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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1352926
審判番号 不服2017-6796  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-10 
確定日 2019-06-26 
事件の表示 特願2015-509209「サービスインターフェースを個人化および/または調整するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月31日国際公開、WO2013/163634、平成27年 7月27日国内公表、特表2015-521406〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)4月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年4月27日 米国、2012年7月19日 米国、2012年10月17日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 1月 4日付け 拒絶理由通知書
平成28年 7月12日 意見書の提出
平成28年12月27日付け 拒絶査定
平成29年 5月10日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提

平成30年 7月13日付け 拒絶理由通知書(当審)
平成30年11月13日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明について
本願の請求項1?28に係る発明は、平成30年11月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?28に記載された事項により特定されるところ、その請求項13は、以下のとおりである。(下線は当審が付与。)

「 無線送受信ユニット(WTRU)であって、
前記アプリケーションサーバによって提供されるサービスに対するセッションに参加するための要求を前記WTRUへの通信接続性を提供するネットワークを介して前記WTRUによって送り、
前記要求に応答して一時サービス名を前記WTRUによって受信し、前記一時サービス名は前記サービスの特徴を指定している複数のテキスト文字列を含み、
前記一時サービス名に基づいて、前記ネットワークを介して前記アプリケーションサーバによって提供される前記サービスの前記セッションに前記WTRUによって参加する
ように構成されたことを特徴とするWTRU。」

しかしながら、「前記アプリケーションサーバ」より以前に「アプリケーションサーバ」について記載されていないことから、「前記アプリケーションサーバ」は「アプリケーションサーバ」の誤記と認められる。したがって、本件補正後の請求項13に係る発明は、次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。

「 無線送受信ユニット(WTRU)であって、
アプリケーションサーバによって提供されるサービスに対するセッションに参加するための要求を前記WTRUへの通信接続性を提供するネットワークを介して前記WTRUによって送り、
前記要求に応答して一時サービス名を前記WTRUによって受信し、前記一時サービス名は前記サービスの特徴を指定している複数のテキスト文字列を含み、
前記一時サービス名に基づいて、前記ネットワークを介して前記アプリケーションサーバによって提供される前記サービスの前記セッションに前記WTRUによって参加する
ように構成されたことを特徴とするWTRU。」

第3 拒絶の理由
平成30年 7月13日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、補正前の請求項13に対して引用例7が引用されている。

引用例7:特表2007-535186号公報

第4 引用例及び周知事項
1.引用例7
当審拒絶理由に引用された特表2007-535186号公報(以下、「引用例7」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1) 「【0009】
本発明を図1?図4を参照しながら詳述する。図1は、本発明の一実施形態による無線通信システム100のブロック図である。通信システム100は、無線アクセス・ネットワーク(RAN)110と無線通信する携帯電話、無線電話機、無線周波数(RF)機能を備える携帯情報端末(PDA)、またはラップトップ・コンピュータのようなディジタル端末装置(DTE)へのRFアクセスを提供する無線モデムのような複数の移動局(MS)、またはユーザ装置(UE)、102?104(3つを図示)を含むが、これらに限定されない。RAN110は、RAN制御装置114、好ましくは無線ネットワーク制御装置(RNC)に動作可能に結合された少なくとも1つのトランシーバ、またはノードB112を含む。通信システム100は、さらに、RAN110に結合されたサポート・ノード116と、該サポート・ノードを介してRAN制御装置114と通信するマルチメディア・ブロードキャスト/マルチキャスト・サービス(MBMS)サーバ122、好ましくはブロードキャスト・マルチキャスト・サービス・センタ(BM-SC)とを含む。サポート・ノード116は、通常、各々が1つまたは複数のゲートウェイ3G-GPRSサポート・ノード(GGSN)に結合された1つまたは複数のサービス提供側3G-GPRSサポート・ノード(SGSN)を含む。しかし、サポート・ノード116の正確なアーキテクチャは通信システム100の運用者に任されており、本発明にとって重要ではない。本明細書では、RAN110、サポート・ノード116、およびサーバ122をまとめてインフラストラクチャ132と呼ぶ。」(5ページ)

(2)「【0012】
通信システム100はさらに、IPネットワークのようなデータ・ネットワーク134を介してインフラストラクチャ132に結合された、特にサーバ122に結合されたIPマルチキャスト・サーバのようなマルチメディア・ブロードキャスト/マルチキャスト・サービス(MBMS)コンテンツ・プロバイダ136を含む。通信システム100が提供し、MS102?104の各々が加入できるMBMSサービスの一部として、MBMSコンテンツ・プロバイダ136は、サーバ122、サポート・ノード116およびRAN110を介して、通常IPデータ・パケットの形式で、MBMSデータをMS102?104に送信する。
(中略)
【0014】
サービスIDはMBMSサービスに一意的に関連する識別子である。本発明の一実施形態では、サービスIDは、MBMSサービスを識別するインターネット・プロトコル(IP)マルチキャスト・アドレスのようなルーティング・アドレスを含むかまたはその一機能である。例えば、ルーティング・アドレスは、イベントまたはMBMSデータを送信するサーバ122上のアプリケーションに関連するデータを送信するMBMSコンテンツ・プロバイダ136のようなMBMSデータ・ソースに関連する10.10.10.10のようなIPアドレスである。本発明の別の実施形態では、サービスIDはルーティング・アドレスを含むかまたはその一機能であり、さらに、サポート・ノード116のような特定のサポート・ノードに関連するアクセス・ポイント名(APN)またはサーバ122のようなMBMSサーバをさらに含むかまたはその一機能である。例えば、APNは、サポート・ノードまたはサーバを運用する通信システム100の運用者のようなサービス・プロバイダに関連するユニフォーム・リソース・ロケータ(URL)、例えば、「t-mobile.com」である。本発明の別の実施形態では、サービスIDは、通信システム100が提供するMBMSサービスを通信システムが提供する他のすべてのMBMSサービスから区別し、それにより通信システムが各MBMSサービスを別々に識別できるようにする任意の識別子である。」(6ページ)

(3)「【0017】
通信システム100がMBMSサービスの提供に関する加入グループを確立し、加入MSに、関連するMBMSデータのブロードキャスト/マルチキャストを通知するために、通信システム100は各々がMBMSサービスに割り当てられ、サービス加入MSに配信される一時的移動体グループ識別子(TMGI)を生成する。図3は、通信システム100が本発明の一実施形態によるMBMSサービスに関連する一時的移動体グループ識別子(TMGI)を生成し、割り当て、配信する方法の論理フロー図300である。論理フロー図300は(302で)開始し、通信システム100、特にサーバ122が、スーパーボウルまたはワールド・カップのサッカーの試合のようなスポーツ・イベントのブロードキャストのようなMBMSサービスに関するサービス通知を各MS102?104に搬送する(304で)。
(中略)
【0019】
サービス通知の受信(306)に応答して、MS102のようなMS102?104は、サービス通知で識別されたMBMSサービスに加入するか否かを決定する(308)。MS、すなわち、MS102がサービス加入を決定すると、MSはインフラストラクチャ132、特にサポート・ノード116に、MBMSサービスへの加入要求を搬送する(310)。加入要求は、MBMSサービスに関連する識別子、好ましくは、MBMSサービスに関連するルーティング・アドレスを含む。MS102がサービス非加入を決定すると、おそらくは、通知の受信を肯定応答する代わりに、MSは通知に応答しない。
(中略)
【0021】
加入要求の受信(312)に応答して、サポート・ノード116は、加入MS、すなわち、MS102がこのサポート・ノード上でこの特定のMBMSサービスを起動する最初のMSであるか否かを判定する(314)。MS102がこのサポート・ノード上で特定のMBMSサービスを起動する最初のMSであるという判定に応答して、サポート・ノード116は、MBMSサービスへの加入を要求するメッセージをサーバ122に搬送する(316)。本発明の一実施形態では、この要求はサポート・ノード116のMBMSサービス加入の意思を通知するものである。本発明の別の実施形態では、この要求はMS102のMBMSサービス加入の意思またはサポート・ノード116およびMS102のMBMSサービス加入の意思を通知するものである。このメッセージはMBMSサービスに関連する識別子、好ましくは、サービスに関連するサービスIDおよび/またはルーティング・アドレスと、サポート・ノード116のルーティング・アドレスのような要求を提出するサポート・ノードを識別するサポート・ノード識別子を含む。このメッセージは加入MS102に関連する移動体IDをさらに含むことができる。
【0022】
サポート・ノード116からMBMSサービス加入メッセージを受信すると、サーバ122は、これが、MBMSサービスに加入する、すなわち、MBMSサービスまたはイベントに関連するグループに加入する、サーバが受信した時間的に最初の要求であるか否かを判定する(320)。サーバ122がこれがMBMSサービスに加入する最初の要求であると判定する(320)と、サーバ122はサービスに関連する一時的移動体グループ識別子(TMGI)を生成する(322)。サポート・ノード116ではなくサーバ122内でのTMGI生成および割り当て機能を突き止めると、通信システム100はすべてのTMGIの集中レポジトリとTMGIの作成、割り当て、配信、および割り当て解除の集中制御を提供し、それによりTMGIの二重割り当ての可能性を回避し、TMGI再利用を最大限にする。サーバ122は、サーバの1つまたは複数のメモリ素子126に含まれるデータベース128内にTMGIを記憶し(324)、記憶されたTMGIを生成し、このTMGIはMBMSサービスに関連するサービスIDおよび/またはルーティング・アドレスのようなMBMSサービスに関する情報と関連付けてデータベース内に記憶される。さらに、サーバ122は、サーバの1つまたは複数のメモリ素子126内、好ましくは、データベース128内にTMGIと関連付けて、要求を提出したサポート・ノード116のルーティング・アドレスのようなサポート・ノード識別子を記憶することで、イベントに関連する加入グループを作成する(328)。さらに、サーバ122は、サーバが移動体IDを入手可能になると、応答MS、すなわち、MS102に関連する移動体IDを記憶することができる。
(中略)
【0025】
MBMSサービスに関連するTMGIの生成または取り出しに応答して、サーバ122は、サポート・ノード、すなわち、MSにサービスを提供するサポート・ノード116を介して応答MS102?104にTMGIを搬送する(330,332)。サポート・ノード116がサポート・ノードの1つまたは複数のメモリ素子120内でTMGIをローカルに保持しており、かつサポート・ノードがTMGIを記憶していない時には、サーバ122からのTMGI受信に応答して、サポート・ノード116は、MS102に対応する移動体IDとMBMSサービスに関連するサービスIDと関連付けて、TMGIを1つまたは複数のメモリ素子120内に記憶する(333)。
(中略)
【0028】
MS102のようなMSがTMGIを受信すると(334)、MS102はMSの1つまたは複数のメモリ素子208のテーブル210内にTMGIを記憶する(336)。好ましくは、TMGIはMBMSサービスに関連するIPマルチキャスト・アドレスおよびAPNと関連付けてテーブル210に記憶される。本明細書で特に断りのない限り、本明細書でMS102?104が実行すると記載されているすべての機能はMSのプロセッサ206によって実行され、本明細書でサポート・ノード116またはサーバ122が実行すると記載されているすべての機能は、それぞれサポート・ノードのプロセッサ118とサーバのプロセッサ124によって実行される。
【0029】
図4は、本発明の一実施形態によるTMGIのビット・レイアウト400である。TMGIの一実施形態では、TMGIは、加入グループまたはMBMSサービスに関連するグループ識別子(グループID)が埋め込まれた第1のグループ識別子(グループID)データ・フィールド402を含む。本発明の一実施形態では、グループIDは、MBMSサービスに対応するサービスID、MBMSサービスに関連するルーティング・アドレス、またはMBMSサービスに関連するルーティング・アドレスおよびAPNのような他のサービス識別情報の派生物である。グループIDはそのような情報を含むことができ、またはビット空間が限られている時には、そのような情報の短縮されたバージョンを含むことができる。例えば、サーバ122はそのような情報の短縮されたバージョンを決定するために情報にハッシング関数を適用することができる。本発明の別の実施形態では、グループIDは、「ワールド・カップ・サッカー2004、第1試合」のようなイベント名またはイベント名、およびイベント日時のようなサービスを一意的に識別する任意の識別子でよい。
(中略)
【0032】
MBMSサービスに対応するイベントが開始すると、サーバ122は、MBMSコンテンツ・プロバイダ136から、得点、ハイライト、および/またはビデオ・クリップのようなイベントに関連するペイロード・データを含む一組のデータ・パケットを受信する(338)。一組のデータ・パケットの受信に応答して、サーバ122は、サービスIDとTMGIがサーバによってデータ・パケット内に埋め込まれたMBMSサービスと関連付けられた(340)状態で、サポート・ノード116を介してRAN制御装置114にデータ・パケットの組を搬送する(342)。サーバ122は、さらに、搬送されるデータ・パケットに、データ・パケットに含まれるペイロードに関連する「セッション記述」を含めることができる。「セッション記述」は、「ゴール1」、「ゴール2」のようなデータ・パケットの組に含まれるペイロードを記述する単語または語句である。本発明の一実施形態では、「セッション記述」はサーバ122によってデータ・パケットの組に埋め込まれる。本発明の別の実施形態では、MBMSコンテンツ・プロバイダ136は、データ・パケットの組に「セッション記述」を埋め込むことができる。
【0033】
データ・パケットの組と関連するサービスIDおよびTMGIの受信に応答して、RAN制御装置114は、現在RAN制御装置によってサービスを提供され、MBMSサービスに加入している各MS102?104との通信セッションを設定する(344)。RAN制御装置114は、通信セッションの設定プロセスの一部として、RAN制御装置が、加入グループに割り当てられたTMGIを各MSにさらに搬送し、ペイロードを記述するセッション記述をさらに搬送できる点を除き、周知のMBMS通信セッション設定技法に従って通信セッションを設定する。
(中略)
【0035】
PTM通信チャネルまたはPTP通信チャネルを確立すると、RAN制御装置114は確立した1つまたは複数のチャネルを介して、加入MS102?104にデータ・パケットの組を搬送する(346)。データ・パケットの組を受信すると、各MS102?104は、MSの1つまたは複数のメモリ素子208内に、データ・パケットの組に含まれるセッション記述を記憶し、セッション記述とユーザ・インタフェース212の表示画面214上のデータ・パケットの組に含まれる得点またはビデオ・クリップのようなペイロードを表示する。」(7?12ページ)

(4) 図1は以下のとおりである。

上記各記載からみて、

ア 上記(1)の記載及び図1によれば、通信システムは、「移動局(MS)」と「MBMSサーバ122」が「無線アクセス・ネットワーク(RAN110)」を介して通信するシステムであるといえる。

イ 上記(2)の段落12及び段落14の記載によれば、MBMSコンテンツ・プロバイダ136から送信され、MBMSサーバ122を介して移動局(MS)に提供されるMBMSデータはMBMSサーバ122上のアプリケーションに関連するデータであり、上記(3)の段落32の記載によれば、MBMSサーバ122はデータを搬送していることから、MBMSサーバ122はアプリケーションに関連するデータを送信するサーバといえる。
また、上記(3)の段落32の記載によれば、MBMSサーバ122はMBMSサービスと関連付けられた状態でデータ・パケットを搬送していることから、MBMSサーバ122によってMBMSサービスが提供されるといえる。
上記(3)の段落19の記載によれば、移動局(MS)のMBMSサービスへの加入要求を送信しており、移動局(MS)のMBMSサービスへの加入要求は「MBMSサーバによって提供されるMBMSサービスに対する加入要求」といえる。
そして、無線アクセス・ネットワーク(RAN110)は移動局(MS)に通信接続性を提供しているといえることから、「移動局への通信接続性を提供する無線アクセス・ネットワーク(RAN110)」といえる。
したがって、移動局(MS)は、「アプリケーションに関連するデータを送信するMBMSサーバによって提供されるMBMSサービスに対する加入要求を移動局への通信接続性を提供する無線アクセス・ネットワーク(RAN110)を介して前記移動局によって送」っているといえる。

ウ 上記(3)の段落25の記載によれば、加入要求に応答する際に、MBMSサーバ122は移動局(MS)に一時的移動体グループ識別子(TMGI)を搬送し、上記(3)の段落28の記載によれば、移動局(MS)がTMGIを受信しているといえる。
したがって、「加入要求に応答した一時的移動体グループ識別子(TMGI)を移動局によって受信」するといえる。
また、上記(3)の段落29の記載によれば、TMGIは、加入グループまたはMBMSサービスに関連するグループ識別子(グループID)が埋め込まれた第1のグループ識別子(グループID)データ・フィールド402を含み、グループIDは、「ワールド・カップ・サッカー2004、第1試合」のようなイベント名またはイベント名、およびイベント日時のようなサービスを一意的に識別する任意の識別子でよいことから、「TMGIはサービスのイベント名またはイベント日時のようなサービスを識別する識別子を含」むといえる。

エ 上記(3)の段落33の記載によれば、TMGIの受信に応答して、各MS102?104との通信セッションを設定しており、通信セッションは無線アクセス・ネットワーク(RAN110)を介して設定されていることは明らかであるから、移動局は「TMGIに基づいて、無線アクセス・ネットワーク(RAN110)を介してMBMSサーバによって提供されるMBMSサービスの通信セッションが設定され」ているといえ、上記(3)の段落35の記載によれば、通信セッションが設定された後、移動局(MS)によってMBMSサービスのデータ・パケットを受信していることから、通信セッションが設定された後、「移動局はデータ・パケットを受信する」といえる。

以上を総合すると、引用例7には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 移動局であって、
アプリケーションに関連するデータを送信するMBMSサーバによって提供されるMBMSサービスに対する加入要求を前記移動局への通信接続性を提供する無線アクセス・ネットワーク(RAN110)を介して前記移動局によって送り、
前記加入要求に応答した一時的移動体グループ識別子(TMGI)を前記移動局によって受信し、前記TMGIはサービスのイベント名またはイベント日時のようなサービスを識別する識別子を含み、
前記TMGIに基づいて、前記無線アクセス・ネットワーク(RAN110)を介して前記MBMSサーバによって提供される前記MBMSサービスの前記通信セッションが設定され、前記移動局はデータ・パケットを受信する
ように構成された移動局。」

2.周知事項
(1) 特開2009-177637号公報には(以下、「周知例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「【0106】
(2)次に、サーバ90は、通信装置10からのセッションの開始要求に対して、新たなセッションを開設し、開設したセッションを識別するための識別情報であるセッションID(ここでは、AAA)と、通信装置10の電話番号に代わる識別情報である臨時ID(ここでは、01)を設定し、図10の(2)に示すような「YOU-ARE,AAA,01」といった文字列を通信装置10に対して送り返す。」(16ページ)

(2) 国際公開第2006/115215号には(以下、「周知例2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「 [0025] 図1とともに図2のフローチャートを参照すると、ネットワーク・オペレータ(通信事業者)は、新しいSIM(不図示)を出荷する場合、ステップ31に示すように、電話帳記憶部23内にいくつかのエントリを予めプログラムしておく。あるいは、記憶部23は、電話機の本体内の別個の記憶部であってもよい。これらのエントリには、ネットワーク・オペレータが定義しようとする各サービスのための完全な名前またはサービス識別子(SI)のフィールド、および関連するデフォルトの電話番号のフィールドが含まれる。サービス識別子は、英数字文字列(alphanumeric string)であることが好ましい。サービス識別子フィールドの例としては、当該国の国内緊急通報番号に対応するデフォルト番号を有する「地元の警察(Local police)」、「地元の病院(Local hospital)」などがあり得る。たとえば、国内緊急通報番号に対応するデフォルト番号は、英国では「999」であり、米国では「911」である。他のフィールドには、「地元のタクシー(Local taxi)」、「地元のバス会社(Local bus company)」、「地元の鉄道会社(Local train company)」、「地元の中華料理のテークアウト店(Local Chinese takeaway)」、「地元のインド料理のテークアウト店(Local Indian takeaway)」などを指定することができる。これらの場合には、デフォルト番号は、電話番号案内サービスの番号であってもよい。」(9ページ)

上記の(1)、(2)の記載によれば、「識別子を文字列で表す。」ことは周知事項であると認められる。

第5 対比及び判断
本願発明と引用発明とを対比する。

1.引用発明の「移動局」は、「無線送受信ユニット(WTRU)」に含まれる。

2.引用発明の「MBMSサーバ」はアプリケーションに関連するデータを送信するサーバであるから、アプリケーションサーバと称することは任意である。
また、引用発明の「MBMSサービス」、「通信セッション」、「加入要求」、「無線アクセス・ネットワーク(RAN110)」は、それぞれ本願発明の「サービス」、「セッション」、「要求」、「ネットワーク」に相当する。
そして、引用発明では通信セッションを移動局に設定することでMBMSサービスを受信することができることから、引用発明の「加入要求」はMBMSサービスに対するセッションに参加するための要求といえる。
したがって、引用発明の「アプリケーションに関連するデータを送信するMBMSサーバによって提供されるMBMSサービスに対する加入要求を前記移動局への通信接続性を提供する無線アクセス・ネットワーク(RAN110)を介して前記移動局によって送り、」は、本願発明の「アプリケーションサーバによって提供されるサービスに対するセッションに参加するための要求を前記WTRUへの通信接続性を提供するネットワークを介して前記WTRUによって送り、」に相当する。

3.引用発明の「一時的移動体グループ識別子(TMGI)」は、MBMSサービスに対応する識別子であるから、本願発明の「一時サービス名」とは「一時サービス識別子」である点で一致している。
また、引用発明の「前記加入要求に応答した一時的移動体グループ識別子(TMGI)を前記移動局によって受信」することは、移動局の加入要求に応答して送られてくる一時的移動体グループ識別子(TMGI)を移動局によって受信しているといえることから、引用発明の「前記加入要求に応答した一時的移動体グループ識別子(TMGI)を前記移動局によって受信し、」は本願発明と「前記要求に応答して一時サービス識別子を前記WTRUによって受信し、」の点で一致する。

4.引用発明の「通信セッションが設定され、前記移動局はデータ・パケットを受信する」ことは、移動局に通信セッションが設定されることで、MBMSサービスの通信セッションに移動局によって参加しているといえることから、引用発明の「前記TMGIに基づいて、前記無線アクセス・ネットワーク(RAN110)を介して前記MBMSサーバによって提供される前記MBMSサービスの前記通信セッションが設定され、前記移動局はデータ・パケットを受信する」は、本願発明と「前記一時サービス識別子に基づいて、前記ネットワークを介して前記アプリケーションサーバによって提供される前記サービスの前記セッションに前記WTRUによって参加する」の点で一致する。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 無線送受信ユニット(WTRU)であって、
アプリケーションサーバによって提供されるサービスに対するセッションに参加するための要求を前記WTRUへの通信接続性を提供するネットワークを介して前記WTRUによって送り、
前記要求に応答して一時サービス識別子を前記WTRUによって受信し、
前記一時サービス識別子に基づいて、前記ネットワークを介して前記アプリケーションサーバによって提供される前記サービスの前記セッションに前記WTRUによって参加する
ように構成されたWTRU。」

(相違点)
一致点である「一時サービス識別子」が、本願発明では「サービスの特徴を指定している複数のテキスト文字列を含」む「一時サービス名」であるのに対して、引用発明ではサービスのイベント名またはイベント日時のようなサービスを識別する識別子を含む一時的移動体グループ識別子(TMGI)であるが、当該発明特定事項が特定されていない点。

(相違点について)
まず、引用発明の一時的移動体グループ識別子(TMGI)に含まれるイベント名やイベント日時はサービスの特徴を指定しているといえることから、引用発明の一時的移動体グループ識別子(TMGI)はサービスの特徴を含んでいるといえる。
また、上記「第3」の「2.周知事項」によれば、識別子を文字列で表すことは周知であり、サービスの識別子としてどのような形態とするかは当業者にとって設計的事項にすぎない。そして、サービスの識別子として文字列を採用する際に、文字列をいくつ設けるかも当業者にとって設計的事項にすぎない。
そうすると、引用発明において、一時的移動体グループ識別子(TMGI)をサービスの特徴を指定している複数のテキスト文字列を含むようにして、本願発明の構成とすることは当業者が適宜なし得ることである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-01-25 
結審通知日 2019-01-29 
審決日 2019-02-12 
出願番号 特願2015-509209(P2015-509209)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高野 洋  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 中木 努
倉本 敦史
発明の名称 サービスインターフェースを個人化および/または調整するためのシステムおよび方法  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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