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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08G
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08G
管理番号 1351337
審判番号 不服2017-13664  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-13 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2013- 77641「車両運行管理システム、端末装置、制御装置、および車両運行管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月27日出願公開、特開2014-203192〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成25年4月3日の出願であって、平成29年1月25日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年3月30日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成29年6月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年9月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたが、その後、当審において、平成30年8月28日付けで拒絶理由が通知され、平成30年10月15日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願請求項1?9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明9」という。)は、平成30年10月15日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
車両の乗り合い位置で前記車両を待つ利用者の少なくとも有無を検出するための検出手段と、
前記検出手段により前記利用者がいることが検出されたタイミングで、前記検出手段による検出に基づいた前記乗り合い位置で前記車両を待つ利用者に関する情報と、前記車両の位置であって当該車両と通信することにより取得される位置と、予め規定された運行スケジュールに従って運行される交通機関の位置であって、当該交通機関と通信することにより取得される位置に基づいて、前記車両の運行スケジュールを制御するための制御手段と、
前記乗り合い位置にある表示装置に、前記車両の運行スケジュールに関する表示を行なうための表示手段と、を備える、車両運行管理システム。
【請求項2】
前記車両は、第1の乗り合い位置と第2の乗り合い位置との間を運行し、前記交通機関は、前記予め規定された運行スケジュールに従って前記第1の乗り合い位置を含む規定された乗り合い位置を運行し、
前記制御手段は、前記交通機関が前記予め規定された運行スケジュールに従って前記第1の乗り合い位置に到着するタイミングに応じたタイミングで前記車両が前記第1の乗り合い位置に到着するよう、前記車両の運行スケジュールを決定する、請求項1に記載の車両運行管理システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第2の乗り合い位置に前記車両を待つ利用者がいることが検出されたタイミングで、前記第1の乗り合い位置に前記交通機関が到着する時刻に基づいて前記第2の乗り合い位置から前記第1の乗り合い位置へ運行する前記車両の運行スケジュールを決定する、請求項2に記載の車両運行管理システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記交通機関に設置される第2の通信装置と通信可能することで、前記第1の乗り合い位置で前記交通機関から降りる利用者があること表わす情報を取得し、
前記制御手段は、前記第1の乗り合い位置で前記交通機関から降りる利用者があることが検出されたタイミングで、前記第1の乗り合い位置に前記交通機関が到着する時刻に基づいて前記第1の乗り合い位置から前記第2の乗り合い位置へ運行する前記車両の運行スケジュールを決定する、請求項2に記載の車両運行管理システム。
【請求項5】
前記検出手段は、人の有無を検出するためのセンサと、人が操作するためのボタンと、カメラと、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両運行管理システム。
【請求項6】
前記検出手段は前記センサおよび前記カメラを含み、前記センサが人がいることを検出しているときのみに前記カメラを動作させる、請求項5に記載の車両運行管理システム。
【請求項7】
車両の乗り合い位置に設置される端末装置と通信する制御装置であって、
前記端末装置は、前記車両の乗り合い位置で前記車両を待つ利用者の少なくとも有無を検出するための検出手段を有し、
前記制御装置は、前記検出手段により前記利用者がいることが検出されたタイミングで、前記車両の位置であって当該車両と通信することにより取得される位置と、予め規定された運行スケジュールに従って運行される交通機関の位置であって、当該交通機関と通信することにより取得される位置と、前記端末装置と通信することで得られた前記検出手段の検出に基づく前記乗り合い位置で前記車両を待つ利用者に関する情報とに基づいて、前記車両の運行スケジュールを制御する、制御装置。
【請求項8】
前記車両の運行スケジュールに基づいて、前記車両の運行スケジュールに関する表示を行なうための表示情報を前記端末装置に送信する、請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記車両は、第1の乗り合い位置と第2の乗り合い位置との間を運行し、前記交通機関は、前記予め規定された運行スケジュールに従って前記第1の乗り合い位置を含む規定された乗り合い位置を運行し、
前記交通機関が前記予め規定された運行スケジュールに従って前記第1の乗り合い位置に到着するタイミングに応じたタイミングで前記車両が前記第1の乗り合い位置に到着するよう、前記車両の運行スケジュールを決定する、請求項7に記載の制御装置。」

3.当審の拒絶の理由

平成30年8月28日付の当審の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

「1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
3.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

●理由1(実施可能要件)、理由2(サポート要件)、理由3(明確性)について
・請求項 1-9
(1)車両の運行スケジュールの制御に関し、請求項1には「前記検出手段による検出に基づいた前記乗り合い位置で前記車両を待つ利用者に関する情報と、前記車両の位置であって当該車両と通信することにより取得される位置と、予め規定された運行スケジュールに従って運行される交通機関の位置であって、当該交通機関と通信することにより取得される位置に基づいて、前記車両の運行スケジュールを制御するための制御手段」との記載があるが、以下の理由により、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、また、請求項1?6の記載は、発明の詳細な説明に記載したものでないし、明確でもない。
(ア)発明の詳細な説明には、「交通機関」として「基幹路線Rを既存の運行スケジュールに従ったバス」(第1バスB1)のみが示されており、通常基幹路線のバスは複数の系統を有し、双方向に運行されるが、発明の詳細な説明には、第2バスB2(車両)の運行スケジュールの制御において第1バスB1(交通機関)をどのように選択するか記載も示唆もされておらず、複数系統のバスの中からどのように第1バスB1(交通機関)を選択するのか不明である。
(イ)デマンドバスである第2バスB2の路線が複数の第1バスB1の路線を通過する場合(例えば、図1の路線において、縦方向の3本の路線の各々を第1バスB1が運行し、横方向の1本の路線を第2バスB2が運行する場合等。)において、複数の第1バスB1の中からどのように第1バスB1(交通機関)を選択するのか不明である。
(ウ)図1の路線において、仮に基幹路線Rに単一系統の第1バスB1のみが運行されるとしても、上述したように、交通機関のバスであれば双方向に運行されることは通常であるから、上り方向の第1バスB1と下り方向の第1バスB1の中からどのように第1バスB1(交通機関)を選択しているのか不明である。
(エ)発明の詳細な説明において、事前の乗車予約を行うことなく、カメラ、操作ボタン、センサ(検出手段)のみを用いて、利用者の有無、人数、性別、年齢層、移動補助器具の使用の有無という利用者情報を検出しているが(段落【0027】?【0028】、段落【0041】等)、これらの利用者情報からでは、利用者がどの時刻・系統・方向(上り又は下り)の第1バスB1を希望しているのか判別できず、そもそも第1バスB1への乗り換えを希望しているのかすら判断できないので、カメラ、操作ボタン、センサから得られた利用者情報のみを用いて、どのようにして、複数の第1バスB1の中から各利用者のシームレスな乗り換えを希望する第1バスB1(交通機関)を選択しているのか不明である。
(オ)第1バスB1に複数の利用者がいて、各利用者が異なる第1バスB1への乗り換えを希望した場合には、どのようにして、複数の第1バスB1の中から特定の第1バスB1(交通機関)を選択するのか不明である。
(カ)デマンドバスは過疎地域を対象に検討が行われており(段落【0002】)、過疎地域においては、基幹路線を走行する第1バスB1が1日に朝の通勤時間と晩の帰宅時間の2本程度しか運行されない地域は多数あり、このような地域で、昼間にデマンドバス用のバス停bsにあるバス停端末(の検出手段)が利用者を検出した際には、第2バスB2(車両)の運行スケジュールをどのように制御しているか不明である。
(キ)発明の詳細な説明には、デマンドバス用のバス停bsにあるバス停端末(の検出手段)が第2バスB2を待つ利用者を検出すると、自動的に第2バスB2を要求することが記載されており(段落【0041】?【0042】、段落【0061】?【0062】等参照)、デマンドバス用のバス停bsは複数存在すると解されるが(段落【0014】等参照)、第2バスB2が運行する路線の1つのバス停bsで利用者が検出されたとしても、他のバス停bsで利用者が検出されない場合には、他のバス停bsにおいては第2バスB2の要求が行われず、利用者が検出されない他のバス停bsには第2バスB2が通過しないものと解されることから、このような場合において、第2バスB2(車両)の運行スケジュールをどのように制御しているか不明である。
(ク)デマンドバス用のバス停bsの始発バス停から第1バスB1のバス停BSまでの運行時間は、複数あるバス停bsを停車するか否かで変化するが、発明の詳細な説明には、始発のバス停bsから第1バスのバス停BSの間にある複数のバス停bsを停車するか否かの制御に関する記載はないので、第2バスB2の運行スケジュールをどのように設定しているのか不明である。
(ケ)発明の詳細な説明には、デマンドバス用のバス停bsにあるバス停端末(の検出手段)が第2バスB2を待つ利用者を検出すると、利用者を検出した時刻にかかわらず、第1バスB1がバス停BSに到着するよりも所定時間以前に第2バスB2がバス停BSに到着するように制御されているが、利用者を検出した時刻にかかわらず第2バスB2の運行スケジュールが制御されるならば、第1バスB1がバス停BSに到着するよりも所定時間以前に第2バスB2がバス停BSに到着するように予め定められた運行スケジュールに従って第2バスを運行する場合と比較し、本件発明は、どのような点で利用者のデマンドに柔軟に対応できているといえるのか不明である。
(2)請求項7?9に関しても、(1)と同様の理由により、発明の詳細な説明は、当業者が請求項7?9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、また、請求項7?9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないし、明確でもない。」

4.拒絶の理由に対する当審の判断

(1)請求項1において、交通機関の位置に基づいて車両の運行スケジュールを制御することが記載されており、交通機関は基幹路線を走行するもの(段落【0014】)を含み、「予め規定された運行スケジュールに従って運行される」と記載されるのみであるから、交通機関は、基幹路線に複数の系統を有し、双方向に運行されるバスを含んでいる。発明の詳細な説明では、車両(第2バスB2)の運行スケジュールにおいて乗り継ぎ対象となる交通機関(第1バスB1)をどのように選択するか記載も示唆もされていないから、交通機関の位置に基づいて車両の運行スケジュールを制御するに際し、複数の交通機関の中からどのように交通機関を選択しているのか不明である。
よって、請求項1において「予め規定された運行スケジュールに従って運行される交通機関」をいずれの交通機関とするか特定できないから、車両の運行スケジュールを制御するとは車両をどのように制御することか不明であり、本願発明1は明確でない。また、発明の詳細な説明を参酌しても、請求項1の「交通機関」が複数の交通機関である場合、どのように交通機関を特定して、車両の運行スケジュールの制御をどのように実施するか不明であるので、発明の詳細な説明は、本願発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。さらに、発明の詳細な発明の記載から、本願発明の課題は、「バス利用者のデマンドに柔軟に対応できる、利便性の高いデマンド交通の実現」(段落【0020】)であり、特に車両(デマンドバス)と交通機関のシームレスな乗り換えのデマンドに対応すること(段落【0016】?【0020】等)であるが、本願発明1は、複数の交通機関の中からどのように乗り継ぎ対象となる交通機関を選択するのか特定されておらず、請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載された前記の課題を解決できない発明を含めて特許を請求するものである。
なお、請求人は意見書(3-1)で「基幹路線Rを運行するバスである第1バスB1は間歇運行される1系統のバス」を想定していると主張するが、「交通機関」はそのように特定されておらず、請求人の上記主張は、請求項の記載に基づくものではなく採用できない。
請求項2?6に関しても同様である。

(2)請求項1において、交通機関は基幹路線を走行するもの(段落【0014】)を含み、「予め規定された運行スケジュールに従って運行される」と記載されるのみであるから、車両の走行する路線が複数の交通機関の走行する路線を通過する場合(例えば、図1の路線において、縦方向の3本の路線の各々を交通機関が運行し、横方向の1本の路線を車両が運行する場合)を含んでいる。発明の詳細な説明では、車両(第2バスB2)の運行スケジュールにおいて乗り継ぎ対象となる交通機関(第1バスB1)をどのように選択するか記載も示唆もされていないから、交通機関の位置に基づいて車両の運行スケジュールを制御するに際し、複数の交通機関の中からどのように交通機関を選択しているのか不明である。
よって、請求項1において「予め規定された運行スケジュールに従って運行される交通機関」をいずれの交通機関とするか特定できないから、車両の運行スケジュールを制御するとは車両をどのように制御することか不明であり、本願発明1は明確でない。また、発明の詳細な説明を参酌しても、請求項1の「交通機関」が複数の交通機関である場合、どのように交通機関を特定して、車両の運行スケジュールの制御をどのように実施するか不明であるので、発明の詳細な説明は、本願発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。さらに、発明の詳細な発明の記載から、本願発明の課題は、「バス利用者のデマンドに柔軟に対応できる、利便性の高いデマンド交通の実現」(段落【0020】)であり、特に車両(デマンドバス)と交通機関のシームレスな乗り換えのデマンドに対応すること(段落【0016】?【0020】等)であるが、本願発明1は、複数の交通機関の中からどのように乗り継ぎ対象となる交通機関を選択するのか特定されておらず、請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載された前記の課題を解決できない発明を含めて特許を請求するものである。
請求項2?6に関しても同様である。

(3)請求項1において、交通機関は基幹路線を走行するもの(段落【0014】)を含み、「予め規定された運行スケジュールに従って運行される」と記載されるのみであるから、交通機関は基幹路線を運行する複数系統のバスを含んでいるが、仮に交通機関は基幹路線を走行する単一系統のバスであるとしても、交通機関のバスであれば通常双方向に運行され、また、本願の図1には、第1バスB1の横に双方向の矢印が図示され、この双方向の矢印は第1バスB1が上り方向と下り方向の双方向で運行されることを示していることは明らかであるから、交通機関は、少なくとも上り方向と下り方向の双方向で運行されるバスを含むことは明らかである。発明の詳細な説明では、車両(第2バスB2)の運行スケジュールにおいて乗り継ぎ対象となる交通機関(第1バスB1)をどのように選択するか記載も示唆もされていないから、交通機関の位置に基づいて車両の運行スケジュールを制御するに際し、複数の交通機関の中からどのように交通機関を選択しているのか不明である。
よって、請求項1において「予め規定された運行スケジュールに従って運行される交通機関」をいずれの交通機関とするか特定できないから、車両の運行スケジュールを制御するとは車両をどのように制御することか不明であり、本願発明1は明確でない。また、発明の詳細な説明を参酌しても、請求項1の「交通機関」が複数の交通機関である場合、どのように交通機関を特定して、車両の運行スケジュールの制御をどのように実施するか不明であるので、発明の詳細な説明は、本願発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。さらに、発明の詳細な発明の記載から、本願発明の課題は、「バス利用者のデマンドに柔軟に対応できる、利便性の高いデマンド交通の実現」(段落【0020】)であり、特に車両(デマンドバス)と交通機関のシームレスな乗り換えのデマンドに対応すること(段落【0016】?【0020】等)であるが、本願発明1は、複数の交通機関の中からどのように乗り継ぎ対象となる交通機関を選択するのか特定されておらず、請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載された前記の課題を解決できない発明を含めて特許を請求するものである。
請求項2?6に関しても同様である。

(4)請求項1には、乗り合い位置で車両を待つ利用者に関する情報に基づいて車両の運行スケジュールを制御することが記載され、発明の詳細な説明には、事前の乗車予約を行うことなく、カメラ、操作ボタン、センサ(検出手段)のみを用いて、利用者の有無、人数、性別、年齢層、移動補助器具の使用の有無という利用者に関する情報を検出することが記載されている(段落【0027】?【0028】、段落【0041】等)。しかし、これらの利用者に関する情報からでは、利用者がどの時刻・系統・方向(上り又は下り)の交通機関(第1バスB1)を希望しているのか特定できず不明であり、そもそも交通機関(第1バスB1)への乗り換えを希望しているのかすら判断できないから、カメラ、操作ボタン、センサから得られた利用者に関する情報のみを用いて、どのようにして、複数の交通機関の中から各利用者のシームレスな乗り換えを希望する交通機関(第1バスB1)を選択しているのか不明である。
よって、請求項1において「予め規定された運行スケジュールに従って運行される交通機関」をいずれの交通機関とするか特定できないから、車両の運行スケジュールを制御するとは車両をどのように制御することか不明であり、本願発明1は明確でない。また、発明の詳細な説明を参酌しても、請求項1の「交通機関」が複数の交通機関である場合、どのように複数の交通機関の中から各利用者のシームレスな乗り換えを希望する交通機関を特定して、車両の運行スケジュールの制御をどのように実施するか不明であるので、発明の詳細な説明は、本願発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。さらに、発明の詳細な発明の記載から、本願発明の課題は、「バス利用者のデマンドに柔軟に対応できる、利便性の高いデマンド交通の実現」(段落【0020】)であり、特に車両(デマンドバス)と交通機関のシームレスな乗り換えのデマンドに対応すること(段落【0016】?【0020】等)であるが、本願発明1は、複数の交通機関の中からどのように各利用者のシームレスな乗り換えを希望する交通機関を選択するのか特定されておらず、請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載された前記の課題を解決できない発明を含めて特許を請求するものである。
請求項2?6に関しても同様である。

(5)請求項1には、乗り合い位置で車両を待つ利用者に関する情報に基づいて車両の運行スケジュールを制御することが記載され、発明の詳細な説明には、事前の乗車予約を行うことなく、カメラ、操作ボタン、センサ(検出手段)のみを用いて、利用者の有無、人数、性別、年齢層、移動補助器具の使用の有無という利用者に関する情報を検出することが記載されている(段落【0027】?【0028】、段落【0041】等)。しかし、これらの利用者に関する情報からでは、利用者がどの時刻・系統・方向(上り又は下り)の交通機関(第1バスB1)を希望しているのか特定できず不明であり、そもそも交通機関(第1バスB1)への乗り換えを希望しているのかすら判断できないから、各利用者が異なる交通機関(第1バスB1)への乗り換えを希望した場合、カメラ、操作ボタン、センサから得られた利用者に関する情報のみを用いて、どのようにして、複数の交通機関の中から特定の交通機関を選択するのかも不明である。
よって、請求項1において「予め規定された運行スケジュールに従って運行される交通機関」をいずれの交通機関とするか特定できないから、車両の運行スケジュールを制御するとは車両をどのように制御することか不明であり、本願発明1は明確でない。また、発明の詳細な説明を参酌しても、請求項1の「交通機関」が複数の交通機関である場合、どのように複数の交通機関の中から各利用者のシームレスな乗り換えを希望する交通機関を特定して、車両の運行スケジュールの制御をどのように実施するか不明であるので、発明の詳細な説明は、本願発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。さらに、発明の詳細な発明の記載から、本願発明の課題は、「バス利用者のデマンドに柔軟に対応できる、利便性の高いデマンド交通の実現」(段落【0020】)であり、特に車両(デマンドバス)と交通機関のシームレスな乗り換えのデマンドに対応すること(段落【0016】?【0020】等)であるが、本願発明1は、複数の交通機関の中からどのように各利用者のシームレスな乗り換えを希望する交通機関を選択するのか特定されておらず、請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載された前記の課題を解決できない発明を含めて特許を請求するものである。
なお、請求人は意見書(3-2)?(3-5)で「基幹路線Rを運行するバスである第1バスB1は間歇運行される1台のバス」を想定していると主張するが、「交通機関」はそのように特定されておらず、請求人の上記主張は、請求項の記載に基づくものではなく採用できない。
請求項2?6に関しても同様である。

(6)請求項1に、交通機関の位置に基づいて車両の運行スケジュールを制御することが記載されており、発明の詳細な説明に、デマンドバス(車両)は過疎地域を対象に検討が行われていることが記載されているが(段落【0002】)、過疎地域においては、基幹路線を走行する交通機関(第1バスB1)が1日に朝の通勤時間と晩の帰宅時間の2本程度しか運行されない地域は多数存在し、このような地域で、昼間にデマンドバス用のバス停bsにあるバス停端末(の検出手段)が利用者を検出した際には、交通機関は長時間運行されないことから、交通機関の位置に基づいて車両(第2バスB2)の運行スケジュールをどのように制御しているか不明である。
よって、請求項1において、「交通機関の位置」をどのように利用して車両の運行スケジュールを制御するのか不明であるから、車両の運行スケジュールを制御するとは車両をどのように制御することか不明であり、本願発明1は明確でない。また、発明の詳細な説明を参酌しても、請求項1の「交通機関」が1日に朝の通勤時間と晩の帰宅時間の2本程度しか運行されない場合、車両の運行スケジュールの制御をどのように実施するか不明であるので、発明の詳細な説明は、本願発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。さらに、発明の詳細な発明の記載から、本願発明の課題は、「バス利用者のデマンドに柔軟に対応できる、利便性の高いデマンド交通の実現」(段落【0020】)であるが、本願発明1は、交通機関が1日に朝の通勤時間と晩の帰宅時間の2本程度しか運行されない場合を除外するものでなく、請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載された前記の課題を解決できない発明を含めて特許を請求するものである。
なお、請求人は意見書(3-6)で「本願の発明の詳細な説明では、基幹路線Rを走行する第1バスB1は運行スケジュールに従って間歇運行されており(段落0014をご参照)ます。このような間歇運行は、ご指摘のような1日に朝の通勤時間と晩の帰宅時間の2本程度しか運行されないという運行よりも高い頻度で運行がなされます。」と主張するが、「交通機関」はそのように特定されておらず、請求人の上記主張は、請求項の記載に基づくものではなく採用できない。
請求項2?6に関しても同様である。

(7)請求項1には、検出手段による検出に基づいた乗り合い位置で車両を待つ利用者に関する情報に基づき車両の運行スケジュールを制御することが記載されており、通常「乗り合い位置」には、複数の乗り合い位置が含まれる。発明の詳細な説明には、デマンドバス用のバス停bsにあるバス停端末(の検出手段)が第2バスB2を待つ利用者を検出すると、自動的に第2バスB2を要求することが記載されているが(段落【0041】?【0042】、段落【0061】?【0062】等参照)、第2バスB2が運行する路線の1つのバス停bsで利用者が検出されたとしても、次以降のバス停bsで利用者が検出されない場合、次以降のバス停bsにおいては第2バスB2の要求が行われず、利用者が検出されない次以降のバス停bsを第2バスB2が通過しないこととなるが、利用者に関する情報に基づきどのように車両(第2バスB2)の運行スケジュールを制御するのか不明である。
よって、請求項1において、「利用者に関する情報」をどのように利用して車両の運行スケジュールを制御するのか不明であるから、車両の運行スケジュールを制御するとは車両をどのように制御することか不明であり、本願発明1は明確でない。また、発明の詳細な説明を参酌しても、1つの「乗り合い位置」で利用者が検出され、他の「乗り合い位置」で利用者が検出されない場合、車両の運行スケジュールの制御をどのように実施するか不明であるので、発明の詳細な説明は、本願発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。さらに、発明の詳細な発明の記載から、本願発明の課題は、「バス利用者のデマンドに柔軟に対応できる、利便性の高いデマンド交通の実現」(段落【0020】)であり、特に車両(デマンドバス)と交通機関のシームレスな乗り換えのデマンドに対応すること(段落【0016】?【0020】等)であるが、本願発明1は、1つの「乗り合い位置」で利用者が検出され、他の「乗り合い位置」で利用者が検出されない場合に車両(第2バスB2)の運行スケジュールをどのように制御するのか特定されておらず、請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載された前記の課題を解決できない発明を含めて特許を請求するものである。
請求項2?6に関しても同様である。

(8)上記(7)で述べたように、請求項1の「乗り合い位置」には、複数の乗り合い位置が含まれる。そして、デマンドバス用のバス停bsの始発バス停から第1バスB1のバス停BSまでの運行時間は、複数あるバス停bsに停車するか否かで変化するが、発明の詳細な説明には、始発のバス停bsから第1バスのバス停BSの間に複数のバス停bsがある場合の車両の運行スケジュールの制御について記載も示唆もされておらず、途中のバス停bsに停止した場合と停止しなかった場合で運行時間をどのように制御するのか不明であり、また、始発のバス停bsを出発する際には途中のバス停bsで利用者を検出できなかったが、出発後に途中のバス停bsで利用者を検出した場合に運行時間をどのように制御するのかも不明である。
よって、請求項1において、「利用者に関する情報」をどのように利用して車両の運行スケジュールを制御するのか不明であるから、車両の運行スケジュールを制御するとは車両をどのように制御することか不明であり、本願発明1は明確でない。また、発明の詳細な説明を参酌しても、「乗り合い位置」が複数ある場合、車両の運行スケジュールの制御をどのように実施するか不明であるので、発明の詳細な説明は、本願発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。さらに、発明の詳細な発明の記載から、本願発明の課題は、「バス利用者のデマンドに柔軟に対応できる、利便性の高いデマンド交通の実現」(段落【0020】)であり、特に車両(デマンドバス)と交通機関のシームレスな乗り換えのデマンドに対応すること(段落【0016】?【0020】等)であるが、本願発明1は、「乗り合い位置」が複数ある場合に車両(第2バスB2)の運行スケジュールをどのように制御するのか特定されておらず、請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載された前記の課題を解決できない発明を含めて特許を請求するものである。
なお、請求人は意見書(3-7)、(3-8)で「各支線路線rには1つのバス停bs」であると主張しているが、「乗り合い位置」はそのように特定されておらず、請求人の上記主張は、請求項の記載に基づくものではなく採用できない。
請求項2?6に関しても同様である。

(9)請求項1には、検出手段により利用者がいることが検出されたタイミングで車両の運行スケジュールを制御することが記載され、発明の詳細な説明には、デマンドバス用のバス停bsにあるバス停端末(の検出手段)が第2バスB2を待つ利用者を検出すると、利用者をどの時刻に検出したとしても、第1バスB1がバス停BSに到着するよりも所定時間以前に第2バスB2がバス停BSに到着するように制御されることが記載されているが、そうであれば、第1バスB1がバス停BSに到着するよりも所定時間以前に第2バスB2がバス停BSに到着するように予め定められた運行スケジュールに従って第2バスを運行する場合と比較して、本願発明1?6は、どのような点で、「バス利用者のデマンドに柔軟に対応できる」との本願発明の課題を解決できているのか不明である。
よって、本願発明1は、「バス利用者のデマンドに柔軟に対応できる」との本願発明の課題を解決できているといえないので、請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載した課題を解決できない発明を含めて特許を請求するものである。
なお、請求人は意見書(3-9)で、(デマンドバスの)利用者を検出した時刻を用いて第2バスB2の運行スケジュールが制御されるように特許請求の範囲の記載を改めた旨の主張をしているが、結局は、第1バスB1がバス停BSに到着するよりも所定時間以前に第2バスB2がバス停BSに到着するように第2バスB2がバス停bsを出発する時間を決めるものであるから、依然として、本願発明1?6が、予め定められた運行スケジュールに従って第2バスを運行する場合と比較して、どのような点で「利用者のデマンドに柔軟に対応できる」のか不明である。
請求項2?6に関しても同様である。

(10)本願発明7?9に関しても、(1)?(9)と同様の理由により、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明7?9を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、また、本願発明7?9は、発明の詳細な説明に記載したものでないし、明確でもない。

5.むすび

したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、請求項1?9の記載は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、且つ発明の詳細な説明を参照しても明確ではないから、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-28 
結審通知日 2019-03-05 
審決日 2019-03-19 
出願番号 特願2013-77641(P2013-77641)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G08G)
P 1 8・ 113- WZ (G08G)
P 1 8・ 536- WZ (G08G)
P 1 8・ 121- WZ (G08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島倉 理  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 山村 和人
柿崎 拓
発明の名称 車両運行管理システム、端末装置、制御装置、および車両運行管理方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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