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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1352860
審判番号 不服2018-5461  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-20 
確定日 2019-06-21 
事件の表示 特願2016-104774「光変調器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月30日出願公開、特開2017-211504〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年5月26日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 9月19日付け:拒絶理由通知書
同年11月27日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 1月12日付け:拒絶査定(同年同月23日送達)
同年 4月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 7月 5日付け:前置報告書
同年 9月 4日 :上申書の提出

第2 平成30年4月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年4月20日にされた手続補正についての補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「【請求項1】
電気光学効果を有する基板と、該基板上に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波をそれぞれ変調するための制御電極を有する第1の変調部及び第2の変調部と、該光導波路を伝搬する光波を検出する受光素子と、を備え、
該受光素子として、前記第1の変調部に対する第1の受光素子と、前記第2の変調部に対する第2の受光素子とを前記基板上に有する光変調器において、
前記第1の変調部及び前記第2の変調部のそれぞれに対し、該変調部で変調された光波を導波する出力用導波路と、該変調部からの放射光を該出力用導波路の両側に導波する2つの放射光用導波路とが設けられ、
前記第1の受光素子及び前記第2の受光素子は、前記2つの放射光用導波路を伝搬する光波をそれぞれ検出する2つの受光部を有し、
前記第1の受光素子と前記第2の受光素子は、光伝搬方向に互いに受光素子1つ分以上ずらして配置されるとともに、前記2つの受光部の配置位置における前記2つの放射光用導波路の間隔が一致する位置に配置され、
前記第1の変調部と前記第2の変調部は、光伝搬方向に互いにずらして配置されるとともに、光伝搬方向において制御電極が光波に作用する区間の少なくとも一部が重なり合うように並列に配置されることを特徴とする光変調器。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年11月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

「【請求項1】
電気光学効果を有する基板と、該基板上に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波をそれぞれ変調する第1の変調部及び第2の変調部と、該光導波路を伝搬する光波を検出する受光素子と、を備え、
該受光素子として、前記第1の変調部に対する第1の受光素子と、前記第2の変調部に対する第2の受光素子とを前記基板上に有する光変調器において、
前記第1の変調部及び前記第2の変調部のそれぞれに対し、該変調部で変調された光波を導波する出力用導波路と、該変調部からの放射光を該出力用導波路の両側に導波する2つの放射光用導波路とが設けられ、
前記第1の受光素子及び前記第2の受光素子は、前記2つの放射光用導波路を伝搬する光波をそれぞれ検出する2つの受光部を有し、
前記第1の受光素子と前記第2の受光素子は、光伝搬方向に互いにずらして配置されるとともに、前記2つの受光部の配置位置における前記2つの放射光用導波路の間隔が一致する位置に配置されることを特徴とする光変調器。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1の変調部」及び「第2の変調部」という事項について、これらが光導波路を伝搬する光波をそれぞれ変調する「ための制御電極を有」し、「前記2つの受光部の配置位置における前記2つの放射光用導波路の間隔が一致する位置に配置され、前記第1の変調部と前記第2の変調部は、光伝搬方向に互いにずらして配置されるとともに、光伝搬方向において制御電極が光波に作用する区間の少なくとも一部が重なり合うように並列に配置される」という限定を付加するとともに、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1の受光素子」と「第2の受光素子」という事項について、光伝搬方向に互いに「受光素子1つ分以上」ずらして配置されるという限定を付加するものであって、補正前後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献等の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、特開2013-80009号公報公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審の付与したものである。以下同じ。)

(ア)「【0036】
本発明は、基板1と、該基板1に形成されたマッハツェンダー型光導波路を含む光導波路2と、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極(不図示)とを有する光変調器において、該マッハツェンダー型光導波路を構成する出力導波路20を跨ぐように受光素子3を配置し、該受光素子は、該マッハツェンダー型光導波路の合波部から放出される2つの放射光(a1,a2)を共に受光するよう構成されていることを特徴とする。
【0037】
本発明の光変調器における受光素子は、図1又は図2に示すように、出力導波路20を跨ぐように受光素子3を配置することで、例えば、放射光用導波路(21,22)を伝搬する放射光を受光素子の受光部30に、矢印a1とa2のように同時に入射させる。この構成により、放射光を用いたモニタ光と出力導波路から出射される出力光との間の位相差を補償し、良好なモニタ特性を得ることができる。なお、受光素子の配置位置は、図1又は図2示したものに限らず、2つの放射光が受光できる配置であれば、任意の場所に配置することが可能である。
【0038】
具体的には、出力光の光強度は、図3のグラフAで表示される。グラフの横軸は、変調電極に印加されるバイアス電圧(入力電圧)である。2つの放射光(a1,a2)の光強度は、B及びCで表示される。通常、放射光の光強度は、Off光のみの場合には、出力光に対して逆相で変化し、2つの放射光の電界振幅は互いに逆の状態となる。これに、On光における変換損となる一部の光(On光と同相状態)が混在すると、2つの放射光(a1,a2)の光強度は、図3のB及びCで表示するように、互いに逆方向にズレて、位相差を生じることになる(2つの放射光が受光素子に到達する際の両者の位相差が0でな
い状態となる)。そして、放射光(B及びCに相当)を同時に受光すると、変換損となる一部の光の影響はキャンセルされ、モニタ出力としてグラフDを得ることができる。このように、放射光の出力特性が補正され、出力導波路20から出力される出力光に対して位相差の無いモニタ出力を得ることができる。つまり、モニタ出力Dは出力光Aと逆相状態となる。なお、各グラフの高さは規格化して示している。
【0039】
実際は、図2の放射光a1及びa2が受光素子に到達する際の光強度分布は同じではない。これは図3のグラフのB及びCの振幅値が異なることを意味している。このため、両者を1つの受光素子3(受光部30)に入射し、単純に光強度変化を加算してもグラフDの出力は得られない。本発明では、受光素子が受光する2つの放射光の光量比を調整するため、出力導波路20又は放射光用導波路(21,22)に対して、受光素子3の配置位置を相対的に調整することで、2つの放射光の受光量の比を調整するよう構成できる。このような調整方法は、極めて簡便であり、受光量比を容易に調整することが可能となる。
【0040】
基板1としては、石英、半導体など光導波路を形成できる基板であれば良く、特に、電気光学効果を有する基板である、LiNbO3,LiTaO3又はPLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)のいずれかの単結晶が好適に利用可能である。特に、本発明に好適な基板は、基板の厚みが20μm以下のものであり、このような薄板では、基板に閉じ込められた不要光が多いため、本発明のような、2つの放射光を同時に受光することで、より精確なモニタ信号を得ることできる。
【0041】
基板に形成する光導波路2は、例えば、LiNbO3基板(LN基板)上にチタン(Ti)などの高屈折率物質を熱拡散することにより形成される。また、光導波路となる部分の両側に溝を形成したリブ型光導波路や光導波路部分を凸状としたリッジ型導波路も利用可能である。また、PLC等の異なる基板に光導波路を形成し、これらの基板を貼り合せ集積した光回路にも、本発明を適用することが可能である。
【0042】
変調電極は、信号電極や接地電極から構成され、基板表面に、Ti・Auの電極パターンを形成し、金メッキ方法などにより形成することが可能である。さらに、必要に応じて光導波路形成後の基板表面に誘電体SiO2等のバッファ層を設けることも可能である。なお、放射光を受光素子側に導出する領域においては、バッファ層を形成すると、放射光を効率良く導出することが難しくなるため、当該領域には形成しないことが好ましい。」

(イ)「【0058】
さらに、図9又は図10に示すように、複数のマッハツェンダー型光導波路を有する光導波路においても、放射光を効率良くモニタすることが可能である。例えば、図9は、偏波合成機能を有するネスト型の変調器の例を示す。図9では、入力光L0を2つに分け、各分岐光をネスト型の光導波路(光変調器)に導入し、各出力光(L01,L02)を偏波合成部6を使用して合成し、出力光L10を得る。この際に、各ネスト型変調部の放射光をモニタするため、受光部31,32を配置する。本発明の構成では、このような複雑な光導波路であっても、受光部を含む受光素子を配置するだけで、放射光を効率良くモニタできる。
【0059】
また、図9のように、複数の受光部を1つの受光素子に組み込むことで、配線等の手間を軽減し、光変調器の構成を小型化することも可能となる。
【0060】
図10では、光導波路2に複数のマッハツェンダー型導波路を形成するだけでなく、受光部(33,34)でモニタする位置を互いずらして配置し、光変調器の幅(図10の上下方向の高さ)を狭く構成することも可能となる。」

(ウ)引用文献1の図1は、次のものである。


(エ)引用文献1の図2は、次のものである。


(オ)引用文献1の図10は、次のものである。


(カ)上記図1、2及び引用文献1の上記段落【0037】、【0060】の記載も参照して、上記図10を見ると、光変調器の幅を狭く構成するため、基板上に設けられる複数の受光部33、34が、互いに光伝搬方向に受光部の長さ以上にずらして配置されるとともに、複数のマッハツェンダー型導波路が、光伝搬方向に一部重なり合うように並列にずらして配置されていること、マッハツェンダー型導波路及び受光部の組が、同じ配置関係を有していること、複数のマッハツェンダー型導波路は、それぞれ出力導波路及び2つの放射光用導波路を有すること、及び、複数の受光部33、34のそれぞれの受光部は、2つの放射光用導波路を伝搬する放射光を入射させるようにされていることが読み取れる。

したがって、上記記載事項及び図面に示された事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用文献1発明」という。)が記載されていると認められる。

「電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された複数のマッハツェンダー型光導波路を含む光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極を有する光変調器であって、
基板上に設けられる複数の受光部が、互いに光伝搬方向に受光部の長さ以上にずらして配置されるとともに、複数のマッハツェンダー型導波路が、光伝搬方向に一部重なり合うように並列にずらして配置され、
マッハツェンダー型導波路及び受光部の組が、同じ配置関係を有し、
複数のマッハツェンダー型導波路は、それぞれ出力導波路及び2つの放射光用導波路を有し、
複数の受光部のそれぞれの受光部は、2つの放射光用導波路を伝搬する放射光を入射させるようにされている、
光変調器。」

イ 周知技術1
(ア)引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、特開2015-194517号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。

a 「【0024】
以下、本発明の光変調器について詳細に説明する。
本発明の光変調器は、図4に示すように、基板1と、該基板に形成されたマッハツェンダー型光導波路を含む光導波路と、該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極(不図示)とを有する光変調器において、受光素子5が、該マッハツェンダー型光導波路を構成する出力導波路24を跨ぐように配置され、該マッハツェンダー型光導波路の合波部から放出される2つの放射光を受光するよう構成されており、該受光素子には、一つの受光素子基板55に2つ以上の受光部(51,52)が離間して形成されていることを特徴とする。なお、図4は、図3と同様に、出力導波路を跨ぐように配置された受光素子の断面図の概略を主に図示している。」

b 「【0029】
本発明の光変調器の特徴は、図4のように、光変調器に使用される受光素子には、一つの受光素子基板55に2つ以上の受光部(51,52)が離間して形成されていることである。これにより、1つの受光部の面積を低くすることができ、受光素子の周波数帯域の低下を抑制することができる。
【0030】
各受光部は独立して放射光を受光するが、各受光部の配線を並列に接続することで、受光部からのモニタ信号を電気的に重畳し、実質的に2つの放射光を単一の受光部で同時に受光するのと同等の効果を得ることができる。その結果、周波数帯域を低下させず、2つの放射光を同時にモニタでき、モニタ光と出力導波路24を伝搬する出力光と間の位相差をより正確に補償することが可能となる。
【0031】
受光素子5としては、フォトダイオード(PD)が好適に使用できる。図4では、InPやGaAsの基板(受光素子基板)55の上側に、InGaAs(受光する光波の波長1550nmの場合)やGaAs(850nm)による受光層53を設け、当該受光層53に接するように2つの受光部(51,52)が独立して配置されている。各受光部(51,52)には、モニタ光として2つの放射光(R1,R2)が各々に入射される。
【0032】
図4では、2つの放射光を案内する放射光用導波路(25,26)に、放射光用導波路の屈折率より高い屈折率を持つ受光素子基板55を接触させ、放射光用導波路を伝搬する放射光を受光部(51,52)の方に吸い上げている。出力導波路24と基板55との間には、空気層などの空洞61が形成されている。」

c 引用文献2の図4は、次のものである。


d 引用文献2の図4において、受光素子における2つの受光部は、光伝搬方向と直交する方向において、中央の出力導波路24の両側の放射光用導波路25、26と対応するように配置されていることが読み取れる。

(イ)引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、特表2014-502377号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。

a 「【0028】
図1は、MZI変調器100を含む電気光学アセンブリの概略上面図である。このアセンブリは、LiNbO_(3)またはInPなどの電気光学材料で作られたモノリシック基板(図示せず)の中または上に形成される導波路を含む。入力導波路101は、2つの変調器アーム103、104に出力部が結合されているスプリッタ102と結合される。出力結合器105はアーム103、104の出力部に結合され、出力導波路106は結合器105の出力ポートに結合される。これらの導波路にバイアスをかけてその光路長を変更し、そうして結合器105に到達する光の位相を変更するために、さらなる電子回路(図示せず)が変調器アーム103、104に使われる。
【0029】
2つの監視導波路(本明細書では一般に「漏洩導波路」と呼ばれる)107、108もまた、基板の中または上に形成される。漏洩導波路107、108は、MZI変調器100の出力部と直接結合されていないが、短い距離を隔てて入力端109、110が置かれている。光検出器(通常はフォトダイオード)111、112が、漏洩導波路を通過した光を検出するために漏洩導波路に結合される。
【0030】
図1Aは、2つのアームを通過する光が結合器105で再結合されたときに位相が合う(すなわち、アーム103、104を通過する光間の位相差ΔΦが2πの倍数になる)ように変調器アーム103、104にバイアスがかけられた場合の、アセンブリ中の光の通過を示す。この状態では、2つのアームからの光は出力部105で強め合うように干渉し、実質的にすべての光が出力導波路106に沿って伝送される。光は、漏洩導波路107、108の中にはほとんど伝送されないか、まったく伝送されない。
【0031】
図1Bは、2つのアームを通過する光が結合器105で再結合されときに位相がずれ、弱め合うように干渉するように、アーム103、104を通過する光間の位相差ΔΦがπの奇数倍になるように変調器アーム103、104にバイアスがかけられた場合の、変調器100内の光の挙動を示す。ここで、出力導波路に沿って伝送される光は理論上の振幅がゼロであり、したがって最小である。光は、伝送されるのではなく、基板を介して全方向に放射(または「漏洩」)され、この光の一部は漏洩導波路107、108に入る。この光は、これらの導波路に沿って伝送され、光検出器111、112で検出される。
【0032】
したがって、光検出器111、112で検出される光の強度は、変調器100の出力導波路106に沿って伝送される光の強度に概して反比例することが明らかである。したがって、この構成は「反転」構成と言うことができる。出力導波路106を経由する伝送が最大である場合、光検出器111、112で検出される信号は最小になり、出力導波路106を経由する伝送が最小である場合、光検出器111、112で検出される信号は最大になる。
【0033】
漏洩導波路が存在することが変調器100の出力特性に摂動の影響を及ぼさないこともまた明らかであろう。変調器が図1Aに示したように動作する場合、すべての光が出力導波路106を通して伝送される。図1Bに示したように動作する場合、光は、漏洩導波路107、108が存在しようとしまいと、結合器105から基板を介して放射される。」

b 引用文献3の図1A及び図1Bは、次のものである。


c 引用文献3の図1A及び図1Bにおいて、2つの光検出器111、112は、光伝搬方向と直交する方向において、中央の出力導波路106の両側の漏洩導波路107、108と対応するように配置されていることが読み取れる。

(ウ)引用文献4
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献である、米国特許出願公開第2013/0306848号明細書(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。なお、引用文献4は、引用文献3のファミリー文献であるため、仮訳には、引用文献3の記載を用いた。

a 「[0035] FIG. 1 is a schematic top view of an electro-optic assembly including a MZI modulator 100. The assembly includes waveguides formed in or on a monolithic substrate (not shown) formed of an electro-optic material such as LiNbO_(3) or InP. An input waveguide 101 is coupled to a splitter 102, the output of which is coupled to two modulator arms 103, 104. An output combiner 105 is coupled to the outputs of the arms 103, 104, and an output waveguide 106 is coupled to the output port of the combiner 105. Further electronics (not shown) are applied to the modulator arms 103, 104 to bias these waveguides so as to modify their optical path length, and thus the phase of light arriving at the combiner 105.
[0036] Two monitoring waveguides (herein generally referred to as "spiller waveguides") 107, 108 are also formed in or on the substrate. The spiller waveguides 107, 108 are not coupled directly to the output of the MZI modulator 100, but have input ends 109, 110 located a short distance away. Photodetectors (usually photodiodes) 111, 112 are coupled to the spiller waveguides for detecting light passing therethrough.
[0037] FIG. 1A illustrates the passage of light through the assembly when the modulator arms 103, 104 are biased so that light passing through the two arms is in phase when recombined in the combiner 105 (i.e. the phase difference ΔΦ; between light passing the arms 103, 104 is a multiple of 2π). In this situation, the light from the two arms interferes constructively at the output 105 and substantially all of the light is transmitted along the output waveguide 106. Very little or no light is transmitted into the spiller waveguides 107, 108.
[0038] FIG. 1B illustrates the behaviour of light in the modulator 100 when the arms 103, 104 are biased so that the phase difference ΔΦ; between light passing the arms 103, 104 is an odd multiple of π, so that light passing through the two arms is out of phase when recombined in the combiner 105 and interferes destructively. The light transmitted along the output waveguide now has a theoretical amplitude of zero, and so is at a minimum. Instead, light is radiated in all directions though the substrate (or "spilt"), and some of this light enters the spiller waveguides 107, 108. It is transmitted along these waveguides and detected by the photodetectors 111, 112.
[0039] It is thus apparent that the intensity of light detected by the photodetectors 111, 112 is generally inversely proportional to the intensity of light transmitted along the output waveguide 106 of the modulator 100. This arrangement could therefore be said to be an "inverting" configuration. When the transmission through the output waveguide 106 is at a maximum, the signal detected by the photodetectors 111, 112 is a minimum, and when the transmission through the output 106 is at a minimum, the signal detected by the photodetectors is at a maximum.
[0040] It will also be apparent that the presence of the spiller waveguides has no perturbation effect on the output characteristics of the modulator 100. When the modulator operates as shown in FIG. 1A, all of the light is transmitted through the output waveguide 106 . When operated as shown in FIG. 1B, light will be radiated through the substrate from the combiner 105 whether or not the spiller waveguides 107, 108 are present.」
(仮訳:[0035]
図1は、MZI変調器100を含む電気光学アセンブリの概略上面図である。このアセンブリは、LiNbO3またはInPなどの電気光学材料で作られたモノリシック基板(図示せず)の中または上に形成される導波路を含む。入力導波路101は、2つの変調器アーム103、104に出力部が結合されているスプリッタ102と結合される。出力結合器105はアーム103、104の出力部に結合され、出力導波路106は結合器105の出力ポートに結合される。これらの導波路にバイアスをかけてその光路長を変更し、そうして結合器105に到達する光の位相を変更するために、さらなる電子回路(図示せず)が変調器アーム103、104に使われる。
[0036]
2つの監視導波路(本明細書では一般に「漏洩導波路」と呼ばれる)107、108もまた、基板の中または上に形成される。漏洩導波路107、108は、MZI変調器100の出力部と直接結合されていないが、短い距離を隔てて入力端109、110が置かれている。光検出器(通常はフォトダイオード)111、112が、漏洩導波路を通過した光を検出するために漏洩導波路に結合される。
[0037]
図1Aは、2つのアームを通過する光が結合器105で再結合されたときに位相が合う(すなわち、アーム103、104を通過する光間の位相差ΔΦが2πの倍数になる)ように変調器アーム103、104にバイアスがかけられた場合の、アセンブリ中の光の通過を示す。この状態では、2つのアームからの光は出力部105で強め合うように干渉し、実質的にすべての光が出力導波路106に沿って伝送される。光は、漏洩導波路107、108の中にはほとんど伝送されないか、まったく伝送されない。
[0038]
図1Bは、2つのアームを通過する光が結合器105で再結合されときに位相がずれ、弱め合うように干渉するように、アーム103、104を通過する光間の位相差ΔΦがπの奇数倍になるように変調器アーム103、104にバイアスがかけられた場合の、変調器100内の光の挙動を示す。ここで、出力導波路に沿って伝送される光は理論上の振幅がゼロであり、したがって最小である。光は、伝送されるのではなく、基板を介して全方向に放射(または「漏洩」)され、この光の一部は漏洩導波路107、108に入る。この光は、これらの導波路に沿って伝送され、光検出器111、112で検出される。
[0039]
したがって、光検出器111、112で検出される光の強度は、変調器100の出力導波路106に沿って伝送される光の強度に概して反比例することが明らかである。したがって、この構成は「反転」構成と言うことができる。出力導波路106を経由する伝送が最大である場合、光検出器111、112で検出される信号は最小になり、出力導波路106を経由する伝送が最小である場合、光検出器111、112で検出される信号は最大になる。
[0040]
漏洩導波路が存在することが変調器100の出力特性に摂動の影響を及ぼさないこともまた明らかであろう。変調器が図1Aに示したように動作する場合、すべての光が出力導波路106を通して伝送される。図1Bに示したように動作する場合、光は、漏洩導波路107、108が存在しようとしまいと、結合器105から基板を介して放射される。)

b 引用文献4の図1A及び図1Bは、次のものである。


c 引用文献4の図1A及び図1Bにおいて、2つの光検出器111、112は、光伝搬方向と直交する方向において、中央の出力導波路106の両側の漏洩導波路107、108と対応するように配置されていることが読み取れる。

(エ)周知技術1
これらの文献に記載された次の技術は、周知技術(以下「周知技術1」という。)である。

「マッハツェンダー型の光変調器において、2つの受光部を、光伝搬方向と直交する方向において、中央の出力導波路の両側の放射光用導波路と対応するように配置し、放射光を受光する技術。」

ウ 周知技術2
(ア)引用文献5
当審で引用する、周知例である引用文献5(特開2010-185978号公報)には、次の事項が記載されている。

a 「【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図3は、本発明の第1実施形態による光変調器の構成を示す平面図である。
図3において、本実施形態の光変調器は、例えば、LiNbO_(3)やLiTaO_(2)など電気光学効果を有する一つの結晶基板10上に、二つの光変調部20A,20Bが並列に配置されている。基板10は、ここではZ-カットの結晶を用いており、その一端面(図で右端面)には各光変調部20A,20Bに共通な一つの入力ポートP1が配置され、他端面(図で左端面)には各光変調部20A,20Bにそれぞれ対応した二つの出力ポートP2_(A),P2_(B)が配置されている。なお、本実施形態においても、各光変調部20A,20Bの相互作用部INT_(A),INT_(B)における光の伝搬方向(基板10の長手方向)をx方向とし、該x方向に垂直な方向をy方向とする。
【0018】
上記入力ポートP1には、一本の入力導波路11の一端が接続されている。入力導波路11の他端は、入力光分岐部12の入力端に接続しており、入力光分岐部12の二つ出力端には、曲線導波路13A,13Bを介して、各光変調部20A,20Bの入力端がそれぞれ接続されている。入力光分岐部12は、入力光を所要の強度比で二つに分岐して出力する。各曲線導波路13A,13Bは、緩やかな略S字形状となっており、各光変調部20A,20Bの後述する光分岐部22A,22Bの配置のずれに応じて、それぞれ異なる長さを有している。ただし、各曲線導波路13A,13Bの曲率半径は略同じになっている。
【0019】
光変調部20Aは、基板10の図で上側に位置する表面部分に形成された、入力導波路21A、光分岐部22A、一対の分岐導波路23A,24A、光合波部25Aおよび出力導波路26Aからなるマッハツェンダ(MZ)型の光導波路と、一対の分岐導波路23A,24Aに沿ってパターニングされた信号電極31Aおよび接地電極32Aとを具備する。
【0020】
入力導波路21Aは、一端が曲線導波路13Aに接続しており、他端には光分岐部22Aの入力端が接続されている。
光分岐部22Aは、入力導波路21Aを伝搬した光を1:1の強度比で二つに分岐する。光分岐部22Aの二つの出力端には、一対の分岐導波路23A,24Aの各一端がそれぞれ接続されている。この光分岐部22Aの基板10上における配置は、x方向について、基板10の入力端面(入力ポートP1が位置する右端面)との間隔がdx_(0)となり、y方向について、入力光分岐部12の間隔がdy_(A)となっている。なお、本明細書中における光分岐部の位置は、分岐点(Y分岐の交点)を基準としている。
【0021】
一対の分岐導波路23A,24Aは、図で上側に位置する分岐導波路23Aと、図で下側に位置する分岐導波路24Aとが、x方向に並行している。
光合波部25Aは、二つの入力端が上記各分岐導波路23A,24Aの他端にそれぞれ接続しており、各分岐導波路23A,24Aを伝搬した光を一つに合波する。光合波部25Aの一つの出力端には、出力導波路26Aの一端が接続されている。
出力導波路26Aは、光合波部25Aで合波された光を、他端に接続する出力ポートP2_(A)より外部に出力する。
【0022】
信号電極31Aは、分岐導波路23Aの真上に沿って形成されている。
接地電極32Aは、信号電極31Aから隔離されると共に、分岐導波路24Aの真上に沿う部分を含んで形成されている。なお、ここでは分岐導波路24Aと光変調部20Bの後述する分岐導波路23Bとの間に形成される接地電極32Aが、光変調部20Bの後述する接地電極32Bと共有されている。
【0023】
上記信号電極31Aは、基板10の長手方向に平行な対向側面のうちの一方の側面(図で上側の側面)に引き出した出力端P4_(A)が図示しない抵抗を介して接地電極32Aに接続されることで進行波電極を構成し、基板10の他方の側面(図で下側の側面)に引き出した入力端P3_(A)からマイクロ波電気信号(変調データに対応した電気信号)RF_(A)が印加されるようになっている。
【0024】
なお、信号電極31Aおよび接地電極32Aについては、図示されていないSiO_(2)等を用いたバッファ層を介して基板10(光導波路)の上に形成するのがよい。バッファ層を設けることにより、各分岐導波路23A,24A中を伝搬する光が、信号電極31Aおよび接地電極32Aによって吸収されるのを防ぐことができる。
【0025】
光変調部20Bは、基板10の図で下側に位置する表面部分に形成された、入力導波路21B、光分岐部22B、一対の分岐導波路23B,24B、光合波部25Bおよび出力導波路26Bからなるマッハツェンダ(MZ)型の光導波路と、一対の分岐導波路23B,24Bに沿ってパターニングされた信号電極31Bおよび接地電極32Bとを具備する。
【0026】
入力導波路21Bは、一端が曲線導波路13Bに接続しており、他端には光分岐部22Bの入力端が接続されている。
光分岐部22Bは、入力導波路21Bを伝搬した光を1:1の強度比で二つに分岐する。光分岐部22Bの二つの出力端には、一対の分岐導波路23B,24Bの各一端がそれぞれ接続されている。
【0027】
上記光分岐部22Bの基板10上における配置は、x方向について、基板10の入力端面との間隔がdx_(0)+dx_(1)となり、y方向について、入力光分岐部12との間隔がdy_(B)となっている。これを光変調部20Aの光分岐部22Aとの相対的な配置で言い換えると、光変調部20Bの光分岐部22Bの位置は、x方向について、光分岐部22Aよりも基板10の出力端面(出力ポートP2A,P2Bが位置する左端面)側にdx_(1)だけずれていると共に、y方向について、入力光分岐部12を基準として光分岐部22Aとは反対側にdy_(B)だけずれており、該dy_(B)はdy_(A)よりも長くなっている。つまり、各光変調部20A,20Bの光分岐部22A,22Bは、x方向についての間隔がdx_(1)となり、y方向についての間隔がdy_(A)+dy_(B)(ただし、dy_(A)<dy_(A))となっている。x方向についての間隔dx_(1)は、各信号電極31A,31Bの入力端P3_(A),P3_(B)の間隔dx_(E)に応じて設定することができ、ここではdx_(1)がdx_(E)と等しくなるようにしている。
【0028】
一対の分岐導波路23B,24Bは、図で上側に位置する分岐導波路23Bと、図で下側に位置する分岐導波路24Bとがx方向に並行している。
光合波部25Bは、二つの入力端が上記各分岐導波路23B,24Bの他端にそれぞれ接続しており、各分岐導波路23B,24Bを伝搬した光を一つに合波する。光合波部25Bの一つの出力端には、出力導波路26Bの一端が接続されている。
出力導波路26Bは、光合波部25Bで合波された光を、他端に接続する出力ポートP2Bより外部に出力する。
【0029】
信号電極31Bは、分岐導波路23Bの真上に沿って形成されている。
接地電極32Bは、信号電極31Bから隔離されると共に、分岐導波路24Bの真上に沿う部分を含んで形成されている。なお、ここでは分岐導波路23Bと光変調部20Aの分岐導波路24Aとの間に形成される接地電極32Bが、光変調部20Aの接地電極32Aと共有されている。
【0030】
上記信号電極31Bは、基板10の長手方向に平行な対向側面のうちの一方の側面(図で上側の側面)に引き出した出力端P4_(B)が図示しない抵抗を介して接地電極32Bに接続されることで進行波電極を構成し、基板10の他方の側面(図で下側の側面)に引き出した入力端P3_(B)からマイクロ波電気信号(変調データに対応した電気信号)RF_(B)が印加されるようになっている。なお、信号電極31Bおよび接地電極32Bについても、前述した場合と同様にしてバッファ層を介して基板10(光導波路)の上に形成するのがよい。」

c 引用文献5の図3は、次のものである。


d 引用文献5の図3において、制御のための電極である信号電極31A又は31Bは、光伝搬方向において、光変調器の分岐導波路23A又は24Aの全長にわたって設けられていることが読み取れる。

(イ)引用文献6
当審で引用する、周知例である引用文献6(特開2015-197454号公報)には、次の事項が記載されている

a 「【0060】
以下に、QPSK構造を例に取って、具体的に説明する。薄板化したLN基板に入れ子型の光導波路を形成したものを用意する。次に、シリコン膜を0.11μmの厚さでスパッタ法を用いて堆積させる。次に、フォトレジストとエッチング液(KOH、HF等)を用いて、図14(a)に示すようなパターン形状の高屈折率層(シリコン)を形成する。この時、子MZの分岐導波路の中心とシリコン端部との距離は、15μmである。次に、ニッケル0.1μm、金0.04μmを順次蒸着にて堆積させる。その後、セミアディテブ法にて金電極を形成する。電極間の金・ニッケルはヨウ素ヨウ化カリウムで除去する。形成した構造を図14(b)に示す。」

b 引用文献6の図14は、次のものである。


c 引用文献6の図14において、制御電極は、光伝搬方向において、子マッハツェンダ-型光導波路の分岐導波路の全長にわたって設けられていることが読み取れる。

これらの文献に記載された次の技術は、周知技術(以下「周知技術2」という。)である。

「マッハツェンダー型の光変調器において、制御のための電極を、光伝搬方向において、マッハツェンダ-型光導波路の分岐導波路の全長にわたって設ける技術。」

(3)対比
本件補正発明と引用文献1発明を対比する。

ア 引用文献1発明の「電気光学効果を有する基板」は、本件補正発明の「電気光学効果を有する基板」に相当する。

イ 引用文献1発明の「該基板に形成された」「光導波路」は、本件補正発明の「該基板上に形成された光導波路」に相当する。

ウ 引用文献1発明の「複数のマッハツェンダー型光導波路」は、光変調器において、「該光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極を有する」から、本件補正発明の「該光導波路を伝搬する光波をそれぞれ変調するための制御電極を有する第1の変調部及び第2の変調部」に相当する。

エ 引用文献1発明の「複数の受光部」は、「基板上に設けられ」ており、それぞれマッハツェンダー型導波路の「2つの放射光用導波路を伝搬する放射光を入射させるようにされている」ものであるから、本件補正発明の「前記基板上に有する」ものである「前記第1の変調部に対する第1の受光素子と、前記第2の変調部に対する第2の受光素子」に相当し、引用文献1発明の「複数の受光部」を合わせたものは、本件補正発明の「該光導波路を伝搬する光波を検出する受光素子」に相当する。

オ 引用文献1発明は、「複数のマッハツェンダー型導波路は、それぞれ出力導波路及び2つの放射光用導波路を有し」、「それぞれの受光部は、2つの放射光用導波路を伝搬する放射光を入射させるようにされている」ことから、本件補正発明の「前記第1の変調部及び前記第2の変調部のそれぞれに対し、該変調部で変調された光波を導波する出力用導波路と、該変調部からの放射光を該出力用導波路の両側に導波する2つの放射光用導波路とが設けられ、前記第1の受光素子及び前記第2の受光素子は、前記2つの放射光用導波路を伝搬する光波を」「検出する」「受光部を有」する構成を備えているといえる。

カ 引用文献1発明は、「基板上に設けられる複数の受光部を互いに光伝搬方向に受光部の長さ以上にずらして配置」していることから、本件補正発明の「前記第1の受光素子と前記第2の受光素子は、光伝搬方向に互いに受光素子1つ分以上ずらして配置される」構成を備えているといえる。

キ 引用文献1発明は、「複数のマッハツェンダー型導波路が、光伝搬方向に一部重なり合うように並列にずらして配置され」ていることから、本件補正発明の「前記第1の変調部と前記第2の変調部は、光伝搬方向に互いにずらして」「並列に配置される」という構成を備えているといえる。

ク 引用文献1発明の「光変調器」は、本件補正発明の「光変調器」に相当する。

したがって、本件補正発明と引用文献1発明を対比したときの一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)
「電気光学効果を有する基板と、該基板上に形成された光導波路と、該光導波路を伝搬する光波をそれぞれ変調するための制御電極を有する第1の変調部及び第2の変調部と、該光導波路を伝搬する光波を検出する受光素子と、を備え、
該受光素子として、前記第1の変調部に対する第1の受光素子と、前記第2の変調部に対する第2の受光素子とを前記基板上に有する光変調器において、
前記第1の変調部及び前記第2の変調部のそれぞれに対し、該変調部で変調された光波を導波する出力用導波路と、該変調部からの放射光を該出力用導波路の両側に導波する2つの放射光用導波路とが設けられ、
前記第1の受光素子及び前記第2の受光素子は、前記2つの放射光用導波路を伝搬する光波を検出する受光部を有し、
前記第1の受光素子と前記第2の受光素子は、光伝搬方向に互いに受光素子1つ分以上ずらして配置され、
前記第1の変調部と前記第2の変調部は、光伝搬方向に互いにずらして並列に配置される、
光変調器。」

(相違点1)
本件補正発明では、第1の受光素子及び第2の受光素子が、2つの放射光用導波路を伝搬する光波を、「それぞれ」検出する「2つの受光部」を有し、「前記2つの受光部の配置位置における前記2つの放射光用導波路の間隔が一致する位置に配置され」ているのに対し、引用文献1発明では、複数の受光部について、このような構成が特定されていない点。

(相違点2)
本件補正発明では、第1の変調部及び第2の変調部が、「光伝搬方向において制御電極が光波に作用する区間の少なくとも一部が重なり合うように」「配置される」のに対し、引用文献1発明では、複数のマッハツェンダー型導波路について、このような構成が特定されていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。

ア 上記相違点1について、引用文献1発明では、上記相違点1に係る構成が特定されていないが、その複数の受光部に対し、「マッハツェンダー型の光変調器において、2つの受光部を、光伝搬方向と直交する方向において、中央の出力導波路の両側の放射光用導波路と対応するように配置し、放射光を受光する」という周知技術1を採用し、複数の受光部のそれぞれが2つの受光部を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たことである。そして、引用文献1発明は、「マッハツェンダー型導波路及び受光部の組が、同じ配置関係を有し」ているものであるから、引用文献1発明に対して周知技術1を採用すると、それぞれ2つの受光部を備えた複数の受光部は、それぞれマッハツェンダー型導波路から同間隔を空けて配置され、その配置位置における2つの放射光用導波路の間隔は一致し、上記相違点1に係る構成を備えたものとなる。

ここで、審判請求人(出願人)は、平成30年4月20日付け審判請求書及び平成30年9月4日付け上申書において、本件補正発明の上記相違点1に係る構成について、各変調部に対するそれぞれの受光素子が2つの受光部を有することで受光部のサイズを小さくすることができ、受光部の応答特性を改善することができる等の効果を有し、各引用文献にはこの様な構成について開示及び示唆がない等の主張をしている。しかし、上記相違点1に係る構成は、上記のとおり、引用文献1発明における周知技術1の採用によって得られるものであって、引用文献2の段落【0029】、【0030】等に記載された、「1つの受光部の面積を低くすることができ、受光素子の周波数帯域の低下を抑制することができる」、「周波数帯域を低下させず、2つの放射光を同時にモニタでき、モニタ光と出力導波路24を伝搬する出力光と間の位相差をより正確に補償することが可能となる」という引用文献2に記載された効果等を考慮しても、このような組み合わせは当業者が容易になし得たものであるから、審判請求人の上記相違点1に係る構成についての主張は採用できない。

イ 上記相違点2について、引用文献1発明では、上記相違点2に係る構成が特定されていないが、引用文献1発明において、「マッハツェンダー型の光変調器において、制御のための電極を、光伝搬方向において、マッハツェンダ-型光導波路の分岐導波路の全長にわたって設ける」という周知技術2を採用するとともに、光変調器全体の幅を考慮して複数のマッハツェンダー型の光変調器を受光部の長さ以上適宜ずらして配置し、上記相違点2に係る構成を備えたものとすることは当業者が容易になし得たことである。

審判請求人は、平成30年4月20日付け審判請求書及び平成30年9月4日付け上申書において、引用文献1の図10では2つの変調部を光伝搬方向において制御電極が光波に作用する区間が全く重なり合わないように配置していることが明らかであり、制御電極が光波に作用する区間の一部が重なり合う配置を想起することは容易でなく、本件補正発明は各引用文献から容易になし得たものでない旨の主張をしている。しかし、引用文献1の図10において、制御電極は図示されていないこと、及び、引用文献1発明のとおり、「複数のマッハツェンダー型導波路が、光伝搬方向に一部重なり合うように並列にずらして配置され」ていることも考慮すると、引用文献1において、2つの変調部を光伝搬方向において制御電極が光波に作用する区間が全く重なり合わないように配置していることが明らかであるとまではいえない。そして、引用文献1の段落【0060】に、「光導波路2に複数のマッハツェンダー型導波路を形成するだけでなく、受光部(33,34)でモニタする位置を互いずらして配置し、光変調器の幅(図10の上下方向の高さ)を狭く構成することも可能となる」と記載されていることを考慮すると、引用文献1に示されていることは、複数のマッハツェンダー型導波路及び複数の受光部は、光変調器全体の幅を狭く構成することができる程度、すなわち、図10に示されているとおり、受光部の長さ以上程度適宜ずらして配置されればよいということにとどまり、引用文献1発明において、制御電極が光波に作用する区間の一部が重なり合う配置を想起することは容易であるといえる。したがって、本件補正発明において上記相違点2に係る構成を備えたものとすることは、上記のとおり、当業者が容易になし得たものであり、その効果も引用文献1発明から予想し得た程度のものであるから、審判請求人の上記相違点2に係る構成についての主張も採用できない。

ウ したがって、本件補正発明は、引用文献1発明及び周知技術1、2に基いて当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年4月20日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成29年11月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし2に係る発明は、その出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるか、この出願の請求項1ないし4に係る発明は、その出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし4に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号の規定及び特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献1:特開2013-80009号公報
引用文献2:特開2015-194517号公報
引用文献3:特表2014-502377号公報
引用文献4:米国特許出願公開第2013/0306848号明細書

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし4の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2(2)で検討した本件補正発明において、「第1の変調部」及び「第2の変調部」について、これらが光導波路を伝搬する光波をそれぞれ変調する「ための制御電極を有」し、「前記2つの受光部の配置位置における前記2つの放射光用導波路の間隔が一致する位置に配置され、前記第1の変調部と前記第2の変調部は、光伝搬方向に互いにずらして配置されるとともに、光伝搬方向において制御電極が光波に作用する区間の少なくとも一部が重なり合うように並列に配置される」という限定を省き、「第1の受光素子」と「第2の受光素子」について、光伝搬方向に互いに「受光素子1つ分以上」ずらして配置されるという限定を省いたものである。

そうすると、 本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記のとおり限定したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用文献1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-05 
結審通知日 2019-03-26 
審決日 2019-04-08 
出願番号 特願2016-104774(P2016-104774)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
P 1 8・ 575- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 下村 一石坂上 大貴岸 智史  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 古田 敦浩
星野 浩一
発明の名称 光変調器  
代理人 田村 爾  
代理人 杉村 純子  
復代理人 藤松 正雄  

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