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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G02F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G02F 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 G02F 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 G02F |
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管理番号 | 1351407 |
異議申立番号 | 異議2018-700575 |
総通号数 | 234 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-06-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-07-13 |
確定日 | 2019-03-28 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6260150号発明「液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子、位相差フィルム、位相差フィルムの製造方法、重合体及び化合物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6260150号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、9、10について訂正することを認める。 特許第6260150号の請求項1-10に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6260150号(請求項の数10)は、平成25年8月30日(優先権主張:平成24年12月3日)を出願日とする特許出願(特願2013-180237号)に係るものであって、平成29年12月22日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、平成30年1月17日である。)。 その後、平成30年7月13日に、本件特許の請求項1ないし10に係る特許に対して、特許異議申立人である張 迪(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。 平成30年 7月13日 特許異議申立書 同年10月23日付け 取消理由通知書 同年12月21日 意見書、訂正請求書 平成31年 1月 7日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知) 申立人からの意見書の提出はなかった。 第2 訂正の請求について 1 訂正の内容 平成30年12月21日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、本件特許の特許請求の範囲を上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕、9、10について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、下記式(d)で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤。 (式(d)中、R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数1?20のアルケニル基、又は炭素数1?20のアルキル基若しくはアルケニル基に置換基が導入された1価の基である。R^(9)及びR^(10)は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又は炭素数1?6のアルキル基若しくはアルコキシ基である。Z^(1)及びZ^(2)は、それぞれ独立に、単結合、-O-、*-COO-、*-OCO-、-CO-、*-NHCO-、*-CONH-又は*-O-CH_(2)-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である。但し、Z^(1)及びZ^(2)が同時に単結合になることはない。X^(1)は、2価の有機基である。m^(1)及びm^(2)は、それぞれ独立に0?4の整数であり、nは0又は1である。但し、X^(1)が-CH=CH-Ph-CH=CH-であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合、及び、X^(1)が-CH=CH-であってZ^(1)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)であってZ^(2)が単結合であってnが0である場合を除く。R^(9),R^(10)が複数存在する場合、複数のR^(9),R^(10)は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)」とあるのを、「テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、下記式(d)で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤。 (式(d)中、R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数1?20のアルケニル基、又は炭素数1?20のアルキル基若しくはアルケニル基に置換基が導入された1価の基である。R^(9)及びR^(10)は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又は炭素数1?6のアルキル基若しくはアルコキシ基である。Z^(1)及びZ^(2)は、それぞれ独立に、単結合、-O-、*-COO-、*-OCO-、-CO-、*-NHCO-、*-CONH-又は*-O-CH_(2)-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である。但し、Z^(1)及びZ^(2)が同時に単結合になることはない。X^(1)は、2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基のうちいずれかの炭化水素基であるか、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-COO-、-CO-、-NHCO-若しくは-S-を有する2価の基であるか、又は、当該炭化水素基に置換基としてハロゲン原子若しくはアルコキシ基が導入された2価の基である。m^(1)及びm^(2)は、それぞれ独立に0?4の整数であり、nは0又は1である。但し、X^(1)が-CH=CH-Ph-CH=CH-であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合、及び、X^(1)が-CH=CH-であってZ^(1)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)であってZ^(2)が単結合であってnが0である場合を除く。R^(9),R^(10)が複数存在する場合、複数のR^(9),R^(10)は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項9に、「テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、下記式(d)で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られる重合体。 (式(d)中、R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数1?20のアルケニル基、又は炭素数1?20のアルキル基若しくはアルケニル基に置換基が導入された1価の基である。R^(9)及びR^(10)は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又は炭素数1?6のアルキル基若しくはアルコキシ基である。Z^(1)及びZ^(2)は、それぞれ独立に、単結合、-O-、*-COO-、*-OCO-、-CO-、*-NHCO-、*-CONH-又は*-O-CH_(2)-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である。但し、Z^(1)及びZ^(2)が同時に単結合になることはない。X^(1)は、2価の有機基である。m^(1)及びm^(2)は、それぞれ独立に0?4の整数であり、nは1である。但し、X^(1)が-CH=CH-Ph-CH=CH-であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合を除く。R^(9),R^(10)が複数存在する場合、複数のR^(9),R^(10)は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)」とあるのを、「テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、下記式(d)で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られる重合体。 (式(d)中、R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数1?20のアルケニル基、又は炭素数1?20のアルキル基若しくはアルケニル基に置換基が導入された1価の基である。R^(9)及びR^(10)は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又は炭素数1?6のアルキル基若しくはアルコキシ基である。Z^(1)及びZ^(2)は、それぞれ独立に、単結合、-O-、*-COO-、*-OCO-、-CO-、*-NHCO-、*-CONH-又は*-O-CH_(2)-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である。但し、Z^(1)及びZ^(2)が同時に単結合になることはない。X^(1)は、2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基のうちいずれかの炭化水素基であるか、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-COO-、-CO-、-NHCO-若しくは-S-を有する2価の基であるか、又は、当該炭化水素基に置換基としてハロゲン原子若しくはアルコキシ基が導入された2価の基である。m^(1)及びm^(2)は、それぞれ独立に0?4の整数であり、nは1である。但し、X^(1)が-CH=CH-Ph-CH=CH-であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合を除く。R^(9),R^(10)が複数存在する場合、複数のR^(9),R^(10)は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項10に、「下記式(d)で表される化合物。 (式(d)中、R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数1?20のアルケニル基、又は炭素数1?20のアルキル基若しくはアルケニル基に置換基が導入された1価の基である。R^(9)及びR^(10)は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又は炭素数1?6のアルキル基若しくはアルコキシ基である。Z^(1)及びZ^(2)は、それぞれ独立に、単結合、-O-、*-COO-、*-OCO-、-CO-、*-NHCO-、*-CONH-又は*-O-CH_(2)-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である。但し、Z^(1)及びZ^(2)が同時に単結合になることはない。X^(1)は、2価の有機基である。m^(1)及びm^(2)は、それぞれ独立に0?4の整数であり、nは1である。但し、X^(1)が-CH=CH-Ph-CH=CH-であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合を除く。R^(9),R^(10)が複数存在する場合、複数のR^(9),R^(10)は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)」とあるのを、「下記式(d)で表される化合物。 (式(d)中、R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数1?20のアルケニル基、又は炭素数1?20のアルキル基若しくはアルケニル基に置換基が導入された1価の基である。R^(9)及びR^(10)は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又は炭素数1?6のアルキル基若しくはアルコキシ基である。Z^(1)及びZ^(2)は、それぞれ独立に、単結合、-O-、*-COO-、*-OCO-、-CO-、*-NHCO-、*-CONH-又は*-O-CH_(2)-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である。但し、Z^(1)及びZ^(2)が同時に単結合になることはない。X^(1)は、2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基のうちいずれかの炭化水素基であるか、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-COO-、-CO-、-NHCO-若しくは-S-を有する2価の基であるか、又は、当該炭化水素基に置換基としてハロゲン原子若しくはアルコキシ基が導入された2価の基である。m^(1)及びm^(2)は、それぞれ独立に0?4の整数であり、nは1である。但し、X^(1)が-CH=CH-Ph-CH=CH-であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合、及び、X^(1)が炭素数2?10のアルカンジイル基であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合を除く。R^(9),R^(10)が複数存在する場合、複数のR^(9),R^(10)は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)」に訂正する。 本件訂正前の請求項2ないし8は、本件訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正前の請求項1ないし8は、一群の請求項である。 よって、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求されている。 2 訂正の適否についての当審の判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の式(d)のX^(1)について、「2価の有機基である」と記載されていたものを、「2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基のうちいずれかの炭化水素基であるか、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-COO-、-CO-、-NHCO-若しくは-S-を有する2価の基であるか、又は、当該炭化水素基に置換基としてハロゲン原子若しくはアルコキシ基が導入された2価の基である」と記載するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)には、「X^(1)は、2価の有機基であり、例えば2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基、並びにこれらの炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-COO-、-CO-、-NHCO-、-S-等を有する2価の基、及び当該炭化水素基に例えばハロゲン原子若しくはアルコキシ基等の置換基が導入された2価の基などが挙げられる。」と記載されている(【0022】)から、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項9の式(d)の X^(1)について、「2価の有機基である」と記載されていたものを、「2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基のうちいずれかの炭化水素基であるか、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-COO-、-CO-、-NHCO-若しくは-S-を有する2価の基であるか、又は、当該炭化水素基に置換基としてハロゲン原子若しくはアルコキシ基が導入された2価の基である」と記載するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、上記(1)で述べたものと同様の理由により、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項10の式(d)の X^(1)について、「2価の有機基である」と記載されていたものを、「2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基のうちいずれかの炭化水素基であるか、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-COO-、-CO-、-NHCO-若しくは-S-を有する2価の基であるか、又は、当該炭化水素基に置換基としてハロゲン原子若しくはアルコキシ基が導入された2価の基である」と記載する(以下、「訂正事項3-1」という。)とともに、訂正前の式(d)において、X^(1)が炭素数2?10のアルカンジイル基であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合を除くこととした(以下、「訂正事項3-2」という。)ものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項3-1は、上記(1)で述べたものと同様の理由により、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、訂正事項3-2は、式(d)で表される化合物について、「X^(1)が炭素数2?10のアルカンジイル基であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合」を除くものであって、当業者によって、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項3-1及び3-2が、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。 3 まとめ したがって、訂正事項1ないし3に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第9項において準用する同法126条第5項及び第6項に適合するものであるから、結論のとおり、本件訂正を認める。 第3 本件発明 第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?10に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明10」という。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 【請求項1】 テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、下記式(d)で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤。 (式(d)中、R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数1?20のアルケニル基、又は炭素数1?20のアルキル基若しくはアルケニル基に置換基が導入された1価の基である。R^(9)及びR^(10)は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又は炭素数1?6のアルキル基若しくはアルコキシ基である。Z^(1)及びZ^(2)は、それぞれ独立に、単結合、-O-、*-COO-、*-OCO-、-CO-、*-NHCO-、*-CONH-又は*-O-CH_(2)-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である。但し、Z^(1)及びZ^(2)が同時に単結合になることはない。X^(1)は、2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基のうちいずれかの炭化水素基であるか、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-COO-、-CO-、-NHCO-若しくは-S-を有する2価の基であるか、又は、当該炭化水素基に置換基としてハロゲン原子若しくはアルコキシ基が導入された2価の基である。m^(1)及びm^(2)は、それぞれ独立に0?4の整数であり、nは0又は1である。但し、X^(1)が-CH=CH-Ph-CH=CH-であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合、及び、X^(1)が-CH=CH-であってZ^(1)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)であってZ^(2)が単結合であってnが0である場合を除く。R^(9),R^(10)が複数存在する場合、複数のR^(9),R^(10)は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)」 【請求項2】 前記nが1である、請求項1に記載の液晶配向剤。 【請求項3】 前記X^(1)は、炭素数1?18のアルカンジイル基又は-[(CH_(2))_(2)O]a-(CH_(2))_(2)-(但し、aは1?3の整数)である、請求項1又は2に記載の液晶配向剤。 【請求項4】 前記重合体が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られる重合体であり、 該テトラカルボン酸二無水物として、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸2:3,5:6-二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸2:4,6:8-二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1?3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。 【請求項5】 請求項1?4のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。 【請求項6】 請求項5に記載の液晶配向膜を備える液晶表示素子。 【請求項7】 請求項5に記載の液晶配向膜を備える位相差フィルム。 【請求項8】 請求項1?4のいずれか一項に記載の液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、 前記塗膜に光照射する工程と、 前記光照射した後の塗膜上に重合性液晶を塗布して硬化させる工程と、を含む位相差フィルムの製造方法。 【請求項9】 テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、下記式(d)で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られる重合体。 (式(d)中、R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数1?20のアルケニル基、又は炭素数1?20のアルキル基若しくはアルケニル基に置換基が導入された1価の基である。R^(9)及びR^(10)は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又は炭素数1?6のアルキル基若しくはアルコキシ基である。Z^(1)及びZ^(2)は、それぞれ独立に、単結合、-O-、*-COO-、*-OCO-、-CO-、*-NHCO-、*-CONH-又は*-O-CH_(2)-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である。但し、Z^(1)及びZ^(2)が同時に単結合になることはない。X^(1)は、2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基のうちいずれかの炭化水素基であるか、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-COO-、-CO-、-NHCO-若しくは-S-を有する2価の基であるか、又は、当該炭化水素基に置換基としてハロゲン原子若しくはアルコキシ基が導入された2価の基である。m^(1)及びm^(2)は、それぞれ独立に0?4の整数であり、nは1である。但し、X^(1)が-CH=CH-Ph-CH=CH-であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合を除く。R^(9),R^(10)が複数存在する場合、複数のR^(9),R^(10)は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)」 【請求項10】 下記式(d)で表される化合物。 (式(d)中、R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数1?20のアルケニル基、又は炭素数1?20のアルキル基若しくはアルケニル基に置換基が導入された1価の基である。R^(9)及びR^(10)は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又は炭素数1?6のアルキル基若しくはアルコキシ基である。Z^(1)及びZ^(2)は、それぞれ独立に、単結合、-O-、*-COO-、*-OCO-、-CO-、*-NHCO-、*-CONH-又は*-O-CH_(2)-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である。但し、Z^(1)及びZ^(2)が同時に単結合になることはない。X^(1)は、2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基のうちいずれかの炭化水素基であるか、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-COO-、-CO-、-NHCO-若しくは-S-を有する2価の基であるか、又は、当該炭化水素基に置換基としてハロゲン原子若しくはアルコキシ基が導入された2価の基である。m^(1)及びm^(2)は、それぞれ独立に0?4の整数であり、nは1である。但し、X^(1)が-CH=CH-Ph-CH=CH-であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合、及び、X^(1)が炭素数2?10のアルカンジイル基であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合を除く。R^(9),R^(10)が複数存在する場合、複数のR^(9),R^(10)は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。) 第4 平成30年10月23日付け取消理由通知書(以下、「取消理由通知書」という。)で通知した取消理由について 1 取消理由通知書で通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 (取消理由1)本件特許の請求項1、2、4-6、9、10に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本件特許の請求項1、2、4-6、9、10に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項7に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項8に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、本件特許の請求項1、2、4-10に係る発明の特許は、同条113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (取消理由2)本件特許の請求項10に係る発明は、引用文献3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、当該発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (取消理由3)本件特許は、特許請求の範囲の請求項1、2、4-10の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (取消理由4)本件特許は、特許請求の範囲の請求項1、2、4-10の記載が特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (取消理由5)本件特許は、特許請求の範囲の請求項1、2、4-10の記載が特許法36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、同法113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 2 当審の判断 (1)取消理由1について ア 甲1に記載された発明 甲1には、請求の範囲から、以下の発明(以下、「甲1-1(1)発明」ないし「甲1-1(3)発明」という。)が記載されていると認められる。 甲1-1(1)発明 「ジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸一無水物、テトラカルボン酸、ジカルボン酸ジアルキルエステル、又はジカルボン酸クロライドジアルキルエステルであるテトラカルボン酸誘導体を反応させて得られるポリイミド前駆体またはポリイミドのいずれかを含有する液晶配向処理剤であって、上記ジアミン成分が下記式(1)で表されるジアミンを含有する液晶配向処理剤。 (式(1)中、Xは、酸素原子または硫黄原子であり、Y^(1)及びY^(2)はそれぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-OCO-、又は-COO-であり、R^(1)及びR^(2)はそれぞれ独立して炭素数1?3のアルキレン基である。)」 甲1-1(2)発明 「ジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸一無水物、テトラカルボン酸、ジカルボン酸ジアルキルエステル、又はジカルボン酸クロライドジアルキルエステルであるテトラカルボン酸誘導体を反応させて得られるポリイミド前駆体またはポリイミドであって、上記ジアミン成分が式(1)で表されるを含有する、ポリイミド前駆体またはポリイミド。」(式(1)は省略) 甲1-3(3)発明 「式(1)で表されるジアミン。」 (式(1)は省略) また、甲1には、【0107】?【0135】(特に、実施例1?3、5、7、10、13、14)から、以下の発明(以下、「甲1-2(1)発明」ないし「甲1-2(3)発明」という。)が記載されていると認められる。 甲1-2(1)発明 「1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアと、パラフェニレンジアミンと、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物から得られたポリアミック酸、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアと、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物から得られたポリアミック酸、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアと、ピロメリット酸二無水物から得られたポリアミック酸、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアと、ビシクロ[3,3,0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物から得られたポリアミック酸、1-(4-アミノベンジル)-3-(4-アミノフェネチル)ウレアと、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物から得られたポリアミック酸、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアと、1,5’-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタンと、1,3-ジカルボキシメトキシ-2,4-ビス(クロロカルボニル)シクロブタンから得られたポリアミック酸エステル、又は、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアと、1,5’-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタンと、1,3-ジカルボメトキシ-2,4-ビス(クロロカルボニル)シクロブタンと、2,5-ジカルボキシメトキシテレフタル酸ジクロライドから得られたポリアミック酸エステルを含む液晶配向処理剤。」 甲1-2(2)発明 「1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアと、パラフェニレンジアミンと、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物から得られたポリアミック酸、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアと、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物から得られたポリアミック酸、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアと、ピロメリット酸二無水物から得られたポリアミック酸、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアと、ビシクロ[3,3,0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物から得られたポリアミック酸、1-(4-アミノベンジル)-3-(4-アミノフェネチル)ウレアと、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物から得られたポリアミック酸、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアと、1,5’-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタンと、1,3-ジカルボキシメトキシ-2,4-ビス(クロロカルボニル)シクロブタンから得られたポリアミック酸エステル、又は、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアと、1,5’-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタンと、1,3-ジカルボメトキシ-2,4-ビス(クロロカルボニル)シクロブタンと、2,5-ジカルボキシメトキシテレフタル酸ジクロライドから得られたポリアミック酸エステル。」 甲1-2(3)発明 「1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレア、又は、1-(4-アミノベンジル)-3-(4-アミノフェネチル)ウレア。」 イ 対比、判断 (ア)本件発明1について a 本件発明1と甲1-1(1)発明とを対比する。 甲1-1(1)発明の「ジアミン成分」は、本件発明1の「ジアミン」に相当する。 甲1-1(1)発明の「テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸一無水物、テトラカルボン酸、ジカルボン酸ジアルキルエステル、又はジカルボン酸クロライドジアルキルエステルであるテトラカルボン酸誘導体」は、本件発明1の「テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物」に相当する。 甲1-1(1)発明の「ポリイミド前駆体またはポリイミドのいずれか」は、本件発明1の「ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体」に相当する。 甲1-1(1)発明の「液晶配向処理剤」は、本件発明1の「液晶配向剤」に相当する。 してみると、本件発明1と、甲1-1(1)発明とは、 「テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、ジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 「ジアミン」につき、本件発明1では、式(d)で表されるジアミンを含むのに対して、甲1-1(1)発明では、式(1)で表されるジアミンを含有する点。 上記相違点1について、検討する。 本件発明1の式(d)において、X^(1)は、「2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基のうちいずれかの炭化水素基であるか、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-COO-、-CO-、-NHCO-若しくは-S-を有する2価の基であるか、又は、当該炭化水素基に置換基としてハロゲン原子若しくはアルコキシ基が導入された2価の基」(以下、これらの基を、「2価の基X^(1)」という。)である。 これに対して、甲1-1(1)発明の式(1)において、X、Y^(1)、Y^(2)、R^(1)及びR^(2)が、甲1-1(1)発明で定義された基のうちどのようなものであっても、本件発明1の式(d)において、X^(1)が「2価の基X^(1)」である構造にはなり得ない。 してみると、相違点1は実質的な相違点である。 また、甲1のいずれの箇所をみても、甲1-1(1)発明において、式(1)のジアミンの構造を、「2価の基X^(1)」を有する本件発明1の式(d)で表される構造のものとすることについて、何ら記載も示唆もされていない。 してみると、相違点1に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明1は、甲1-1(1)発明ではなく、また、甲1-1(1)発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 b 本件発明1と甲1-2(1)発明とを対比する。 甲1-2(1)発明の「1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレア」「パラフェニレンジアミン」、「1-(4-アミノベンジル)-3-(4-アミノフェネチル)ウレア」、及び、「1,5’-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン」は、本件発明1の「ジアミン」に相当する。 甲1-2(1)発明の「1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物」、「ピロメリット酸二無水物」、ビシクロ[3,3,0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物」、「1,3-ジカルボキシメトキシ-2,4-ビス(クロロカルボニル)シクロブタン」、及び、「2,5-ジカルボキシメトキシテレフタル酸ジクロライド」は、本件発明1の「テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物」に相当する。 甲1-2(1)発明の「ポリアミック酸」及び「ポリアミック酸エステル」は、本件発明1の「ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体」に相当する。 甲1-2(1)発明の「液晶配向処理剤」は、本件発明1の「液晶配向剤」に相当する。 してみると、本件発明1と甲1-2(1)発明とは、 「テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、ジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点2) 「ジアミン」につき、本件発明1では、式(d)で表されるジアミンを含むのに対して、甲1-2(1)発明では、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレア、パラフェニレンジアミン、1-(4-アミノベンジル)-3-(4-アミノフェネチル)ウレア、又は、1,5’-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタンである点。 上記相違点2について検討する。 甲1-2(1)発明の、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレア、パラフェニレンジアミン、1-(4-アミノベンジル)-3-(4-アミノフェネチル)ウレア、1,5’-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタンはいずれも、「2価の基X^(1)」を有する本件発明1の式(d)で表されるものではない。 よって、相違点2は実質的な相違点である。 また、甲1のいずれの箇所をみても、甲1-2(1)発明のジアミンを、「2価の基X^(1)」を有する本件発明1の式(d)で表されるものとすることについて記載も示唆もされていない。 してみると、相違点2に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明1は、甲1-2(1)発明ではなく、また、甲1-2(1)発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 c 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (イ)本件発明2、4ないし8について 本件発明2、4ないし8は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものである。 そして、上記(ア)で述べたとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明2、4ないし8も、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ)本件発明9について a 本件発明9と甲1-1(2)発明とを対比する。 甲1-1(2)発明の「テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸一無水物、テトラカルボン酸、ジカルボン酸ジアルキルエステル、又はジカルボン酸クロライドジアルキルエステルであるテトラカルボン酸誘導体」は、本件発明9の「テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物」に相当する。 甲1-1(2)発明の「ジアミン成分と」、「テトラカルボン酸誘導体を反応させて得られるポリイミド前駆体またはポリイミド」は、本件発明9の「テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物」と「ジアミンとを反応させて得られる」「重合体」に相当する。 してみると、本件発明9と、甲1-1(2)発明とは、 「テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、ジアミンとを反応させて得られる重合体。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点3) 「ジアミン」につき、本件発明9では、式(d)で表されるジアミンを含むのに対して、甲1-1(2)発明では、式(1)で表されるジアミンを含有する点。 相違点3について検討する。 上記(ア)aの相違点1についての検討で述べたものと同様の理由により、相違点3は実質的な相違点であり、また、相違点3に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明9は、甲1-1(2)発明ではなく、また、甲1-1(2)発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 b 本件発明9と甲1-2(2)発明とを対比する。 甲1-2(2)発明の「1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレア」「パラフェニレンジアミン」、「1-(4-アミノベンジル)-3-(4-アミノフェネチル)ウレア」、及び、「1,5’-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン」は、本件発明1の「ジアミン」に相当し、甲1-2(2)発明の「1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物」、「ピロメリット酸二無水物」、ビシクロ[3,3,0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物」、「1,3-ジカルボキシメトキシ-2,4-ビス(クロロカルボニル)シクロブタン」、及び、「2,5-ジカルボキシメトキシテレフタル酸ジクロライド」は、本件発明1の「テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物」に相当し、これらから得られた、甲1-2(2)発明の「ポリアミック酸」及び「ポリアミック酸エステル」は、本件発明9の「重合体」に相当する。 してみると、本件発明9と、甲1-2(2)発明とは、 「テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、ジアミンとを反応させて得られる重合体。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点4) 「ジアミン」につき、本件発明9では、式(d)で表されるジアミンを含むのに対して、甲1-2(2)発明では、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレア、パラフェニレンジアミン、1-(4-アミノベンジル)-3-(4-アミノフェネチル)ウレア、又は、1,5’-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタンである点。 相違点4について検討する。 上記(ア)bの相違点2についての検討で述べたものと同様の理由により、相違点4は実質的な相違点であり、また、相違点4に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明9は、甲1-2(2)発明ではなく、また、甲1-2(2)発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 c 以上のとおりであるから、本件発明9は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (エ)本件発明10について a 本件発明10と甲1-1(3)発明とを対比する。 甲1-3発明の「ジアミン」は化合物であるといえるから、両者は、 「化合物」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点5) 「化合物」につき、本件発明10では、式(d)で表されるものであるのに対して、甲1-3発明では、式(1)で表されるものである点。 相違点5について検討する。 上記(ア)aの相違点1についての検討で述べたものと同様の理由により、相違点5は実質的な相違点であり、また、相違点5に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明10は、甲1-1(3)発明ではなく、また、甲1-1(3)発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 b 本件発明10と甲1-2(3)発明とを対比する。 甲1-2(3)発明の「1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレア」及び「1-(4-アミノベンジル)-3-(4-アミノフェネチル)ウレア」はいずれも化合物であるといえるから、両者は、 「化合物」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点6) 「化合物」につき、本件発明10では、式(d)で表されるものであるのに対して、甲1-2(3)発明では、「1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレア」、「1-(4-アミノベンジル)-3-(4-アミノフェネチル)ウレア」である点。 相違点6について検討する。 上記(ア)bの相違点2についての検討で述べたものと同様の理由により、相違点6は実質的な相違点であり、また、相違点6に係る事項は、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明10は、甲1-2(3)発明ではなく、また、甲1-2(3)発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 c 以上のとおりであるから、本件発明10は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 小括 よって、取消理由1は理由がない。 (2)取消理由2について ア 引用文献3に記載された発明 引用文献3には、17欄50行?18欄48行から、以下の発明(以下、「引用文献3発明」という。)が記載されていると認められる。 引用文献3発明 「式 である化合物。」 イ 対比・判断 本件発明10と引用文献3発明とを対比すると、両者は、 「化合物」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点7) 「化合物」につき、本件発明10では、式(d)で表されるものであるのに対して、引用文献3発明では、引用文献3発明の式で表されるものである点。 相違点7について検討する。 本件発明10において、式(d)で表されるジアミンは、X^(1)が炭素数2?10のアルカンジイル基であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合を除くものである。 これに対して、引用文献3発明の式で表される化合物は、式(d)において、X^(1)が炭素数4のアルカンジイル基であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)の化合物であり、本件発明10において、除かれたものである。 してみると、上記相違点7は実質的な相違点である。 よって、本件発明10は、引用文献3発明ではない。 ウ 小括 よって、取消理由2は理由がない。 (3)取消理由3について ア 取消理由3は、具体的には、本件明細書の発明の詳細な説明が、本件訂正前の請求項1、2、4?8、9及び10について、式(d)におけるX^(1)が、「2価の基X^(1)」以外の2価の有機基である場合についても、それらの請求項に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえないというものである。 イ これに対して、本件訂正により、式(d)において、X^(1)は「2価の基X^(1)」であることが特定されたから、取消理由3は、解消した。 ウ よって、取消理由3は、理由がない。 (4)取消理由4について ア 取消理由4は、具体的には、本件訂正前の請求項1、2、4?10は、式(d)におけるX^(1)が、「2価の基X^(1)」以外の2価の有機基であり得るから、これらの請求項は、当業者がこれらの請求項に係る発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものではないというものである。 イ これに対して、本件訂正により、式(d)において、X^(1)は「2価の基X^(1)」であることが特定されたから、取消理由4は、解消した。 ウ よって、取消理由4は、理由がない。 (5)取消理由5について ア 取消理由5は、具体的には、本件訂正前の請求項1、2、4?10において、「X^(1)は、2価の有機基である。」なる記載の「2価の有機基」がどのようなものを包含し、どのようなものを包含しないのか明らかでないから、これらの請求項の記載は明確でないというものである。 イ これに対して、本件訂正により、式(d)において、X^(1)は「2価の基X^(1)」であることが特定され、X^(1)は明確になったから、取消理由5は、解消した。 ウ よって、取消理由5は理由がない。 3 小括 以上のとおりであるから、取消理由1ないし5は、いずれも理由がない。 第5 申立書に記載された申立理由について 1 申立書に記載された申立理由の概要は、以下のとおりである。 (申立理由1)本件特許の請求項1、2、4-7、9、10に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本件特許の請求項1、2、4-10に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、本件特許の請求項1、2、4-10に係る発明の特許は、同条113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (申立理由2)本件特許は、特許請求の範囲の請求項1-10の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (申立理由3)本件特許は、特許請求の範囲の請求項1-10の記載が特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (申立理由4)本件特許は、特許請求の範囲の請求項1-10の記載が特許法36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、同法113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 申立理由1ないし4について検討する。 (1)申立理由1について 上記第4 2(1)で述べたとおり、本件発明1、2、4?10は、甲1に記載された発明ではない。 また、上記第4 2(1)で述べたとおり、本件発明1と、甲1-1(1)発明及び甲1-2(1)発明、本件発明9と甲1-1(2)発明及び甲1-2(2)発明、並びに、本件発明10と甲1-1(3)発明及び甲1-2(3)発明とは、「2価の基X^(1)」を有する式(d)のジアミンに係る点において相違し、この点に係る事項は当業者が容易に想到し得たものではない。 さらに、甲2のいずれの箇所をみても、「2価のX^(1)」有する式(d)のジアミンについては何ら記載も示唆もされていない。 してみると、本件発明1、2、4?10は、甲1に記載された発明と甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、申立理由1は、理由がない。 (2)申立理由2について 申立理由2につき、申立人の主張は以下のとおりである。 式(d)の化合物の各置換基は極めて多様な化学構造からなっており、これらの多様な化学構造を含む化合物群が液晶配向剤として有効であると認定することは、極めて困難であるから、本件発明1ないし10に係る発明について、発明の詳細な説明が、これらの発明を当業者が実施できるように記載されているとは認められない(申立書15頁14行?34行)。 しかしながら、本件訂正により、式(d)において、X^(1)は、「2価の基X^(1)」に特定された。そして、このような特定を有する式(d)で表されるジアミンは、互いに類似の化学構造を有するものと解され、これを用いた本件発明1ないし10について、本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者は、それらの発明を実施することができるものといえる。 また、「2価の基X^(1)」を有する式(d)で表されるジアミンが、本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者が本件発明1ないし10を実施できることができない程までに、極めて多様な化学構造からなっているという格段の根拠もない。 よって、申立理由2は、理由がない。 (3)申立理由3について 申立理由3につき、申立人の主張は以下のとおりである。 式(d)で表されるジアミン、これを用いた重合体および液晶配向剤は、極めて多様な置換基を含む多様な化学構造を含むものであり、これらが全て本件発明の「良好な液晶配向性を発現可能な液晶配向膜を形成できるとともに、高い電圧保持率、耐熱性及び残像特性と言った液晶表示素子に要求される各種特性をバランスよく発現させることができる液晶配向剤を提供すること、また、液晶配向性が良好であり、かつ基板配向剤を提供すること」という課題を解決できるとはいえないから、本件発明1ないし10は、発明の詳細な説明に記載されたものではない(申立書15頁37行?16頁11行)。 しかしながら、本件訂正により、式(d)において、X^(1)は、「2価の基X^(1)」に特定された。そして、このような特定を有する式(d)で表されるジアミンは、互いに類似の化学構造を有するものと解され、そうであれば、実施例で具体的に上記課題が解決できることが開示された以外の式(d)で表されるジアミンを用いても、上記課題が解決できると当業者が認識できるものといえる。 また、「2価の基X^(1)」を有する式(d)で表されるジアミンが、当業者が上記課題を解決できると認識できない程までに、極めて多様な化学構造を含むという格段の根拠もない。 よって、申立理由3は、理由がない。 (4)申立理由4について 申立理由4につき、申立人の主張は以下のとおりである。 本件請求項1、9及び10の、「2価の有機基」が如何なる置換基を意味するのか、また同様な構造の置換基を含みうるのか判断できず、不明であり、段落【0022】の説明をもってしても、不明確である(申立書16頁12行?41行)。 しかしながら、本件訂正により、式(d)において、X^(1)は、「2価の基X^(1)」に特定され、明確になった。 よって、申立理由4は、理由がない。 2 小括 よって、申立理由1ないし4は、いずれも理由がない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、下記式(d)で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤。 【化1】 (式(d)中、R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数1?20のアルケニル基、又は炭素数1?20のアルキル基若しくはアルケニル基に置換基が導入された1価の基である。R^(9)及びR^(10)は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又は炭素数1?6のアルキル基若しくはアルコキシ基である。Z^(1)及びZ^(2)は、それぞれ独立に、単結合、-O-、*-COO-、*-OCO-、-CO-、*-NHCO-、*-CONH-又は*-O-CH_(2)-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である。但し、Z^(1)及びZ^(2)が同時に単結合になることはない。X^(1)は、2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基のうちいずれかの炭化水素基であるか、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-COO-、-CO-、-NHCO-若しくは-S-を有する2価の基であるか、又は、当該炭化水素基に置換基としてハロゲン原子若しくはアルコキシ基が導入された2価の基である。m^(1)及びm^(2)は、それぞれ独立に0?4の整数であり、nは0又は1である。但し、X^(1)が-CH=CH-Ph-CH=CH-であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合、及び、X^(1)が-CH=CH-であってZ^(1)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)であってZ^(2)が単結合であってnが0である場合を除く。R^(9),R^(10)が複数存在する場合、複数のR^(9),R^(10)は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。) 【請求項2】 前記nが1である、請求項1に記載の液晶配向剤。 【請求項3】 前記X^(1)は、炭素数1?18のアルカンジイル基又は-[(CH_(2))_(2)O]a-(CH_(2))_(2)-(但し、aは1?3の整数)である、請求項1又は2に記載の液晶配向剤。 【請求項4】 前記重合体が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られる重合体であり、 該テトラカルボン酸二無水物として、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸2:3,5:6-二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸2:4,6:8-二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1?3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。 【請求項5】 請求項1?4のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。 【請求項6】 請求項5に記載の液晶配向膜を備える液晶表示素子。 【請求項7】 請求項5に記載の液晶配向膜を備える位相差フィルム。 【請求項8】 請求項1?4のいずれか一項に記載の液晶配向剤を基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、 前記塗膜に光照射する工程と、 前記光照射した後の塗膜上に重合性液晶を塗布して硬化させる工程と、を含む位相差フィルムの製造方法。 【請求項9】 テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルジクロリド及びテトラカルボン酸ジエステル化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、下記式(d)で表される化合物を含むジアミンとを反応させて得られる重合体。 【化2】 (式(d)中、R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数1?20のアルケニル基、又は炭素数1?20のアルキル基若しくはアルケニル基に置換基が導入された1価の基である。R^(9)及びR^(10)は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又は炭素数1?6のアルキル基若しくはアルコキシ基である。Z^(1)及びZ^(2)は、それぞれ独立に、単結合、-O-、*-COO-、*-OCO-、-CO-、*-NHCO-、*-CONH-又は*-O-CH_(2)-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である。但し、Z^(1)及びZ^(2)が同時に単結合になることはない。X^(1)は、2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基のうちいずれかの炭化水素基であるか、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-COO-、-CO-、-NHCO-若しくは-S-を有する2価の基であるか、又は、当該炭化水素基に置換基としてハロゲン原子若しくはアルコキシ基が導入された2価の基である。m^(1)及びm^(2)は、それぞれ独立に0?4の整数であり、nは1である。但し、X^(1)が-CH=CH-Ph-CH=CH-であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合を除く。R^(9),R^(10)が複数存在する場合、複数のR^(9),R^(10)は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。) 【請求項10】 下記式(d)で表される化合物。 【化3】 (式(d)中、R^(1)?R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?20のアルキル基、炭素数1?20のアルケニル基、又は炭素数1?20のアルキル基若しくはアルケニル基に置換基が導入された1価の基である。R^(9)及びR^(10)は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又は炭素数1?6のアルキル基若しくはアルコキシ基である。Z^(1)及びZ^(2)は、それぞれ独立に、単結合、-O-、*-COO-、*-OCO-、-CO-、*-NHCO-、*-CONH-又は*-O-CH_(2)-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である。但し、Z^(1)及びZ^(2)が同時に単結合になることはない。X^(1)は、2価の鎖状炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基のうちいずれかの炭化水素基であるか、当該炭化水素基の炭素-炭素結合間に-O-、-COO-、-CO-、-NHCO-若しくは-S-を有する2価の基であるか、又は、当該炭化水素基に置換基としてハロゲン原子若しくはアルコキシ基が導入された2価の基である。m^(1)及びm^(2)は、それぞれ独立に0?4の整数であり、nは1である。但し、X^(1)が-CH=CH-Ph-CH=CH-であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合、及びX^(1)が炭素数2?10のアルカンジイル基であってZ^(1)及びZ^(2)が*-COO-(但し、「*」はX^(1)との結合手を示す。)である場合を除く。R^(9),R^(10)が複数存在する場合、複数のR^(9),R^(10)は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-03-19 |
出願番号 | 特願2013-180237(P2013-180237) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YAA
(G02F)
P 1 651・ 537- YAA (G02F) P 1 651・ 121- YAA (G02F) P 1 651・ 113- YAA (G02F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 廣田 かおり |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
海老原 えい子 岡崎 美穂 |
登録日 | 2017-12-22 |
登録番号 | 特許第6260150号(P6260150) |
権利者 | JSR株式会社 |
発明の名称 | 液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子、位相差フィルム、位相差フィルムの製造方法、重合体及び化合物 |
代理人 | 日野 京子 |
代理人 | 日野 京子 |
代理人 | 山田 強 |
代理人 | 廣田 美穂 |
代理人 | 廣田 美穂 |
代理人 | 山田 強 |