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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A01G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A01G
管理番号 1352720
審判番号 不服2018-11734  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-31 
確定日 2019-07-16 
事件の表示 特願2015-529182「園芸ライティングシステム及びかかる園芸ライティングシステムを用いる園芸生産施設」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月13日国際公開、WO2014/037852、平成27年 9月10日国内公表、特表2015-526103、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)8月28日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2012年9月4日、米国)を国際出願日とする出願であって、原審では、平成29年5月26日付け(平成29年5月31日発送)で拒絶理由が通知がされ、3カ月の期間延長請求の後、平成29年11月30日付けで手続補正がされ、平成30年4月26日付け(平成30年5月1日発送)で拒絶査定(原査定)がされた。
本件はこれに対し、原査定の謄本送達から4月以内の平成30年8月31日に、拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正(以下、「審判補正」という。)がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成30年4月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
審判補正前の本願請求項5,6,13に係る発明,及びこのいずれかに従属する請求項7?12に係る発明は、不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
審判補正前の本願請求項1?4,6?11に係る発明は、下記引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献:
1.特開2012-125204号公報


第3 本願発明
本願請求項1ないし10に係る発明(以下、「本願発明1」等という。)は、審判補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される発明であって、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
ライティング装置を有するライティングシステムであって、
前記ライティング装置は、前記ライティング装置を有する園芸生産施設における用途のための複数の光源を有し、前記光源は前記園芸生産施設内の作物を園芸光で照らすように構成され、
前記ライティングシステムは、前記園芸生産施設内のある位置における局所光の光強度を制御するように構成される制御ユニットをさらに有し、前記局所光は前記園芸光と、オプションの他の光源から生じる前記位置におけるオプション光の合計であり、前記制御ユニットは、前記局所光への前記園芸光の寄与を制御することによって、5分以下の範囲から選択される所定期間にわたって平均50μモル/秒/m^(2)を超える前記園芸生産施設内の前記位置における前記局所光の光合成光量子束密度の変化を防止するように構成され、前記局所光の光合成光量子束密度は局所受光面積の単位面積当たり1秒当たりの400‐800nmの波長範囲内の光子の総数として決定される、
ライティングシステム。

【請求項2】
前記制御ユニットは前記所定期間にわたって平均5μモル/秒/m^(2)を超える前記園芸生産施設内の前記位置における前記局所光の光合成光量子束密度の変化を防止するように構成される、請求項1に記載のライティングシステム。

【請求項3】
前記所定期間が2分以下の範囲から選択される、請求項1乃至2のいずれか一項に記載のライティングシステム。

【請求項4】
前記ライティングシステムが前記位置における前記局所光の光合成光量子束密度を感知するように構成されるセンサをさらに有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のライティングシステム。

【請求項5】
前記制御ユニットが前記所定期間にわたって平均20μモル/秒/m^(2)を超える前記園芸生産施設内の前記位置における前記局所光の300‐800nmの波長範囲内の光合成光量子束密度の変化を防止するように構成される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のライティングシステム。

【請求項6】
前記制御ユニットが、前記所定期間にわたって平均10μモル/秒/m^(2)を超える前記園芸生産施設内の前記位置における前記局所光の400‐470nmの第1の波長範囲における、前記所定期間にわたって平均10μモル/秒/m^(2)を超える前記園芸生産施設内の前記位置における前記局所光の625‐675nmの第2の波長範囲における、及び随意に前記所定期間にわたって平均10μモル/秒/m^(2)を超える前記園芸生産施設内の前記位置における前記局所光の675‐760nmの第3の波長範囲における、光合成光量子束密度の変化を防止するように構成される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のライティングシステム。

【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のライティングシステムを有する園芸生産施設。

【請求項8】
前記園芸生産施設内の複数の位置において局所光の光合成光量子束密度を感知するように構成される複数のセンサを有し、前記制御ユニットが前記複数の位置において前記局所光の光合成光量子束密度の変化を防止するように構成される、請求項7に記載の園芸生産施設。

【請求項9】
前記園芸生産施設が温室、若しくは多層栽培システムを有する園芸生産施設を有する、請求項7乃至8のいずれか一項に記載の園芸生産施設。

【請求項10】
園芸生産施設において作物に園芸光を供給する方法であって、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のライティングシステムを用いて前記園芸光を前記作物に供給するステップを有する、方法。」


第4 明確性
審判補正前の本願請求項5,6,13に係る発明は、審判補正により削除されており、審判補正後の請求項1ないし10に係る発明は、原査定の理由1において不明確である旨の指摘を受けた発明特定事項を有していない。
そして、その他に審判補正後の請求項1ないし10に係る発明について、不明確な点は見いだせない。
したがって、審判補正後の請求項1ないし10に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしている。


第5 進歩性
1 引用文献1
(1)記載事項
原査定に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。

ア 背景技術及び発明が解決しようとする課題
「【背景技術】
【0002】
近年、自然条件の変動に左右されない農業環境づくりとして、栽培環境の光、温度、湿度、炭酸ガス濃度など、植物成長に影響を及ぼす各種条件を制御して、農作物などの植物を生産する植物工場などが実用化されつつある。
そして、このような植物工場における植物の栽培に際して、自然光(太陽光)と人工光とを併用するものが存在する(特許文献1?3参照)。
・・・・・(中略)・・・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、人工光と太陽光とを併用しようとした場合、人工光の照明装置を、被照射体である植物と太陽光の光源である太陽との間に配置せざるを得ないことから、照明装置によって太陽光が遮られ、植物に照射される太陽光のエネルギー量にロスが生じる懸念があった。また、照明装置によって太陽光が遮られた箇所と遮られなかった箇所とで、植物が受けるエネルギー量に違いが生じ、その発育が不揃いになる懸念があった。
【0005】
本発明は、人工光と太陽光とを併用して植物を栽培する場合に、太陽光の照射効率が低下するのを抑制することを目的とする。」

イ 実施の形態1
「【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態が適用される太陽光人工光併用型の植物栽培システム1の構成の一例を示す図である。
この植物栽培システム1は、例えばビニルシートやガラスなど、太陽光を透過する壁部を備え内部には空間が形成される栽培室2と、人工光を照射する機能を有し、栽培室2の内部に配置される複数の栽培ユニット3とを備えている。ここで、各栽培ユニット3には、それぞれ、栽培植物4を植栽した栽培容器5が収容されている。なお、栽培室2内では、図示しない空調設備等によって、栽培植物4の栽培条件に適した温度調整および湿度調整が施されるようになっている。
【0012】
図2は、実施の形態1における栽培ユニット3の構成の一例を示す斜視図である。
植物栽培用の照明装置の一例としての栽培ユニット3は、図1に示す栽培容器5を内部に積載するための枠体10と、枠体10に収容される栽培容器5に植栽された栽培植物4に人工光を照射するための人工光照射部20と、人工光照射部20を枠体10に支持させるための支持部30とを備えている。
・・・・・(中略)・・・・・
【0015】
また、人工光照射部20は、枠体10の底部10cからみてz方向(上方)であって、第1壁部10aと第2壁部10bとの間に配置される、第1照射体21、第2照射体22、および第3照射体23を備えている。複数の照射体の一例としての第1照射体21?第3照射体23は、共通の構成を有しており、それぞれが後述するように底部10c側に向けて人工光を照射する機能を有している。また、これら第1照射体21?第3照射体23は、それぞれが長方形の板状構造を有しており、その長辺側がx方向に沿い、その短辺側がz方向に沿うように配置されている。そして、これら第1照射体21?第3照射体23はy方向に並べて配置されており、第1壁部10aの内面側には第1照射体21の表面が対向し、第1照射体21の裏面には第2照射体22の表面が対向し、第2照射体22の裏面には第3照射体23の表面が対向し、第3照射体23の裏面には第2壁部10bの内面側が対向するようになっている。
・・・・・(中略)・・・・・
【0017】
次に、第1照射体21?第3照射体23の構成について説明を行うが、上述したように第1照射体21?第3照射体23は共通の構成を有していることから、ここでは、第1照射体21を例として説明を行う。
【0018】
図3および図4は、第1照射体21の構成の一例を示している。これらのうち、図3(a)は第1照射体21を表面側(図2における第1壁部10a側)からみた場合の斜視図であり、図3(b)は第1照射体21を裏面側(図2における第2照射体22側)からみた場合の斜視図である。また、図4(a)は図3(a)、図3(b)における第1照射体21のIVA-IVA断面図であり、図4(b)は第1照射体21を図4(a)におけるIVB方向からみた正面図である。
【0019】
本実施の形態において、第1照射体21は、電流の供給に伴って発光する発光部200と、発光部200が取り付けられるとともに発光部200の発光に伴って発生する熱を放出するための放熱板210とを有している。
・・・・・(中略)・・・・・
【0028】
このような構成を採用することで、本実施の形態にかかる人工光照射部20(第1照射体21?第3照射体23)は、次のような姿勢を取ることができるようになっている。
【0029】
図5(a)は、基準となる第1の状態を示している。第1の状態では、第1支持体31および第3支持体33がy方向あるいは-y方向へのスライドを停止した際に、第1支持体31および第3支持体33に設けられた各規制部材35が、第2支持体32および第4支持体34に設けられた各規制部材35の上方に位置するようになっている。これに伴い、第1の状態では、第1照射体21?第3照射体23が、それぞれ立てられた状態になる。
【0030】
また、図5(b)は、図5(a)に示す第1の状態から、第1支持体31および第3支持体33をy方向にスライドさせた第2の状態を示している。第2の状態では、第1支持体31および第3支持体33がy方向に移動することに伴い、第1照射体21?第3照射体23それぞれの図中右側に設けられた規制部材35が、対応する第1照射体21?第3照射体23に突き当たる。このとき、第2支持体32および第4支持体34は、上述したように固定されていることから、第2の状態では、第1照射体21?第3照射体23が、それぞれ図中左上に向かって傾斜した状態になる。
【0031】
さらに、図5(c)は、図5(a)に示す第1の状態から、第1支持体31および第3支持体33を-y方向にスライドさせた第3の状態を示している。第3の状態では、第1支持体31および第3支持体33が-y方向に移動するのに伴い、第1照射体21?第3照射体23それぞれの図中左側に設けられた規制部材35が、対応する第1照射体21?第3照射体23に突き当たる。このとき、第2支持体32および第4支持体34は上述したように固定されていることから、第3の状態では、第1照射体21?第3照射体23が、それぞれ図中右上に向かって傾斜した状態となる。
・・・・・(中略)・・・・・
【0035】
図8は、図1に示す植物栽培システム1において、図7(a)に示す第1の配置を採用した場合における、栽培植物4の栽培過程の一例を示す図である。ただし、図8においては、栽培室2の記載を省略している。ここで、図8(a)は『夜間』における状態を、図8(b)は『日中』のうちの『朝』における状態を、図8(c)は『日中』のうちの『昼』における状態を、図8(d)は『日中』のうちの『夕』における状態を、それぞれ例示している。また、図8(a)?(d)においては、図中左側が東の方角Eに対応し、図中右側が西の方角Wに対応し、図中手前側が北の方角N(図示せず)に対応し、図中奥側が南の方角S(図示せず)に対応している。
【0036】
図8(a)に示す『夜間』において、栽培ユニット3では、人工光照射部20を構成する第1照射体21?第3照射体23が、支持部30によって図5(a)に示す第1の状態に設定される。また、『夜間』においては、太陽光の採光が期待できないことから、人工光照射部20を用いた人工光の照射を実行させる。
【0037】
その際、栽培ユニット3では、第1照射体21?第3照射体23それぞれに設けられた発光部200に給電を行うことで、各発光部200において、第1LED2011および第3LED2013からは赤色光を出射させ、第2LED2012からは青色光を出射させる。そして、各発光部200から出射された人工光は、下方に配置された栽培容器5に植栽される栽培植物4に照射される。
【0038】
第1照射体21?第3照射体23では、それぞれに複数個ずつ取り付けられた第1LED2011?第3LED2013の発光に伴って発生した熱が、配線基板202を介して放熱板210に伝達される。そして、放熱板210に伝達された熱は、その表裏面から外部に放出される。このとき、第1照射体21?第3照射体23では、放熱板210の下方に発光部200が取り付けられていることから、発光部200から放熱板210に伝達された熱は、放熱板210を介して発光部200の取り付け位置とは逆向きとなる上方に放出される。このため、発光部200側には熱がこもりにくくなり、第1LED2011?第3LED2013の熱的な劣化が抑制される。
【0039】
また、太陽光のない『夜間』においても、人工光が栽培植物4に照射されることになるため、『夜間』において人工光の照射を行わない場合と比べて、栽培植物4の栽培が促進されることになる。
【0040】
図8(b)に示す『朝』において、栽培ユニット3では、人工光照射部20を構成する第1照射体21?第3照射体23が、支持部30によって図5(c)に示す第3の状態に設定される。また、『朝』においては、太陽光の採光が期待できることから、人工光照射部20を用いた人工光の照射を停止させる。
【0041】
『朝』において、栽培ユニット3には、東の方角E側から太陽光が照射されることになる。第1照射体21?第3照射体23は第3の状態に設定されていることから、このときの太陽光の照射方向と平行に近づいた状態になっている。このため、太陽光は、第1照射体21?第3照射体23によって遮られる量が低減された状態で、栽培植物4に照射される。また、太陽光の一部が第1照射体21?第3照射体23によって遮られたとしても、第1照射体21?第3照射体23の表裏面には反射層が形成されていることから、最終的には反射後の太陽光を栽培植物4に照射することが可能になる。
【0042】
図8(c)に示す『昼』において、栽培ユニット3では、人工光照射部20を構成する第1照射体21?第3照射体23が、支持部30によって図5(a)に示す第1の状態に設定される。また、『昼』においても、太陽光の採光が期待できることから、人工光照射部20を用いた人工光の照射を停止させる。
【0043】
『昼』において、栽培ユニット3には、南の方角S側から太陽光が照射されることになるが、第1照射体21?第3照射体23は第1の状態に設定されていることから、このときの太陽光の照射方向と平行に近づいた状態となっている。このため、太陽光は、第1照射体21?第3照射体23によって遮られる量が低減された状態で、栽培植物4に照射される。また、太陽光の一部が第1照射体21?第3照射体23によって遮られたとしても、第1照射体21?第3照射体23の表裏面には反射層が形成されていることから、最終的には反射後の太陽光を栽培植物4に照射することが可能になる。
【0044】
図8(d)に示す『夕』において、栽培ユニット3では、人工光照射部20を構成する第1照射体21?第3照射体23が、支持部30によって図5(b)に示す第2の状態に設定される。また、『夕』においても、太陽光の採光が期待できることから、人工光照射部20を用いた人工光の照射を停止させる。
【0045】
『夕』において、栽培ユニット3には、西の方角W側から太陽光が照射されることになるが、第1照射体21?第3照射体23は第2の状態に設定されていることから、このときの太陽光の照射方向と平行に近づいた状態となっている。このため、太陽光は、第1照射体21?第3照射体23によって遮られる量が低減された状態で、栽培植物4に照射される。また、太陽光の一部が第1照射体21?第3照射体23によって遮られたとしても、第1照射体21?第3照射体23の表裏面には反射層が形成されていることから、最終的には反射後の太陽光を栽培植物4に照射することが可能になる。
【0046】
そして、この例においては、『朝』→『昼』→『夕』という時間の経過に伴って、第1照射体21?第3照射体23の姿勢(傾斜角度)を、第3の状態→第1の状態→第2の状態に、連続的あるいは段階的に変更することが望ましい。
このように、太陽光のある『日中』においては、太陽光が栽培植物4に照射されることになるため、人工光のみで栽培植物4を栽培する場合と比べて、かかるエネルギーコストが低減されることになる。また、太陽光の入射角に応じて第1照射体21?第3照射体23の傾斜角度を調整して太陽光の照射方向と平行に近づけることで、第1照射体21?第3照射体23によって遮られる太陽光の量を減らすことが可能となり、太陽光の照射効率の低下が抑制されることにもなる。
【0047】
なお、ここでは、『日中』すなわち『朝』、『昼』、『夕』のいずれにおいても、太陽光が採光されることを期待して、人工光照射部20からの人工光の照射を停止させる場合を例として説明を行ったが、これに限られるものではない。例えば『日中』であっても天候不良(曇天や雨天等)により太陽光の光量が不足してしまう場合においては、太陽光とともに、人工光照射部20から人工光を照射するようにしてもかまわない。この場合において、太陽光と人工光とを併用するか否かについては、例えば手動で設定を行ってもかまわない。また、例えば光センサ等を用いて、太陽光単体の光量または太陽光および人工光の合計光量を計測し、太陽光と人工光とを合わせた合計光量が予め決められた基準光量となるように、人工光の光量をフィードバック制御してもよい。一方、太陽光が強すぎる場合は、人工光照射部20を構成する第1照射体21?第3照射体23を上述した説明とは逆向きに傾斜させることで、各放熱板210を、栽培植物4に対する太陽光の遮光板として利用することもできる。」

ウ 図面
図1,図2,図3(a)及び図8には、次の図示がある。
「【図1】


「【図2】


「【図3】(a)


「【図8】



(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「太陽光人工光併用型の植物栽培システム1において、
植物栽培システム1は、太陽光を透過する壁部を備え内部には空間が形成される栽培室2と、人工光照射部20を有し、栽培室2の内部に配置される複数の栽培ユニット3とを備え、
各栽培ユニット3は、栽培容器5を内部に積載するための枠体10と、枠体10の底部10cからみてz方向(上方)に、人工光照射部20として共通の構成を有する第1照射体21、第2照射体22、および第3照射体23を備え、
第1照射体21?第3照射体23は、それぞれが長方形の板状構造であり、放熱板210と、放熱板210の下方に取り付けられた発光部200とを有し、
夜間においては、第1照射体21?第3照射体23がそれぞれ立てられた状態として、人工光の照射を実行させ、
朝、昼、夕においては、太陽光の入射角に応じて、第1照射体21?第3照射体23の傾斜角度を調整して太陽光の照射方向と平行に近づけ、第1照射体21?第3照射体23によって遮られる太陽光の量を減らすとともに、太陽光の採光が期待できることから、人工光の照射を停止させ、
日中であっても天候不良(曇天や雨天等)により太陽光の光量が不足してしまう場合においては、太陽光とともに人工光を照射し、光センサを用いて太陽光単体の光量または太陽光および人工光の合計光量を計測し、太陽光と人工光とを合わせた合計光量が予め決められた基準光量となるように、人工光の光量をフィードバック制御し、
人工光と太陽光とを併用しながら、太陽光の照射効率が低下するのを抑制した、植物栽培システム1。」


2 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「植物栽培システム1」は、本願発明1における「園芸生産施設」に相当し、本願発明1における「植物栽培システム1」が有する「人工光照射部20」は、本願発明1における「ライティング装置」に相当する。また、引用発明1において、人工光照射部20が有する「第1照射体21?第3照射体23」は、本願発明1における「ライティング装置を有する園芸生産施設における用途のための複数の光源」に相当する。
引用発明1における「人工光」は、本願発明1における「園芸光」に相当し、また引用発明1において、「第1照射体21?第3照射体23」が、「栽培容器5を内部に積載するための枠体10」の「底部10cからみてz方向(上方)」から「人工光」の照射を行う構成は、本願発明1において、「前記光源は前記園芸生産施設内の作物を園芸光で照らすように」された構成に相当する。
引用発明1における「植物栽培システム1」が、「第1照射体21?第3照射体23の傾斜角度を調整」しながら「人工光の照射」の「停止」と「実行」とを行い、また「人工光の光量をフィードバック制御」するからには、かような人工光の制御のための制御部を有することは当然であり、当該制御部は、本願発明1における「制御ユニット」に相当する。また、引用発明1において、「植物栽培システム1」が有する「人工光照射部20」と前述の制御部との組合せは、本願発明1における「ライティングシステム」に相当する。
引用発明1における「太陽光」は、本願発明1における「オプションの他の光源から生じるオプション光」に相当し、引用発明1における「太陽光および人工光とを合わせた合計光量」は、本願発明1における「園芸光」と「オプション光」の「合計」である「局所光」に相当する。
引用発明1において、「人工光の光量をフィードバック制御」して「太陽光と人工光とを合わせた合計光量が予め決められた基準光量となるように」することは、本願発明1において、「制御ユニットは、前記局所光への前記園芸光の寄与を制御する」ことに相当する。

以上より、引用発明1の「植物栽培システム1」が有する「人工光照射部20」及び人工光の照射に関する制御のための部材に着目して検討すると、本願発明1と引用発明1とは、次の点で一致する。
「ライティング装置を有するライティングシステムであって、
前記ライティング装置は、前記ライティング装置を有する園芸生産施設における用途のための複数の光源を有し、前記光源は前記園芸生産施設内の作物を園芸光で照らすように構成され、
前記ライティングシステムは、前記園芸生産施設内のある位置における局所光の光強度を制御するように構成される制御ユニットをさらに有し、前記局所光は前記園芸光と、オプションの他の光源から生じる前記位置におけるオプション光の合計であり、前記制御ユニットは、前記局所光への前記園芸光の寄与を制御する、
ライティングシステム。」

一方、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で相違する。
(相違点)
光の制御に関して、
本願発明1では、制御ユニットが「5分以下の範囲から選択される所定期間にわたって平均50μモル/秒/m^(2)を超える前記園芸生産施設内の前記位置における前記局所光の光合成光量子束密度の変化を防止するように構成され」ており、また「前記局所光の光合成光量子束密度は局所受光面積の単位面積当たり1秒当たりの400‐800nmの波長範囲内の光子の総数として決定される」と特定されているのに対し、
引用発明1では、「太陽光と人工光とを合わせた合計光量が予め決められた基準光量となるように」フィードバック制御するものの、該フィードバック制御を、「局所受光面積の単位面積当たり1秒当たりの400‐800nmの波長範囲内の光子の総数として決定」される「局所光の光合成光量子束密度」について、「5分以下の範囲から選択される所定期間にわたって平均50μモル/秒/m^(2)を超える前記園芸生産施設内の前記位置における前記局所光の光合成光量子束密度の変化を防止するように」構成するとは特定されていない点。

イ 相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用発明1は、光センサを用いて太陽光単体の光量または太陽光および人工光の合計光量を計測し、太陽光と人工光とを合わせた合計光量が予め決められた基準光量となるように、人工光の光量をフィードバック制御する構成を有している。
しかしながら、引用発明1では、朝、昼、夕は太陽光の採光が期待できることから人工光の照射を停止させ、夜間には人工光の照射を実行しているところ、引用文献1中のその余の記載を検討しても、人工光の照射の実行と停止との境界において光の強度変化を避ける制御を行うことは、引用文献1中には、記載されていない。また、引用発明1において、曇天や雨天の場合に人工光の光量をフィードバック制御するにしても、引用文献1中には、当該天候に応じた光量調整の時間間隔を、朝、昼、夕などの1日を何回かに区分した単位より細分化して数分程度とすることや、数分以内程度の短い時間内において植物が受ける光量が所定量以上変動することを防止することは、記載されていない。
そのため、引用発明1において、人工光の光量のフィードバック制御を、人工光を照射する夜間と人工光の照射を行わない朝又は夕との境目において、あるいは、日中に日照不足と判断して人工光の光量を制御する際に、「局所受光面積の単位面積当たり1秒当たりの400‐800nmの波長範囲内の光子の総数として決定」される「局所光の光合成光量子束密度」について、「5分以下の範囲から選択される所定期間」にわたって「平均50μモル/秒/m^(2)を超える前記園芸生産施設内の前記位置における前記局所光の光合成光量子束密度の変化を防止する」よう構成することについては、引用文献1中のその余の記載を検討しても、記載や示唆を見いだすことができない。そして、原査定においてなお書きで付記された特開2010-4869号公報中の記載を検討しても、植物の栽培においてかような短時間での光の変化を防ぐことが、引用文献1に記載がなくとも技術常識であるといった証拠はない。

ウ 小括
以上のとおり、上記相違点に係る本願発明1の構成は、引用発明1に基づいて、本願出願前に当業者が容易に想到することができたとはいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1に基いて、容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2ないし10について
本願発明2ないし10は、本願発明1に従属し、本願発明1の発明特定事項をすべて含むものである。
そのため、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1に基いて、本願発明2ないし10が容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
本願発明1ないし10は、前記第5で検討したとおり、当業者であっても、原査定において引用された引用文献1に記載された発明に基いて、容易に発明できたものとはいえない。
また、前記第4で検討したとおり、本願発明1ないし10について、発明が不明確ということもできない。

したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-07-02 
出願番号 特願2015-529182(P2015-529182)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A01G)
P 1 8・ 121- WY (A01G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 秋田 将行
有家 秀郎
発明の名称 園芸ライティングシステム及びかかる園芸ライティングシステムを用いる園芸生産施設  
代理人 柴田 沙希子  

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