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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1352783
審判番号 不服2018-973  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-24 
確定日 2019-06-20 
事件の表示 特願2013-254719「映像配信システムおよびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月22日出願公開、特開2015-115678〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月10日の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

平成29年 7月21日付け:拒絶理由通知書
同年 9月25日 :意見書の提出
同年10月13日付け:拒絶査定
平成30年 1月24日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年11月 2日付け:拒絶理由通知書(当審)
平成31年 1月 7日 :意見書、手続補正書の提出


第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成31年1月7日になされた手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

なお、本願発明の各構成の符号(A)?(F)は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A?構成Fと称する。

(本願発明)

【請求項1】
(A)カメラで撮影された映像コンテンツを前記カメラからリアルタイムに取得する取得部と、
(B1)前記映像コンテンツを配信用の標準フォーマットのデータファイルに変換する変換部と、
(C)前記データファイルを蓄積する蓄積部と、
(D)端末装置からの要求に応じて前記データファイルを前記蓄積部から読み出して前記端末装置へ配信する配信部とを備え、
(E)前記カメラと前記端末装置とは同一のコーデックの映像データに対応しており、
(B2)前記変換部は、前記映像コンテンツに含まれる映像データについては前記コーデックを変えることなく、前記映像コンテンツを前記データファイルに変換するように構成されており、
(B3)前記取得部での前記映像コンテンツの取得開始から終了までの間に、当該映像コンテンツの変換を開始する
(F)ことを特徴とする映像配信システム。


第3 拒絶の理由

本件補正前の請求項1に係る発明についての平成30年11月2日付けの当審が通知した拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2005-49834号公報
引用文献2:国際公開第2012/067219号


第4 引用文献の記載及び引用発明

1.引用文献1の記載事項

引用文献1(特開2005-49834号公報)には、図面とともに、次の記載がある。下線は説明のために当審にて付したものである。

(1)「【0170】
図23は、コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムex100の全体構成を示すブロック図である。通信サービスの提供エリアを所望の大きさに分割し、各セル内にそれぞれ固定無線局である基地局ex107?ex110が設置されている。」

(2)「図23



(3)「【0171】
このコンテンツ供給システムex100は、例えば、インターネットex101にインターネットサービスプロバイダex102および電話網ex104、および基地局ex107?ex110を介して、コンピュータex111、PDA(personal digital assistant)ex112、カメラex113、携帯電話ex114、カメラ付きの携帯電話ex115などの各機器が接続される。」

(4)「【0172】
しかし、コンテンツ供給システムex100は図23のような組合せに限定されず、いずれかを組み合わせて接続するようにしてもよい。また、固定無線局である基地局ex107?ex110を介さずに、各機器が電話網ex104に直接接続されてもよい。」

(5)「【0173】
カメラex113はデジタルビデオカメラ等の動画撮影が可能な機器である。また、携帯電話は、PDC(Personal Digital Communications)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、W-CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式、若しくはGSM(Global System for Mobile Communications)方式の携帯電話機、またはPHS(Personal Handyphone System)等であり、いずれでも構わない。」

(6)「【0174】
また、ストリーミングサーバex103は、カメラex113から基地局ex109、電話網ex104を通じて接続されており、カメラex113で取り込んだ符号化データをMP4ファイルとして蓄積しておき、そのファイルを伝送する。また、カメラ付き携帯電話で撮影した動画像を符号化して多重化し、多重化データをサーバex103に送信することも可能である。なお、撮影したデータの符号化処理はカメラex113で行っても、データの送信処理をするサーバ等で行ってもよい。また、カメラex116で撮影した動画データはコンピュータex111を介してストリーミングサーバex103に送信されてもよい。カメラex116はデジタルカメラ等の静止画、動画が撮影可能な機器である。この場合、動画データの符号化はカメラex116で行ってもコンピュータex111で行ってもどちらでもよい。また、符号化処理はコンピュータex111やカメラex116が有するLSIex117において処理することになる。なお、画像符号化・復号化用のソフトウェアをコンピュータex111等で読み取り可能な記録媒体である何らかの蓄積メディア(CD-ROM、フレキシブルディスク、ハードディスクなど)に組み込んでもよい。さらに、カメラ付きの携帯電話ex115で動画データを送信してもよい。このときの動画データは携帯電話ex115が有するLSIで符号化処理されたデータである。このように、本発明を配信システムに適用される場合は、予め蓄積されたMP4ファイルをHTTP用ストリーミングサーバから配信する。つまり、符号化データそのものをパケット化して配信するのではなく、MP4ファイルそのものを伝送する。」

(7)「【0175】
また、ストリーミングサーバex103は、カメラex113から基地局ex109、電話網ex104を通じて接続されており、カメラex113を用いてユーザが送信する符号化処理されたデータに基づいたライブ配信等が可能になる。なお、以上に述べたようにライブ配信を行うためには、MP4ファイルをリアルタイムで作成することが必要となり、フラグメント化したMP4ファイルを用いることになる。そして、フラグメント化したMP4を用いれば、HTTP/TCPを利用した、ライブ配信に近い低遅延の配信が可能である。」

(8)「【0176】
このコンテンツ供給システムex100では、ユーザがカメラex113、カメラex116等で撮影しているコンテンツ(例えば、音楽ライブを撮影した映像等)を符号化処理してストリーミングサーバex103に送信する一方で、ストリーミングサーバex103は要求のあったクライアントに対して上記コンテンツデータをストリーム配信する。クライアントとしては、符号化処理されたデータを復号化することが可能な、コンピュータex111、PDAex112、カメラex113、携帯電話ex114等がある。このようにすることでコンテンツ供給システムex100は、符号化されたデータをクライアントにおいて受信して再生することができ、さらにクライアントにおいてリアルタイムで受信して復号化し、再生することにより、個人放送をも実現可能になるシステムである。また、コンテンツの再生に際しては、上記実施形態のメディアデータ表示装置、メディアデータ表示方法およびメディアデータ表示方法をコンピュータを実現するメディアデータ表示プログラムを用いてもよい。例えば、コンピュータex111、PDAex112、カメラex113、携帯電話ex114等は、上記実施形態で示したメディアデータ表示方法を実現するメディアデータ表示プログラムを備えていてもよい。」

2.引用発明
上記記載から、引用文献1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

(1)上記1(1)、(2)によれば、引用文献1には、コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムex100のストリーミングサーバex103が記載されている。

(2)上記1(2)、(3)、(6)によれば、前記ストリーミングサーバex103は、インターネットを介して、カメラex113が接続されている。

(3)上記1(6)によれば、前記ストリーミングサーバex103は、カメラex113で取り込んだ符号化データをMP4ファイルとして蓄積しておき、そのファイルを伝送するものであり、予め蓄積されたMP4ファイルをHTTP用ストリーミングサーバから、符号化データそのものをパケット化して配信するのではなく、MP4ファイルそのものを伝送するものである。

(4)上記1(7)によれば、前記ストリーミングサーバex103は、カメラex113を用いてユーザが送信する符号化処理されたデータに基づいたライブ配信等が可能であり、ライブ配信を行うためには、MP4ファイルをリアルタイムで作成することが必要となり、フラグメント化したMP4ファイルを用いて、HTTP/TCPを利用した、ライブ配信に近い低遅延の配信が可能である。

(5)上記1(8)によれば、前記コンテンツ供給システムex100では、ユーザがカメラex113で撮影しているコンテンツ(例えば、音楽ライブを撮影した映像等)を符号化処理してストリーミングサーバex103に送信するものである。

(6)上記1(8)によれば、前記ストリーミングサーバex103は、要求のあったクライアントに対して上記コンテンツデータをストリーム配信するものであり、クライアントとしては、コンピュータex111、PDAex112等がある。

(7)上記1(8)によれば、前記コンテンツ供給システムex100は、符号化されたデータをクライアントにおいて受信して再生することができ、さらにクライアントにおいてリアルタイムで受信して復号化し、再生することにより、個人放送をも実現可能になるシステムである。

(8)以上によると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、引用発明の符号(a)?(f)は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成a?構成fと称する。

(引用発明)
(a)コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムex100のストリーミングサーバex103であって、
(b)ストリーミングサーバex103は、インターネットex101を介して、カメラex113が接続されており、
(c)前記ストリーミングサーバex103は、
(c1)カメラex113で取り込んだ符号化データをMP4ファイルとして蓄積しておき、そのファイルを伝送するものであり、
(c2)予め蓄積されたMP4ファイルをHTTP用ストリーミングサーバから、符号化データそのものをパケット化して配信するのではなく、MP4ファイルそのものを伝送するものであり、
(c3)カメラex113を用いてユーザが送信する符号化処理されたデータに基づいたライブ配信等が可能であり、ライブ配信を行うためには、MP4ファイルをリアルタイムで作成することが必要となり、フラグメント化したMP4ファイルを用いて、HTTP/TCPを利用した、ライブ配信に近い低遅延の配信が可能であり、
(d)コンテンツ供給システムex100では、ユーザがカメラex113で撮影しているコンテンツ(例えば、音楽ライブを撮影した映像等)を符号化処理してストリーミングサーバex103に送信し、
(c4)ストリーミングサーバex103は、要求のあったクライアントに対して上記コンテンツデータをストリーム配信するものであり、クライアントとしては、符号化処理されたデータを復号化することが可能な、コンピュータex111、PDAex112等があり、
(e)コンテンツ供給システムex100は、符号化されたデータをクライアントにおいて受信して再生することができ、さらにクライアントにおいてリアルタイムで受信して復号化し、再生することにより、個人放送をも実現可能になるシステム
(c)における前記ストリーミングサーバex103。

3.引用文献2の記載事項

引用文献2(国際公開第2012/067219号)には、図面とともに、次の記載がある。下線は説明のために当審にて付したものである。

(1)「[0126] また、上記実施例では、コンテナフォーマットの変換をサーバー装置、あるいは、プレイヤー装置が行うこととしたが、コンテナフォーマットの変換を、サーバー装置とプレイヤー装置との間に介在する中継サーバー装置が行うこととしてもよい。図7は、中継サーバー装置50が行うコンテナフォーマット変換処理の一例について説明する図である。」

(2)「[0127] 図7の例では、サーバー装置80がコンテンツを録画するために利用可能なフォーマットには、(MPEG2-PS,MPEG-2(SD),L-PCM/AC-3/MPEG-1/-2 Audio)、(MPEG2-TS,MPEG-2(HD),AAC)、(MPEG2-TS,H.264(HD),AAC)がある。」

(3)「[0128] また、プレイヤー装置110がコンテンツを再生するために利用可能なフォーマットには、(MP4,H.264(HD),AAC)、(MP4,H.264(CIF),AAC)がある。」

(4)「[0129] サーバー装置80は、プレイヤー装置110がコンテナフォーマットの変換を行うことにより再生可能となるフォーマット(MPEG2-TS,H.264(HD),AAC)のコンテンツデータを中継サーバー装置90に送信する。そして、このコンテンツデータを受信した中継サーバー装置90は、動画データおよび音声データのデコード処理およびエンコード処理を行うことなく、コンテナフォーマットを「MPEG2-TS」から「MP4」に変換する。さらに、中継サーバー装置90は、コンテナフォーマットの変換により得られたフォーマットが(MP4,H.264(HD),AAC)のコンテンツデータをプレイヤー装置110に送信する。これにより、プレイヤー装置110は、再生可能なコンテンツデータを取得することができる。」

(5)「[0130] 図8は、コンテナフォーマットの変換を行う中継サーバー装置90の機能ブロック図である。中継サーバー装置90は、コンテナフォーマットの情報を用いて、プレイヤー装置110向けにコンテナフォーマットが変換されたコンテンツデータを生成する装置である。図8に示すように、中継サーバー装置90は、入力部91、表示部92、記憶部93、ネットワーク接続部94、コンテンツ受信部95、コンテンツデータ用バッファ96、コンテンツ解析部97、コンテナ変換部98、コンテンツ送信部99、制御部100を備える。」

(6)「[0143] この場合、制御部100は、コンテナ変換データ93aを参照し、動画コーデックの種別および音声コーデックの種別がコンテナ変換データ93aに記憶されているものと一致するコンテンツデータ、すなわち、フォーマットが(MPEG2-TS,H.264(HD),AAC)であるコンテンツデータを、コンテナフォーマットの変換が可能なコンテンツデータとして抽出する。」

(7)「[0152] さらに、制御部100は、プレイヤー装置110からコンテンツデータの再生要求あるいはコンテンツデータの転送要求を受け付けた場合に、コンテンツデータ用バッファ96、コンテンツ送信部99、ネットワーク接続部94を制御して、コンテンツデータをプレイヤー装置110に転送させる。
[0153] その際、コンテンツデータのコンテナフォーマットを変換する必要がある場合には、コンテナ変換部98を制御して、コンテナフォーマットの変換を実行させる。具体的には、制御部100は、コンテンツデータの再生要求あるいはコンテンツデータの転送要求を受け付けた場合に、そのコンテンツデータに対応するフォーマットの情報をコンテナ変換データ93aあるいはプレイヤーデータ93bから読み出し、読み出した情報を用いてコンテナフォーマットをプレイヤー装置110が再生可能なコンテナフォーマットに変換させる。」

4.引用文献2の技術事項
以上によると、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる。

(引用文献2に記載された技術)
プレイヤー装置にコンテンツを送信するサーバー装置のコンテナフォーマット及び動画コーデックがそれぞれ(MPEG2-TS)及び(H.264(HD))を含み、前記サーバー装置からコンテンツを受信するプレイヤー装置が利用可能なコンテナフォーマット及び動画コーデックがそれぞれ(MP4)及び(H.264(HD))であり、サーバー装置とプレイヤー装置との間に介在する中継サーバー装置において、
中継サーバー装置は、動画コーデックの種別が一致するコンテンツデータ、すなわち、コンテナフォーマット及び動画コーデックがそれぞれ(MPEG2-TS)及び(H.264(HD))であるコンテンツデータを、コンテナフォーマットの変換が可能なコンテンツデータとして抽出し、プレイヤー装置からの要求を受け付けた場合に、受信したコンテンツデータを、動画データのデコード処理およびエンコード処理を行うことなく、コンテナフォーマットを「MPEG2-TS」から「MP4」に変換する技術。


第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

1.構成Aについて
構成dの「カメラex113」は、構成Aの「カメラ」に相当する。
構成dの「コンテンツ(例えば、音楽ライブを撮影した映像等)」は、構成Aの「映像コンテンツ」に相当する。
構成dのコンテンツ供給システム100は、「ユーザがカメラex113で撮影しているコンテンツ(例えば、音楽ライブを撮影した映像等)を符号化処理してストリーミングサーバex103に送信し」とあるから、カメラex113で撮影されたコンテンツ(例えば、音楽ライブを撮影した映像等)を取得しているといえる。
また、構成c3によれば、ストリーミングサーバex103は、ライブ配信等が可能であり、配信するMP4ファイルをリアルタイムで作成することが必要であるから、ライブ配信を行うために、ライブ配信用のデータの取得をリアルタイムに行うことは、明らかである。
さらに、ストリーミングサーバex103は、データを取得するから、取得部を備えているといえる。
よって、構成cのストリーミングサーバex103の当該取得部は、「カメラで撮影された映像コンテンツを前記カメラからリアルタイムに取得する取得部」である点で、構成Aと一致する。

2.構成B1及び構成Cについて
構成c1の「カメラex113で取り込んだ符号化データ」は、構成dの「コンテンツ(例えば、音楽ライブを撮影した映像等)を符号化処理」したものであり、構成c1の「MP4ファイル」は、カメラで取り込んだ符号化データを変換したものといえる。
構成c1の「MP4ファイル」は、構成c2の「蓄積されたMP4ファイル」及び構成c3の「フラグメント化したMP4ファイル」と同じものを意味しているといえる。
そして、構成c3の「フラグメント化したMP4ファイル」は、「HTTP用ストリーミングサーバから、MP4ファイルそのものを伝送する」ものであり(構成c2)、「HTTP/TCPを利用した、ライブ配信に近い低遅延の配信が可能」(構成c2)であるから、「配信用のデータファイル」である。そして、「フラグメント化したMP4ファイル」は、国際規格である「ISO-IEC/14496-12」及び「ISO/IEC14496-14」に規定され、「標準フォーマット」といえるから、構成c3の「フラグメント化したMP4ファイル」は、構成B1の「配信用の標準フォーマットのデータファイル」と一致する。
上述のとおり、構成c1の「MP4ファイル」は、カメラで取り込んだコンテンツ(例えば、音楽ライブを撮影した映像等)を変換したものといえるから、構成cのストリーミングサーバex103は、変換部を備えているといえる。
また、構成c1の「カメラex113で取り込んだ符号化データをMP4ファイルとして蓄積して」おくことから、構成cのストリーミングサーバex103は、データファイルを蓄積するために蓄積部を備えているといえる。
よって、構成cのストリーミングサーバex103の当該変換部及び当該蓄積部は、構成B1及び構成Cと一致する。

3.構成Dについて
構成c4の「クライント」は、「コンピュータex111、PDAex112等」であるから、構成Dの「端末装置」に相当する。
また、構成c4の「クライアント」からの「要求」は、構成Dの「端末装置からの要求」に相当する。
構成c4の「コンテンツデータ」は、上記2で検討したとおり、構成c3の「フラグメント化したMP4ファイル」であって、「クライアントに対してストリーム配信するもの」であるから、構成Dの「前記データファイル」に相当する。
また、「コンテンツデータをストリーム配信する」ことから、構成cのストリーミングサーバex103は、データファイルを蓄積した蓄積部から読み出して端末装置に配信する配信部を備えているといえる。
よって、構成cのストリーミングサーバex103の当該取得部は、「端末装置からの要求に応じて前記データファイルを前記蓄積部から読み出して前記端末装置へ配信する配信部」である点で、構成Dと一致する。

4.構成Eについて
構成c1の「符号化データ」及び「MP4ファイル」、構成dの「符号化処理」について、コーデックの内容は特定されていない。
また、構成c4のクライアントの符号化処理されたデータを復号化することが可能」について、コーデックの内容は特定されていない。
したがって、本願発明は、「前記カメラと前記端末装置とは同一のコーデックの映像データに対応しており」の構成を有する(構成E)のに対して、引用発明はそのような特定がなされていない点で相違する。

5.構成B2について
上記2で述べたように、構成c1は、構成c3から、カメラex113で取り込んだ符号化データからフラグメント化したMP4ファイルに変換して蓄積するものであるものの、その変換において、具体的にどのような処理を行うのかは、引用発明においては特定されていない。
よって、本願発明においては、前記映像コンテンツに含まれる映像データについては前記コーデックを変えることなく、前記映像コンテンツを前記データファイルに変換するのに対して、引用発明はそのような特定がなされていない点で相違する。

6.構成B3について
上記1のとおり、構成dのストリーミングサーバex103は、カメラex113で撮影されたコンテンツ(例えば、音楽ライブを撮影した映像等)を取得しているといえる。
また、上記2のとおり、構成c1の「MP4ファイル」は、カメラで取り込んだコンテンツ(例えば、音楽ライブを撮影した映像等)を変換したものといえる。
そして、上記1のとおり、構成c3によれば、ストリーミングサーバex103は、ライブ配信等が可能であり、配信するMP4ファイルをリアルタイムで作成することが必要であるから、構成cのストリーミングサーバex103は、カメラで取り込んだコンテンツ(例えば、音楽ライブを撮影した映像等)の変換を、リアルタイムで行うべく、カメラで取り込んだコンテンツ(例えば、音楽ライブを撮影した映像等)の取得開始から終了までの間に、開始するものであるといえる。
したがって、構成cのストリーミングサーバex103は、「前記取得部での前記映像コンテンツの取得開始から終了までの間に、当該映像コンテンツの変換を開始する」点で、構成B3と一致する。

7.構成Fについて
構成cの「ストリーミングサーバex103」は、コンテンツ(例えば、音楽ライブを撮影した映像等)のストリーム配信を行うことから、構成Fの「映像配信システム」に相当する。

8.まとめ
上記1?7の対比を踏まえると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)
カメラで撮影された映像コンテンツを前記カメラからリアルタイムに取得する取得部と、
前記映像コンテンツを配信用の標準フォーマットのデータファイルに変換する変換部と、
前記データファイルを蓄積する蓄積部と、
端末装置からの要求に応じて前記データファイルを前記蓄積部から読み出して前記端末装置へ配信する配信部とを備え、
前記取得部での前記映像コンテンツの取得開始から終了までの間に、当該映像コンテンツの変換を開始する
ことを特徴とする映像配信システム。

(相違点)
本願発明は、前記カメラと前記端末装置とは同一のコーデックの映像データに対応しており、前記変換部は、前記映像コンテンツに含まれる映像データについては前記コーデックを変えることなく、前記映像コンテンツを前記データファイルに変換するように構成されているのに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点。


第6 判断
以下、上記相違点について検討する。

1.相違点について
引用文献2に記載された技術は、コンテンツの送信装置とコンテンツの受信装置とは同一の動画コーデック(H.264(HD))のコンテンツに対応している場合において、コンテンツの受信装置からの要求に応じて、コンテンツの動画コーデックを変えることなく、コンテナフォーマットをMP4に変換する技術である。
そして、引用発明において、カメラex113とクライアントとが同一のコーデックの映像のデータに対応する構成を採用することは、引用文献2に記載されているように、適宜なし得る構成であり、そのような構成を採用した場合に、映像のコンテンツからMP4ファイルを生成する具体的な手法として、引用文献2に記載された技術事項を適宜用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。

2.効果等について
本願発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える格別顕著なものがあるとは認められない。

3.請求人の主張について
請求人は、31年1月7日付けの意見書において、「引用文献1では、「低遅延の配信」に着目しており、配信時のデータを軽くすることに重きを置いているので、引用文献1に対して、コーデックを変えない(=データとしては重くなる)という技術を適用することは、当業者が通常は考えないことです。」と主張している。
しかしながら、引用発明は、フラグメント化したMP4ファイルを用いることにより低遅延の配信を行うものであって、配信時のデータを軽くすることにより低遅延の配信を行うものではないので、当該主張は採用することができない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-19 
結審通知日 2019-04-23 
審決日 2019-05-09 
出願番号 特願2013-254719(P2013-254719)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松元 伸次  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 鳥居 稔
藤原 敬利
発明の名称 映像配信システムおよびプログラム  
代理人 竹尾 由重  
代理人 木村 豊  
代理人 北出 英敏  
代理人 坂口 武  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 水尻 勝久  
代理人 西川 惠清  

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