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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1350947
審判番号 不服2018-6098  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-02 
確定日 2019-05-13 
事件の表示 特願2017-101515「プレイスにアクセスするための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月10日出願公開、特開2017-139033、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2012年9月5日(パリ条約による優先権主張2011年9月7日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願(特願2014-528958号)の一部を2017年5月23日に新たな特許出願としたものであって、平成29年6月22日付けで手続補正がなされ、平成29年8月23日付けで拒絶理由通知がなされ、平成29年11月28日付けで手続補正がなされたが、平成29年12月22日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、平成30年5月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要

原査定(平成29年12月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-14に係る発明は、以下の引用文献1-6に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.登録実用新案第3122710号公報
2.特開2002-24879号公報
3.特開2002-183563号公報
4.特開2005-100464号公報
5.特開2009-70063号公報
6.特開2009-237961号公報

第3 本願発明

本願請求項1-14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は、平成30年5月2日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、6、10、11は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
ホテルの客室などの事前予約したプレイスへのユーザによる自動アクセスを可能とするための方法であって、該方法は、
ポータブル電子デバイスからの前記事前予約したプレイスに入るための要求を集中予約システムにおいて受信することであって、該要求は、ユーザデータと、予約番号と、前記事前予約したプレイスに関するロケーションデータを含み、前記ロケーションデータは、前記事前予約したプレイスに関するラベルのコードから決定されることと、
前記集中予約システムが、前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定することと、
前記ユーザ識別と、前記予約番号と、前記ロケーションデータが前記事前予約したプレイスに関する予約と一致するかを確認するために、複数の財産管理システムの対応する財産管理システムによって、前記ユーザ識別と、前記予約番号と、前記ロケーションデータとを予約リストと照合することと、
前記財産管理システムが、前記ユーザ識別と、前記予約番号と、前記ロケーションデータとが前記事前予約したプレイスに関する前記予約と一致する場合に、前記事前予約したプレイスを該ユーザによるアクセスが可能となるように開放するための信号を自動的に送信することと、を含む方法。」

「【請求項6】
事前予約したプレイスへのユーザによる自動アクセスを可能にするためのシステムであって、該システムは、
ポータブル電子デバイスからの前記事前予約したプレイスに入るための要求をシステムにおいて受信するための受信機であって、該要求は、ユーザデータと、予約番号と、前記事前予約したプレイスに関するロケーションデータを含み、前記ロケーションデータは、前記事前予約したプレイスに関するラベルのコードから決定される、受信機と
前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定するための顧客プロファイル・データベースと、
前記ユーザ識別と、前記予約番号と、前記ロケーションデータが前記事前予約したプレイスに関する予約と一致するかを確認するために、前記ユーザ識別と、前記予約番号と、前記ロケーションデータとを予約リストと照合するための照合モジュールと、を具備し、
前記ユーザ識別と、前記予約番号と、前記ロケーションデータとが前記事前予約したプレイスに関する前記予約と一致する場合に、前記事前予約したプレイスを該ユーザによるアクセスが可能となるように開放するための信号を自動的に送信する、システム。」

「【請求項10】
コンピュータ可読記憶媒体であって、
前記コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたアプリケーションを具備するとともに、ロケーションデータを決定するための事前予約したプレイスに関するコードを含むラベルを読み取りおよび復号を実行し、前記事前予約したプレイスに入るために、システムへ、ユーザデータと、予約番号と、前記事前予約したプレイスに関するロケーションデータを含む要求を通信するように構成された命令を具備し、
前記システムにおいて前記要求を受信することは、前記システムに、
前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定させ、
前記ユーザ識別と、前記予約番号と、前記ロケーションデータが前記事前予約したプレイスに関する予約と一致するかを確認するために、前記システムによって、前記ユーザ識別と、前記予約番号と、前記ロケーションデータとを予約リストと比較させ、
前記ユーザ識別と、前記予約番号と、前記ロケーションデータとが前記事前予約したプレイスに関する前記予約と一致する場合に、前記事前予約したプレイスをユーザによるアクセスが可能となるように開放するための信号を自動的に送信させる、コンピュータ可読記憶媒体。」

「【請求項11】
ホテルの客室などの事前予約したプレイスへのユーザによる自動アクセスを可能とするための方法であって、該方法は、
集中予約システムにおいて、ユーザデータと、ロケーションデータを含む要求をポータブル電子デバイスから受信することであって、前記ロケーションデータは、前記事前予約したホテルの部屋に関するホテル名とホテルの部屋番号を示し、前記ロケーションデータは、前記事前予約したホテルの部屋に関する前記ホテル名と前記ホテルの部屋番号を特定するために前記事前予約したホテルの部屋に関するコードを含むラベルから決定されることと、
顧客識別を決定するために前記ユーザデータに基づいて顧客プロファイル・データベースに問い合わせることと、
事前予約した部屋にしたがって、集中予約システムから複数の財産管理システムの対応する財産管理システムへ客室開錠要求を通信することであって、前記客室開錠要求は前記顧客識別と、予約番号と、前記ホテル名と、前記ホテルの部屋番号とを含み、
前記財産管理システムにおいて、前記顧客識別と、前記予約番号と、前記ホテル名と、前記ホテルの部屋番号とが、前記事前予約したホテルの部屋に関する予約と一致するかを確認し、
前記顧客識別と、前記予約番号と、前記ホテル名と、前記ホテルの部屋番号とが、前記事前予約したホテルの部屋に関する前記予約に一致することに応答して、前記ユーザによるアクセスが可能となるように前記事前予約したホテルの部屋を開放するための信号を送信することと、を含む方法。」

なお、本願発明2-4は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明5は、本願発明1の各手順を実行するコンピュータプログラムの発明である。
本願発明7-9は、本願発明6を減縮した発明である。
本願発明12-14は、本願発明11を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(登録実用新案第3122710号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0001】
本考案は、不動産統括管理システムに関する。」

イ.「【0005】
本考案の目的とするところは、ユーザへのWebサイトでの不動産賃貸物件情報の提供から所望とする物件のセルフ見学の申込み、当該セルフ見学の実施、不動産物件の電気錠の開閉制御情報の収集、セルフ見学についてのアンケートへの回答情報の収集を統括して実施可能とすることにある。」

ウ.「【0011】
この図1に示されるように、監視対象物件側、例えばマンション等の建物には、ドアに電気錠1が装着されており、更に当該ドアの例えば電気錠1の装着位置付近には二次元バーコード3が付されている。この電気錠1には、当該電気錠1を電気的に制御する制御装置2が接続されている。・・・(中略)・・・
【0012】
一方、管理センタ側では、施開錠管理用サーバ6、管理端末7、WEBサーバ9、管理サーバ10が、ルータ15及びファイアウォール16を介して、通信自在に接続されており、」

エ.「【0021】
次に、図5には管理サーバ10の詳細な構成を示し説明する。
【0022】
図5に示されるように、管理サーバ10は、制御部100、通信制御部101、物件情報テーブルを保持するDB102、法人情報テーブルを保持するDB103、ユーザ情報テーブルを保持するDB104、アンケート情報テーブルを保持するDB105を有している。通信制御部101は、施開錠管理用サーバ6等との通信を行なうものである。」

オ.「【0024】
また、各DB102乃至105の各テーブルでの記憶内容の詳細を説明すると、DB102の物件情報テーブルでは、物件No、部屋番号、物件名称、物件所在地、世帯数、二次元バーコード情報が少なくとも管理されている。・・・(中略)・・・DB104のユーザ情報テーブルでは、ユーザID及びパスワード情報、ユーザ名、携帯電話機の電話番号(No)、メールアドレス、性別、見学予約情報が少なくとも管理されている。」

カ.「【0025】
以下、図6のフローチャートを参照して、本考案の一実施の形態に係る不動産統括管理システムによる見学予約に係る一連の処理を詳細に説明する。」

キ.「【0026】
一般消費者の端末11が、Webサーバ9が提供するWebサイトにアクセスすると(ステップS1)、Webサーバ9は、問い合わせ画面100のファイルを一般消費者の端末11へと送信する(ステップS2)。一般消費者の端末11は、この問い合わせ画面100のファイルを受信すると、当該画面100を表示する(ステップS3)。」

ク.「【0028】
即ち、図8に示されるように、この問い合わせ画面100では、ユーザのE-mailアドレス、ユーザID、パスワード、氏名、郵便番号、住所、携帯電話番号、携帯メールアドレス、生年月日、性別等を入力するようになっている。」

ケ.図8には、問い合せ画面100として、「ユーザID【必須】」の入力項目を有した会員情報の入力画面が記載されている。

コ.「【0029】
一般消費者の端末11において、このような問い合わせ画面100にて上述したような情報の入力がなされ、ユーザ端末4からユーザ情報が送信されると(ステップS4)、Webサーバ9は、当該ユーザ情報を受信し(ステップS5)、当該ユーザ情報を管理サーバ10に転送し(ステップS6)、一連の動作を終了することになる。」

サ.「【0030】
この不動産統括管理システムでは、上記図6と同種の処理により、図9に示されるような見学申し込み用画面101を一般消費者の端末11に表示し、当該画面101への入力情報を見学予約情報としてWebサーバ9に送信し、当該Webサーバ9が当該見学予約情報を管理サーバ10に転送する。管理サーバ10では、DB104の当該見学予約情報をユーザ情報テーブルに書き込むことになる。」

シ.図9には、見学申し込み用画面101として、「物件番号【必須】」、「ユーザID【必須】」、「見学希望日時【必須】」の入力項目を有する画面が記載されている。

ス.「【0031】
次に図7のフローチャートを参照して、本考案の一実施の形態に係る不動産統括管理システムによるセルフ見学時の電気錠1の開錠制御に係る一連の処理を詳細に説明する。
・・・(中略)・・・
【0034】
ユーザは、見学予約をした物件に到着すると、各部屋毎に異なる二次元バーコード102を携帯電話機4で読み取り(ステップS11)、当該二次元バーコード102を解析して所定画面を表示して、当該画面にてユーザ情報(ユーザIDなど)を入力し、管理サーバ10に送信する(ステップS12)。管理サーバ10は、このユーザ情報を受信するとユーザが見学予約をした物件に到着したことを認識し(ステップS13)、施開錠管理用サーバ6に対して電気錠1の開錠をリクエストし(ステップS14)、処理を終了する。
【0035】
この後、施開錠管理用サーバ6は、上記リクエストに基づいて制御装置2に対して制御信号を送信し、電気錠1を遠隔より開錠制御することになる。」

前記ア.?ス.によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
「不動産賃貸物件のセルフ見学の申込み、セルフ見学の実施を統括して実施可能とする不動産統括管理システムであって(【0001】【0005】)、
マンション等の建物には、ドアに電気錠1が装着されており、当該電気錠1の装着位置付近には二次元バーコード3が付され、この電気錠1には、当該電気錠1を電気的に制御する制御装置2が接続され(【0011】)、
管理センタでは、施開錠管理用サーバ6、WEBサーバ9、管理サーバ10が接続されており(【0012】)、
管理サーバ10は、物件情報テーブルを保持するDB102、ユーザ情報テーブルを保持するDB104を有し(【0022】)、物件情報テーブルには、物件No、部屋番号、物件所在地、二次元バーコード情報が管理され、ユーザ情報テーブルには、ユーザID、見学予約情報が管理され(【0024】)、
見学予約の際に(【0025】)、
一般消費者の端末11は、Webサーバ9から受信した問い合わせ画面100を表示し(【0026】)、当該問い合わせ画面100にユーザIDを含むユーザ情報を入力し(【0028】)、
Webサーバ9は、当該ユーザ情報を受信し、管理サーバ10に転送し(【0029】)、
Webサーバ9は、見学申し込み用画面101を一般消費者の端末11に表示し、当該画面101への入力情報を見学予約情報として受信し、管理サーバ10に転送し(【0030】)、
見学予約情報は、物件番号と、ユーザIDと、見学希望日時とを含み(図9)、
管理サーバ10は、当該見学予約情報をユーザ情報テーブルに書き込み(【0030】)、
セルフ見学時の電気錠1の開錠制御において(【0031】)、
ユーザは、見学予約をした物件に到着すると、各部屋毎に異なる二次元バーコード102を携帯電話機4で読み取り、携帯電話機4は、当該二次元バーコード102を解析して所定画面を表示し、当該画面に入力されたユーザIDを管理サーバ10に送信し(【0034】)、
管理サーバ10は、このユーザIDを受信するとユーザが見学予約をした物件に到着したことを認識し、施開錠管理用サーバ6に対して電気錠1の開錠をリクエストし(【0034】)、
施開錠管理用サーバ6は、上記リクエストに基づいて制御装置2に対して制御信号を送信し、電気錠1を遠隔より開錠制御する(【0035】)、
不動産統括管理システム。」

2.引用文献2について

原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(特開2002-24879号公報)には、次の事項が記載されている。

<引用文献2の記載事項>
「ホテルに宿泊する際に、応対者による所定の手続きを行うことなく、施設への入場を可能とする入場管理システムであって(【0001】)、
予約を受け付けて所定の入場許可情報を発信する入場管理サーバMS1と、宿泊情報及び入場許可情報を登録する顧客管理サーバMS2とを備え(【0024】)、
ホテル1の入り口、フロント2、客室5の入り口には、顧客管理サーバ4に接続されたアクセスポイントAP1?APnが配設され(【0026】)、
ホテル1を利用したい利用者が予約を行う場合には、家庭に配設されたパーソナルコンピュータPCから入場管理サーバMS1にアクセスし、所定事項を入力すると共に、予約金を振り込むことにより、入場許可情報を含んだ、顧客管理サーバMS2にアクセスするためのアプリケーションソフトをダウンロードし(【0028】)、
ホテル1で宿泊する場合に、アプリケーションソフトを携帯電話機20に複写してからホテル1に出向き、アプリケーションプログラムを動作させ(【0029】【0041】)、
携帯電話機20は、アクセスポイントAP1?APnのいずれかと通信可能状態となったときに、顧客管理サーバMS2にアクセスして入場許可情報を送信することによりチェックイン処理を要求し(【0041】)、
顧客管理サーバMS2は、入場許可情報に基づいて予約登録テーブルに登録されている宿泊客であるか否かを判定し(【0046】)、宿泊客であるときには、到着時刻を登録すると共に、顧客管理テーブルを参照して予め設定された客室番号情報を読出し、この客室番号情報を携帯電話機20に送信するチェックイン処理を行い(【0047】)、
顧客管理サーバMS2は、携帯電話機20のアクセスポイントが宿泊客に割り当てた客室に一番近いアクセスポイントであるか否かを判定し、一番近いアクセスポイントであるときには、該当客室のドア開閉状態信号を所定時間(数分程度)前までの間に受信したか否かを判定し、ドア開閉状態信号を受信していないときには宿泊客が客室に入出するものと判断して、客室のドアロックを解除する(【0048】)、
入場管理システム。」

3.引用文献3について

原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3(特開2002-183563号公報)には、次の事項が記載されている。

<引用文献3の記載事項>
「利用者101は利用者端末102を使い、宿泊予約センタ105内の予約サーバ106にアクセスし、宿泊施設の予約申し込みを行い(【0016】【0017】)、
利用者が予約すると、宿泊施設サーバ109は、部屋に出入りするための電子的な鍵情報(キー情報)を利用者端末102にアップロードし(【0018】)、
利用者101は後日その利用者端末102の鍵を使って電子錠付きドア112に利用者端末102を翳すことで室料が決済され、客室111に出入り出来るようになる(【0018】)、
宿泊施設予約利用システム(【0016】)。」

4.引用文献4について

原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4(特開2005-100464号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

<引用文献4の記載事項>
「スマートカード100のファイル構造であって(【0021】)、
ファイル構造400は、ホテルシステムアプリケーション412を含み、当該アプリケーションは、ホテルの特定の機能に関するデータの独立領域であり(【0021】)、
ホテルアプリケーション412は、電子鍵のためのスペースを含み(【0026】)、特定のホテルの部屋へのアクセスを与えるために用いられる電子鍵の値を含む(【0124】)、
スマートカード100のファイル構造。」

5.引用文献5について

原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5(特開2009-70063号公報)には、次の事項が記載されている。

<引用文献5の記載事項>
「時間貸しが可能なファッションホテルのメール連動予約受付システムであって(【0011】)、
ホテルには、予約受付装置1が設置され(【0012】)、
予約受付装置1は、電子メール受信手段20と、要求内容認識手段21と、予約管理手段22と、要求内容可否判定手段23と、メール通知手段24と、記憶手段25とから構成され(【0016】)、
顧客がホテルを予約する場合は、携帯電話11からホテルの指定のメールアドレスに対して予約メールを送信し(【0019】)、
電子メール受信手段20は、予約メールを受信し、予約メールを要求内容認識手段21に通知し(【0020】)、
要求内容認識手段21は、受信したメールから要求内容を認識して、要求内容が新規予約の場合には予約番号を取得し、その予約番号に関連付けしてメール内容及び要求内容を予約状況テーブルに記憶し、予約状況テーブルが更新されたことを要求内容可否判定手段23に通知し(【0021】)、
要求内容可否判定手段23は、メール内容に示される予約条件に合致する予約可能な部屋を部屋状況テーブルを検索して探し、予約可能な部屋を探せた場合は、顧客へ返信する予約可メールを作成し(【0024】)、
メール通知手段24は、予約可メールを送信し(【0025】)、
予約可メールを受信した顧客は、予約確定メールを返信し(【0026】)、
電子メール受信手段20は、受信した予約確定メールを要求内容認識手段21に通知し、要求内容認識手段21は、受信したメールから要求内容を認識して、予約状況テーブルの当該の予約番号に関連付けしてメール内容と要求内容を記憶し(【0026】)、
要求内容認識手段21は、顧客へ返信する予約成立メールを作成し、メール通知手段24は、予約成立メールを送信し(【0027】)、
予約成立メールを受信した顧客は、ホテルに行きチェックインを実施しホテルを利用し、このとき、顧客のチェックインは、予約成立メールに含まれる予約番号を利用して、ホテルの人がホテル用電話交換機2またはフロントコンピュータ3を操作して実施する(【0028】)、
メール連動予約受付システム。」

6.引用文献6について

原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6(特開2009-237961号公報)には、次の事項が記載されている。

<引用文献6の記載事項>
「個室形式のカラオケボックス店の予約管理、入室管理、及び利用管理に適用した場合の客室サービス提供システム1であって(【0038】「【0039】)、
各客室Rの出入口には当該客室Rの入室を管理するゲートリーダ2Aが設置され(【0039】)、
カラオケボックス店舗内には、各客室Rの利用スケジュールや利用状況を記録・管理するためのデータベースとして機能するサーバSと、利用者M自身が操作可能な予約端末50とが設けられ(【0040】)、
予約端末50は、サーバSにアクセスし、データベースに対し客室サービスの予約手続を行い、予約手続が正常に完了した際に、その予約に対応する識別情報が記録されたチケットタグとしての無線タグTを発行し(【0040】)、
ゲートリーダ2Aは、客室Rへ入室しようとする利用者Mに対してその所有する上記無線タグTから識別情報を読み取り、対応する客室Rの予約内容についてデータベースに記録されている予約情報と照合することで、当該客室Rへの入室管理を行い、客室Rの出入口のドア21に対して施錠・解錠を制御可能である(【0041】)、
客室サービス提供システム。」

第5 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

・引用発明の見学予約した不動産賃貸物件は、本願発明1の「事前予約したプレイス」に相当する。
また、引用発明における、ユーザが携帯電話機で二次元バーコードを読み取ることで、ドアの電気錠を開錠することは、本願発明1の「ユーザによる自動アクセスを可能とする」ことに相当する。
したがって、引用発明の不動産統括管理システムを用いて、セルフ見学の申込みやセルフ見学を行う方法と、本願発明1の「ホテルの客室などの事前予約したプレイスへのユーザによる自動アクセスを可能とするための方法」は、「事前予約したプレイスへのユーザによる自動アクセスを可能とするための方法」の点で一致する。

・引用発明の「管理サーバ」は、一般消費者の端末から受信した見学予約情報を管理するから、本願発明1の「集中予約システム」に相当する。

・引用発明の二次元バーコードは部屋毎に異なり、また、物件情報テーブルには、部屋番号と物件所在地と二次元バーコード情報とが管理されていることから、二次元バーコードを解析して得られる情報は、物件の部屋番号や物件所在地を特定する情報といえる。
したがって、ユーザが見学予約した物件に到着したときに読み取った二次元バーコードの情報は、本願発明1の「前記事前予約したプレイスに関するロケーションデータ」、及び、「前記ロケーションデータは、前記事前予約したプレイスに関するラベルのコードから決定されること」に相当する。

・引用発明の「ユーザは、見学予約をした物件に到着すると、各部屋毎に異なる二次元バーコード102を携帯電話機4で読み取り、携帯電話機4は、当該二次元バーコード102を解析して所定画面を表示し、当該画面に入力されたユーザIDを管理サーバ10に送信し」は、ポータブル電子デバイスからの事前予約したプレイスに入るための要求を集中予約システムにおいて受信し、該要求はユーザデータを含むことといえる。
また、引用発明の管理サーバは、「このユーザ情報を受信するとユーザが見学予約をした物件に到着したことを認識」するから、ユーザIDだけでなく、二次元バーコードの情報も受信するといえる。
したがって、引用発明の上記構成と、本願発明1の「ポータブル電子デバイスからの前記事前予約したプレイスに入るための要求を集中予約システムにおいて受信することであって、該要求は、ユーザデータと、予約番号と、前記事前予約したプレイスに関するロケーションデータを含み、前記ロケーションデータは、前記事前予約したプレイスに関するラベルのコードから決定されることと」は、「ポータブル電子デバイスからの前記事前予約したプレイスに入るための要求を集中予約システムにおいて受信することであって、該要求は、ユーザデータと、前記事前予約したプレイスに関するロケーションデータを含み、前記ロケーションデータは、前記事前予約したプレイスに関するラベルのコードから決定されることと」の点で共通する。

・引用発明の「管理サーバ10は、このユーザIDを受信するとユーザが見学予約をした物件に到着したことを認識し」は、ユーザ識別とロケーションデータが事前予約したプレイスに関する予約と一致するかを確認するために、ユーザ識別とロケーションデータとを予約リストと照合することといえる。
したがって、引用発明の上記構成と、本願発明1の「前記ユーザ識別と、前記予約番号と、前記ロケーションデータが前記事前予約したプレイスに関する予約と一致するかを確認するために、複数の財産管理システムの対応する財産管理システムによって、前記ユーザ識別と、前記予約番号と、前記ロケーションデータとを予約リストと照合すること」は、「ユーザ識別と、前記ロケーションデータが前記事前予約したプレイスに関する予約と一致するかを確認するために、ユーザ識別と、前記ロケーションデータとを予約リストと照合すること」の点で共通する。

・引用発明の管理サーバ10が「施開錠管理用サーバ6に対して電気錠1の開錠をリクエスト」し、施開錠管理用サーバ6が「上記リクエストに基づいて制御装置2に対して制御信号を送信し、電気錠1を遠隔より開錠制御する」ことと、本願発明1の「前記財産管理システムが、前記ユーザ識別と、前記予約番号と、前記ロケーションデータとが前記事前予約したプレイスに関する前記予約と一致する場合に、前記事前予約したプレイスを該ユーザによるアクセスが可能となるように開放するための信号を自動的に送信すること」は、「ユーザ識別と、前記ロケーションデータとが前記事前予約したプレイスに関する前記予約と一致する場合に、前記事前予約したプレイスを該ユーザによるアクセスが可能となるように開放するための信号を自動的に送信すること」の点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「事前予約したプレイスへのユーザによる自動アクセスを可能とするための方法であって、該方法は、
ポータブル電子デバイスからの前記事前予約したプレイスに入るための要求を集中予約システムにおいて受信することであって、該要求は、ユーザデータと、前記事前予約したプレイスに関するロケーションデータを含み、前記ロケーションデータは、前記事前予約したプレイスに関するラベルのコードから決定されることと、
ユーザ識別と、前記ロケーションデータが前記事前予約したプレイスに関する予約と一致するかを確認するために、ユーザ識別と、前記ロケーションデータとを予約リストと照合することと、
ユーザ識別と、前記ロケーションデータとが前記事前予約したプレイスに関する前記予約と一致する場合に、前記事前予約したプレイスを該ユーザによるアクセスが可能となるように開放するための信号を自動的に送信することと、を含む方法。」

<相違点1>
ポータブル電子デバイスからの要求が、本願発明1では「予約番号」を含むのに対し、引用発明では「予約番号」を含まない点。

<相違点2>
本願発明1は、「前記集中予約システムが、前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定すること」を含むのに対し、引用発明は、ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定するものではない点。

<相違点3>
予約リストと照合される情報が、本願発明1では「予約番号」を含むのに対し、引用発明では「予約番号」を含まない点。

<相違点4>
予約リストの照合を、本願発明1では、要求を受信する集中予約システムとは別の「複数の財産管理システムの対応する財産管理システム」が行うのに対し、引用発明では、管理サーバすなわち集中予約システムが行う点。

<相違点5>
開放するための信号を送信するシステムが、本願発明1では、「前記財産管理システム」、すなわち、「複数の財産管理システムの対応する財産管理システム」であるのに対し、引用発明では施開錠管理用サーバであり、「複数の財産管理システムの対応する財産管理システム」ではない点。

<相違点6>
開放するための信号の送信を、本願発明1では、「前記ユーザ識別と、前記予約番号と、前記ロケーションデータとが前記事前予約したプレイスに関する前記予約と一致する場合」に行うのに対し、引用発明では、「ユーザが見学予約をした物件に到着したことを認識」した場合、すなわち、ユーザ識別とロケーションデータとが事前予約したプレイスに関する予約と一致する場合に行い、「予約番号」の一致については判断していない点。

(2)相違点についての判断

上記相違点2について検討すると、本願発明1の「前記集中予約システムが、前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定すること」という構成は、上記引用文献1-6には記載されていない。
また、引用発明の管理サーバが携帯電話機から受信するユーザIDは、それ自体がユーザ識別であり、また、見学予約情報にもユーザIDが含まれることから、受信したユーザIDを用いて見学予約情報と照合すればよく、本願発明1のように、ポータブル電子デバイスから受信したユーザデータに基づいてユーザ識別を特定する必要はない。したがって、引用発明には相違点2に係る構成とする動機もない。
よって、本願発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、当業者であっても引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-4について

本願発明2-4も、本願発明1の「前記集中予約システムが、前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定すること」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明5について

本願発明5は、本願発明1の各手順を実行するコンピュータプログラムの発明であり、本願発明1の「前記集中予約システムが、前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定すること」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.本願発明6について

(1)対比

本願発明6と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「事前予約したプレイスへのユーザによる自動アクセスを可能にするためのシステムであって、該システムは、
ポータブル電子デバイスからの前記事前予約したプレイスに入るための要求をシステムにおいて受信するための受信機であって、該要求は、ユーザデータと、前記事前予約したプレイスに関するロケーションデータを含み、前記ロケーションデータは、前記事前予約したプレイスに関するラベルのコードから決定される、受信機と
前記ユーザ識別と、前記ロケーションデータが前記事前予約したプレイスに関する予約と一致するかを確認するために、前記ユーザ識別と、前記ロケーションデータとを予約リストと照合するための照合モジュールと、を具備し、
前記ユーザ識別と、前記ロケーションデータとが前記事前予約したプレイスに関する前記予約と一致する場合に、前記事前予約したプレイスを該ユーザによるアクセスが可能となるように開放するための信号を自動的に送信する、システム。」

<相違点1>
ポータブル電子デバイスからの要求が、本願発明6では「予約番号」を含むのに対し、引用発明では「予約番号」を含まない点。

<相違点2>
本願発明6は、「前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定するための顧客プロファイル・データベース」を有するのに対し、引用発明は、当該顧客プロファイル・データベースを有しない点。

<相違点3>
照合モジュールが、本願発明6では「予約番号」を照合するのに対し、引用発明では「予約番号」を照合しない点。

<相違点4>
開放するための信号の送信を、本願発明6では、「前記ユーザ識別と、前記予約番号と、前記ロケーションデータとが前記事前予約したプレイスに関する前記予約と一致する場合」に行うのに対し、引用発明では、「ユーザが見学予約をした物件に到着したことを認識」した場合、すなわち、ユーザ識別とロケーションデータとが事前予約したプレイスに関する予約と一致する場合に行い、「予約番号」と予約の一致については判断していない点。

(2)相違点についての判断

上記相違点2について検討すると、本願発明6の「前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定するための顧客プロファイル・データベース」は、上記引用文献1-6に記載されていない。
また、引用発明の管理サーバが携帯電話機から受信するユーザIDは、それ自体がユーザ識別であり、また、見学予約情報にもユーザIDが含まれることから、受信したユーザIDを用いて見学予約情報と照合すればよく、本願発明6のように、ポータブル電子デバイスから受信したユーザデータに基づいてユーザ識別を特定するための顧客プロファイル・データベースを設ける必要がない。したがって、引用発明には相違点2に係る構成とする動機もない。
よって、本願発明6は、他の相違点を検討するまでもなく、当業者であっても引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

5.本願発明7-9について

本願発明7-9も、本願発明6の「前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定するための顧客プロファイル・データベース」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明6と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

6.本願発明10について

(1)対比

引用発明の施開錠管理用サーバ6、WEBサーバ9、管理サーバ10がコンピュータであり、それぞれの機能を実現するためのアプリケーションを記憶したコンピュータ可読記憶媒体を具備することは自明である。
また、携帯電話機4もコンピュータであり、その機能を実現するための命令を記憶したコンピュータ可読記憶媒体を具備することは自明である。
したがって、本願発明10と、引用発明のコンピュータ可読記憶媒体との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「コンピュータ可読記憶媒体であって、
前記コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたアプリケーションを具備するとともに、ロケーションデータを決定するための事前予約したプレイスに関するコードを含むラベルを読み取りおよび復号を実行し、前記事前予約したプレイスに入るために、システムへ、ユーザデータと、前記事前予約したプレイスに関するロケーションデータを含む要求を通信するように構成された命令を具備し、
前記システムにおいて前記要求を受信することは、前記システムに、
ユーザ識別と、前記ロケーションデータが前記事前予約したプレイスに関する予約と一致するかを確認するために、前記システムによって、ユーザ識別と、前記ロケーションデータとを予約リストと比較させ、
ユーザ識別と、前記ロケーションデータとが前記事前予約したプレイスに関する前記予約と一致する場合に、前記事前予約したプレイスをユーザによるアクセスが可能となるように開放するための信号を自動的に送信させる、コンピュータ可読記憶媒体。」

<相違点1>
要求が、本願発明10では「予約番号」を含むのに対し、引用発明では「予約番号」を含まない点。

<相違点2>
本願発明10は、システムに「前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定させ」るのに対し、引用発明は当該構成を有しない点。

<相違点3>
予約リストと比較される情報が、本願発明10では「予約番号」を含むのに対し、引用発明では「予約番号」を含まない点。
予約リストと比較される「ユーザ識別」が、本願発明10では「前記ユーザ識別」であり、すなわち、ユーザデータに基づいて特定したユーザ識別であるのに対し、引用発明では携帯電話機から受信したユーザIDであり、ユーザデータに基づいて特定したユーザ識別ではない点。

(2)相違点についての判断

上記相違点2について検討すると、本願発明10の「前記システムに、前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定させ」という構成は、上記引用文献1-6には記載されていない。
また、引用発明の管理サーバが携帯電話機から受信するユーザIDは、それ自体がユーザ識別であり、また、見学予約情報にはユーザIDが含まれることから、受信したユーザIDを用いて見学予約情報と照合すればよく、本願発明10のように、受信したユーザデータに基づいてユーザ識別を特定する必要がない。したがって、引用発明には、相違点2に係る構成を設ける動機もない。
よって、本願発明10は、他の相違点を検討するまでもなく、当業者であっても引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

7.本願発明11について

(1)対比

本願発明11と、引用発明の不動産統括管理システムによるセルフ見学の申込みやセルフ見学の方法とを対比すると、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「事前予約したプレイスへのユーザによる自動アクセスを可能とするための方法であって、該方法は、
集中予約システムにおいて、ユーザデータと、ロケーションデータを含む要求をポータブル電子デバイスから受信することであって、前記ロケーションデータは、前記事前予約した部屋に関する情報を示し、前記ロケーションデータは、前記事前予約した部屋に関する情報を特定するために前記事前予約した部屋に関するコードを含むラベルから決定されることと、
顧客識別と、部屋に関する情報とが、前記事前予約した部屋に関する予約と一致するかを確認し、
顧客識別と、部屋に関する情報とが、前記事前予約した部屋に関する前記予約に一致することに応答して、前記ユーザによるアクセスが可能となるように前記事前予約した部屋を開放するための信号を送信することと、を含む方法。」

<相違点1>
ロケーションデータによって示される「事前予約した部屋に関する情報」が、本願発明11では「事前予約したホテルの部屋に関するホテル名とホテルの部屋番号」であるのに対し、引用発明では、見学予約した「不動産賃貸物件」の「各部屋毎に異なる」情報である点。

<相違点2>
コードが、本願発明11では「ホテルの部屋に関するコード」であるのに対し、引用発明では「不動産賃貸物件」の「各部屋毎に異なる」コードである点。

<相違点3>
本願発明11は、「顧客識別を決定するために前記ユーザデータに基づいて顧客プロファイル・データベースに問い合わせること」を含むのに対し、引用発明は当該問い合せを含まない点。

<相違点4>
本願発明11は、「事前予約した部屋にしたがって、集中予約システムから複数の財産管理システムの対応する財産管理システムへ客室開錠要求を通信することであって、前記客室開錠要求は前記顧客識別と、予約番号と、前記ホテル名と、前記ホテルの部屋番号とを含み」を含むのに対し、引用発明は、当該通信を含まない点。

<相違点5>
予約と一致するかの確認を、本願発明11では集中予約システムとは別の「前記財産管理システムにおいて」行うのに対し、引用発明では「管理サーバ」すなわち集中予約システムにおいて行う点。

<相違点6>
予約と一致するかを確認するための「顧客識別」が、本願発明11では「前記顧客識別」であり、すなわち、ユーザデータに基づく顧客プロファイル・データベースへの問い合わせにより決定された「顧客識別」であるのに対し、引用発明では、携帯電話機4から受信したユーザIDである点。
予約と一致するかを確認するための「部屋に関する情報」が、本願発明11では「前記ホテル名と、前記ホテルの部屋番号」であるのに対し、引用発明では「不動産賃貸物件」の「各部屋毎に異なる」情報である点。
予約と一致するかを確認するための情報が、本願発明11では、「予約番号」を含むのに対し、引用発明では「予約番号」を含まない点。

(2)相違点についての判断

上記相違点3について検討すると、本願発明11の「顧客識別を決定するために前記ユーザデータに基づいて顧客プロファイル・データベースに問い合わせること」という構成は、上記引用文献1-6には記載されていない。
また、引用発明の管理サーバが携帯電話機から受信するユーザIDは、それ自体がユーザ識別であり、また、見学予約情報にもユーザIDが含まれることから、受信したユーザIDを用いて見学予約情報と照合すればよく、本願発明11のように、顧客識別を決定するためにポータブル電子デバイスから受信したユーザデータに基づいて顧客プロファイル・データベースに問い合わせる必要がない。したがって、引用発明には、相違点3に係る構成を設ける動機もない。
よって、本願発明11は、他の相違点を検討するまでもなく、当業者であっても引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

8.本願発明12-14について

本願発明12-14も、本願発明11の「顧客識別を決定するために前記ユーザデータに基づいて顧客プロファイル・データベースに問い合わせること」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明11と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について

審判請求時の補正により、本願発明1-4は「前記集中予約システムが、前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定すること」という事項を有し、本願発明5は、本願発明1の「前記集中予約システムが、前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定すること」に対応する事項を有し、本願発明6-9は「前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定するための顧客プロファイル・データベース」という事項を有し、本願発明10は「前記システムに、前記ユーザデータに基づいてユーザ識別を特定させ」という事項を有し、本願発明11-14は「顧客識別を決定するために前記ユーザデータに基づいて顧客プロファイル・データベースに問い合わせること」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-6に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-19 
出願番号 特願2017-101515(P2017-101515)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡邉 加寿磨  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 相崎 裕恒
金子 幸一
発明の名称 プレイスにアクセスするための方法およびシステム  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  

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