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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G05B
管理番号 1350901
審判番号 不服2017-14099  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-22 
確定日 2019-05-10 
事件の表示 特願2013-74124「電力監視装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月23日出願公開,特開2014-199521,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年3月29日の出願であって,その主な手続の経緯は,以下のとおりである。
平成28年12月 1日付け:拒絶理由通知
平成29年 1月31日 :意見書及び手続補正書の提出
同 年 6月23日付け:拒絶査定
同 年 9月22日 :審判請求と同時に手続補正書の提出
平成31年 1月29日付け:電話応対
同 年 1月30日付け:拒絶理由通知
同 年 3月22日 :意見書及び手続補正書の提出


第2 原査定の概要
原査定(平成29年6月23日付け拒絶査定)の概要は,次のとおりである。

平成29年1月31日の手続補正書により補正された請求項1ないし8に係る発明は,以下の引用文献AないしFに基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2005-11203号公報
B.特開2002-304207号公報
C.特開平11-326385号公報
D.特開2001-216181号公報
E.特開2011-90542号公報(周知技術を示す文献)
F.特開2002-91517号公報(周知技術を示す文献)


第3 当審拒絶理由の概要
当審が平成31年1月30日付けで通知した拒絶理由の概要は,次のとおりである。

平成29年9月22日の手続補正書により補正された請求項1ないし5に係る発明は,以下の引用文献1に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2002-287819号公報


第4 本願発明
平成31年3月22日の手続補正書により補正された請求項1ないし5に係る発明(以下,各請求項に係る発明を「本願発明1」などという。)は,特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
被監視装置に外付け可能な電力監視装置であって,
前記被監視装置において消費される電力値,あるいは,該被監視装置に供給される電圧値および電流値を受け取るデータ入力部と,
前記電力値の記録,あるいは,前記電圧値と前記電流値とに基づいて算出された電力値の記録を前記被監視装置の動作状態を示す状態信号に基づいて開始または停止させるシーケンスプログラムを格納するメモリと,
前記シーケンスプログラムに従って前記電力値の記録を開始し,あるいは,停止するPLC機能を有するPLC部と,
前記状態信号を受け取る状態信号入力部とを備え,
前記PLC部は,前記被監視装置からの前記状態信号が前記被監視装置の電源オンを示したときに前記電力値の記録を開始し,前記状態信号が前記被監視装置の電源オフを示したときに前記電力値の記録を停止する,電力監視装置。
【請求項2】
被監視装置に外付け可能な電力監視装置であって,
前記被監視装置において消費される電力値,あるいは,該被監視装置に供給される電圧値および電流値を受け取るデータ入力部と,
前記電力値の記録,あるいは,前記電圧値と前記電流値とに基づいて算出された電力値の記録を前記被監視装置の動作状態を示す状態信号に基づいて開始または停止させるシーケンスプログラムを格納するメモリと,
前記シーケンスプログラムに従って前記電力値の記録を開始し,あるいは,停止するPLC機能を有するPLC部と,
前記状態信号を受け取る状態信号入力部とを備え,
前記PLC部は,前記被監視装置からの前記状態信号が前記被監視装置の動作開始を示したときに前記電力値の記録を開始し,前記状態信号が前記被監視装置の動作停止を示したときに前記電力値の記録を停止する,電力監視装置。
【請求項3】
前記メモリは,前記開始条件および前記停止条件を書換え可能なように格納していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力監視装置。
【請求項4】
前記電力値を出力可能な出力部をさらに備え,
前記PLC部は,前記出力部に接続された外部メモリに前記電力値を記録することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電力監視装置。
【請求項5】
前記電力値を表示する表示部をさらに備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電力監視装置。」


第5 引用文献1の記載及び引用発明
1.引用文献1の記載事項
平成31年1月30日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。なお,下線は当審が付したものである。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,主としてビル設備管理用に使用されるデータ収集システム等に関し,より詳細には,通信ケーブルの敷設していないフロアーに設置された機器運転データの収集或いはビル設備管理者が常駐していない所謂スポットビルないしビル設備管理者が常駐していてもデータ収集設備の完備していないビル等における機器運転データの収集が可能であり,よりデータ収集の効率と操作性を向上させるとともに収集されたデータをモニタないし監視することができる移動・携帯可能なデータ収集システム,データ収集方法及びデータ監視システムに関する。」
「【0002】
【従来の技術】最近のオフィスビル等にあっては,ビル設備管理のために設備機器に予めデータ計測器を固定して設け,各計測器からそれぞれ通信ケーブルによってデータを収集しコンピューター管理しているところがある。しかし,既設のビルで前述のような管理体制が整っていないビルにあって,新たに管理用設備を設けることは,莫大な経費と労力を要し,経費節約の折りから実現不可能に等しい。このような既設のビルまたはビル設備管理者が常駐していない所謂スポットビルの場合においては,従来,設備機器に関する運転データは毎月ないし隔月の点検時に測定され,このように収集されたデータは瞬時値にすぎず,計測器によってせいぜい電気機器類の電圧,電流,電力等に関連するデータを取り込める程度であり,データの詳細な解析には不充分であった。本願発明者は,前記の問題点を解消するために,異種類の計測データを時刻データとともに同時に並行して収集し,これらのデータを一元管理してパーソナルコンピュータによって多様な解析が可能な移動・携帯型データ収集システムの発明に関して先に特許出願した。」
「【0018】本発明の実施の形態1は,請求項2乃至5の発明を含むものであり,データ収集部と操作部を備えてなり,この内のデータ収集部は,複数のアナログセンサーと,前記アナログセンサーに接続された信号変換器と,前記信号変換器またはアナログセンサーに接続されA/D(アナログ/デジタル)変換機能を有するスレーブユニットと,前記スレーブユニットに電力を供給するためのAC/DC(交流/直流)変換トランスと,を備え,他方の操作部は,データ及びプログラムを記憶する記憶部と,CPU,インターフェース及びクロック機能を具備し,AC又はDC電源部から電力供給されてなるPLC(プログラマブルロジックコントローラ)と,並びに,該PLCに入出力ユニットを介して接続された指示操作盤と,を備えてなる。」
「【0023】アナログセンサーとして,例えば,振動加速度値を測定する振動計,電流値を測定するクランププローグ,圧力を測定するプレッシャー・センサー,湿度を測定する湿度センサー,風量算出を目的としてダクト内風速を測定するための計測用ブローグ,非接触式に温度を測定できる放射温度計,風速変換器,流量を測定するパルス流量計およびパルス変換器等がある。」
「【0026】次ぎに,操作部3において,PLC21はCPU22と記憶部23を有し,係るPLC21は入出力ユニット25を介して指示操作盤26に接続されている。予めPLC21の記憶部23のプログラムエリヤには,データ収集のための諸条件を定めたラダープログラム,その他形式のプログラムが入力されている。指示操作盤26は前記ラダープログラム等を介して各種センサーを制御するスイッチの役割を果し,指示操作盤26上にある任意のセンサースイッチを選択してON/OFFすることによってラダープログラム等と連動し当該センサーによるデータ収集の開始と終了を指示するとともにPLCの記憶部における当該センサーの占める空きエリヤの状態を指示操作盤26上の指示ランプに表示することができる。」
「【0032】使用方法
本発明の実施の形態1に係る移動・携帯型データ収集システム乃至データ監視システムの使用方法について,温調機器に関するデータ収集の例を以下に説明する。本発明の実施の形態1及び2に係る移動・携帯型データ収集システムに予めパーソナルコンピュータからプログラム入力用ソフトによって測定条件を入力設定した後,当該移動・携帯型データ収集システムを携帯して測定しようとする温調機器が設置されている現場に運び,図1に示すデータ収集部2のアナログ入力スレーブユニット11aに接続されているコネクターを操作部3のPLCに差込んで接続する。次ぎに,電流値測定用クランププローグ,ダクト内の風速と風速から算出される風量を測定するための計測用プローグ,室内温度測定のための温度センサーおよび温調機器のI/Oデータ測定用のリレーをそれぞれ所定の測定個所に接続して,データ収集部2および操作部3の両メイン電源スイッチおよび指示操作盤26の該当する各センサースイッチをオンすると同時にPLCにデータ収集が開始される。」
「【0036】次に,前記の発明の実施の形態1乃至2に係る移動・携帯型データ収集システム乃至データ監視システムを使用して間欠運転される測定対象機器の運転データを収集する方法について説明する。先ず,前記の測定条件を定めたプログラムにおいて,図7(a)に示すように,データ収集を開始又は停止する電流値を設定値として定めておき,同図(b)に示すように,判断手段37であるコンパレータによって設定値とチャネルデータ(以下CHデータと称する)とを比較して,CHデータが設定値に達したとき(A時刻)に測定を開始し,同時刻をデータメモリー領域に書込む。次に,CHデータが設定値を下回ったとき(B時刻)に測定を停止し,同時刻をデータメモリー領域に書込む。また,図7(c)に示すように,上限値,下限値,基準値を設定値として定めて,CHデータが上限値と下限値の範囲内にあるときにデータ収集を行い,範囲外のときはデータ収集を停止することもできる。また,前記のデータ収集方法は,間欠運転される測定対象機器について説明したが,連続運転される測定対象機器に対しても本方法を適用することができる。」
「【0039】
【発明の効果】・・・また,PLCプログラム入力ソフトによって,データ収集サイクル,収集時間・期間が任意に設定可能であり,・・・」

2.引用文献1に記載された技術的事項
これらの記載から,引用文献1には,以下の(1)ないし(10)の技術的事項が記載されているということができる。
(1)主としてビル設備管理用に使用される移動・携帯可能なデータ収集システム(【0001】)であって,データ収集部2と操作部3を備え,データ収集部2は複数のアナログセンサーを備え,操作部3はPLCを備えていること(【0018】)。
(2)アナログセンサーとして,電流値を測定するクランププローグがあること(【0023】)。
(3)PLC21の記憶部23には,データ収集のための諸条件を定めたラダープログラムが入力されていること(【0026】)。
(4)移動・携帯型データ収集システムを携帯して測定しようとする温調機器が設置されている現場に運び,電流値測定用クランププローグ,風量を測定するための計測用プローグ,温度センサーを所定の測定箇所に接続すること(【0032】)。
(5)移動・携帯型データ収集システムを使用して,間欠運転される機器の運転データを収集する際に,電流値が設定値に達したときに測定を開始し,設定値を下回ったときに測定を停止すること(【0036】)。
(6)PLCプログラム入力ソフトによって,データ収集サイクル,収集時間・期間が任意に設定可能であること(【0039】)。
(7)従来の技術として,計測器によって電気機器類の電圧,電流,電力等のデータを取り込んでいたこと(【0002】)。
(8)上記の(5)について,間欠運転される機器の運転データを収集する際には,上記(4)と同様に,移動・携帯型データ収集システムを,間欠運転される機器が設置されている現場に運び,センサーを接続することは,当業者にとって明らかな事項である。
(9)上記の(1)について,データ収集システムが,データ収集部2で収集したデータを入力するための入力部を有することは,当業者にとって明らかな事項である。
(10)上記の(3)及び(5)について,データの測定を開始や終了する条件は,データ収集のための諸条件といえるから,ラダープログラムに定められていることは,当業者にとって明らかな事項である。

3.引用発明
上記2.(1)ないし(6)及び(8)ないし(10)の技術的事項を整理すると,引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「間欠運転される機器が設置されている現場に運び,接続可能なデータ収集システムであって,
機器のデータを収集する複数のアナログセンサからのデータを入力する入力部と,
データの測定の開始や終了などのデータ収集のための諸条件を定めたラダープログラムが入力されている記憶部23と,
ラダープログラムに従って,前記データの記録を開始し,あるいは,停止するPLC21と,
電流値を測定するクランププローグとを備え,
PLC21は,電流値が設定値に達したときに測定を開始し,設定値を下回ったときに測定を停止する,データ収集システム。」 (以下「引用発明」という。)


第6 対比及び判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,引用発明の「データ収集システム」は,収集したデータを監視するために利用される(【0001】)ものであり,データ監視システムの一部といえるから,本願発明1の「電力監視装置」と対比すると,「監視を行うための装置」という点で一致するといえる。
そうすると,引用発明の「間欠運転される機器」が本願発明1の「被監視装置」に相当することは明らかであり,「設置されている現場に運び,接続可能」であることが「外付け可能」であることに相当する。
また,引用発明の「機器のデータを収集する複数のアナログセンサからのデータ」と,本願発明1の「前記被監視装置において消費される電力値,あるいは,該被監視装置に供給される電圧値および電流値」は,「前記被監視装置の監視対象データ」という点で一致し,引用発明の「入力する入力部」は本願発明1の「受け取るデータ入力部」に相当する。
また,引用発明の「データの測定の開始や終了などのデータ収集のための諸条件を定めたラダープログラム」と,本願発明1の「前記電力値の記録,あるいは,前記電圧値と前記電流値とに基づいて算出された電力値の記録を前記被監視装置の動作状態を示す状態信号に基づいて開始または停止させるシーケンスプログラム」は,「前記監視対象データの記録を所定の条件に基づいて開始または停止させるシーケンスプログラム」という点で一致し,引用発明の「入力されている記憶部23」は本願発明1の「格納するメモリ」に相当する。
また,引用発明の「ラダープログラムに従って,前記データの記録を開始し,あるいは,停止するPLC21」と,本願発明1の「前記シーケンスプログラムに従って前記電力値の記録を開始し,あるいは,停止するPLC機能を有するPLC部」は,「前記シーケンスプログラムに従って前記監視対象データの記録を開始し,あるいは,停止するPLC機能を有するPLC部」という点で一致し,引用発明において「PLC21は,電流値が設定値に達したときに測定を開始し,設定値を下回ったときに測定を停止する」ことと,本願発明1において「前記PLC部は,前記被監視装置からの前記状態信号が前記被監視装置の電源オンを示したときに前記電力値の記録を開始し,前記状態信号が前記被監視装置の電源オフを示したときに前記電力値の記録を停止する」ことは,「前記PLC部は,所定の条件でにおいて前記監視対象データの記録を開始し,所定の他の条件において前記監視対象データの記録を停止する」ことという点で一致する。

したがって,本願発明1と引用発明は,次の点で一致及び相違する。

<一致点>
「被監視装置に外付け可能な監視を行うための装置であって,
前記被監視装置の監視対象データを受け取るデータ入力部と,
前記監視対象データの記録を所定の条件に基づいて開始または停止させるシーケンスプログラムを格納するメモリと,
前記シーケンスプログラムに従って前記監視対象データの記録を開始し,あるいは,停止するPLC機能を有するPLC部と,
前記PLC部は,所定の条件において前記監視対象データの記録を開始し,所定の他の条件において前記監視対象データの記録を停止する,監視を行うための装置。」

<相違点1>
監視対象データ及び監視を行うための装置が,本願発明1では,「前記被監視装置において消費される電力値,あるいは,該被監視装置に供給される電圧値および電流値」及び「電力監視装置」であるのに対して,引用発明では,「機器のデータを収集する複数のアナログセンサからのデータ」及び「データ収集システム」である点。

<相違点2>
本願発明1の装置は,「前記状態信号を受け取る状態信号入力部」を備えており,シーケンスプログラムが,「記録を前記被監視装置の動作状態を示す状態信号に基づいて開始または停止させる」ものであり,PLC部が,「前記被監視装置からの前記状態信号が前記被監視装置の電源オンを示したときに」「記録を開始し,前記状態信号が前記被監視装置の電源オフを示したときに」「記録を停止する」ものであるのに対して,引用発明の装置は,状態信号入力部を備えておらず,シーケンスプログラムが,「データの測定の開始や終了などのデータ収集のための諸条件を定めた」ものであり,PLC部が,「電流値が設定値に達したときに測定を開始し,設定値を下回ったときに測定を停止する」ものである点。

(2)相違点についての判断
ア.相違点1について
上記第5の2.(7)に示すように,引用文献1には,従来の技術として,計測器によって電気機器類の電圧,電流,電力等のデータを取り込んでいたことが示されているから,引用発明の監視対象データとして電圧,電流,電力を選択し,データ収集システムを電力監視装置として構成することは,当業者が容易に想到できた事項である。

イ.相違点2について
本願発明1は,監視対象となるデータである電力値,あるいは,電圧値及び電流値を受け取るデータ入力部のほかに,被監視装置の動作状態を示す状態信号を受け取る状態信号入力部を備えており,この状態信号に基づいて,電力値の記録を開始又は停止させている。また,本願明細書の段落【0038】によれば,このように記録の開始や停止を行うことで,不要なデータを記録しないから,メモリに格納するデータの容量を低減でき,電力を分析する際の時間短縮を図ることができるものである。
これに対して,引用発明は,電流値が設定値に達したときに測定を開始し,設定値を下回ったときに測定を停止するものであるから,本願発明1と同様に,不要なデータを記録しないといえる。
しかし,記録の開始や停止は,監視対象となるデータである電流値に基づいているから,引用発明では,監視対象となるデータによって,被監視装置の動作状態を判断している。すなわち,引用発明の装置は,監視対象となるデータを受け取るデータ入力部だけで,記録の開始や停止を行うことが可能であり,被監視装置の動作状態を示す状態信号を受け取る状態信号入力部は必要ないといえるところ,当業者は,装置の簡素化や製造コストの低減を図ることが一般的であるから,データ入力部だけで記録の開始や停止を行うことができる引用発明に対して,新たな状態信号入力部を付加することは,装置が複雑となり,製造コストも上昇するから,当業者が容易に想到できる事項とはいえない。

(3)小括
したがって,本願発明1は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明は,上記1.(1)と同様に対比できるから,上記1.(1)の一致点で一致し,相違点1と同様の点で相違するほかに,以下の点で相違するといえる。

<相違点3>
本願発明2の装置は,「前記状態信号を受け取る状態信号入力部」を備えており,シーケンスプログラムが,「記録を前記被監視装置の動作状態を示す状態信号に基づいて開始または停止させる」ものであり,PLC部が,「前記被監視装置からの前記状態信号が前記被監視装置の動作開始を示したときに」「記録を開始し,前記状態信号が前記被監視装置の動作停止を示したときに」「記録を停止する」ものであるのに対して,引用発明の装置は,状態信号入力部を備えておらず,シーケンスプログラムが,「データの測定の開始や終了などのデータ収集のための諸条件を定めた」ものであり,PLC部が,「電流値が設定値に達したときに測定を開始し,設定値を下回ったときに測定を停止する」ものである点。

(2)相違点についての判断
ア.相違点1について
上記1.(2)ア.に示す理由と同様の理由により,相違点1に係る構成は,当業者が容易に想到できたものである。

イ.相違点3について
本願発明2の装置は,本願発明1と同様に「前記状態信号を受け取る状態信号入力部」を備えているが,上記上記1.(2)イ.に示す理由と同様の理由により,引用発明に対して状態信号入力部を付加することは,当業者が容易に想到できる事項とはいえない。

(3)小括
したがって,本願発明2は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明3ないし5について
本願発明3ないし5は,本願発明1又は2を引用するものであって,本願発明1又は2の発明特定事項を有するから,上記1.(2)及び2.(2)に示す理由と同様の理由により,本願発明3ないし5は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定についての判断
本願発明1又は2の装置は,被監視装置の状態信号を受け取る状態信号入力部を備えており,電力値の記録の開始や停止を状態信号に基づいて行うものであるが,電力監視装置の技術分野において,被監視装置の状態信号に基づいて電力値の記録の開始や停止を行うことは,上記第2の引用文献AないしFのいずれにも開示も示唆もされていない。
したがって,本願発明1ないし5は,当業者であっても,原査定における引用文献AないしFに基づいて容易に発明できたものではないから,原査定を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり,原査定の拒絶理由及び当審で通知した拒絶理由によって,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-24 
出願番号 特願2013-74124(P2013-74124)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 影山 直洋  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 刈間 宏信
中川 隆司
発明の名称 電力監視装置  
代理人 赤岡 明  
代理人 中村 行孝  
代理人 永井 浩之  
代理人 村田 卓久  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 朝倉 悟  

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