信して記憶させておくものである、印刷システム。」

第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

本願発明と引用発明とは、「無線基地局」である点で一致する。

引用発明の「無線基地局BTS」は、管轄エリア(自局内エリア)を持ち、該エリア内の動機端末UEと通信を行うものであるから、該管轄エリア内において無線端末との通信を行う無線通信部を備えるのは明らかである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「自局が形成する通信エリア内において無線端末との通信を行う無線通信部」を備える点で一致する。

引用発明の「無線基地局BTS」は、情報格納サーバ6とオペレータネットワーク5を介して通信を行うものであるから、該通信を行うネットワーク通信部を備えるのは明らかである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「バックホールネットワークを介した通信を行うネットワーク通信部」を備える点で一致する。

引用発明では、情報格納サーバ6において、ローカルエリア情報が更新されている場合に、無線基地局BTSで、「呼接続処理部25が情報格納サーバ6からの呼を受け付け、着呼応答を行い、この結果、情報格納サーバ6と無線基地局BTSとの間にオペレータネットワーク5と無線制御局RNC1a?bを介してコネクションが張られ、その後、情報格納サーバ6の転送データ送信部24から無線基地局BTSにローカルエリア情報が送信され、無線基地局BTS側では転送データ受信部26がローカルエリア情報を受信」するから、引用発明の「無線基地局BTS」は、ローカルエリア情報を自動的に取得する制御部を備えるといえる。
また、引用発明の「ローカルエリア情報」は、例えば、「移動機端末UEの所在するエリア内のショップ(レストランや生活用品など)やイベント(映画や美術館など)」の情報であり、これは、本願発明の「前記通信エリアに対応する地域で行われているイベントに関するコンテンツデータ」に相当する。
さらに、引用発明において、ローカルエリア情報を取得するのは、無線基地局BTSが設置された後であるのは当然である。
したがって、本願発明と引用発明とは、「自局が設置された後、前記通信エリアに対応する地域で行われているイベントに関するコンテンツデータを自動的に取得する制御部」を備える点では共通しているといえる。
もっとも、この「制御部」が、本願発明では、「自局が設置された後、自局の稼働を開始する際に、前記通信エリアに対応する地域で行われているイベントに関するコンテンツデータを自動的に取得する」のに対し、引用発明では、「自局が設置された後、前記通信エリアに対応する地域で行われているイベントに関するコンテンツデータを自動的に取得する」とはいえるものの、取得するのが、情報格納サーバ6において、ローカルエリア情報が更新されている場合であって、「自局の稼働を開始する際に、」取得するかどうかについては特定されていない点では、両者は相違する。

引用発明では、「無線基地局BTS側では転送データ受信部26がローカルエリア情報を受信し、ローカルエリア情報格納部28が更新されたローカルエリア情報を格納」する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記取得されたコンテンツデータを記憶する記憶部」を備える点で一致する。

引用発明では、「ブロードキャスト送信部29は、自局内エリアに存在する全移動機端末UEに更新されたローカルエリア情報をブロードキャスト送信し、無線基地局BTSは配下の全移動機端末UEからの情報受信応答を受信することで一連の処理を終了し、それまでは一定周期でブロードキャスト送信を継続」する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記制御部は、前記記憶部に記憶されているコンテンツデータを無線端末に配信するよう前記無線通信部を制御する」点で一致する。

以上をまとめると、本願発明と引用発明との間には、以下の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
無線基地局であって、
自局が形成する通信エリア内において無線端末との通信を行う無線通信部と、
バックホールネットワークを介した通信を行うネットワーク通信部と、
自局が設置された後、前記通信エリアに対応する地域で行われているイベントに関するコンテンツデータを自動的に取得する制御部と、
前記取得されたコンテンツデータを記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されているコンテンツデータを無線端末に配信するよう前記無線通信部を制御する、無線基地局。

<相違点>
「制御部」が、本願発明では、「自局が設置された後、自局の稼働を開始する際に、前記通信エリアに対応する地域で行われているイベントに関するコンテンツデータを自動的に取得する」のに対し、引用発明では、「自局が設置された後、前記通信エリアに対応する地域で行われているイベントに関するコンテンツデータを自動的に取得する」とはいえるものの、取得するのが、情報格納サーバ6において、ローカルエリア情報が更新されている場合であって、「自局の稼働を開始する際に、」取得するかどうかについては特定されていない点。

相違点について検討する。

引用発明は、情報格納サーバ6において、ローカルエリア情報が更新された場合に、無線基地局BTSで、情報格納サーバ6からローカルエリア情報を自動的に取得して格納するものであり、そのことにより、「従来システムでは、移動機端末が移動するエリア毎に変化する自身の位置する周辺のローカルエリア情報を取得するために、オペレータが提供する情報格納サーバへいちいち接続し、メニュー画面から選択しなければ取得できないという問題」(引用文献1の【0004】を参照)を解決するものである。

一方、引用文献2には、上述したように、「ユーザが、コンビニエンスストアの複合機に、地図を印刷させる指示を入力すると、複合機は、当該複合機が設置されている地域の地図データと特売広告等の画像データを印刷する印刷システムにおいて、地域の地図データと特売広告等の画像データは、複合機等のコンビニエンスストアへの導入初期に、複合機等が、地図データ送信要求及び設置地域情報をサーバに送信し、サーバから受信して記憶させたものである、印刷システム。」が記載されている。
引用文献2に記載された該印刷システムは、複合機等の導入初期に、ユーザに提供する地図データと特売広告等の画像データ(ローカルエリア情報といえる。)をサーバから取得して複合機等に記憶させておくものであり、そのことにより、引用発明と同様の上記問題が、稼働を開始する際に解決されるものであると当業者には理解できる。

引用文献1には、無線基地局BTSにおけるローカルエリア情報の取得に関して、情報格納サーバ6においてローカルエリア情報が更新された場合について記載され、無線基地局BTSの導入初期のことについては何ら記載されていないが、引用発明において、仮に、無線基地局BTSの導入初期の状況を想定すると、そのときにも、ローカルエリア情報が更新された場合と同じ上記問題があることは当業者が容易に理解し得ることである。
したがって、引用発明において、引用文献2に記載された技術を適用することが有用であるのは明らかであるから、引用発明において、引用文献2に記載された技術を適用して、無線基地局BTSの導入初期にも、ローカルエリア情報をサーバから取得するようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。このように容易に想到し得た構成は、上記相違点に係る本願発明の「自局が設置された後、自局の稼働を開始する際に、前記通信エリアに対応する地域で行われているイベントに関するコンテンツデータを自動的に取得する制御部」に他ならない。

よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-12-05 
結審通知日 2018-12-11 
審決日 2018-12-25 
出願番号 特願2015-235333(P2015-235333)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺谷 大亮  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 千葉 輝久
菊地 陽一
発明の名称 無線基地局及び通信制御方法  
代理人 キュリーズ特許業務法人  

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