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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1351353
審判番号 不服2018-3054  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-02 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2016-246755「店舗支援システム、店舗支援方法、および店舗支援プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月28日出願公開、特開2018-101271〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年12月20日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 7月26日付け :拒絶理由通知書
平成29年10月 5日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年12月19日付け :拒絶査定
平成30年 3月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 平成30年3月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年3月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。

「店舗に来店しているユーザを抽出するユーザ抽出部と、
前記ユーザ抽出部により抽出されたユーザの購入属性を取得する属性取得部と、
前記属性取得部により取得された購入属性に基づいて、前記ユーザにより使用される端末装置に、前記店舗の利用を条件として付与される特典を含むセール情報を提供する提供部と、
を備え、
前記提供部は、店舗における商品等と店内位置情報との関係を示す情報を参照し、前記店舗に来店しているユーザの位置情報に基づいて、前記ユーザ抽出部により抽出されたユーザの位置の付近に陳列されている商品等の情報を取得し、前記店舗内において前記ユーザが移動した第1ポイントの付近に陳列されている商品等を含み、且つ、前記店舗内において前記ユーザが前記第1ポイントよりも前に通過した第2ポイントの付近に陳列されている商品等を含まない、商品等に関するセール情報を、前記店舗に来店しているユーザにより使用される端末装置に提供する、
店舗支援システム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年10月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「店舗に来店しているユーザと前記店舗に来店する可能性があるユーザとのうち少なくとも一方のユーザを抽出するユーザ抽出部と、
前記ユーザ抽出部により抽出されたユーザの位置の付近に陳列されている商品等に関するセール情報を、前記ユーザにより使用される端末装置に提供する提供部と、
を備える店舗支援システム。」

2 目的要件について
本件補正は、本件補正前の請求項1に「前記ユーザ抽出部により抽出されたユーザの購入属性を取得する属性取得部」という新たな技術的事項を付加する補正事項を含むものであって、当該補正事項は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。よって当該補正事項を含む本件補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。また、当該補正事項は、請求項の削除、誤記の訂正、または明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。
よって本件補正は、特許法17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。

3 独立特許要件について
仮に、上記補正事項が特許請求の範囲の減縮を目的とするものと解釈した場合に、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1(1)」に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である国際公開第2005/111880号(2005年11月24日国際公開。以下、引用文献1という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「[0032]
(実施例1)
POSデータのような購買内容を示すデータを参照することにより「売れる商品」と「売れない商品」を把握することができても、「なぜ売れるのか」「なぜ売れないのか」といった購買要因までは特定困難である。本実施例のシステムによれば、顧客が売場に行った意図や商品購入に至る経緯が統計的なデータに基づいて把握でき、その売場の商品に対するひとりひとりの顧客の興味や関心を客観的に推測することができ、有用なマーケティング情報を得ることができる。
[0033]
図1は、顧客行動解析システムの構成を示す機能ブロック図である。顧客行動解析システム10は、複数の無線LAN基地局である第1アクセスポイント12、第2アクセスポイント14、第3アクセスポイント16と、顧客行動解析装置20を含む。「複数の無線LAN基地局」は、移動体と各基地局との間で無線電波の強度を用いて測位するため少なくとも3個のアクセスポイントが設けられる。本実施例では第1アクセスポイント12、第2アクセスポイント14、第3アクセスポイント16からなる3個のアクセスポイントを例示するが、実際には店舗の広さや売場領域の広さに応じて4個以上のアクセスポイントを用いてもよい。
・・・(中略)・・・
[0035]
顧客行動解析装置20は、通信部22、強度取得部24、位置認識部26、位置情報記憶部28、位置取得部30、速度取得部32、経路取得部34、空間取得部36、空間情報記憶部38、データ設定部40、パターン判定部42、行動パターンデータ記憶部44、判定結果記憶部46、出力処理部48、情報配信部50、操作入力部52、制御部54、表示部56、商品情報記憶部58を備える。通信部22は、LAN18を介して第1アクセスポイント12、第2アクセスポイント14、第3アクセスポイント16、POSサーバ19との間でデータを送受信する。
[0036]
強度取得部24は、通信部22を介して第1アクセスポイント12、第2アクセスポイント14、第3アクセスポイント16から電波強度を示すデータを受信する。この電波強度は、顧客が使用する買い物カートに備えられた通信機との間で送受信される無線波の強度である。各買い物カートの通信機は、第1アクセスポイント12、第2アクセスポイント14、第3アクセスポイント16のそれぞれとの間で送受信される無線波の強度を示すデータを第1アクセスポイント12、第2アクセスポイント14、第3アクセスポイント16のうち少なくともいずれかへ送信し、これを第1アクセスポイント12、第2アクセスポイント14、第3アクセスポイント16のいずれかを介して強度取得部24が取得する。位置認識部26は、強度取得部24が第1アクセスポイント12、第2アクセスポイント14、第3アクセスポイント16から受け取った同じ買い物カートからの電波強度の差異から、その買い物カートの位置を認識する。すなわち、位置認識部26は、各アクセスポイントから受け取る電波強度に基づいて各アクセスポイントから買い物カートまでの距離を求め、その距離が交わる地点を買い物カートの現在位置と認識する。位置認識部26は、店舗内において時間経過とともに変化する顧客の現在位置である位置情報と、その位置情報を測位したタイミングを示す時間情報を随時生成して位置情報記憶部28へ格納する。この位置情報は、三つのアクセスポイントに対する買い物カートの相対的な位置を示し、例えば(x,y,z)の3次元座標で表される。また、時間情報とともに(x,y,z,t)と表されてもよいし、(x,y)や(x,y,t)の2次元座標で表されてもよい。三つのアクセスポイントの位置情報は管理者から入力された情報に基づいてあらかじめ設定される。すなわち、各アクセスポイントの設置時にそれぞれの概略位置を管理者が操作入力部52を介して入力し、位置認識部26が各アクセスポイント同士の電波強度に基づいて入力値を補正してそれぞれの正確な位置を認識し、その位置情報を位置情報記憶部28へ格納する。
[0037]
位置取得部30は、店舗内で買い物をした、または買い物をしている顧客が使用する買い物カートの位置情報と時間情報を位置情報記憶部28から取得する。すなわち、顧客が入店して買い物カートを使用開始してからその買い物カートを使用終了するまで連続的に測定された位置情報と時間情報が位置取得部30により取得される。」

「[0043]
出力処理部48は、判定結果記憶部46に格納された判定結果を表示部56または通信部22を通じて出力する。すなわち、出力処理部48は、表示部56の画面に判定結果を表示するとともに、通信部22を介して外部へ判定結果を送信する。商品情報記憶部58は、販売する商品に関して顧客に提供可能な情報をその商品の売場および行動パターンの類型と対応させて記憶する。情報配信部50は、パターン判定部42により判定された顧客の行動パターンの類型に応じて顧客に提供可能な情報を出力処理部48へ送り、出力処理部48はその情報を顧客の買い物カートに備えられた液晶表示装置やPOSサーバ19へ送信する。操作入力部52は、顧客行動解析システム10の管理者による操作を受け付け、その操作に基づいて制御部54が顧客行動解析装置20の各部を制御する。」

「[0059]
情報配信部50は、買い物カートが現在位置する売場領域に応じてその売場領域に陳列された商品を紹介するための情報を出力処理部48へ送る。出力処理部48は、情報配信部50から受け取った情報を無線LAN経由で買い物カートへ送信し、LAN18経由でPOSサーバ19へ送信する。情報配信部50は、顧客の行動パターンの類型に応じた商品情報を商品情報記憶部58から取得して出力処理部48へ送る。例えば、フリーズの状態にある顧客に対する情報やパッシングしつつある顧客に対する情報として商品を紹介する情報を送ってもよいし、道に迷った状態の顧客に対する情報として店舗案内図のデータを送ってもよい。
[0060]
商品を紹介する情報を顧客へ提供する他の方法として、パターン判定部42はPOSデータや顧客の購買履歴を参照して顧客の経路情報、速度情報、および行動パターンの類型と購買内容の対応を判定し、その対応に基づいて情報配信部50が情報内容や提供方法を決定してもよい。パターン判定部42は、POSサーバ19から受け取るPOSデータに基づき、精算領域に滞在する顧客の顧客IDおよび購買内容を取得し、その顧客の経路情報と対応付けて判定結果記憶部46へ購買履歴として格納する。判定結果記憶部46への格納後は、再び同じ顧客が来店したときにパターン判定部42が顧客IDに基づいてその顧客の購買履歴を判定結果記憶部46から読み出し、その顧客の行動を分析する。顧客IDは、たとえば買い物開始時に会員カードから買い物カートへ読み込ませる形で取得してもよいし、精算時に精算領域にて会員カードから読み取る形で取得してもよい。これらの場合、情報配信部50は、精算領域のキャッシュレジスターへ情報を送信して顧客のレシートへ印刷させてもよいし、顧客の電子メールアドレスがあらかじめ登録されている場合は電子メールにて配信してもよい。
[0061]
レシートへ印刷させる情報や電子メールで配信する情報を以下例示する。たとえば、来店頻度が比較的高い顧客に関し特定の売場領域への来場頻度が急に減少したことをパターン判定部42が判定した場合、その売場領域の商品を他店で購入していると推測することができる。その場合、情報配信部50はその売場領域の商品に関する割引券のデータまたはその売場領域の商品に関する販売促進広告のデータをその顧客へ配信する。同じ売場領域に比較的長時間滞在した顧客、すなわちアクティブまたはフリーズに該当した顧客が、結局その売場領域の商品を購入しなかったことをパターン判定部42が判定した場合、その売場領域の商品またはその値段に納得しなかったと推測することができる。その場合、情報配信部50はその売場領域の商品に関する割引券のデータまたはその売場領域の商品に関する販売促進広告のデータをその顧客へ提供する。動線距離が比較的長く、または店内滞在時間が比較的長いにもかかわらず購入品数が少なかったことをパターン判定部42が判定した場合、情報配信部50はその店舗の商品全体に関する割引券のデータまたは店舗の商品全体に関する販売促進広告のデータをその顧客へ提供する。特定の売場領域で滞在時間が比較的長いにもかかわらず、その売場領域の商品の購入品数が少なかったことをパターン判定部42が判定した場合、情報配信部50はその売場領域の商品に関する割引券のデータまたはその売場領域の商品に関する販売促進広告のデータをその顧客へ提供する。会員カードが発行されてから日が浅いために動線距離が短い顧客であるとパターン判定部42が判定した場合、情報配信部50はその顧客に対して店舗全体の商品に関する割引券のデータまたは店舗の商品全体に関する販売促進広告のデータを提供する。販売促進キャンペーンが催されている特設売場でアクティブまたはフリーズとなった顧客は、キャンペーンのテーマに興味をもった顧客であると推測される。そのような顧客に対して情報配信部50は、同様のキャンペーンの対象商品に関する割引券のデータまたはその商品に関する販売促進広告のデータを提供する。
[0062]
情報配信部50は、電子メールで配信する情報として、たとえば特定の販売促進キャンペーン中にキャンペーン対象の商品を購入した顧客に対して、他の商品または関連する商品の販売促進キャンペーンに関する情報を提供してもよい。情報配信部50は、買い物カートの液晶表示装置に情報を表示させる方法として、たとえば同じ売場領域に滞在する時間が所定時間を経過したときに、直ちにその売場領域の商品に関する販売促進の情報を提供してもよいし、同じ売場領域を所定回数以上通過する顧客に対してその売場領域の商品に関する販売促進の情報を提供してもよい。顧客へ送信する販売促進のための情報は、その顧客が通行しなかった売場の商品やその顧客が素通りした売場の商品に関する情報であってもよい。
[0063]
図3は、買い物カートの外観を示す。買い物カート60にはカート用液晶表示装置62が備えられている。このカート用液晶表示装置62は無線LAN通信機能を内蔵し、カート用アンテナ64を介して店舗内の第1アクセスポイント12、第2アクセスポイント14、第3アクセスポイント16と無線通信する。カート用液晶表示装置62は、第1アクセスポイント12、第2アクセスポイント14、第3アクセスポイント16との間で送受信される無線波の強度を取得する。カート用液晶表示装置62は液晶表示部を有し、顧客行動解析装置20から受信した商品に関する情報を液晶表示部に表示させる。」

(イ)上記記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「売場の商品に対する顧客の興味や関心を客観的に推測し、マーケティング情報を得ることができる顧客行動解析システム10であって、
位置認識部26、位置情報記憶部28、位置取得部30、パターン判定部42、判定結果記憶部46、出力処理部48、情報配信部50、商品情報記憶部58等を備える顧客行動解析装置20を含み、
買い物カート60に備えられた液晶表示装置62を有し、
位置認識部26は、買い物カートの位置を認識し、店舗内の顧客の現在位置である位置情報と、その位置情報を測位したタイミングを示す時間情報を位置情報記憶部28へ格納し、位置取得部30は、買い物をしている顧客が使用する買い物カートの位置情報と時間情報を位置情報記憶部28から取得し、
商品情報記憶部58は、販売する商品に関して顧客に提供可能な情報をその商品の売場および行動パターンの類型と対応させて記憶しており、情報配信部50は、パターン判定部42により判定された顧客の行動パターンの類型に応じた商品情報を商品情報記憶部58から取得して出力処理部48へ送り、出力処理部48はその情報を顧客の買い物カートに備えられた液晶表示装置へ送信し、
パターン判定部42はPOSデータや顧客の購買履歴を参照して顧客の経路情報、速度情報、および行動パターンの類型と購買内容の対応を判定し、その対応に基づいて情報配信部50が情報内容や提供方法を決定してもよく、当該判定において、顧客IDは、買い物開始時に会員カードから買い物カートへ読み込ませる形で取得してもよく、
情報配信部50は、買い物カートが現在位置する売場領域に応じてその売場領域に陳列された商品を紹介するための情報を出力処理部48へ送り、出力処理部48は、情報配信部50から受け取った情報を無線LAN経由で買い物カートへ送信し、
情報配信部50は、買い物カートの液晶表示装置に情報を表示させる方法として、同じ売場領域に滞在する時間が所定時間を経過したときに、直ちにその売場領域の商品に関する販売促進の情報を提供してもよく、
情報配信部50は、精算領域のキャッシュレジスターへ情報を送信して顧客のレシートへ印刷させてもよいし、顧客の電子メールアドレスがあらかじめ登録されている場合は電子メールにて配信してもよく、その場合の例として、販売促進キャンペーンが催されている特設売場でアクティブまたはフリーズとなった顧客に対して、同様のキャンペーンの対象商品に関する割引券のデータまたはその商品に関する販売促進広告のデータを提供する、
顧客行動解析システム10。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の、「顧客行動解析装置20」を含む「顧客行動解析システム10」は、店舗における「売場の商品に対する顧客の興味や関心を客観的に推測し、マーケティング情報を得ることができる」システムであるから、後述する相違点を除いて、本件補正発明の「店舗支援システム」に対応する。

(イ)引用発明の「買い物カート60に備えられた液晶表示装置62」は、来店しているユーザである顧客が使用する端末装置であるから、本件補正発明の「ユーザにより使用される端末装置」に相当する。

(ウ)引用発明は、「顧客ID」を「買い物開始時に会員カードから買い物カートへ読み込ませる形で取得」する構成を備えており、顧客IDの取得によって来店しているユーザを特定しているから、引用発明は、本件補正発明の「店舗に来店しているユーザを抽出するユーザ抽出部」に相当する構成を備えている。

(エ)引用発明は、「顧客ID」を取得して来店しているユーザを特定したうえで、「POSデータや顧客の購買履歴を参照して顧客の経路情報、速度情報、および行動パターンの類型と購買内容の対応を判定」する構成を備えており、「顧客の購買履歴」や「顧客の経路情報」は、ユーザの購入属性といえるものであるから、引用発明は、本件補正発明の「前記ユーザ抽出部により抽出されたユーザの購入属性を取得する属性取得部」に相当する構成を備えている。

(オ)引用発明は、取得した「顧客の購買履歴」や「顧客の経路情報」に基づいて、端末装置に「商品情報」を送信する「情報配信部50」を備えており、端末装置に送信される「商品情報」は、顧客に商品を紹介するための販売促進情報であるから、本件補正発明と引用発明とは「前記属性取得部により取得された購入属性に基づいて、前記ユーザにより使用される端末装置に、セール情報を提供する提供部」を備える点で共通する。

(カ)引用発明の「情報配信部50」は、上記(オ)で検討したとおり本件補正発明の「提供部」に対応するものであって、「販売する商品に関する情報」と「その商品の売場」との関係を示す情報を記憶する「商品情報記憶部58」を参照して、情報提供を行うものである。さらに「情報配信部50」は、位置取得部30により取得された顧客の買い物カートの位置情報に基づいて、買い物カートが現在位置する売場領域に陳列された商品を紹介するための情報を買い物カートに表示させる機能を有しており、表示方法の例として、「同じ売場領域に滞在する時間が所定時間を経過したときに、直ちにその売場領域の商品に関する販売促進の情報を提供」する。ここで、「情報配信部50」が、「同じ売場領域に滞在する時間が所定時間を経過したときに、直ちにその売場領域の商品に関する販売促進の情報を提供」するという処理を行う場合には、「情報配信部50」により提供される販売促進の情報は、「ユーザが移動した第1ポイントの付近に陳列されている商品」に関する情報であり、所定時間滞在した売場領域に至るまでに通過した売場領域の商品、つまり、「店舗内において前記ユーザが前記第1ポイントよりも前に通過した第2ポイントの付近に陳列されている商品」に関する情報を含まない。
してみると、引用発明は、本件補正発明の「前記提供部は、店舗における商品等と店内位置情報との関係を示す情報を参照し、前記店舗に来店しているユーザの位置情報に基づいて、前記ユーザ抽出部により抽出されたユーザの位置の付近に陳列されている商品等の情報を取得し、前記店舗内において前記ユーザが移動した第1ポイントの付近に陳列されている商品等を含み、且つ、前記店舗内において前記ユーザが前記第1ポイントよりも前に通過した第2ポイントの付近に陳列されている商品等を含まない、商品等に関するセール情報を、前記店舗に来店しているユーザにより使用される端末装置に提供する」に相当する構成を備えているといえる。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「店舗に来店しているユーザを抽出するユーザ抽出部と、
前記ユーザ抽出部により抽出されたユーザの購入属性を取得する属性取得部と、
前記属性取得部により取得された購入属性に基づいて、前記ユーザにより使用される端末装置に、セール情報を提供する提供部と、
を備え、
前記提供部は、店舗における商品等と店内位置情報との関係を示す情報を参照し、前記店舗に来店しているユーザの位置情報に基づいて、前記ユーザ抽出部により抽出されたユーザの位置の付近に陳列されている商品等の情報を取得し、前記店舗内において前記ユーザが移動した第1ポイントの付近に陳列されている商品等を含み、且つ、前記店舗内において前記ユーザが前記第1ポイントよりも前に通過した第2ポイントの付近に陳列されている商品等を含まない、商品等に関するセール情報を、前記店舗に来店しているユーザにより使用される端末装置に提供する、
店舗支援システム。」

[相違点1]
端末装置に「セール情報」を提供するにあたり、本件補正発明は、「前記店舗の利用を条件として付与される特典を含む」情報を提供するのに対し、引用発明は、レシートまたは電子メールを用いて情報提供を行う場合には「商品に関する割引券」、すなわち「店舗の利用を条件として付与される特典」を含む情報を送信するものの、店舗内でユーザにより使用される端末装置に「セール情報」を提供する際にはそのような特典を含むものであるのか否か不明である点。

(4)判断
相違点1について検討する。
引用発明において、「セール情報」としてどのような情報を提供するかは、当業者にとって設計上の選択事項である。加えて、店舗内で購入商品を検討している顧客に対して商品の割引等の特典を提供し販売促進を図ることも、一般的な商習慣に過ぎない。してみると、引用発明において、端末装置に「セール情報」を提供するにあたり、「商品に関する割引券」等の「店舗の利用を条件として付与される特典」をセール情報に含むよう構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり、同法第159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
また、仮に本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものと解釈した場合であっても、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年3月2日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年10月5日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし38に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
請求項1についての原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:国際公開第2005/111880号

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
(1)引用発明との対比
ア 本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の、「顧客行動解析装置20」を含む「顧客行動解析システム10」は、店舗における「売場の商品に対する顧客の興味や関心を客観的に推測し、マーケティング情報を得ることができる」システムであるから、本願発明の「店舗支援システム」に対応する。

(イ)引用発明は、「顧客ID」を「買い物開始時に会員カードから買い物カートへ読み込ませる形で取得」する構成を備えており、当該構成は本願発明の「店舗に来店しているユーザと前記店舗に来店する可能性があるユーザとのうち少なくとも一方のユーザを抽出するユーザ抽出部」に相当する。

(ウ)引用発明の「情報配信部50」は、位置取得部30により取得された顧客の買い物カートの位置情報に基づいて、買い物カートが現在位置する売場領域に陳列された商品を紹介するための情報を買い物カートに表示させる機能を有しているから、本願発明の「前記ユーザ抽出部により抽出されたユーザの位置の付近に陳列されている商品等に関するセール情報を、前記ユーザにより使用される端末装置に提供する提供部」に相当する。

イ 以上のことから、本願発明と引用発明とは、
「店舗に来店しているユーザと前記店舗に来店する可能性があるユーザとのうち少なくとも一方のユーザを抽出するユーザ抽出部と、
前記ユーザ抽出部により抽出されたユーザの位置の付近に陳列されている商品等に関するセール情報を、前記ユーザにより使用される端末装置に提供する提供部と、
を備える店舗支援システム。」
との点で一致し、相違点を有しない。

(2)判断
(1)で検討したとおり、本願発明は、引用発明との間に相違する点がないから、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-04 
結審通知日 2019-03-05 
審決日 2019-03-20 
出願番号 特願2016-246755(P2016-246755)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松野 広一  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 相崎 裕恒
宮久保 博幸
発明の名称 店舗支援システム、店舗支援方法、および店舗支援プログラム  
代理人 松沼 泰史  
代理人 酒井 太一  
代理人 林 康旨  
代理人 棚井 澄雄  

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