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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1352799
審判番号 不服2018-11836  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-04 
確定日 2019-06-20 
事件の表示 特願2016-140927号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年1月18日出願公開、特開2018-7988号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年7月15日の出願であって、平成29年4月26日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月28日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成30年2月5日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年6月18日付けで、同年2月5日付け手続補正書でした補正が却下されるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年9月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
(補正前:平成29年6月28日に提出された手続補正書)
「【請求項1】
遊技球が流下可能な遊技領域と、
前記遊技領域へ向けて遊技球を発射可能な発射装置と、
前記遊技領域を流下する遊技球が進入可能な入賞口と、
前記入賞口へ遊技球が進入することに基づき、賞球として遊技球を払い出す払出装置と、を備えるとともに、
電子部品を実装した制御基板が、開放可能な収納ケースに収納された状態で設けられ、
前記収納ケースは、
当該収納ケースが開放不能となるように固着するためのカシメ部を備えるとともに、当該収納ケースが固着された後に当該収納ケースを開放する際には、前記カシメ部が破壊されるように形成され、
当該収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際には、当該収納ケースの表面を通して、前記制御基板における電子部品の実装面を視認可能に形成されている遊技機であって、
前記制御基板における電子部品の実装面には、遊技の進行を制御する制御装置と、当該制御装置と電気的に接続され、かつ遊技に関する情報を表示する表示装置とが少なくとも実装され、
前記収納ケースの表面には、当該収納ケースの固着及び開放の履歴を記録する記録手段が設けられ、
前記制御装置、前記表示装置及び前記記録手段は、前記収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際に、互いに重なって視認されることの無い位置に配置されており、
前記制御装置は、所定の算定期間において、前記払出装置により払い出された賞球の数に対応する値及び前記発射装置により発射された遊技球の数に対応する値に基づく算出値を導出可能であり、
前記表示装置は、前記制御装置により導出された所定の算定期間における算出値を表示可能に設定されていることを特徴とする遊技機。」
から、
(補正後:平成30年9月4日に提出された手続補正書)
「【請求項1】
遊技球が流下可能な遊技領域と、
前記遊技領域へ向けて遊技球を発射可能な発射装置と、
前記遊技領域を流下する遊技球が進入可能な入賞口と、
前記入賞口へ遊技球が進入することに基づき、賞球として遊技球を払い出す払出装置と、を備えるとともに、
電子部品を実装した制御基板が、開放可能な収納ケースに収納された状態で設けられ、
前記収納ケースは、
当該収納ケースが開放不能となるように固着するためのカシメ部を備えるとともに、当該収納ケースが固着された後に当該収納ケースを開放する際には、前記カシメ部が破壊されるように形成され、
当該収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際には、当該収納ケースの表面を通して、前記制御基板における電子部品の実装面を視認可能に形成されている遊技機であって、
前記制御基板における電子部品の実装面には、遊技の進行を制御する制御装置と、当該制御装置と電気的に接続され、かつ遊技に関する情報を表示内容ごとに一つずつ表示可能とするとともに操作部の操作に基づき当該表示内容を切り換えて表示可能な表示装置とが少なくとも実装され、
前記収納ケースの表面には、当該収納ケースの固着及び開放の履歴を記録する記録手段が設けられ、
前記制御装置、前記表示装置及び前記記録手段は、前記収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際に、互いに重なって視認されることの無い位置に配置されており、
前記制御装置は、前記遊技に関する情報の一つとして、所定の算定期間において、前記払出装置により払い出された賞球の数に対応する値及び前記発射装置により発射された遊技球の数に対応する値に基づく算出値を導出可能であり、
前記表示装置は、前記制御装置により導出された所定の算定期間における算出値を表示可能に設定されるとともに、前記操作部の操作に基づき前記表示内容を切り換えて表示可能に設定されていることを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審で付した)。

2 本件補正の適否
(1)補正事項
本件補正は、補正前の請求項1について、以下に挙げる補正事項を含むものである。

ア 「当該制御装置と電気的に接続され、かつ遊技に関する情報を表示する表示装置」という記載を、「当該制御装置と電気的に接続され、かつ遊技に関する情報を表示内容ごとに一つずつ表示可能とするとともに操作部の操作に基づき当該表示内容を切り換えて表示可能な表示装置」とする補正

イ 「前記制御装置は、所定の算定期間において、前記払出装置により払い出された賞球の数に対応する値及び前記発射装置により発射された遊技球の数に対応する値に基づく算出値を導出可能であり」という記載を、「前記制御装置は、前記遊技に関する情報の一つとして、所定の算定期間において、前記払出装置により払い出された賞球の数に対応する値及び前記発射装置により発射された遊技球の数に対応する値に基づく算出値を導出可能であり」とする補正

ウ 「前記表示装置は、前記制御装置により導出された所定の算定期間における算出値を表示可能に設定されている」という記載を、「前記表示装置は、前記制御装置により導出された所定の算定期間における算出値を表示可能に設定されるとともに、前記操作部の操作に基づき前記表示内容を切り換えて表示可能に設定されている」とする補正

(2)補正の目的要件違反についての検討
ア 補正事項アは、「表示装置」について、補正前に「遊技に関する情報を表示する」としていたのを、補正後に「遊技に関する情報を表示内容ごとに一つずつ表示可能とするとともに操作部の操作に基づき当該表示内容を切り換えて表示可能な」と限定することにより減縮する補正であり、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、当該限定した事項は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の明細書【0032】、【0083】、【0085】、【0114】に記載された事項であり、当該補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項の規定を満たす。

イ 補正事項イは、「制御装置」について、制御装置が導出可能であるとする「算出値」を、「前記遊技に関する情報の一つとして」と限定することにより減縮する補正であり、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、当該限定した事項は、当初明細書等の明細書【0032】、【0072】、【0083】-【0085】、【0091】に記載された事項であり、当該補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項の規定を満たす。

ウ 補正事項ウは、「表示装置」について、「前記操作部の操作に基づき前記表示内容を切り換えて表示可能に設定されている」と限定することにより減縮する補正であり、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、当該限定した事項は、当初明細書等の明細書【0032】、【0083】、【0085】、【0114】に記載された事項であり、当該補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項の規定を満たす。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

3 本願補正発明の独立特許要件についての検討
(1)本願補正発明について
本願補正発明は、上記1の本件補正の概要に示した次のとおりのものである(A?Iは、本願補正発明を分説するため当審にて付与した)。

「A 遊技球が流下可能な遊技領域と、
B 前記遊技領域へ向けて遊技球を発射可能な発射装置と、
C 前記遊技領域を流下する遊技球が進入可能な入賞口と、
D 前記入賞口へ遊技球が進入することに基づき、賞球として遊技球を払い出す払出装置と、を備えるとともに、
E1 電子部品を実装した制御基板が、開放可能な収納ケースに収納された状態で設けられ、
F1 前記収納ケースは、
当該収納ケースが開放不能となるように固着するためのカシメ部を備えるとともに、当該収納ケースが固着された後に当該収納ケースを開放する際には、前記カシメ部が破壊されるように形成され、
F2 当該収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際には、当該収納ケースの表面を通して、前記制御基板における電子部品の実装面を視認可能に形成されている遊技機であって、
E2 前記制御基板における電子部品の実装面には、遊技の進行を制御する制御装置と、当該制御装置と電気的に接続され、かつ遊技に関する情報を表示内容ごとに一つずつ表示可能とするとともに操作部の操作に基づき当該表示内容を切り換えて表示可能な表示装置とが少なくとも実装され、
F3 前記収納ケースの表面には、当該収納ケースの固着及び開放の履歴を記録する記録手段が設けられ、
G 前記制御装置、前記表示装置及び前記記録手段は、前記収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際に、互いに重なって視認されることの無い位置に配置されており、
H 前記制御装置は、前記遊技に関する情報の一つとして、所定の算定期間において、前記払出装置により払い出された賞球の数に対応する値及び前記発射装置により発射された遊技球の数に対応する値に基づく算出値を導出可能であり、
I 前記表示装置は、前記制御装置により導出された所定の算定期間における算出値を表示可能に設定されるとともに、前記操作部の操作に基づき前記表示内容を切り換えて表示可能に設定されていることを特徴とする遊技機。」

(2)引用文献等の記載事項
ア 先願
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の他の特許出願であって、本願の出願後に出願公開された特願2016-89730号(特開2017-196185号)(出願日:平成28年4月27日、出願人:株式会社大一商会、発明者:市原高明、岩田和也)(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0014】
本実施形態のパチンコ機1は、遊技ホールの島設備(図示しない)に設置される枠状の外枠2と、外枠2の前面を開閉可能に閉鎖する扉枠3と、扉枠3を開閉可能に支持していると共に外枠2に開閉可能に取付けられている本体枠4と、本体枠4に前側から着脱可能に取付けられると共に扉枠3を通して遊技者側から視認可能とされ遊技者によって遊技球が打込まれる遊技領域5aを有した遊技盤5と、を備えている。」

(イ)「【0018】
パチンコ機1の本体枠4は、一部が外枠2の枠内に挿入可能とされると共に遊技盤5の外周を支持可能とされた枠状の本体枠ベース600と、本体枠ベース600の正面視左側の上下両端に取付けられ外枠2の外枠側上ヒンジ部材60及び外枠側下ヒンジ部材70に夫々回転可能に取付けられると共に扉枠3の扉枠側上ヒンジ部材140及び扉枠側下ヒンジ部材150が夫々回転可能に取付けられる本体枠側上ヒンジ部材620及び本体枠側下ヒンジ部材640と、本体枠ベース600の正面視左側面に取付けられる補強フレーム660と、本体枠ベース600の前面下部に取付けられており遊技盤5の遊技領域5a内に遊技球を打込むための球発射装置680と、本体枠ベースの正面視右側面に取付けられており外枠2と本体枠4、及び扉枠3と本体枠4の間を施錠する施錠ユニット700と、本体枠ベース600の正面視上辺及び左辺に沿って後側に取付けられており遊技者側へ遊技球を払出す逆L字状の払出ユニット800と、本体枠ベース600の後面下部に取付けられている基板ユニット900と、本体枠ベース600の後側に開閉可能に取付けられ本体枠ベース600に取付けられた遊技盤5の後側を覆う裏カバー980と、を備えている。
【0019】
裏カバー980の内部には、パチンコ機1で行われる遊技の進行にかかる制御を行う主制御ユニット1300が設けられる。主制御ユニット1300には役物比率表示器1317が設けられる。役物比率表示器1317は、例えば、4桁の7セグメントLEDによって構成される。液晶表示装置によって役物比率表示器1317を構成してもよい。
【0020】
主制御ユニット1300は、図13に示すように、一度閉めたら破壊せずに開けることができない構造で封印された透明の樹脂製の主制御基板ボックス1320に封入されており、プリント基板上に配置された部品を外部から見ることができる。さらに、例えば、裏カバー980が透明な樹脂で形成されている場合、パチンコ機1の裏面側から主制御ユニット1300を見ることができ、主制御ユニット1300に設けられる役物比率表示器1317をパチンコ機1の裏面側から見ることができる。役物比率表示器1317を主制御基板ボックス1320内に封入することによって、遊技機1の射幸性を低く見せるための役物比率表示器1317の不正な改造を防止でき、遊技機1の正確な射幸性を表示できる。」

(ウ)「【0027】
本実施形態のパチンコ機1は、上皿201に遊技球を貯留した状態で、遊技者がハンドルレバー504を回転操作すると、球発射装置680によってハンドルレバー504の回転角度に応じた強さで遊技球が遊技盤5の遊技領域5a内へ打込まれる。そして、遊技領域5a内に打込まれた遊技球が、図示しない入賞口に受入れられると、受入れられた入賞口に応じて、所定数の遊技球が払出装置830によって上皿201に払出される。この遊技球の払出しによって遊技者の興趣を高めることができるため、上皿201内の遊技球を遊技領域5a内へ打込ませることができ、遊技者に遊技を楽しませることができる。」

(エ)「【0032】
表ユニット2000は、遊技領域5a内に打込まれた遊技球を受入可能に常時開口している複数の一般入賞口2001と、複数の一般入賞口2001とは遊技領域5a内の異なる位置で遊技球を受入可能に常時開口している第一始動口2002と、遊技領域5a内の所定位置に取付けられており遊技球の通過を検知するゲート部2003と、遊技球がゲート部2003を通過することにより抽選される普通抽選結果に応じて遊技球の受入れが可能となる第二始動口2004と、第一始動口2002又は第二始動口2004への遊技球の受入れにより抽選される第一特別抽選結果又は第二特別抽選結果に応じて遊技球の受入れが何れかにおいて可能となる第一大入賞口2005及び第二大入賞口2006と、を備えている。第二大入賞口2006は、遊技球が流通する一つの流路に配置された第二上大入賞口2006aと第二下大入賞口2006bとの二つの大入賞口により構成されている(図16を参照)。」

(オ)「【0044】
[2-4.主制御基板ユニット]
次に、主制御ユニット1300について、図11乃至図15、及び図17を参照して説明する。主制御ユニット1300は、基板ホルダ1200の後面に着脱可能に取付けられている。この主制御ユニット1300は、遊技内容及び遊技球の払出し等を制御する主制御基板1310と、主制御基板1310を収容しており基板ホルダ1200に取付けられる主制御基板ボックス1320と、を備えている。
【0045】
主制御基板ボックス1320は、複数の封印機構を備えており、一つの封印機構を用いて主制御基板ボックス1320を閉じると、次に、主制御基板ボックス1320を開けるためにはその封印機構を破壊する必要があり、主制御基板ボックス1320の開閉の痕跡を残すことができる。従って、開閉の痕跡を見ることで、主制御基板ボックス1320の不正な開閉を発見することができ、主制御基板1310への不正行為に対する抑止力が高められている。」

(カ)「【0065】
[3-1.主制御基板]
遊技の進行を制御する主制御基板1310は、各種処理プログラムや各種コマンドを記憶するROM1313や一時的にデータを記憶するRAM1312等が内蔵されるマイクロプロセッサである主制御MPU1311と、入出力デバイス(I/Oデバイス)としての主制御I/Oポート1314と、各種検出スイッチからの検出信号が入力される主制御入力回路1315と、各種ソレノイドを駆動するための主制御ソレノイド駆動回路1316と、主制御MPU1311に内蔵されているRAMに記憶された情報を完全に消去するためのRAMクリアスイッチと、を備えている。主制御MPU1311は、その内蔵されたROMやRAMのほかに、その動作(システム)を監視するウォッチドックタイマや不正を防止するための機能等も内蔵されている。」

(キ)「【0072】
主制御基板1310には、パチンコ機1の裏面側から視認可能な位置に役物比率表示器1317が取り付けられる。役物比率表示器1317は、主制御MPU1311が計算した役物比率を表示する。
【0073】
また、主制御基板1310には、表示切替スイッチ1318が設けられる。表示切替スイッチ1318は、モーメンタリ動作をする押ボタンスイッチで構成するとよいが、他の形式のスイッチでもよい。表示切替スイッチ1318を操作すると、役物比率表示器1317に役物比率を表示する。なお、役物比率表示器1317は常時、役物比率を表示し、表示切替スイッチ1318の操作によって表示内容を切り替えてもよい。」

(ク)「【0106】
[4.遊技内容]
次に、本実施形態のパチンコ機1による遊技内容について、主に図10、図16及び図17等を参照して説明する。本実施形態のパチンコ機1は、扉枠3の前面右下隅に配置されたハンドルユニット500のハンドルレバー504を遊技者が回転操作することで、皿ユニット200の上皿201に貯留された遊技球が、遊技盤5における外レール1001と内レール1002との間を通って遊技領域5a内の上部へと打ち込まれて、遊技球による遊技が開始される。遊技領域5a内の上部へ打ち込まれた遊技球は、その打込強さによってセンター役物2500の左側、或いは、右側の何れかを流下する。なお、遊技球の打込み強さは、ハンドルレバー504の回転量によって調整することができ、時計回りの方向へ回転させるほど強く打込むことができ、連続で一分間に最大100個の遊技球、つまり、0.6秒間隔で遊技球を打込むことができる。」

(ケ)「【0174】
[5-3.役物比率算出・表示処理]
図21及び図22は、役物比率算出・表示処理の一例を示すフローチャートである。役物比率算出・表示処理は、主制御MPU1311が実行する。なお、周辺制御基板1510の周辺制御部1511が役物比率算出・表示処理を実行してもよい。周辺制御部1511が役物比率を算出する場合、算出された役物比率はメイン液晶表示装置1600に表示してもよい。例えば、算出された役物比率が所定の範囲内(又は、範囲外)である場合、遊技における演出を変えてもよい。具体的には、役物比率が所定の閾値(基準値より小さい閾値)を超えている場合に、予告演出を変えて、通常の予告演出より興趣が高まる予告演出を行ってもよい。
【0175】
まず、主制御MPU1311のRAM1312の役物比率算出用領域13128のメイン領域からチェックコードを算出し(ステップS140)、算出したチェックコードが、役物比率算出用領域13128に格納されているチェックコードと一致しているかを判定する(ステップS142)。算出したチェックコードと役物比率算出用領域13128に格納されているチェックコードとが一致していれば、メイン領域のデータは正常なので、役物比率算出処理を実行し、メイン領域のデータから役物比率及び連続役物比率を算出し、役物比率算出用領域13128に格納する(ステップS156)。具体的には、役物獲得球数÷総獲得球数で役物比率を計算し、連続役物獲得球数÷総獲得球数で連続役物比率を計算する。計算された役物比率及び連続役物比率の小数部分(小数点以下の値)は切り捨てるか、四捨五入するとよい。そして、ステップS160に進む。」

(コ)「【0187】
続いて、算出された役物比率を役物比率表示器1317に表示する(ステップS172)。」

(サ)「【0211】
前述したように、役物比率は、主制御基板1310に設けられた役物比率表示器1317に表示される。前述したように、役物比率表示器1317は、例えば、4桁の7セグメントLEDや、液晶表示装置によって構成され、下2桁に役物比率の数値を表示し、上2桁に数値の種類を表示する。」

(シ)「【0217】
役物比率表示器1317は、直近データ表示と中期データ表示と長期データ表示とを切り替えて表示してもよい。直近データ表示は、図24(B)(C)に示すリングカウンタにおいて、現在書き込み中の一つ前のカウンタ値を用いて計算した役物比率である。中期データ表示は、図24(B)(C)に示すリングカウンタにおいて、累計を用いて計算した役物比率である。長期データ表示は、図24(B)(C)に示すリングカウンタにおいて、総累計を用いて計算した役物比率である。」

(ス)「【0220】
役物比率表示器1317は、ベースを表示してもよい。ベースは、特賞中(大当り中)を除いた通常時の出玉率であり、セーフ球数÷アウト球数で計算できる。このため、発射球数センサを設け、発射球数(アウト球数)を計数する。発射球センサは、磁気センサなどの近接スイッチで構成でき、遊技領域5aに打ち込まれる遊技球を検出する。発射球数センサは、発射装置から遊技領域5aに遊技球を導くレール1001、1002の出口(逆流防止部材1007)付近に設けるとよい。発射球数を計数せず、アウト球排出口付近にアウト数を計数するセンサを設けてもよい。また、セーフ球数は払い出した賞球数に等しい。また、ベースを、遊技状態毎(通常遊技中、電サポ中、確率変動中、時間短縮中)の出玉率と定義し、遊技状態毎のセーフ球数÷アウト球数で計算してもよい。役物比率表示器1317にベースを表示することによって、稼動中における出球性能の設計値からのズレを遊技機ごとにその場で確認できる。また、ホールコンを使用せずに出球性能を確認できるので、遊技場の立入検査時に遊技機毎の検査が容易になる。」

以上の記載事項(ア)?(ス)から、先願明細書等には、次の技術的事項が記載されているものと認められる(見出し(a)?(i)は、本願補正発明の分説A?Iに対応させている。また、後述する先願発明の認定に関係する箇所に下線を付した)。

(a)記載事項(ア)から、遊技球が打込まれる遊技領域5aを備えることが記載されている。また、記載事項(ク)から、遊技領域5a内の上部へ打ち込まれた遊技球は、流下することが記載されている。
これらのことから、遊技球が打込まれ、流下する遊技領域5aを備えることが記載されている。

(b)記載事項(イ)(【0018】)から、遊技領域5a内に遊技球を打込むための球発射装置680を備えることが、記載事項(ウ)から、球発射装置680によって遊技球が遊技領域5a内へ打込まれることが、それぞれ記載されている。
これらのことから、遊技領域5a内へ遊技球を打込む球発射装置680を備えることが記載されている。

(c)記載事項(エ)から、遊技領域5a内に打込まれた遊技球を受入可能な一般入賞口2001及び第一始動口2002を備えることが記載されている。

(d)記載事項(ウ)から、遊技球が入賞口に受入れられると、受入れられた入賞口に応じて、所定数の遊技球が払出される払出装置830を備えることが記載されている。

(e1)記載事項(オ)(【0044】)から、主制御基板1310を収容する主制御基板ボックス1320が記載されている。また、記載事項(イ)(【0020】)から、一度閉めたら破壊せずに開けることができない構造で封印された主制御基板ボックス1320が記載されている。
そうすると、先願明細書等には、一度閉めたら破壊せずに開けることができない構造で封印された主制御基板ボックス1320に主制御基板1310が収容されることが記載されている。

(f1)記載事項(オ)(【0045】)から、主制御基板ボックス1320は、複数の封印機構を備えており、一つの封印機構を用いて主制御基板ボックス1320を閉じると、次に、主制御基板ボックス1320を開けるためにはその封印機構を破壊する必要があることが記載されている。

(f2)記載事項(イ)(【0020】)から、透明の樹脂製の主制御基板ボックス1320が記載され、また、プリント基板上に配置された部品を外部から見ることができることが記載されている。そして、上記認定事項(e1)もあわせ見ると、先願明細書等には、透明の樹脂製の主制御基板ボックス1320に主制御基板1310が収容され、プリント基板上に配置された部品を外部から見ることができることが記載されている。また、記載事項(ア)から、パチンコ機1が記載されている。

(e2)記載事項(カ)から、遊技の進行を制御する主制御基板1310は、主制御MPU1311を備えていることが記載されており、記載事項(キ)(【0072】)から、主制御基板1310には役物比率表示器1317が取り付けられ、主制御MPU1311が計算した役物比率を表示することが記載されている。また、記載事項(キ)(【0073】)から、役物比率表示器1317は表示切替スイッチ1318の操作によって表示内容を切り替えてもよいことが記載されており、記載事項(サ)から、役物比率表示器1317は、例えば、4桁の7セグメントLEDや、液晶表示装置によって構成され、下2桁に役物比率の数値を表示し、上2桁に数値の種類を表示することが記載されている。
そうすると、先願明細書等には、遊技の進行を制御する主制御基板1310は、主制御MPU1311及び役物比率表示器1317が取り付けられ、役物比率表示器1317は、主制御MPU1311が計算した役物比率を表示するものであり、4桁の7セグメントLEDによって構成され、下2桁に役物比率の数値を表示し、上2桁に数値の種類を表示し、役物比率表示器1317は表示切替スイッチ1318の操作によって表示内容を切り替えてもよいことが記載されている。

(f3)記載事項(オ)(【0045】)から、主制御基板ボックス1320は、複数の封印機構を備えており、一つの封印機構を用いて主制御基板ボックス1320を閉じると、次に、主制御基板ボックス1320を開けるためにはその封印機構を破壊する必要があり、主制御基板ボックス1320の開閉の痕跡を残すことができることが記載されている。

(g)上記認定事項(e2)で示したように、先願明細書等には、主制御基板1310は、主制御MPU1311及び役物比率表示器1317が取り付けられることが記載されており、また、上記認定事項(f2)で示したように、先願明細書等には、透明の樹脂製の主制御基板ボックス1320に主制御基板1310が収容され、プリント基板上に配置された部品を外部から見ることができることが記載されている。
そうすると、先願明細書等には、透明の樹脂製の主制御基板ボックス1320に、主制御MPU1311及び役物比率表示器1317が取り付けられた主制御基板1310が収容され、プリント基板上に配置された部品を外部から見ることができることが記載されている。

(h)記載事項(ケ)から、役物比率算出・表示処理は、主制御MPU1311が実行すること、また、役物比率算出処理を実行し、メイン領域のデータから役物比率及び連続役物比率を算出し、役物比率算出用領域13128に格納する(ステップS156)こと、記載事項(シ)から、役物比率表示器1317は、直近データ表示と中期データ表示と長期データ表示とを切り替えて表示してもよいこと、記載事項(ス)から、役物比率表示器1317は、払い出した賞球数であるセーフ球数÷発射球数(アウト球数)で計算できる、特賞中(大当り中)を除いた通常時の出玉率であるベースを表示してもよいことが、それぞれ記載されている。
そうすると、先願明細書等には、主制御MPU1311は、役物比率算出・表示処理を実行し、メイン領域のデータから役物比率及び連続役物比率を算出し、役物比率表示器1317は、直近データ表示と中期データ表示と長期データ表示とを切り替えて表示してもよく、役物比率表示器1317は、払い出した賞球数であるセーフ球数÷発射球数(アウト球数)で計算できる、特賞中(大当り中)を除いた通常時の出玉率であるベースを表示してもよいことが記載されている。

(i)記載事項(コ)から、算出された役物比率を役物比率表示器1317に表示する(ステップS172)こと、記載事項(キ)(【0073】)から、役物比率表示器1317は、表示切替スイッチ1318の操作によって表示内容を切り替えてもよいことが記載されている。
そうすると、先願明細書等には、役物比率表示器1317は、算出された役物比率を表示し、表示切替スイッチ1318の操作によって表示内容を切り替えてもよいことが記載されている。

以上の記載事項(ア)?(ス)及び認定事項(a)?(i)を総合すると、先願明細書等には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている(分説a?iは、本願補正発明の分説A?Iに対応させて付与した)。

「a 遊技球が打込まれ、流下する遊技領域5aと、
b 遊技領域5a内へ遊技球を打込む球発射装置680と、
c 遊技領域5a内に打込まれた遊技球を受入可能な一般入賞口2001及び第一始動口2002と、
d 遊技球が入賞口に受入れられると、受入れられた入賞口に応じて、所定数の遊技球が払出される払出装置830と、を備えるとともに、
e1 一度閉めたら破壊せずに開けることができない構造で封印された主制御基板ボックス1320に主制御基板1310が収容され、
f1 主制御基板ボックス1320は、複数の封印機構を備えており、一つの封印機構を用いて主制御基板ボックス1320を閉じると、次に、主制御基板ボックス1320を開けるためにはその封印機構を破壊する必要があり、
f2 透明の樹脂製の主制御基板ボックス1320に主制御基板1310が収容され、プリント基板上に配置された部品を外部から見ることができるパチンコ機1であって、
e2 遊技の進行を制御する主制御基板1310は、主制御MPU1311及び役物比率表示器1317が取り付けられ、役物比率表示器1317は、主制御MPU1311が計算した役物比率を表示するものであり、4桁の7セグメントLEDによって構成され、下2桁に役物比率の数値を表示し、上2桁に数値の種類を表示し、役物比率表示器1317は表示切替スイッチ1318の操作によって表示内容を切り替えてもよいものであり、
f3 主制御基板ボックス1320は、複数の封印機構を備えており、一つの封印機構を用いて主制御基板ボックス1320を閉じると、次に、主制御基板ボックス1320を開けるためにはその封印機構を破壊する必要があり、主制御基板ボックス1320の開閉の痕跡を残すことができ、
g 透明の樹脂製の主制御基板ボックス1320に、主制御MPU1311及び役物比率表示器1317が取り付けられた主制御基板1310が収容され、プリント基板上に配置された部品を外部から見ることができ、
h 主制御MPU1311は、役物比率算出・表示処理を実行し、メイン領域のデータから役物比率及び連続役物比率を算出し、役物比率表示器1317は、直近データ表示と中期データ表示と長期データ表示とを切り替えて表示してもよく、役物比率表示器1317は、払い出した賞球数であるセーフ球数÷発射球数(アウト球数)で計算できる、特賞中(大当り中)を除いた通常時の出玉率であるベースを表示してもよく、
i 役物比率表示器1317は、算出された役物比率を表示し、表示切替スイッチ1318の操作によって表示内容を切り替えてもよい、パチンコ機1。」

イ 周知例1
周知技術の例として引用する、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平10-286364号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「【0026】図2はこの遊技機の背面図であり、10は前面枠1の裏面に取付けられる基枠体(裏メカベース盤)、11は球貯留タンク、12は画像表示装置の表示制御装置、13は球排出装置等を制御する球排出制御装置、14は変動入賞装置、入賞球センサ、LED、ランプ等の各種電気機器の制御を行うと共に、表示制御装置12、球排出制御装置13等に制御信号を送る役物制御装置、15は役物制御装置14の基板ボックス、16は打球発射制御装置である。」

(イ)「【0028】図3は基板ボックス15の斜視図で、図4は分解斜視図であり、25はベース部材、26は上蓋部材、27は下部保護板、28は上部保護板、30は役物制御装置14の制御回路基板、31は制御回路基板30に実装された電子部品のうちのROM、32は制御回路基板30の一側部に形成された配線コード群の接続領域33に設けられたコネクタ部である。」

(ウ)「【0054】この後、基板ボックス15の表面つまり上蓋部材26の天板部44の表面には、図7のように透明なシール等に遊技機メーカー名、機種名、電圧、容量、注意書き等の各仕様を記載した機種名表示票80、ならびに所定のシール等に製造業者記号を含んだ基板管理番号を記載(図示してない)すると共に公的機関がROM31等の電子部品の検査の際に基板ボックス15を正規に開放したことを証明する記載を可能な欄を設けた検査履歴書81を取付ける。
【0055】機種名表示票80は、上蓋部材26の天板部44の蝶着部40側に、検査履歴書81は天板部44の重合結合部54?57の識別符号に沿う側に、制御回路基板30のROM31を上蓋部材26を通して視認するのに支障のないよう、ROM31を覆う部位を除くよう、天板部44のほぼ中央にROM31の大きさと略同等以上の面を空けて、貼着により取付ける。」

(エ)「【0057】検査履歴書81は、公的機関の検査に関わる基板ボックス15の封印、開放つまり重合結合部50?53,54?57の状態を管理するために、検査回数、検査年月日、検査印等の検査履歴の記載欄を設け、その検査回数の欄には、上蓋部材26の天板部44に表示してある重合結合部50?53,54?57の識別符号1,2,3,4に対応して、順に第1、第2、第3、第4の表示の印刷等を行っておく。重合結合部50?53,54?57の識別符号に検査履歴の欄を対応させれば、重合結合部50?53,54?57の封印順序が定まり、検査時の作業が容易になると共に、識別符号、検査履歴を見て、重合結合部の状態を的確に照合することができる。」

(オ)基板ボックス15の斜視図である図3、分解斜視図である図4から、制御回路基板30が基板ボックス15に収納されることが見て取れる。

以上の記載事項(ア)?(オ)を総合すると、周知例1には、以下の事項が記載されている。

「遊技機において、基板ボックス15に役物制御装置14の制御回路基板30が収納され(記載事項(ア)、(イ)、(オ))、
ROM31が制御回路基板30に実装され(記載事項(イ))、
基板ボックス15の表面である上蓋部材26の天板部44の表面には、公的機関がROM31等の電子部品の検査の際に基板ボックス15を正規に開放したことを証明する記載を可能な欄を設けた検査履歴書81が、制御回路基板30のROM31を上蓋部材26を通して視認するのに支障のないよう、ROM31を覆う部位を除くよう、天板部44のほぼ中央にROM31の大きさと略同等以上の面を空けて、貼着により取付けられ(記載事項(ウ))、
検査履歴書81は、公的機関の検査に関わる基板ボックス15の封印、開放つまり重合結合部50?53,54?57の状態を管理するために、検査回数、検査年月日、検査印等の検査履歴の記載欄を設け、重合結合部50?53,54?57の識別符号に検査履歴の欄を対応させれば、重合結合部50?53,54?57の封印順序が定まり、検査時の作業が容易になると共に、識別符号、検査履歴を見て、重合結合部の状態を的確に照合することができる(記載事項(エ))、遊技機。」

ウ 周知例2
周知技術の例として引用する、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった刊行物である特開平11-9800号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「【0019】また、前記機構板50には、発生した入賞玉に基づいて所定個数の賞球を払い出す玉タンク55と、賞球払出装置56と、玉タンク55内の玉を賞球払出装置56に送る玉整列レール57、カーブ樋58、及び通路体59と、玉止め部材60a及び入賞玉排出ソレノイド60bを備えた入賞玉処理装置60と、遊技制御回路基板61を収納した回路基板ボックス62と、賞球払出制御基板63を収納した制御基板ボックス64と、ユニット中継基板65を収納した中継基板ボックス66と、ターミナル基板67を収納したターミナル基板ボックス68と、が設けられている。遊技制御回路基板61は、CPU、RAM、及びROMを備えてドラム式可変表示装置41や可変入賞球装置42等の遊技装置の遊技動作を制御するものである。賞球払出制御基板63は、賞球払出装置56の動作を制御するものである。ユニット中継基板65は、弾球遊技機1とカードユニット装置30との配線を中継するものである。ターミナル基板67は、遊技制御回路基板61に電源を供給するものである。また、弾球遊技機1の裏面には、上記した機構板50以外の領域に、装飾制御基板69を収納した制御基板ボックス70と、発射装置モータ72を備えた打球発射装置71とが設けられている。装飾制御基板69は、遊技制御回路基板61からの指令又はデータに基づいて弾球遊技機1の前面に設けられる電気的装飾部品(ランプ等)の動作を制御するものである。」

(イ)「【0021】次に、各種制御用の回路基板を収納してなる基板ボックスの構成について回路基板ボックス62を例に挙げて説明する。回路基板ボックス62は、図3に示すように、前記遊技制御回路基板61を内部に収納する蓋体80及びボックス本体110の組付体からなり、この組付体が取付台150を介して前記機構板50に取り付けられて構成される。先ず、ボックス62内に収納される遊技制御回路基板61について図6を参照して説明する。回路基板61は、図6に示すように、長方形状のプリント配線基板によって構成されており、その上面の大部分はROM等の電子部品73を実装する電子部品実装領域74として形成される一方、幅方向一側の領域がコネクタ75を実装するコネクタ実装領域76として形成されている。また、回路基板61には、幅方向一側の両端に止め穴77が穿設される一方、幅方向他側の両端には係合穴78が穿設されている。なお、回路基板61の上面及び下面における止め穴77の外周には、メッキ部(図示しない)が設けられている。このメッキ部は、回路基板61を後述の本体枠116にビス119止めする際、回路基板61のグランドライン(図示しない)と本体枠116とを導通させるためのものであり、ボックス62内で発生する静電気から回路基板61を保護するようになっている。また、各実装領域74・76が形成された回路基板61の上面には、電子部品73とコネクタ75を電気的に接続する結線パターン79が形成されている(図7参照)。」

(ウ)「【0023】蓋体80は、図4に示すように、透視性を有する上板81と、金属製の蓋枠93と、透視性及び導電性を有する導電板100と、を備えている。上板81は、透明合成樹脂の長方形板からなり、その下面側の外周端部には、所定間隔を置いて複数の溶着突起82が突設されている。また、上板81の長手方向の両端側には、複数(実施形態中では、3つ)の取付片部83a?83cが並設されている。取付片部83a?83cは、各々、上板81の側壁を構成する部分と、上板81の上壁を構成する部分と、を有した断面L字状をなし、上板81の側壁構成部分には、各取付片部83a?83c間を連結する連結部84a?84cが一体成形され、上板81の上壁構成部分には、各取付片部83a?83c間を連結する連結部85a?85cが一体成形されている。なお、各取付片部83a?83c間には、スリット状の溝が形成され、連結部84a?84c・85a?85cは、取付片部83a?83cの外壁面から突出した状態で設けられている(図9参照)。また、取付片部83a?83cの上壁構成部分には、それぞれ取付穴86a?86cが穿設されており、取付片部83cの隣接部であり且つ上板81の幅方向一側の両端隅角部には、取付穴86dが穿設されている。」

(エ)「【0025】また、上板81の上面には、弾球遊技機1の機種名が記された機種名シール89を貼付するための凹部90が形成されると共に、後述の可動板106を保持するための保持突起91が突設されており(図8(A)参照)、上板81の幅方向一側には、取付突起92が下方に突出形成されている。取付突起92は、図8(B)に示すように、軸受穴92aが形成された断面凹形状をなし、その底壁面には、軸受穴92aと連通する挿通穴92bが穿設されている。そして、この取付突起92には、検査履歴シール107を貼付した可動板106が回転可能に取り付けられている。可動板106は、検査履歴シール107を貼付するための凹部106aが上面に形成された平板形状をなし、その下面側の一隅角部には、ビス止め穴106cを備えた回転軸106bが突設されている。また、回転軸106bが設けられた一隅角部に対して対称位置となる可動板106の隅角部には、図8(A)に示すように、上板81側の保持突起91と係合する係合穴106dが穿設されている。
【0026】しかして、可動板106は、取付突起92の軸受穴92aに回転軸106bが挿入され、その回転軸106bのビス止め穴106cに挿通穴92bを通してビス108が取り付けられることで、回転軸106bを中心として回転可能に上板81に取り付けられている。なお、このようにして上板81に取り付けられた可動板106は、後で詳述する回路基板ボックス62の組み付け状態を解除(回路基板ボックス62を開放)しない限り取り外しが行えないようになっている。また、可動板106の回転において、係合穴106dを上板81側の保持突起91と係合させたときには、可動板106全体を上板81の上面に当接させた状態(図7に示す実線位置)で可動板106を保持するようになっている。そして、通常時は、可動板106を図7に示す実線位置に保持しておき、可動板106の破損を防止する。なお、この状態は、可動板106の下面側に上板81が当接して配されるので、上板81を可動板106(検査履歴シール107)の下敷きとすることができ、後で詳述するような検査履歴シール107への検査履歴の記入状態ともなる。一方、透視性を有する上板81から内部の遊技制御回路基板61を確認(遊技制御回路基板61に不正が行われていないかの確認)する場合には、図7に示す二点鎖線の方向に可動板106を回転させる。これにより、遊技制御回路基板61全体が外部から視認でき、簡易的な基板検査(回路基板ボックス62を開放せずに行う検査)が確実に行える。
【0027】なお、可動板106に貼付される検査履歴シール107には、回路基板ボックス62内に収納される遊技制御回路基板61の基板番号と、回路基板ボックス62を検査した際に書き込む「検査者」及び「検査日」の各項目と、が記されている。また、検査履歴シール107は、「検査者」及び「検査日」の各項目に書き込む文字が視認し易いように文字を書き込む部分が白色をなしている。これに対して、上板81のほぼ中央に貼付される機種名シール89は、透視性を有する上板81から内部の遊技制御回路基板61が視認し易いように、印刷された機種名以外は透明になっている。また、機種名シール89及び検査履歴シール107の色調及び透視性の有無は、特に限定するものではないが、いずれのシール89・107においても回路基板61を覆う部分は、電源部など制御自体に関係しない部分(ROMやCPUなどの不正行為が行われる可能性がある部分以外)が望ましい。また、検査履歴シール107は、剥した形跡が残る非可逆性のホログラムシールからなり、シール107の不正な貼り替えを防止するようになっている。なお、検査履歴シール107は、簡単に剥せて形跡が残らないような可逆性のものでもよいが、剥した形跡が残る、一部剥れずに残る、あるいは貼り直した場合に跡が残る等の非可逆性シールを用いた方が不正防止の面で有効である。」

(オ)「【0047】次に、上記した回路基板ボックス62を回路基板61の検査(出荷納入後にROMが正規のものか否かを検査する)のために開放し、その後再度閉塞状態に復元する手順を図11に基づいて説明する。先ず、図11(A)に示す回路基板ボックス62の閉塞状態において、取付片部83aのビス140止め部分に貼着されたホログラムシール105を剥した後、刻印「1」を目印に各連結部84a・85aをニッパー等の切断工具で切断する。これにより、取付片部83aは、蓋体80から完全に分離され且つワンウェイネジ140によってボックス本体110に固着された状態となる。即ち、ボックス本体110に対する蓋体80の固着が全て解除されて、回路基板ボックス62の開放が可能になる。そして、図11(B)に示すように、ボックス本体110から蓋体80を取り外して回路基板61の検査を行う。また、このような蓋体80の取り外し(連結部84a・85aの切断)によって、各装備穴135?137に挿通されたワンウェイネジ140は、取り出し可能な状態となり、このうち装備穴135に挿通されたワンウェイネジ140をボックス62の復元用に取り出す。その後、回路基板ボックス62を閉塞するときには、図11(C)に示すように、蓋体80をボックス本体110に被せた状態で、取り出したワンウェイネジ140を刻印「2」を目印に取付片部83bの取付穴86bに螺着する。これにより、取付片部83bの取付穴86bとこれに対応する本体枠116の取付穴132とがワンウェイネジ140によって共締めされる。そして、この取付片部83bのビス140止め部分に新しいホログラムシール105を貼着することで、回路基板ボックス62が再度閉塞状態に復元される。
【0048】なお、上記した回路基板61の検査作業は、回路基板ボックス62のメーカー側の営業マンが行い、その営業マンは、検査履歴シール107に自分の氏名(検査者)と検査日を記入することで、検査した旨を回路基板ボックス62に明記するようになっている。さらには、基板番号、検査者、検査日、及びデータ入力者などをメーカー側の管理コンピュータに入力しておくことで、検査履歴シール107の記載が正規のものか否か判別できるようにしておく。また、このような検査履歴のデータ入力方法としては、ホールコンピュータとメーカーの管理コンピュータと営業所の端末コンピュータとの間でネットワークを組み、営業所で入力したデータ内容を管理コンピュータに記録しておく。そして、ホールコンピュータから入力された基板番号などのデータによってその検査履歴データを管理コンピュータから読み出して閲覧できるようにしてもよい。」

(カ)「【0054】以上のように、本実施形態に係る回路基板ボックス62は、ボックス本体110と蓋体80とをワンウェイネジ140により組み付けて非可逆的な固着状態とする取付片部83aと、該取付片部83aの固着状態を解除するための連結部84a・85aと、該連結部84a・85aの切断状態でワンウェイネジ140によりボックス本体110と蓋体80とを再び組み付けて非可逆的な固着状態とする取付片部83b・83cと、連結部84a・85aの切断状態で回路基板61を検査したときにその検査履歴を記録しておく検査履歴シール107と、回路基板61を外部から視認可能にする上板81と、を備え、検査履歴シール107は、当該回路基板ボックス62を弾球遊技機1に取り付けた状態で、上板81(回路基板61)を覆う位置と上板81(回路基板61)を覆わない位置とに移動可能な可動板106に貼付して設けたことを特徴とする。このように構成することにより、回路基板61の検査以外で連結部84a・85aが切断されるような場合は、この解除により回路基板61に不正が行われたことが即座に且つ確実に判別できるため、回路基板ボックス62の防犯効果を高めることができる。つまり、回路基板ボックス62を非可逆的な固着状態とするので、不正に解除しようとすれば、必ずその痕跡が残る。故に、検査履歴が記録されているかどうかで回路基板ボックス62の解除が不正なものか否かが判別できる。また、回路基板ボックス62の検査履歴が一目で分かり、然も回路基板61を覆わない位置に可動板106を移動させた状態で簡易的な基板検査が確実に行える。さらに、この構成では、回路基板61を覆う位置に可動板106を移動させて可動板106を上板81上に配置することができるので、可動板106の破損を防止することができると共に、上板81を検査履歴シール107の下敷きとすることができて検査履歴を記入し易くできる。」

以上の記載事項(ア)?(カ)を総合すると、周知例2には、以下の事項が記載されている。

「遊技装置の遊技動作を制御する、CPU、RAM、及びROMを備えた遊技制御回路基板61と、遊技制御回路基板61を収納した回路基板ボックス62とを備え(記載事項(ア))、
回路基板ボックス62は、前記遊技制御回路基板61を内部に収納する蓋体80及びボックス本体110の組付体からなり(記載事項(イ))、
蓋体80は、透視性を有する上板81を備えており(記載事項(ウ))、
上板81の幅方向一側には、取付突起92が形成され、取付突起92には、検査履歴シール107を貼付した可動板106が回転可能に取り付けられており(記載事項(エ)(【0025】))、
検査履歴シール107において回路基板61を覆う部分は、ROMやCPUなどの不正行為が行われる可能性がある部分以外が望ましく(記載事項(エ)(【0027】))、
透視性を有する上板81から内部の遊技制御回路基板61を確認する場合には、可動板106を回転させ、遊技制御回路基板61全体が外部から視認でき、簡易的な基板検査が確実に行え(記載事項(エ)(【0026】))、
可動板106に貼付される検査履歴シール107には、回路基板ボックス62内に収納される遊技制御回路基板61の基板番号と、回路基板ボックス62を検査した際に書き込む「検査者」及び「検査日」の各項目と、が記されており(記載事項(エ)(【0027】))、
回路基板ボックス62を回路基板61の検査のために開放するには、回路基板ボックス62の閉塞状態において、各連結部84a・85aを切断し、回路基板ボックス62の開放が可能になり、回路基板61の検査作業の際には、検査履歴シール107に検査者と検査日を記入することで、検査した旨を回路基板ボックス62に明記し(記載事項(オ))、
回路基板ボックス62を非可逆的な固着状態とするので、不正に解除しようとすれば、必ずその痕跡が残り、検査履歴が記録されているかどうかで回路基板ボックス62の解除が不正なものか否かが判別できる(記載事項(カ))、弾球遊技機。」

(3)対比
本願補正発明と先願発明とを対比する(見出しa?iは、本願補正発明の分説A?Iに対応させて付与した)。

a 先願発明の「a 遊技球が打込まれ、流下する遊技領域5a」は、本願補正発明の「A 遊技球が流下可能な遊技領域」に相当する。

b 先願発明の「b 遊技領域5a内へ遊技球を打込む球発射装置680」は、本願補正発明の「B 前記遊技領域へ向けて遊技球を発射可能な発射装置」に相当する。

c 先願発明の「一般入賞口2001及び第一始動口2002」は、「遊技領域5a内に打込まれた遊技球を受入可能」であるから、先願発明の「c 遊技領域5a内に打込まれた遊技球を受入可能な一般入賞口2001及び第一始動口2002」は、本願補正発明の「C 前記遊技領域を流下する遊技球が進入可能な入賞口」に相当する。

d 先願発明の「d 遊技球が入賞口に受入れられると、受入れられた入賞口に応じて、所定数の遊技球が払出される払出装置830」は、本願補正発明の「D 前記入賞口へ遊技球が進入することに基づき、賞球として遊技球を払い出す払出装置」に相当する。

e1 先願発明の「主制御基板ボックス1320」は、「一度閉めたら破壊せずに開けることができない構造で封印された」ものであるが、先願発明のf1に「主制御基板ボックス1320を開けるためにはその封印機構を破壊する必要があり」とあるように、封印機構を破壊すれば開けることが可能である。また、先願発明の「主制御基板1310」は、先願発明のe2に「主制御基板1310は、主制御MPU1311及び役物比率表示器1317が取り付けられ」とあることからすると、電子部品が実装されていることは明らかである。そうすると、先願発明の「e1 一度閉めたら破壊せずに開けることができない構造で封印された主制御基板ボックス1320に主制御基板1310が収容され」ることは、本願補正発明の「E1 電子部品を実装した制御基板が、開放可能な収納ケースに収納された状態で設けられ」ることに相当する。

f1 先願発明の「封印機構」について、「封印機構を用いて主制御基板ボックス1320を閉じると、次に、主制御基板ボックス1320を開けるためにはその封印機構を破壊する必要があり」とあることからすると、封印機構は、主制御基板ボックス1320が開けられないようにするためのものであり、本願補正発明のカシメ部に相当する。そうすると、先願発明の「f1 主制御基板ボックス1320は、複数の封印機構を備えており、一つの封印機構を用いて主制御基板ボックス1320を閉じると、次に、主制御基板ボックス1320を開けるためにはその封印機構を破壊する必要があ」ることは、本願補正発明の「F1 前記収納ケースは、
当該収納ケースが開放不能となるように固着するためのカシメ部を備えるとともに、当該収納ケースが固着された後に当該収納ケースを開放する際には、前記カシメ部が破壊されるように形成され」ることに相当する。

f2 先願発明の「プリント基板」とは、「透明の樹脂製の主制御基板ボックス1320」に収容された「主制御基板1310」を指すことは明らかであり、プリント基板上に配置された部品を外部から見ることができることは、透明の樹脂製の主制御基板ボックス1320を介して主制御基板1310に取り付けられた部品を見ることができるのであるから、先願発明の「f2 透明の樹脂製の主制御基板ボックス1320に主制御基板1310が収容され、プリント基板上に配置された部品を外部から見ることができるパチンコ機1」は、本願補正発明の「F2 当該収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際には、当該収納ケースの表面を通して、前記制御基板における電子部品の実装面を視認可能に形成されている遊技機」に相当する。

e2 先願発明の「役物比率表示器1317」は「表示切替スイッチ1318の操作によって表示内容を切り替えてもよい」ものであり、「4桁の7セグメントLEDによって構成され、下2桁に役物比率の数値を表示し、上2桁に数値の種類を表示」するものであることからすると、切替えられた表示内容ごとに一つずつ表示するものである。また、先願発明の「役物比率表示器1317」は、「主制御基板1310」に取付けられ、「主制御MPU1311が計算した役物比率を表示するものであ」ることからすると、主制御MPU1311と電気的に接続していることは明らかである。
また、先願発明では「遊技の進行を制御する主制御基板1310」としているが、制御は主制御基板1310に取り付けられた「主制御MPU1311」が行っていることは明らかである。
そうすると、先願発明の「e2 遊技の進行を制御する主制御基板1310は、主制御MPU1311及び役物比率表示器1317が取り付けられ、役物比率表示器1317は、主制御MPU1311が計算した役物比率を表示するものであり、4桁の7セグメントLEDによって構成され、下2桁に役物比率の数値を表示し、上2桁に数値の種類を表示し、役物比率表示器1317は表示切替スイッチ1318の操作によって表示内容を切り替えてもよいものであ」ることは、本願補正発明の「E2 前記制御基板における電子部品の実装面には、遊技の進行を制御する制御装置と、当該制御装置と電気的に接続され、かつ遊技に関する情報を表示内容ごとに一つずつ表示可能とするとともに操作部の操作に基づき当該表示内容を切り換えて表示可能な表示装置とが少なくとも実装され」ることに相当する。

f3 先願発明は、「複数の封印機構を備えており」、「一つの封印機構を用いて」主制御基板ボックス1320を封印して閉じ、封印機構を破壊して開けることで、主制御基板ボックス1320の開閉の痕跡を残すことができることからして、先願発明の「f3 主制御基板ボックス1320は、複数の封印機構を備えており、一つの封印機構を用いて主制御基板ボックス1320を閉じると、次に、主制御基板ボックス1320を開けるためにはその封印機構を破壊する必要があり、主制御基板ボックス1320の開閉の痕跡を残すことができ」ることは、本願補正発明の「F3 前記収納ケースの表面には、当該収納ケースの固着及び開放の履歴を記録する記録手段が設けられ」ることと、「F3’ 前記収納ケースの固着及び開放の痕跡を複数残すことができる」点で共通する。

g 先願発明では、「主制御基板1310」に「主制御MPU1311及び役物比率表示器1317が取り付けられ」ているが、このような部品を互いに重ねて取付けないことは技術常識であり、先願発明において、「プリント基板上に配置された部品を外部から見」たときに、「主制御MPU1311及び役物比率表示器1317」は互いに重なって見える位置にないことは明らかである。
そうすると、先願発明の「g 透明の樹脂製の主制御基板ボックス1320に、主制御MPU1311及び役物比率表示器1317が取り付けられた主制御基板1310が収容され、プリント基板上に配置された部品を外部から見ることができ」ることは、本願補正発明の「G 前記制御装置、前記表示装置及び前記記録手段は、前記収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際に、互いに重なって視認されることの無い位置に配置されて」いることと、「G’ 前記制御装置及び前記表示装置は、前記収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際に、互いに重なって視認されることの無い位置に配置されて」いる点で共通する。

h 先願発明の「払い出した賞球数であるセーフ球数÷発射球数(アウト球数)で計算できる、特賞中(大当り中)を除いた通常時の出玉率であるベース」は、本願補正発明の「前記払出装置により払い出された賞球の数に対応する値及び前記発射装置により発射された遊技球の数に対応する値に基づく算出値」に相当する。また、先願発明では、「主制御MPU1311は、役物比率算出・表示処理を実行し、メイン領域のデータから役物比率及び連続役物比率を算出し」としており、「役物比率表示器1317」が「ベース」を表示するときには、「主制御MPU1311」が「ベース」を算出すること、またこのような「ベース」が遊技に関する情報であることは明らかである。さらに、先願発明では、「直近データ表示と中期データ表示と長期データ表示とを切り替えて表示してもよく」とあることから、「主制御MPU1311」が算出する値を、所定の期間において算出することも明らかである。
そうすると、先願発明の「h 主制御MPU1311は、役物比率算出・表示処理を実行し、メイン領域のデータから役物比率及び連続役物比率を算出し、役物比率表示器1317は、直近データ表示と中期データ表示と長期データ表示とを切り替えて表示してもよく、役物比率表示器1317は、払い出した賞球数であるセーフ球数÷発射球数(アウト球数)で計算できる、特賞中(大当り中)を除いた通常時の出玉率であるベースを表示してもよ」いことは、本願補正発明の「H 前記制御装置は、前記遊技に関する情報の一つとして、所定の算定期間において、前記払出装置により払い出された賞球の数に対応する値及び前記発射装置により発射された遊技球の数に対応する値に基づく算出値を導出可能であ」ることに相当する。

i 先願発明の「役物比率表示器1317は、算出された役物比率を表示」することは、上記hで示したことを踏まえると、本願補正発明の「前記表示装置は、前記制御装置により導出された所定の算定期間における算出値を表示」することに相当する。そうすると、先願発明の「i 役物比率表示器1317は、算出された役物比率を表示し、表示切替スイッチ1318の操作によって表示内容を切り替えてもよい、パチンコ機1」は、本願補正発明の「I 前記表示装置は、前記制御装置により導出された所定の算定期間における算出値を表示可能に設定されるとともに、前記操作部の操作に基づき前記表示内容を切り換えて表示可能に設定されていることを特徴とする遊技機」に相当する。

上記a?iによれば、本願補正発明と先願発明とは、
「A 遊技球が流下可能な遊技領域と、
B 前記遊技領域へ向けて遊技球を発射可能な発射装置と、
C 前記遊技領域を流下する遊技球が進入可能な入賞口と、
D 前記入賞口へ遊技球が進入することに基づき、賞球として遊技球を払い出す払出装置と、を備えるとともに、
E1 電子部品を実装した制御基板が、開放可能な収納ケースに収納された状態で設けられ、
F1 前記収納ケースは、
当該収納ケースが開放不能となるように固着するためのカシメ部を備えるとともに、当該収納ケースが固着された後に当該収納ケースを開放する際には、前記カシメ部が破壊されるように形成され、
F2 当該収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際には、当該収納ケースの表面を通して、前記制御基板における電子部品の実装面を視認可能に形成されている遊技機であって、
E2 前記制御基板における電子部品の実装面には、遊技の進行を制御する制御装置と、当該制御装置と電気的に接続され、かつ遊技に関する情報を表示内容ごとに一つずつ表示可能とするとともに操作部の操作に基づき当該表示内容を切り換えて表示可能な表示装置とが少なくとも実装され、
F3’ 前記収納ケースの固着及び開放の痕跡を複数残すことができ、
G’ 前記制御装置及び前記表示装置は、前記収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際に、互いに重なって視認されることの無い位置に配置されており、
H 前記制御装置は、前記遊技に関する情報の一つとして、所定の算定期間において、前記払出装置により払い出された賞球の数に対応する値及び前記発射装置により発射された遊技球の数に対応する値に基づく算出値を導出可能であり、
I 前記表示装置は、前記制御装置により導出された所定の算定期間における算出値を表示可能に設定されるとともに、前記操作部の操作に基づき前記表示内容を切り換えて表示可能に設定されていることを特徴とする遊技機。」
である点で一致し、次の2点で一応相違する。

相違点1 「F3’ 前記収納ケースの固着及び開放の痕跡を複数残すことができ」について、本願補正発明では、「F3 前記収納ケースの表面には、当該収納ケースの固着及び開放の履歴を記録する記録手段が設けられ」ているのに対し、先願発明では「記録手段」を設けておらず、「複数の封印機構」により収納ケースの固着及び開放の痕跡を複数残すようにしている点。

相違点2 「G’ 前記制御装置及び前記表示装置は、前記収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際に、互いに重なって視認されることの無い位置に配置されており」について、本願補正発明では「G 前記制御装置、前記表示装置及び前記記録手段は、前記収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際に、互いに重なって視認されることの無い位置に配置されており」としているのに対し、先願発明では「記録手段」を設けておらず、「記録手段」を含めて互いに重なって視認されることの無い位置に配置していない点。

(4)判断
上記相違点は、いずれも「記録手段」に関するものであるので、以下にまとめて検討する。
上記周知例1及び周知例2それぞれに記載されるとおり、遊技機において、制御回路基板が収納された基板ボックスの表面に、基板ボックスを開放したことを記載する検査履歴書が、制御回路基板に設けられたROMを覆う部位を除いて取付けられること、また、検査履歴書に、基板ボックスの複数の封印に対応させて検査履歴を記載することで、封印の状態を照合することができることは、当業者における周知技術である。
そうすると、まず上記相違点1について、先願発明は、「複数の封印機構」により収納ケースの固着及び開放の痕跡を複数残すようにしており、上記周知技術を参照して、主制御基板ボックス1320に備えられた複数の封印機構に対応させて検査履歴を記載するような検査履歴書を設け、複数の封印機構の状態を照合できるようにすることは、単なる周知技術の付加であり、新たな効果を奏するものではない。
そして、上記相違点2について、検査履歴書が制御回路基板に設けられたROMを覆う部位を除いて取付けられることも上記のとおり周知技術であるから、先願発明において、検査履歴書を設けるとしたときに、主制御MPU1311及び役物比率表示器1317と共に、検査履歴書を含めて、プリント基板上に配置された部品を外部から見ることができるような位置に、検査履歴書を設けることは、単なる周知技術の付加であり、新たな効果を奏するものではない。
したがって、上記相違点1及び上記相違点2は、課題解決のための具体化手段における微差であるといえる。
よって、本願補正発明は、先願発明と実質的に同一である。

(5)請求人の主張について
ア 請求人は審判請求書において、本願補正発明の作用、効果として、次のとおり主張している。

「3.本願が特許されるべき理由
・・・略・・・
(3)補正後の本願発明の作用・効果
・・・略・・・
このような上記補正後の請求項1に係る発明によれば、遊技に関する情報を誤表示させる等の不正行為を防止可能としつつ、遊技に関する情報を確実に視認することが可能となります。
また、特に、遊技に関する情報についての表示内容(例えば、出玉率、特別電動役物比率、一般賞球比率、役物比率等)が複数ある場合に操作部の操作に応じて表示内容を切り換えて表示することが可能となり、いわゆるゴト行為や故障の発生等によって、一般入賞口や大入賞口への遊技球の入球の難易度が変化してしまっているような状況を含め、遊技機の状況を把握することができ、もって迅速かつ確実に遊技情報の確認作業を行うことが可能な遊技機を提供することができます。」

しかし、これらの効果は、先願発明、または先願発明に上記周知技術を付加したものによっても得られるものであり、本願補正発明に特有のものとすることはできない。

イ また、請求人は審判請求書において、平成30年6月18日付けの補正の却下の決定において引用した、特願2016-60758号(特開2017-169937号)について主張しているが、当該出願は、上記先願とは異なるものであり、その主張を採用することはできない。

ウ さらに、請求人は、出願人として、平成30年2月5日に提出された意見書において、平成29年11月28日付けの最後の拒絶理由通知で引用した、上記先願に対する主張をしているが、当該主張は、上記意見書と同日に提出された手続補正書で補正された内容に基づくものであり、当該補正は平成30年6月18日付けの補正の却下の決定により却下されているから、その主張を採用することはできない。

(6)まとめ
したがって、本願補正発明は、先願発明と同一の発明であり、先願明細書等に記載された発明である。また、本件出願の発明者が先願の発明と同一ではなく、また本件の出願の時に、本件の出願人と先願の出願人とが同一でもない。
よって、本願補正発明は、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正の却下の決定についてのむすび
上記3より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年6月28日に提出された手続補正書により補正された、上記第2[理由]1で示した特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A?I’は、本願発明を分説するため当審にて付与した)。

「A 遊技球が流下可能な遊技領域と、
B 前記遊技領域へ向けて遊技球を発射可能な発射装置と、
C 前記遊技領域を流下する遊技球が進入可能な入賞口と、
D 前記入賞口へ遊技球が進入することに基づき、賞球として遊技球を払い出す払出装置と、を備えるとともに、
E1 電子部品を実装した制御基板が、開放可能な収納ケースに収納された状態で設けられ、
F1 前記収納ケースは、
当該収納ケースが開放不能となるように固着するためのカシメ部を備えるとともに、当該収納ケースが固着された後に当該収納ケースを開放する際には、前記カシメ部が破壊されるように形成され、
F2 当該収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際には、当該収納ケースの表面を通して、前記制御基板における電子部品の実装面を視認可能に形成されている遊技機であって、
E2’ 前記制御基板における電子部品の実装面には、遊技の進行を制御する制御装置と、当該制御装置と電気的に接続され、かつ遊技に関する情報を表示する表示装置とが少なくとも実装され、
F3 前記収納ケースの表面には、当該収納ケースの固着及び開放の履歴を記録する記録手段が設けられ、
G 前記制御装置、前記表示装置及び前記記録手段は、前記収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際に、互いに重なって視認されることの無い位置に配置されており、
H’ 前記制御装置は、所定の算定期間において、前記払出装置により払い出された賞球の数に対応する値及び前記発射装置により発射された遊技球の数に対応する値に基づく算出値を導出可能であり、
I’ 前記表示装置は、前記制御装置により導出された所定の算定期間における算出値を表示可能に設定されていることを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由の概略


(拡大先願)この出願の、平成29年6月28日に提出された手続補正書により補正された下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

●理由(拡大先願)について
・請求項 1
・先願 1、周知例 2?4

<引用文献等一覧>
1.特願2016-89730号(特開2017-196185号)
2.特開平10-286364号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平11-9800号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2009-11464号公報(周知技術を示す文献)


3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された、周知例2及び周知例3の記載事項は、上記第2[理由]3(2)イ及びウにて、周知例1及び周知例2として記載したとおりである。
また、原査定の拒絶の理由で引用された、先願1は、上記第2[理由]3(2)アにて先願として示したものであり、その記載内容は、以下のとおりである。

先願明細書等に記載された事項は、上記第2[理由]3(2)アにて、記載事項(ア)?(ス)として示したとおりである。
また、当該記載事項(ア)?(ス)から、先願明細書等には、上記第2[理由]3(2)アにて、認定事項(a)、(b)、(c)、(d)、(e1)、(f1)、(f2)、(f3)、(g)及び(h)として示した技術的事項が記載されているものと認められる。
さらに、先願明細書等には以下の技術的事項が記載されているものと認められる(見出しe2’及びi’は、本願発明の構成E2’及びI’に対応して付した)。

(e2’)記載事項(カ)から、遊技の進行を制御する主制御基板1310は、主制御MPU1311を備えていることが記載されており、記載事項(キ)(【0072】)から、主制御基板1310には役物比率表示器1317が取り付けられ、主制御MPU1311が計算した役物比率を表示することが記載されている。
そうすると、先願明細書等には、遊技の進行を制御する主制御基板1310は、主制御MPU1311及び役物比率表示器1317が取り付けられ、役物比率表示器1317は、主制御MPU1311が計算した役物比率を表示するものであることが記載されている。

(i’)記載事項(コ)から、役物比率表示器1317は、算出された役物比率を表示することが記載されている。

以上の記載事項(ア)?(ス)及び認定事項(a)?(i’)を総合すると、先願明細書等には、以下の発明(以下、「先願発明2」という。)が記載されている(分説a?i’は、本願発明の分説A?I’に対応させて付与した。先願発明2と先願発明とは、構成e2’及びi’において相違している)。

「a 遊技球が打込まれる遊技領域5aと、
b 遊技領域5a内に遊技球を打込むための球発射装置680と、
c 遊技領域5a内に打込まれた遊技球を受入可能な一般入賞口2001及び第一始動口2002と、
d 遊技球が入賞口に受入れられると、受入れられた入賞口に応じて、所定数の遊技球が払出される払出装置830と、
e1 一度閉めたら破壊せずに開けることができない構造で封印された主制御基板ボックス1320に主制御基板1310が収容され、
f1 主制御基板ボックス1320は、複数の封印機構を備えており、一つの封印機構を用いて主制御基板ボックス1320を閉じると、次に、主制御基板ボックス1320を開けるためにはその封印機構を破壊する必要があり、
f2 透明の樹脂製の主制御基板ボックス1320に主制御基板1310が収容され、プリント基板上に配置された部品を外部から見ることができるパチンコ機1であって、
e2’ 遊技の進行を制御する主制御基板1310は、主制御MPU1311及び役物比率表示器1317が取り付けられ、役物比率表示器1317は、主制御MPU1311が計算した役物比率を表示するものであり、
f3 主制御基板ボックス1320は、複数の封印機構を備えており、一つの封印機構を用いて主制御基板ボックス1320を閉じると、次に、主制御基板ボックス1320を開けるためにはその封印機構を破壊する必要があり、主制御基板ボックス1320の開閉の痕跡を残すことができ、
g 透明の樹脂製の主制御基板ボックス1320に、主制御MPU1311及び役物比率表示器1317が取り付けられた主制御基板1310が収容され、プリント基板上に配置された部品を外部から見ることができ、
h 主制御MPU1311は、役物比率算出・表示処理を実行し、メイン領域のデータから役物比率及び連続役物比率を算出し、役物比率表示器1317は、直近データ表示と中期データ表示と長期データ表示とを切り替えて表示してもよく、役物比率表示器1317は、払い出した賞球数であるセーフ球数÷発射球数(アウト球数)で計算できる、特賞中(大当り中)を除いた通常時の出玉率であるベースを表示してもよく、
i’ 役物比率表示器1317は、算出された役物比率を表示する、パチンコ機1。」

4 対比・判断
本願補正発明は、上記第2[理由]2で示したとおり、本願発明に対して、補正事項ア乃至ウの補正により、本願発明の構成E2’、H’及びI’について限定したものである。
そして、本願発明と先願発明2とを対比すると、上記第2[理由]3(3)で示した点を踏まえ、以下のとおりである。
先願発明2の構成a、b、c、d、e1、f1及びf2は、それぞれ本願発明の構成A、B、C、D、E1、F1及びF2に相当する。
また、先願発明2の構成f3、gについて、それぞれ上記第2[理由]3(3)で示した点で本願発明と共通する。
先願発明2の構成e2’について、先願発明2では「遊技の進行を制御する主制御基板1310」としているが、制御は主制御基板1310に取り付けられた「主制御MPU1311」が行っていることは明らかである。また、先願発明2の「役物比率表示器1317」は、「主制御基板1310」に取付けられ、「主制御MPU1311が計算した役物比率を表示するものであ」ることからすると、主制御MPU1311と電気的に接続していることは明らかである。そうすると、先願発明2の「e2’ 遊技の進行を制御する主制御基板1310は、主制御MPU1311及び役物比率表示器1317が取り付けられ、役物比率表示器1317は、主制御MPU1311が計算した役物比率を表示するものであ」ることは、本願発明の「E2’ 前記制御基板における電子部品の実装面には、遊技の進行を制御する制御装置と、当該制御装置と電気的に接続され、かつ遊技に関する情報を表示する表示装置とが少なくとも実装され」ることに相当する。
先願発明2の構成hについて、先願発明2の「払い出した賞球数であるセーフ球数÷発射球数(アウト球数)で計算できる、特賞中(大当り中)を除いた通常時の出玉率であるベース」は、本願発明の「前記払出装置により払い出された賞球の数に対応する値及び前記発射装置により発射された遊技球の数に対応する値に基づく算出値」に相当する。また、先願発明2では、「主制御MPU1311は、役物比率算出・表示処理を実行し、メイン領域のデータから役物比率及び連続役物比率を算出し」としており、「役物比率表示器1317」が「ベース」を表示するときには、「主制御MPU1311」が「ベース」を算出することは明らかである。さらに、先願発明2では、「直近データ表示と中期データ表示と長期データ表示とを切り替えて表示してもよく」とあることから、「主制御MPU1311」が算出する値を、所定の期間において算出することも明らかである。そうすると、先願発明2の「h 主制御MPU1311は、役物比率算出・表示処理を実行し、メイン領域のデータから役物比率及び連続役物比率を算出し、役物比率表示器1317は、直近データ表示と中期データ表示と長期データ表示とを切り替えて表示してもよく、役物比率表示器1317は、払い出した賞球数であるセーフ球数÷発射球数(アウト球数)で計算できる、特賞中(大当り中)を除いた通常時の出玉率であるベースを表示してもよ」いことは、本願発明の「H’ 前記制御装置は、所定の算定期間において、前記払出装置により払い出された賞球の数に対応する値及び前記発射装置により発射された遊技球の数に対応する値に基づく算出値を導出可能であ」ることに相当する。
先願発明2の構成i’について、先願発明2の「i’ 役物比率表示器1317は、算出された役物比率を表示する、パチンコ機1」は、上記構成h’について示したことを踏まえると、本願発明の「I’ 前記表示装置は、前記制御装置により導出された所定の算定期間における算出値を表示可能に設定されていることを特徴とする遊技機」に相当する。

上記a?i’によれば、本願発明と先願発明2とは、
「A 遊技球が流下可能な遊技領域と、
B 前記遊技領域へ向けて遊技球を発射可能な発射装置と、
C 前記遊技領域を流下する遊技球が進入可能な入賞口と、
D 前記入賞口へ遊技球が進入することに基づき、賞球として遊技球を払い出す払出装置と、を備えるとともに、
E1 電子部品を実装した制御基板が、開放可能な収納ケースに収納された状態で設けられ、
F1 前記収納ケースは、
当該収納ケースが開放不能となるように固着するためのカシメ部を備えるとともに、当該収納ケースが固着された後に当該収納ケースを開放する際には、前記カシメ部が破壊されるように形成され、
F2 当該収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際には、当該収納ケースの表面を通して、前記制御基板における電子部品の実装面を視認可能に形成されている遊技機であって、
E2’ 前記制御基板における電子部品の実装面には、遊技の進行を制御する制御装置と、当該制御装置と電気的に接続され、かつ遊技に関する情報を表示する表示装置とが少なくとも実装され、
F3’ 収納ケースの固着及び開放の痕跡を複数残すことができ、
G’ 前記制御装置及び前記表示装置は、前記収納ケースに前記制御基板が収納された状態で当該収納ケースの表面を正面視した際に、互いに重なって視認されることの無い位置に配置されており、
H’ 前記制御装置は、所定の算定期間において、前記払出装置により払い出された賞球の数に対応する値及び前記発射装置により発射された遊技球の数に対応する値に基づく算出値を導出可能であり、
I’ 前記表示装置は、前記制御装置により導出された所定の算定期間における算出値を表示可能に設定されていることを特徴とする遊技機。」
である点で一致し、上記第2[理由]3(3)で相違点1及び相違点2として示した2点で一応相違する。
そして、当該相違点については、上記第2[理由]3(4)で示したとおりである。
したがって、本願発明は、先願発明2と実質的に同一である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、先願明細書等に記載された発明である。また、本件出願の発明者が先願の発明と同一ではなく、また本件の出願の時に、本件の出願人と先願の出願人とが同一でもない。
したがって、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-17 
結審通知日 2019-04-23 
審決日 2019-05-08 
出願番号 特願2016-140927(P2016-140927)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光河本 明彦木村 隆一松平 佳巳  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 大山 栄成
田邉 英治
発明の名称 遊技機  
代理人 石井 豪  

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