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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61H
管理番号 1352749
審判番号 不服2018-6276  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-08 
確定日 2019-07-16 
事件の表示 特願2015- 77736「エア式マッサージ機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月24日出願公開,特開2016-195720,請求項の数(6)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年4月6日の出願であって,平成29年10月13日付けで拒絶理由通知がされ,平成29年12月13日付けで手続補正がされ,平成30年2月23日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成30年5月8日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年2月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-5に係る発明は,以下の引用文献1に基いて,請求項6に係る発明は引用文献1,2に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2005-237726号公報
2.特開2001-87331号公報

第3 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は,平成29年12月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
施療部に対して押圧マッサージするエアバッグと、当該エアバッグに空気を供給するポンプと、前記ポンプからの空気を前記エアバッグに導く空気供給ホースと、を有するエア式マッサージ機において、
当該エア式マッサージ機は、前記エアバッグ、前記ポンプ、及び前記空気供給ホースを内部に格納する格納体を有しており、
前記格納体には、当該格納体の内空間を加熱する加熱装置が設けられており、
前記加熱装置は、熱風を前記格納体の内部に拡散させて格納体内の空間全体の空気を暖める温風ヒータとされ、
前記ポンプは、前記温風ヒータで暖められた格納体内の温風を吸い込む吸入口を備えており、前記温風ヒータの送出口と前記ポンプの吸入口は非連結とされている
ことを特徴とするエア式マッサージ機。」

なお,本願発明2-6は,本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献,引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0006】
上記課題を解決するために、本発明のマッサージユニットは、
被施療者の患部をエアバックによってマッサージするマッサージユニットにおいて、
エアバックに供給される空気を暖めるヒータを具えたものである。
また、エアバックに供給される空気を暖めるヒータで、被施療者の患部を直接暖めることができるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0007】
ヒータによって、エアバックに供給される空気を暖めることができるので、被施療者がマッサージ中に冷たく感じることはない。また、暖められたエアバックにより患部のマッサージを行なうことにより、足温効果による血行促進を図ることができ、マッサージ効果を高めることができる。
さらに、エアバックへ供給される空気を暖めるヒータによって、被施療者の患部をも直接暖めると、促音効果による血行促進を一段と高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のマッサージユニットを足先をマッサージする足用マッサージユニット(10)に適用した例を挙げて説明するが、本発明は、足用マッサージユニット(10)に限定されるものではなく、ふくらはぎ用のマッサージユニット、椅子用マッサージ機の背凭れ及び/又は座部用のマッサージユニット、さらには、ベッド用のマッサージユニットにも適用できる。
図1は、本発明の足用マッサージユニット(10)の斜視図、図2は、本発明の足用マッサージユニット(10)の布カバー(16)を除いた状態の平面図である。図1に示すように、足用マッサージユニット(10)は、樹脂製カバー(12)に、被施療者の足先(くるぶしよりも下の部分)を挿入する断面コ字状の左右一対の凹状受部(20)(20)が形成されている。凹状受部(20)(20)間は、図1及び図2に示すように中央壁(14)で仕切られており、中央壁(14)の上面には、被施療者が操作を行なうための操作パネル(70)が設けられている。また、凹状受部(20)の内面は、布カバー(16)で被覆されている。
【0009】
図3は、図2の線X1-X1に沿う矢視断面図、図4は、図2の線X2-X2に沿う矢視断面図、図5は、図2の線Y-Yに沿う矢視断面図である。
図1及び図5に示すように、凹状受部(20)の両側面には側面エアバック(21)(21)が取り付けられており、内面側を布カバー(16)で被覆している。側面エアバック(21)(21)は、連結ホース(65)によって連通しており、連結ホース(65)は、エア供給ホース(64)によって、電磁弁(62)及びポンプ(60)に接続されている。側面エアバック(21)は、ブロー成型により作られ、前後に夫々ひだ状の膨張部(21a)(21b)が形成されている。その他、ナイロン製の布地にウレタンシートをラミネートして作製することもできる。
連結ホース(65)は、図3に示すように、凹状受部(20)の底面の前方に設けられた凹み(65a)に配設されており、後述するヒータ(50)と凹状受部(20)の底面を介して熱交換可能に接近している。このように連結ホース(65)を配設することにより、連結ホース(65)を通って側面エアバック(21)に供給される圧縮空気を暖めることができ、温熱効果を高めることができる。
なお、図では、凹状受部(20)の両側面に夫々側面エアバック(21)(21)を設けているが、一方をスポンジ、ウレタン等の弾力性を有する弾性部材から作成することができる。」

「【0011】
凹状受部(20)の底面の裏側には、ヒータ(50)が取り付けられている。ヒータ(50)として、ヒータ線をアルミ箔で包んだものを例示できる。ヒータ(50)は、図2、図3及び図5に示すように、上記長孔(25)(25)を囲むように配置することができる。上記のように、長孔(25)にリブ(26)を形成しておくことにより、被施療者が誤って水等を足用マッサージユニット(10)にこぼしてしまっても、ヒータ(50)には、直接水等が掛かることはない。従って、長孔(25)にリブ(26)を設けることにより、ヒータ(50)の防水を図ることができる。」

「【0022】
押圧マッサージは、側面エアバック(21)を膨張、収縮させることにより、足の先端からくるぶしに亘る足先の側面を側面エアバック(21)(21)によって挟み込み、押圧するマッサージである。側面エアバック(21)の膨張、収縮は、電磁弁(62)の開閉及びポンプ(60)の駆動により行なうことができる。側面エアバック(21)に圧縮空気を送給する連結ホース(65)は、ヒータ(50)に接しているため、供給される圧縮空気が熱され、側面エアバック(21)に暖かい空気を供給でき、ヒータ(50)による足裏への温熱施療効果に加えて、足裏だけでなく、足の甲からくるぶしに亘る部分への温熱施療効果も得ることができる。
上記押圧マッサージは、温熱施療効果と押圧施療効果により、施療効果を増大させることができる。」

「【0026】
エアバックに供給される圧縮空気を暖める手段としては、ホース(65)の空気を暖める他、ポンプ(60)から送出される空気をヒータで暖めて暖かい空気にしてエアバックに供給するようにしてもよい。或いは、ポンプ(60)へ吸い込まれる空気をヒータで暖めるようにしてもよい。」

以上から,上記引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「足に対して押圧マッサージする側面エアバッグ(21)と,当該側面エアバッグ(21)の膨張を行うポンプ(60)と,前記ポンプ(60)からの圧縮空気を送給するエア供給ホース(64)及び連結ホース(65)と,を有するマッサージユニットにおいて,当該マッサージユニットは,前記側面エアバッグ(21),前記ポンプ(60),及び前記エア供給ホース(64)並びに連結ホース(65)を収容する樹脂製カバー(12)及び布カバー(16)を有しており,樹脂製カバー(12)には,ヒータ(50)が設けられている,マッサージユニット。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「足」は施療される部分であるから,本願発明1における「施療部」に相当する。

イ 引用発明における「側面エアバッグ(21)」,「ポンプ(60)」,「圧縮空気を送給するエア供給ホース(64)及び連結ホース(65)」は,その機能からみて,本願発明1における「エアバッグ」,「ポンプ」,「空気を前記エアバッグに導く空気供給ホース」に相当する。

ウ 引用発明の「収容する」は,明らかに本願発明1の「内部に格納する」に相当する。

エ 引用発明における「樹脂製カバー(12)及び布カバー(16)」は,エアバッグ,ポンプ,及び空気供給ホースを内部に格納するものであるから,本願発明1における「格納体」に相当する。

オ 引用発明における「ヒータ」は,発熱によって周囲の空間を加熱すると認められることから,本願発明1における「当該格納体の内空間を加熱する加熱装置」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「施療部に対して押圧マッサージするエアバッグと、当該エアバッグに空気を供給するポンプと、前記ポンプからの空気を前記エアバッグに導く空気供給ホースと、を有するエア式マッサージ機において、
当該エア式マッサージ機は、前記エアバッグ、前記ポンプ、及び前記空気供給ホースを内部に格納する格納体を有しており、
前記格納体には、当該格納体の内空間を加熱する加熱装置が設けられている,エア式マッサージ器」

(相違点1)
本願発明1は「前記加熱装置は、熱風を前記格納体の内部に拡散させて格納体内の空間全体の空気を暖める温風ヒータとされ」るのに対し,引用発明はそのような構成を備えていない点。
(相違点2)
本願発明1は,「前記ポンプは、前記温風ヒータで暖められた格納体内の温風を吸い込む吸入口を備えており、前記温風ヒータの送出口と前記ポンプの吸入口は非連結とされている」のに対し,引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると,「第4 引用文献,引用発明等」の引用文献1の【0026】には「ポンプ(60)へ吸い込まれる空気をヒータで暖めるようにしてもよい。」ことが記載されている。
ここで,「ポンプ(60)へ吸い込まれる空気をヒータで暖める」場合として想定されるのは,引用発明のヒータとしてはヒータ線が例示されている(【0011】)のみであることからみて,ポンプへ吸い込まれる空気のみを,吸入口,あるいはその周辺に設けたヒータ線等により暖めることであると認められ,格納体内の空間全体の空気を「温風ヒータ」で暖めることについては記載も示唆も無いと言わざるを得ない。
また,マッサージ用のポンプへ吸い込まれる空気を暖めるに際して周囲の空間の空気全体を暖めることが周知であるとも言えない。
よって,当業者といえども,引用文献1の上記記載から,相違点1に係る本願発明1の構成に容易に想到するとはいえない。
なお,原査定では,「カバー12(格納体)の内部に、カバー12(格納
体)の内空間を加熱するヒータ(加熱装置)を設けて、このヒータ(加熱装置)により熱風をケース12(格納体)の内部に拡散させて、ケース12(格納体)の内部空間全体の空気を暖めることは、当業者が容易に考えることである。」としているが,引用発明のような足裏等を暖めることを目的としたヒータ(ヒータ線)によって加熱された空気がケース内に拡散してケース(格納体)の内部空間全体の空気が結果として暖まることはあり得るとしても,「温風ヒータ」によってケース(格納体)の内部空間全体の空気を積極的に暖めるようにすることが,当業者が容易に考えることであるとまではいえない。
したがって,上記相違点2について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2-6について
本願発明2-6も,本願発明1の「前記加熱装置は、熱風を前記格納体の内部に拡散させて格納体内の空間全体の空気を暖める温風ヒータとされ」,「前記ポンプは、前記温風ヒータで暖められた格納体内の温風を吸い込む吸入口を備えており、前記温風ヒータの送出口と前記ポンプの吸入口は非連結とされている」という構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて,または引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて,容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,本願請求項1-5に係る発明は,引用文献1に基いて,請求項6に係る発明は引用文献1,2に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する
 
審決日 2019-07-02 
出願番号 特願2015-77736(P2015-77736)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村上 勝見  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 寺川 ゆりか
莊司 英史
発明の名称 エア式マッサージ機  
代理人 安田 幹雄  

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