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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02B
管理番号 1349324
審判番号 不服2018-971  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-24 
確定日 2019-02-21 
事件の表示 特願2013-262714号「分電盤」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月25日出願公開、特開2015-119591号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成25年12月19日の出願であって、平成29年6月6日付けで拒絶理由が通知され、同年8月7日に意見書が提出されたが、同年10月5日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、平成30年1月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1、2に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
〔本願発明〕
「【請求項1】
前面が開口したボックスと、前記ボックスの前記開口を開閉可能に塞ぐドアと、長手方向を上下方向に一致させて前記ボックスの背面板に設けられる一対のベースレールと、前記ボックス内に引き込まれる外部電線に接続される複数の導電バーと、分岐導体を介して前記導電バーに接続される内器と、前記内器が取り付けられる基板と、前記基板を前記一対のベースレールに固定するための固定部材とを備え、
前記基板は、前記内器が一定の取付間隔で取り付けられるように構成され、前記分岐導体は、一端が前記内器の1次側端子に接続され、他端が前記導電バーにねじ止めされるように構成され、前記導電バーは、前記分岐導体をねじ止めするためのねじ挿通孔が一定の間隔で複数設けられており、前記取付間隔が前記ねじ挿通孔の間隔の整数倍となるように構成されることを特徴とする分電盤。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の要旨は次のとおりである。
〔理由〕
この出願の請求項1、2に係る発明は、本願の出願前に日本国内において頒布された下記の引用文献1に記載された発明と引用文献2及び3に記載された事項とに基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2007-209066号公報
引用文献2.特開2004-236380号公報
引用文献3.登録実用新案第3085115号公報

3.引用文献
(1)引用文献1に記載された事項及び引用発明
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。以下同様。

「【請求項1】
キャビネット内に二系統以上の入線がある分電盤において、前記キャビネットの両端には固定レールを配列し、該固定レールにはレールを渡し、該レールにはスライドレールを取り付けると共に、スライドレールの端部に機器取り付けレールを固定し、該機器取り付けレールまたは前記固定レールに分岐パネルを取り付け、該分岐パネルに前記電気機器を載置固定して前記分電盤を構成し、該分電盤が多系統で構成される場合、系統別に前記分岐パネルを前記機器取り付けレールまたは前記固定レールに取り付け、前記機器取り付けレールに取り付けた前記電気機器はスライド動作により移動可能であり必要に応じて取り付け位置の変更ができることを特徴とする分電盤。」

「【0010】
本発明に係る分電盤の実施例を図1?図2の添付図面に基づいて説明する。
【0011】
分電盤1は、分岐ブレーカ2等の電気機器をキャビネット3に配列し構成される。キャビネット3の両端には固定レール4を配列する。固定レール4にはレール5を渡し固定する。レール5の表面にはスライドレール6をスライド動作により移動可能に取り付ける。スライドレール6には長穴7を加工し、長穴7の範囲内においてレール5に固定する位置を変更できる。スライドレール6の端部に機器取り付けレール8を固定する。
【0012】
分岐ブレーカ2は分岐パネル9に載置固定し、分岐パネル9を固定レール4と機器取り付けレール8どちらにも固定可能に固定穴10を設ける。系統別に分岐パネル9を固定レール4に取り付けるか、機器取り付けレール8に取り付けるか分ける。例えば第一系統の分岐ブレーカ2aは機器取り付けレール8に固定し、第二系統の分岐ブレーカ2bは固定レール4に固定する。また同じ系統の分岐ブレーカ2は同じ母線11群へ分岐バー12を介して接続される。母線11群は上下二段に構え、例えば前述の第一系統の分岐ブレーカ2aは図1における下側の第一母線群11aへ接続し、第二系統の分岐ブレーカ2bは図1における上側の第二母線群11bへ接続する。
【0013】
通常分電盤1のキャビネット3に電気機器を収納するときには、母線11は上下重ねた状態に配置すると最小のスペースで納めることができる。しかしながら、図1に示すように、母線11が系統別に重ねてあると、下側の母線群11bに接続される分岐バー12の接続ねじ13が目視できない。そのままの状態では、施工、増設、点検等の作業が行えない。作業の際には、機器取り付けレール8に取り付けた第一系統の分岐ブレーカ2aをスライドレール6によりスライドさせ、上下の母線11の重なりをずらし、下側の母線群11bも正面から目視できる位置に移動させる。」

「【0016】
従来は、系統別に分岐ブレーカ2を配置していたが、分岐バー12を反転することで別系統の母線群11に接続が可能であるため、分岐ブレーカ2は系統に関わらず連続して配置することができ、省スペースとなる。また、回路を増設する際にも、分岐ブレーカ2は系統に関わらず配置でき省スペースとなる。」

【図1】から、固定レール4は、キャビネット3の背面に、長手方向を上下方向に一致させてキャビネット3に設けられていることを看取しうる。

上記の記載事項及び【図1】の記載からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「キャビネット3の背面の両端には固定レール4を長手方向を上下方向に一致させて配列し、該固定レール4にはレール5を渡し、該レール5にはスライドレール6を取り付けると共に、スライドレール6の端部に機器取り付けレール8を固定し、該機器取り付けレール8または前記固定レール4に分岐パネル9を取り付け、該分岐パネル9に分岐ブレーカ2を載置固定し、
同じ系統の分岐ブレーカ2の分岐バー12は同じ母線11群へ接続ねじ13により接続される、分電盤1。」

(2)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、制御盤において分岐開閉器と主幹バーとを電気的に接続するための分岐バーと主幹バーとの取付け構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
制御盤や分電盤等で、主幹バーから分岐して各負荷回路に電力を供給したり遮断したりする分岐開閉器について、分岐バーを介してこの入力端子を主幹バーと電気的に接続する従来の構造は、実開平4-58006号公報の第2頁の図4で従来例として例示されている。これによれば、入力端子と分岐バー、分岐バーと主幹バーを螺子止めにより接合していた。この場合、分岐開閉器の入力端子のピッチ間隔と高さが1種類のみであれば、入力端子のピッチ間隔と同じ間隔で分岐バー取付け孔を穿設した主幹バーと、これに対応する分岐バーを用意しておくことで、多種類の制御盤の設計・製造に対応することが可能であった。
【0003】
ところで、分岐開閉器のサイズ規格としては、100A以下のものとしてJIS協約形(端子ピッチ間隔25mm、端子高さ32mm)が標準的に流通している。これ以外のサイズは、特注品の場合はメーカーによって仕様が異なるが、大体は、端子ピッチ間隔30mm、端子高さ24mmのものと、端子ピッチ間隔35mm、端子高さ24mmのものとが汎用形として流通している。ここで、JIS協約形と汎用形の分岐開閉器を併用した場合は、前述した従来の構造は適用できない。これに対応する分岐バーと主幹バーとの取付け構造として、図9?図11に示す第1の改良構造と、図12及び図13に示す第2の改良構造とが考えられる。図9は第1の改良構造を示す斜視図、図10は同じ物を示す上面図、図11は同じ物を示す断面図である。また、図12は第2の改良構造を示す斜視図、図13は同じ物を示す上面図である。なお、第2の改良構造を示す断面図は、第1の改良構造と同じであって、図10である。
【0004】
第1の改良構造は、分岐バー61a、61b、61cに対応する位置に主幹バー51a、51b、51cに分岐バー取付け孔を穿設するものである。この構造だと、分岐バー61a、61b、61cは従来のものを使用できるが、分岐開閉器1、2の入力端子ピッチ間隔に応じた取付け孔の位置を決める必要がある。このために、使用する分岐開閉器の種類や配置が決定するまでは、主幹バーを設計・製造することができない。
【0005】
第2の改良構造は、主幹バー5a、5b、5cには一定の間隔で分岐バー取付け孔を穿設しておき、これに螺子孔の位置があうように、一部の分岐バー62a、62cを左右方向に曲げるものである。この取付け構造では、主幹バー5a、5b、5cは予め生産しておくことが可能であるが、分岐開閉器の種類に応じて分岐バーを左右方向に曲げる加工が必要となる。このような分岐バーの曲げ加工は容易でない。

「【0018】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
本実施形態に係る制御盤の分岐バーと主幹バーの構造を、図1?3に基づいて説明する。図1は、本実施形態の制御盤の構造を示す斜視図で、図2は、本実施形態の制御盤の構造を示す上面図で、図3は、本実施形態の制御盤の構造を示す断面図である。
【0019】
1、2は、三相交流用の分岐開閉器であり、1はJIS協約形(端子ピッチ間隔25mm、端子高さ32mm)で、2は、汎用形(端子ピッチ間隔30mm、端子高さ24mm)である。両方の分岐開閉器には、第1から第3の電圧相に対応する入力端子が設けられている。また、分岐開閉器1を基板4の面上に直接に取り付け、分岐開閉器2を台金具3を介して基板4の面上に取り付けることで、両方の分岐開閉器1、2について基板4面から入力端子までの高さを同じにしている。」

【図12】を、上記イの段落【0019】の記載と併せみれば、分岐開閉器1、2は基板4に取り付けられていると認められる。

【図13】を、上記アの段落【0005】の記載と併せみれば、分岐バー1、2の3本の分岐バー62a?cのうち中央の分岐バー62bは、曲げられず真っ直ぐに、主幹バー5bに一定の間隔で穿設された取付け孔の5個おきに取り付けられていると認められる。

(3)引用文献3に記載された事項
引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0018】
【考案の実施の形態】
この考案の一実施の形態のキュービクル式配電盤を図1から図12により説明する。すなわち、このキュービクル式配電盤は、分岐母線バー1?3と、複数のブレーカ4?6と、分岐バー7?9とを有する。10はキュービクル式配電盤、11a?11cは配電盤に給電するために互いに平行に配置された母線バーである。
【0019】
分岐母線バー1?3は、図11に示すようにR相、S相、T相からなり、図7に示すようにキュービクル式配電盤10内に水平に上下3段に配置されている。分岐母線バー1?3の一端は、キュービクル式配電盤10より上部が突出した母線バー11a?11cに接続具12により接続される。各段における分岐母線バー1?3は、母線バー11a?11cに同じ高さで相互に平行に接続され、図11に示すように、それぞれ同じ寸法例えば160mmで等間隔に接続孔18を幅方向に2個ずつ形成している。また各相間では相互に接続孔18を長手方向に所定寸法例えば35mmずつずらせている。13はブスバーサポート固定台補助金具であるが、分岐母線バー1?3および母線バー11a?11cの固定手段は公知のものを適用する。
【0020】
容量フレームの異なる複数のブレーカ4?6は、母線バー1?3に平行に配置されている。実施の形態では、キュービクル式配電盤10の正面側に設置したパネル14の、上下3段の分岐母線バー1?3に沿った所定位置に、図9に示すように同一サイズの開口部16を形成している。実施の形態のパネル14は、最大寸法のブレーカ4に合わせて各分岐母線バー1?3に沿った所定位置に開口部16を設け、開口部16の両側に取付孔19を形成している。例えばブレーカ4は容量が225AF、ブレーカ5は100AF、ブレーカ6は50AFである。各ブレーカ4?6はそれぞれ同一サイズのフラッシュプレート17にその穴よりハンドル20を突出するように取付けている。ブレーカ4?6を開口部16に挿入し、フラッシュプレート17を例えば取付孔19に通すボルト等の取付具(図示せず)によりパネル14の表面に取付けている。
【0021】
そして、図7および図8に示すように、最上段の分岐母線バー1?3に対して、ブレーカ4をパネル14の4個の開口部16に設け、そのうち2個を2極(2P)とし、他を3極(3P)としている。中段の分岐母線バー1?3に対して、ブレーカ4の3Pと2P、ブレーカ5の3Pと2P、最下段の分岐母線バー1?3に対してブレーカ4の3Pと2P、ブレーカ6の3Pと2Pを取付けている。
【0022】
図1に示すように各ブレーカ4?6の一次側端子26a?26c、27a?27c、28a?28cはその分岐バー7?9に対する接続位置が複数のブレーカについて各相毎に同一となるように構成されている。すなわち、従来では容量が50AFと100AFと225AFの各ブレーカ4?6では、絶縁等の関係から、一次側端子の相互間隔(極間隔)が順次大きくなっていた。そこで、この実施の形態では、ブレーカ4の一次側端子26a、27a、28aの寸法は従来と同様にし、ブレーカ5、6の一次側端子26b、27b、28b、26c、27c、28cの接続部30の相互間隔(極間隔)の寸法およびブレーカすなわちプレート17からの突出量が、ブレーカ4の一次側端子26a、27a、28aのそれと同じになるように設定した。各一次側端子はブレーカに一体に形成され、ブレーカのメーカにより作成される。具体的には図3に示すブレーカ4は従来と共通とし、例えば100AFのブレーカ5は、図2に示すように、R相用一次側端子28bとT相用一次側端子26bの接続側を中間位置のS相用一次側端子27bから離れるように帯状板を平面略Z字形に形成している。50AFのブレーカ6も同様である。一次側端子の接続部30は孔により形成している。これにより、ブレーカ5、6の一次側端子は接続部30の位置をブレーカ4と同一にすることができ、接続部30と分岐母線バー1?3の相互間隔が相互に同じになる。」

【図1】?【図3】から、各ブレーカ4?6の中央の一次側端子27a?cは、分岐バー8を介して、【図1】平面視で曲がらず真っ直ぐに、母線バー2に等間隔で形成されている接続孔18に接続されていることを看取しうる。

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
後者の「キャビネット3」は、前者の「前面が開口したボックス」に相当する。
後者の「キャビネット3の背面の両端に」「長手方向を上下方向に一致させて配列し」た「固定レール4」は、前者の「長手方向を上下方向に一致させてボックスの背面板に設けられる一対のベースレール」に、「長手方向を上下方向に一致させてボックスの背面に設けられる一対のベースレール」である限りにおいて一致する。
後者の「母線11」は、キャビネット3に引き込まれる電線に接続されていることは明らかなので、前者の「ボックス内に引き込まれる外部電線に接続される複数の導電バー」に相当する。
後者の「分岐バー12」は、前者の「分岐導体」に相当し、後者の「同じ母線11群へ分岐バー12を介して接続される」「同じ系統の分岐ブレーカ2」は、前者の「分岐導体を介して導電バーに接続される内器」に相当する。
後者の「分岐ブレーカ2を載置固定」する「分岐パネル9」は、前者の「内器が取り付けられる基板」に相当する。
前者の「基板を一対のベースレールに固定するための固定部材」について、本願の明細書には「【0044】 上述のように本実施形態の分電盤は、・・・基板52を一対のベースレール24に固定するための固定部材(桟53及び取付レール54)を備える。・・・」と記載され、特許請求の範囲の請求項2には「前記固定部材は、左右方向の両端が前記ベースレールに固定される複数の桟と、長手方向を上下方向に一致させて前記桟に固定される一対の取付レールとを備え」と記載されている。他方、後者は、「固定レール4にはレール5を渡し、該レール5にはスライドレール6を取り付けると共に、スライドレール6の端部に機器取り付けレール8を固定し、該機器取り付けレール8または前記固定レール4に分岐パネル9を取り付け」るものであり、「分岐パネル9」は、「レール5」、「スライドレール6」及び「機器取り付けレール8」を介して「固定レール4」に取り付けられているといえる。そうすると、後者の「レール5」、「スライドレール6」及び「機器取り付けレール8」は、前者の「基板を一対のベースレールに固定するための固定部材」に相当する。
後者の「分岐バー12」は、一端が「分岐ブレーカ2」に接続されていることは明らかといえるので、「同じ系統の分岐ブレーカ2の分岐バー12は同じ母線11群へ接続ねじ13により接続される」ことは、前者の「分岐導体は、一端が内器の1次側端子に接続され、他端が導電バーにねじ止めされるように構成され」ることに相当する。
後者の「分電盤1」は、前者の「分電盤」に相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点〕
「前面が開口したボックスと、長手方向を上下方向に一致させて前記ボックスの背面に設けられる一対のベースレールと、前記ボックス内に引き込まれる外部電線に接続される複数の導電バーと、分岐導体を介して前記導電バーに接続される内器と、前記内器が取り付けられる基板と、前記基板を前記一対のベースレールに固定するための固定部材とを備え、
前記分岐導体は、一端が前記内器の1次側端子に接続され、他端が前記導電バーにねじ止めされるように構成された、分電盤。」
〔相違点1〕
本願発明は、「ボックスの開口を開閉可能に塞ぐドア」を備えているのに対して、引用発明は、ドアを備えていない点。
〔相違点2〕
本願発明では、「一対のベースレール」が「ボックスの背面板に設けられる」のに対し、引用発明では、「固定レール4」が「キャビネット3の背面の両端」に配列されているものの、キャビネット3の背面板に設けられる構成となっているかどうかは不明である点。
〔相違点3〕
本願発明は、「基板は、内器が一定の取付間隔で取り付けられるように構成され」、「導電バーは、分岐導体をねじ止めするためのねじ挿通孔が一定の間隔で複数設けられており」、内器の「取付間隔がねじ挿通孔の間隔の整数倍となるように構成される」ものであるのに対して、引用発明は、分岐パネル9が分岐ブレーカ2を載置固定するものの、分岐ブレーカ2が一定の取付間隔で取り付けられるものではなく、また、母線11に分岐バー12をねじ止めするためのねじ挿通孔が一定の間隔で複数設けられているものではない点。

上記の各相違点について以下検討する。
〔相違点1について〕
分電盤のボックスの開口に対して開閉可能なドアを設けることは、本願出願前、周知の事項と認められる(必要であれば、実公平1-28206号公報の下箱1、扉2を参照。)。
引用発明を、相違点1に係る本願発明の構成のように、ドアを設けたボックスとすることは、周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことといえる。
〔相違点2について〕
分電盤において、一対のベースレールがボックスの背面板に設けられる構成は、本願出願前、当業者に知られていた事項にすぎない(必要であれば、本願の明細書にて引用されている特開2011-36050号公報の段落【0021】及び【図1】に、分電盤1に関し、一対の桟部31、31が箱体2の背面板21に取付ネジ8で取り付けられることにより設けられる構成が記載されている点を参照。)。
してみれば、引用発明において、一対の固定レール4をキャビネット3の背面板に設けられるように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
〔相違点3について〕

本願の明細書には次のとおり記載されている。
「【0040】
一方、本実施形態の分電盤における導電バー6は、分岐バー58をねじ止めするためのねじ挿通孔60が長手方向に沿って等間隔に設けられている。ただし、ねじ挿通孔60の代わりにねじ孔が設けられても構わない。
【0041】
ここで、導電バー6は、基板52における器体の取付位置の間隔d1が、導電バー6に設けられるねじ挿通孔60の間隔d2の整数倍となるように構成されている。つまり、導電バー6は、ねじ挿通孔60の間隔d2が35mm(35mm×3=105mm)となるように構成されている。
【0042】
したがって、図1に示すように、複数の主開閉器50A、50B、50Cが基板52に取り付けられた場合でも、それぞれの器体の中心線上にねじ挿通孔60が位置するように基板52の取付台523に導電バー6を取り付けることができる。また、幅寸法が105mmである主開閉器50Aについては、3つの1次側端子(ねじ式端子)501の間隔(中心同士の間隔)d3が35mmに設定されているため、導電バー6のねじ挿通孔60の間隔d2と一致する。故に、幅寸法が105mmの主開閉器50Aを1つの基板52Aに隣接して取り付けた場合、全ての主開閉器50Aの1次側端子501の間隔と、導電バー6のねじ挿通孔60の間隔とが一致する。その結果、図1及び図2に示すように、左右方向において主開閉器50Aの1次側端子501と導電バー6のねじ挿通孔60とが互いに平行な直線上に位置するので、左右方向に真っ直ぐな分岐バー58を用いることができる。
【0043】
一方、他の主開閉器50B、50Cについては、3つの1次側端子501の間隔が35mmよりも短くなる。したがって、これら2種類の主開閉器50B、50Cについては、左右方向において主開閉器50B、50Cの1次側端子501と導電バー6のねじ挿通孔60とが互いに平行な直線上に位置しない。故に、図1に示すように、中央の1次側端子501には左右方向に真っ直ぐな分岐バー58が用いられ、両端の1次側端子501には左右方向において屈曲した分岐バー59が用いられる。
【0044】
上述のように本実施形態の分電盤は、前面が開口したボックス2と、ボックス2の開口を開閉可能に塞ぐドア3と、長手方向を上下方向に一致させてボックス2の背面板20に設けられる一対のベースレール24とを備える。また、本実施形態の分電盤は、ボックス2内に引き込まれる外部電線に接続される複数の導電バー6と、分岐導体(分岐バー58,59)を介して導電バー6に接続される内器(主開閉器50A、50B、50C)とを備える。さらに、本実施形態の分電盤は、内器が取り付けられる基板52と、基板52を一対のベースレール24に固定するための固定部材(桟53及び取付レール54)を備える。基板52は、内器が一定の取付間隔d1で取り付けられるように構成される。分岐導体(分岐バー58、59)は、一端が内器の1次側端子501に接続され、他端が導電バー6にねじ止めされるように構成される。導電バー6は、分岐導体をねじ止めするためのねじ挿通孔60が一定の間隔d2で複数設けられており、取付間隔d1がねじ挿通孔60の間隔d2の整数倍となるように構成される。
【0045】
本実施形態の分電盤は上述のように構成されており、内器の幅寸法に関わらず、基板52に対する主開閉器50A、50B、50Cの取付位置が一意に決まるので、導電バー6に予めねじ挿通孔60を一定間隔d2で設けておくことができる。その結果、従来のように、使用される主開閉器の幅寸法に対応して導電バー6にねじ挿通孔を設ける作業が不要となり、分電盤の製造工程の簡略化を図ることができる。」
以上の記載中、「内器」の「一定の取付け間隔」には「d1」との記号が付されており、本願の【図1】を参照すると、「d1」は、複数の主開閉器50A、50B、50Cを基板に取り付けたときの中央の一次側端子501の間隔を指していることを看取しうる。そうすると、本願発明の「基板は、内器が一定の取付間隔で取り付けられるように構成され」とは、複数の内器(主開閉器50A、50B、50C)の幅方向(導電バー6の延在方向)の中央が一定の間隔となるように、具体的には、複数の内器の中央の1次側端子501が一定の間隔となるように基板に取り付けられることを意味していると理解できる。
また、本願発明においては、内器の「取付間隔がねじ挿通孔の間隔の整数倍となるように構成される」ことにより、複数の内器(主開閉器50A、50B、50C)の中央の1次側端子501と導電バー6の挿通孔60とが、左右方向に真っ直ぐな分岐バー58により接続されることも理解できる。

引用文献2には、端子ピッチ間隔の異なる分岐開閉器を主幹バーに取り付ける構造に関して、基板4に取り付けられた各分岐開閉器1、2の中央の一次側端子と、主幹バー5bに一定の間隔で穿設された取付け孔とが、分岐開閉器1、2から主幹バー5bに向かう方向において曲がらず真っ直ぐな分岐バー62bにより接続されることが記載されており(上記3.(2)ウ、エを参照。)、隣り合う分岐開閉器1、2の中央の1次側端子の間隔は、主幹バー5bの取付け孔の間隔の整数倍となることが示唆されているといえる。
引用文献1には、「従来は、系統別に分岐ブレーカ2を配置していたが、・・・分岐ブレーカ2は系統に関わらず連続して配置することができ、省スペースとなる」(上記3.(1)ウを参照。)と記載されており、系統別に分岐ブレーカ2を配置すること、及び、異なる系統の分岐ブレーカ2を混在させて配置することが示唆されている。
1つの系統に、寸法の異なるブレーカを並べて配置することは、本願出願前、一般的に行われていることであり(必要であれば、実願平2-100349号(実開平4-58006号)のマイクロフィルムの明細書3頁12行?4頁19行及び第1図?第3図を参照。)、引用発明において、系統別に分岐ブレーカ2を配置するときに、寸法の異なる分岐ブレーカが並んで配置されることは起こりうることであり、ましてや、異なる系統の分岐ブレーカ2を混在させて配置するときには、尚更、寸法の異なる分岐ブレーカが並んで配置されることが起こりうるといえる。
引用発明には、寸法の異なる分岐ブレーカを隣接して配置するための課題が内在しているといえ、引用文献2に記載された事項を適用する動機付けは、十分にあるといえる。
してみると、引用発明に、引用文献2に記載された事項を適用し、母線11に一定の間隔で取付け孔を穿設し、分岐ブレーカ2の中央の1次側端子の間隔が母線11の取付け孔の間隔の整数倍となるように基板上に配置すること、さらには、隣り合う分岐ブレーカ2の中央の1次側端子の間隔を一定の間隔とすることは、当業者が容易に想到し得たことといえる。
したがって、引用発明を、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことといえる。

引用文献3には、容量の異なるブレーカを母線バーに取り付ける構造に関して、パネル14に同一サイズのフラッシュプレート17を介して取り付けた各ブレーカ4?6の中央の一次側端子27a?cが曲がらず真っ直ぐに構成されているとともに、それら一次側端子27a?cと、母線バー2に等間隔で形成されている接続孔18とが、ブレーカ4?6から母線バー2に向かう方向において曲がらず真っ直ぐな分岐バー8を介して接続されることが記載されており(上記3.(3)ア、イを参照。)、各ブレーカ4?6の中央の一次側端子27a?cの間隔は、母線バー2の接続孔18の間隔と等しい(1倍である)ことが示唆されているといえる。
上記イで述べたとおり、引用発明には、寸法の異なる分岐ブレーカを隣接して配置するための課題が内在しているといえ、引用文献3に記載された事項を適用する動機付けは、十分にあるといえる。
してみると、引用発明に、引用文献3に記載された事項を適用し、母線11に一定の間隔で接続孔を形成し、分岐ブレーカ2の中央の1次側端子の間隔が母線11の接続孔の間隔と等しく(1倍)となるように基板上に配置することは、当業者が容易に想到し得たことといえ、隣り合う分岐ブレーカ2の中央の1次側端子の間隔は、母線の一定間隔で形成された接続孔と等しいので、一定間隔となっていることは明らかである。
したがって、引用発明を、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、引用文献3に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことといえる。

そして、本願発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明及び引用文献2または引用文献3に記載された事項並びに周知の事項から予測できる程度のものであって格別顕著なものということはできない。

よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2または引用文献3に記載された事項並びに周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明及び引用文献2または引用文献3に記載された事項並びに周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-12-14 
結審通知日 2018-12-18 
審決日 2019-01-04 
出願番号 特願2013-262714(P2013-262714)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 段 吉享  
特許庁審判長 大町 真義
特許庁審判官 藤田 和英
平田 信勝
発明の名称 分電盤  
代理人 特許業務法人北斗特許事務所  

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