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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1351793
審判番号 不服2018-4745  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-06 
確定日 2019-05-16 
事件の表示 特願2016-536529「D2Dディスカバリー信号を送信する方法及び装置並びに通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月11日国際公開、WO2015/081561、平成29年 2月 2日国内公表、特表2017-504242〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2013年(平成25年)12月6日を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年6月23日 手続補正書の提出
平成29年5月31日付け 拒絶理由通知書
平成29年8月 9日 意見書の提出
平成30年2月 9日付け 拒絶査定
平成30年4月 6日 拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提出
平成30年7月10日 上申書の提出
平成30年12月13日 上申書の提出


第2 平成30年4月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の結論の決定]
平成30年4月6日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。


[理由]
1 補正の概要
(1)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の出願当初の特許請求の範囲の請求項1は次のとおりである。

「D2Dディスカバリー信号を送信する方法であって、
ユーザ装置が、前記D2Dディスカバリー信号を送信するためのリソースプールのうちから一部のリソースを選択し、前記一部のリソースは、送信回数を限定する方式、時間間隔を限定する方式、又は、リソース位置を計算する方式で選択され;及び
選択された前記一部のリソースにより、前記D2Dディスカバリー信号を送信することを
含む、方法。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された。(下線は補正箇所を示す。)

「D2Dディスカバリー信号を送信する方法であって、
ユーザ装置が、前記D2Dディスカバリー信号を送信するためのリソースプールのうちから一部のリソースを選択し、前記一部のリソースは、所定の送信回数とするために選択され;及び
選択された前記一部のリソースにより、前記D2Dディスカバリー信号を送信することを
含む、方法。」


2 補正の適否
上記補正は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記一部のリソースは,送信回数を限定する方式,時間間隔を限定する方式,又は,リソース位置を計算する方式で選択」との事項を,「前記一部のリソースは,所定の送信回数とするために選択」とするものである。
ここで,本願の国際出願日における国際出願の明細書等の翻訳文(段落0036-0039)の記載によると,「送信回数を限定する方式」,「時間間隔を限定する方式」,「リソース位置を計算する方式」で選択されたリソースにより送信することで,ある時間の範囲内において「所定の送信回数」となるから,これらの方式で選択されたリソースはいずれも「所定の送信回数とするために選択」されたものであるといえる。
そうすると,「前記一部のリソースは,所定の送信回数とするために選択」されることは,「前記一部のリソースは,送信回数を限定する方式,時間間隔を限定する方式,又は,リソース位置を計算する方式で選択」されることを含むばかりか,これらの方式以外の方式によって「前記一部のリソースは,所定の送信回数とするために選択」されることを含むから,請求項1についての前記補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
そして,請求項1についての上記補正が,特許法第17条の2第5項1号(請求項の削除),3号(誤記の訂正),4号(明りょうでない記載の釈明)に規定される事項を目的とするものでないことは明らかである。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。


3 独立特許要件
上記2のとおり,本件補正は特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるが,更に進めて,仮に,本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして,本件補正後の請求項に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて検討する。


(1)本願補正発明
本願補正発明は,上記1(2)のとおりのものと認める。


(2)引用例の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された,CATT,Considerations on D2D Discovery Resource Allocation(当審仮訳:「D2Dディスカバリ・リソース割り当ての検討」),3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #84 R2-134062,[online],2013.11.2,pages 1-4,[検索日 2017.05.31],インターネット(以下,「引用例3」という。)には,以下の事項が記載されている。

ア 「2.1. Common issues
(中略)
Discovery applications decide the start time and the ending time of the discovery sessions. When the AS layer of UE receives D2D discovery message from the upper layer, it will broadcast the message once within a window or cycle (T) and continuously repeat it in another window or cycle.
(中略)
The window or cycle T can be passed from the upper layer to the AS layer within UE. Upper layer of UE may only provide QoS requirements for the D2D discovery session, and the AS layer decides the value of T. 」(1ページ18行-30行)
(当審仮訳:「2.1 共通の問題
(中略)
ディスカバリ・アプリケーションは,ディスカバリ・セッションの開始時間,及び終了時間を決定する。UEのAS層が,上位層からD2Dディスカ
バリ・メッセージを受信すると,ウィンドウ,又はサイクル(T)内で1回メッセージをブロードキャストし,それを別のウィンドウ,又はサイクルで連続的に繰り返す。
(中略)
ウィンドウ,又はサイクルTは,UE内の上位層からAS層に渡すことができる。UEの上位層は,D2D発見セッションのためにQoS要件を提供するだけであり,AS層がTの値を決定する。)

イ 「2.2. Brief Flow Charts of Resource Allocation
The possible flow chart of resource allocation for Type1 is shown in Figure 1.

Figure 1 Flow chart of Type1 resource allocation
In Figure 1, Announcing UE broadcasts a D2D discovery signaling once within every window T, which may be different for different D2D discovery sessions. In addition, if it is allowed to process multiple D2D discovery sessions in parallel, the UE may send multiple D2D discovery messages in a TTI.」(2ページ3行-7行)
(当審仮訳:「2.2 リソース割り当ての簡単なフローチャート。
Type1のためのリソース割り当ての可能なフローチャートが図1に示されている。
(図1は省略。)
図1において,アナウンシングUEは各ウィンドウT毎に一度,D2Dディスカバリ・シグナリングをブロードキャストし,Tは異なるD2Dディスカバリ・セッションに対して異なることができる。加えて,複数のD2Dディスカバリ・セッションを並列に処理することができる場合,UEは複数のD2Dディスカバリ・メッセージをTTI内に送信することができる。」)

上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると,引用例3には,次の技術事項が記載されている。

(ア)上記イの図1には,eNBからモニタリングUE,及びアナウンシングUEに対して,D2Dディスカバリ・リソース・プールの情報をブロードキャストすること,及びアナウンシングUEは,D2Dリソースプールからリソースを取得し,D2Dディスカバリ・シグナリングをブロードキャストすることがみてとれる。そして,UEがブロードキャストを行うためには,そのためのリソースをリソース・プールから取得する必要があることが,当業者の技術常識であるから,上記イの図1において,アナウンシングUEによってリソースが取得される,D2Dディスカバリ・リソースプールは,D2Dディスカバリ・シグナリングをブロードキャストするためのものであるといえる。
そうすると,引用例3には,UEが,D2Dディスカバリ・シグナリングをブロードキャストするためのD2Dディスカバリ・リソースプールからリソースを取得することが記載されていると認められる。

(イ)上記アの記載によると,サイクルTは,UE内で決定されたTの値に基づくサイクルであること,及び「ウインドウ,又はサイクル(T)」との記載からウインドウTはサイクルTと言い換えることができるから,上記イに記載された,ウインドウT毎に一度,D2Dディスカバリ・シグナリングをブロードキャストすることは,UE内で決定された値に基づくサイクルT毎に1回,D2Dディスカバリ・シグナリングをブロードキャストすることであるといえる。
よって,引用例3には,リソースは,UE内で決定された値に基づくサイクル毎に1回,ブロードキャストするために取得され,取得された前記リソースにより,D2Dディスカバリ・シグナリングをブロードキャストすることが記載されていると認められる。

したがって,引用例3には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「UEが,D2Dディスカバリ・シグナリングをブロードキャストする方法であって,
UEが,前記D2Dディスカバリ・シグナリングをブロードキャストするためのD2Dディスカバリ・リソースプールからリソースを取得し,前記取得されたリソースは,UE内で決定された値に基づくサイクル毎に1回,ブロードキャストするために取得され,
取得された前記リソースにより,前記D2Dディスカバリ・シグナリングをブロードキャストすることを含む,方法。」


(3)引用発明との対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア ブロードキャストは,宛先を特定せずに全ての機器に対して送信を行うことであるのが,当業者の技術常識であるから,引用発明のブロードキャストすることは,「送信する」ことに含まれる。

イ 本願補正発明の「ユーザ装置」と「D2Dディスカバリー信号」と,引用発明の「UE」と「D2Dディスカバリ・シグナリング」とは,表現が異なるのみであって差異はない。

ウ 上記ア,イのとおりであるから,引用発明の「UEが,D2Dディスカバリ・シグナリングをブロードキャストする方法」,「UEが,前記D2Dディスカバリ・シグナリングをブロードキャストするためのD2Dディスカバリ・リソースプールからリソースを取得」すること,及び「取得された前記リソースにより,前記D2Dディスカバリ・シグナリングをブロードキャストすること」は,明らかに本願補正発明の「D2Dディスカバリー信号を送信する方法」,「ユーザ装置が、前記D2Dディスカバリー信号を送信するためのリソースプールのうちから一部のリソースを選択」すること,及び「選択された前記一部のリソースにより、前記D2Dディスカバリー信号を送信すること」に,それぞれ相当する。

エ 引用発明の「UE内で決定された値に基づくサイクル毎に1回,ブロードキャストするために取得」することは,それにより所定期間tにおける送信回数は,t/Tとなることが明らかであるから,所定期間内において所定回数の送信を行うために選択するということができる。
そして,本願明細書の段落0033,0036等の記載によれば,本願補正発明の「所定の送信回数」は,所定期間内での送信回数を含むものであるから,引用発明の,UE内で決定された値に基づくサイクル毎に1回,ブロードキャストするために取得することは,本願補正発明の「所定の送信回数とするために選択され」ることに含まれる。

そうすると,本願補正発明と引用発明とは,
「D2Dディスカバリー信号を送信する方法であって、
ユーザ装置が、前記D2Dディスカバリー信号を送信するためのリソースプールのうちから一部のリソースを選択し、前記一部のリソースは、所定の送信回数とするために選択され;及び
選択された前記一部のリソースにより、前記D2Dディスカバリー信号を送信することを
含む、方法。」で一致し,相違点はない。

そして,本願補正発明の作用効果も,当業者が引用発明に基づいて予測し得る範囲のものである。

したがって,本件補正発明は,引用例3に記載された発明である。また,引用例3に記載された発明に基いて,本願補正発明とすることは,当業者にとって容易である。
よって,本件補正発明は,特許法第29条第1項第3号,同条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4 予備的検討
原査定は,異なる3つの引用例のそれぞれに基づいて,新規性,進歩性を否定していることから,さらに別の引用例についても検討する。

(1)引用例の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された,Huawei, HiSilicon,Comparison of Type 1, Type 2a, and Type 2b Discovery Resource Allocation(当審仮訳:「タイプ1,タイプ2a,タイプ2bのディスカバリ・リソース割り当ての比較」),3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #83bis R2-133278,[online],2013.9.27,pages 1-7,[検索日 2017.05.31],インターネット(以下,「引用例2」という。)には,以下の事項が記載されている。

ア 「1 Introduction
At RAN1#73b, three types of D2D discovery were introduced:
Type 1: a discovery procedure where resources for discovery signal transmission are allocated on a non UE specific basis
- Note: Resources can be for all UEs or group of UEs (後略)」(1葉7行-11行)
(当審仮訳:「1 イントロダクション
RAN#73bisでは,3つのタイプのD2Dディスカバリが導入された:
タイプ1:ディスカバリ信号の送信のためのリソースが非UE固有ベース上に割り当てられるディスカバリ手続。
-注:リソースは,全てのUE,又はUEのグループに対してであってもよい(後略)」)

イ 「2 Resource Allocation for Direct Discovery
(中略)
Therefore the discovery region on a discovery subframe may be further subdivided into time/frequency discovery resources (DTFR).」(1葉27行-29行)
(当審仮訳:「2 ダイレクト・ディスカバリのためのリソース割り当て
(中略)
したがって,ディスカバリ・サブフレーム上のディスカバリ領域は,時間/周波数ディスカバリ・リソース(DTFR)にさらに細分化されてもよい。」)

ウ 「2.1 Type 1 discovery resource selection
In type 1 discovery resource allocation, the eNB allocates a pool of discovery subframes to be shared by all UEs, or by a group of UEs.The eNB can signal the pool of discovery subframes to all UEs using a dedicated system information block SIB.It is important that the encoding of the Type 1 discovery resources be done efficiently, so as to minimize the overhead of this new SIB.Upon entering a new cell (e.g. handoff or cell reselection) a ProSe enabled UE would read this SIB, and extract a set of relavent parameters.The UE will then use these parameters to select which DTFRs it can use to announce its discovery signal, and which DTFRs it should monitor for discovery of signals transmitted by other UEs.」(1葉33行-40行)
(当審仮訳:「2.1 タイプ1ディスカバリ・リソース選択
タイプ1ディスカバリ・リソース割り当てにおいて,eNBは,全てのUEによって,又はUEのグループによって共有されるディスカバリ・サブフレームのプールを割り当てる。eNBは,専用システム情報ブロックSIBを使用して,ディスカバリ・サブフレームのプールを全てのUEにシグナリングすることができる。eNBは,専用システム情報ブロックSIBを使用して,ディスカバリサブフレームのプールを全てのUEにシグナリングすることができる。タイプ1ディスカバリ・リソースの符号化は,この新しいSIBのオーバヘッドを最小限に抑えるように,効率的に行われることが重要である。新しいセルに入ると(例えば,ハンドオフ又はセル再選択)ProSe対応UEは,このSIBを読み出し,関連するパラメータのセットを抽出する。次いでUEは,これらのパラメータを使用して,そのディスカバリ信号をアナウンスするために使用することができるDTFRsを選択するとともに,他のUEにより送信された信号の発見を監視すべきDTFRsを選択する。」)

エ 「Each UE (depicted by different colors in Figure 1) transmits its discovery signal no more than once per Discovery cycle.
In order to minimize interference and blocking between discovery signals transmitted by different UEs, it is desirable that each UE hop it transmissions over time and frequency from one discovery cycle to the next [3].
(中略)
Proposal 3: For Type 1 resource allocation, each UE will transmit a discovery signal at most once per Discovery cycle.The UE should hop its discovery signal transmissions across time and/or frequency from one Discovery cycle to another.」(2葉15行-23行)
(「各UE(図1の異なる色によって示されている)は,ディスカバリ・サイクル毎に1回以下で,そのディスカバリ信号を送信する。
異なるUEによって送信されたディスカバリ信号間の干渉,及びブロッキングを最小化するために,各UEは,1つのディスカバリ・サイクルから次のディスカバリ・サイクルに,時間,及び周波数にわたって送信をホップすることが望ましい[3]。
(中略)
提案3:タイプ1リソース割り当てのために,各UEはディスカバリ・サイクル毎にせいぜい1回,ディスカバリ信号を送信する。UEは,1つのディスカバリ・サイクルから別のディスカバリ・サイクルに,時間,及び/又は周波数にわたって,そのディスカバリ信号送信をホップするべきである。」)

上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると,引用例2には,次の技術事項が記載されている。

(ア)上記アの記載によると,ディスカバリ信号は,D2Dディスカバリ信号であるといえるから,引用例2には,D2Dディスカバリ信号を送信する方法が記載されていると認められる。

(イ)上記ウによると,UEは,ディスカバリ信号をアナウンスするために使用することができるDTFRsを,ディスカバリ・サブフレームのプールから選択することが記載されているところ,上記イの記載によれば,DTFRsは,ディスカバリ・リソースであり,また,上記ア,及びエの記載から,前記ディスカバリ信号をアナウンスすることは,ディスカバリ信号を送信することであるから,上記ウには,UEは,D2Dディスカバリ信号を送信するために使用することができるディスカバリ・リソースを,ディスカバリ・サブフレームのプールから選択することが記載されていると認められる。

(ウ)上記エには,ディスカバリ・サイクル毎に1回,ディスカバリ信号を送信することが記載されているところ,上記(イ)のとおり,ディスカバリ・リソースは,ディスカバリ信号を送信するため選択されるものであるから,引用例2には,一部のディスカバリ・リソースは,ディスカバリ・サイクル毎に1回,D2Dディスカバリ信号を送信するために選択され,選択された前記一部のディスカバリ・リソースにより,前記D2Dディスカバリ信号を送信することが記載されていると認められる。

したがって,引用例2には以下の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「D2Dディスカバリ信号を送信する方法であって,
UEは,D2Dディスカバリ信号を送信するために使用することができるディスカバリ・リソースを,ディスカバリ・サブフレームのプールから選択し,
前記選択は,ディスカバリ・サイクル毎に1回,D2Dディスカバリ信号を送信するために選択され,
前記選択されたディスカバリ・リソースにより,前記D2Dディスカバリ信号を送信することを含む,
方法。」


(2)対比・判断
本願補正発明と引用発明2とを対比する。

ア 本願補正発明の「ユーザ装置」と,引用発明2の「UE」とは,表現が異なるのみであって差異はない。

イ 引用発明2のディスカバリ・サブフレームのプールは,D2Dディスカバリ信号を送信するためのリソースを選択するために用いられるものであるから,D2Dディスカバリ信号を送信するためのリソースプールであるといえる。

ウ 上記ア,イのとおりであるから,引用発明2の「UEは,D2Dディスカバリ信号を送信するために使用することができるディスカバリ・リソースを,ディスカバリ・サブフレームのプールから選択」すること,及び「前記選択されたディスカバリ・リソースにより,前記D2Dディスカバリ信号を送信すること」は,明らかに本願補正発明の「ユーザ装置が、前記D2Dディスカバリー信号を送信するためのリソースプールのうちから一部のリソースを選択」すること,及び「選択された前記一部のリソースにより、前記D2Dディスカバリー信号を送信すること」に相当する。

エ 引用発明2の,ディスカバリ・サイクル毎に1回,D2Dディスカバリ信号を送信するために選択することは,それにより所定期間tにおける送信回数は,t/Tとなることが明らかであるから,所定期間内において所定回数の送信を行うために選択するということができる。
そして,本願明細書の段落0033,0036等の記載によれば,「所定の送信回数」は,所定期間内での送信回数を含むものであるから,引用発明2の,ディスカバリ・サイクル毎に1回,D2Dディスカバリ信号を送信するために選択することは,本願補正発明の「所定の送信回数とするために選択され」ることに含まれる。

そうすると,本願補正発明と引用発明2とは,
「D2Dディスカバリー信号を送信する方法であって、
ユーザ装置が、前記D2Dディスカバリー信号を送信するためのリソースプールのうちから一部のリソースを選択し、前記一部のリソースは、所定の送信回数とするために選択され;及び
選択された前記一部のリソースにより、前記D2Dディスカバリー信号を送信することを
含む、方法。」で一致し,相違点はない。

そして,本願補正発明の作用効果も,当業者が引用発明2に基づいて予測し得る範囲のものである。

したがって,本件補正発明は,引用例2に記載された発明である。また,引用例2に記載された発明に基いて,本願補正発明とすることは,当業者にとって容易である。
よって,本件補正発明は,特許法第29条第1項第3号,同条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


5 上申書の補正案について
平成30年7月10日と,同年12月13日とに提出された上申書には,補正案(両上申書の補正案は同一である。)が提示されているので,当該補正案についても検討する。

補正案の請求項1は次のとおりである。(下線は補正箇所を示す。)
「 D2Dディスカバリー信号を送信する方法であって、
ユーザ装置が、前記D2Dディスカバリー信号を送信するためのリソースプールのうちから一部のリソースを選択し、前記一部のリソースは、送信回数を限定する方式、時間間隔を限定する方式、又は、リソース位置を計算する方式で選択され;及び
選択された前記一部のリソースにより、前記D2Dディスカバリー信号を送信することを含み、
前記一部のリソースが、リソース位置を計算する方式で選択される場合、前記方法は、
前記ユーザ装置のIDを用いて一つ又は複数のサブフレーム位置を確定し;及び
無線フレームの位置を確定し、前記リソースプールのうちの前記一部のリソースを確定することを更に含み、
前記ユーザ装置のIDを用いて一つ又は複数のサブフレーム位置を確定することは、m個の使用可能なサブフレームのうちのq0番目のサブフレームを選択することを含み、
mは、前記リソースプールのうちのサブフレームの数であり、q0は、UE_ID=m*p0+q0により確定され、0≦q0<mであり、UE_IDは、前記ユーザ装置のIDであり、p0及びq0は、正の整数である、方法。」

上記補正案の請求項1に係る発明の「前記一部のリソースは,送信回数を限定する方式,時間間隔を限定する方式,又は,リソース位置を計算する方式で選択」されるとの事項は,「又は」が択一的な選択肢であることを示すものであるから,「前記一部リソースが送信回数を限定する方式のみで選択」されることを包含するものである。
そして,本願明細書段落0033,0036-0037等の記載によれば,上記補正案の請求項1の「送信回数を限定する方式」は,ある周期内において所定回数の送信を行うものであるから,上記補正案の請求項1に係る発明は,上記3(3)あるいは上記4(2)で述べたとおり,引用例3あるいは引用例2に記載された発明であり,引用例3あるいは引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたものである。
したがって,上記補正案は,採用できない。


6 むすび
上記のとおり,本件補正は特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり,仮に,本件補正を特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって,本件補正は,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
平成30年4月6日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものであり,リソースプールから一部のリソースを選択する際に「送信回数を限定する方式のみで選択する」ことを含むと認められる。


2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。」,「2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,請求項1について,引用例3,引用例2を含む3つの引用例が個別に引用されている。


3 引用発明
引用発明は,上記第2[理由]3(2)の項で認定したとおりである。


4 引用発明との対比・判断
サイクルは,一定の時間間隔の周期を示すことが,当業者の技術常識であるから,引用発明の,UE内で決定された値に基づくサイクル毎に1回,送信することは,ある周期内において所定回数の送信を行うことであると認められるところ,本願明細書の段落0033,0036等の記載によれば,本願発明の「送信回数を限定する方式」は,ある周期毎に所定の送信回数で送信するものであるから,引用発明の,前記UE内で決定された値に基づくサイクル毎に1回,送信することは,本願発明と,「送信回数を限定する方式」で送信することで一致する。
そして,その他の点については,上記第2[理由]3の「独立特許要件」の項で検討したとおりであるから,本願発明は,引用例3に記載された発明である。また,引用例3に記載された発明に基いて,本願発明とすることは,当業者にとって容易である。

また,本願発明の作用効果も,当業者が引用発明に基づいて予測し得る範囲のものである。


5 予備的検討
本願発明は,リソースプールから一部のリソースを選択する際に「時間間隔を限定する方式のみで選択する」ことも含むと認められるところ,引用発明の「UE内で決定された値に基づくサイクル毎に1回」は,送信と次の送信との時間間隔を「UE内で決定された値に基づくサイクル」に限定するものといえるから,この場合についても,同様に,引用発明と本願発明とは同一である。
したがって,本願発明は,引用例3に記載された発明である。また,引用例3に記載された発明に基いて,本願発明とすることは,当業者にとって容易である。


第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例3に記載された発明であり,また,引用例3に記載された発明に基づき,当業者が容易に想到できたものであるから,特許法第29条第1項第3号,同条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-12 
結審通知日 2019-03-19 
審決日 2019-04-02 
出願番号 特願2016-536529(P2016-536529)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 572- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田畑 利幸  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 羽岡 さやか
脇岡 剛
発明の名称 D2Dディスカバリー信号を送信する方法及び装置並びに通信システム  
代理人 平川 明  
代理人 高田 大輔  
代理人 大竹 裕明  

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