ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C11D |
---|---|
管理番号 | 1352247 |
審判番号 | 不服2017-16195 |
総通号数 | 235 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-11-01 |
確定日 | 2019-06-05 |
事件の表示 | 特願2015-544054「ポリエチレンイミンエトキシレートでの気泡の安定化」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 5日国際公開、WO2014/084885、平成28年 2月25日国内公表、特表2016-505657〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年3月8日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年11月28日(US)米国〕を国際出願日とする出願であって、 平成28年8月26日付けの拒絶理由通知に対して、平成29年2月28日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、 平成29年6月23日付けの拒絶査定に対して、平成29年11月1日付けで審判請求と同時に手続補正がなされ、 平成30年1月10日付けの拒絶理由通知に対して、平成30年4月16日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、 平成30年5月8日付けの拒絶理由通知に対して、平成30年11月14日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?6に係る発明は、平成30年11月14日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下「本1発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 0.1質量%?2質量%の正に荷電したPEIポリマー; 15質量%?60質量%の範囲のアニオン性界面活性剤、該アニオン性界面活性剤はラウリルポリオキシエチレンエーテル硫酸ナトリウムおよびC14-C16アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムからなる; 2質量%?6質量%のアミンオキシド; を含む発泡性洗浄組成物であって、 該発泡性洗浄組成物は、0.5質量%未満のコカミドDEAを含む、発泡性洗浄組成物(但し、スルホコハク酸アルキルエステル類を含む発泡性洗浄組成物を除く)。」 第3 平成30年5月8日付けの拒絶理由通知の概要 平成30年5月8日付け拒絶理由通知(以下「先の拒絶理由通知」という。)には、理由5として、次の理由が示されている。 「理由5:本願の請求項1?7に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 … 記 … 刊行物1:特表2009-537692号公報(先の刊行物1に同じ) 刊行物2:特開平3-115495号公報 刊行物3:特開2006-104330号公報」 第4 当審の判断 1.引用刊行物及びその記載事項 (1)刊行物1(特表2009-537692号公報) 上記刊行物1には、次の記載がある。 摘記1a:請求項1及び3 「【請求項1】 a)組成物の約0.1重量%?約10重量%の、約400?約10000の重量平均分子量を有するポリエチレンイミン主鎖を含むアルコキシル化ポリエチレンイミンポリマーであり、 (1)修飾あたり平均約1?約30個のアルコキシ部分を有するポリアルコキシレン鎖による窒素原子あたり1つ又は2つのアルコキシル化修飾であって、前記アルコキシル化修飾の末端アルコキシ部分が水素、C_(1)?C_(4)アルキル、又はこれらの混合物でキャップされている、アルコキシル化修飾、 (2)修飾あたり平均約1?約40個のアルコキシ部分を有するポリアルコキシレン鎖による窒素原子あたり1つのC_(1)?C_(4)アルキル部分の置換及び1つ又は2つのアルコキシル化修飾であって、前記末端アルコキシ部分が水素、C_(1)?C_(4)アルキル、又はこれらの混合物でキャップされている、置換及びアルコキシル化修飾、あるいは (3)これらの組み合わせを更に含む、アルコキシル化ポリエチレンイミンポリマーと、 b)組成物の約5重量%?約40重量%のスルフェート又はスルホネート界面活性剤とを含む、液体洗剤組成物。… 【請求項3】 前記スルフェート又はスルホネート界面活性剤が、直鎖アルキルスルホネート、脂肪族アルコールスルフェート、アルキルアルコキシル化スルフェート、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の液体洗剤組成物。」 摘記1b:段落0001及び0010 「【0001】本発明は、食器表面からの改善されたグリース洗浄を提供する、アルコキシル化ポリエチレンイミンポリマー、アミンオキシド、及びスルフェート又はスルホネート界面活性剤を含む液体洗剤組成物に関する。… 【0010】本明細書で使用するとき、「軽質液体食器洗い洗剤組成物」は、手動で(すなわち手で)食器を洗う際に用いる組成物を指す。このような組成物は一般的には、本来泡立ち又は発泡性が高い。」 摘記1c:段落0012 「【0012】特に指示がない限り、重量パーセントは液体洗剤組成物の重量パーセントに関する。特に指示がない限り、温度はすべて摂氏(℃)で表記される。」 摘記1d:段落0013、0021及び0030 「【0013】アルコキシル化ポリエチレンイミンポリマー 本発明の組成物は、組成物の約0.01重量%?約2重量%、好ましくは約0.1重量%?約1.5重量%、より好ましくは約0.2重量%?約1.5重量%のアルコキシル化ポリエチレンイミンポリマーを含み得る。… 【0021】修飾は、ポリエチレンイミン主鎖窒素原子の永続的な四級化をもたらし得る。永続的な四級化の程度は、ポリエチレンイミン主鎖窒素原子の0%?約30%であってよい。ポリエチレンイミン主鎖窒素原子の30%未満が、永続的に四級化されることが好ましい。… 【0030】(実施例3)ポリエチレンイミン主鎖の窒素(NH)あたり10個のエトキシ部分(EO)及び7個のプロポキシ部分(PO)を有し、四級化22%のポリエチレンイミン(主鎖分子量5000)で、以降PEI 5000 実施例2に示されるようにPEI5000EO10PO7を調製する。 a)四級化 窒素雰囲気下にて300gのPEI5000-10EO/NH-7PO/NH(実施例2)を60℃に加熱した。続いて7.3gのジメチルスルフェートを滴下して添加した。温度が70℃に上昇し、混合物を3時間攪拌した。アミン力価の還元(0.9672mmol/g?0.7514mmol/g)は、窒素の22%が四級化したことを示した。22%四級化されたPEI5000-(10EO-7PO)/NHである307gの明褐色の粘稠な液体を得る。」 摘記1e:段落0037、0040及び0052 「【0037】アニオン性界面活性剤…スルフェート又はスルホネート界面活性剤は、液体洗剤組成物の少なくとも5重量%、より好ましくは5重量%?40重量%、最も好ましくは5重量%?30重量%の濃度で存在する。… 【0040】スルフェート又はスルホネート界面活性剤は、C_(11)?C_(18)アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、C_(8)?C_(20)第一級分枝鎖及びランダムアルキルスルフェート(AS);C_(10)?C_(18)第二級(2,3)アルキルスルフェート;C_(10)?C_(18)アルキルアルコキシスルフェート(AE_(x)S)であって、好ましくはxが1?30であるもの;好ましくは1?5個のエトキシ単位を含む、C_(10)?C_(18)アルキルアルコキシカルボキシレート;米国特許第6,020,303号及び米国特許第6,060,443号で考察される中鎖分枝状アルキルスルフェート;米国特許第6,008,181号及び米国特許第6,020,303号で考察される中鎖分枝状アルキルアルコキシスルフェート;PCT国際公開特許WO99/05243、同WO99/05242、同WO99/05244、同WO99/05082、同WO99/05084、同WO99/05241、同WO99/07656、同WO00/23549、及び同WO00/23548で考察される変性アルキルベンゼンスルホネート(MLAS);メチルエステルスルホネート(MES);並びにα-オレフィンスルホネート(AOS)から選択されてよい。… 【0052】アミンオキシド界面活性剤 本明細書の液体洗剤組成物は、液体洗剤組成物の約0.1重量%?約15重量%のアミンオキシド界面活性剤を含んでよい。」 摘記1f:段落0081 「【0081】【表1】 1:平均0.6個のエトキシ基を含有するC_(12?13)アルキルエトキシスルホネート 2:非イオン性物質は、9個のエトキシ基を含有するC_(11)アルキルエトキシル化界面活性剤のいずれかであってよい。 3:ポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン-オキシエチレン)ABA型三元ブロックコポリマー(例えば、プルロニックL81(PLURONIC L81)(登録商標)又はプルロニックL43(登録商標)) 4:上記実施例1?4で例示されたものなど 5:1,3,BACは、1,3ビス(メチルアミン)-シクロヘキサンである。 6:(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレートホモポリマー」 2.刊行物2(特開平3-115495号公報) 上記刊行物2には、次の記載がある。 摘記2a:第2頁左上欄第3?18行 「従来の台所用洗剤は、LAS、SLES、AOS、高級アルコールEOをベースに脂肪酸アルカノールアミドやアミンオキサイドを添加したものがほとんどであったが、刺激性や毒性の点で問題があった。…起泡力は満足」 摘記2b:第5頁左上欄第1行?右下欄末行 「実施例10 ・N-ココイル-N-メチル-β-アラ ニントリエタノールアミン 2.0% ・ミリストイルアミドプロピルジメチル アミノ酢酸ベタイン 10.0% ・ラウリン酸ジエタノールアミド 8.0% ・ポリオキシエチレン(3)ラウリル エーテル硫酸ナトリウム 6.0% ・α-オレフィンスルホン酸ナトリウム 4.0% ・エタノール 3.0% ・香料 0.2% ・色素 適量 ・クエン酸 pH7.0とする量 ・メチルパラベン 0.1% ・水 残 …実施例10?12の各液体洗浄剤の皿洗い試験と再付着性試験の結果を第4表に示す。 実施例1?12の各洗浄剤組成物は手肌に温和であり、刺激が少なかった。 【発明の効果】 本発明により、刺激性が少なく手肌に温和なアシル中性アミノ酸を含有し、しかも洗浄力と汚れの再付着防止に優れた液体洗浄剤組成物が得られる。 特許出願人 川研ファインケミカル株式会社」 3.刊行物3(特開2006-104330号公報) 上記刊行物3には、次の記載がある。 摘記3a:請求項3 「【請求項3】(A)…α-オレフィンスルホン酸塩(AOS)、…ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩(AES)から選ばれるアニオン界面活性剤…含有することを特徴とする洗浄剤の刺激低減方法。」 摘記3b:段落0001 「【0001】本発明は、皮膚または粘膜に対する化学物質の刺激低減方法及であって、特に、衣料、硬質表面、毛髪、身体等に適用する洗浄剤の刺激低減方法及び洗浄剤組成物に関する。」 摘記3c:段落0038?0040 「【0038】…AOS:炭素数14?18のアルキル基をもつα-オレフィンスルホン酸ナトリウム(ライオン(株)製、純分55%の水性スラリー)…AES-Na:ポリオキシエチレン(EO3モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ライオン社製… 【0039】…C14アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム粉末品(リポランPB-800、ライオン(株)製)… 【0040】【表-1】 実施例 10 … 13 … 界面活性剤 … AOS … 1.0 … 1.0 … AES-Na … 1.0 … 1.0 」 (2)刊行物1に記載された発明 摘記1bの「本発明は、…アルコキシル化ポリエチレンイミンポリマー、アミンオキシド、及びスルフェート又はスルホネート界面活性剤を含む液体洗剤組成物に関する。…「軽質液体食器洗い洗剤組成物」は…泡立ち又は発泡性が高い。」との記載、 摘記1cの「特に指示がない限り、重量パーセントは液体洗剤組成物の重量パーセントに関する。」との記載、 摘記1dの「実施例3(実施例3)ポリエチレンイミン主鎖の窒素(NH)あたり10個のエトキシ部分(EO)及び7個のプロポキシ部分(PO)を有し、四級化22%のポリエチレンイミン(主鎖分子量5000)…22%四級化されたPEI5000-(10EO-7PO)/NHである307gの明褐色の粘稠な液体を得る。」との記載、並びに 摘記1fの「表1」における「製剤表I-軽質液体食器洗い洗剤組成物…組成物…A…C_(12?13)AE0.6S^(1)…29…C_(10?14)アミンオキシド…6…アルコキシル化ポリエチレンイミンポリマー^(4)…0.1」との記載、及び「1:平均0.6個のエトキシ基を含有するC_(12?13)アルキルエトキシスルホネート…4:上記実施例1?4で例示されたものなど」との記載からみて、刊行物1には、その「実施例3」で例示されたアルコキシル化ポリエチレンイミンポリマーを用いた「軽質液体食器洗い洗剤組成物」の具体例である「組成物A」として、 『ポリエチレンイミン主鎖の窒素(NH)あたり10個のエトキシ部分(EO)及び7個のプロポキシ部分(PO)を有する窒素の22%が四級化したアルコキシル化ポリエチレンイミンポリマー0.1重量%、平均0.6個のエトキシ基を含有するC_(12?13)アルキルエトキシスルホネート29重量%、及びC_(10?14)アミンオキシド6重量%を含む、発泡性が高い軽質液体食器洗い洗剤組成物。』についての発明(以下「刊1発明」という。)が記載されているといえる。 (3)対比 本1発明と刊1発明とを対比する。 刊1発明の「ポリエチレンイミン主鎖の窒素(NH)あたり10個のエトキシ部分(EO)及び7個のプロポキシ部分(PO)を有する窒素の22%が四級化したアルコキシル化ポリエチレンイミンポリマー0.1重量%」は、その「窒素の22%が四級化した」との記載からみて「正に荷電」していることが明らかであって、その「ポリエチレンイミンポリマー」との用語は「PEIポリマー」と同義であるから、本1発明の「0.1質量%?2質量%の正に荷電したPEIポリマー;」に相当し、 刊1発明の「平均0.6個のエトキシ基を含有するC_(12?13)アルキルエトキシスルホネート29重量%」は、当該スルホネート(スルホン酸塩)が、C_(n)H_(2n+1)(OCH_(2)CH_(2))_(m)OSO_(3)Xで表される化学式において、n=12?13、m=0.6、Xが不明のアルキルポリオキシエチレンエーテルスルホン酸塩であり、本1発明の「ラウリルポリオキシエチレンエーテル硫酸ナトリウム」が、当該化学式において、n=12、mが不明、X=Na^(+)のアルキルポリオキシエチレンエーテルスルホン酸塩であることから、両者は「15質量%?60質量%の範囲のアニオン性界面活性剤、該アニオン性界面活性剤はラウリルポリオキシエチレンエーテル硫酸塩を含む;」という点において共通し、 刊1発明の「C_(10?14)アミンオキシド6重量%」は、本1発明の「2質量%?6質量%のアミンオキシド;」に相当し、 刊1発明の「発泡性が高い軽質液体食器洗い洗剤組成物」は、本1発明の「発泡性洗浄組成物」に相当し、 刊1発明の「食器洗い洗剤組成物」は、その組成からみて「0.5質量%未満のコカミドDEA」と「スルホコハク酸アルキルエステル類」を含まないことが明らかであることから、本1発明の「該発泡性洗浄組成物は、0.5質量%未満のコカミドDEAを含む、発泡性洗浄組成物(但し、スルホコハク酸アルキルエステル類を含む発泡性洗浄組成物を除く)」に相当する。 してみると、本1発明と刊1発明は、両者とも『0.1質量%?2質量%の正に荷電したPEIポリマー;15質量%?60質量%の範囲のアニオン性界面活性剤、該アニオン性界面活性剤はラウリルポリオキシエチレンエーテル硫酸塩を含む;2質量%?6質量%のアミンオキシド;を含む発泡性洗浄組成物であって、該発泡性洗浄組成物は、0.5質量%未満のコカミドDEAを含む、発泡性洗浄組成物(但し、スルホコハク酸アルキルエステル類を含む発泡性洗浄組成物を除く)。』という点において一致し、次の〔相違点α〕において相違する。 〔相違点α〕ラウリルポリオキシエチレンエーテル硫酸塩を含むアニオン性界面活性剤が、本1発明においては「ラウリルポリオキシエチレンエーテル硫酸ナトリウムおよびC14-C16アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムからなる」のに対して、刊1発明においてはそうではない点。 (4)判断 上記〔相違点α〕について検討する。 刊行物1に記載された発明は、刊行物1の請求項3(摘記1a)の「前記スルフェート又はスルホネート界面活性剤が、直鎖アルキルスルホネート、脂肪族アルコールスルフェート、アルキルアルコキシル化スルフェート、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の液体洗剤組成物。」との記載、及び同段落0040(摘記1e)の「スルフェート又はスルホネート界面活性剤は…C_(10)?C_(18)アルキルアルコキシスルフェート(AE_(x)S)であって、好ましくはxが1?30であるもの…;並びにα-オレフィンスルホネート(AOS)から選択されてよい。」との記載にあるように、アニオン性界面活性剤の種類としてAES(アルキルアルコキシル化スルフェート)とAOS(直鎖アルキルスルホネート)との組み合わせを包含するものである。 そして、例えば、摘記2aの「台所用洗剤は、…SLES、AOS…をベースに…アミンオキサイドを添加したものがほとんどであったが、刺激性や毒性の点で問題があった。…起泡力は満足」との記載、及び摘記2bの「実施例10…ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム…α-オレフィンスルホン酸ナトリウム…実施例1?12の各洗浄剤組成物は手肌に温和であり、刺激が少なかった。」との記載、 摘記3aの「(A)…α-オレフィンスルホン酸塩(AOS)、…ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩(AES)から選ばれるアニオン界面活性剤…含有することを特徴とする洗浄剤の刺激低減方法。」との記載、摘記3bの「本発明は…特に…硬質表面…に適用する洗浄剤の刺激低減方法及び洗浄剤組成物に関する。」との記載、及び摘記3cの「AOS:炭素数14?18のアルキル基をもつα-オレフィンスルホン酸ナトリウム」と「AES-Na:ポリオキシエチレン(EO3モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム」とを組み合わせて使用している実施例10及び13の記載、 並びに、例えば、特表2002-514586号公報(周知例A)の段落0024?0025の「ナトリウムラウレス(laureth)サルフェート(SLES-2)…C14-16αオレフィンスルホネート(AOS-PC)」との記載にあるように、 毒性などの問題点を考慮した場合に「ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩(SLES;アルキル基の炭素数が12のAES)」に組み合わせるべきアニオン性界面活性剤の種類として「α-オレフィンスルホン酸塩(AOS)」が好ましいことが普通に知られており、 AES(アルキルエトキシスルホネート)として、そのアルキル基の炭素数が12のナトリウム塩(SLES)が常用され、 AOS(α-オレフィンスルホネート)として、そのアルキル基の炭素数が14?16程度のナトリウム塩が常用されていることも普通に知られている。 してみると、刊1発明のアニオン性界面活性剤の種類を、AES単独から、刊行物1?3に記載されたAESとAOSの組み合わせからなるものに置き換え、そのアルキル基の炭素数と塩の種類を常用されている範囲のものにすることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮の範囲である。 次に、本1発明の効果について検討するに、本願明細書の段落0006には「コカミドDEAの代替として用いることができる気泡安定剤を提供することが本願の目的である。」との記載があるところ、刊1発明は、コカミドジエタノールアミン(DEA)を用いず、少量の四級化したアルコキシル化ポリエチレンイミン(PEI)ポリマーを用いた「発泡性が高い軽質液体食器洗い洗剤組成物」に関するものであるから、四級化したPEIポリマーを用いることで、コカミドDEAを用いないことが刊行物1に明記されていなくとも、結果的にコカミドDEAを代替できるという効果が示されているといえ、その効果は、格別予想外の顕著な効果であるとは認められない。 そして、本1発明は「0.5質量%未満のコカミドDEAを含む」ものであるのに対して、刊1発明はコカミドDEAを含まないものであるから、本願明細書の段落0014の「本発明の発泡性洗浄組成物は、有利には、コカミドDEAを含まず、リン酸塩を含まず、そしてアミノカルボン酸塩を含まず、加えて、人間への使用に安全であると包括的に認識される(GRAS)成分だけを含むように配合される。」との記載にある「コカミドDEA」などの安全性に問題がある成分を含まないという観点において、本1発明が刊1発明に比して有利な効果があるとは認められない。 また、本願明細書の図4「 」には、気泡高さ(mL)が、加えられた汚れの液滴が4の場合に、従来例の商品3で60mL、本1発明の具体例に相当する試料#20、#40及び#41で40mLの結果であり、加えられた汚れの液滴が2の場合に、商品3で140mL、試料#20で120mL、試料#40で80mL、試料#41で90mLの結果であることが示されており、本1発明が刊1発明のような従来技術に比して、発泡性の点で優れた効果を有するものであることを裏付ける実験結果なども見当たらないので、本1発明に発泡性の点で格別優れた効果があるとは認められない。 そもそも、平成30年11月14日付けの意見書の第9頁第17?29行において、審判請求人は『(い)「アニオン性界面活性剤」の種類を「ラウリルエーテル硫酸ナトリウムおよびアルファオレフィンスルホネート」に特定することの「技術上の意義」について ラウリルエーテル硫酸ナトリウムおよびアルファオレフィンスルホン酸ナトリウムは、従来技術において、両方とも、特には汎用の発泡剤であるコカミドジエタノールアミン(DEA)とともに、発泡組成物において用いられきたものです。 本願発明は、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムおよびコカミドジエタノールアミン(DEA)を含む従来技術の発泡組成物において、潜在的な問題のあるコカミドジエタノールアミン(DEA)を、少量のPEIエトキシレートによって置き換えることができることを見出したことによってなされたものであり、このことに本願発明の技術上の意義があるものです。 従って、「アニオン性界面活性剤」の種類を「ラウリルエーテル硫酸ナトリウムおよびアルファオレフィンスルホネート」に特定することについて、従来技術に対して特段の「技術上の意義」があるものではありません。』と釈明している。 してみると、本1発明において「アニオン性界面活性剤」を「ラウリルポリオキシエチレンエーテル硫酸ナトリウムおよびC14-C16アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム」に特定することに、格別の技術上の意義があるとは認められない。 以上のとおりであるから、本1発明に刊行物1?3から予想外の格別の効果があるとは認められない。 したがって、本1発明は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (5)審判請求人の主張について 平成30年11月14日付けの意見書の第3頁第14行?第4頁第57行において、審判請求人は 『(4-2)本願発明と引用文献1に記載された発明との対比 本願明細書の実施例で用いられているラウリルエーテル硫酸ナトリウムおよびアルファオレフィンスルホン酸ナトリウムは、従来技術において、両方とも、特には汎用の発泡剤であるコカミドジエタノールアミン(DEA)とともに、発泡組成物において用いられています。 本願発明は、DEAを含まない発泡組成物に関するものですので、その実施例では、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムおよびアルファオレフィンスルホン酸ナトリウムの両方が、PEIエトキシレートとともに用いられています。本願明細書では、以下のように、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムおよびPEIエトキシレートを含む組成物が、DEAを含む組成物と同等もしくはそれ以上に良好な発泡性能を示すことができることが実証されています。 本願明細書で開示する発明は、従来技術の発泡組成物を代替することのできる、DEAを用いない発泡組成物を提供するものです。… 審判長殿は、商品3の気泡高さと試料#20、#40および#41の気泡高さを比較されて、本願発明に格別の効果があるとは認められない、と結論付けられていますが、このご認定は、商品3には上記のようにコカミドDEAが含まれているのに対して、本願発明に該当する試料では、コカミドDEAを排除することができたという顕著な効果を無視したものであり、到底合理的ではありません。 更には、図11において、配合物#20、#26、#41および#45でみることができるように、PEIエトキシレートを用いた場合には、アミンオキシドを増加すると、全体の泡を増加するように作用することがわかります。 図13および14では、温度が80°Fではなく110°Fと異なりますが、図11および12と同様の結果が示されており、PEIエトキシレートが、DEAへの気泡増強代替として実現可能であり、そして実際にコカミドDEAよりも優れていることが示されています。 本願明細書の段落0265?0270および表21?23には、以下のことが記載されています。 更に、図35および36に示されるように、PEIエトキシレートを用いた組成物は、PEIエトキシレートを含まない組成物よりも、良好な性能を発現します。… 更に、審判請求人は、審判長殿には、本願発明の組成物の発泡プロファイルのみに着目するのではなく、本願発明の組成物の全体的な利益、すなわち、問題視されるDEAを置換し、より少ない化学薬品を使用しながら、同様の、もしくはより良好な発泡プロファイルおよびより良好な洗浄性能を提供する、その能力に着目して戴きたいと思料します。より安全でより少ない化学物質を使用して、同様の、もしくはより良好な結果を達成することは、先行技術に対する本願発明の顕著な技術的貢献であると思料します。』と主張している(なお、当審において下線を付した。)。 しかしながら、上記意見書の「本願発明は、DEAを含まない発泡組成物に関するものです」との主張、及び「本願発明に該当する試料では、コカミドDEAを排除することができたという顕著な効果を無視したもの」との主張について、本1発明は「0.5質量%未満のコカミドDEAを含む」ことを発明特定事項とするものであるのに対して、刊1発明はコカミドDEAを全く含まないものであるから、当該「コカミドDEAを排除する」という効果において、本1発明に刊1発明に対する顕著な効果があるとはいえない。 また、上記意見書の「PEIエトキシレートを用いた組成物は、PEIエトキシレートを含まない組成物よりも、良好な性能を発現します」との主張について、本1発明は、本願請求項2の「前記PEIが、エトキシル化PEIポリマーである」というものに限定されていないのに対して、刊1発明はエトキシ部分を有する四級化したアルコキシル化ポリエチレンイミンポリマー(本願請求項2の「エトキシル化PEIポリマー」に該当するもの)を用いているので、当該「PEIエトキシレートを用いた組成物」の効果において、本1発明に刊1発明に対する顕著な効果があるとはいえない。 そして、上記意見書の「問題視されるDEAを置換し、…より良好な発泡プロファイルおよびより良好な洗浄性能を提供する、…先行技術に対する本願発明の顕著な技術的貢献であると思料します。」との主張について、刊1発明は、その組成中にコカミドDEAを全く含まない発泡組成物であって、なおかつ、本1発明の「0.1質量%?2質量%の正に荷電したPEIポリマー」を含むという要件を満足する発泡組成物であることから、本1発明に先行技術(刊1発明)に対する顕著な技術的貢献があると認めることはできない。 したがって、上記意見書の主張は採用できない。 第5 むすび 以上のとおり、本1発明は、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであるから、その余のことを検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2018-12-26 |
結審通知日 | 2019-01-08 |
審決日 | 2019-01-21 |
出願番号 | 特願2015-544054(P2015-544054) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C11D)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 古妻 泰一 |
特許庁審判長 |
佐々木 秀次 |
特許庁審判官 |
天野 宏樹 木村 敏康 |
発明の名称 | ポリエチレンイミンエトキシレートでの気泡の安定化 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 高橋 正俊 |
代理人 | 胡田 尚則 |
代理人 | 河原 肇 |