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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05B |
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管理番号 | 1349413 |
審判番号 | 不服2017-1443 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-01 |
確定日 | 2019-02-28 |
事件の表示 | 特願2014-511439「光の変化に応じて起動停止するディスプレイを備えたプロセス装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月22日国際公開、WO2012/158599、平成26年10月2日国内公表、特表2014-526070〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2012年(平成24年)5月14日を国際出願日とする出願(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2011年5月16日、米国)であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成27年 3月 4日:審査請求 平成28年 1月15日付け:拒絶理由通知 同 年 5月25日:意見書及び手続補正書 同 年 10月 3日付け:拒絶査定 平成29年 2月 1日:審判請求と同時に手続補正書の提出 平成30年 4月 4日付け:当審による拒絶理由通知 同 年 7月30日:意見書及び手続補正書 第2 本願発明 平成30年7月30日の手続補正書により補正がなされた特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「プロセス変数を管理または監視するトランスデューサと、 光レベルを検出する光検出器と、 前記プロセス変数に関する情報を表示するディスプレイと、 エッジトリガ割り込み処理を用い、前記光検出器によって検出された光レベルの増大及び減少のそれぞれに応答し、遮断状態にある前記ディスプレイの電源を投入するディスプレイコントローラと を備えることを特徴とするフィールドデバイス。」 第3 拒絶の理由 平成30年4月4日付けの当審が示した拒絶の理由は、次のとおりのものである。 1.(新規事項)平成29年2月1日付けでした手続補正は、下記の点で外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特表2008-500659号公報 引用文献2:特開2007-88659号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 (1)「【0001】 本発明は、産業プロセス制御または監視システムに関する。より具体的には、本発明は、このようなシステムにおけるフィールド機器(以下、フィールドデバイス)に無線能力を付加するシステムに関する。」 (2)「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 施設によっては、フィールドデバイスとの通信に無線技術が使われ始めている。無線操作は、フィールドデバイスの配線および設定を簡略化するものである。現在使用されている無線施設において、フィールドデバイスは、太陽電池、あるいは、有線接続を一切用いずに電力を得るその他の技術によって充電される可能性を秘めた内部バッテリを備えるように製造されている。無線デバイスのエネルギー需要は、デバイス報告レートやデバイス要素などの多くの要因によって非常に大きく変化することがあるため、内部バッテリの使用には問題がある。無線通信用のフィールドデバイスの外部にある電源および通信システムは、この分野において大きな改善をもたらすであろう。」 (3)「【0010】 この例において、フィールドデバイス14は、アクチュエータ/トランスデューサ20に接続されているとともに、ハウジング23内の端子盤21を介してプロセス制御ループ16に接続されている回路18を備えている。フィールドデバイス14は、プロセス変数(PV)生成器として示されており、プロセスに結びつき、そのプロセスの温度、圧力、pH、流量などの様相を検知して、その示度を示す。フィールドデバイスのその他の例としては、バルブ、アクチュエータ、コントローラ、およびディスプレイなどが挙げられる。」 (4)「【0013】 図4は、想像線で示すフィールドデバイス14に取り付けられた無線電源および通信ユニット100の正面図である。・・・(中略)・・・ 【0014】 ユニット100は、取り付け部112上に載置されるハウジング114を備えている。ハウジング114は、ユニット100がデバイス14に電力を供給するとともに、4?20mA、HART(登録商標)、FOUNDATION(登録商標)、フィールドバス(Fieldbus)、プロフィバス‐PA(Profibus‐PA)、モドバス(Modbus)、またはCANなどの業界標準のプロトコルに従ってデバイス14と通信を行うために、(図8を参照して説明する)回路を内蔵している。ユニット100とデバイス14との間での交信のレベルを高めるために、プロトコルは、デジタル通信に対応していることが好ましい。 ・・・(中略)・・・ 【0016】 本発明の一態様によれば、ユニット100は、ローカルユーザーインターフェースを備えている。従って、ユニット100は、電池116のうちの一つに近接して載置することもできるLCDディスプレイ122を備えていてもよい。ローカルユーザーによる入力を受信するために、ユニット100は、ボタン124などのローカル入力部を一つ以上備えることが可能である。ローカルユーザーインターフェースが重要なのは、ユニット/フィールドデバイス複合システムが完全に無線で動作する場合、技術者にとっては、携帯型コンピュータデバイスなどを介してフィールドデバイスに無線でアクセスしようとするよりも、ローカルユーザーインターフェースと交信する方がより便利であるためである。ローカルインターフェースは、ユニット、フィールドデバイス、または、これら両方へのアクセスに使用することができる。ここで定義する「ローカルユーザーインターフェース」とは、(単一または複数の)ローカルユーザー入力部(ボタンなど)、(単一または複数の)ローカルユーザー出力部(LCDなど)、または、これらの組み合わせを有するもののことを意味している。図4に示すように、LCDは、(単一または複数の)電池116と同一位置に配置することができる。 ・・・(中略)・・・ 【0019】 図6は、本発明の一実施形態に係る無線電源および通信ユニット300の線図である。無線電源および通信ユニット300は、一つ以上のフィールドデバイス14から遠く離れた位置に載置できるように構成されている。ユニット300は、同時に、連続的に、または同期的にフィールドデバイス14に電力を供給する上で適切な発電および電力貯蔵能力を備えている。図6に示されるように、各フィールドデバイス14は、図6に図示される取り付け部112によってユニット300にそれぞれ接続されている。図5を参照して上述したように、取り付け部112は、ボタン124およびディスプレイ202もしくはその一方などの、ローカルユーザーインターフェースを備えていることが好ましい。各フィールドデバイス14は、それぞれユニット300に接続されているため、各フィールドデバイス14とのアナログまたはデジタル通信が可能になっている。ユーザーインターフェースは、図6に示される実施形態の取り付け部112に備えられていることが好ましいが、実施形態によっては、ユニット300内に包含される追加的あるいは代替的なユーザーインターフェースを設けてもよい。 【0020】 図7は、本発明の別の実施形態に係るユニット350の線図である。ユニット350は、複数のフィールドデバイス14に対して単一の接続部352を有するものとして示されている。当業者であれば、図7に示す構成が、フィールドデバイス14をユニット350に接続するための相互接続配線および労力を大幅に減少させる能力を有することが理解できるであろう。それぞれのフィールドデバイス14との通信を可能にするために、ユニット350は、ハイブリッド式のプロトコル、またはオールデジタル式の業界標準のプロトコルを利用してデジタル通信を用いることが好ましい。さらに、このようなプロトコルは、必要に応じて、同時に、連続的に、または同期的に全てのフィールドデバイス14に電力を供給するために使用される。また、図7は、図示される取り付け部112を利用してネットワークに接続する各フィールドデバイス14を示している。従って、各フィールドデバイス14は、ローカルユーザー入力部およびLCDディスプレイもしくはその一方などのローカルユーザー出力部を備えたローカルユーザーインターフェースを依然有していてもよい。」 (5)「【0021】 図8は、本発明の実施形態に係る無線電源および通信ユニットのブロック図である。ユニット360は、コントローラ362と、電力貯蔵装置364(バッテリとして示す)と、エネルギー変換器365と、ループコミュニケータ368と、無線通信インターフェースモジュール366とを備えている。 【0022】 (単一または複数の)電池116および貯蔵装置364もしくはその一方から適当な量のエネルギーを送って、ユニット360および取り付け部112に接続された任意のフィールドデバイスに電力を供給するために、コントローラ362は、低電力マイクロプロセッサと適切な充電回路とを備えていることが好ましい。また、コントローラ362は、(単一または複数の)電池116からの過剰なエネルギーを貯蔵デバイス364へ送る機能も有している。装置364が過熱し始めた場合にコントローラ362が貯蔵装置364への充電電流を減少できるように、コントローラ362を任意の温度測定回路に接続することも可能である。例えば、温度測定回路は、貯蔵装置364に接続された熱電対などの、適切な温度検知素子を備えていてもよい。アナログデジタル変換器は、熱電対からの信号をそのデジタル表現に変換して、コントローラ362にデジタル信号を供給することができる。 【0023】 コントローラ362は、ハードウェア、ソフトウェア、あるいはこれら両方によって、コントローラ362自体の電力と、取り付けられたフィールドデバイスの電力とを能動的に管理するように構成可能である。この点に関して、コントローラ362は、コントローラ362自体または所望のフィールドデバイスを低電力のスリープモードに入らせることができる。スリープモードとは、電力消費を減少させるあらゆる動作モードのことである。フィールドデバイスに関しては、フィールドデバイスに対してその動作電流を最小許容電流レールに設定するように命じることによって、スリープモードに入らせることができる。低電力モードに入らせる可能性がある事象としては、活動期間の満了、一つ以上のローカルユーザー入力部からの入力、取り付けられた一つ以上のフィールドデバイスからの通信、または無線通信などが挙げられる。このような事象は、ユニット360および取り付けられた任意のフィールドデバイスもしくはその一方をスリープモードから復帰させることにも利用できる。さらに、コントローラ362は、コントローラ362内のプログラミング命令に含まれたあらゆる論理または規則、および無線通信モジュール366もしくはその一方を介して受信した無線通信に基づいて、取り付けられた任意のフィールドデバイスを選択的にスリープモードに入らせることが可能である。ボタン124などのローカル入力部は、ユーザー設定可能であることが好ましい。そのため、単一のボタンを用いて、ユーザー選択可能な一定期間フィールドデバイスを復帰させることが可能であり、そのように設定されている場合、このボタンを再び押圧してフィールドデバイスをスリープモードに戻すことができる。一実施形態において、設定可能なローカル入力ボタンは、ジャンパーまたはスイッチを用いて以下の機能を事前設定する。 【0024】 起動させるためのボタン押圧時間…1秒、1.5秒、2秒または3秒のいずれかを選択。フィールドデバイスは、事前設定時間よりも短い時間のボタン押圧を無視する。 時間単位…10秒、15秒、30秒、または5分、15分、30分、60分のいずれかを選択。 ボタンが立て続けに二度押圧された場合、フィールドデバイスは、事前設定された時間(例えば60分)オンの状態になり、その後、スリープモードに戻る。 事前設定された間隔(例えば5秒)の後、ボタンが二度目の押圧をされた場合、フィールドデバイスはスリープモードに戻る。 【0025】 コントローラ362は、ユニット360内の回路の一部または取り付けられたフィールドデバイスをスリープモードに入らせることも可能であることが好ましい。例えば、無線通信モジュール366は、通常動作モードとスリープモードとの両方を有する市販の汎用パケット無線サービス(GPRS)の携帯電話モジュールであってもよい。コントローラ362からの信号は、意味のある無線通信が認められないときに、モジュール366をスリープモードに入らせることができる。」 (6)「【0033】 図8は、想像線で表された任意のオペレータボタンブロック374およびLCDディスプレイブロック376がコントローラ362に接続されている様子も示している。この図は、各フィールドデバイス、無線電源および通信ユニット360、あるいはこれら両方の全てのローカル入力部がコントローラ362に接続されていることを意図している。また、各フィールドデバイス、無線電源および通信ユニット360、あるいはこれら両方のローカルユーザーディスプレイもコントローラ362に接続されている。これにより、フィールドデバイスからの入力、フィールドデバイスに対応する設定可能なボタンからの入力、ユニット360に近接して配置された一つ以上のボタンまたは入力部からの入力、または無線通信からの入力に基づいて、コントローラ362が各ローカルディスプレイと個別に交信できるようになる。」 (7)図面看取事項 また、図4ないし図9の図示から見て、以下の看取事項が記載されている。 「フィールドデバイス14にユニット(100、200、300、350,360、400)が取り付けられた機器であり、該ユニットは、コントローラとLCDディスプレイとバッテリとを含んでいる。」 2 引用発明 上記1からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)。 「プロセスに結びつき、そのプロセスの温度、圧力、pH、流量などの様相を検知するフィールドデバイス14に接続されたトランスデューサ20と、 ボタン124などのローカル入力部と、 前記ローカル入力部からの入力により、ユニット360内の回路の一部をスリープモードに入らせたり、スリープモードに入ったフィールドデバイスを復帰させたりするコントローラとを備えた、 フィールドデバイス14にユニット(100、200、300、350,360、400)が取り付けられた機器であり、該ユニットは、コントローラとLCDディスプレイとバッテリとを含んでいる機器であって、 前記スリープモードは、コントローラが、取り付けられたフィールドデバイスの電力消費を減少させるモードである 機器。」 3 引用文献2の記載 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0001】 本発明は、外部からパラメータ設定を行うためにプロセス機器等に装備される赤外線タッチスイッチの改良に関する。」 (2)「【0025】 次に、上記赤外線タッチスイッチについて具体的に説明する。図1は本発明に係る赤外線タッチスイッチの一実施例を示す構成図である。なお、図3に示す従来の赤外線タッチスイッチと同じ機能を有する部分には同一の符号を付して適宜にその説明を省略する。 【0026】 図1において、光電流ILは固定抵抗20で電圧VL2に変換され、変換された電圧VL2は可変利得増幅器21に入力され、可変利得増幅器21は電圧VL2を利得制御してその出力端に出力電圧SOとして出力する。 【0027】 誤差増幅器22は、反転入力端(?)に入力された出力電圧SOと非反転入力端(+)に入力された基準電圧ESとを比較して、その偏差を増幅し、その出力端に誤差出力EOとして出力する。 【0028】 誤差出力EOは、切替器23のa端子に印加されると共にサンプルポールド回路24と制御回路25にも印加される。 【0029】 サンプルポールド回路24は、制御回路25からの制御信号CSで制御されてサンプルホールドしたサンプルホールド信号SHを切替器23のb端子に印加する。切替器23は制御信号CSで制御されながらa端子とb端子を切り替えて、各端子に印加されている電圧を、c端子を介して可変利得増幅器21の利得制御端子Tに印加する。 【0030】 一方、比較器26は、その非反転入力端(+)に可変利得増幅器21の出力電圧SOが印加され、反転入力端(?)には判定電圧JEが印加され、判定電圧JEに対する大小を判断してその出力端から判定信号SJとして出力する。なお、判定電圧JEは、基準電圧ESよりも少し小さな値に設定されている。 【0031】 さらに、制御回路25は、判定信号SJと誤差出力EOとが入力されると共に、さらに表示器の複数のスイッチSW1、SW2、SW3などの操作による第二特定操作信号SAも入力され、これらを処理して切替器23とサンプルポールド回路24に制御信号CSを出力すると共にスイッチ信号SSを出力する。 【0032】 次に、以上のように構成された赤外線タッチスイッチの動作について、図2に示す波形図を用いて説明する。 【0033】 図2において、実際には、光電流ILは図2(A)の波形詳細に示すように、駆動電流IFと同じように矩形波状で、0Vに対して高レベルがILH,低レベルがILLの矩形波状の電流であるが、動作の概要を分かりやすくするために点線の包絡線で示してある。 【0034】 これは、図2(C)の光電流ILに限らず、可変利得増幅器21の出力である出力電圧SO(図2(D))、誤差増幅器22の出力である誤差出力EO(図2(E))、比較器26の判定信号SJも同様である。 【0035】 このため、制御回路25が出力電圧SO、誤差出力EO、判定信号SJの信号を読み取るときは、図1には図示していないが、矩形波状の駆動電流IFに同期した信号を読み取ることになる。なお、駆動電流IFを矩形波状にしているのは、発光素子3に常時電流を流すと、寿命が不足するためである。 【0036】 電磁流量計などのプロセス機器の表示設定器は、通常は、流量出力値などを表示する表示モードを維持しており、操作者が内部データを操作するときだけ、設定スイッチが有効な設定モードとする。以下、この2つのモードをベースとして説明する。 【0037】 先ず、表示モードでの動作について説明する。制御回路25により切替器23をa端子側に設定しておく。そうすると、可変利得増幅器21の出力端の出力電圧SOは誤差増幅器22により基準電圧ESと同じになるように制御され、光電流ILに関わらず一定の値になる(図2(D))。 【0038】 そして、基準電圧ESは判定電圧JEよりも少し大きな電圧に設定されているので、表示モード(図2(F))では、比較器26の出力である判定信号SJは常にオン信号となるが、制御回路25はこのオン信号の継続を検知して無効にしてスイッチ信号SS(図2(G))を出力しないので、表示器には表示はされず、表示器には、別途、流量値などが表示される。 【0039】 次に、表示モードから設定モードへの移行について説明する。誤差増幅器22の出力である誤差出力EOは光電流ILの大きさに応じて変化する。そこで、誤差出力EOを制御回路25で常時監視し、誤差出力EOが低下したとき(図2(E))に、制御回路25は反射物10が操作パネル10に触れた(図2(B))と判断して設定モード(図2(F))に移行する。 【0040】 通常、操作者が、特定のスイッチ、例えばSW1を比較的長期間、オン状態を維持するなどの操作(第一特定操作)をすると、この期間、誤差出力EO(図2(E))が低下し続けるので、これを制御回路25は検知し、制御信号CSを切替器23に出力してc端子をb端子に切り替えて可変利得増幅器21を切替直前にサンプルホールド回路24にホールドされた誤差出力EO(図2(E))に対応する利得に固定する(図2(D))。 【0041】 次に、設定モードについて説明する。設定モード(図2(F))に移行後、誤差出力EOはサンプルホールド回路24で保持される共に、切替器23はb側に固定される。このため、可変利得増幅器21の利得は固定されて(図2(D))小さくなっているので、反射物10が操作パネル10に触れたときだけ、つまり良い操作感で、比較器26から矩形波状の判定信号SJが出力され、制御回路25はスイッチ信号SSとして出力する。 【0042】 設定モードの終了は、操作者が例えば複数のスイッチSW1とSW3を同時に押すなどの第二特定操作を実行して制御回路25に第二特定操作信号SAが入力されたことを制御回路25が認識して、制御回路25は切替器23をa端子側に切り替えて表示モードに復帰させる。」 (3)図面看取事項 図1に図示された一実施例の構成図では、発光素子3からの赤外線入射光を反射物10を介して受光する受光素子4の光電流ILの変化に応動する電圧VL2が可変利得増幅器21に入力され、その出力電圧SOが入力され、所定の電圧JEとの大小比較を行う比較器26の出力SJを制御回路25へ引き渡すことが見てとれる。 第5 対比 本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 引用発明の「プロセスに結びつき、そのプロセスの温度、圧力、pH、流量などの様相を検知するフィールドデバイス14に接続されたトランスデューサ20」は、本願発明の「プロセス変数を管理または監視するトランスデューサ」に相当する。 また、引用発明の「ユニット」が「含んでいる」とした「LCDディスプレイ」は、本願発明の「前記プロセス変数に関する情報を表示するディスプレイ」に相当する。 また、引用発明の「ユニット360内の回路の一部をスリープモードに入らせたり、スリープモードに入ったフィールドデバイスを復帰させたりするコントローラ」の機能は、前記対比で引用発明の「LCDディスプレイ」が本願発明の「前記プロセス変数に関する情報を表示するディスプレイ」に相当する関係から、本願発明の「ディスプレイコントローラ」が「遮断状態にある前記ディスプレイの電源を投入する」機能に相当する。 また、引用発明の「ボタン124などのローカル入力部からの入力」と「コントローラ」の動作との関係は、本願発明の「光レベルを検出する光検出器」の「検出された光レベルの増大及び減少のそれぞれ」と「ディスプレイコントローラ」の動作との関係において、コントローラがある入力信号の入力を契機としてディスプレイの電源を投入する動作をなす点で一致する。 引用発明の「フィールドデバイス14にユニット(100、200、300、350,360、400)が取り付けられた機器」は、本願で言う「フィールドデバイス」が、本件明細書【0001】に「より詳しくは、ディスプレイが組み込まれたフィールドデバイス」とされていることを参酌すると、本願発明の「フィールドデバイス」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、下記の点で一致し、また相違する。 (一致点) 「プロセス変数を管理または監視するトランスデューサと、 前記プロセス変数に関する情報を表示するディスプレイと、 入力信号に応答し、遮断状態にある前記ディスプレイの電源を投入するディスプレイコントローラと を備えるフィールドデバイス。」 (相違点) 相違点1 本願発明では、ディスプレイコントローラがディスプレイの電源を投入する入力信号として、「光レベルを検出する光検出器」を「備える」としているのに対して、引用発明ではディスプレイの電源投入をコントローラが行う際に入力信号として「ローカル入力部」を「備える」とするものの、当該「ローカル入力部」が光検出器相当のデバイスを有するとは直接的にはしていない点。 相違点2 本願発明の「ディスプレイコントローラ」は、「遮断状態にある前記ディスプレイの電源を投入する」処理を行うに際し、「エッジトリガ割り込み処理」を用いるとしているのに対し、引用発明の「コントローラ」が「遮断状態にある前記ディスプレイの電源を投入する」同様の処理を行うとしているものの、「エッジトリガ割り込み処理」を用いるか否かは明らかでない点。 相違点3 本願発明の「ディスプレイコントローラ」は、「前記光検出器によって検出された光レベルの増大及び減少のそれぞれに応答」するとしているのに対し、引用発明の「コントローラ」は「ローカル入力部からの入力」に応答するに留まる点。 第6 検討・判断 上記相違点1?3について検討する。 (相違点1について) フィールド機器を代表とするプロセス機器の操作に、光の増減にて操作を行う機器を搭載させることは、上記第4「3 引用文献2の記載」の記載事項として、赤外線タッチスイッチとして記載されているとおり、当該フィールドデバイス分野で公知の態様にすぎない。 また、引用発明の機器への操作手段は、上記第4「1 引用文献1の記載」のとおりボタンに限らず、「受信した無線通信や、ボタン124などのローカル入力部により操作される」とされており、元々ボタンに限らず他のユーザーインターフェースとなり得るいずれかの機器であればよいとされているため、他の公知の操作手段を選択できる十分な示唆があったと考えるに足るものでもある。 そうすると、相違点1に係る相違は、引用文献2に記載の公知の赤外線タッチスイッチを採用することで当業者が容易になし得たものと認められる。 (相違点2について) 相違点2に係る「エッジトリガ割り込み処理」に関し、本件の明細書には【0022】に「例えばエッジトリガ割り込み処理などにより」との記載がなされているところから見て、図3に図示された論理プロセッサ114へなんらかのトリガ信号が入力された際に、続行中の処理を中断し、ディスプレイ電源投入処理を優先させて実行することを意味する、いわゆるプロセッサで慣用されている割り込み処理を指すと理解できる。 そうすると、当該相違点2は引用発明のコントローラが常識的に用いることができる単なる慣用手段を「エッジトリガ割り込み処理」という用語で示しただけといえるので、引用発明に接した当業者であれば、本件優先日前に慣用とされた割り込み処理を採用する程度で相違点2に係る構成を容易になし得たものと認められる。 (相違点3について) 相違点1の検討で、当業者が採用することが容易である旨示した、公知とされる引用文献2の赤外線タッチセンサでの検出光の扱いを見ると、受光素子4への入射光は可変利得増幅器21で増幅された後、比較器26にて所定の判定電圧JEと比較されており、光電流ILの大きさが大きくなると、増幅器21の増幅率を固定とした上で、比較器26への光電流値と判定電圧JEとを大小比較し、判定電圧JE相当の光量より大きい場合には制御回路25を経て、スイッチ信号SSを得るとする一連の扱いが見てとれる。 他方、本願発明の相違点3に係る構成は、本件明細書で【0019】-【0022】にかけて説明された、一実施形態とされる図3の回路と、用いられている用語が一致している関係上、図3の形態を当然に含む関係にある。 そして、図3の形態によると、本願発明の発明特定事項である「光検出器によって検出された光レベルの増大及び減少のそれぞれに応答し」に対応する箇所は、フォトトランジスタQへの入射光が変化するのに応答して出力が変化する電圧V1を、一定電圧V2と比較して、出力LLを「可」(ハイ)と「不可」(ロー)のいずれかに切り替える処理をするコンパレータUが対応することが明らかである。 両者を比較考量すると、相違点3に係る本願発明の発明特定事項と、引用文献2の赤外線タッチスイッチとは、光検出器であるホトトランジスタで入射光のレベルを電圧として検出し、所定電圧とコンパレータで大小比較する処理をなしている点でなんら相違しない。 そうすると、当該相違点3は、相違点1を当業者が容易になし得たとされた場合であればこれに合わせて同時に成立するものと言えるので、相違点3も同様に当業者が容易になし得たものと認められる。 以上纏めると、相違点1?3はいずれも格別なものではなく、全体で見ても作用効果は予測しえるので、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の公知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものと認められる。 第7 請求人の意見について 請求人は、平成30年7月30日提出の意見書にて、上記引用文献1及び2に基づいて当業者が容易想到であるとした当審拒絶理由に対して、以下の意見を述べている。 「(4)本願発明と引用発明との対比 上述のとおり、引用文献1にはフィールドデバイスが開示されるのみで、ディスプレイのオン操作やオフ操作についての開示はなされておりません。そこで、受光素子を用いて操作の有無を判定する技術について開示する文献として引用文献2が引用されました。 しかしながら、引用文献2に開示された赤外線タッチスイッチでは、上述のとおり、操作パネルに接する反射物の有無によって異なる受光素子の光電流を固定抵抗で変換して得た電圧の絶対値が判定値より大きいか否かを判定することにより、スイッチが操作されたか否かを判定しております。即ち、判定に用いる電圧の大きさは、受光素子が検出する光レベルの大きさそのものでありますから、引用文献2に開示された赤外線タッチスイッチでは、光レベルの大きさそのものが判定基準値より大きいか否かで操作の有無を判定していることになります。 これに対し、本願の請求項1に係る発明は、ディスプレイコントローラが、エッジトリガ割り込み処理を用い、光検出器によって検出された光レベルの増大及び減少のそれぞれに応答し、遮断状態にあるディスプレイの電源を投入します。即ち、本願の請求項1に係る発明は、引用文献2に開示された赤外線タッチスイッチのように光レベルの大きさそのものが判定基準値より大きいか否かでディスプレイの電源を投入するものではなく、光レベルの変化を検知したときにディスプレイの電源を投入するものであります。従って、本願の請求項1に係る発明では、光レベルの大きさ自体にかかわらず、その光レベルの変化に応じて操作があったと判定し、ディスプレイの電源を投入することが可能であり、本願の請求項1に係る発明と、引用文献2に開示された赤外線タッチスイッチとは、構成及び作用効果が全く異なるものであります。 このように、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載の発明に引用文献2に記載の発明を適用することができたとしても、これらの発明に基づき容易に発明されたものではありません。」 上記請求人の主張によれば、本願発明は「光レベルの大きさそのものが判定基準値より大きいか否かでディスプレイの電源を投入するものではなく、光レベルの変化を検知したときにディスプレイの電源を投入するもの」であるから、「本願の請求項1に係る発明と、引用文献2に開示された赤外線タッチスイッチとは、構成及び作用効果が全く異なる」ということであるが、上記第6の(相違点3について)で示したとおり、本願発明のディスプレイコントローラの動作条件は、本件で願書に添付した図3の形態を当然に含むものであって、図3の形態は光レベルの大きさそのものが判定基準値より大きいか否かでディスプレイの電源を投入するものとされる以上、引用文献2に記載の公知技術となんら構成でも作用効果でも違いがないのであるから、係る請求人の主張は採用される道理がない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-09-26 |
結審通知日 | 2018-10-03 |
審決日 | 2018-10-16 |
出願番号 | 特願2014-511439(P2014-511439) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G05B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 青山 純 |
特許庁審判長 |
栗田 雅弘 |
特許庁審判官 |
西村 泰英 中川 隆司 |
発明の名称 | 光の変化に応じて起動停止するディスプレイを備えたプロセス装置 |
代理人 | 岡島 伸行 |