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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1351265
審判番号 不服2017-7831  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-31 
確定日 2019-05-10 
事件の表示 特願2015-533394「物理ダウンリンク制御チャネルのリソースを判定する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月 3日国際公開,WO2014/047846,平成27年11月 9日国内公表,特表2015-532546〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,2012年9月27日を国際出願日とする出願であって,平成28年4月26日付けで拒絶理由が通知され,同年8月5日に意見書及び手続補正書が提出され,平成29年1月26日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年5月31日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされ,その後,当審において平成30年7月2日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年10月3日に意見書及び手続補正書(以下,この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。

本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1は,以下のとおりである。
「UEまたはeNB内で,EPDCCHを取り出すために前記UEによって復号すべきリソースを判定する方法であって,
i.1つの物理リソース・ブロック対内のリソースの単位の開始位置を判定するステップと,
ii.前記リソースの前記単位と次の単位との間のギャップを判定するステップと,
iii.復号すべき前記リソースとして,前記開始位置および前記ギャップに従って,複数の物理リソース・ブロック対内で前記リソースの単位のセットを判定するステップと,
を含むことを特徴とする方法。」


2 拒絶の理由
当審拒絶理由の概要は,「理由1(サポート要件)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。理由2(明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。理由3(実施可能要件・委任省令)この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。理由4(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,理由4について請求項1に対して以下の3.が引用されている。

<引用文献等一覧>
3.Huawei,HiSilicon,Search space design for ePDCCH,3GPP TSG RAN WG1 Meeting#70 R1-123120,URL:http://www.3gpp.org/ftp/TSG_RAN/WG1_RL1/TSGR1_70/Docs/R1-123120.zip,2012年8月5日(利用可能日)

また,請求項1に関する理由1?3についての具体的内容(抜粋)は以下のとおりである。
「(2)請求項1,7,11,12には「リソースの単位」の定義がされておらず不明確であり,「1つの物理リソース・ブロック対内のリソースの単位の開始位置を判定するステップ」の内容が不明確になっている。このため,請求項1,7,11,12に係る発明が不明確である。また,発明の詳細な説明は,当業者が請求項1,7,11,12に係る発明に係る発明を実施し得る程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。(明確性)
また,単なる「リソースの単位」との記載には,例えば,RE,サブキャリア,OFDMシンボル等々も含まれるから,出願時の技術常識に照らしても,請求項1,7,11,12に係る発明の範囲まで,発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。したがって,請求項1,7,11,12に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものでない。(サポート要件)
(3)発明の詳細な説明を参酌しても「前記単位のうちの2つの間のギャップ」の定義が不明確である。通常,ギャップは物理空間におけるものと解されるが,図2から明らかなように,本願でいうギャップは物理空間におけるものではなく,論理空間の定義が明らかにされていない以上,論理空間におけるギャップにいかなる意味があるのか不明確である。
(中略)
更に,発明の詳細な説明をみても「ii.前記単位のうちの2つの間のギャップを判定するステップ」の具体的動作が明らかにされておらず,不明確である。特に,局所化された送信のギャップについては,【0059】に「図6に示されているように,ギャップは,1(2つのECCEが連続する),2,および3とすることができる。」と記載されるのみであり,ギャップを判定するステップが開示されていない。また,どうしてそれ以外のギャップが採用されないのか不明である。
このため,請求項1及び請求項1を引用する各請求項に係る発明が不明確であり,また,発明の詳細な説明は,当業者が請求項1及び請求項1を引用する各請求項に係る発明を実施し得る程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。(明確性,実施可能要件)」


3 当審の判断
(1)理由1?3について
ア 請求項1には,「リソース」に関して,「EPDCCHを取り出すために前記UEによって復号すべきリソース」,「1つの物理リソース・ブロック対内のリソースの単位」と記載されており,それ以上の具体的な定義はされていない。そして,請求項1には論理空間に関する記載は一切存在しない。このため,「リソースの単位」は,その用語が有する通常の意味からみて,EPDCCHを伝送するための通信資源の所定の単位と解されるものの,それ以上の特定の意味は見出せない。したがって,「リソースの単位」には,例えば,LTEにおける物理リソース・ブロック(PRB)対内の中のRE(Resource Element),サブキャリア,OFDMシンボル等々が含まれ得る。そして「前記リソースの前記単位と次の単位との間のギャップ」には,時間領域・周波数領域における資源間の距離が含まれ得る。
これに対し,発明の詳細な説明に発明として記載されたものは,
「【0009】
本解決策の基本的なアイデアは,次のルールを定義することによって候補を決定することである。
1)EPDCCHの単位への開始インデックス,すなわち,局所化された送信および分散された送信のECCEのインデックス,および分散された送信について,ECCE内のEREGのインデックスをも定義する・・・」
「【0050】
局所化された送信について,単位は,PRB対内のECCEである。・・・」
「【0051】
分散された送信について,単位は,PRB対内のECCE内のEREGである。・・・」
等の記載からも明らかなように,「リソースの単位」は,局所化された送信ではPRB対内のECCE,分散された送信ではPRB対内のECCE内のEREGであって,これ以外のものは記載も示唆もされていない。
そして,ECCEを構成するEREGはPRB対内の分散する複数REから構成されることは当業者における技術常識であるから,局所化された送信におけるECCE間のギャップや分散された送信におけるEREG間のギャップは,論理空間における距離ということになる。このことは,発明の詳細な説明に記載されたギャップが,局所化された送信における1つの候補の2つのECCE間のギャップG_(ECCE)(【0059】参照)と,分散された送信におけるPRB対内の第mのECCEの第nのEREGと別のPRB対内の第mのECCEの対応する第nのEREGとの間の【数2】【数4】の関数として定義されるギャップG_(EREG)(【0064】,【0065】参照)のみであり,これ以外には記載も示唆もされていないことに対応する。
また,請求人は,平成30年10月3日に意見書にて,本発明の「ギャップ」は「論理空間中でのリソースの不連続」を示すものであって3次元的距離ではない旨主張している。
してみると,請求項1の用語について,その用語が有する通常の意味と異なる意味が置かれているというべきであり,いずれと解すべきか不明となり,請求項1に係る発明が不明確になっている。また,これに伴い,「iii.復号すべき前記リソースとして,前記開始位置および前記ギャップに従って,複数の物理リソース・ブロック対内で前記リソースの単位のセットを判定するステップ」の内容を技術的に特定することができないから,請求項1に係る発明は不明確である。
また,出願時の技術常識に照らしても,請求項1に係る発明の範囲まで,発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。

イ 局所化された送信におけるギャップについて,発明の詳細な説明には【0059】に「図6に示されているように,ギャップは,1(2つのECCEが連続する),2,および3とすることができる。」と記載されるのみであり,当該「1,2,および3」のギャップがどのようにして「判定」されるのか明らかにされていない。このため,「ii.前記リソースの前記単位と次の単位との間のギャップを判定するステップ」の判定動作が不明であると言わざるを得ず,発明の詳細な説明は,当業者が請求項1に係る発明を実施し得る程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
以上のとおりであり,請求項1に係る発明は,不明確であり,また,発明の詳細な説明に記載されたものでない。

ウ 請求人は平成30年10月3日に意見書にて,「(2) 請求項1,7,11及び12中の「1つの物理リソース・ブロック対内のリソースの単位の開始位置を判定するステップ」の内容が不明瞭であるとの御指摘を受けました。補正により,「単位」の定義が,開始位置からギャップまでの「リソース」として明確化されましたので,斯かる定義により御指摘の記載の内容は明確化され,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものと思料します。」と主張しているが,上記ア,イのとおりであるから,当該主張は採用できない。
また,「(3) 請求項中の「ギャップ」の定義が不明瞭であるとの御指摘を頂きました。御指摘では3次元的距離を想定されているものと思います。しかしながら,本発明での「ギャップ」は明細書中では,「論理空間中でのリソースの不連続」を示すものとして開示されており,3次元的距離としては開示されていません。明細書の開示に鑑みて,請求項中の「ギャップ」の定義は明瞭であり,特許法第36条第6項第2号及び特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものと思料します。」と主張しているが,当該主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものであるから採用できない。

エ 上記ア?ウのとおりであり,この出願は,特許法第36条第4項第1号,同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)理由4について
ア 本願発明
上記(1)のとおり,請求項1に係る発明が不明確であるため,発明の詳細な説明を参酌すると,発明の詳細な説明には以下の記載がある。
「【0009】
本解決策の基本的なアイデアは,次のルールを定義することによって候補を決定することである。
1)EPDCCHの単位への開始インデックス,すなわち,局所化された送信および分散された送信のECCEのインデックス,および分散された送信について,ECCE内のEREGのインデックスをも定義する・・・」
「【0050】
局所化された送信について,単位は,PRB対内のECCEである。・・・」

上記記載及びこの分野における当業者の技術常識を参酌すると,請求項1の「リソースの単位」には,局所化された送信におけるEnhanced Control Channel Element(ECCE)が含まれるといえる。

したがって,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりのものと認める。
「UEまたはeNB内で,EPDCCHを取り出すために前記UEによって復号すべきリソースを判定する方法であって,
i.1つの物理リソース・ブロック対内の局所化された送信におけるEnhanced Control Channel Element(ECCE)の開始位置を判定するステップと,
ii.前記ECCEと次のECCEとの間のギャップを判定するステップと,
iii.復号すべき前記リソースとして,前記開始位置および前記ギャップに従って,複数の物理リソース・ブロック対内で前記ECCEのセットを判定するステップと,
を含むことを特徴とする方法。」

イ 引用発明
当審拒絶理由に引用されたHuawei,HiSilicon,Search space design for ePDCCH([当審仮訳]:ePDCCHのための探索空間設計),3GPP TSG RAN WG1 Meeting#70 R1-123120,<URL:http://www.3gpp.org/ftp/TSG_RAN/WG1_RL1/TSGR1_70/Docs/R1-123120.zip>(利用可能日2012年8月5日)(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。



」 (1葉7行?4葉7行)

([当審仮訳]:
1.はじめに
RAN1#69会議では,ePDCCH設計のためのいくつかの原理が合意されたが,ePDCCH探索空間設計に対する合意は達成されなかった。本稿において,我々はePDCCH探索空間設計に我々の見解を提供する。

2.ePDCCH探索空間設計
Rel-8/9/10の場合,PDCCH探索空間は以下の特性を有する。
・PDCCH割り当てのための最小リソース単位は,Control Channel Element(CCE)である。
・UEは,探索空間において,そのPDCCHをブラインド復号する。
・共通探索空間(CSS)とUE固有探索空間(USS)との両方が定義される。
・PDCCH探索空間内では,4つのアグリゲーションレベルが定義される。
・セル内の全てのUEに対するPDCCH送信は,同一の物理リソース上に多重化される。

ePDCCH CSSはRel-12において議論されることが合意されているので,本稿ではePDCCH USS設計のみを考察する。ePDCCH USS設計を単純化するために,仕様変更を最小限に抑え,PDCCH探索空間の特性を可能な限り再利用することが望ましい。ePDCCH USS設計では,各アグリゲーションレベルの探索空間における使用されたアグリゲーションレベル及び候補の数は,Rel-10[1]と同じであると仮定する。
上記の考察に基づいて,局所化された及び分散されたePDCCH伝送のためのUSS設計は,以下のセクションにおいて別々に議論される。

2.1 局所化された送信のためのUSS設計
シグナリング構成が異なるため,PRB対に対応するeCCEの数は可変であるが,ePDCCH探索空間は,PRB対のeCCEの数とは独立している必要がある。簡単のため,各PRB対が4個のeCCEに対応し,システム内にN個のPRB対があると仮定すると,対応するeCCEの総数は4Nである。eCCEとPRB対との関係及びeCCEインデックスは,図1に示される。
(図1は省略。)
UEのブラインド復号の複雑性の制約のために,UEがシステム内の全てのPRB対をブラインド検出する必要はなく,ePDCCH送信のための限られた数のPRB対を各UEに対して構成することができる。この場合,ePDCCHは,これらの構成されたPRB対に対応するeCCEのセット内に配置される。図2に一例が示されており,ここでは,PRB対0,1,4,5,8,9がUEのePDCCH送信のために構成され,対応するeCCEのセットが0?7,16?23,32?39となっている。
(図2は省略。)
ePDCCHブロッキング問題を防止するために,異なるUE間のPRB対に対するePDCCHのマッピングは,整列されるべきである。これを実現するためには,グローバルなeCCEインデクシングを使用することが必要であり,eCCE上のePDCCH候補の配置は同じ規則に従うことが必要である。ePDCCHに対してUE特有のPRB対構成の場合,PRB対上のePDCCHのマッピングが異なるUE間で整列されない場合,ある特定のアグリゲーションレベルについて,1つのUEの1つのePDCCH候補が他のUEの1以上のePDCCH候補をブロックし得るということが起こり得る。図3において,アグリゲーションレベル8を有するUE1のePDCCHはPRB対4及び5上で送信され,UE2の場合,アグリゲーションレベル8を有するUE2の候補はPRB対3/4及び5/6それぞれに対応する。そうすると,UE1のePDCCHは,UE2のこれら集約レベル8の2つのePDCCH候補をブロックする。
(図3は省略。)
ePDCCH候補配列の規則は,アグリゲーションレベルLの各ePDCCH候補の開始eCCEインデックスnが要件 n mod L=0 を満たし,対応するeCCEのセット内の開始eCCE及び後続のL-1個のeCCEが1つのePDCCH候補に対して配置されることである。
この規則に基づいて,各アグリゲーションレベルについて,対応するeCCEのセット内に複数の潜在的なePDCCH候補を生成する。ブラインド復号の複雑さを更に低減するために,異なるアグリゲーションレベルに対するePDCCH候補の限られた数を有する探索空間が,対応するeCCEのセット内に定義される。すなわち,生成された潜在的ePDCCH候補の一部は,探索空間を形成するために選択される。
各探索空間におけるePDCCH候補について,ePDCCHに対する周波数領域スケジューリング利得を達成するために,対応するPRB対の分布は,図4に示される構成されたPRBに及ぶ。
ePDCCH候補とeCCEグローバルインデックスとの関係については,以下のような仮定がある。
○ 構成されたePDCCH PRB対に対応するeCCEの数はQであり,eCCEのインデックスは eCCE(q) ここで,q=0,1,・・・,Q-1 で表される。
○ アグリゲーションレベルLの探索空間におけるePDCCH候補の数は,M_(L)である。
アグリゲーションレベルLのePDCCH候補m m=0,1,K,M_(L)-1 について配置されたeCCEのインデックスは eCCE(q_(i)) q_(i)=L×((k+mΔ_(L)))mod K_(L))+i である。ここで,
○ i=0,1,Λ,L-1
○ K_(L)=[Q/L](当審注:[]は床関数)は,アグリゲーションレベルLの潜在的なePDCCH候補の数である。
○ Δ_(L)=[K_(L)/M_(L)](当審注:[]は天井関数)は,アグリゲーションレベルLの2つのePDCCH候補間の距離である。
○ k k=0,1,Λ,K_(L)-1は,アグリゲーションレベルLの潜在的なePDCCH候補kの最初のePDCCH候補であることを表す。最初のePDCCH候補の位置,すなわちkは,上位層シグナリングによって構成することができ,又は,異なるユーザに割り当てられたときにeCCEを効率的に多重化することができるようにするためのC-RNTIによって決定することができる。

ePDCCHリソースマッピングに関して,ePDCCHの各eCCEは,対応するPRB対に n=[eCCE(q)/X](当審注:[]は床関数)によりマッピングされ,ここで,XはPRB対が対応するeCCEの数であり,nはeCCEであるeCCE(q)がマッピングされるPRB対のインデックスである。
(図4は省略。)
したがって,局所化された送信のために,USS設計に対して以下の提案が存在する。
● グローバルeCCEインデックスがUSSを定義するために使用される。
● アグリゲーションレベルLを有するePDCCH候補の開始eCCEインデックスnは,要件 n mod L=0 を満たし,対応するeCCEのセット内の開始eCCE及び後続のL-1個のeCCEが,1つのePDCCH候補に対して配置される。
● 上述のePDCCH候補とeCCEインデックスとの関係を採用する。 )

引用例の上記記載及びこの分野における当業者の技術常識を考慮すると,次のことがいえる。
(i) 引用例はePDCCHのための探索空間設計に関するものであり,「2.ePDCCH探索空間設計」の記載及び当業者の技術常識によれば,ePDCCHのための探索空間設計は,UEがブラインド復号するリソースを特定するための方法,eNBがePDCCHをマッピングするリソースを特定するための方法といえる。
ここで,「2.ePDCCH探索空間設計」及び「2.1 局所化された送信のためのUSS設計」の記載によれば,局所化された送信におけるePDCCH割り当てのための最小リソース単位は,eCCEであることが当業者に明らかである。

(ii) 「2.1 局所化された送信のためのUSS設計」の記載によれば,当該方法は,アグリゲーションレベルLの各ePDCCH候補のPRB対内の開始eCCEインデックスnが要件 n mod L=0 を満たすようにすることによりePDCCHブロッキング問題を防止するものである。そして,ブラインド復号の複雑さを更に低減するために,UEのブラインド復号のePDCCH候補に係るeCCEのセットを eCCE(q_(i)) q_(i)=L×((k+mΔ_(L)))mod K_(L))+i により規定することにより,異なるアグリゲーションレベルに対するePDCCH候補の限られた数を有する探索空間を対応するeCCEのセット内に定義するものである。そして,上記数式により規定されるeCCE(q_(i))により構成される各アグリゲーションレベルにおけるePDCCH候補が図4に示されているところ,その「mod(Start eCCE indeX,1)=0」,・・・,「mod(Start eCCE indeX,8)=0」の記載から明らかように,図4の例は要件 n mod L=0 を満たすものである。
したがって,上記方法が,アグリゲーションレベルLの各ePDCCH候補のPRB対内の開始eCCEインデックスnが要件 n mod L=0 を満たすよう,局所化された送信におけるPRB対内のeCCEの開始位置を規定していることは明らかである。

(iii) 上記q_(i)を規定する数式中の上記K_(L)は,アグリゲーションレベルLの潜在的なePDCCH候補の数であり,図2,4の例では,UEに対して6つのPRB対(PRB対0,1,4,5,8,9)が構成され,各PRB対が4個のeCCEに対応することから,Qは24であり,K_(1) =24,K_(2) =12,K_(4) =6,K_(8) =3であることが見てとれる。
また,上記M_(L)はアグリゲーションレベルLの探索空間におけるePDCCH候補の数であり,図4の例では,色付けされている部分であって,M_(1) =6,M_(2) =6,M_(4) =2,M_(8) =2であることが見てとれる。そして,上記mは,アグリゲーションレベルLにおけるm番目のePDCCH候補を表すものといえる。
また,上位層シグナリングによって構成される,又は,C-RNTIによって決定される上記kは,最初のePDCCH候補を規定するものといえ,図4の例では,いずれのアグリゲーションレベルにおいても最初のePDCCH候補の開始eCCEはeCCE0であるから,k=0であることが明らかである。
また,K_(L)/M_(L)の天井関数であるΔ_(L)は,アグリゲーションレベルLの2つのePDCCH候補間の距離であり,アグリゲーションレベルLの潜在的なePDCCH候補の数K_(L)とアグリゲーションレベルLの探索空間におけるePDCCH候補の数M_(L)とにより計算により決定されるといえる。
さらに,上記iは,i=0,1,Λ,L-1と定義されていることから,アグリゲーションレベルLの1つのePDCCH候補に係るeCCEセットの連続する各eCCEに対応することが明らかである。
したがって,上記方法は,1つのePDCCH候補に係るeCCEセットの連続する各eCCEをi(i=0,1,Λ,L-1)を用いて特定し,アグリゲーションレベルLの2つのePDCCH候補間の距離Δ_(L)を計算により決定しているといえる。

(iv) 上記(ii),(iii)のとおり,上記方法は,ePDCCH候補に係るeCCEのセットを eCCE(q_(i)) q_(i)=L×((k+mΔ_(L)))mod K_(L))+i (ここで,kはC-RNTIによって決定され,mはアグリゲーションレベルLにおけるm番目のePDCCH候補を表し,K_(L)はアグリゲーションレベルLの潜在的なePDCCH候補の数である)により規定しているといえる。

したがって,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「UEがブラインド復号するリソースを特定するための方法又はeNBがePDCCHをマッピングするリソースを特定するための方法であって,
アグリゲーションレベルLの各ePDCCH候補のPRB対内の開始eCCEインデックスnが要件 n mod L=0 を満たすよう,局所化された送信におけるPRB対内のeCCEの開始位置を規定し,
1つのePDCCH候補に係るeCCEセットの連続する各eCCEをi(i=0,1,Λ,L-1)を用いて特定し,アグリゲーションレベルLの2つのePDCCH候補間の距離Δ_(L)を計算により決定し,
ePDCCH候補に係るeCCEのセットを eCCE(q_(i)) q_(i)=L×((k+mΔ_(L)))mod K_(L))+i により規定する,ここで,kはC-RNTIにより決定され,mはアグリゲーションレベルLにおけるm番目のePDCCH候補を表し,K_(L)はアグリゲーションレベルLの潜在的なePDCCH候補の数である,
ことを含む方法。」

ウ 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると,
(i) 本願発明の「UE」,「eNB」,「EPDCCH」,「物理リソース・ブロック対」,「ECCE」と,引用発明の「UE」,「eNB」,「ePDCCH」,「PRB対」,「eCCE」とは,それぞれ同義である。
そして,本願明細書の【0006】?【0008】の記載からも明らかなように,本願発明はEPDCCHのブラインド復号を前提としており,本願発明の「eNB内で」「EPDCCHを取り出すために前記UEによって復号すべきリソースを判定する」ことは,eNBにおいてUEに対するEPDCCHをマッピングするリソース(ECCE)を特定することであることは当業者に明らかである。
したがって,引用発明の「UEがブラインド復号するリソースを特定するための方法又はeNBがePDCCHをマッピングするリソースを特定するための方法」は,本願発明と同様に「UEまたはeNB内で,EPDCCHを取り出すために前記UEによって復号すべきリソースを判定する方法」といえる。

(ii) 本願発明の「判定する」は,本願明細書の開示内容に照らして,また,国際出願時の明細書の記載が「determinig」であることからも明らかなように,「決定する」ことを含むものである。
そして,引用発明の「アグリゲーションレベルLの各ePDCCH候補のPRB対内の開始eCCEインデックスnが要件 n mod L=0 を満たすよう,局所化された送信におけるPRB対内のeCCEの開始位置を規定し,」は,1つのPRB対内の局所化された送信におけるeCCEの開始位置を決定しているといえるから,本願発明の「i.1つの物理リソース・ブロック対内の局所化された送信におけるEnhanced Control Channel Element(ECCE)の開始位置を判定するステップ」に相当する。

(iii) 引用発明の「1つのePDCCH候補に係るeCCEセットの連続する各eCCEをi(i=0,1,Λ,L-1)を用いて特定し,アグリゲーションレベルLの2つのePDCCH候補間の距離Δ_(L)を計算により決定し,」は,ePDCCHを取り出すためにUEによって復号すべきリソースを特定するために,1つのePDCCH候補に係る各eCCEが連続するもの(すなわち,1つのePDCCH候補に係る各eCCE間にギャップがないもの)とし,ePDCCH候補と次のePDCCH候補との間の距離(すなわち,ePDCCH候補の開始eCCEと次のePDCCH候補の開始eCCEとの間のギャップをePDCCH候補の個数で表したもの。)をΔ_(L)と決定しているといえる。ここで,引用発明の「アグリゲーションレベルLの各ePDCCH候補のPRB対内の開始eCCEインデックスnが要件 n mod L=0 を満たすよう,局所化された送信におけるPRB対内のeCCEの開始位置を規定し,」によれば,引用例の図4からも明らかなように,1つのPRB対内には1つのePDCCH候補しか存在しないから,1つのePDCCH候補に係る各eCCEが連続するものとすることは,1つのPRB対内のeCCEと次のeCCEとの間のギャップがないものとすることに等しい。そして,これは,本願明細書の【0085】の「これは,局所化されたEPDCCHなので,PRB対内のEPDCCH候補の2つのECCEの間にはギャップがない。」とすること,及び【0059】,図3の例における「ギャップは,1(2つのECCEが連続する)・・・とすること」に対応することは明らかである。
したがって,引用発明の「1つのePDCCH候補に係るeCCEセットの連続する各eCCEをi(i=0,1,Λ,L-1)を用いて特定し,アグリゲーションレベルLの2つのePDCCH候補間の距離Δ_(L)を計算により決定し,」は,本願発明の「ii.前記ECCEと次のECCEとの間のギャップを判定するステップ」に含まれる。

(iv) 引用発明の「ePDCCH候補に係るeCCEのセットを eCCE(q_(i)) q_(i)=L×((k+mΔ_(L)))mod K_(L))+i により規定する,ここで,kはC-RNTIにより決定され,mはアグリゲーションレベルLにおけるm番目のePDCCH候補を表し,K_(L)はアグリゲーションレベルLの潜在的なePDCCH候補の数である」は,復号すべきリソースとして開始位置およびギャップに従って複数のPRB対内で前記eCCEのセットを決定しているといえるから,本願発明の「iii.復号すべき前記リソースとして,前記開始位置および前記ギャップに従って,複数の物理リソース・ブロック対内で前記ECCEのセットを判定するステップ」に含まれる。

したがって,本願発明と引用発明は,
「UEまたはeNB内で,EPDCCHを取り出すために前記UEによって復号すべきリソースを判定する方法であって,
i.1つの物理リソース・ブロック対内の局所化された送信におけるEnhanced Control Channel Element(ECCE)の開始位置を判定するステップと,
ii.前記ECCEと次のECCEとの間のギャップを判定するステップと,
iii.復号すべき前記リソースとして,前記開始位置および前記ギャップに従って,複数の物理リソース・ブロック対内で前記ECCEのセットを判定するステップと,
を含むことを特徴とする方法。」
の点で一致し,相違点はない。

([当審注]:当審拒絶理由の通知時においては,「前記ステップiは,UE固有情報に従って前記開始位置を判定する」との構成が相違点であったが,平成30年10月3日にされた手続補正により当該構成が削除されたため,相違点が存在しないこととなった。)

したがって,本願発明は引用発明と同一である。また,本願発明は,本願発明と同一である引用発明に基づいて,当業者が容易に想到し得るものである。


(請求人の主張について)
請求人は,平成30年10月3日に提出された意見書において,以下のように主張している。
「4,理由4(進歩性)について
独立請求項1,11及び12には,リソースの単位のセットが,開始位置とギャップとに基づいて定義されています。
(1) 拒絶理由通知では,本発明の「開始位置」が引用文献3の「the starting eCCE index n of each ePDCCH candidate」に対応し,本発明の「ギャップ」が引用文献3の「distance between two ePDCCH candidates」に対応し,及び本発明の「リソースの単位のセットの定義」が引用文献3の「determining the ePDCCH candidate」に対応するとの御指摘を頂きました。しかしながら,斯かる対応関係は正しくありません。
(2) 本発明の「ギャップ」は引用文献3の「determining the ePDCCH candidate」とは異なります。なぜならば,本発明の「ギャップ」は「論理空間中でのリソースの不連続」を示すものであって,3次元的距離ではありません。これに対して,引用文献3の「determining the ePDCCH candidate」は3次元的距離です。従いまして,本発明の「ギャップ」に対応する開示は引用文献3にはなく,本発明は引用文献3とは構成が異なり,容易に推考する事は出来ないものと思料します。」
しかしながら,当審拒絶理由は「ギャップ」が引用文献3の「determining the ePDCCH candidate」に対応するとはしていないから,上記(2)の主張は意味不明である。また,上記(2)の主張における「determining the ePDCCH candidate」が「distance between two ePDCCH candidates」の誤記であるとしても,引用例(当審拒絶理由における引用例3)の「distance between two ePDCCH candidates」は,その図4において色付きで示されているeCCEのセットで構成されるePDCCH候補の相互間の距離であり,1つのePDCCH候補に係るeCCEセットの連続する各eCCEを特定するi(i=0,1,Λ,L-1)も図4において色付きで示されているeCCEを特定するものであるから,本願の図3におけるギャップと同様に論理空間中における距離に該当することは自明である。
したがって,請求人の主張は,引用例の技術内容を正解しないものであるから,採用できない。


4 むすび
以上のとおり,本願は,特許法第36条第4項第1号,同条第6項第1号及び同第2号に規定する要件を満たしていない。また,本願発明は,特許法第29条第1項第3号,同条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-12-06 
結審通知日 2018-12-11 
審決日 2018-12-27 
出願番号 特願2015-533394(P2015-533394)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H04W)
P 1 8・ 121- WZ (H04W)
P 1 8・ 113- WZ (H04W)
P 1 8・ 537- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久慈 渉  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 菅原 道晴
倉本 敦史
発明の名称 物理ダウンリンク制御チャネルのリソースを判定する方法  
代理人 岡部 讓  
代理人 吉澤 弘司  

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