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審決分類 審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  F02M
審判 一部申し立て 判示事項別分類コード:857  F02M
審判 一部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件  F02M
審判 一部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更  F02M
審判 一部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  F02M
審判 一部申し立て 2項進歩性  F02M
管理番号 1351420
異議申立番号 異議2017-701211  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-21 
確定日 2019-03-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6151336号発明「燃料噴射装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6151336号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。 特許第6151336号の請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6151336号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成23年3月10日に出願した特願2011-52347号(以下「原出願」という。)の一部を平成26年4月23日に新たな特許出願とした特願2014-88696号の一部をさらに平成27年11月25日に新たな特許出願としたものであって、平成29年6月2日にその特許権の設定登録がされ、平成29年6月21日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対して特許異議の申立てがあり、次のとおりに手続が行われた。

・平成29年12月21日 :特許異議申立人金田政毅(以下「特許異 議申立人」という。)による請求項1な いし4、6、7、10及び11に係る特 許に対する特許異議の申立て
・平成30年4月26日付け :取消理由通知書
・平成30年7月6日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出
・平成30年7月27日付け :訂正請求があった旨の通知
・平成30年8月29日 :特許異議申立人による意見書の提出
・平成30年10月10日 :特許異議申立人による上申書の提出
・平成30年11月8日付け :取消理由通知書(決定の予告)
・平成31年1月11日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の 提出(以下、当該訂正請求書による訂正 の請求を「本件訂正請求」という。)
・平成31年2月13日 :特許異議申立人による上申書の提出

なお、本件訂正請求がされたため、平成30年7月6日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされる。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし6のとおりである(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成されることを特徴とする燃料噴射装置。」
とあるのを、
「弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状であることを特徴とする燃料噴射装置。」
に訂正する(下線は、訂正箇所を示す。以下同様)。
なお、請求項1の記載を引用する請求項2ないし7、10及び11も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1又は2に記載の燃料噴射装置において、
前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状であることを特徴とする燃料噴射装置。」
とあるのを、
「請求項1又は2に記載の燃料噴射装置において
前記弁体は弁ニードル部と前記弁ニードル部よりも大きな径を有する拡径部とを有し、
前記可動子は、前記弁体の前記拡径部の規制部と協働して開閉弁動作を行わせるように構成され、
前記内径拡大部は、前記拡径部の外径側に位置するとともに、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記拡径部の前記規制部と反対側の端面よりも上流側において形成されることを特徴とする燃料噴射装置。」
に訂正する。
なお、請求項5の記載を引用する請求項10及び11も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項1?7の何れかに記載の燃料噴射装置において、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、当該孔の軸方向の半分以上の範囲において前記反対側の端面に向かって内径が拡大する内径拡大部が形成されることを特徴とする燃料噴射装置。」
とあるのを、
「弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、当該孔の軸方向の半分以上の範囲において前記反対側の端面に向かって内径が拡大する内径拡大部が形成されることを特徴とする燃料噴射装置。」
に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に、
「請求項1?7の何れかに記載の燃料噴射装置において、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、前記反対側の端面に向かって内径が拡大し、ほぼ直線形状のテーパ形状である内径拡大部が形成されることを特徴とする燃料噴射装置。」
とあるのを、
「弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、前記反対側の端面に向かって内径が拡大し、ほぼ直線形状のテーパ形状である内径拡大部が形成されることを特徴とする燃料噴射装置。」
に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に、
「請求項1?7の何れかに記載の燃料噴射装置において、
前記弁体は、前記可動子の前記弁体に対する開弁方向の相対変位を規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記弁体よりも大きな径を有する拡径部によって形成され、
前記規制部は、前記可動子と前記磁気コアが接触し、前記可動子と前記規制部が接触した状態で、前記孔の前記内径拡大部内に位置し、
前記内径拡大部の範囲は、前記磁気コアの前記可動子側端面から前記規制部よりも上流部まで構成されている燃料噴射装置。」
とあるのを、
「請求項1?7の何れかに記載の燃料噴射装置において、
前記弁体は、前記可動子の前記弁体に対する開弁方向の相対変位を規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記弁体よりも大きな径を有する拡径部によって形成され、
前記規制部は、前記可動子と前記磁気コアが接触し、前記可動子と前記規制部が接触した状態で、前記孔の前記内径拡大部内に位置し、
前記内径拡大部の範囲は、前記磁気コアの前記可動子側端面から前記拡径部の前記規制部と反対側の端面よりも上流部まで構成されている燃料噴射装置。」
に訂正する。

(6)訂正事項6
明細書の段落【0009】に、
「具体的には以下のように構成するとよい。
(1)弁体と、前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、前記磁気コアには、燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成される。
(2)(1)において、前記弁体を閉弁方向に付勢するスプリングを備え、前記スプリングの外径は前記内径部の径よりも小さく、前記スプリングは前記内径部の内周側で支持される。
(3)(1)又は(2)において、前記大径部の内径はほぼ一定となるように形成される。
(4)(3)において、前記内径拡大部の内径は前記可動子と対向する端面に向かって次第に拡大される。
(5)(1)又は(2)において、前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状である。
(6)(1)又は(2)において、前記可動子には前記弁体が挿入される挿入孔と前記挿入孔よりも外周側に位置する燃料通路孔が形成され、前記挿入孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置するとともに、前記燃料通路孔は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部と軸方向において重なる位置に形成される。
(7)(6)において、前記燃料通路孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置することを有する。
(8)(1)?(7)の何れかにおいて、前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、当該孔の軸方向の半分以上の範囲において前記反対側の端面に向かって内径が拡大する内径拡大部が形成される。
(9)(1)?(7)の何れかにおいて、前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、前記反対側の端面に向かって内径が拡大し、ほぼ直線形状のテーパ形状である内径拡大部が形成される。」
とあるのを、
「具体的には以下のように構成するとよい。
(1)弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状である。
(2)(1)において、前記弁体を閉弁方向に付勢するスプリングを備え、前記スプリングの外径は前記内径部の径よりも小さく、前記スプリングは前記内径部の内周側で支持される。
(3)(1)又は(2)において、前記大径部の内径はほぼ一定となるように形成される。
(4)(3)において、前記内径拡大部の内径は前記可動子と対向する端面に向かって次第に拡大される。
(5)(1)又は(2)において、前記弁体は弁ニードル部と前記弁ニードル部よりも大きな径を有する拡径部とを有し、
前記可動子は、前記弁体の前記拡径部の規制部と協働して開閉弁動作を行わせるように構成され、
前記内径拡大部は、前記拡径部の外径側に位置するとともに、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記拡径部の前記規制部と反対側の端面よりも上流側において形成される。
(6)(1)又は(2)において、前記可動子には前記弁体が挿入される挿入孔と前記挿入孔よりも外周側に位置する燃料通路孔が形成され、前記挿入孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置するとともに、前記燃料通路孔は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部と軸方向において重なる位置に形成される。
(7)(6)において、前記燃料通路孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置することを有する。
(8)弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、当該孔の軸方向の半分以上の範囲において前記反対側の端面に向かって内径が拡大する内径拡大部が形成される。
(9)弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、前記反対側の端面に向かって内径が拡大し、ほぼ直線形状のテーパ形状である内径拡大部が形成される。」
に訂正する。

(7)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし11は、請求項2ないし11が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正後の請求項1ないし11は、一群の請求項として請求されている。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の「内径拡大部」について、「前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状である」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項1は、特許明細書の段落【0022】、【0023】、【0044】及び【0055】並びに特許図面の図1、図2、図10及び図15に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項5についての訂正は、「前記弁体は弁ニードル部と前記弁ニードル部よりも大きな径を有する拡径部とを有し、前記可動子は、前記弁体の前記拡径部の規制部と協働して開閉弁動作を行わせるように構成され、前記内径拡大部は、前記拡径部の外径側に位置するとともに、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記拡径部の前記規制部と反対側の端面よりも上流側において形成される」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項2は、特許明細書の段落【0014】、【0015】、【0018】、【0022】、【0023】、【0025】、【0027】、【0029】、【0043】、【0044】、【0054】及び【0055】並びに特許図面の図1、図10及び図15に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項1ないし7のいずれか一項を引用する形式であった訂正前の請求項8を、引用請求項数を削減するとともに、他の請求項を引用しない独立形式請求項に改めるものである。
よって、特許請求の範囲の減縮及び引用関係の解消を目的とし、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項1ないし7のいずれか一項を引用する形式であった訂正前の請求項9を、引用請求項数を削減するとともに、他の請求項を引用しない独立形式請求項に改めるものである。
よって、特許請求の範囲の減縮及び引用関係の解消を目的とし、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5に係る請求項10についての訂正は、訂正前に「前記規制部よりも上流部」とあるのを「前記拡径部の前記規制部と反対側の端面よりも上流部」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項5は、特許明細書の段落【0014】、【0015】、【0018】、【0022】、【0023】、【0025】、【0027】、【0029】、【0043】、【0044】、【0054】及び【0055】並びに特許図面の図1、図10及び図15に基づくものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。

(6)訂正事項6について
訂正事項6に係る明細書の段落【0009】についての訂正は、上記訂正事項1ないし5に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために明細書を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)独立して特許を受けることができるかについて
特許異議は請求項1ないし4、6、7、10及び11に対して申し立てられており、請求項5、8及び9に対しては申し立てられていないところ、請求項5、8及び9に係る訂正を含む訂正事項1ないし4は、上述のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正後の請求項5、8及び9は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定が適用されるので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで、訂正後の請求項5、8及び9について検討すると、訂正後の請求項5、8及び9は、それぞれ訂正前の請求項5、8及び9の発明特定事項を備えたものであり、他に請求項5、8及び9に係る特許を取り消すべき理由を発見しないから、訂正後の請求項5、8及び9に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

3 小括
本件訂正請求による訂正事項1ないし6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合する。
よって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。

第3 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る特許に対して、当審が平成30年11月8日付け取消理由通知書により通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る特許は同法第113条第2号により取り消されるべきものである。

引用文献1:特開2008-121679号公報
引用文献2:特開2010-159677号公報

第4 当審の判断
1 訂正発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る発明(以下、それぞれ「訂正発明1」ないし「訂正発明4」、「訂正発明6」、「訂正発明7」、「訂正発明10」及び「訂正発明11」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4、6、7、10及び11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状であることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射装置において、
前記弁体を閉弁方向に付勢するスプリングを備え、
前記スプリングの外径は前記内径部の径よりも小さく、前記スプリングは前記内径部の内周側で支持されることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料噴射装置において、
前記大径部の内径はほぼ一定となるように形成されることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料噴射装置において、
前記内径拡大部の内径は前記可動子と対向する端面に向かって次第に拡大されることを特徴とする燃料噴射装置。」

「 【請求項6】
請求項1又は2に記載の燃料噴射装置において、
前記可動子には前記弁体が挿入される挿入孔と前記挿入孔よりも外周側に位置する燃料通路孔が形成され、
前記挿入孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置するとともに、前記燃料通路孔は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部と軸方向において重なる位置に形成されることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料噴射装置において、
前記燃料通路孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置することを有することを特徴とする燃料噴射装置。」

「 【請求項10】
請求項1?7の何れかに記載の燃料噴射装置において、
前記弁体は、前記可動子の前記弁体に対する開弁方向の相対変位を規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記弁体よりも大きな径を有する拡径部によって形成され、
前記規制部は、前記可動子と前記磁気コアが接触し、前記可動子と前記規制部が接触した状態で、前記孔の前記内径拡大部内に位置し、
前記内径拡大部の範囲は、前記磁気コアの前記可動子側端面から前記拡径部の前記規制部と反対側の端面よりも上流部まで構成されている燃料噴射装置。
【請求項11】
請求項1?7の何れかに記載の燃料噴射装置において、
前記磁気コアと前記可動子とが対向する前記可動子の端面は、平面状である燃料噴射装置。」

2 引用文献1及び2に記載された発明及び技術
(1)引用文献1について
本件特許に係る原出願の出願前に頒布された引用文献1には、「燃料噴射弁」に関して、図面(特に、図1参照。)とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)

ア 「【0016】
図1には、燃料噴射弁1が断面図で示されている。この燃料噴射弁1は、混合機圧縮型火花点火式の内燃機関の燃料噴射装置用の燃料噴射弁として形成されている。この燃料噴射弁1は特に、図示されていない内燃機関の燃焼室に、燃料を直接噴射するために適している。
【0017】
燃料噴射弁1は、内部に弁ニードル3が配置されているノズル体2から成っている。弁ニードル3は球形の弁閉鎖体4と作用結合しており、この弁閉鎖体4は、弁座体5に配置された弁座面6と共働してシール座を形成している。図示の燃料噴射弁1は、内方に向かって開放する電磁式の燃料噴射弁1であって、噴射開口7を有している。
【0018】
マグネットコイル9はコイル保持体に巻き付けられていて、このコイル保持体はマグネットコイル9の内極10に接触している。内極10と外極8とは間隙によって互いに切り離されている。マグネットコイル9は導体を介して、電気的な差込みコンタクト12を介して供給可能な電流によって励起される。差込みコンタクト12は、内極10に射出成形されたプラスチック被覆13によって取り囲まれている。
【0019】
可動子19は第1のフランジ14を介して弁ニードル3と摩擦力結合式に結合されており、この弁ニードル3は例えば溶接シームによって第1のフランジ14と結合されている。第1のフランジ14には戻しばね15が支持されており、この戻しばね15は燃料噴射弁1の図示の構造形態では、スリーブ16によって予負荷もしくはプレロード(Vorspannung)される。
【0020】
可動子19及び弁座体5内には、燃料通路18a,18bが延びており、これらの燃料通路18a,18bは、中央の燃料供給部11を介して供給される燃料を、弁座体5における噴射開口7に導く。燃料噴射弁1はシール部材17によって、図示されていない分配管路に対してシールされている。
【0021】
燃料噴射弁1の休止状態において可動子19は、弁ニードル3における第1のフランジ14を介して、戻しばね15によって、上昇行程方向とは逆向きに負荷され、これにより弁閉鎖体4は弁座面6にシール作用をもって接触する状態に保たれる。マグネットコイル9の励起時に、マグネットコイル9は磁界を形成し、この磁界は可動子19を戻しばね15のばね力に抗して上昇行程方向に移動させ、この場合上昇行程は、休止位置において内極10と可動子19との間に位置している作業間隙によって所定されている。
【0022】
可動子19は、弁ニードル3に溶接された第1のフランジ14を、ひいては弁ニードル3を上昇行程方向に連行する。弁ニードル3と作用結合されている弁閉鎖体4は、弁座面6から持ち上がり、燃料通路18a,18bを介して噴射開口7に達した燃料が噴射される。
【0023】
コイル電流が遮断されると、可動子19は磁界の十分な消滅の後で、第1のフランジ14に対する戻しばね15の圧力によって内極10から落下し、これによって弁ニードル3は上昇行程方向とは逆向きに移動する。これによって弁閉鎖体4は弁座面6に接触し、燃料噴射弁1は閉鎖される。電磁的な磁気回路はアクチュエータ28を形成する。」

イ 上記ア(【0021】ないし【0023】)から、弁ニードル3と可動子19とが協働して開閉弁動作が行われることが分かる。

ウ 上記アの「マグネットコイル9は導体を介して、電気的な差込みコンタクト12を介して供給可能な電流によって励起される」(段落【0018】)との記載、「マグネットコイル9の励起時に、マグネットコイル9は磁界を形成し、この磁界は可動子19を戻しばね15のばね力に抗して上昇行程方向に移動させ」(段落【0021】)との記載及び「コイル電流が遮断されると、可動子19は磁界の十分な消滅の後で、第1のフランジ14に対する戻しばね15の圧力によって内極10から落下し、これによって弁ニードル3は上昇行程方向とは逆向きに移動する」(段落【0023】)との記載並びに図1の図示内容からみて、マグネットコイル9に電流を供給することにより可動子19を移動させる磁気力を発生する内極10を備えることが分かる。

エ 上記アの「可動子19及び弁座体5内には、燃料通路18a,18bが延びており、これらの燃料通路18a,18bは、中央の燃料供給部11を介して供給される燃料を、弁座体5における噴射開口7に導く」(段落【0020】)との記載及び図1の図示内容から、中央の燃料供給部11を介して供給される燃料は、可動子19における燃料通路18a,18bを経て、弁座体5における噴射開口7に導かれることが分かる。そうすると、燃料供給部11と燃料通路18a,18bとの間に位置する、内極10の内周側にある貫通孔が燃料通路として機能するものであることが分かる。また、図1の図示内容から、内極10の内周側にある貫通孔が、可動子19と対向する内極10の端面に開口して弁ニードル3の軸部に沿う方向にあることが看取できる。

オ 図1の図示内容からみて、内極10の内周側にある貫通孔には、燃料の流通方向の上流側(図1における上方側)に、内径が最も小さい領域があり、それに続く下流側に、内径が中程度の大きさの領域があり、さらにそれに続く下流側に、内径がより大きい領域があり、最も下流側に、下流側に向かって徐々に内径が拡大する部分があることが分かる。また、便宜的に、内径が中程度の大きさの領域を上流側と下流側とに分割して、上流側部分と下流側部分とからなるということができる。
そうすると、前記貫通孔には、燃料通路を形成する内径が最も小さい領域(以下「第1内径領域」という。)と、第1内径領域よりも下流側に位置し、上流側部分と下流側部分とからなる第1内径領域の内径よりも大きい内径を有する領域(以下「第2内径領域」という。)と、第2内径領域よりも下流側に位置し、第2内径領域の内径よりも大きい内径を有する領域(以下「第3内径領域」という。)と、第3内径領域よりも下流側に位置し、可動子19と対向する端面に向かって徐々に内径が拡大する部分(以下「内径徐変拡大部」という。)とがあるといえる。

カ 上記オ及び図1の図示内容からみて、第2内径領域の下流側部分、第3内径領域及び内径徐変拡大部の内径は、下流側に向かって拡大することが分かるから、言い換えると、第2内径領域の下流側部分、第3内径領域及び内径徐変拡大部の形成面と可動子19との、弁ニードル3の軸部に沿う方向の間隔は、内極10の端面の内径部(内径徐変拡大部の下流端の内径部)から貫通孔の奥側(中央側)に向かうほど拡大することが分かる。

上記アないしカ及び図1の図示内容を総合すると、引用文献1には、「燃料噴射弁1」に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「弁ニードル3と、
前記弁ニードル3と協働して開閉弁動作を行わせる可動子19と、
マグネットコイル9に電流を供給することにより可動子19を移動させる磁気力を発生する内極10と、を備えた燃料噴射弁1において、
前記内極10には、前記可動子19と対向する端面に開口して弁ニードル3の軸部に沿う方向に貫通孔が形成され、
貫通孔には、
燃料通路を形成する内径が最も小さい第1内径領域と、
前記第1内径領域よりも下流側に位置し、上流側部分と下流側部分とからなる前記第1内径領域の内径よりも大きい内径を有する第2内径領域と、
前記第2内径領域よりも下流側に位置し、前記第2内径領域の内径よりも大きい内径を有する第3内径領域と、
前記第3内径領域よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって徐々に内径が拡大する内径徐変拡大部とが形成され、
前記第2内径領域の下流側部分、前記第3内径領域及び前記内径徐変拡大部の形成面と前記可動子19との前記弁ニードル3の軸部に沿う方向の間隔が、前記内極10の前記端面の内径部から前記貫通孔の奥側に向かうほど拡大するように構成される燃料噴射弁1。」

(2)引用文献2について
本件特許に係る原出願の出願前に頒布された引用文献2には、「燃料噴射弁」に関して、図面(特に、図1、図2および図4参照。)とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0020】
図1に示すインジェクタ10は、燃料噴射弁であって、たとえば直噴式のガソリンエンジンに適用される。直噴式のガソリンエンジンにインジェクタ10を適用する場合、インジェクタ10はエンジンヘッド(図示せず)に搭載される。」

イ 「【0041】
ニードル14に設けられるストッパ27は、開弁方向Z1への可動コア36の変位を規制する。ストッパ27の外径は、穴部41の内径よりも大きい。そのため、ニードル14のストッパ27は、開弁方向Z1に位置する可動コア36の端面部45(以下、「可動コア36の上端面部45」ということがある)と接する。ストッパ27と可動コア36の上端面部45とが接することにより、可動コア36とニードル14との間におけるニードル14の弁座29側(閉弁方向Z2)への移動および可動コア36の固定コア35側への相対的な移動は制限される。これにより、ニードル14のストッパ27は、可動コア36とニードル14との過剰な相対移動を制限する。
【0042】
またストッパ27は、筒状の固定コア35の内方側にて軸方向Zに沿って往復変位する。したがってストッパ27の外径は、固定コア35の内径よりも若干小さい。したがって、固定コア35の内周面部351とストッパ27の外周面部271との間には、円筒形状の隙間部54が形成される。」

ウ 「【0056】
図4(a)に示すように、時刻t1で閉弁状態からコイル34に通電すると、コイル34に発生した磁界により磁性プレート50、磁性部16、可動コア36、固定コア35およびノズルホルダ13には磁束が流れ、磁気回路が形成される。これにより、固定コア35と可動コア36との間には磁気吸引力が発生する。固定コア35と可動コア36との間に発生する磁気吸引力と第2スプリング46の開弁力f2との和が第1スプリング39の閉弁力f1よりも大きくなると、図4(b)に示すように、時刻t2にて可動コア36は開弁方向Z1への移動を開始する。このとき、可動コア36の上端面部45にストッパ27が接しているニードル14は、可動コア36とともに開弁方向Z1へ移動する。その結果、ニードル14のシール部28は、弁座29から離れる。
【0057】
燃料入口18からインジェクタ10の内部へ流入した燃料は、前述したように燃料フィルタ19、入口部材12の内周側、アジャスティングパイプ40の内周側、固定コア35の内周側(燃料通路321)、流入孔30、連通孔31、中径部21の内周側(燃料通路322)、小径部22の内周側(燃料通路322)を順次経由して、ノズルボディ24の内周側に流入する。ノズルボディ24に流入した燃料は、弁座29から離れたニードル14とノズルボディ24との間を経由して噴孔25へ流入する。これにより、噴孔25から燃料が噴射される。」

エ 「【0061】
上述したように、閉弁状態から磁気吸引力が作用すると、可動コア36およびニードル14は、可動コア36の上端面部45とストッパ27とが接することによって一体となって開弁方向Z1へ移動する。可動コア36およびニードル14は、可動コア36の上端面部45(本例では凸部51のうち外周側の部分)が固定コア35の下端面部49と衝突して噴孔25を全開(最大開度)とする時刻t3まで開弁方向Z1へ移動する。可動コア36が固定コア35に衝突すると、可動コア36とニードル14とは軸方向Zへ相対移動可能であるので、ニードル14は開弁方向Z1への慣性力によって、ストッパ27が可動コア36の上端面部45から離間して、さらに開弁方向Z1への移動を継続する。このようにストッパ27が離間しても、ストッパ27は第1スプリング39と接触している状態が維持されるので、なんら他の部材にストッパ27が衝突することはない。したがってニードル14がバウンドすることなく、噴孔25からの不規則な燃料の噴射は低減される。
【0062】
また、ニードル14は開弁方向Z1への慣性力によって開弁方向Z1への移動を継続して、可動コア36とストッパ27とが離れると、ニードル14には可動コア36を経由した第2スプリング46の開弁力f2が加わらない。そのため、ニードル14には、第1スプリング39の押し付け閉弁力f1のみが加わる。すなわち可動コア36とニードル14とが離れると、ニードル14に対し閉弁方向Z2へ加わる力が大きくなる。したがって、ニードル14の開弁方向Z1への過剰な移動が制限され、いわゆるオーバーシュートは低減される。
【0063】
同様に、ニードル14が開弁方向Z1への慣性力によって開弁方向Z1への移動を継続して、可動コア36とニードル14とが離れると、可動コア36には第2スプリング46の開弁力f2および磁気吸引力が加わり、第1スプリング39の閉弁力f1が加わらない。すなわち可動コア36とストッパ27とが離れると、可動コア36に対し開弁方向Z1へ加わる力が大きくなる。したがって、可動コア36が固定コア35に衝突すると、その衝撃により可動コア36は閉弁方向Z2へ跳ね返ることなく、時刻t3から少なくともコイル34が通電されている期間は固定コア35に接触した状態が維持される。
【0064】
可動コア36が固定コア35に衝突する時の衝撃力は、衝撃力に寄与する重量が低減されるため(可動コア36分の重量のみとなるため)小さくなる。このように衝撃力が小さいために、可動コア36は極めて跳ね返り難い。
【0065】
さらに、ニードル14がオーバーシュートして、ニードル14に加わる力が第1スプリング39の閉弁力f1のみとなると、ニードル14は開弁方向Z1への移動速度が減少し、オーバーシュート量が最大となった後、閉弁力f1によって閉弁方向Z2へ移動を開始する。一方、可動コア36は、磁気吸引力および第2スプリング46の開弁力f2によって固定コア35に接触した状態であるので、ニードル14が閉弁方向Z2へ移動するとき、固定コア35と接触している可動コア36によって閉弁方向Z2への移動が規制される。その結果、ニードル14には再び磁気吸引力および第2スプリング46の開弁力f2が加わるので、ニードル14は開弁状態を維持することができる。このように、可動コア36とニードル14とは相対的に移動可能であるため、ニードル14のバウンドにともなう噴孔25からの不規則な燃料の噴射は低減される。したがって、コイル34への通電時間が短期間でも、噴孔25から噴射される燃料の噴射量を精密に制御することができる。」

オ 上記イの「ニードル14に設けられるストッパ27は、開弁方向Z1への可動コア36の変位を規制する。」(段落【0041】)との記載及び上記エの「可動コア36およびニードル14は、可動コア36の上端面部45とストッパ27とが接することによって一体となって開弁方向Z1へ移動する。」(段落【0061】)との記載から、ニードル14は、可動コア36の前記ニードル14に対する開弁方向の相対変位を規制するストッパ27を有することが分かる。

カ 図1及び図2の図示内容からみて、ストッパ27はニードル14より大きな径を有して形成されることが看取できる。

キ 上記イの「ストッパ27の外径は、固定コア35の内径よりも若干小さい。したがって、固定コア35の内周面部351とストッパ27の外周面部271との間には、円筒形状の隙間部54が形成される。」(段落【0042】)との記載並びに図1及び図2の図示内容からみて、ストッパ27は、可動コア36と固定コア35が接触し、前記可動コア36と前記ストッパ27が接触した状態で、前記固定コア35の内周側(燃料通路321)に位置することが分かる。

上記アないしキ並びに図1、図2及び図4の図示内容を総合すると、引用文献2には、「燃料噴射弁」に関して、次の技術(以下、「引用文献2技術1」及び「引用文献2技術2」という。)が記載されている。

〔引用文献2技術1〕
「ニードル14のストッパ27の外径が、固定コア35の内径よりも小さく、可動コア36が前記固定コア35の下端面部49に衝突して前記ニードル14の前記ストッパ27が前記可動コア36から開弁方向Z1に離間した後、前記ニードル14の前記ストッパ27が前記可動コア36に接触する燃料噴射弁に関する技術。」

〔引用文献2技術2〕
「ニードル14は、可動コア36の前記ニードル14に対する開弁方向の相対変位を規制するストッパ27を有し、前記ストッパ27は、前記ニードル14よりも大きな径を有して形成され、前記ストッパ27は、前記可動コア36と前記固定コア35が接触し、前記可動コア36と前記ストッパ27が接触した状態で、前記固定コア35の内周側(燃料通路321)に位置する燃料噴射弁に関する技術。」

3 対比・判断
(1)訂正発明1について
訂正発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「弁ニードル3」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、訂正発明1における「弁体」に相当し、以下同様に、「可動子19」は「可動子」に、「マグネットコイル9に電流を供給することにより可動子19を移動させる磁気力を発生する内極10」は「コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コア」に、「燃料噴射弁1」は「燃料噴射装置」に、「弁ニードル3の軸部」は「弁軸」に、「貫通孔」は「孔」に、それぞれ相当する。
引用発明における「第1内径領域」は訂正発明1における「内径部」に相当し、引用発明における「第1内径領域」よりも下流側に位置し、「第1内径領域」の内径よりも大きい内径を有する「第2内径領域」の「上流側部分」は訂正発明1における「大径部」に相当する。
また、引用発明における「第2内径領域」の「下流側部分」、「第3内径領域」及び「内径徐変拡大部」は、「第2内径領域」の「下流側部分」と「第3内径領域」との間の段差部と、徐々に内径が拡大する「内径徐変拡大部」とを有しており、可動子19と対向する端面に向かって内径が拡大するものであるから、訂正発明における「内径拡大部」に相当する。
そうすると、引用発明は、訂正発明1の用語で表すと、燃料通路を形成する内径部と、前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成されているといえる。
なお、以下の図は、引用発明における「第1内径領域」、「第2内径領域」、「第3内径領域」及び「内径徐変拡大部」を、訂正発明1に則って整理したものである。


そうすると、訂正発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
「弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成される燃料噴射装置。」

〔相違点〕
訂正発明1においては、「前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状である」のに対して、
引用発明においては、かかる事項を備えていない点。

上記相違点について検討する。
上記相違点に係る訂正発明1の発明特定事項は、引用文献1には示唆されておらず、本件特許に係る原出願の出願前において周知技術であるともいえない。
そうすると、訂正発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、引用文献2技術1及び引用文献2技術2も、上記相違点に係る訂正発明1の発明特定事項を開示又は示唆するものではないから、引用発明に、引用文献2技術1及び引用文献2技術2を適用しても、上記相違点に係る訂正発明1の発明特定事項とすることはできない。
したがって、訂正発明1は、引用発明、引用文献2技術1及び引用文献2技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)訂正発明2ないし4、6、7、10及び11について
訂正特許請求の範囲における請求項2ないし4、6、7、10及び11は、請求項1の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、訂正発明2ないし4、6、7、10及び11は、訂正発明1の発明特定事項をすべて含むものである。
したがって、訂正発明2ないし4、6、7、10及び11は、訂正発明1と同様の理由により、引用発明、引用文献2技術1及び引用文献2技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4 まとめ
以上のとおり、訂正発明1ないし4、6、7、10及び11は、引用発明、引用文献2技術1及び引用文献2技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、訂正後の請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の請求項1ないし4、6、7、10及び11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
燃料噴射装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関に使用される燃料噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、固定コアの可動コアとは反対側の外径が、可動コアの外径よりも大きくなる大径部を有し、固定コアの可動コアと向き合う対向端面側が固定コアの大径部よりも径方向内側に凹み、固定コアの対向端面の外径が大径部の外径よりも小さくなることにより、固定コアの対向端面が可動コアの外周に設置されている磁性部材と向き合う面積を小さくして、固定コアと可動コアの間を流れる磁束の減少を低減し、吸引力を向上した燃料噴射弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-207412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可動コアの動的な吸引力の応答性を決定づける因子として、磁気回路中に発生する渦電流がある。渦電流は、コイルに電流を供給することで発生する磁束を打ち消す方向に発生し、コイルへの電流供給を停止した際にも、磁束を打ち消す方向とは逆に発生し、常に磁界の変化を妨げる方向に発生する。電磁式の燃料噴射装置においては、コイルに電流を供給してから磁束が発生して吸引力が立ち上がるまでと、コイルへの電流の供給を打ち切ってから磁束が減少して吸引力が低下するまでには、磁気的な遅れが生じる問題となる。例えば特許文献1に記載された燃料噴射弁(燃料噴射装置)のように、固定コアの反可動コア側の外径を可動コアの外径よりも大きくすることで、固定コアの磁路断面積が増加し、吸引力は向上する。一方で、固定コアの磁路断面積が増加することで、電流をコイルに供給してから磁束が立ち上がるまでの磁気的な遅れ時間とコイルへの電流供給を停止してから磁束が切れるまでの磁気的な遅れ時間が増加する可能性がある。特許文献1に記載された燃料噴射弁では、動的な応答性を決定づける渦電流についての配慮が必ずしも十分でなかった。
【0005】
本発明の目的は、上記の問題を解決することを目的とし、動的な応答性に優れた燃料噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、磁気コア(固定コア)の内周面に可動子側へ向けて内径が大きくなる磁気的な絞りを設ける。
【0007】
電磁石を用いた燃料噴射装置では、コイルに電流を供給すると、渦電流の影響によってコイルの近傍(内周面側)に位置する磁気コアの外周面側から磁化が始まり、コイルから遠く離れている磁気コアの内周面側へ向けて磁化が進行する。一方でコイルへの電流供給を停止すると、コイルに近い磁気コアの外周面側から消磁が始まる。本発明において、磁気コアの可動子側端面における内径側の肉厚を削ることで、すなわち、磁気コア(固定コア)の内周面に可動子側へ向けて内径が大きくなる磁気的な絞りを設けることで、コイルに電流を供給してから磁束が立ち上がるまでの開弁時の磁気的な遅れ時間とコイルへの電流供給を停止してから磁束が減少するまでの閉弁時の磁気的な遅れ時間の短縮が可能となり、開弁時及び閉弁時における動的な応答性を向上することができる。
【0008】
さらに、磁気コア(固定コア)の外径をノズルホルダにおける可動子の外周を包囲する部分の内径よりも大きくするとよい。このような構成によって磁気コアの磁気抵抗の低減と吸引面の磁束密度の向上を行い、磁気吸引力を向上させることが可能となる。
【0009】
具体的には以下のように構成するとよい。
(1)弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状である。
(2)(1)において、前記弁体を閉弁方向に付勢するスプリングを備え、前記スプリングの外径は前記内径部の径よりも小さく、前記スプリングは前記内径部の内周側で支持される。
(3)(1)又は(2)において、前記大径部の内径はほぼ一定となるように形成される。
(4)(3)において、前記内径拡大部の内径は前記可動子と対向する端面に向かって次第に拡大される。
(5)(1)又は(2)において、前記弁体は弁ニードル部と前記弁ニードル部よりも大きな径を有する拡径部とを有し、
前記可動子は、前記弁体の前記拡径部の規制部と協働して開閉弁動作を行わせるように構成され、
前記内径拡大部は、前記拡径部の外径側に位置するとともに、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記拡径部の前記規制部と反対側の端面よりも上流側において形成される。
(6)(1)又は(2)において、前記可動子には前記弁体が挿入される挿入孔と前記挿入孔よりも外周側に位置する燃料通路孔が形成され、前記挿入孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置するとともに、前記燃料通路孔は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部と軸方向において重なる位置に形成される。
(7)(6)において、前記燃料通路孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置することを有する。
(8)弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、当該孔の軸方向の半分以上の範囲において前記反対側の端面に向かって内径が拡大する内径拡大部が形成される。
(9)弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、前記反対側の端面に向かって内径が拡大し、ほぼ直線形状のテーパ形状である内径拡大部が形成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、動的な応答性に優れた燃料噴射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る一実施例の燃料噴射装置の縦断面図である。
【図2】本発明の第一実施例の燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。
【図3】図2における可動子の外径側下面部の拡大図Cである。
【図4】図2におけるノズルホルダ上端面と磁気コアとの接触部Aの拡大図である。
【図5】本発明の第二実施例の燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。
【図6】図5における磁気コア外周部Bの拡大図である。
【図7】図5におけるノズルホルダ上端面と磁気コアとの接触部Eの拡大図である。
【図8】本発明の第三実施例における燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。
【図9】図8における磁気コア外周部Dの拡大図である。
【図10】本発明の第四実施例における燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。
【図11】本発明の第五実施例における燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。
【図12】図8における可動子内径部Fの拡大図である。
【図13】本発明の第六実施例の燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。
【図14】本発明の第七実施例の燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。
【図15】本発明の第八実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。
【図16】本発明の第九実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。
【図17】本発明の第十実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図1?図15を用いて、本発明の実施例による燃料噴射装置の動作および構成について説明する。
【実施例1】
【0013】
最初に図1を用いて本発明に係る第一の実施例における燃料噴射装置の構成と動作について説明する。図1は、本発明の燃料噴射装置の一実施例を示す縦断面図である。
【0014】
本実施例では、可動子(可動コア)102は弁体114に固定されておらず、弁体114に対して弁軸方向に相対変位可能に組み付けられている。可動子102は弁体114の規制部(ストッパ部)114aによって開弁方向への相対変位が規制されている。規制部114aは弁体114の弁ニードル部114cよりも大きな径を有する拡径部によって形成されている。可動子102は規制部114aに対して他端側に設けられ、弁座118と接触する接触部(シート部114b)側への相対変位、すなわち閉弁方向への相対変位は弁体114によって規制されることはない。
【0015】
このように構成された図1における燃料噴射装置は、通常閉弁型の電磁式燃料噴射装置であり、コイル105に通電されていない状態では、弁体114はスプリング(第1スプリング)110によって閉弁方向に付勢され、弁座118に密着し閉弁状態となっている。この閉弁状態においては、可動子102はゼロスプリング(第2スプリング)112によって弁体114の規制部114aに密着させられ、可動子102と磁気コア(固定コア)107との間に空隙を有している。燃料は燃料噴射装置の上部に設けられた燃料供給口123より供給され、弁座118で燃料をシールしている。閉弁時には、スプリング110による力および燃料圧力による力が弁体114に対して閉弁方向に作用し、弁体114は閉弁方向に押されている。スプリング(第1スプリング)110の弁体114と当接している端部とは反対側の端部はアジャスタピン120に当接しており、スプリング110のばね力がこのアジャスタピン120により調整される。
【0016】
開閉弁のための電磁力を発生させる磁気回路は、磁気コア107と、可動子102と、磁気コア107の少なくとも可動子102側の一部と可動子102とを内包するようにこれらの外周側に配置された筒状部材であるノズルホルダ101と、ハウジング103とによって構成されている。ハウジング103はその下端部に径方向に延びる径方向延設部103aが形成されており、この径方向延設部103aの内周面103bがノズルホルダ101における可動子102の外周面102aと対向する部分101aの外周面に接触している。また、ハウジング103はコイル105の外周を取り囲み、コイル105よりも上位となる部分103cの内周面が磁気コア107のフランジ部107aの外周面と接している。ハウジング103は磁気回路のヨーク部分を構成している。
【0017】
コイル105に電流が供給されると、磁気回路中に磁束が発生し、可動部品である可動子102と固定部品である磁気コア107との間に磁気吸引力が発生する。可動子102に作用する磁気吸引力がスプリング110による荷重と、燃料圧力によって弁体114に作用する力の和を超えると、可動子102が上方へ動く。このとき弁体114は可動子102と共に上方へ移動し、可動子102の上端面が磁気コア107の下面に衝突するまで移動する。その結果、弁体114のシート部114bが弁座118より離間し、供給された燃料が、複数の噴射口119から噴射される。なお、噴射口119の孔数は単孔であってもよい。なお、噴射口119及び弁座118はノズルホルダ101の先端部に取り付けられたオリフィスカップ116に形成されている。また、オリフィスカップ116の上流側には、弁体114をガイドするプランジャロッドガイド115が設けられている。
【0018】
次に、可動子102の上端面102bが磁気コア107の下面(可動子側端面)206に衝突した後、弁体114の規制部114aは可動子102から離脱し、オーバーシュートするが、一定の時間の後に弁体114は規制部114aが可動子102に接触することにより、可動子102上で静止する。コイル105への電流の供給が切れると、磁気回路中に発生していた磁束が減少し、磁気吸引力が低下する。磁気吸引力がスプリング110による荷重と、燃料圧力によって弁体114および可動子102が受ける流体力とを合わせた力よりも小さくなると、可動子102および弁体114は下方へ動き、弁体114が弁座118と衝突した時点で、可動子102の規制部114aは弁体114から離脱する。一方弁体114は弁座118と衝突した後に静止し、燃料の噴射が停止する。
【0019】
なお、可動子102と弁体114とは相対変位しない同じ部材として一体成形するかもしくは、別部材で構成し溶接もしくは圧入等の方法で相対変位しないように結合されていてもよい。可動子102と弁体114とが相対変位しない同じ部材である場合、ゼロスプリング112は構成上必要ない。このような構成であっても、本発明の効果は変わらない。
【0020】
次に、図1乃至4を用いて本発明における第一実施例の構成について説明する。図2は図1における燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図であり、図3は図2における可動子102の外径側下面部Cの拡大図である。また、図4は図2におけるノズルホルダ101の上端面と磁気コア107との接触部Aの拡大図である。なお、図2,図3,図4において図1と同一の構成部品には同一符号を付す。
【0021】
本発明に係る燃料噴射装置では、コイル105に電流を供給することにより、磁気コア107,可動子102,ハウジング103及びノズルホルダ101で構成される磁気回路に磁束が発生し、磁気コア107と可動子102との間に磁気吸引力が発生する。磁気コア107を通る磁束は、磁気コア107の可動子102側の端面206の位置で、ノズルホルダ101側へ流れる磁束と、磁気コア107の吸引面側、すなわち磁気コア107と可動子102との間の磁気ギャップ側に流れる磁束とに分配される。このとき、磁気コア107と可動子102との間を通る磁束の数と磁束密度が磁気吸引力を決定する。
【0022】
本実施例では、磁気コア107の可動子側端面206の内径側に、吸引面に向かって内径が拡大する内径拡大部201を設ける。磁気コア107にはその中央部に弁軸方向に貫通する貫通孔210が形成され、この貫通孔210が燃料通路を構成している。内径拡大部201はこの貫通孔210の出口部近傍に形成されており、可動子側端面206から燃料の流れ方向の上流側に向かって次第に内径が小さくなるように形成されている。この効果により、磁気コア107の可動子側端面206から可動子102に対して遠く離れる側の磁束が通過する箇所の断面積を確保しながら、可動子側端面206の面積を絞ることで、吸引面の磁束密度を高めることができ、磁気吸引力を向上できる。なお、内径拡大部201は、可動子102との弁軸に沿う方向の磁気的なギャップが、内径拡大部201の内径が小さくなるにつれて、すなわち磁気コア107の径方向の中心に近づくに従って、拡大するように構成するとよい。これは、内径拡大部201における磁気コア107と可動子102との磁気的なギャップ(弁軸方向の間隔)の大きさを、可動子側端面206と可動子102との磁気的なギャップの大きさよりも大きくし、磁気的な抵抗を大きくするためである。これにより、磁束は内径拡大部201を通過する磁束を減らし、可動子側端面206を通過する磁束を増やすことができ、可動子側端面206の磁束密度を高めることができる。また、コイル105上側に位置する磁気コア107の下面207と内径拡大部201の上端までの高さL_(A)は、内径拡大部201の弁軸方向の高さL_(B)よりも大きく設定すると効果が大きい。このように設定することで、コイル105の内径側に位置する磁気コア107の磁路断面積を確保しつつ、吸引面の絞りによって磁束密度を高める効果が得やすくなり、吸引力向上が向上できる。なお、内径拡大部201は例えばテーパーで構成するとよい。
【0023】
内径拡大部201をテーパーで構成する場合、加工の都合上、内径拡大部201の上流部と下流部に内径拡大部201のテーパーとは角度が異なるテーパーを設けるとよい。この場合、内径拡大部201を3段のテーパー部で構成するという見方もできる。そして下流側に位置するテーパー部ほど、弁軸心209と成す角度θが大きくなるようにする。この効果により、内径拡大部201の上流部と下流部に加工上のバリが発生しにくくなるため、加工コストを低減できる。
【0024】
また、コイル105に電流を供給すると、磁化は渦電流の影響によってコイル内側から外側へ向かって進行する。一方で、コイル105への電流供給を停止すると、コイル105に近い位置から磁束が消滅する。コイル105へ電流を供給した状態から電流の供給を停止する場合、コイル105から離れた位置にある磁気コア107の内径側には、最後まで磁束が残留する。従って、コイル105への電流供給を停止しても磁気吸引力が低下するまでには磁気的な遅れ時間が存在し、この磁気的な遅れ時間が閉弁時の応答性を悪化させる要因となる。そこで、磁性材料において磁化が進行する方向の幅を狭くすることにより、磁気的な遅れ時間を短縮することができる。
【0025】
本発明では、磁気コア107に内径拡大部201を設けることで、磁気コア107の可動子側端面206の肉厚が小さくなるように構成する。すなわち、内径拡大部201により磁気コア107の内周側(内径側)の磁性材料を削り、その分だけ磁気コア107の肉厚を薄くしている。この効果によって、コイル105に電流を供給してから磁束が立ち上がるまでの開弁時の磁気的な遅れ時間とコイル105への電流供給を停止してから磁束が減少するまでの閉弁時の磁気的な遅れ時間の短縮が可能となり、開・閉弁時における応答性を向上させることが可能となる。以上の理由により、本発明の第一実施例によれば、磁気吸引力と動的な応答性の向上を両立することが可能となる。
【0026】
ここで、磁気コア107の外側に筒状のノズルホルダ101を設ける構成においては、コイル105から磁気コア107までの距離がノズルホルダ101の厚さ分大きくなる。
コイル105と磁気コア107の距離が大きくなると、渦電流の影響によって磁化が進行する速度および、消磁する速度が遅くなり、動的な応答性が悪化する。従って、渦電流の影響を低減できる磁気コア107の内径拡大部201の効果が顕著になる。
【0027】
また、磁気コア107に設けた内径拡大部201は下流方向に内径が拡大するように構成しているため、磁気コア107と弁体114との間に流体通路を確保することができる。なお、可動子102と弁体114とが相対変位可能に別部材として構成されている場合、内径拡大部201の範囲は、磁気コア107の可動子側端面206から弁体114に設けた規制部(ストッパ部)114aよりも上流部まで構成するとよい。この効果により、弁体114と磁気コア107の間に十分な流体通路を確保することが可能となる。なお、弁体114と磁気コア107の間を通る燃料は、可動子102に設けた燃料通路孔203を通過し、下流方向へ流れる。燃料通路孔203の中心位置は、磁気コア107の内径d_(c)よりも外径側に配置することで、可動子102を通過する燃料の流体通路面積の確保が可能となる。また、可動子102の燃料通路孔203の中心位置は、磁気コア107の可動子側端面206の内径よりも内径側に配置するとよい。磁気コア107の可動子側端面206の内径よりも外径側が可動子102の磁束の主経路となるため、燃料通路孔203の中心位置を規定することで、可動子102の磁路断面積が燃料通路によって減少するのを抑える効果がある。なお、燃料通路孔は、可動子102ではなく、弁体114に設けてもよい。
【0028】
また、磁気コア107の可動子側端面206の内径よりも可動子102の磁気コア107と対向する平面部の内径の方が小さくなるように設定するとよい。この効果により、可動子102が中心位置からずれて偏心した場合であっても磁気コア107の可動子側端面206で吸引面積が決まるため、磁気吸引力のばらつきを抑制することができる。この効果により、噴射毎の噴射量のばらつきや個体差による噴射量のばらつきを抑制することが可能となる。
【0029】
また、磁気コア107と可動子102との間の磁気ギャップの弁軸方向における位置は、可動子102が弁体114の規制部114aと接触して静止した状態において、コイル105とボビン104とで構成されているコイルスペースの弁軸方向における位置と重なるようにするとよい。これは磁気ギャップが、コイルスペースよりも下部にくると、可動子102の側面部の面積が十分にとれないためである。可動子102の側面部とノズルホルダ101との間には、隙間があるため、可動子102の側面部の磁気抵抗は大きくなり易い。この部分の磁気抵抗を小さくするため、磁束が通過するための側面積を大きくする必要がある。このため、可動子102の側面部の面積、すなわち可動子102の高さを大きくする必要がある。従って、磁気ギャップの軸方向の位置をコイルスペース内にすることで、可動子102の高さを十分に確保しても、可動子側面がハウジング103の内径部分に近づくようにできるため、吸引力の向上が可能となる。
【0030】
また、図4に示すように、ノズルホルダ101の上端面の内径側に、磁気コア107と圧入ための逃げ部150を構成するとよい。ノズルホルダ101と磁気コア107を圧入などの方法によって組み立てる場合、ノズルホルダ101の上端面と接触する磁気コア107の隅部には、加工上のRが生じてしまうため、接触部に逃げを設ける必要がある。磁気コア107ではなく、ノズルホルダ101に逃げ部150を設けることで、磁気コア107の磁路断面積が圧入のための逃げによって縮小されるのを抑制し、吸引力を向上できる。一般的に、強度が必要になるノズルホルダ101には、磁気特性の劣る材料を使わざるを得ないが、このようにノズルホルダ101側に逃げを設けることで、磁気特性に優れる磁気コア107の断面積を縮める必要がなく、有利である。なお、ノズルホルダ101に設けた逃げ部150は例えばテーパーで構成するとよい。
【0031】
ここで、可動子102の磁気コア107と対向する端面とは反対側の面(裏面)には、外径方向に向かって内径が拡大する内径拡大部205を設けるとよい。ここで、吸引力を向上するための磁路断面積を確保する目的で可動子102の内径部の肉厚を増加させると質量が大きくなり、開・閉弁時における可動子102の加速度が小さくなるため、開閉弁に要する時間が増加してしまう。従って、可動子102では、磁路断面積の確保と質量低減を両立させることが望ましい。
【0032】
磁気コア107と可動子102の構成では、磁気コア107の可動子側端面206の内径側よりも外径側が、可動子102の磁束が通る主経路となるため、可動子102の外径側で磁路断面積が確保できるように、磁性体を配置する必要がある。従って、可動子102に設けた内径拡大部205の始点208が、磁気コア107の可動子側端面206の内径よりも外径側に位置するように構成することで、可動子102の必要な磁気路断面積を確保しながら質量も低減することができる。本発明では、磁気コア107に内径拡大部201を設けているため、内径拡大部205の体積を必要最小限に抑制することができ、可動子102の質量低減が可能になる。
【0033】
また、図3に示すように、可動子102の傾斜面302よりも下部に弁軸心に平行な周面である下部内径面303を設け、下部内径面303と対向する可動子102の外周面に凹部301を設けるとよい。ここで、磁気コア107と可動子102が接触する燃料噴射装置では、衝突面の耐久性を高めるため磁気コア107と可動子102の接触面にクロムなどのメッキ処理を行う場合がある。可動子102にメッキ処理を行う場合、可動子102の位置を固定するための溝が外径面に必要となる。しかし、可動子102の外径は、磁束が通過する磁路であるため、可動子102の凹部301の位置を可動子102の上部に構成すると、可動子102の外径とノズルホルダ101との間の磁気抵抗が増加し、吸引力が低下するという問題がある。上記構成によれば、吸引力の低下を抑制し、可動子102のメッキ処理が容易となる。
【実施例2】
【0034】
図5,図6,図7を用いて本発明に係る第二実施例について説明する。図5は第二実施例における燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図であり、図6は図5における磁気コアの外周部Bの拡大図である。また、図7は図5におけるノズルホルダ上端面と磁気コア接触部Eの拡大図である。なお図5,図6,図7において図1,図2と同一の構成部品には同一符号を付す。
【0035】
図5,図6に示した例では、第一の実施例に加えて、ノズルホルダ101に内径の大きい内径大径部605と内径の小さい内径小径部606を設けている。これにより、磁気コア107の外径がノズルホルダ101の内径小径部606よりも大きくなる。ここで、断面積の幾何学的関係から、コイル105の内径側へ配置された磁気コア107の断面積を確保することは、コイル105の外径側に配置されたハウジング103の断面積を確保することよりも困難である。従って、磁気コア107の吸引面は磁路断面積が小さいために、ハウジング103に比べて先に磁気飽和する。そこで、本実施例では、磁気コア107の外径をノズルホルダ101の内径小径部606よりも大きくすることで、磁気コア107の径方向の断面積を確保しやすくした。また、磁気コア107の可動子側端面604の面積は、内径拡大部201よりも上流部の磁気コア107の断面積に比べて10%以上小さくするように構成するとよい。これは、磁気コア107が飽和磁束密度に達するのを抑制できる効果があり、磁気コア107の磁束密度を下げることで、磁気回路に発生する磁束数を増加することができる。
【0036】
また、磁気コア107に軟磁性体を用いる場合には、磁気コア107可動子側端面604の面積は、内径拡大部201よりも上流位置での断面積に比べて10%以上小さく絞るように構成するとよい。一般的な軟磁性体では、飽和磁束密度よりも10%程度磁束密度が小さくなると、磁気飽和の状態ではなくなって透磁率が大きくなる。したがって、磁気コア107の可動子側端面604の面積よりも大きい断面積を磁気コア107が持つことによって、磁気コア107の吸引面以外の部分の磁束密度を抑制でき、透磁率が大きい状態で吸引面だけを飽和磁束密度に近づけることができる。この効果によって、磁気コア107の磁気抵抗が低下し、吸引力を増大させることができる。また、磁気コア107の可動子側端面604の外径は、ノズルホルダ101の内径小径部606よりも大きくするとよい。これは、渦電流の影響により、コイル105の内径側から磁化するため、磁気コア107とコイル105の距離を小さくすることによって、磁化の速度を促進させて、動的な応答性を向上するためである。
【0037】
また、図6に示すように、ノズルホルダ101は、内径大径部605から内径小径部606へ切り替わる切替え位置607を有している。この切替え位置607と磁気コア107の可動子側端面604との軸方向のギャップh_(g)は、閉弁状態において弁体114と可動子102とが静止した状態における磁気コア107と可動子102との距離H_(st)よりも大きく設定するとよい。これは、磁気コア107の外径をノズルホルダ101の内径小径部606よりも大きくすることで、磁気コア107の可動子側端面604から切替え位置607へ磁束が漏れやすい問題があるためである。このようにギャップh_(g)を設定することで、磁気コア107の可動子側端面604からノズルホルダ101の切替え位置607に流れる磁束を最小限に抑制できる。つまり、磁気コア107と可動子102との間に流れる磁束を増加することができ、磁気吸引力の向上が可能となる。なお、ノズルホルダ101の切替え位置607の形状は、図6では平面状の例を示している。このように平面状にすることで、ノズルホルダ101の内径小径部606が可動子102の側面に近傍する範囲を大きくすることができ、可動子102と内径小径部606との間の磁気抵抗が小さくなるため、大きい磁気吸引力を得やすくなる。但し、切替え位置は、下流に向けて内径が小さくなるテーパーもしくは曲率を含んだ形状であってもよい。
【0038】
また、内径小径部606と内径大径部605との距離Δrは、可動子102とノズルホルダ101の内径小径部606とのギャップS_(g)よりも大きくなるように構成するとよい。距離ΔrをギャップS_(g)よりも大きくすることで、ギャップS_(g)を小さくすることができ、可動子102とノズルホルダ101の間の磁気抵抗を低減することができる。この効果により、磁気吸引力を向上できる。
【0039】
また、図5,図7に示すように、寸法の幾何学的な関係から、コイル105の外側に位置する磁気コア107の磁路断面積よりも、コイル105の内径側に位置する磁気コア107の断面積を確保することが難しい。従って、磁気コア107に逃げを設ける場合、磁気コア107がノズルホルダ101の内径と接触する円筒面172ではなく、逃げ部170のようにノズルホルダ101の上端面と接触する接触面171に設けるとよい。この効果により、磁気コア107の磁路断面積の縮小を抑えることができ、磁気吸引力の向上ができる。
【0040】
内径拡大部201の開口径d_(a)と磁気コア107の内径(燃料通路210の直径)d_(c)との差の半分、すなわち内径拡大部201の開口の半径と磁気コア107の貫通孔210aの半径との差Δdは、内径小径部606と内径大径部605との距離Δrよりも大きくしている。Δdは内径拡大部201の開口円と磁気コア107の内周円との径方向(弁軸に直交する方向)における間隔でもある。径方向におけるこの間隔の範囲に内径拡大部201のテーパー部が設けられる。異なる半径を有する2つの円周の間に挟まれた部分の面積を、円の中心から遠い半径位置と近い半径位置とで同じにするためには、円の中心から遠い半径位置の方が近い半径位置の場合よりも2つの円周の半径の差を小さくすることができる。従って、磁気コア107の可動子102と対向する端面において内径拡大部201を設けるために減少する面積を磁気コア107の外周部で補う場合、Δdに対してΔrは小さくてもよい。逆の見方をすれば、確保できるΔrに対してΔdを大きくする必要がある。
【実施例3】
【0041】
図8,図9を用いて本発明における第三実施例について説明する。図8は本発明に係る第三実施例の燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図であり、図9は、図8における磁気コア外周部Dの拡大図である。なお、図5,図9において図1,図2,図5,図6と同一の構成部品には同一符号を付す。
【0042】
図8,図9に示した例では、第二実施例に加えて、ノズルホルダ101の外周面にノズルホルダ101の外径よりも小さい外径小径部908を設け、磁気コア107と接触しているノズルホルダ101の内径大径部605と外径小径部908とで磁気的な絞り部909を構成したものである。外径小径部908はノズルホルダ101の外周面に弁軸心を取り巻くように形成された環状の凹部(溝部)を構成する。ノズルホルダ101に磁気的な絞り部909を設けることで、ノズルホルダ101を流れる磁束を減少させ、磁気コア107と可動子102との間を流れる磁束を増加させることができる。この磁束の増加によって磁気吸引力が向上できる。また、磁気コア107とノズルホルダ101を流れる磁束は、磁気コア107の可動子側端面604の位置で、可動子102へ流れる磁束とノズルホルダ101の磁気的な絞り部909に流れる磁束に分配される。ここで、外径小径部908の弁軸方向の位置を、磁気コア107の可動子側端面604の外径方向の延長上にすることで、磁気的な絞り部609に流れる磁束を抑えることができ、磁束を可動子102側へ多く流すことができるため、吸引力が向上できる。また、磁気的な絞り部909を設けることで、磁気的な絞り部909の磁路断面積を小さくすることができるため、電流をコイル105に供給してから磁気的な絞り部909が磁気飽和するまでの時間を短縮することが可能となる。この効果によって、磁気コア107と可動子102の内径側に磁化が進行する速度を上げることができ、動的な吸引力の応答性を向上できる。
【実施例4】
【0043】
図10を用いて本発明に係る第四実施例について説明する。図10は本発明に係る燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図である。なお、図10において図1,図2,図6と同一の構成部品には同一符号を付す。
【0044】
図10に示した例では、第二実施例に加えて、磁気コア107の内径側に第一のテーパー701と第二のテーパー702の複数のテーパーを設けることである。ここで、本発明に係る燃料噴射装置では、磁気コア107の内径を燃料通路として使用するため、吸引力の向上のために必要な磁気コア107の磁路断面積と燃料通路のために必要な弁体114と磁気コア107の間の燃料通路断面積の確保の両立が望ましい。以上の理由により、磁気コア107の内径に設けたテーパーの角度を切替えることで、第一のテーパー701により、磁気コア107の可動子側端面604から離れた位置の磁路断面積を確保しつつ、第二のテーパー702により、下流方向へ向かって燃料通路断面積を大きくすることができ、燃料噴射装置の設計が容易となる。
【実施例5】
【0045】
図11,図12を用いて本発明に係る第五実施例について説明する。図11は第五実施例における燃料噴射装置の駆動部断面の拡大図であり、図12は図11における可動子102の内径部Fの拡大図である。なお、図11,図12において図1,図2,図6と同一の構成部品には同一符号を付す。
【0046】
図11に示した例では、第二実施例に加えて、磁気コア107の内周面に吸引面に向かって内径が拡大する内径拡大部201を、曲率を含む形状とした内径拡大部801とした。ここで、磁気コア107の内径側の燃料通路断面積が最も小さくなるのは、弁体114に設けた規制部114aと磁気コア107との間である。磁気コア107の内径側に設けた磁気的な絞りを内径拡大部801のような曲率を含む形状にすることで、燃料通路断面積が最も縮小される部分の磁気コア107の内径d_(a)を変化させずに、上流部と下流部の磁気コア107の磁路断面積を大きくすることができる。これにより、磁気コア107に発生可能な磁束の数が増加し、吸引力を向上できる。
【0047】
また、可動子102とノズルホルダ101内径の隙間は、可動子102が傾いても接触しない隙間を有することが望ましい。これは、可動子102とノズルホルダ101が接触すると、可動子102が受ける摩擦抵抗が大きくなり、開閉弁の応答性が低下するためである。
【0048】
また、可動子102には、弁体114と接触する摺動面を延長する摺動延長部810を設ける構成になっている。ここで、可動子102の弁体114に対する傾きは、可動子102と弁体114の摺動部の隙間および摺動高さで決定される。本実施例では、可動子102に摺動延長部710を設けることで、弁体114と可動子102の摺動高さが延長され、可動子102の弁体114に対する傾きおよび偏心を抑制できる。この効果により、可動子102とノズルホルダ101の隙間を小さくでき、可動子102の外径部の磁気抵抗が小さくなるため、磁気吸引力を向上できる。また、可動子102が偏心すると、可動子102の外径とノズルホルダ101内径との間を流れる流量が大きくなり、可動子102が受ける流体抵抗が変化する。この流体抵抗の変化によって、1噴射ごとに可動子102の挙動が異なり、噴射量ばらつきが大きくなる。以上の理由により、摺動延長部810を設けることで可動子102の偏心を抑制し、噴射量ばらつきを低減できる。また、摺動延長部810は、可動子102に設けた燃料通路よりも内径側に設けるとよい。これにより、摺動延長部810を設けたことによる可動子102の質量の増加を抑制できるため、開・閉弁時の応答性の低下を抑えることができる。
【実施例6】
【0049】
図13を用いて本発明に係る第六実施例について説明する。図13は、第六実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。なお、図13において、図1,図2と同一の構成部品には同一符号を付す。
【0050】
図13に示した例では、第二実施例に加えて、可動子102と弁体114を同一部材で構成することである。可動子102と弁体114は別部材を組み合わせて構成してもよいが、可動子102と弁体114が一体部材130として構成できればよい。一体部材130を用いることで、部品点数を抑えることができ、コストを低減することが可能となる。
また、可動子102と弁体114が別体となっている構造においては、閉弁時において、弁体114が弁座118と衝突する際に、可動子102が弁体114から離脱するため、弁体114と弁座118の衝突により、弁体114がバウンドして、2次的な燃料の噴射が発生するのを抑制できる。その反面、弁体114が弁座118と衝突すると、可動子102が弁体114から離脱し、下向き方向に運動するため、可動子102が静止するまでの時間が長くなるというデメリットがある。可動子102が静止するまでの時間は、可動子102の質量および弁体114と弁座118の衝突時の速度、ゼロスプリング112のスプリング力や可動子102が受ける流体力の力のバランスによって変化する。可動子102が静止するまえに次回の噴射を行うと、弁体114が動き始めてから開弁するまでの時間が変動し、噴射量を正確に管理することが困難になる。本実施例によれば、閉弁時に弁体114が弁座118に衝突してから可動子102が静止するまでの時間を短縮することができるため、次の噴射を行うまでの時間を短縮でき、応答性が向上する。
【実施例7】
【0051】
図14を用いて本発明に係る第七実施例について説明する。図14は、第七実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。なお、図14において、図1,図2と同一の構成部品には同一符号を付す。
【0052】
図14に示した例では、第二実施例に加えて、弁体114に燃料通路孔である燃料通路中心孔140を設け、可動子102の磁気コア107側端面に溝190を設けることである。溝190を設けることで、可動子102の磁気コア107側端面の面積が小さくなるため、吸引面の磁束密度が増加し、吸引力が向上できる。なお、溝190は例えば円環状にするとよい。
【0053】
本実施例では、燃料通路中心孔140は弁体の中心位置に設けている。このような構成により、磁気コア107と弁体114との間に燃料通路を確保する必要がないため、磁気コア107の磁路断面積を大きくし、吸引力を向上できる。また、弁体114の質量が小さくなるため、閉弁時に弁体114が弁座118に衝突する際の衝撃力が小さくなり、弁体114が弁座118に衝突後に発生するバウンドを低減でき、バウンドによって発生する2次的な燃料の噴射を抑制できる。
【実施例8】
【0054】
図15を用いて本発明に係る第八実施例について説明する。図15は、第八実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。なお、図15において、図1,図2と同一の構成部品には同一の符号を付す。
【0055】
図15に示した例では、第二実施例に加えて、磁気コア107の内径の肉厚を小さくする目的で設けたテーパー181の上流部に磁気コア107の内径d_(c)よりも内径が大きい大径部180を設けることである。この効果により、磁気コア107からスプリング110への磁束漏れを低減することができ、吸引力の向上ができる。また、磁気コア107と弁体114の間は、燃料の流体通路であるため、大径部180を設けることで、流体通路を拡大する効果がある。
【実施例9】
【0056】
図16を用いて本発明に係る第九実施例について説明する。図16は、第九実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。なお、図16において、図1,図2と同一の構成部品には同一の符号を付す。
【0057】
図16に示した例では、第二実施例に加えて、磁気コア107の内径に内径拡大部550を設けている。本実施例では、内径拡大部550を単純なテーパー形状とするのではなく、段差面を少なくとも2つ以上有する階段状の形状としている。この階段状の形状により、実質的にテーパー形状としたのと同じような効果を得ることができる。尚、本実施例では、3段で構成している。
【実施例10】
【0058】
図17を用いて本発明に係る第十実施例について説明する。図17は、第十実施例における燃料噴射装置の駆動部構造の拡大図である。なお、図17において、図1,図2,図11と同一の構成部品には同一の符号を付す。
【0059】
図17に示した例では、第二実施例に加えて、可動子102に弁体114との間で力を伝達する中面620を設け、可動子102に傾斜面621を構成する。すなわち、中面620は可動子102の磁気コア107との対向面102bに形成された凹部の底面を構成している。傾斜面621は、中面620と対向面102bとの間を繋ぐ面として形成されたものである。傾斜面621を設けることで、可動子102の磁気コア107側端面の面積が小さくなるため、吸引面の磁束密度が増加し、吸引力が向上できる。また、中面620を設けることで、可動子102の質量を小さくできるため、開・閉弁時における可動子102の加速度が大きくなり、開弁に要する時間を短縮できる。また、弁体114に設けた規制部114aと可動子102の接触面が可動子102の上端面より下側にくることで、磁気コア107と弁体114との間に設けていた燃料通路202の通路面積が大きくなる。従って、磁気コア107の磁路断面積を大きくとることができるため、磁気吸引力が向上する。また、弁体114と磁気コア107間の隙間を大きくすることで、可動子102に設けた燃料通路孔203の位置を内径側に設けることができるため、可動子102の磁路断面積が燃料通路孔203によって小さくなるのを抑制でき、吸引力の向上が可能となる。
【0060】
また、本実施形態では、可動子102に傾斜面621を設けることで、コイル105から離れた位置にある可動子102の内径側の肉厚が小さくなるように構成する。この効果により、コイル105へ電流を供給した状態から電流の供給を停止する際に、可動子102の内径側に残る残留磁束を小さくすることができるため、閉弁時の応答性を向上することができる。
【0061】
このように、中面620を設けるような場合には、可動子102に摺動延長部810を設けるとよい。中面620を設けた場合には、弁体114との摺動長さが短くなってしまうが、摺動延長部810を設けることによって、可動子102の質量の増加を抑えながら摺動長さを確保でき、可動子102の傾きを抑制できる。
【0062】
また、磁気コア107の可動子側端面と対抗する可動子102の面よりも内径側に内径拡大部201を設けるとよい。この効果により、内径拡大部201と可動子102の中面620との距離が大きくなるため、磁気コア107の吸引面に効率よく磁束を流すことができ、吸引力の向上が可能となる。
【符号の説明】
【0063】
101 ノズルホルダ
102 可動子
103 ハウジング
104 ボビン
105 コイル
107 磁気コア
110 スプリング
112 ゼロスプリング
113 ロッドガイド
114 弁体
114a 規制部
115 プランジャロッドガイド
116 オリフィスカップ
118 弁座
119 噴射口
120 アジャスタピン
121 シール部材
123 燃料供給口
130 一体部材
180 大径部
181 テーパー
190 溝
201,205,550,801 内径拡大部
202 燃料通路
203 燃料通路孔
206,604 可動子側端面
210 貫通孔
301 凹部
302 傾斜面
303 下部内径面
605 内径大径部
606 内径小径部
701 第一のテーパー
702 第二のテーパー
810 摺動延長部
908 外径小径部
909 磁気的な絞り部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記内径拡大部の内径はほぼ直線形状のテーパ形状であることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射装置において、
前記弁体を閉弁方向に付勢するスプリングを備え、
前記スプリングの外径は前記内径部の径よりも小さく、前記スプリングは前記内径部の内周側で支持されることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料噴射装置において、
前記大径部の内径はほぼ一定となるように形成されることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料噴射装置において、
前記内径拡大部の内径は前記可動子と対向する端面に向かって次第に拡大されることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の燃料噴射装置において、
前記弁体は弁ニードル部と前記弁ニードル部よりも大きな径を有する拡径部とを有し、
前記可動子は、前記弁体の前記拡径部の規制部と協働して開閉弁動作を行わせるように構成され、
前記内径拡大部は、前記拡径部の外径側に位置するとともに、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記拡径部の前記規制部と反対側の端面よりも上流側において形成されることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の燃料噴射装置において、
前記可動子には前記弁体が挿入される挿入孔と前記挿入孔よりも外周側に位置する燃料通路孔が形成され、
前記挿入孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置するとともに、前記燃料通路孔は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部と軸方向において重なる位置に形成されることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料噴射装置において、
前記燃料通路孔の中心は前記内径拡大部が形成された前記磁気コアの前記端面の内径部よりも内周側に位置することを有することを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項8】
弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に立置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、当該孔の軸方向の半分以上の範囲において前記反対側の端面に向かって内径が拡大する内径拡大部が形成されることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項9】
弁体と、
前記弁体と協働して開閉弁動作を行わせる可動子と、
コイルに通電することにより励磁されて前記可動子を駆動する磁気力を発生する磁気コアと、を備えた燃料噴射装置において、
前記磁気コアには、前記可動子と対向する端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、
前記孔には、
燃料通路を形成する内径部と、
前記内径部よりも下流側に位置し、前記内径部の内径よりも大きい内径を有する大径部と、
前記大径部よりも下流側に位置し、前記可動子と対向する端面に向かって内径が拡大する内径拡大部とが形成され、
前記内径拡大部の形成面と前記可動子との弁軸に沿う方向の間隔が、前記磁気コアの前記端面の内径部から前記孔の奥側に向かうほど拡大するように構成され、
前記可動子は、前記磁気コアと対向する端面と反対側の端面に開口して弁軸に沿う方向に孔が形成され、前記孔は、前記反対側の端面に向かって内径が拡大し、ほぼ直線形状のテーパ形状である内径拡大部が形成されることを特徴とする燃料噴射装置。
【請求項10】
請求項1?7の何れかに記載の燃料噴射装置において、
前記弁体は、前記可動子の前記弁体に対する開弁方向の相対変位を規制する規制部を有し、
前記規制部は、前記弁体よりも大きな径を有する拡径部によって形成され、
前記規制部は、前記可動子と前記磁気コアが接触し、前記可動子と前記規制部が接触した状態で、前記孔の前記内径拡大部内に位置し、
前記内径拡大部の範囲は、前記磁気コアの前記可動子側端面から前記拡径部の前記規制部と反対側の端面よりも上流部まで構成されている燃料噴射装置。
【請求項11】
請求項1?7の何れかに記載の燃料噴射装置において、
前記磁気コアと前記可動子とが対向する前記可動子の端面は、平面状である燃料噴射装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-03-15 
出願番号 特願2015-229270(P2015-229270)
審決分類 P 1 652・ 854- YAA (F02M)
P 1 652・ 857- YAA (F02M)
P 1 652・ 856- YAA (F02M)
P 1 652・ 121- YAA (F02M)
P 1 652・ 851- YAA (F02M)
P 1 652・ 855- YAA (F02M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 櫻田 正紀  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 粟倉 裕二
鈴木 充
登録日 2017-06-02 
登録番号 特許第6151336号(P6151336)
権利者 日立オートモティブシステムズ株式会社
発明の名称 燃料噴射装置  
代理人 内藤 和彦  
代理人 戸田 裕二  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 戸田 裕二  
代理人 江口 昭彦  

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