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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1349579
審判番号 不服2017-13824  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-19 
確定日 2019-03-26 
事件の表示 特願2016-107183「二次元コード生成方法,二次元コード生成装置,二次元コード読み取り方法,二次元コード読み取り装置,二次元コード,および,プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月 4日出願公開,特開2016-189197,請求項の数(39)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2014年(平成26年)10月9日を国際出願日とする特願2014-550585号(優先権主張 2013年(平成25年)10月30日)の一部を平成28年5月30日に新たな特許出願としたものであって,平成29年3月1日付けで拒絶理由通知がされ,同年5月1日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが,同年6月16日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対し,同年9月19日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたところ,当審から,平成30年8月28日付けで最後の拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年10月22日に意見書が提出されるとともに手続補正(以下,「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1ないし39に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明39」という。)は,本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし39に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1,16ないし19,35,38及び39は以下のとおりである。

「【請求項1】
第1の情報を含む情報本体であって,標準デコーダで二次元コードを読み取ったときにデコード可能な情報である情報本体と,第2の情報を含む第2データコード語であって,標準デコーダでは表示できない隠蔽情報語である第2データコード語と,を入力装置を介して取り込むことと,
取り込まれた前記情報本体と,終端符号と,パディングコード語とを有する第1データコード語と,前記第1データコード語の誤りを検出し訂正しうる誤り訂正コード語と,を含むデータブロックを求めることと,
前記データブロックの一部を,取り込まれた前記第2データコード語で置換した置換後データブロックを求めることと,
前記置換後データブロックに基づいて二次元コードを生成することと,
を含み,
前記第2データコード語で置換する置換対象の中には,前記第1データコード語の前記情報本体又は前記誤り訂正コード語のどちらかが少なくとも含まれていることを特徴とする二次元コード生成方法。」

「【請求項16】
第1の情報を含む入力装置を介した取り込み対象である情報本体であって,標準デコーダで二次元コードを読み取ったときにデコード可能な情報である情報本体と,終端符号と,パディングコード語とを有する第1データコード語と,前記第1データコード語の誤りを検出し訂正しうる誤り訂正コード語と,を含むデータブロックの一部を,第2の情報を含む入力装置を介した取り込み対象である第2データコード語であって,標準デコーダでは表示できない隠蔽情報語である第2データコード語で置換した置換後データブロックに基づいて生成され,
前記第2データコード語で置換する置換対象の中には,前記第1データコード語の前記情報本体又は前記誤り訂正コード語のどちらかが少なくとも含まれている二次元コード。」

「【請求項17】
第1の情報を含む情報本体であって,標準デコーダで二次元コードを読み取ったときにデコード可能な情報である情報本体と,第2の情報を含む第2データコード語であって,標準デコーダでは表示できない隠蔽情報語である第2データコード語と,を入力装置を介して取り込み,
取り込まれた前記情報本体と,終端符号と,パディングコード語とを有する第1データコード語と,前記第1データコード語の誤りを検出し訂正しうる誤り訂正コード語と,を含むデータブロックの一部を,取り込まれた前記第2データコード語で置換した置換後データブロックに基づいて二次元コードを生成し,
前記第2データコード語で置換する置換対象の中には,前記第1データコード語の前記情報本体又は前記誤り訂正コード語のどちらかが少なくとも含まれている二次元コード生成装置。」

「【請求項18】
第1の情報を含む情報本体であって,標準デコーダで二次元コードを読み取ったときにデコード可能な情報である情報本体と,第2の情報を含む第2データコード語であって,標準デコーダでは表示できない隠蔽情報語である第2データコード語と,を入力装置を介して取り込むことと,
取り込まれた前記情報本体と,終端符号と,パディングコード語とを有する第1データコード語と,前記第1データコード語の誤りを検出し訂正しうる誤り訂正コード語と,を含むデータブロックを求めることと,
前記データブロックの一部を,取り込まれた前記第2データコード語で置換した置換後データブロックを求めることと,
前記置換後データブロックに基づいて二次元コードを生成することと,
をコンピュータに実行させ,
前記第2データコード語で置換する置換対象の中には,前記第1データコード語の前記情報本体又は前記誤り訂正コード語のどちらかが少なくとも含まれているプログラム。」

「【請求項19】
第1の情報を含む入力装置を介した取り込み対象である情報本体であって,標準デコーダで二次元コードを読み取ったときにデコード可能な情報である情報本体と,終端符号と,パディングコード語とを有する第1データコード語と,前記第1データコード語の誤りを検出し訂正しうる誤り訂正コード語と,を含むデータブロックの一部を,第2の情報を含む入力装置を介した取り込み対象である第2データコード語であって,標準デコーダでは表示できない隠蔽情報語である第2データコード語で置換した置換後データブロックに基づいて生成された二次元コードを読み取ることと,
前記置換後データブロックにおける所定の位置から前記第2データコード語を抽出し,当該第2データコード語から前記第2の情報を求めることと,
前記置換後データブロックの誤り訂正を行うことにより前記第1データコード語を求め,当該第1データコード語から前記第1の情報を求めることと,
を含むことを特徴とする二次元コード読み取り方法。」

「【請求項35】
第1の情報を含む入力装置を介した取り込み対象である情報本体であって,標準デコーダで二次元コードを読み取ったときにデコード可能な情報である情報本体と,終端符号と,パディングコード語とを有する第1データコード語と,前記第1データコード語の誤りを検出し訂正しうる誤り訂正コード語と,を含むデータブロックの一部を,第2の情報を含む入力装置を介した取り込み対象である第2データコード語であって,標準デコーダでは表示できない隠蔽情報語である第2データコード語で置換した置換後データブロックに基づいて生成された二次元コードを読み取ることと,
前記置換後データブロックの誤り訂正を行うことにより前記第1データコード語と前記誤り訂正コード語とを含む前記データブロックを求めることと,
前記データブロックと前記置換後データブロックとに基づいて,前記第2データコード語を求め,当該第2データコード語から前記第2の情報を求めることと,
を含むことを特徴とする二次元コード読み取り方法。」

「【請求項38】
第1の情報を含む入力装置を介した取り込み対象である情報本体であって,標準デコーダで二次元コードを読み取ったときにデコード可能な情報である情報本体と,終端符号と,パディングコード語とを有する第1データコード語と,前記第1データコード語の誤りを検出し訂正しうる誤り訂正コード語と,を含むデータブロックの一部を,第2の情報を含む入力装置を介した取り込み対象である第2データコード語であって,標準デコーダでは表示できない隠蔽情報語である第2データコード語で置換した置換後データブロックに基づいて生成された二次元コードを読み取る読み取り部と,
前記置換後データブロックにおける所定の位置から前記第2データコード語を抽出し,当該第2データコード語から前記第2の情報を求め,前記置換後データブロックの誤り訂正を行うことにより前記第1データコード語を求め,当該第1データコード語から前記第1の情報を求める制御部と,
を備えることを特徴とする二次元コード読み取り装置。」

「【請求項39】
第1の情報を含む入力装置を介した取り込み対象である情報本体であって,標準デコーダで二次元コードを読み取ったときにデコード可能な情報である情報本体と,終端符号と,パディングコード語とを有する第1データコード語と,前記第1データコード語の誤りを検出し訂正しうる誤り訂正コード語と,を含むデータブロックの一部を,第2の情報を含む入力装置を介した取り込み対象である第2データコード語であって,標準デコーダでは表示できない隠蔽情報語である第2データコード語で置換した置換後データブロックに基づいて生成された二次元コードを読み取ることと,
前記置換後データブロックにおける所定の位置から前記第2データコード語を抽出し,当該第2データコード語から前記第2の情報を求めることと,
前記置換後データブロックの誤り訂正を行うことにより前記第1データコード語を求め,当該第1データコード語から前記第1の情報を求めることと,
をコンピュータに実行させるプログラム。」

なお,本願発明2ないし15は,本願発明1を直接又は間接的に引用するものであって,本願発明1を減縮する発明であり,本願発明20ないし34は,本願発明19を直接又は間接的に引用するものであって,本願発明19を減縮する発明であり,本願発明36及び37は,本願発明35を引用するものであって,本願発明35を減縮する発明である。

第3 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2009-93443号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で加筆した。以下同じ。)。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,二次元コードおよびその読取装置に関するものである。」

イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,本発明の二次元コードおよびその読取装置の実施形態について図を参照して説明する。まず,本発明の二次元コードに係る実施形態を図1?図3に基づいて説明する。なお本実施形態では,二次元コードとして,QRコードを例示して説明するが,当該二次元コードにコード化されたデータをデコードするのに要する機能パターンと,このデータおよびそれに付随する情報をコード化したデータパターンと,を記録している二次元コードであれば,例えば,データマトリックスコード,マキシコード,ベリコード,カルラコード,CPコード等であっても本発明を適用することができる。
【0017】
図1に示すように,本実施形態に係るQRコード10は,QRコードの基本仕様(日本工業規格;JIS X 0510:2004,以下これを単に「JIS規格」という。)にほぼ準拠して構成されるもので,ファインダパターン12,アライメントパターン13,タイミングパターン14等からなる機能パターンと,データパターン15と,誤り訂正パターン16と,鍵パターン18と,から構成されている。なお,図1に示すQRコード10は,単位モジュール11を45行45列のマトリックス状に配置した7型に相当し,誤り訂正レベルHは設定されている。
・・・
【0021】
データパターン15は,例えば,単位モジュール11を4行2列に配置して構成されるもので,ビット0?ビット7の8ビット分のデータを表現可能にしている。図1では,データコード語D1?D66の66語で構成される例が図示されている。このデータパターン15の一部または全部は,後述するように,所定の暗号鍵(鍵データ)により暗号化されたデータ(以下「暗号データ」という。)をQRコードのデータパターン化したものである。そのため,通常仕様の二次元コードリーダで,QRコード10を読み取っても,この暗号化された部分のデータは,意味不明な文字列としてデコードされる。
【0022】
誤り訂正パターン16も,データパターン15と同様に,例えば,単位モジュール11を4行2列に配置して構成されて8ビット分のデータを表現可能にするもので,データパターン(データコード語)15に対して例えばリードソロモン誤り訂正のアルゴリズムを実行するために必要なする誤り訂正データを構成している。図1では,誤り訂正コード語E1?E130の130語で構成される例が図示されている。
・・・
【0024】
JIS規格に準拠するQRコードは,例えば,このように構成されるが,本実施形態に係るQRコード10は,図1に示すように,例えば,誤り訂正パターン16に対して上書きして重複するように,鍵パターン18が重ねて配置されている。図1に示す例では,誤り訂正パターン16のうちの,E45,E68,E118の部分に重複して鍵パターン18を配置している。
【0025】
この鍵パターン18は,データパターン15のうち暗号化された部分の暗号データを復号するために用いられるもので,例えば,誤り訂正パターン16やデータパターン15に上書きをするように重ねて配置されている。このように鍵パターン18を誤り訂正パターン16等に重ねて配置することで,重なった誤り訂正パターン16の一部は,データが壊れることなるが,これにより壊れた当該部分のデータはQRコードが有する誤り訂正機能により訂正される。そのため,鍵パターン18が配置される最大範囲は,当該QRコードの誤り訂正レベルによって決定される。」

ウ 「【0030】
次に,QRコード10の生成方法を図4および図5に基づいて説明する。なお,この生成方法は,例えば,パーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という。)等の情報処理装置により行われるもので,ここでは図略のパソコンにより生成されて,当該パソコンに接続されたラベルプリンタからラベルにQRコードが印刷されて出力されるものとして説明する。
【0031】
図4に示すように,まずステップS011によりQRコードとしてコード化するデータを取り込むデータ取込処理が行われる。このデータは,例えば,図5に示すようなデータフォーマットに従って構成されている。図5に示す開示データAおよび開示データBは,暗号化する必要のないデータで,また秘匿データCおよび秘匿データDは,第三者には開示したくない(秘密にしたい)暗号化する必要のあるデータである。なお,秘匿データC等の前には,秘匿識別子と秘匿データ全体のデータ長が格納されている。
【0032】
そして,この取り込んだデータの一部または全部を次のステップS013により暗号化する処理が行われる。このステップS013による暗号化処理は,前述した所定の暗号鍵を用いて行われ,図5に示すデータの例では,秘匿データCおよび秘匿データDが暗号化の対象となる。
【0033】
続くステップS015の全体データパターン生成処理では,ステップS013により暗号化された暗号データ(秘匿データC,D)と暗号化されていない非暗号データ(開示データA,B)とからなる全体データを,JIS規格の仕様に基づいてQRコードのデータパターン15および誤り訂正パターン16として生成する処理,つまりパターン化処理が行われる。なお,このQRコードのデータパターン15および誤り訂正パターン16は,印刷されて出力されるものではなく,当該パソコンのメモリ空間に記憶されている。
【0034】
次にステップS017では鍵データパターン生成処理が行われる。この処理は,前述した所定の暗号鍵である鍵データをQRコードのパターンとして生成するもので,これにより生成されたパターンが前述した鍵パターン18,18α,18β,18γ(以下「鍵パターン18等」という。)に相当する。
【0035】
ステップS019では,パターンデータ合成処理が行われる。即ち,ステップS017により生成された鍵パターン18等を,ステップS015により生成されたデータパターン15および誤り訂正パターン16に上書きする処理が行われる。この上書きは,メモリ空間上で行われるもので,前述したように,誤り訂正パターン領域から優先して誤り訂正パターン16に鍵パターン18等が重ねて配置,つまり上書きされる。
【0036】
このようにして合成されたパターンデータは,ステップS021によってラベルプリンタに出力されることで,本実施例に係るQRコード10がラベルに印刷される。なお,ここでは,出力装置として,ラベルプリンタを想定して説明したが,これに限られることはなく,紙やフィルム等の印刷媒体に印刷可能なプリンタの他に,液晶ディスプレィ等の表示媒体にQRコード10を出力する構成を採っても良い。
【0037】
以上説明したように,本実施形態に係るQRコード10によると,QRコードのコード化に用いられる単位モジュール11である明モジュールと暗モジュール(明暗モジュール)を用いたパターンに所定の暗号鍵(鍵データ)をコード化した鍵パターン18等を,データパターン15(データコード語)および誤り訂正パターン16(誤り訂正コード語)の少なくとも一方に重複して記録している。」

エ 「【0041】
次に,本発明の二次元コードの読取装置に係る二次元コード(QRコード)リーダ20の構成等を図6?図9を参照して説明する。・・・
【0055】
図7に示すように,デコード処理は,二次元コードリーダ20の電源投入により起動する制御回路40およびメモリ35によって開始され,まずステップS101により画像データ取込処理が行われる。この処理は,メモリ35の画像データ蓄積領域に蓄えされた画像データを読み込むものである。
・・・
【0057】
なお,QRコード10では,前述したように,データパターン15の一部(秘匿データC,D)を暗号化していることから,開示データA,Bは意味のある文字列としてデコードできても,暗号データについてはこのステップS103では意味不明な文字列としてデコードされる。また,誤り訂正パターン16やデータパターン15に重ねて鍵パターン18等を配置して印刷(記録)していることから,この処理では「データ誤り」が必ず発生する。・・・
【0068】
ステップS113では,鍵パターン18等を取得する処理が行われ,これにより得られた画像データを次のステップS115により鍵データを(審決注;「を」は「に」の誤りであると認められる。)デコードする。
【0069】
続くステップS117では,ステップS115によりデコードされた鍵データ,つまり所定の暗号鍵を用いて暗号データをデコードすることによって,ステップS103では意味不明な文字列としてデコードされた暗号データを秘匿データC,Dとしてデコードすることが可能となる。」

(2) 引用発明
したがって,上記引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「QRコードとしてコード化するデータを取り込むデータ取込処理であって,当該データは,暗号化する必要のない開示データAおよび開示データB,第三者には開示したくない(秘密にしたい)暗号化する必要のある秘匿データCおよび秘匿データDである,データ取込処理が行われ,
取り込んだデータの一部または全部を暗号化する処理であって,前記秘匿データCおよび前記秘匿データDが暗号化の対象であり,所定の暗号鍵を用いて行われる暗号化処理が行われ,
前記暗号化された秘匿データCおよび秘匿データDと前記暗号化されていない開示データAおよび開示データBとからなる全体データを,QRコードのデータパターンおよび誤り訂正パターンとして生成するパターン化処理が行われ,
鍵データパターン生成処理であって,前記所定の暗号鍵である鍵データをQRコードのパターンとして生成する処理が行われ,
パターンデータ合成処理であって,前記生成された鍵パターンを,前記データパターンおよび前記誤り訂正パターンに上書きする処理が行われ,
上書き(合成)されたパターンデータは,ラベルプリンタに出力されることで,QRコードがラベルに印刷される,
QRコードの生成方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2009-9547号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は,秘密にして隠しておきたいデータ(以下「秘匿データ」または「秘匿するデータ」という)を含む二次元コードの生成方法およびその読取装置に関するものである。」

「【0121】
例えば,図3(A) に示すように,例えば,パソコン1から送られてくる印刷データのレコードに,開示データA,秘匿データα,開示データB,秘匿データβの順に並ぶデータが含まれていたとすると,ステップS115により,これらのデータの順番を入れ替えて図3(B) に示すように,開示データA,開示データB,秘匿データα,秘匿データβの順に並び替える処理を行う。これにより,開示データと秘匿データとがそれぞれまとめられるので,後のステップ121による終端識別コードの付加処理や,ステップS125による秘匿識別コードの付加処理等が容易になる。
【0122】
次のステップS117では,開示データや秘匿データ等の各データをJISの基本仕様(JIS X 0510:2004)に従って符号化する処理が行われる。これにより,開示するデータを表すコード語としてコード化された開示データコードが生成され,また秘匿するデータを表すコード語としてコード化された秘匿データコードが生成される。
【0123】
また続くステップS119では,開示データの各データに対する誤り訂正符号をJISの基本仕様(JIS X 0510:2004)に準拠して生成しさらにそれをコード化して誤り訂正コードを生成する処理が行われる。また,秘匿データについても,例えば,開示データと同様に,JISの基本仕様(JIS X 0510:2004)に記載されている誤り訂正コードの生成アルゴリズムを用いて誤り訂正符号を生成しそれをコード化して誤り訂正コードを生成する処理が行われる。
【0124】
そして,続くステップS121により,開示データコードの後に終端識別コードを付加する処理が行われる。終端識別コードは,例えば,4ビットパターンで「0000」であり,図3(C) に示すように,開示データコードAの後に続く開示データコードBの直後に位置する。なお,図3(C) では,便宜上,開示データコードを「開示コード」,終端識別コードを「終端子」,とそれぞれ表現している。
・・・
【0133】
例えば,図3(D) に示す例では,秘匿データコードαを構成する「暗号化データ」の部分が暗号化され,「開始桁」,「文字数」および「復号キー検査データ」も併せて生成される。最初に位置する「開始桁」は,当該暗号化された秘匿データの位置情報として,印刷データの先頭をゼロ番地とした場合に表現可能なアドレス値がこれに相当する。また次の「文字数」は,暗号化されている秘匿データの文字数である。これにより,コード語としてコード化される前のデータレコード中の位置関係において前後して混在する場合であっても,本コード生成処理によって生成されたQRコードQを,QRコードリーダ等のデコードする際において,デコードしたデータをこの位置情報に基づいてコード化前の位置関係に配置することができる。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「QRコード」は,「二次元コード」の一種であるから(上記第3の1(1)イ【0016】),「QRコードの生成方法」は,「二次元コード生成方法」ということができる。

イ 引用発明の「暗号化する必要のない開示データAおよび開示データB」は,引用発明における処理では暗号化されないから,「標準デコーダで二次元コードを読み取ったときにデコード可能な情報である情報本体」であるといえ,また,何らかの情報を含んでいることは明らかであるから,「第1の情報」を含んでいるということができる。

ウ 引用発明の「第三者には開示したくない(秘密にしたい)暗号化する必要のある秘匿データCおよび秘匿データD」は,「所定の暗号鍵を用いて」「暗号化処理」が行われるものであり,「通常仕様の二次元コードリーダで,QRコード10を読み取っても,この暗号化された部分のデータは,意味不明な文字列としてデコードされる」から(上記第3の1(1)イ【0021】),「標準デコーダでは表示できない隠蔽情報語である第2データコード語」であるといえ,また,何らかの情報を含んでいることは明らかであるから,「第2の情報」を含んでいるということができる。

エ 引用発明は,「前記暗号化された秘匿データCおよび秘匿データDと前記暗号化されていない開示データAおよび開示データBとからなる全体データを,QRコードのデータパターンおよび誤り訂正パターンとして生成するパターン化処理が行われ」ているから,「QRコードを生成」しているということができる。

したがって,本願発明1と引用発明とは,以下の一致点及び相違点を有する。

(一致点)
「第1の情報を含む情報本体であって,標準デコーダで二次元コードを読み取ったときにデコード可能な情報である情報本体と,第2の情報を含む第2データコード語であって,標準デコーダでは表示できない隠蔽情報語である第2データコード語と,を取り込んで,二次元コードを生成する,
二次元コード生成方法。」

(相違点)
(相違点1)
「情報本体」及び「第2データコード語」を取り込むことについて,本願発明1は,「入力装置を介して」取り込んでいるのに対し,引用発明は,不明である点。

(相違点2)
本願発明1は,「取り込まれた前記情報本体と,終端符号と,パディングコード語とを有する第1データコード語と,前記第1データコード語の誤りを検出し訂正しうる誤り訂正コード語と,を含むデータブロックを求めること」,「前記データブロックの一部を,取り込まれた前記第2データコード語で置換した置換後データブロックを求めること」及び「前記置換後データブロックに基づいて二次元コードを生成すること」を含んでおり,「前記第2データコード語で置換する置換対象の中には,前記第1データコード語の前記情報本体又は前記誤り訂正コード語のどちらかが少なくとも含まれている」のに対し,引用発明は,これらの処理を含んでいない点。

(2) 相違点についての判断
事案にかんがみ,(相違点2)について検討する。
引用発明は,「第2データコード語」(秘匿データCおよび秘匿データD)を「所定の暗号鍵を用いて」「暗号化処理」することによって,「通常仕様の二次元コードリーダで,QRコード10を読み取っても,この暗号化された部分のデータは,意味不明な文字列としてデコードされる」ものであるから(上記第3の1(1)イ【0021】),「第2データコード語」(秘匿データCおよび秘匿データD)を暗号化することを前提とする発明であるところ,「第2データコード語」(秘匿データCおよび秘匿データD)を暗号化することなく,「二次元コード」(QRコード)を生成することは,引用文献1や引用文献2に記載も示唆もないし,引用発明において,そのように設計変更することの動機付けもない。
一方,本願発明1は,相違点2に係る構成の「前記データブロックの一部を,取り込まれた前記第2データコード語で置換した置換後データブロックを求めること」及び「前記置換後データブロックに基づいて二次元コードを生成すること」を備えることによって,第1データコード語については,訂正コード語を用いて訂正して復元することができるとともに,第2データコード語については,二次元コードを直接読み込んで得られる誤り訂正処理前の置換後のデータブロックから抽出することができ,抽出した第2データコード語に基づいて第2の情報を得ることができるから,第2の情報に秘匿対象である情報を含ませることで,開示対象である情報の他に秘匿対象である情報を隠蔽することができるという顕著な効果を奏するものである(本願明細書【0094】)。

(3) まとめ
したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし39について
本願発明2ないし15は,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,上記1と同じ理由により,当業者であっても,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また,本願発明16ないし18,本願発明19及び本願発明19を直接又は間接的に引用する本願発明20ないし34,本願発明35及び本願発明35を引用する本願発明36及び37,本願発明38及び本願発明39も,上記1(1)の(相違点2)と同様の発明特定事項を備えるものであるから,上記1と同じ理由により,当業者であっても,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,請求項1,14ないし19,32ないし39に係る発明について,上記引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない,また,請求項1ないし5,7,14ないし23,25,32ないし39に係る発明について,上記引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら,本件補正により補正された請求項1ないし39は,上記第4のとおり,原査定で引用された引用文献1に記載された発明ではないし,原査定で引用された引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものでもない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では,請求項32ないし34の「誤り訂正コード語」という記載は不明であるから,当該請求項に係る発明は明確でなく,本願は,特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていないとの拒絶の理由を通知しているが,本件補正によって,この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明1ないし39は,引用文献1に記載された発明ではないし,当業者が引用文献1及び2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-11 
出願番号 特願2016-107183(P2016-107183)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
P 1 8・ 537- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 福田 正悟  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 河合 俊英
梶尾 誠哉
発明の名称 二次元コード生成方法、二次元コード生成装置、二次元コード読み取り方法、二次元コード読み取り装置、二次元コード、および、プログラム  
代理人 一色国際特許業務法人  

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