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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1353215
異議申立番号 異議2019-700361  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-08-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-26 
確定日 2019-07-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第6420702号発明「液状化学物質のためのタンク」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6420702号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第6420702号の請求項1?2に係る特許についての出願は、平成27年3月25日に出願され、平成30年10月19日に特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:平成30年11月7日)がされ、平成31年4月26日に、特許異議申立人 中川 賢治(以下「申立人」という。)から本件特許異議の申立てがされたものである。


第2.本件発明
特許第6420702号の請求項1?2の特許に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
タンク本体と該タンク本体に付設された接続ユニットとを具備する液状化学物質のためのタンクと、接続アダプターが付設された化学物質供給源との組み合わせにして、
該接続ユニットは、該タンク本体内の化学物質に浸漬される浸漬部及び該タンク本体から延出する延出部を有する化学物質流路と、該タンク本体内に連通された片端から延出する気体流路と含み、
該化学物質流路の該延出部には、該タンク本体内への化学物質充填方向に見て下流側に位置する第一の開閉弁手段及び該化学物質充填方向に見て上流側に位置する第二の開閉弁手段が配設されており、
該気体流路には、該タンク本体への気体流入方向に見て下流側に位置する第三の開閉弁手段及び該気体流入方向に見て上流側に位置する第四の開閉弁手段が配設されており、
更に、該化学物質流路における該第一の開閉弁手段と該第二の開閉弁手段との間の部位と該気体流路における該第三の開閉弁手段と該第四の開閉弁手段との間の部位とを連結する連結流路を含み、該連結流路には第五の開閉弁手段が配設されており、
該接続アダプターの各々は、片端は化学物質供給源に接続され他端は該化学物質流路の延出端に接続される化学物質接続流路と、片端は除害手段を介して大気に連通され他端は該気体流路の延出端に接続される気体接続流路と、片端は該化学物質接続流路に接続され他端は気体供給源に接続されている第一の気体供給流路と、片端は該気体接続流路に接続され他端は該気体供給源に接続されている第二の気体供給流路とを含み、
該化学物質接続流路には、該タンク本体内に向かう方向に見て該第一の気体供給流路の該片端よりも下流側に位置する第六の開閉弁手段及び該タンク本体内に向かう方向に見て該第一の気体供給流路の該片端よりも上流側に位置する第七の開閉弁手段が配設されており、
該気体接続流路には、該タンク本体内に向かう方向に見て該第二の気体供給流路の該片端よりも下流側に位置する第八の開閉弁手段及び該タンク本体内に向かう方向に見て該第二の気体供給流路の該片端よりも上流側に位置する第九の開閉弁手段が配設されており、
該第一の気体供給流路には、第十の開閉弁手段が配設されており、
該第二の気体供給流路には、第十一の開閉弁手段が配設されている、
ことを特徴とする組み合わせ。

【請求項2】
タンク本体と該タンク本体に付設された接続ユニットとを具備する液状化学物質のためのタンクと、接続アダプターが付設された化学物質消費装置との組み合わせにして、
該接続ユニットは、該タンク本体内の化学物質に浸漬される浸漬部及び該タンク本体から延出する延出部を有する化学物質流路と、該タンク本体内に連通された片端から延出する気体流路と含み、
該化学物質流路の該延出部には、該タンク本体内への化学物質充填方向に見て下流側に位置する第一の開閉弁手段及び該化学物質充填方向に見て上流側に位置する第二の開閉弁手段が配設されており、
該気体流路には、該タンク本体への気体流入方向に見て下流側に位置する第三の開閉弁手段及び該気体流入方向に見て上流側に位置する第四の開閉弁手段が配設されており、
更に、該化学物質流路における該第一の開閉弁手段と該第二の開閉弁手段との間の部位と該気体流路における該第三の開閉弁手段と該第四の開閉弁手段との間の部位とを連結する連結流路を含み、該連結流路には第五の開閉弁手段が配設されており、
該接続アダプターの各々は、片端は化学物質消費装置に接続され他端は該化学物質流路の延出端に接続される化学物質接続流路と、片端は除害手段を介して大気に連通され他端は該気体流路の延出端に接続される気体接続流路と、片端は該化学物質接続流路に接続され他端は気体供給源に接続されている第一の気体供給流路と、片端は該気体接続流路に接続され他端は該気体供給源に接続されている第二の気体供給流路とを含み、
該化学物質接続流路には、該タンク本体内に向かう方向に見て該第一の気体供給流路の該片端よりも下流側に位置する第六の開閉弁手段及び該タンク本体内に向かう方向に見て該第一の気体供給流路の該片端よりも上流側に位置する第七の開閉弁手段が配設されており、
該気体接続流路には、該タンク本体内に向かう方向に見て該第二の気体供給流路の該片端よりも下流側に位置する第八の開閉弁手段及び該タンク本体内に向かう方向に見て該第二の気体供給流路の該片端よりも上流側に位置する第九の開閉弁手段が配設されており、
該第一の気体供給流路には、第十の開閉弁手段が配設されており、
該第二の気体供給流路には、第十一の開閉弁手段が配設されている、
ことを特徴とする組み合わせ。


第3.特許異議の申立て理由の概要
申立人の主張する申立て理由は、次のとおりである。
なお、申立人が本件特許異議申立書に添付した甲第1号証等をそれぞれ「甲1」等という。
また、甲1等に記載された発明及び事項を「甲1発明」等及び「甲1事項」等という。

<<申立て理由>>
請求項1?2に係る発明は、甲1?甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、請求項1?2に係る特許は特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。


第4.刊行物の記載
1.甲1
甲1(特開平10-57797号公報)には、次の記載がある。
(1)「【請求項1】 液体材料を封入した容器と、この容器に加圧ガスを導入する加圧ガスラインと、加圧ガスの加圧により気化器に液体材料を供給する材料供給ラインと、を有し、更に、各ラインにそれぞれバルブを備える液体材料供給装置において、
前記加圧ガスラインは、ガス供給管とガスライン接続管及びこのガスライン接続管に接続される前記容器の本体に固定されたガス導入管とで構成され、前記材料供給ラインは、前記容器の本体に固定された吐出管とこの吐出管に接続される材料ライン接続管及び前記気化器に接続される材料供給管とで構成され、前記ガス供給管と前記材料供給管とを接続するバイパス管及び前記ガス導入管と前記吐出管とを接続する連結管を有し、前記ガスライン接続管及び前記ガス導入管に各々開閉バルブを備え、前記吐出管や前記材料ライン接続管及び前記材料供給管にも各々開閉バルブを備えると共に、前記バイパス管及び前記連結管にも開閉バルブを備えて前記液体材料を前記気化器に供給すること特徴とする液体材料供給装置。」

(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ファイバや合成石英ガラスの製造等に用いられる液体材料溶液をベーパライザ等の気化器に安定して供給する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、この高純度なガラス原料ガスを供給する装置として、ベーパライザ等の気化器が用いられる。ベーパライザとは液体材料を沸点以上の雰囲気温度下で気化させ、マスフローコントローラで安定かつ精度良く流量制御をし、反応系に気化した原料ガスを供給するガスコントロール装置であり、ガスコントロール部および恒温槽より構成される。
【0003】この様に、ガラス原料として液体材料を用い、これを気化して使用することにより、液体材料中に含まれる金属不純物は特別な蒸留装置を設けなくとも全て気化タンクにトラップされ、蒸留されることになる。従って、ベーパライザを用いることにより、高純度なガラス原料ガスを供給することができる。そして、通常、光ファイバや石英ガラスの原料には四塩化珪素等のケイ素化合物の液体材料を使用する。又、この液体材料を容器からベーパライザ等の気化器へ供給するには、窒素ガスや不活性ガス等で圧送することとしている。
【0004】・・・この液体材料供給装置10の加圧ガスライン11は、図示していない加圧ガス供給源からの不活性ガスを容器本体41の上部に圧入するように加圧ガスを容器に送るためのガス供給管13、及び、容器本体41に固定されているガス導入管17とこのガス導入管17への継ぎ手16を先端に有するガスライン接続管15とにより形成され、・・・」

(3)「【0008】このとき、材料供給管27の供給バルブ125が閉じられており、排気管39の排気バルブ153が開かれている故、材料ライン接続管25の内部に存在していた加圧ガスや空気などは、排気管39を介して除害塔などに送られ、有害成分を除去されて大気に放出される。・・・」

(4)「【0010】そして、容器交換を行う際には、加圧ガスライン11および材料供給ライン21の両継ぎ手16,26から容器を取り外すことになる。このとき、材料供給ライン21に容器から押し出された液体材料が残留していると、腐食の原因となる。そこで、容器を取り外す前に材料供給ライン21に窒素ガスまたは不活性ガスを流し続け、材料供給ライン21に残留している液体材料を除去する必要がある。一般にこの様な操作をパージと言う。また、その際に用いられるガスをパージガスと言う。」

(5)「【0031】
【発明の実施の形態】本発明に係る液体材料供給装置の実施の形態は、図1に示すように、加圧ガスライン11により窒素ガスなどの不活性ガスを容器本体41の内部に送り込み、容器本体41の内部に封入されている液体材料を材料供給ライン21を介して気化器75に送り込むものであり、真空ポンプ55を備えた除害装置50を有するものである。
【0032】そして、この加圧ガスライン11は、図示していないレギュレータなどを介して一定圧力とされた加圧ガスをガス供給管13に加え、ガスライン接続管15及び容器本体41に固定されているガス導入管17を介して容器本体41の上部空間に不活性ガスを送るものである。又、容器本体41内の液体材料は、容器本体41に固定されている吐出管23から材料ライン接続管25及び材料供給管27を介して気化器75に送られるものである。
【0033】更に、ガスライン接続管15とガス導入管17とは、ガスライン継ぎ手16とした継ぎ手により着脱自在に接続され、ガスライン接続管15は他端にガス送りバルブ111としての開閉バルブを有し、このガス送りバルブ111によりガス供給管13に接続される。又、吐出管23と材料ライン接続管25とは、材料ライン継ぎ手26とした継ぎ手により着脱自在に接続され、材料ライン接続管25は他端に材料受入バルブ123としての開閉バルブを有し、この材料受入バルブ123により材料供給管27に接続されるものである。
【0034】・・・そして、材料ライン継ぎ手26により接続した吐出管23と材料ライン接続管25及び材料供給管27により、材料供給ライン21を形成しているものである。この液体材料供給装置10においては、ガス供給管13と材料供給管27とを接続するバイパス管31の途中にライン短絡バルブ131を備え、材料供給管27は途中に供給バルブ125を備え、容器本体41のガス導入管17も途中にガス導入バルブ113を備え、吐出管23にも途中に吐出バルブ121を備えることは、従来と同様である。
【0035】そして、この液体材料供給装置10では、ガス導入管17と吐出管23とを接続する連結管35を設け、この連結管35の途中に管接続バルブ135としての開閉バルブを設けている。尚、連結管35は、ガス導入管17におけるガス導入バルブ113よりもガスライン継ぎ手16側と、吐出管23における吐出バルブ121よりも材料ライン継ぎ手26側と、を接続するものである。
【0036】又、バイパス管31をガス供給管13から分岐するようにしてガスライン接続管15に加圧ガスを送らない場合でもバイパス管31を介して材料供給管27に加圧ガスを送ることができるようにしている。更に、除害装置50は、材料供給管27の材料受入バルブ123と供給バルブ125との間から排気管39を介して接続するものである。この除害装置50は、液体トラップ51や除害塔53を有し、排気バルブ153により排気管39を真空ポンプ55に直接に接続するのみならず、除去バルブ151やフィルタ接続バルブを介して液体トラップ51及び除害塔53を介して真空ポンプ55に接続している。
【0037】従って、この液体材料供給装置10は、除害装置50の排気バルブ153及び除去バルブ151を閉じることにより排気管39を閉じておき、バイパス管31のライン短絡バルブ131及び連結管35の管接続バルブ135を閉じておけば、図2に示すように、ガス供給管13、ガスライン接続管15、及び、ガス導入管17の加圧ガスライン11を介して加圧ガスを容器本体41内に送ることができる。そして、容器本体41に封入された液体を、吐出管23、材料ライン接続管25、及び、材料供給管27の材料供給ライン21を介して気化器75に送ることができるものである。
【0038】又、容器を交換するに際し、この液体材料供給装置10では、ガス導入管17と吐出管23とを接続する連結管35を設け、この連結管35に管接続バルブ135を設けている故、この連結管35に設けた管接続バルブ135を開くことにより、吐出管23や材料ライン接続管25の内部に残留する四塩化珪素などの材料を確実に除くことができるものである。
【0039】即ち、この液体材料供給装置10では、容器本体41内の液体材料が少なくなり、液体材料を封入した容器を交換する必要が生じたときは、先ず供給バルブ125を閉じ、ガス導入バルブ113や吐出バルブ121を閉じた後、除去バルブ151を開くこととする。このように、除去バルブ151を開くことにより、材料供給管27と除害装置50とを接続する排気管39のパージラインを形成する。そして、管接続バルブ135を開くことにより、ガス導入管17と吐出管23とを連通させてパージを行うことができる。
【0040】このように、バイパス管31に設けたライン短絡バルブ131でなく、連結管35に設けた管接続バルブ135を開くことにより、パージガスは、ガス供給管13からガスライン接続管15を通り、ガスライン継ぎ手16を越えて容器本体41側のガス導入管17及び連結管35を通り、吐出管23に流入する。そして、パージガスは、吐出管23から材料ライン継ぎ手26を越えて材料ライン接続管25及び材料供給管27を通り、排気管39から除害装置50に送られる。従って、材料ライン継ぎ手26の前後に位置している吐出管23や材料ライン接続管25の内部をパージガスが流れて吐出管23や材料ライン接続管25の内部に残留する液体材料を素早く且つ確実に除去することができる。
【0041】更に、この液体材料供給装置10では、除害装置50に真空ポンプ55を備えている故、ガス導入バルブ113及び吐出バルブ121を閉じた状態で、ガス送りバルブ111とライン短絡バルブ131を閉じることにより、材料ライン接続管25、及び、この材料ライン接続管25に材料ライン継ぎ手26によって接続されている吐出管23の内部を減圧状態とすることができる。
【0042】このように、吐出管23や材料ライン接続管25及び材料供給管27にパージガスを送るのみでなく、吐出管23や材料ライン接続管25及び材料供給管27の内部を減圧状態とすることにより、吐出管23や材料ライン接続管25及び材料供給管27に残留している液体燃料を減圧により蒸発乾燥させて除去し、素早く且つ確実にパージした状態として燃料ライン継ぎ手などを外すことができる。従って、安全な容器の交換作業をすることができる。
【0043】そして、除害装置50は、液体トラップ51とその下流に設けた除害塔53と更にその下流に真空ポンプ55を設置した構成としている。従って、この除害装置50では、材料供給ライン21の液体材料は真空引きされることにより揮発、吸引されて液体トラップ51へ流れ込むことになる。その後、液体トラップ51で揮発した液体材料のガスが除害塔53により除害され、真空ポンプ55を介して空気中に放出、もしくはさらに外接された除害装置50へと排気されることになる。」

(6)「【符号の説明】
10 液体材料供給装置
11 加圧ガスライン
13 ガス供給管 15 ガスライン接続管
16 ガスライン継ぎ手 17 ガス導入管
21 材料供給ライン
23 吐出管 25 材料ライン接続管
26 材料ライン継ぎ手 27 材料供給管
31 バイパス管
35 連結管
39 排気管
41 容器
45 吹き出し管 46 開口部
47 破裂板 48 カッター
49 弁体
50 除害装置
51 液体トラップ 53 除害塔
55 真空ポンプ
61 圧力スイッチ
63 マスフローメーター
65 圧力計
75 気化器
111 ガス送りバルブ 113 ガス導入バルブ
121 吐出バルブ 123 材料受入バルブ
125 供給バルブ
131 ライン短絡バルブ 135 管接続バルブ
151 除去バルブ 153 排気バルブ
155,157 フィルタ接続バルブ」

(7)【図1】






(8)【図3】






(9)上記(5)に示される除害装置50は、上記(2)に示される従来技術と同様に大気開放されている。また、上記(5)に示される加圧ガスライン11は、上記(3)に示される従来技術と同様に図示していない加圧ガス供給源に接続されている。

(10)上記(5)及び(7)によると、以下の事項が示されている。
ア.吐出管23は、容器本体41内の液体材料に浸漬される部分と、容器本体41外に延出する部分を有している。また、ガス導入管17は、容器本体41内に連通されるとともに、容器本体41外に延出する部分を有している。
イ.材料供給管27?材料ライン接続管25のラインには、容器本体41内に向かう方向に見てバイパス管31?ガス供給管13のラインの片端よりも下流側に位置する材料受入バルブ123、及び容器本体41内に向かう方向に見てバイパス管31?ガス供給管13のラインの片端よりも上流に位置する供給バルブ125が配設されている。
ウ.ガスライン接続管15には、容器本体41内に向かう方向に見てバイパス管31との接続部よりも下流側に位置するガス送りバルブ111が配設されている。
エ.排気管39には、容器本体41内に向かう方向に見て材料供給管27との接続部よりも上流側に位置する除去バルブ151が配設されている。

(11)上記(1)?(10)から、甲1には、次の甲1発明が記載されている。
「材料供給ライン21と加圧ガスライン11と除害装置50と、液体材料のための容器本体41を備えた液体材料供給装置10と、気化器75とで構成され、
吐出管23と、ガス導入管17は容器本体41に固定されており、
吐出管23と材料ライン接続管25は材料ライン継ぎ手26により着脱可能であり、ガス導入管17とガスライン接続管15はガスライン継ぎ手16により着脱可能であり、
吐出管23とガス導入管17は、
吐出管23は、容器本体41内の液体材料に浸漬される部分と、容器本体41外に延出する部分を有しており、
ガス導入管17は、容器本体41内に連通されるとともに、容器本体41外に延出する部分を有しており、
吐出管23の延出する部分には、吐出バルブ121が配設されており、
ガス導入管17の延出する部分には、ガス導入バルブ113が配設されており、
更に、吐出管23の延出する部分における吐出バルブ121と材料ライン継ぎ手26との間の部位と、ガス導入管17の延出する部分におけるガス導入バルブ113とガスライン継ぎ手16との間の部位とを連結する連結管35を含み、連結管35には管接続バルブ135が配設されており、
液体材料供給装置10のうち、材料ライン継ぎ手26までの材料供給ライン21と、ガスライン継ぎ手16までの加圧ガスライン11と、除害装置50をあわせた部分は、片端は気化器75に接続され、他端は吐出管23の延出する部分の端に接続される材料供給管27?材料ライン接続管25のラインと、片端は除害装置50を介して大気に連通され他端は材料供給管27に接続される排気管39、及び片端は加圧ガス供給源に連通しているガス供給管13に接続され他端はガス導入管17の延出する部分に接続されるガスライン接続管15と、片端は材料供給管27?材料ライン接続管25のラインに接続され他端は加圧ガス供給源に連通しているガス供給管13に接続されているバイパス管31と、片端はガスライン接続管15に接続され他端は加圧ガス供給源に接続されているガス供給管13とを含み、
材料供給管27?材料ライン接続管25のラインには、容器本体41内に向かう方向に見てバイパス管31との接続部よりも下流側に位置する材料受入バルブ123、及び容器本体41内に向かう方向に見てバイパス管31との接続部よりも上流に位置する供給バルブ125が配設されており、
ガスライン接続管15には、容器本体41内に向かう方向に見てバイパス管31との接続部よりも下流側に位置するガス送りバルブ111が配設され、
排気管39には、容器本体41内に向かう方向に見て材料供給管27との接続部よりも上流側に位置する除去バルブ151が配設されており、
バイパス管31には、ライン短絡バルブ131が配設されている、
液体材料供給装置10。」

2.甲2
甲2(特開2001-108199号公報)には、次の記載がある。
(1)「【請求項1】 容器接続用配管A、配管B及び開閉弁を有する分岐配管Cの3配管をそれぞれ接続し、開時には全配管を流通状態にし、閉時には配管B及分岐配管C間を流通状態にすると共に容器接続用配管Aを非流通状態にする3ポートバルブを具備する残留物のパージが簡易な流体移送用配管装置。
【請求項2】 移送流体が半導体製造原料である請求項1記載の流体移送用配管装置。」

(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、残留物のパージが簡易な流体移送用配管装置及び流体供給装置、並びに配管装置中の残留物をパージする方法及び流体供給方法に関する。特には半導体製造装置に原料流体を供給するのに好適に使用できる残留物のパージが簡易な流体移送用配管装置及び流体供給装置、並びに配管装置中の残留物をパージする方法及び流体供給方法に関する。特にクリーンルーム内で使用するのに好適である残留物のパージが簡易な流体移送用配管装置及び流体供給装置、並びに配管装置中の残留物をパージする方法及び流体供給方法に関する。
【0002】
【従来の技術】各種生産工場で気体あるいは液体等の流体が原料物質と使用されており、それら流体は大量に使用する場合には生産工場から配管により直送される場合もあるが、多くの場合ボンベ等の容器により流体使用工場まで搬送され、そこで容器から使用箇所まで配管により移送されるのが通常である。その際原料流体を消費し終わり容器が空になった場合には、新たな容器に交換し供給を開始することになるが、その交換時には配管中に流体が残留することは回避できない。」

(3)「【符号の説明】
1 流体の流れる部分
2 流体の流れない部分
3 入口
4 出口
5、6、7、8、9 バルブ
10 残留物
11 容器
12 内容物
13 サイホン管
14 パージできる場所
15 デッドスペース
16、17 出入口
18 分岐配管出入口
19 開閉弁
20 3ポートバルブ」

(4)【図3】






(5)【図4】






3.甲3
甲3(特開2005-131632号公報)には、次の記載がある。
(1)「【請求項1】
流体を供給するための供給装置であり、少なくとも1つの流体又は流体を発生させるソースを貯蔵するソース容器、少なくとも1つの供給装置内を洗浄するための液体或いはソースを希釈するための液体を貯蔵する洗浄及び/又は希釈液容器、少なくとも1つの洗浄処理後の洗浄液を貯蔵する回収容器、少なくとも1つの不活性ガスを導入するための不活性ガス導入管A、少なくとも1つの不活性ガス導入管B、少なくとも1つの真空ラインに接続するための真空ライン管、少なくとも1つの流体をプロセスへ導入するプロセス導入管を具備してなり、ソース容器は、容器内部へ繋がる容器管C-1及び容器管C-2を有し、容器管C-1には容器側からバルブ1、バルブ4が配置され、容器管C-2には容器側からバルブ2、バルブ5が配置され、バルブ1、バルブ4の間とバルブ2、バルブ5の間がバルブ3を有する連結管Cにより連結されるものであり;洗浄及び/又は希釈液容器は、容器内部へ繋がる容器管S-1及び容器管S-2を有し、容器管S-1にはバルブ12が配置され、容器管S-2にはバルブ13が配置され、容器管S-1とS-2は、バルブ12とバルブ13を起点として容器から遠い位置でバルブ14を有する連結管Sにより連結されるものであり;回収容器は、容器内部へ繋がる容器管W-1及び容器管W-2を有し、容器管W-1にはバルブ17が配置され、容器管W-2にはバルブ18が配置され、容器管W-1とW-2は、バルブ17とバルブ18を起点として容器から遠い位置でバルブ19を有する連結管Wにより連結されるものであり;不活性ガス導入管Aは、バルブ15を経由して容器管S-1と接続部S-1により接続され、真空ライン管は、バルブ21を経由して容器管W-2と接続部W-2により接続され;不活性ガス導入管Bは、バルブ9、バルブ6を経由してバルブ4と接続部C-1により接続され;プロセス導入管は、バルブ10、バルブ7を経由して、バルブ5と接続部C-2により接続され;バルブ13とバルブ17は、接続部S-2(バルブ13側)と接続部W-1(バルブ17側)によりS-Wラインで連結されており、S-Wラインは、接続部S-2側からバルブ16、バルブ22、バルブ20が配置され、さらに、バルブ16とバルブ22の間とバルブ9とバルブ6の間は、バルブ8を有する連結管C-Sにより連結され、バルブ22とバルブ20の間とバルブ10とバルブ7の間は、バルブ11を有する連結管C-Wにより、連結される流体供給装置。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、大気又は光等の外環境に触れることにより、汚染、分解又は変質する化合物や組成物からなるソースを流体として供給するための供給装置に関し、詳しくは、洗浄及び乾燥により外環境の影響を排除することのできる原料供給装置に関する。」

(3)「【0008】
本発明の流体供給装置は、少なくとも1つの流体又は流体を発生させるソースを貯蔵するソース容器、少なくとも1つの供給装置内を洗浄するための液体或いはソースを希釈するための液体を貯蔵する洗浄及び/又は希釈液容器、少なくとも1つの洗浄処理後の洗浄液を貯蔵する回収容器、少なくとも1つの不活性ガスを導入するための不活性ガス導入管A、少なくとも1つの不活性ガス導入管B、少なくとも1つの真空ラインに接続するための真空ライン管、少なくとも1つの流体をプロセスへ導入するプロセス導入管を具備してなり、ソース容器は、容器内部へ繋がる容器管C-1及び容器管C-2を有し、容器管C-1には容器側からバルブ1、バルブ4が配置され、容器管C-2には容器側からバルブ2、バルブ5が配置され、バルブ1、バルブ4の間とバルブ2、バルブ5の間がバルブ3を有する連結管Cにより連結されるものであり;洗浄及び/又は希釈液容器は、容器内部へ繋がる容器管S-1及び容器管S-2を有し、容器管S-1にはバルブ12が配置され、容器管S-2にはバルブ13が配置され、容器管S-1とS-2は、バルブ12とバルブ13を起点として容器から遠い位置でバルブ14を有する連結管Sにより連結されるものであり;回収容器は、容器内部へ繋がる容器管W-1及び容器管W-2を有し、容器管W-1にはバルブ17が配置され、容器管W-2にはバルブ18が配置され、容器管W-1とW-2は、バルブ17とバルブ18を起点として容器から遠い位置でバルブ19を有する連結管Wにより連結されるものであり;不活性ガス導入管Aは、バルブ15を経由して容器管S-1と接続部S-1により接続され、真空ライン管は、バルブ21を経由して容器管W-2と接続部W-2により接続され;不活性ガス導入管Bは、バルブ9、バルブ6を経由してバルブ4と接続部C-1により接続され;プロセス導入管は、バルブ10、バルブ7を経由して、バルブ5と接続部C-2により接続され;バルブ13とバルブ17は、接続部S-2(バルブ13側)と接続部W-1(バルブ17側)によりS-Wラインで連結されており、S-Wラインは、接続部S-2側からバルブ16、バルブ22、バルブ20が配置され、さらに、バルブ16とバルブ22の間とバルブ9とバルブ6の間は、バルブ8を有する連結管C-Sにより連結され、バルブ22とバルブ20の間とバルブ10とバルブ7の間は、バルブ11を有する連結管C-Wにより、連結される流体供給装置である。」

(4)【図1】






(5)【図2】







第5.当審の判断
事案に鑑み、まず本件発明2について検討する。

1.本件発明2についての判断
(1)対比
ア.本件発明2と甲1発明を対比すると、その構成及び機能からみて、甲1発明の「液体材料」は本件発明2の「液状化学物質」に相当し、以下同様に、
「容器本体41」は「タンク本体」に、
「気化器75」は「化学物質消費装置」に、
「容器本体41内の液体材料に浸漬される部分と、容器本体41外に延出する部分」を有する「吐出管23」は「該タンク本体内の化学物質に浸漬される浸漬部及び該タンク本体から延出する延出部」を有する「化学物質流路」に、
「容器本体41内に連通されるとともに、容器本体41外に延出」する部分を有する「ガス導入管17」は「該タンク本体内に連通された片端から延出」する「気体流路」に、
「吐出バルブ121」は「第一の開閉弁手段」に、
「ガス導入バルブ113」は「第三の開閉弁手段」に、
「連結管35」は「連結流路」に、
「管接続バルブ135」は「第五の開閉弁手段」に、
「片端は気化器75に接続され、他端が吐出管23の延出する部分に接続」される「材料供給管27?材料ライン接続管25のライン」は「片端は化学物質消費装置に接続され他端は該化学物質流路の延出端に接続」される「化学物質接続流路」に、
「除害装置50」は「除害手段」に、
「加圧ガス供給源」は「気体供給源」に、
「バイパス管31」は「第一の気体供給流路」に、
「バイパス管31との接続部よりも下流側に位置」する「材料受入バルブ123」は「該第一の気体供給流路の該片端よりも下流側に位置」する「第六の開閉弁手段」に、
「バイパス管31との接続部よりも上流に位置」する「供給バルブ125」は「該第一の気体供給流路の該片端よりも上流側に位置」する「第七の開閉弁手段」に、
「ライン短絡バルブ131」は「第十の開閉弁手段」に、
それぞれ相当する。

イ.甲1発明の吐出管23とガス導入管17は、容器本体41に固定されており、材料ライン継ぎ手26とガスライン継ぎ手16によって、材料供給ライン21と加圧ガスライン11と着脱可能に分離されるものである。
よって、甲1発明の「吐出管23」と「ガス導入管17」は、あわせて本件発明2の「接続ユニット」に相当する。
そうすると、甲1発明の「液体材料」を内部に封入している「容器本体41」と、「容器本体41」に固定された「吐出管23」と「ガス導入管17」は、あわせて本件発明2の「タンク本体と該タンク本体に付設された接続ユニットとを具備する液状化学物質のためのタンク」に相当する。

ウ.甲1発明の液体材料供給装置10のうち材料供給ライン21と加圧ガスライン11は、材料ライン継ぎ手26とガスライン継ぎ手16によって、吐出管23とガス導入管17が固定された容器本体41と着脱可能に分離されるものであって、材料供給ライン21が気化器75と接続されるものである。
よって、甲1発明の「液体材料供給装置10のうち、材料ライン継ぎ手26までの材料供給ライン21と、ガスライン継ぎ手16までの加圧ガスライン11と、除害装置50をあわせた部分」は、本件発明2の「接続アダプター」に相当する。
そうすると、甲1発明の「液体材料供給装置10のうち、材料ライン継ぎ手26までの材料供給ライン21と、ガスライン継ぎ手16までの加圧ガスライン11と、除害装置50をあわせた部分」と接続された「気化器75」は、本件発明2の「接続アダプターが付設された化学物質消費装置」に相当する。

エ.上記イ.及びウ.から、甲1発明は、「容器本体41」と、「容器本体41」に固定された「吐出管23」と「ガス導入管17」(あわせて本件発明2の「タンク」に相当)と、「液体材料供給装置10のうち、材料ライン継ぎ手26までの材料供給ライン21と、ガスライン継ぎ手16までの加圧ガスライン11と、除害装置50をあわせた部分」(本件発明2の「接続アダプター」に相当)と接続された「気化器75」(本件発明2の「化学物質消費装置」に相当)の組み合わせに関する発明である。

オ.本件発明2の「連結流路」の連結位置は、「化学物質流路」において、「タンク本体」内へ化学物質を充填する方向に見て、「下流側」の「第一の開閉弁手段」、「上流側」の「第二の開閉弁手段」と、「気体流路」において、「タンク本体」内へ気体が流入する方向に見て、「下流側」の「第三の開閉弁手段」、「上流側」の「第四の開閉弁手段」を基準としてその連結位置を定義(以下「定義1」という。)している。
そこで、当該定義1に倣って甲1発明の「連結管35」の連結位置について【図1】をみると、吐出管23(本件発明2の「化学物質流路」に相当)において、容器本体41(本件発明2の「タンク本体」に相当)に流れる方向に見て、吐出バルブ121(本件発明2の「第一の開閉弁手段」に相当)より上流の部位と、ガス導入管17(本件発明2の「気体流路」に相当)において、容器本体41に流れる方向に見て、ガス導入バルブ113(本件発明2の「第三の開閉弁手段」に相当)より上流の部位となっている。
そうすると、甲1発明の「連結管35」の連結位置は、「タンク本体内に流れる方向に見て化学物質流路における第一の開閉弁手段より上流の部位と、タンク本体内に流れる方向に見て気体流路における第三の開閉弁手段より上流の部位」の限りにおいて、本件発明2の「連結流路」の連結位置と一致する。

カ.甲1発明の「排気管39」は、「片端は除害手段を介して大気に連通されるガス流路A」の限りにおいて、本件発明2の「気体接続流路」と一致する。
ここで、本件発明2の「第九の開閉弁手段」の位置は、「気体接続流路」において、「タンク本体」に向かう方向に見て、「第二の気体供給流路」の片端、すなわち「気体接続流路」と「第二の気体供給流路」の連結位置を基準として、その位置を「上流側」と定義(以下「定義2」という。)している。
そこで、当該定義2に倣って甲1発明の「除去バルブ151」の位置について【図1】をみると、排気管39(ガス流路A)において、容器本体41(本件発明2の「タンク本体」に相当)に向かう方向に見て、材料供給管27?材料ライン接続管25のライン(本件発明2の「化学物質接続流路」に相当)との連結位置よりも上流側に位置している。
そうすると、甲1発明の「排気管39において、容器本体41に向かう方向に見て、材料供給管27?材料ライン接続管25のラインとの連結位置よりも上流側に位置する除去バルブ151」が配設されていることは、「ガス流路Aにはタンク本体内に向かう方向に見て他の流路との連結位置よりも上流側に位置する弁手段A」が配設されていることの限りにおいて、本件発明2の「該気体接続流路には、」「該タンク本体内に向かう方向に見て該第二の気体供給流路の該片端よりも上流側に位置する第九の開閉弁手段」が配設されていることと一致する。

キ.甲1発明の「ガスライン接続管15」は、「他端は気体流路の延出端に接続されるガス流路B」の限りにおいて、本件発明2の「気体接続流路」と共通する。
ここで、本件発明2の「第八の開閉弁手段」の位置は、上記定義2によってその位置を定義している。
当該定義2に倣って甲1発明の「ガス送りバルブ111」の位置について【図1】をみると、ガスライン接続管15(ガス流路B)において、容器本体41(本件発明2の「タンク本体」に相当)に向かう方向に見て、バイパス管31(本件発明2の「第一の気体供給流路」に相当)との連結位置よりも下流側に位置している。
そうすると、甲1発明の「ガスライン接続管15において、容器本体41に向かう方向に見て、バイパス管31との連結位置よりも下流側に位置するガス送りバルブ111」が配設されていることは、「ガス流路Bにはタンク本体内に向かう方向に見て他の流路との連結位置よりも下流側に位置する弁手段B」が配設されていることの限りにおいて、本件発明2の「該気体接続流路には、該タンク本体内に向かう方向に見て該第二の気体供給流路の該片端よりも下流側に位置する第八の開閉弁手段」が配設されていることと一致する。

ク.甲1発明の「ガス供給管13」は、「他端は気体供給源に接続されている気体供給流路A」の限りにおいて、本件発明2の「第二の気体供給流路」と一致する。

ケ.よって、本件発明2と甲1発明は以下の点で一致する。
<一致点>
「タンク本体と該タンク本体に付設された接続ユニットとを具備する液状化学物質のためのタンクと、接続アダプターが付設された化学物質消費装置との組み合わせにして、
該接続ユニットは、該タンク本体内の化学物質に浸漬される浸漬部及び該タンク本体から延出する延出部を有する化学物質流路と、該タンク本体内に連通された片端から延出する気体流路と含み、
該化学物質流路の該延出部には、第一の開閉弁手段が配設されており、
該気体流路には、第三の開閉弁手段が配設されており、
更に、タンク本体内に流れる方向に見て化学物質流路における第一の開閉弁手段より上流の部位と、タンク本体内に流れる方向に見て気体流路における第三の開閉弁手段より上流の部位とを連結する連結流路を含み、該連結流路には第五の開閉弁手段が配設されており、
該接続アダプターの各々は、片端は化学物質消費装置に接続され他端は該化学物質流路の延出端に接続される化学物質接続流路と、片端は除害手段を介して大気に連通されるガス流路A及び他端は気体流路の延出端に接続されるガス流路Bと、片端は該化学物質接続流路に接続され他端は気体供給源に接続されている第一の気体供給流路と、他端は気体供給源に接続されている気体供給流路Aとを含み、
該化学物質接続流路には、該タンク本体内に向かう方向に見て該第一の気体供給流路の該片端よりも下流側に位置する第六の開閉弁手段及び該タンク本体内に向かう方向に見て該第一の気体供給流路の該片端よりも上流側に位置する第七の開閉弁手段が配設されており、
ガス流路Bにはタンク本体内に向かう方向に見て他の流路との連結位置よりも下流側に位置する弁手段Bが配設され、ガス流路Aにはタンク本体内に向かう方向に見て他の流路との連結位置よりも上流側に位置する弁手段Aが配設されており、
該第一の気体供給流路には、第十の開閉弁手段が配設されている、
組み合わせ。」

コ.そうすると、本件発明2と甲1発明は、少なくとも以下の点で相違している。
<相違点>
気体接続流路について、本件発明2は、「片端は除害手段を介して大気に連通され他端は該気体流路の延出端に接続される気体接続流路」であるのに対して、甲1発明は、除害装置を介して大気に連通される排気管39(ガス流路A)と、気体流路の延出端に接続されるガスライン接続管15(ガス流路B)が二つに分かれて直接つながっておらず、排気管39(ガス流路B)は材料供給管27に接続されている点。

(2)判断
上記<相違点>について検討する。
ア.甲1発明は、「前記従来の方法では、吐出管や材料ライン接続管に液体材料が残留付着し、材料供給ラインを完全にパージすることは不可能であり、かつ非常に時間がかかっていた。」(段落【0013】)ことを解決すべき課題として、「除害装置に真空ポンプを設置し、真空引きとガス圧入とを繰り返すパージを採用することで完全にパージを行い、かつパージ効率を上げることを見出だした。又、パージラインを変更し、吐出管への接続部近辺のパージを確実に行えるようにした。」(段落【0016】)ものである。

イ.そして、具体的には「この液体材料供給装置10では、除害装置50に真空ポンプ55を備えている故、・・・材料ライン接続管25、及び、この材料ライン接続管25に材料ライン継ぎ手26によって接続されている吐出管23の内部を減圧状態とすることができる。・・・吐出管23や材料ライン接続管25及び材料供給管27の内部を減圧状態とすることにより、吐出管23や材料ライン接続管25及び材料供給管27に残留している液体燃料を減圧により蒸発乾燥させて除去し、素早く且つ確実にパージした状態として燃料ライン継ぎ手などを外すことができる。従って、安全な容器の交換作業をすることができる。」(段落【0041】?【0042】)ものである。

ウ.すなわち、甲1発明の排気管39(ガス流路A)は、真空ポンプ55によって、材料供給管27?材料ライン接続管25のライン(化学物質接続流路に相当)及び吐出管23(化学物質流路に相当)の内部を減圧するものであるから、排気管39(ガス流路A)の接続先を材料供給管27に代えて、ガスライン接続管15(ガス流路B)に変更することの動機付けがない。

エ.また、甲1、2及び3には、排気管39の接続先をガスライン接続管15としてもよいとする記載も示唆もないし、そのようにすることが技術常識等であるともいえない。

オ.そして、本件発明2は、上記<相違点>に係る「気体接続流路」の構成と、「気体接続流路」に配設された「第八の開閉弁手段」、「第九の開閉弁手段」、及び「気体接続流路」に接続された「第二の気体供給流路」に配設された「第十一の開閉弁手段」との協働により、気密確認(段落【0019】)、ガス置換(段落【0020】)、供給前処理(段落【0029】)、洗浄(段落【0031】)、封止(段落【0024】)を行うという各別の作用効果を有するものである。

カ.よって、甲1発明において、排気管39(ガス流路A)と材料供給管27の直接接続を廃し、ガスライン接続管15(ガス流路B)と直接接続するように変更することで、本件発明2の気体接続流路のような構成とすること、すなわち、甲1発明において、上記<相違点>に係る本件発明2の構成を備えたものとすることが、当業者にとって容易になし得たものであるとはいえない。

キ.以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明、及び甲1?3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)申立人の主張について
申立人の主張する甲1発明においては、特に化学物質接続流路は「片端は気化器に接続され他端は該化学物質流路の延出端に接続される化学物質接続流路」、気体接続流路は「片端は除害装置(除害手段)を介して大気に連通され他端は該気体流路の延出端に接続されるガス供給管(気体接続流路)」、第一の気体供給流路は「片端は該化学物質接続流路に接続され他端は気体供給源に接続されている第一の気体供給流路」、第二の気体供給流路は「片端は該気体接続流路に接続され他端は該気体供給源に接続されている第二の気体供給流路」(申立書12ページ下から6行?下から3行)であると主張している。

しかしながら、申立書においては、甲1のガス供給管13、ガスライン接続管15、ガス導入管17、材料供給管27、材料ライン接続管25、吐出管23、排気管39、バイパス管31、連結管35をどのように組み合わせたラインをもって「化学物質接続流路」、「気体接続流路」、「第一の気体供給流路」、「第二の気体供給流路」と認定したのか具体的な記載がなく、技術常識を加味しても、請求人の主張のとおりに「化学物質接続流路」、「気体接続流路」、「第一の気体供給流路」、「第二の気体供給流路」を認定することができない。

仮に、材料供給管27?材料ライン接続管25のラインを化学物質接続流路、排気管39?材料供給管27?バイパス管31?ガスライン接続管15のラインをガス供給管(気体接続流路)と認定したとしても、化学物質接続流路とガス供給管(気体接続流路)が材料供給管27で重複するものであるし、材料供給管27は、材料を供給するためのものであってガスを供給するためのものではないから、排気管39?材料供給管27?バイパス管31?ガスライン接続管15のラインをガス供給管(気体接続流路)ということはできない。
さらに、上記(2)で述べたとおり、甲1の排気管39は、材料供給管27に接続することが必要であって、排気管39とガスライン接続管15を接続してガスを供給するものではない。
よって、申立人の上記主張は、採用することができない。

(4)小括
したがって、本件発明2は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえないから、本件特許の請求項2に係る特許は、特許法113条2号に該当せず、取り消すことはできない。

2.本件発明1についての判断
(1)対比
本件発明2と1は、本件発明2が「化学物質消費装置」であるところ、本件発明1が「化学物質供給源」である点で構成要件を異にするのみで、その他の構成要件が同一の発明である。
そうすると、本件発明1と甲1発明を対比すると、上記1.(1)で述べた<相違点>において相違する。

(2)判断
<相違点>についての判断は、上記1.(2)で述べたとおりである。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、及び甲1?3の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)小括
したがって、本件発明1は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法113条2号に該当せず、取り消すことはできない。


第6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1?2に係る特許を取り消すことはできない。
また他に本件特許の請求項1?2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-07-10 
出願番号 特願2015-61949(P2015-61949)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 横溝 顕範
西尾 元宏
登録日 2018-10-19 
登録番号 特許第6420702号(P6420702)
権利者 株式会社トクヤマ
発明の名称 液状化学物質のためのタンク  
代理人 小野 尚純  
代理人 奥貫 佐知子  

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