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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1350586
審判番号 不服2018-70  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-04 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2016-504361「レプリケーションターゲットサービス」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月25日国際公開、WO2014/153458、平成28年 5月30日国内公表、特表2016-515731、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2014年3月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年3月20日,米国,2013年4月3日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成27年11月6日に特許法184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)の日本語による翻訳文が提出され,平成28年10月12日付けで拒絶の理由が通知され,平成29年3月17日に意見書と共に手続補正書が提出され,同年8月18日付けで拒絶査定(謄本送達日同年8月29日)がなされ,これに対して平成30年1月4日に審判請求がなされると共に手続補正がなされ,同年3月26日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ,同年6月1日に上申書が提出され,同年11月7日付けで当審により拒絶の理由が通知され,平成31年2月13日に意見書と共に手続補正書が提出されたものである。


第2 原査定の概要

原査定(平成29年8月18日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(特許法第29条第2項)について
・請求項 1-14
・引用文献等 1-3

<引用文献等一覧>
1.特開2008-287675号公報
2.特開2009-116809号公報(周知技術を示す文献)
3.特表2009-522659号公報(周知技術を示す文献)


第3 本願発明

本願請求項1乃至13に係る発明(以下「本願発明1」乃至「本願発明13」という。)は,平成31年2月13日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1乃至13に記載された,次のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
データを記憶するためのコンピュータ実装方法であって、
オブジェクトベースデータ記憶サービスおよびブロックデータ記憶サービスの両方を実行するコンピューティングリソースプロバイダによってホストされ、実行可能命令を実行する1つ以上のコンピュータシステムの制御下で、
第1の通信プロトコルに従って構成された書き込みコマンドを受信することであって、前記書き込みコマンドは、データブロックの識別子を指定し、かつ前記コンピューティングリソースプロバイダの顧客によって遠隔的に生成され、前記書き込みコマンドは、コンピューティングリソースプロバイダの顧客のデータ記憶システムへ伝送されるコマンドのレプリケーションである、ことと、
ウェブサービスアプリケーションプログラミングインターフェース呼出しをウェブサービスに送信して、前記ウェブサービスを介してアクセス可能なキーバリューストア内のデータオブジェクトの一部として前記書き込みコマンドによって書き込まれるデータを記憶させることであって、前記データオブジェクトは、前記データオブジェクトと関連付けられたキーを使用して前記キーバリューストアから読み出し可能であり、前記データオブジェクトの一部として前記書き込みコマンドによって書き込まれるデータを記憶させることは、前記データオブジェクト、前記キー、および前記データブロックの前記識別子を関連付けて一緒に格納することを含む、ことと
を備えるコンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記コマンドが、スモールコンピュータシステムインターフェースコマンドであり、前記第1の通信プロトコルが、スモールコンピュータシステムインターフェースプロトコルである、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
ストレージエリアネットワークは、前記データ記憶システムの一種である、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記データブロックの前記識別子を指定する読み取りコマンドを受信することと、
前記キーを決定するために前記識別子を使用することと、
前記データオブジェクトを読み出すために前記キーを使用することと、
前記読み出されたデータオブジェクトから前記書き込みコマンドによって書き込まれた前記データを抽出することと、
前記読み取りコマンドに応答して、前記抽出されたデータを提供することと、をさらに含む、請求項1?3のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記データオブジェクトが、他のデータブロックのデータを含む、請求項1?4のいずれか1項に記載の前記コンピュータ実装方法。
【請求項6】
オブジェクトベースデータ記憶サービスおよびブロックデータ記憶サービスの両方を実行するコンピューティングリソースプロバイダによってホストされるシステムであって、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、少なくとも、
前記ブロックデータ記憶サービスに関連付けられるブロックレベルデータ記憶インターフェースを提供することと、
前記ブロックレベルデータ記憶インターフェースに対して、ブロックレベルコマンドを受信することであって、前記ブロックレベルコマンドは、データブロックアドレスを指定し、かつ前記コンピューティングリソースプロバイダの顧客によって遠隔的に生成され、前記ブロックレベルコマンドは、コンピューティングリソースプロバイダの顧客のデータ記憶システムへ伝送されるコマンドのレプリケーションである、ことと、
前記受信されたブロックレベルコマンドに従って、ウェブサービスアプリケーションプログラミングインターフェース呼出しをウェブサービスに送信して、前記ウェブサービスを介してアクセス可能なキーバリューストア内のデータオブジェクト内にデータブロックを持続的に記憶するために、オブジェクトベースのデータ記憶システムを利用することであって、前記キーバリューストアから検索可能なそれぞれのデータは、前記データオブジェクトに関連付けられるキーを使用し、前記データオブジェクト内にデータブロックを持続的に記憶することは、前記データブロック、前記キー、およびデータブロックアドレスを関連付けて一緒に格納することを含み、前記オブジェクトベースデータ記憶サービスは、前記オブジェクトベースのデータ記憶システムに基づく、ことと、
によって、前記システムにブロックレベル記憶デバイスを模倣させる命令を含むメモリと、を備えたシステム。
【請求項7】
前記オブジェクトベースのデータ記憶システムが、データオブジェクトをそれぞれのキーと関連付けるキーバリューストアである、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ブロックレベルコマンドが、スモールコンピュータシステムインターフェースコマンドである、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
データオブジェクト内にデータブロックを持続的に記憶することが、前記データオブジェクトの少なくともサブセットの各データオブジェクトに対して、前記データオブジェクト内に複数のデータブロックを記憶することを含む、請求項6?8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記命令がさらに、前記システムに、複数の顧客のためのブロックレベル記憶デバイスを模倣させる、請求項6?9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記命令がさらに、前記システムに、データブロックを検索するためにデータオブジェクトを指定するウェブサービスアプリケーションプログラミングインターフェース呼出しを提出するのに使用可能な情報を維持させる、請求項6?10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記命令がさらに、前記システムに、
データブロックを指定する読み取りコマンドを受信させ、かつ
前記読み取りコマンドに応答して、前記オブジェクトベースのデータ記憶システム内に持続的に記憶されたデータオブジェクトから前記データブロックを取得することによって、前記データブロックを提供させる、請求項6?11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記命令がさらに、前記システムに、
前記データブロックが、スモールコンピュータシステムインターフェースプロトコルによってアドレス指定可能である論理ユニットであり、
前記コマンドが、前記システムが複数の論理ユニットの中から前記論理ユニットを区別することを可能にする情報とともに受信されることを行わせる、請求項12に記載のシステム。」


第4 引用例

1 引用例1に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,特開2008-287675号公報(平成20年11月27日公開。以下,これを「引用例1」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は説明のため当審で付加。以下同様。)

A 「【0001】
本発明は、ブロック型ストレージシステムを想定したオペレーティングシステムによりオブジェクト型ストレージシステムを利用できるようにするストレージインタフェース変換装置、情報処理システムおよびコンピュータプログラムに関するものである。」

B 「【0033】
図1において、1はホストコンピュータ、2は、ホストコンピュータ1に接続されたオブジェクト型ストレージシステム、3は、ホストコンピュータ1に構成された仮想計算機、4は、ホストコンピュータ1に構成されたストレージインタフェース変換部、5は仮想計算機3とストレージインタフェース変換部4を備えた仮想計算機環境、6はそれぞれオペレーティングシステムである。
【0034】
オブジェクト型ストレージシステム2は、可変長のデータであるオブジェクトを記憶単位としてそのオブジェクトに内容を文字列やビット列として記憶させる記憶装置である。オペレーティングシステム6は、固定長のデータであるブロックを記憶単位としてそのブロックに内容を文字列やビット列として記憶させるブロック型ストレージシステムを想定したオペレーティングシステムである。ただし、ブロック型ストレージシステムは、使用されないので図示されていない。仮想計算機3は、オペレーティングシステム6を動作させるものである。」

C 「【0039】
ストレージインタフェース変換部4は、オペレーティングシステム6がオブジェクト型ストレージシステム2を使い始める際にテーブル41を作成し、このテーブル41を記憶装置(不図示)に保存する。この記憶装置は、テーブル41を永続的に保存できればその種類については不問であるが、それは、例えば、オブジェクト型ストレージシステム、ブロック型ストレージシステム、不揮発性を有するメモリなどである。
【0040】
図2(a)に示すように、作成時のテーブル41には、例えば、「B」で始まる1つのブロック番号と「O」で始まる1つのオブジェクト識別子からなる組が必要な数だけ記憶される。各組のブロック番号およびオブジェクト識別子は、その組に固有のものである。仮に1000ブロック分の記憶容量が必要な場合は、この組が1000個記憶される。」

D 「【0043】
仮想計算機3によって、オペレーティングシステム6は、ブロック型ストレージシステムが仮想計算機環境5に接続されていると認識しているので、オペレーティングシステム6は、そのブロック型ストレージシステムへの書き込みの際に発行するブロック型インタフェースの書き込み要求を発行する(S1)。この書き込み要求では、ブロック番号とそのブロック番号のブロックに記憶されるものと想定された内容が指定される。
【0044】
ストレージインタフェース変換部4は、その書き込み要求が発行されると、その書き込み要求で指定されたブロック番号を含む組をテーブル41から検索する(S3)。
【0045】
次に、ストレージインタフェース変換部4は、検索された組内のオブジェクト識別子を読み出し、このオブジェクト識別子を指定して、書き込み要求をオブジェクト型ストレージシステム2へ送信する(S5)。この書き込み要求では、オペレーティングシステム6から発行された書き込み要求で指定された内容を書き込むようにも指定される。これにより、オブジェクト型ストレージシステム2は、指定されたオブジェクト識別子のオブジェクトに指定された内容を書き込み、その旨のレスポンスを返す。」

上記記載事項A乃至Dより,引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「ブロック型ストレージシステムを想定したオペレーティングシステムによりオブジェクト型ストレージシステムを利用できるようにする情報処理システムであって,
ホストコンピュータ1,前記ホストコンピュータ1に接続されたオブジェクト型ストレージシステム2,前記ホストコンピュータ1に構成された仮想計算機3,前記ホストコンピュータ1に構成されたストレージインタフェース変換部4,前記仮想計算機3と前記ストレージインタフェース変換部4を備えた仮想計算機環境5,オペレーティングシステム6を有し,
前記オブジェクト型ストレージシステム2は,可変長のデータであるオブジェクトを記憶単位としてそのオブジェクトに内容を文字列やビット列として記憶させる記憶装置であり,
前記オペレーティングシステム6は,固定長のデータであるブロックを記憶単位としてそのブロックに内容を文字列やビット列として記憶させるブロック型ストレージシステムを想定したオペレーティングシステムであり,
前記仮想計算機3は,前記オペレーティングシステム6を動作させるものであり,
前記ストレージインタフェース変換部4は,前記オペレーティングシステム6が前記オブジェクト型ストレージシステム2を使い始める際にテーブル41を作成し,前記テーブル41を記憶装置に保存し,
前記テーブル41には,例えば,「B」で始まる1つのブロック番号と「O」で始まる1つのオブジェクト識別子からなる組が必要な数だけ記憶され,
前記仮想計算機3によって,前記オペレーティングシステム6は,前記ブロック型ストレージシステムが前記仮想計算機環境5に接続されていると認識しているので,前記オペレーティングシステム6は,前記ブロック型ストレージシステム2への書き込みの際に発行するブロック型インタフェースの書き込み要求を発行し,
前記ストレージインタフェース変換部4は,前記書き込み要求が発行されると,前記書き込み要求で指定されたブロック番号を含む組を前記テーブル41から検索し,検索された組内のオブジェクト識別子を読み出し,前記オブジェクト識別子を指定して,前記書き込み要求を前記オブジェクト型ストレージシステム2へ送信し,
前記書き込み要求では,前記オペレーティングシステム6から発行された書き込み要求で指定された内容を書き込むようにも指定され,これにより,前記オブジェクト型ストレージシステム2は,指定されたオブジェクト識別子のオブジェクトに指定された内容を書き込む
情報処理システム。」

2 引用例2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,特開2009-116809号公報(平成21年5月28日公開。以下,これを「引用例2」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

E 「【0001】
本発明は、記憶制御装置、ストレージシステム及び仮想ボリュームの制御方法に関するものである。」

F 「【0034】
図1に示すストレージシステムは、例えば、第1記憶制御装置1と、ライトコマンド発行装置8と、第2記憶制御装置9とを備えて構成される。ライトコマンド発行装置8は、例えば、メインフレームコンピュータ、サーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ等のホストコンピュータ、あるいは、別の記憶制御装置(第2記憶制御装置9を含む)やバックアップ装置50(図19参照)のように構成される。
【0035】
ライトコマンド発行装置8と第1記憶制御装置1とは、例えば、FC_SAN(Fibre Channel_Storage Area Network)、IP_SAN(Internet Protocol_SAN)、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークCNを介して接続される。
【0036】
ライトコマンド発行装置8がメインフレームコンピュータの場合、例えば、FICON(Fibre Connection:登録商標)、ESCON(Enterprise System Connection:登録商標)、ACONARC(Advanced Connection Architecture:登録商標)、FIBARC(Fibre Connection Architecture:登録商標)のような通信プロトコルが用いられる。ライトコマンド発行装置8がサーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、他の記憶制御装置等である場合、例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)、FCP(Fibre Channel
Protocol)、iSCSI(internet Small Computer System Interface)のような通信プロトコルが用いられる。」

3 引用例3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した,本願の第一国出願前に既に公知である,特表2009-522659号公報(平成21年6月11日公表。以下,これを「引用例3」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

G 「【0001】
本発明はデータストレージシステム、より具体的には、ウェブサービスとしてストレージへのアクセスを提供するように構成されるストレージシステムに関連する。」

H 「【0012】
ストレージサービスユーザインターフェース及びストレージモデルの概略
ウェブサービスなどの、サービスとしてのデータストレージをユーザに提供するためのストレージモデルの一実施形態を図1に示す。図示されたモデルにおいて、ストレージサービスインターフェース10は、ストレージサービスに対する対顧客又は対ユーザインターフェースとして提供される。インターフェース10によってユーザに提示されるモデルに従い、ストレージサービスは、インターフェース10を介して任意の数のバケット20a-nとして体系化されてもよい。各バケット20は、任意の数のオブジェクト30a-nを保存するように設定されてもよく、ストレージサービスのユーザによって特定されるデータを入れ替わりに保存してもよい。
【0013】
以下にさらに詳しく述べるように、一部の実施形態において、ストレージサービスインターフェース10は、ウェブサービスモデルに従い、ストレージサービスとそのユーザ間の情報のやり取りをサポートするように設定されてもよい。例えば、一実施形態において、インターフェース10は、例えばhttp://storageservice.domain.comなどのUniform Resource Locator(URL)を有するウェブサービスエンドポイントとして、クライアントによってアクセス可能であってもよく、サービスクライアントによって作成されたウェブサービスコールは処理対象となる場合がある。一般的に言えば、ウェブサービスは、Hypertext Transport Protocol(HTTP)又は他の適切なプロトコルのバージョンなどの、1つ以上のインターネット系のアプリケーション層データ転送プロトコルを含む要求インターフェースを介し、要求するクライアントが使用できるように作られた、あらゆる種類のコンピュータサービスを示すことができる。」

I 「【0098】
キーマップ構造
上記に記載されるように、様々なビットストアノード160は、オブジェクト30のインスタンスのためのストレージを提供するように設定されてよい。ノード160は、個別に冗長、又はデータセキュリティのためのあらゆる特定のサポートを提供しなくてもよく、実際に、一部の実施形態において、ノード160は、オープンソースのオペレーティングシステム(例えば、Linux)を作動する包括的なコンピュータプラットフォームを使用し、安価な、商品ハードドライブ(例えば、ATAPI/DEハードドライブ)を介してストレージを提供することで実装されてもよい。このような実施形態において、個々のシステムは特にフォルトトレラントでなくてもよい。むしろ、データセキュリティ及び冗長は、上記に記載されるように、多くのノード160に渡るオブジェクト30の複製を通じて提供されてもよい。
【0099】
前に論述したように、所定のオブジェクト30は、ストレージクライアントによって特定されてもよいキーと対応してもよい。所定のオブジェクト30の個々のインスタンスは、ストレージサービスシステム内に含まれるノード160の収集物にわたり、これらインスタンスを固有に識別してもよいそれぞれのロケータに対応してもよい。一実施形態において、ストレージサービスシステム内に展開される各キーマップインスタンス140は、所定のオブジェクト30のためのキー及びすべての対応するロケータと、ノード160間に保存されたその複製されたインスタンスとの間の関係、又はマップを保存し、維持するように設定されてもよい。以下の論考において、どのようにキーマップインスタンス140の特定の実施形態が実装されてもよいかの説明に続き、キーマップインスタンス140の様々な実施形態の一般的な特徴及び機能性を論述する。
【0100】
一実施形態において、所定のキーマップインスタンス140は、1つ以上のテーブル、又はあらゆる他の適切な種類のデータ構造内の様々なキーと関連するロケータ間の関係の詳細を保存するように設定されてもよい。例えば、図10に示す一実施形態において、キーマップインスタンス140は、多くのエントリ144を有するキーマップデータ構造142を含む。各エントリは、関連する記録148のみならず、それぞれのキー146を含む。一部の実施形態において、以下にさらに詳しく説明するように、エントリ144を体系化するために使用されるデータ構造の体系は複雑であってもよい。しかしながら、機能的な見地から、キーマップインスタンス140は一般的に、所定のキー144とその対応する記録148との間に、1対1のテーブル型の関係を維持してもよい。」

J 「【0107】
一実施形態において、キーマップインスタンス140は、提供されるAPIをサポートするために必要なこれらの機能を実行するのみならず、コーディネータ120などの、キーマップクライアントに対してキーマップAPIを提供するように設定されてもよい。例えば、コントローラ120は、キーマップインスタンス140によって管理されるエントリ144と関連する記録148上で、保存、取り出し、削除、又は他の操作を行うために、APIを使用するように設定されてもよい。上記に記載されるようにノード160によってサポートされてもよいオブジェクトインスタンス上の操作と類似して、一実施形態において、キーマップAPIは、キーマップエントリ144上の格納、取得、及び削除操作をサポートしてもよい。このような一実施形態において、キーマップ保存操作、又はキーマップ書き込み操作として総称的に言及されてもよい、キーマップエントリ格納操作は、キーマップエントリ144内に保存されるべきキー146及び記録148を特定してもよい。一実施形態において、エントリ144が既に存在するキー146を特定する格納操作は、存在するエントリ144に関連する記録148を、格納操作の引数、又はパラメータとして特定される記録と置き換えてもよい。所定のキーマップインスタンス140が完了次第、キーマップ格納操作は、例えば、操作が成功、又は失敗したか、任意の種類の障害が生じたか(もしある場合)などの、状態表示を要求するクライアントに返してもよい。一部の実施形態において、キーマップ格納操作が存在するエントリ144の再配置の結果になった場合、キーマップインスタンス140は、要求するクライアントに対するエントリ144の前回値を返すように設定されてもよい。」


第5 対比・判断

1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(あ)引用発明の「オブジェクト型ストレージシステム2」は,「可変長のデータであるオブジェクトを記憶単位としてそのオブジェクトに内容を文字列やビット列として記憶させる記憶装置」であって,本願発明1の「オブジェクトベースデータ記憶サービス」とは,オブジェクトを記臆するものである点で共通する。

(い)引用発明の「ブロック型ストレージシステム」は,本願発明1の「ブロックデータ記憶サービス」と,ブロックデータを記憶するものである点で共通する。

(う)引用発明は「ブロック型ストレージシステムを想定したオペレーティングシステムによりオブジェクト型ストレージシステムを利用できるようにする情報処理システム」であって,「ホストコンピュータ1,前記ホストコンピュータ1に接続されたオブジェクト型ストレージシステム2,前記ホストコンピュータ1に構成された仮想計算機3,前記ホストコンピュータ1に構成されたストレージインタフェース変換部4,前記仮想計算機3と前記ストレージインタフェース変換部4を備えた仮想計算機環境5,オペレーティングシステム6を有」し,「ストレージインタフェース変換部4」によって,「書き込み要求が発行される」と,「前記書き込み要求を前記オブジェクト型ストレージシステム2へ送信」し,「オペレーティングシステム6から発行された書き込み要求で指定された内容を書き込むように」指定され,これにより,「前記オブジェクト型ストレージシステム2は,指定されたオブジェクト識別子のオブジェクトに指定された内容を書き込む」ものである。また,引用発明は,「ホストコンピュータ1,前記ホストコンピュータ1に接続されたオブジェクト型ストレージシステム2,前記ホストコンピュータ1に構成された仮想計算機3,前記ホストコンピュータ1に構成されたストレージインタフェース変換部4,前記仮想計算機3と前記ストレージインタフェース変換部4を備えた仮想計算機環境5,オペレーティングシステム6を有」するものであり,また,「オブジェクトに指定された内容を書き込む」制御を行う方法として把握することもできるといえるから,上記(あ)及び(い)の事項を参酌して,引用発明と本願発明1とは,“オブジェクトベースデータ記憶サービスおよびブロックデータ記憶サービスの両方を実行するコンピューティングリソースプロバイダによってホストされ,実行可能命令を実行する1つ以上のコンピュータシステムの制御下で”行われる,“データを記憶するためのコンピュータ実装方法”である点で共通するといえる。

(え)引用発明の「オペレーティングシステム6」が発行する,「ブロック型ストレージシステム2への書き込みの際に発行するブロック型インタフェースの書き込み要求」は,本願発明1の「書き込みコマンド」とデータの書き込みのためのものである点で共通する。
また引用発明の「ストレージインタフェース変換部4」は,「前記オペレーティングシステム6が前記オブジェクト型ストレージシステム2を使い始める際にテーブル41を作成し,前記テーブル41を記憶装置に保存し」た上,「書き込み要求が発行されると,前記書き込み要求で指定されたブロック番号を含む組を前記テーブル41から検索し,検索された組内のオブジェクト識別子を読み出し,前記オブジェクト識別子を指定して,前記書き込み要求を前記オブジェクト型ストレージシステム2へ送信し」書き込みがなされるものである。
また,引用発明の「ストレージインタフェース変換部4」により,「前記オペレーティングシステム6が前記オブジェクト型ストレージシステム2を使い始める際にテーブル41を作成し,前記テーブル41を記憶装置に保存し」た上で,「前記テーブル41には,例えば,「B」で始まる1つのブロック番号と「O」で始まる1つのオブジェクト識別子からなる組が必要な数だけ記憶され」るものであり,そのうち引用発明の「「B」で始まる1つのブロック番号」は本願発明1の「データブロックの前記識別子」に対応するといえることから,引用発明と本願発明1とは,下記の点(相違点1)で異なるものの,“第1の通信プロトコルに従って構成された書き込みコマンドを受信することであって,前記書き込みコマンドは,データブロックの識別子を指定する”点で一致する。

(お)以上,(あ)乃至(え)の検討から,引用発明と本願発明1とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
データを記憶するためのコンピュータ実装方法であって,
オブジェクトベースデータ記憶サービスおよびブロックデータ記憶サービスの両方を実行するコンピューティングリソースプロバイダによってホストされ,実行可能命令を実行する1つ以上のコンピュータシステムの制御下で,
第1の通信プロトコルに従って構成された書き込みコマンドを受信することであって,前記書き込みコマンドは,データブロックの識別子を指定する,こと,
を備えるコンピュータ実装方法。

〈相違点1〉
本願発明1の「書き込みコマンド」が,「コンピューティングリソースプロバイダの顧客によって遠隔的に生成され」るものであり,また「コンピューティングリソースプロバイダの顧客のデータ記憶システムへ伝送されるコマンドのレプリケーションである」のに対し,引用発明はそのようなものではない点。

〈相違点2〉
本願発明1の「書き込みコマンドによって書き込まれるデータを記憶させる」ことが,「ウェブサービスアプリケーションプログラミングインターフェース呼出しをウェブサービスに送信して、前記ウェブサービスを介してアクセス可能なキーバリューストア内のデータオブジェクトの一部として」記憶させるものであるのに対し,引用発明はそのようなものではない点。

〈相違点3〉
本願発明1の「データオブジェクト」が,「前記データオブジェクトと関連付けられたキーを使用して前記キーバリューストアから読み出し可能」なものであり,また,「データオブジェクトの一部として前記書き込みコマンドによって書き込まれるデータを記憶させることは、前記データオブジェクト、前記キー、および前記データブロックの前記識別子を関連付けて一緒に格納することを含む」ものであるのに対し,引用発明はそのようなものではない点。

(2) 相違点についての判断
相違点1及び2についてまとめて検討する。
本願発明1は,従来,データ記憶システムが,それらを使用する組織の需要に対応するために,革新してきたとともに,革新し続けていて,多数の組織は,例えば,特に,コンピューティング環境の性能,冗長性,柔軟性,及び簡潔性の目的のために,ストレージエリアネットワーク(SAN)を利用していることを技術的背景とし(本願明細書段落2),例えば,データ記憶システムは,高性能を目的として構成された構成要素を含み,そのような性能は,代償を伴うため,データ記憶システムは,相当な資本投資を必要とし,加えて,多数のデータ記憶システムは,独自のプロトコルに従って動作する特殊な機器を利用し,あるデータ記憶システムから別のデータ記憶システムへデータを移動することは,重大な課題を提起する可能性があり,そのような独自のプロトコルを使用して通信することが可能な高価な機器の使用を必要とする結果,多様なデータ記憶システムを使用する組織は,さらに追加の資本投資が必要とされる状況に陥る恐れがあることを解決しようとする課題としたものである(同段落2)。そして,本願発明1は,データレプリケーションのリモート(ターゲット)を提供するためのサービスを提供する技術分野に属し(同段落6),とりわけ,エンティティ(例えば,組織)は,読み取り及び書き込み操作をサポートする仮想デバイスのプロビジョニングをリクエストするために,サービスへの適切に構成されたアプリケーションプログラミングインターフェース(API)呼出しを通じて等,サービスに接触することが可能であり,エンティティは,サービスを運用するコンピューティングリソースプロバイダの顧客であって,リクエストの受信後,サービスは,リクエストされたデバイスをプロビジョニングし,デバイスの識別子を提供することができ,デバイスは,例えば,SCSI-3等,スモールコンピュータシステムインターフェース(SCSI)プロトコルに従って動作するように構成された仮想データ記憶装置を対象とし,エンティティは,データを適切に持続させるために,プロビジョニングされた仮想デバイスへコマンド(例えば,SCSIコマンド)をレプリケートすることができる,といった技術的解決手段により上記課題を解決するものである(同段落6)。
一方,引用発明は,ブロック型ストレージシステムを想定したオペレーティングシステムによりオブジェクト型ストレージシステムを利用できるようにするストレージインタフェース変換装置,情報処理システムおよびコンピュータプログラムに関するものであり(引用例1の段落1),ホストコンピュータは,データを記憶する装置であるストレージシステムにアクセスするのにブロック型インタフェースを用いていて(同段落2),当該ブロック型インタフェースは,ストレージシステムの記憶領域を固定長のブロックに分割し,各ブロックに順番にブロック番号を付与し,ホストコンピュータが読み書きしたいブロックのブロック番号を指定するようなインタフェースであって(同段落3),ストレージシステムの発明以来使用されてきたが,大容量のデータを管理するのに適さないという問題があり(同段落4),この問題を解決すべく,ブロック型インタフェースに代わるオブジェクト型インタフェースをホストコンピュータに提供するオブジェクト型ストレージシステムが提案され,オブジェクト型インタフェースでは,ホストコンピュータは,可変長のデータ(オブジェクトという)単位でストレージシステムにアクセスすることができ(同段落5),具体的には,ホストコンピュータがオブジェクトの保存をオブジェクト型ストレージシステムに依頼すると,オブジェクト型ストレージシステムは,そのオブジェクトの識別子である64ビットの数値をホストコンピュータに返し,ホストコンピュータは,後でその識別子をオブジェクト型ストレージシステムに指定することで,そのオブジェクトをオブジェクト型ストレージシステムから読み出すことができたが(同段落6),オブジェクト型ストレージシステムを使用するにあたり,旧来のブロック型ストレージシステムの使用を想定したソフトウェアについては,オブジェクト型ストレージシステムを使用できるソフトウェアを新たに開発する必要があり,手間と労力を要し(同段落8),例えば,ホストコンピュータで動作するオペレーティングシステムの中のファイルシステムは,アプリケーションに対してデータの読み書きの機能をファイルという単位で提供するが,ファイルシステムはブロック型ストレージシステムを想定しているので,オブジェクト型ストレージシステムを想定したファイルシステムを新たに開発する必要があることを解決しようとする課題とし(同段落9),ブロック型ストレージシステムを想定したオペレーティングシステムによりオブジェクト型ストレージシステムを利用できるようにする技術を提供することを目的としたものであって(同段落10),いわばローカルのストレージシステムを対象としたものといえる。
したがって,本願発明1のような,サービスを運用するコンピューティングリソースプロバイダの顧客であるエンティティが,読み取り及び書き込み操作をサポートする仮想デバイスのプロビジョニングをリクエストするために,サービスへの適切に構成されたアプリケーションプログラミングインターフェース(API)呼出しを通じて,サービスに接触し,当該サービスが,リクエストされたデバイスをプロビジョニングするものではないから,引用発明において,「書き込みコマンド」を,「コンピューティングリソースプロバイダの顧客によって遠隔的に生成」したり,「書き込みコマンドによって書き込まれるデータを記憶させる」ことを,「ウェブサービスアプリケーションプログラミングインターフェース呼出しをウェブサービスに送信して、前記ウェブサービスを介してアクセス可能なキーバリューストア内のデータオブジェクトの一部として」記憶させるような動機付けはそもそも存在しない。
また相違点1及び2に係る構成を,上記引用例2及び3の中にも見いだすことはできず,また相違点1及び2に係る構成が,本願第一国出願前に周知な構成であったともいえない。
したがって,当業者といえども,上記相違点1及び2に関する構成を引用発明において採用することが容易であったということはできず,上記その余の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2乃至5について
本願発明2乃至5は,請求項1を直接または間接的に引用するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明6について
本願発明6は,本願発明1と概ねカテゴリー表現が異なるものであって,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明7乃至13について
本願発明7乃至13は,請求項6を直接または間接的に引用するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用例2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定についての判断

平成31年2月13日付けの手続補正により,補正後の請求項1乃至13は,上記相違点1及び2に係る技術的事項を有するものとなった。当該事項は,上記のとおり原査定における引用文献1乃至3には記載されておらず,本願の第一国出願前における周知技術でもないので,本願発明1乃至13は,当業者であっても,原査定における引用文献1乃至3に基づいて容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。


第7 当審拒絶理由について

<特許法36条6項2号について>
当審から,「実行可能命令で構成された1つ以上のコンピュータシステム」,「書き込みコマンドのデータ」,「書き込みコマンドのデータを持続させる」,及び「前記データオブジェクトの一部として前記書き込みコマンドのデータを持続させることは、複数の書き込みコマンドのデータを前記データオブジェクトに集約することを含む」との点につき構成が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが,平成31年2月13日付けの手続補正において,上記,「第3 本願発明」の項に掲げたとおりに補正された結果,この拒絶の理由は解消した。
当審から,「ストレージエリアネットワーク」が,いずれに設けられるものか,不明確であるとの拒絶理由を通知しているが,平成31年2月13日付けの手続補正において,上記,「第3 本願発明」の項に掲げたとおりに補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

<特許法36条6項1号について>
当審から,「複数の書き込みコマンドのデータを前記データオブジェクトに集約することを含む」こと,及び「複数のブロックレベルコマンドのデータブロックを前記データオブジェクトに集約することを含」むことが本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないとの拒絶理由を通知しているが,平成31年2月13日付けの手続補正において,上記,「第3 本願発明」の項に掲げたとおりに補正された結果,この拒絶の理由は解消した。


第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-15 
出願番号 特願2016-504361(P2016-504361)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 桜井 茂行  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 山崎 慎一
須田 勝巳
発明の名称 レプリケーションターゲットサービス  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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