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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D02G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D02G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  D02G
管理番号 1352285
異議申立番号 異議2018-700458  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-06-05 
確定日 2019-04-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6241133号発明「紡績糸およびその紡績糸を含む編物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6241133号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6241133号の請求項1?8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6241133号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成25年8月22日の出願であって、平成29年11月17日にその特許権の設定登録がされ、同年12月6日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

平成30年6月5日:特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(以下「申立人」という。)による特許異議の申立て
平成30年9月5日付け:取消理由通知
平成30年11月8日:特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
平成30年12月6日:申立人による意見書の提出
平成31年1月29日付け:取消理由通知(決定の予告)
平成31年3月28日:特許権者による意見書の提出及び訂正の請求

なお、平成31年3月28日の訂正の請求における訂正事項は、平成30年11月8日の訂正の請求における訂正事項に、実質的にすべて含まれるものであって、その平成30年11月8日の訂正の請求については、申立人に訂正の請求があった旨の通知を送付して意見書を提出する機会を与えているから、平成31年3月28日の訂正の請求については、特許法第120条の5第5項ただし書に規定する特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別な事情があるときに該当すると認められるため、申立人に意見書を提出する機会を与えなかった。


第2 訂正の請求についての判断
1 訂正の内容
平成31年3月28日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6241133号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?8について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
なお、平成30年11月8日の訂正の請求は、本件訂正請求がされたことにより、特許法第120条の5第7項の規定に従い、取り下げられたものとみなす。

(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「メートル番手が64?90である」とあるのを、「メートル番手が64?90であり、撚り係数が105?110である」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2?8についても同様に訂正する。)
(訂正事項2)
明細書の【0008】に「紡績糸中の各繊維の混率が以下の(1)?(3)を満足する紡績糸にある。」とあるのを、「紡績糸中の各繊維の混率が以下の(1)?(3)を満足し、メートル番手が64?90であり、撚り係数が105?110である紡績糸にある。」に訂正する。

ここで、訂正前の請求項1?8は、請求項2?8が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項1?8について請求されている。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
上記訂正事項1は、請求項1の紡績糸において、「撚り係数が105?110である」ものに減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0038】、【0039】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
上記訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴い、本件特許明細書の対応する記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項?第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。


第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?8に係る発明(以下「本件発明1?8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
単繊維繊度が0.8?3.3dtexであるアクリル繊維と、単繊維繊度が0.8?1.2dtexである綿繊維と、単繊維繊度が0.8?1.2dtexである再生セルロース繊維からなる紡績糸であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(1)?(3)を満足し、メートル番手が64?90であり、撚り係数が105?110である紡績糸。
(1)アクリル繊維の混率が40?60質量%
(2)綿繊維の混率が20?30質量%
(3)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【請求項2】
請求項1に記載のアクリル繊維が、単繊維繊度が0.8?1.3dtex、沸水収縮率が5%以下である低収縮アクリル繊維(A)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(4)?(6)を満足する請求項1に記載の紡績糸。
(4)低収縮アクリル繊維(A)の混率が40?60質量%
(5)綿繊維の混率が20?30質量%
(6)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【請求項3】
請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、単繊維繊度0.8?1.3dtex、沸水収縮率15%?45%である高収縮アクリル繊維(B)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(7)?(10)を満足する請求項1または2に記載の紡績糸。
(7)高収縮アクリル繊維(B)の混率が30?50質量%
(8)低収縮アクリル繊維(A)と高収縮アクリル繊維(B)との合計の混率が40?60質量%
(9)綿繊維の混率が20?30質量%
(10)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【請求項4】
請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、単繊維繊度が1.7?3.3dtexである導電性アクリル繊維(C)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(11)?(14)を満足する請求項1または2に記載の紡績糸。
(11)導電性アクリル繊維(C)の混率が3?10質量%
(12)低収縮アクリル繊維(A)と導電性アクリル繊維(C)との合計の混率が40?60質量%
(13)綿繊維の混率が20?30質量%
(14)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【請求項5】
請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、単繊維繊度が1.0?2.2dtexである消臭性アクリル繊維(D)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(15)?(18)を満足する請求項1または2に記載の紡績糸。
(15)消臭性アクリル繊維(D)の混率が20?40質量%
(16)低収縮アクリル繊維(A)と消臭性アクリル繊維(D)との合計の混率が40?60質量%
(17)綿繊維の混率が20?30質量%
(18)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【請求項6】
請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、高収縮アクリル繊維(B)および導電性アクリル繊維(C)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(19)?(23)を満足する請求項1乃至3に記載の紡績糸。
(19)高収縮アクリル繊維(B)の混率が30?50質量%
(20)導電性アクリル繊維(C)の混率が3?10質量%
(21)低収縮アクリル繊維(A)と高収縮アクリル繊維(B)と導電性アクリル繊維(C)との合計の混率が40?60質量%
(22)綿繊維の混率が20?30質量%
(23)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【請求項7】
請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、高収縮アクリル繊維(B)および消臭性アクリル繊維(D)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(24)?(28)を満足する紡績糸。
(24)高収縮アクリル繊維(B)の混率が25?35質量%
(25)消臭性アクリル繊維(D)の混率が25?35質量%
(26)低収縮アクリル繊維(A)と高収縮アクリル繊維(B)と消臭性アクリル繊維(D)との合計の混率が40?60質量%
(27)綿繊維の混率が20?30質量%
(28)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【請求項8】
請求項1?7いずれか一項に記載の紡績糸を含む編物。」


第4 当審の判断
1 取消理由の概要
本件訂正前の平成30年11月8日の訂正の請求に基づく請求項に係る特許に対して通知した平成31年1月29日付け取消理由通知書(決定の予告)に示した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)(進歩性)請求項1?8に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2?5記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。


<刊行物>
甲第1号証:特開2012-167388号公報
甲第2号証:特公昭61-451号公報
甲第3号証:特開2000-27044号公報
甲第4号証:特開平11-222715号公報
甲第5号証:特開2007-9390号公報
また、平成30年12月6日の意見書に添付して以下の刊行物が提出されている。
甲第6号証:繊維学会編、「繊維便覧 -加工編-」、丸善株式会社、昭和48年2月10日第3刷、p.184-185、192-193
甲第7号証:特開平3-269128号公報

(2)(明確性要件)請求項2?5及び8の記載は、以下の点で不備のため、その特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。

ア 請求項2中の「請求項1に記載のアクリル繊維が、単繊維繊度が0.8?1.3dtex、沸水収縮率が5%以下である低収縮アクリル繊維(A)であ」るとは、請求項1の紡績糸Aを引用する場合、請求項1の「単繊維繊度が0.9?1.3dtexであるアクリル繊維」の記載と整合しておらず、請求項2の特定する範囲が明確でない。
イ 請求項3中の「請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、単繊維繊度0.8?1.3dtex、沸水収縮率15%?45%である高収縮アクリル繊維(B)」とは、請求項1の紡績糸Aを引用する場合、請求項1の「単繊維繊度が0.9?1.3dtexであるアクリル繊維」の記載と整合しておらず、請求項3の特定する範囲が明確でない。
ウ 請求項4中の「請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、単繊維繊度が1.7?3.3dtexである導電性アクリル繊維(C)であって」とは、請求項1の紡績糸Aを引用する場合、請求項1の「単繊維繊度が0.9?1.3dtexであるアクリル繊維」の記載と整合しておらず、請求項4の特定する範囲が明確でない。エ 請求項5中の「請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、単繊維繊度が1.0?2.2dtexである消臭性アクリル繊維(D)であって」とは、請求項1の紡績糸Aを引用する場合、請求項1の「単繊維繊度が0.9?1.3dtexであるアクリル繊維」の記載と整合しておらず、請求項5の特定する範囲が明確でない。オ 請求項8中、請求項2?5を引用するものについては、上記ア?エに同じである。

2 平成31年1月29日付け取消理由について
(1)本件発明1について
ア 甲第1号証記載の事項及び発明
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、人体から発生する汗臭や加齢臭等の体臭による不快感を抑え、かつ洗濯による消臭性能の低下のない消臭性編地に関する。」
(イ)「【0007】
本発明の目的は、人体から発生
する汗臭や加齢臭等を消臭して体臭による不快感をなくし、かつ洗濯による消臭機能の低下のない肌着、インナー用途に適した消臭性編地を提供することにある。」
(ウ)「【0015】
繊維断面における海島型複合構造は、繊維の長手方向に島成分のセルロースアセテートが全長にわって連続して連なり或いは部分的に連なっていることが好ましい。繊維内部に空孔のある構造であってもよく、繊維内部に空孔のある構造であることは、消臭性能を発現させるうえで好ましく、本発明における海島型アクリル系複合繊維においては、島部のセルロースアセテートと海部のアクリロニトリル系重合体との界面で空孔が形成される傾向にある。海島型アクリル系複合繊維(A)は、消臭性能を発揮させるうえで、またインナー用途に必要な風合い、紡績等の工程通過性から、その単繊維繊度が0.8?3.3dtexであることが好ましい。」
(エ)「【0029】
(実施例1)
島部がセルロースジアセテート、海部がアクリロニトリル主体のアクリロニトリル系重合体でそれぞれ形成された、セルロースジアセテート30質量%、アクリロニトリル系重合体70質量%からなる海島型アクリル系複合繊維(三菱レイヨン社製A.H.F、単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm)(A)と、カルボン酸含有ビスコースレーヨン(ダイワボウレーヨン社製PARAMOS、単繊維繊度0.9dtex、繊維長38mm)(B)を、(A)60質量%、(B)40質量%の混率で混紡して毛番手1/68の紡績糸を得た。得られた紡績糸を用い22ゲージ丸編み機でフライス組織の編地に編成した。得られた編地の消臭性能の評価結果を表1に示した。なお、表1中の繊維含有率の%は質量%の意味である。
また、アクリル系複合繊維(A)単体の洗濯前の消臭率は、酢酸94.0%、イソ吉草酸93.0%、ノネナール91.2%、アンモニア9.8%であり、ビスコースレーヨン(B)単体の洗濯前の消臭率は、酢酸95.2%、イソ吉草酸56.8%、ノネナール14.5%、アンモニア98.5%であった。
【0030】
(実施例2、比較例1?3)
実施例1で用いたと同じ海島型アクリル系複合繊維短繊維(A)とビスコースレーヨン短繊維(B)と綿とを用い、混紡率を変更して紡績糸を得た。得られた紡績糸を用いた以外は、実施例1と同様に編成し、得られた編地の消臭性能の評価結果を表1に示した。なお、実施例2は、(A)50質量%、(B)30質量%、綿20質量%の混紡率、比較例1は、(A)55質量%、綿45質量%の混紡率、比較例2は、(B)50質量%、綿50質量%の混紡率、実施例3は、(A)20質量%、(B)13質量%、綿67質量%の混紡率とした。」

甲第1号証の実施例2には、「実施例1で用いたと同じ海島型アクリル系複合繊維短繊維(A)とビスコースレーヨン短繊維(B)と綿とを用い、混紡率を変更して紡績糸を得た。得られた紡績糸を用いた以外は、実施例1と同様に編成し」たと記載され、実施例1の紡績糸の毛番手は、「1/68」であるから、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「島部がセルロースジアセテート、海部がアクリロニトリル主体のアクリロニトリル系重合体でそれぞれ形成された、セルロースジアセテート30質量%、アクリロニトリル系重合体70質量%からなる海島型アクリル系複合繊維(三菱レイヨン社製A.H.F、単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm)(A)と、カルボン酸含有ビスコースレーヨン(ダイワボウレーヨン社製PARAMOS、単繊維繊度0.9dtex、繊維長38mm)(B)と綿とを用い、(A)50質量%、(B)30質量%、綿20質量%の混紡率で混紡して得られた、毛番手1/68の紡績糸。」

イ 対比
イ-1 本件発明1と甲1発明とを対比すると、
(ア)甲1発明の「島部がセルロースジアセテート、海部がアクリロニトリル主体のアクリロニトリル系重合体でそれぞれ形成された、セルロースジアセテート30質量%、アクリロニトリル系重合体70質量%からなる海島型アクリル系複合繊維(三菱レイヨン社製A.H.F、単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm)(A)」は、本件発明1の「単繊維繊度が0.8?3.3dtexであるアクリル繊維」に相当する。
(イ)甲1発明の「カルボン酸含有ビスコースレーヨン(ダイワボウレーヨン社製PARAMOS、単繊維繊度0.9dtex、繊維長38mm)(B)」は、本件発明1の「単繊維繊度が0.8?1.2dtexである再生セルロース繊維」に相当する。
(ウ)甲1発明の「綿」は、本件発明1の「綿繊維」に相当する。
(エ)甲1発明の「(A)50質量%、(B)30質量%、綿20質量%の混紡率で混紡した紡績糸」は、本件発明1の「紡績糸中の各繊維の混率が以下の(1)?(3)を満足」する「紡績糸」「(1)アクリル繊維の混率が40?60質量% (2)綿繊維の混率が20?30質量% (3)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%」に相当する。
(オ)甲1発明の「毛番手1/68の紡績糸」は、本件発明1の「メートル番手が64?90である紡績糸」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
単繊維繊度が0.8?3.3dtexであるアクリル繊維と、綿繊維と、単繊維繊度が0.8?1.2dtexである再生セルロース繊維からなる紡績糸であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(1)?(3)を満足し、メートル番手が64?90である紡績糸。
(1)アクリル繊維の混率が40?60質量%
(2)綿繊維の混率が20?30質量%
(3)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%

<相違点1>
綿繊維の単繊維繊度が、本件発明1は、「0.8?1.2dtexである」のに対して、甲1発明は、不明である点。
<相違点2>
紡績糸が、本件発明1は、「撚り係数が105?110である」のに対して、甲1発明は、不明である点。

ウ 当審の判断
そこで、相違点について以下検討する。
<相違点1について>
甲第2号証には、特許請求の範囲の請求項1、2に、0.8?1.0デニールのアクリル繊維と綿として0.85?0.95デニールのものとからなる混紡糸が記載されており、実施例3(4頁右欄下から6行?5頁左欄7行)には、綿繊維を30%アクリル繊維を70%混紡した紡績糸において、肌着等に用いるメリヤス組織を得る際に0.82デニール(0.91dtex)や0.84(0.93dtex)デニールが好ましい点が記載されている。
そして、紡績糸において、混紡する繊維として短繊維繊度が同程度のものを用いることが通常であることから、甲1発明において、当該技術常識に従い、甲1発明と同じくインナー用途の編地に用いるアクリル繊維と綿繊維を混紡する紡績糸である甲第2号証の綿繊維の単繊維繊度を参照し、上記相違点1に係る本件発明1の範囲のものを用いることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ここで、特許権者は、平成30年11月8日の意見書において、甲第2号証は、2種類の繊維からなるものであって、甲1発明とは、紡績糸を構成する繊維の種類の数が異なっているから、短繊維繊度の数値を甲1発明に適用する動機付けがない旨主張する。
しかし、紡績糸の風合いは、混紡する繊維個々の風合いの影響を受けるものであり、甲1発明と甲第2号証の紡績糸とは、共にインナー用途の編地に用いるアクリル繊維と綿繊維を混紡する紡績糸であって、それに適した風合いとするものであるから、特許権者の主張は採用できない。

<相違点2について>
甲第1号証は、紡績糸であるところ、撚り係数をどの程度とするかについて何ら記載されていない。そして、申立人が主張(申立人の意見書4頁5行?5頁17行)するように、紡績糸として撚り係数が105?110であるものが通常採用されているものであるとしても、申立人が示した甲第6号証及び甲第7号証には、撚り係数が105?110の範囲外の紡績糸も通常採用されていることから、甲1発明の紡績糸の撚り係数が105?110であるとは必ずしもいえない。
また、甲第2?5号証には、撚り係数を105?110とすることについて、何ら記載されていない。したがって、甲1発明において、甲1発明の紡績糸の撚り係数が105?110とする動機付けは存在せず、甲1発明は、「撚り係数が105以上であれば、編地を編み立てる際に必要な糸強度を保つことが出来る。また、撚り係数が110以下であれば、編地を握ったときの風合いが硬くなりすぎるのを防止できる。」(【0039】)ものであるから、単なる設計的事項であるともいえない。

エ 小括
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2?7号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明2?8について
本件発明2?8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、上記(1)ウの<相違点2について>で検討したのと同じ理由で、甲1発明及び甲第2?7号証記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)明確性要件について
平成31年1月29日付け取消理由通知書(決定の予告)で通知した上記1(2)の明確性に関する取消理由は、本件訂正が認められることにより解消して、理由のないものとなった。

4 平成31年1月29日付け取消理由通知書(決定の予告)で通知しなかった取消理由について
申立人は特許異議申立書において、請求項1、2、5及び8に係る発明は、甲1発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである旨主張する点について、検討する。
上記3(1)イで対比したとおり、本件発明1と甲1発明とは、相違点1及び2の点で相違し、上記3(1)ウで検討したとおり、相違点1及び2は、実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明であるとはいえない。
また、本件発明2、5及び8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、同じ理由で、本件発明2、5及び8は、甲1発明であるとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本件発明1?8に係る特許は、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができないない。
また、他に本件発明1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
紡績糸およびその紡績糸を含む編物
【技術分野】
【0001】
本発明は、単繊維繊度が0.8?3.3dtexの範囲にある合成繊維と天然繊維とからなる混紡糸、さらに機能性を付与した前記混紡糸およびそれらの混紡糸を含む編物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から肌着用素材として、綿繊維のみを使用した紡績糸、アクリル繊維等の合成繊維と綿繊維を混紡した紡績糸、再生セルロース繊維とアクリル繊維等の合成繊維を混紡した紡績糸などがある。合成繊維と綿繊維との混紡品は綿繊維の比率が高くなると、編地を握ったときの感触が硬くなり易く、洗濯後の編地は、より感触も硬くなり、また形態が崩れやすい傾向がある。主な用途としては紳士用肌着が中心である。再生セルロース繊維と合成繊維の混紡品は洗濯後の形態安定性に欠けるが、吸湿発熱性に優れ、光沢があり、編地を握ったときの感触が柔らかい事から、婦人用肌着に好んで使用される傾向にある。
【0003】
その中で機能面から再生セルロース繊維の吸湿発熱性に着目することで、合成繊維と吸湿発熱性繊維を混紡した吸湿発熱性および保温効果の高い布帛が開示されている(特許文献1)。
【0004】
また架橋アクリル系繊維を含む紡績糸と弾性糸とを組み合わせることで、吸湿発熱性および保温効果が高く、着用時の身体へのフィット性の向上を特徴とする提案が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-227043号公報
【特許文献2】特開2009-133036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された吸湿発熱性繊維を使用した布帛や、特許文献2に記載された架橋アクリル系繊維を含む交編物の主たる目的は、吸湿発熱性および保温効果を上げる為の工夫であり、衣料用途において重視される編地を握ったときの感触は消費者に満足されるものではなかった。
【0007】
本発明は、編地を握ったときの感触が柔らかく、機能性を付与しても編地の風合いがソフトになる編地用紡績糸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の紡績糸は、単繊維繊度が0.8?3.3dtexであるアクリル繊維と、単繊維繊度が0.8?1.2dtexである綿繊維と、単繊維繊度が0.8?1.2dtexである再生セルロース繊維とからなる紡績糸であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(1)?(3)を満足し、メートル番手が64?90であり、撚り係数が105?110である紡績糸にある。
(1)アクリル繊維の混率が40?60質量%
(2)綿繊維の混率が20?30質量%
(3)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【0009】
本発明の紡績糸は、前記アクリル繊維の一部又は全部が、単繊維繊度が0.8?1.3dtex、沸水収縮率が5%以下である低収縮アクリル繊維(A)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(4)?(6)を満足することが好ましい。
(4)低収縮アクリル繊維(A)の混率が40?60質量%
(5)綿繊維の混率が20?30質量%
(6)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【0010】
本発明の紡績糸は、前記アクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維単繊維繊度0.8?1.3dtex、沸水収縮率が15%?45%である高収縮アクリル繊維(B)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(7)?(10)を満足することが好ましい。
(7)高収縮アクリル繊維(B)の混率が30?50質量%
(8)低収縮アクリル繊維(A)と高収縮アクリル繊維(B)との合計の混率が40?60質量%
(9)綿繊維の混率が20?30質量%
(10)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【0011】
本発明の紡績糸は、前記アクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、単繊維繊度が1.7?3.3dtexである導電性アクリル繊維(C)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(11)?(14)を満足することが好ましい。
(11)導電性アクリル繊維(C)の混率が3?10質量%
(12)低収縮アクリル繊維(A)と導電性アクリル繊維(C)との合計の混率が40?60質量%
(13)綿繊維の混率が20?30質量%
(14)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【0012】
本発明の紡績糸は、前記アクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、単繊維繊度が1.0?2.2dtexである消臭性アクリル繊維(D)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(15)?(18)を満足することが好ましい。
(15)消臭性アクリル繊維(D)の混率が20?40質量%
(16)低収縮アクリル繊維(A)と消臭性アクリル繊維(D)との合計の混率が40?60質量%
(17)綿繊維の混率が20?30質量%
(18)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【0013】
本発明の紡績糸は、前記アクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、高収縮アクリル繊維(B)および導電性アクリル繊維(C)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(19)?(23)を満足することが好ましい。
(19)高収縮アクリル繊維(B)の混率が30?50質量%
(20)導電性アクリル繊維(C)の混率が3?10質量%
(21)低収縮アクリル繊維(A)と高収縮アクリル繊維(B)と導電性アクリル繊維(C)との合計の混率が40?60質量%
(22)綿繊維の混率が20?30質量%
(23)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【0014】
本発明の紡績糸は、前記アクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、高収縮アクリル繊維(B)および消臭性アクリル繊維(D)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(24)?(28)を満足することが好ましい。
(24)高収縮アクリル繊維(B)の混率が25?35質量%
(25)消臭性アクリル繊維(D)の混率が25?35質量%
(26)低収縮アクリル繊維(A)と高収縮アクリル繊維(B)と消臭性アクリル繊維(D)との合計の混率が40?60質量%
(27)綿繊維の混率が20?30質量%
(28)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【0015】
本発明の編地は、これらの紡績糸を含む編物である
【発明の効果】
【0016】
本発明の紡績糸を用いることにより、編地を握ったときの感触が柔らかい編地を得る事ができ、機能性を付与しても編地を握ったときの感触が柔らかい編地を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】編地の光発熱性能を測定する装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の詳細を説明する。
(アクリロニトリル重合体)
本発明の紡績糸に用いるアクリル繊維の原料としては、通常のアクリル繊維の製造に用いるアクリロニトリル重合体であればよく、特に限定しない。前記重合体の構成は、50質量%以上のアクリロニトリル単位を含有していることが必要である。これによりアクリル繊維本来の特性を発現することができる。
【0019】
アクリロニトリルと共重合する単量体は、共重合可能であれば特に限定されないが、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルなどに代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピルなどに代表されるメタクリル酸エステル類、さらにアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
また、p-スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2メチルプロパンスルホン酸、及びこれらのアルカリ塩を共重合することは、染色性の改良のために好ましい。
【0020】
(アクリル繊維)
本発明の紡績糸に好適なアクリル繊維は、例えば次のようにして得ることができる。水系懸濁重合法によりアクリロニトリル93質量%、酢酸ビニル7質量%からなる共重合体を得る。続いて前記共重合体をジメチルアセトアミドに溶解し、重合体濃度20質量%の紡糸原液を得る。前記紡糸原液を丸型形状の吐出孔を具備したノズル口金を用い、溶剤30?60質量%、水が70?40質量%、温度30?50℃の凝固浴中で湿式紡糸する。吐出孔数は特に規定しない。紡糸後に湿熱で延伸倍率3?5倍の延伸処理を施し、続いて油剤を付着させ150℃の熱ローラーで乾燥緻密化後、更に乾熱で延伸倍率1.1?2倍の延伸処理を施した後、必要に応じて加圧水蒸気下で熱収縮処理を行う。このようにして得られたアクリル繊維は、単繊維繊度が0.8?1.3dtexの範囲にあるアクリル繊維が好ましい。単繊維繊度が0.8dtex以上であれば紡績工程でのトラブルが発生しにくくまた、単繊維繊度が1.3dtex以下であればことなく、編地を握ったときの感触が柔らかいものとなる前記観点から、単繊維繊度は、0.9?1.2dtexの範囲にあることがより好ましい。
【0021】
(高収縮アクリル繊維)
本発明の紡績糸に使用する高収縮アクリル繊維は沸水収縮率が15%?45%であり、単繊維繊度が0.8?1.3dtexの範囲にあるアクリル繊維が好ましい。沸水収縮率が15%以上であれば編地に優れたまた、沸水収縮率が45%以下であれば、収縮後の編地風合いが硬くなりすぎず、編地を握ったときの感触が柔らかいものとなる。前記観点から沸水収縮率は18%?40%の範囲にあることがより好ましい。
【0022】
また、単繊維繊度は0.8dtex以上であれば紡績工程でのトラブルが発生しにくくまた、単繊維繊度が1.3dtex以下であれば収縮後のことなく、編地を握ったときの感触が柔らかいものとなる前記観点から、単繊維繊度は、0.9?1.2dtexの範囲にあることがより好ましい。
【0023】
沸水収縮率が15%?45%である高収縮アクリル繊維は、高収縮原綿、トウ紡績での牽切スライバーなど、公知の技術を適宜組み合わせて製造することが出来る。高収縮アクリル繊維と低収縮繊維とを組み合わせて、混紡糸とした後、染色工程での熱処理によりバルキー性を与えることで、膨らみのある軽量感に優れた編地が得られる。更には紡績糸を構成する繊維間の空隙を増大させるとともに、空気層による熱遮断性を高めることによる、保温性向上効果も得られる。
【0024】
高収縮アクリル繊維の紡績糸における混率は、25?50質量%が好ましい。高収縮アクリル繊維の紡績糸における混率が25質量%以上であれば、熱処理時における収縮斑が発生しにくいため、編地の品位を損なうことがない。また、高収縮アクリル繊維の紡績糸における混率が50質量%以下であれば、収縮後のことなく、編地を握ったときの感触が柔らかいものとなる。前記観点から、高収縮アクリル繊維の紡績糸における混率は、30?40質量%の範囲にあることがより好ましい。
【0025】
(導電性アクリル繊維)
アクリル繊維として、導電性アクリル繊維を含むと紡績糸に制電性能を付与できる。導電性アクリル繊維は、アクリル繊維に導電性物質を混合することにより得られる。アクリル繊維に混合する導電性物質としては特に限定するものではないが、Fe、Cu、Al、Pb、Sn、Au、Ag、Ni等に代表される金属類およびそれらの酸化物、硫化物、カルボニル塩、またはITO(インジウム・スズ酸化物)、ATO(アンチモン・スズ酸化物)、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物およびこれらの硫酸バリウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、アルミニウムの担体微粒子にコーティングした非金属系導電材、ファーネス、チャンネル、サーマル、アセチレンブラックに代表されるカーボンブラック系導電材、およびポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン等に代表される導電性高分子化合物、テトラシアノパラキノジメタン(TCNQ)、テトラチアフルバレン(TTF)との錯体に代表される有機導電性化合物等が挙げられる。
【0026】
これら導電性物質の混合手段としては、アクリル繊維製造時の紡糸原液に導電性物質を均一分散混合した練り込み繊維としても良いが、紡糸安定性、耐久性、導電性能を考慮すると、芯部に導電性物質を練りこんだ芯鞘型複合紡糸による方法が好ましい。
【0027】
また、導電性アクリル繊維の別の機能として、光エネルギーを熱エネルギーに変換する(光吸収発熱性)機能を有する導電性アクリル繊維を使用すると、紡績糸に制電性能のみならず、発熱機能も付与することが可能であり、より好ましい。
【0028】
導電性アクリル繊維の紡績糸における混率は、3?10質量%が好ましい。導電性アクリル繊維の紡績糸における混率が3質量%以上であれば、編地に制電性能を付与することが出来る。また、導電性アクリル繊維の紡績糸における混率が10質量%以下であれば、導電性アクリル繊維に由来する着色による編地品位低下、染色性の低下を防ぐことが出来る。尚、光吸収発熱性を有する導電性アクリル繊維を用いる場合は、紡績糸における混率を5?10質量%とすることが好ましい。光吸収発熱・導電性アクリル繊維の紡績糸における混率が5%以上であれば、編地に光吸収発熱性能を付与することが可能であり、10質量%以下であれば、上述したような編地品位低下、染色性の低下を防ぐことが出来る。前記観点から、導電性アクリル繊維の紡績糸における混率は、5?10質量%の範囲にあることがより好ましい。
【0029】
また、導電性アクリル繊維の単繊維繊度は1.7?3.3dtexの範囲にあることが好ましい。単繊維繊度が1.7dtex以上であれば、導電性アクリル繊維を紡糸する際の糸切れ、巻き付きといったトラブル発生が少なく、紡糸安定性を損なうことがなく工業生産上好ましい。また、単繊維繊度が3.3dtex以下であれば、に与える影響が少なく、編地を握ったときの感触が柔らかいものとなる。
【0030】
(消臭性アクリル繊維)
アクリル繊維として、消臭性アクリル繊維を含むと、紡績糸に消臭性能を付与できる。消臭性アクリル繊維は、アクリル繊維に消臭剤を混合することにより得られる。アクリル繊維に混合する消臭剤としては特に限定するものではないが、Ti、Zn、AI、Sn、Si、Fe、Ca、Mg、Ba、Zr等の金属酸化物、これら金属及び/または金属酸化物を含む無機化合物を主成分とする微粉末、及び水に難溶性の固体酸の微粒子などを用いることができる。
【0031】
消臭性アクリル繊維の紡績糸における混率は、20?40質量%が好ましい。消臭性アクリル繊維の紡績糸における混率が20質量%以上であれば、編地に消臭性能を付与することが出来る。また、消臭性アクリル繊維の紡績糸における混率が40質量%以下であれば、消臭性アクリル繊維に由来する染色性の低下、糸強力の低下を防ぐことが出来る。前記観点から、消臭性アクリル繊維の紡績糸における混率は、25?35質量%の範囲にあることがより好ましい。
【0032】
また、消臭性アクリル繊維の単繊維繊度は1.0?2.2dtexの範囲にあることが好ましい。単繊維繊度が1.0dtex以上であれば、紡績工程でのトラブルが発生しにくい。また、単繊維繊度が2.2dtex以下であれば、編地を握ったときの感触が柔らかいものとなる。前記観点から、単繊維繊度は、1.0?1.7dtexの範囲にあることがより好ましい。
【0033】
(綿繊維)
綿繊維を加える事により、紡績糸及びそれを用いた編地に吸湿発熱性と適度な張り腰感を付与することが出来る。綿繊維の紡績糸における混率は、20?30質量%が好ましい。綿繊維の紡績糸における混率が20質量%以上であれば、編地を握ったときの感触に適度な張り腰感を付与することが出来る。また、綿繊維の紡績糸における混率が30質量%以下であれば、編地の風合い硬化を防ぐことが出来る。
【0034】
(再生セルロース繊維)
再生セルロース繊維を加える事により、編地を握ったときの感触が柔らかく、衣料用途としての風合いが良い編地を得ることが出来る。また、編地の接触冷感性を加えることが出来、光沢感も付与できる。再生セルロース繊維としては、ビスコース法によって得られるビスコースレーヨン繊維、ポリノジック繊維、モダール繊維や銅アンモニア法により得られるキュプラ繊維、溶剤紡糸法により得られるテンセル繊維、リヨセル繊維などがあげられる。再生セルロース繊維の紡績糸における混率が20質量%以上であれば、編地を握ったときの感触が柔らかく、風合いの良い編地を得ることが出来る。また、冷感や光沢感を付与することが出来る。再生セルロース繊維の紡績糸における混率が30質量%以下であれば、編地の風合いが柔らかくなりすぎず、適度な張り腰感を維持することが出来る。
【0035】
(紡績糸)
本発明の紡績糸は、単繊維繊度が0.8?3.3dtexであるアクリル繊維と単繊維繊度が0.8?1.2dtexである綿繊維と単繊維繊度が0.8?1.2dtexである再生セルロース繊維とからなる紡績糸である事が必要である。各繊維の単繊維繊度が同等であることで、紡績工程で各繊維の単繊維がかたよりなく混ざりやすい。
また、紡績糸中の各繊維の混率は、以下の(1)?(3)を満足する。
(1)アクリル繊維の混率が40?60質量%
(2)綿繊維の混率が20?30質量%
(3)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【0036】
単繊維繊度が0.8?3.3dtexであるアクリル繊維の混率が60?40質量%の範囲内にあることで、編地を握ったときに柔らかい感触が得られ、また、編地に保温性を与える事ができる。さらに、単繊維繊度が0.8?1.2dtexである綿繊維の混率が20?30質量%の範囲内にあることで、紡績糸を使用した編地に吸湿発熱性と、適度な張り腰感を付与することが出来る。さらに、単繊維繊度が0.8?1.2dtexである再生セルロース繊維の混率が20?30質量%の範囲内にあることで、紡績糸の編地に冷感や光沢感のあるものとすることが出来る。
【0037】
(紡績糸の製造方法)
本発明の紡績糸の製造には綿紡績で使用される設備を用いる。紡績糸の原材料比率になるように、各繊維を計量したのち、開綿機に投入し混ぜ合わせる。混合された原材料を打綿機に投入した後、ラップを形成する。次にラップをフラットカードに投入し、スライバーを作成する。この場合、使用するフラットカードのトップ数は70本以上、出来れば100本以上ある機台が望ましい。また、品位向上の為には固定フラットを装備した機台を使用することが望ましい。スライバー作成後、錬条工程を2回以上通したのち、粗紡工程を経て、粗糸を作成する。この場合の粗糸撚り数の設定は20回/インチとなるようにする。粗糸の撚り数が高すぎると、精紡での異常ドラフトの原因となり、紡績糸の斑が増加し品位の低下に繋がる。得られた粗糸をリング精紡機で紡績糸を作成する。紡績糸のメートル番手は64?90の範囲内であることが好ましいワインダー工程において紡績糸中の欠点除去を行った後、コーンに巻き取る。
【0038】
(紡績工程の撚り数設定方法)
編物用途に用いる紡績糸は、編地を握ったときの感触を柔らかくすること、および、毛羽を減らすために撚り数が重要であり、撚り係数(α)が105?110の間で設定することが好ましい。撚り数は下記式により決定される。
撚り数(回/m)=撚り係数(α)×√紡績糸番手(メートル番手)
【0039】
撚り係数が105以上であれば、編地を編み立てる際に必要な糸強度を保つことが出来る。また、撚り係数が110以下であれば、編地を握ったときの風合いが硬くなりすぎるのを防止できる。
また、紡績糸は、撚りトルクの発現を抑える為に、例えば温度60℃、時間15分又は、温度80℃、時間7分間のスチームセットが施される。
【0040】
(編地作成方法)
編み立て工程は、公知の丸編機を用いて編み立てを実施する。編機の種類は特に限定せず、シングル編機、ダブル編機、パイル編機など、目的とする編地組織を得るために適宜選定すれば良い。編み立ての際、糸の走行テンションを10?25gの範囲とする。この範囲を超えると紡績糸と編機の糸ガイドとの接触によるフライ発生量が増大し、糸切れ発生の増大及び風綿の飛び込みにより、穴開き等による編地品位の低下の要因となる。
【0041】
(染色方法)
編地の染色には、液流染色機を用いるとよい。染色工程は、例えば、45℃の染色液を1℃/2分の温度上昇条件で液温を100℃とした後、その状態を20分間保持する工程とする。この時は液流がダウンブローとなるタイプを用いる事が品位向上に適している。液流がダウンブローとなる事で、編地に余分な張力が掛かる事がなく、編地を握ったときの感触を柔らかく仕上げることが出来る。
以下、本発明について実施例を挙げてより具体的に説明する。なお、各評価項目は、次の方法によって測定した。
【0042】
(撚り数測定方法)
紡績糸の撚り数は、JIS L 1095:1999 “9.15.1 A法 より数“に規定される方法を用いて、試験回数30回測定した値の平均値とする。使用した検撚器は前田機械製の手動検撚機を用いて測定した。
【0043】
(編地の風合い評価)
編地を握ったときの感触評価は官能試験とし、その評価は技術者5名の合議で決定した。評価方法は、実施例および比較例で作成した全ての編地を評価者全員が比較評価を行い、風合い良好と答えた人数により以下に分類した。
○:良好(評価者5名中、4?5名が風合い良好と回答)
△:普通(評価者5名中、2?3名が風合い良好と回答)
×:劣る(評価者5名中、0?1名が風合い良好と回答)
【0044】
(繊度測定方法)
各繊維の繊度は、JIS L 1015:2002 “8.5.1 正量繊度 A法”に規定される方法を用いて測定した。
【0045】
(編地の保温性能)
編地の保温性能は、JIS L 1096 保温性A法(恒温法)により測定した。
【0046】
(編地の制電性能)
編地の制電性能は、JIS L 1094 摩擦耐電圧測定法により測定した。
【0047】
(編地の光発熱性能)
図1に示すように、2枚重ねの試料の間に熱電対を挿入し、下記条件でレフランプを20分間照射した時の、試験試料と比較試料との最大温度差を測定し、光発熱性能とした。
使用ランプ:岩崎電気(株)製アイランプ<スポット>PRS100V500W
照射距離 :50cm
照射面 :表側
照射時間 :20分間
試験室温度:20±2℃
【0048】
(編地の消臭性能)
編地の消臭性能は、一般社団法人繊維評価技術協議会の消臭マーク認証基準で定める機器分析試験法により、アンモニアおよび酢酸は検知管法、イソ吉草酸およびノネナールはガスクロマトグラフ法により測定した。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
水系懸濁重合法によりアクリロニトリル93質量%、酢酸ビニル7質量%からなる共重合体を得たのち、続いて前記共重合体をジメチルアセトアミドに溶解し、共重合体濃度20質量%の紡糸原液を得た。前記紡糸原液を丸型形状の吐出孔を具備したノズルを用い、ジメチルアセトアミド濃度60質量%、温度40℃の水溶液である凝固浴中に吐出してした。なお、ノズルは、吐出孔径が0.008mm、吐出孔数が15000のノズルを使用した。引き続き、沸水中で溶剤を洗浄したのち沸水中で5倍に延伸した。続いて油剤を付着させ150℃の熱ローラーで乾燥し、繊維長38mmに切断して断面形状が空豆状のアクリル繊維(単繊維繊度1dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0?2%、三菱レイヨン株式会社製、製品名:ボンネルH616)を得た。
【0050】
次に、繊度が1dtexである綿繊維20質量%と、繊度1dtexのモダール繊維20質量%と、前記のアクリル繊維60質量%とを混綿した。混綿した綿繊維、モダール繊維およびアクリル繊維を、紡績工程を通して紡績糸を作成した。混綿から紡績までの詳細は次のとおりである。
混綿方法は、設計比率になるように、各繊維を計量したのち混綿した。その後、打綿機に投入しラップを作成した。ラップをフラットカードに投入し、スライバーを作成した。このとき、使用するフラットカードのトップ数は106本とした。スライバーを作成後、練条工程を2回通したのち、粗紡工程を経て、粗糸を作成した。このときの粗糸撚り数の設定は20回/インチとした。次に、粗糸をリング精紡機に通しメートル番手68番手、撚数は870回/mの紡績糸を作成した。次いでワインダー工程で、紡績糸の欠点除去を行った後、コーンに巻き取った。
【0051】
得られた紡績糸を28ゲージ60口の丸編機を用いて、編地を作成した。その後に、編地を液流染色機にて染色した。染色後の編地を握ったときの風合い評価を前述のごとく行った。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
【0052】
(実施例2)
アクリル繊維として実施例1のアクリル繊維(単繊維繊度1dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0?2%)を25質量%と、単繊維繊度0.8dtex、繊維長38mm、沸水収縮率20%の高収縮アクリル繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:ボンネルH129)を35質量%とした以外、実施例1と同様にしてメートル番手68番手の紡績糸を得た。得られた紡績糸を22ゲージ60口の丸編機を用いて編地を作成し、実施例1と同様の染色を行った。染色後の編地を握ったときの風合い評価および保温性測定を行った。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
【0053】
(実施例3)
メートル番手100番手、撚数1060回/mの紡績糸とし、14ゲージ丸編機で編地を作成した以外、実施例2と同様に実施し、編地を握ったときの風合い評価および保温性測定を行った。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
【0054】
(実施例4)
アクリル繊維として実施例1のアクリル繊維(単繊維繊度1dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0?2%)を20質量%と、単繊維繊度1.3dtex、繊維長38mm、沸水収縮率40%の高収縮アクリル繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:ボンネルV85)を40質量%とした以外、実施例2と同様にしてメートル番手80番手、撚数950回/mの紡績糸を得た。得られた紡績糸を14ゲージ60口の丸編機を用いて編地を作成し、実施例2と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価および保温性測定を行った。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
【0055】
(実施例5)
アクリル繊維として実施例1のアクリル繊維(単繊維繊度1dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0?2%)を57質量%と、単繊維繊度2.2dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0?2%の導電性アクリル繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:コアブリッド・エレキル)を3質量%とした以外、実施例1と同様にしてメートル番手80番手、撚数950回/mの紡績糸を得た。
得られた紡績糸を28ゲージ60口の丸編機を用いて編地を作成し、実施例1と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価および制電性測定を実施した。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
【0056】
(実施例6)
アクリル繊維として単繊維繊度0.8dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0?2%のアクリル繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:H616)を50質量%と、単繊維繊度3.3dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0?2%の導電性アクリル繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:コアブリッド・サーモキャッチ)を10質量%とした以外、実施例5と同様にしてメートル番手68番手、撚数870回/mの紡績糸を得た。
得られた紡績糸を28ゲージ60口の丸編機を用いて、編地を作成し実施例5と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価および制電性、光発熱性測定を実施した。尚、光発熱性試験の比較布は実施例1で得られた編地を用いた。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
【0057】
(実施例7)
アクリル繊維として単繊維繊度1dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0?2%のアクリル繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:H616)を30質量%と、単繊維繊度1.7dtex、繊維長38mm、沸水収縮率0?2%の消臭性繊維(三菱レイヨン株式会社製、製品名:キュートリー)を30質量%として、再生セルロース繊維として、ビスコースレーヨン繊維(単繊維繊度1.2dtex、カット長38mm)とした以外、実施例5と同様にしてメートル番手68番手、撚数870回/mの紡績糸を得た。
得られた紡績糸を28ゲージ60口の丸編機を用いて、編地を作成し実施例5と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価および消臭性測定を実施した。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
【0058】
(比較例1)
繊度が1dtexである綿繊維40質量%と実施例1の製造方法で得られたアクリル繊維60質量%を混綿した以外は、実施例1と同様にしてメートル番手68番手、撚数870回/mの紡績糸を得た。
得られた紡績糸を28ゲージ60口の丸編機を用いて、編地を作成し実施例1と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価および保温性、制電性、消臭性測定を実施した。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
【0059】
(比較例2)
繊度が1.2dtexであるビスコースレーヨン繊維40質量%と実施例1の製造方法で得られたアクリル繊維60質量%を混綿した以外は、実施例1と同様にしてメートル番手80番手、撚数950回/mの紡績糸を得た。
得られた紡績糸を24ゲージ60口の丸編機を用いて、編地を作成し実施例1と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価および制電性測定を実施した。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
【0060】
(比較例3)
繊度が1dtexであるモダール繊維40質量%と繊度が1dtexの綿繊維60質量%を混綿した以外は、実施例1と同様にしてメートル番手80番手、撚数950回/mの紡績糸を得た。
得られた紡績糸を24ゲージ60口の丸編機を用いて、編地を作成し実施例1と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価を実施した。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
【0061】
(比較例4)
繊度が1dtexである綿繊維40質量%、繊度が1dtexであるビスコースレーヨン繊維40質量%および実施例1の製造方法で得られたアクリル繊維20質量%を混綿した以外は、実施例1と同様にしてメートル番手68番手、撚数870回/mの紡績糸を得た。
得られた紡績糸を28ゲージ60口の丸編機を用いて、編地を作成し実施例1と同様の染色を実施し、染色後の編地を握ったときの風合い評価を実施した。紡績糸の構成を表1に、編地の評価結果を表2示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維繊度が0.8?3.3dtexであるアクリル繊維と、単繊維繊度が0.8?1.2dtexである綿繊維と、単繊維繊度が0.8?1.2dtexである再生セルロース繊維からなる紡績糸であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(1)?(3)を満足し、メートル番手が64?90であり、撚り係数が105?110である紡績糸。
(1)アクリル繊維の混率が40?60質量%
(2)綿繊維の混率が20?30質量%
(3)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【請求項2】
請求項1に記載のアクリル繊維が、単繊維繊度が0.8?1.3dtex、沸水収縮率が5%以下である低収縮アクリル繊維(A)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(4)?(6)を満足する請求項1に記載の紡績糸。
(4)低収縮アクリル繊維(A)の混率が40?60質量%
(5)綿繊維の混率が20?30質量%
(6)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【請求項3】
請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、単繊維繊度0.8?1.3dtex、沸水収縮率15%?45%である高収縮アクリル繊維(B)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(7)?(10)を満足する請求項1または2に記載の紡績糸。
(7)高収縮アクリル繊維(B)の混率が30?50質量%
(8)低収縮アクリル繊維(A)と高収縮アクリル繊維(B)との合計の混率が40?60質量%
(9)綿繊維の混率が20?30質量%
(10)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【請求項4】
請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、単繊維繊度が1.7?3.3dtexである導電性アクリル繊維(C)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(11)?(14)を満足する請求項1または2に記載の紡績糸。
(11)導電性アクリル繊維(C)の混率が3?10質量%
(12)低収縮アクリル繊維(A)と導電性アクリル繊維(C)との合計の混率が40?60質量%
(13)綿繊維の混率が20?30質量%
(14)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【請求項5】
請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、単繊維繊度が1.0?2.2dtexである消臭性アクリル繊維(D)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(15)?(18)を満足する請求項1または2に記載の紡績糸。
(15)消臭性アクリル繊維(D)の混率が20?40質量%
(16)低収縮アクリル繊維(A)と消臭性アクリル繊維(D)との合計の混率が40?60質量%
(17)綿繊維の混率が20?30質量%
(18)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【請求項6】
請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、高収縮アクリル繊維(B)および導電性アクリル繊維(C)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の (19)?(23)を満足する請求項1乃至3に記載の紡績糸。
(19)高収縮アクリル繊維(B)の混率が30?50質量%
(20)導電性アクリル繊維(C)の混率が3?10質量%
(21)低収縮アクリル繊維(A)と高収縮アクリル繊維(B)と導電性アクリル繊維(C)との合計の混率が40?60質量%
(22)綿繊維の混率が20?30質量%
(23)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【請求項7】
請求項1または2に記載のアクリル繊維の一部又は全部が、低収縮アクリル繊維(A)と、高収縮アクリル繊維(B)および消臭性アクリル繊維(D)であって、紡績糸中の各繊維の混率が以下の(24)?(28)を満足する紡績糸。
(24)高収縮アクリル繊維(B)の混率が25?35質量%
(25)消臭性アクリル繊維(D)の混率が25?35質量%
(26)低収縮アクリル繊維(A)と高収縮アクリル繊維(B)と消臭性アクリル繊維(D)との合計の混率が40?60質量%
(27)綿繊維の混率が20?30質量%
(28)再生セルロース繊維の混率が20?30質量%
【請求項8】
請求項1?7いずれか一項に記載の紡績糸を含む編物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-04-12 
出願番号 特願2013-172267(P2013-172267)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (D02G)
P 1 651・ 113- YAA (D02G)
P 1 651・ 121- YAA (D02G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 加賀 直人  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 佐々木 正章
門前 浩一
登録日 2017-11-17 
登録番号 特許第6241133号(P6241133)
権利者 三菱ケミカル株式会社
発明の名称 紡績糸およびその紡績糸を含む編物  
代理人 林 司  
代理人 小林 均  
代理人 小林 均  
代理人 林 司  

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