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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K |
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管理番号 | 1353662 |
審判番号 | 不服2018-5438 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-19 |
確定日 | 2019-07-16 |
事件の表示 | 特願2016-541079「車両のためのエネルギー採取システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年7月9日国際公開、WO2015/102593、平成29年1月19日国内公表、特表2017-501929〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年)12月31日を国際出願日とする出願であって、平成29年4月24日付け(発送日:平成29年4月26日)で拒絶理由が通知され、平成29年7月24日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたが、平成29年12月15日付け(発送日:平成29年12月20日)で拒絶査定がされ、これに対して、平成30年4月19日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし27に係る発明は、平成29年7月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし27に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。 「 【請求項1】 エンジンおよび車輪を駆動するためのドライブシャフトを有する車両のためのエネルギー採取システムであって、 入力シャフトおよび出力シャフトを有し、前記入力シャフトは前記エンジンに機械的に結合され、前記出力シャフトは前記ドライブシャフトに機械的に結合される、トルクコンバータと、 第1の部分および第2の部分を有する発電機であって、 前記第1の部分は、前記トルクコンバータの前記入力シャフトに機械的に結合され、前記第2の部分は、前記トルクコンバータの前記出力シャフトに機械的に結合され、 前記発電機の前記第2の部分の回転速度が、前記発電機の前記第1の部分の回転速度よりも低いとき、電気エネルギーを発生するように動作可能である発電機と、 前記発電機に電気的に結合され、かつ前記電気エネルギーの少なくとも一部分を貯蔵される電気エネルギーとして貯蔵するように動作可能である蓄電装置と、 前記ドライブシャフトに機械的に結合され、かつ前記発電機によって発生された電気エネルギーを受け取るように動作可能である補助モータとを含むシステム。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1ないし27に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1.特開2003-63264号公報(本審決における引用文献1) 引用文献2.特開平8-322108号公報(本審決における周知技術を示す文献) 引用文献3.特開2002-250436号公報(本審決における周知技術を示す文献) 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1 (1)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献1(特開2003-63264号公報)には、図面(特に図1及び図5を参照)とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付した。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンのクランクシャフトとトランスミッションのメインシャフトとの間に、モータ・ジェネレータとトルクコンバータとを配置したハイブリッド車両の動力伝達装置に関する。 【0002】 【従来の技術】エンジンのクランクシャフトとトランスミッションのメインシャフトとの間にモータ・ジェネレータおよびトルクコンバータを接続し、モータ・ジェネレータをジェネレータとして機能させることで、バッテリを充電したり回生制動によるエネルギー回収を行ったりし、またモータ・ジェネレータをモータとして機能させることで、エンジンを始動したりエンジンの出力をアシストしたりするハイブリッド車両が、特開平5-30605号公報により公知である。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来のハイブリッド車両は、トルクコンバータのロックアップクラッチと、モータ・ジェネレータと、トルクコンバータの本体部とが軸方向に直列に並ぶため、エンジンおよびトランスミッションを含むパワーユニットの軸方向寸法がモータ・ジェネレータの幅分だけ大型化する問題があった。 【0004】本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、エンジンおよびトランスミッション間にモータ・ジェネレータおよびトルクコンバータをコンパクトに配置することを目的とする。」 イ 「【0005】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、エンジンのクランクシャフトとトランスミッションのメインシャフトとの間に、モータ・ジェネレータとトルクコンバータとを配置したハイブリッド車両の動力伝達装置において、クランクシャフトをトルクコンバータのポンプインペラに接続するサイドカバーの内周にモータ・ジェネレータのステータを支持するとともに、サイドカバーの内部でメインシャフトをトルクコンバータのタービンランナーに接続するタービンハブの外周にモータ・ジェネレータMGのロータを支持し、ロータの半径方向内側にサイドカバーとタービンハブとを接続するロックアップクラッチを配置したことを特徴とするハイブリッド車両の動力伝達装置が提案される。 【0006】上記構成によれば、サイドカバーの内周にモータ・ジェネレータのステータを支持し、サイドカバーの内部でメインシャフトをトルクコンバータのタービンランナーに接続するタービンハブの外周にモータ・ジェネレータのロータを支持し、ロータの半径方向内側にサイドカバーとタービンハブとを接続するロックアップクラッチを配置したので、ロックアップクラッチをタービンランナー、ポンプインペラおよびモータ・ジェネレータに対して軸方向に並置した場合に比べて、ロックアップクラッチの幅分だけエンジンおよびトランスミッションの距離を短縮してパワーユニットの軸方向寸法を小型化することができる。しかもロックアップクラッチの締結力に加えて、モータ・ジェネレータの駆動力あるいは制動力でトルクコンバータのスリップ量を制御することで、トルクコンバータの効率が悪い領域での運転を回避してエンジンの燃料消費量を節減することができる。またトルクコンバータやロックアップクラッチがスリップしたときにモータ・ジェネレータのステータおよびロータの相対回転により発電を行い、エネルギー回収を効率的に行うことができる。」 ウ 「【0015】図1?図4に示すように、エンジンEの左側面に接続された平行4軸式トランスミッションTの外郭は、トルクコンバータケース11、ミッションケース12およびケースカバー13から構成される。トルクコンバータケース11およびミッションケース12には、ボールベアリング14,15によりメインシャフトSmが支持され、ローラベアリング16およびボールベアリング17を介してカウンタシャフトScが支持され、ボールベアリング18,19を介して第1サブシャフトSs1が支持され、ボールベアリング20およびローラベアリング21を介して第2サブシャフトSs2が支持される。エンジンEのクランクシャフト22はモータ・ジェネレータMGおよびトルクコンバータ23を介してメインシャフトSmに接続される。またカウンタシャフトScと一体のファイナルドライブギヤ24は、ディファレンシャルギヤボックス25の外周に固定したファイナルドリブンギヤ26に噛合して左右の駆動輪WL,WRを駆動する。 【0016】メインシャフトSmの回転を異なる変速比でカウンタシャフトScに伝達して1速変速段?5速変速段および後進変速段を確立すべく、第1サブシャフトSs1に1速クラッチC1および2速クラッチC2が設けられ、第2サブシャフトSs2に3速クラッチC3が設けられ、メインシャフトSmに4速クラッチC4および5速-リバースクラッチC5Rが設けられる。メインシャフトSmと一体のサブシャフト駆動第1ギヤ31がカウンタシャフトScに相対回転自在に支持したサブシャフト駆動第2ギヤ32に噛合し、このサブシャフト駆動第2ギヤ32は第1サブシャフトSs1と一体のサブシャフト駆動第3ギヤ33に噛合し、前記サブシャフト駆動第1ギヤ31は第2サブシャフトSs2に相対回転自在に支持したサブシャフト駆動第4ギヤ34に噛合する。」 ウ 「【0020】次に、図5を参照してモータ・ジェネレータMGおよびトルクコンバータ23の構造を説明する。 【0021】エンジンEのクランクシャフト22とトランスミッションTのメインシャフトSmとの間に、モータ・ジェネレータMGと、トルクコンバータ23とが配置される。モータ・ジェネレータMGはロータ61とステータ62とから構成される。ロータ61はメインシャフトSmの外周に固定されたタービンハブ63に設けられるもので、タービンハブ63の外周に固定された積層鋼板64と、積層鋼板64の外周に固定された複数の永久磁石65…とを備える。ステータ62はクランクシャフト22の軸端にボルト66…で固定されたドライブプレート67の外周にボルト68…で固定されたサイドカバー60に設けられており、サイドカバー60の内周面に固定された積層鋼板よりなるコア69と、コア69にボビン70…を介して巻き付けた複数のコイル71…とを備える。 【0022】トルクコンバータ23は、ポンプインペラ72と、それと対置されるタービンランナー73と、それらの内周部間に配置されるステータ74とを備えており、これらポンプインペラ72、タービンランナー73およびステータ74間にはオイルによる動力伝達のための循環回路75が形成される。ポンプインペラ72の外周部には、モータ・ジェネレータMGを覆う前記サイドカバー60の外周部が溶接W1されており、サイドカバー60の中心に溶接W2された支軸76は、クランクシャフト22の軸端部に形成した支持孔22aに嵌合する。 【0023】トランスミッションTのメインシャフトSmはトルクコンバータ23の出力軸を構成するもので、その外周にスプライン嵌合する前記タービンハブ63にタービンランナー73が一体に設けられる。タービンハブ63とサイドカバー60との間にはスラストベアリング77が配置されており、メインシャフトSmの先端部の外周面とサイドカバー60の支軸76の内周面との間に軸受ブッシュ78が配置される。メインシャフトSmの外周には、ステータ74を一方向クラッチ79を介して支持する円筒状のステータシャフト80が配置されており、これらメインシャフトSmおよびステータシャフト80間には軸受ブッシュ81が配置される。ステータシャフト80の右端部はトルクコンバータケース11に回転不能に固定される。」 オ 「【0035】エンジンEのクランクシャフト22のトルクがドライブプレート67を介して伝達されるサイドカバー60は、トルクコンバータ23の入力部材であるポンプインペラ72とモータ・ジェネレータMGのステータ62とに接続され、かつトルクコンバータ23の出力部材であるタービンランナー73はタービンハブ63を介してモータ・ジェネレータMGのロータ61とトランスミッションTのメインシャフトSmとに接続されるため、モータ・ジェネレータMGをモータとして機能させることで、トルクコンバータ23のポンプインペラ72に対してタービンランナー73を駆動してエンジンEのトルクをモータ・ジェネレータMGのトルクでアシストすることができる。即ち、車両の発進時や加速時にモータ・ジェネレータMGをモータとして機能させることにより、エンジンEの出力をアシストして発進性能や加速性能を高めることができ、しかも燃費の向上およびエミッションの低減に寄与することができる。また車両の減速時にモータ・ジェネレータMGをジェネレータとして機能させることにより、回生制動力を発生させて油圧ブレーキ装置の制動力をアシストするとともに、車両の運動エネルギーを回生電力としてバッテリに回収することができる。 【0036】エンジンEのアイドリングないし低速運転域では、クラッチ油室94に作用する油圧を解除してロックアップクラッチ85を非係合状態とすることで、ポンプインペラ72およびタービンランナー73の相対回転を許容する。この状態でエンジンEのクランクシャフト22のトルクが、ドライブプレート67およびサイドカバー60を介してトルクコンバータ23のポンプインペラ72に伝達すると、循環回路75を満たしているオイルは、ポンプインペラ72の回転により、ポンプインペラ72→タービンランナー73→ステータ74→ポンプインペラ72と循環しながらポンプインペラ72の回転トルクをタービンランナー73に伝達し、メインシャフトSmを駆動する。このとき、ポンプインペラ72およびタービンランナー73間でトルクの増幅作用が生じていれば、それに伴う反力がステータ74に負担され、ステータ74は一方向クラッチ79により回転不能に固定される。」 カ 「【0038】また車両の発進時にもロックアップクラッチ85を係合させ、モータ・ジェネレータMGをモータとして機能させてエンジンEのトルクをアシストするとともに、エンジンEのトルク変動を抑制するようにモータ・ジェネレータMGのトルクを制御することにより、スムーズな発進を可能にすることができる。このように、トルクコンバータ23の入力部材であるサイドカバー60と出力部材であるタービンハブ63との間にロックアップクラッチ85およびモータ・ジェネレータMGを並列に配置したので、トルクコンバータ23のスリップ量をロックアップクラッチ85の締結力だけでなく、モータ・ジェネレータMGの駆動トルクや制動トルクで任意に制御することができ、トルクコンバータ23の効率の悪い領域での運転を回避して車両の燃料消費量を削減することができる。またエンジンEのトルクとモータ・ジェネレータMGのトルクとを統合してトランスミッションTのメインシャフトSmに伝達すべくトルクコンバータ23のロックアップクラッチ85を係合させたとき、多板型のロックアップクラッチ85は充分なトルク伝達容量を備えるためにトルク伝達を支障なく行うことができる。」 キ 「【0041】例えば、実施例のモータ・ジェネレータMGはモータおよびジェネレータの両方の機能を発揮するものであるが、モータおよびジェネレータの何れか一方の機能を発揮するものであっても良い。」 ク 「【0042】 【発明の効果】以上のように請求項1に記載された発明によれば、サイドカバーの内周にモータ・ジェネレータのステータを支持し、サイドカバーの内部でメインシャフトをトルクコンバータのタービンランナーに接続するタービンハブの外周にモータ・ジェネレータのロータを支持し、ロータの半径方向内側にサイドカバーとタービンハブとを接続するロックアップクラッチを配置したので、ロックアップクラッチをタービンランナー、ポンプインペラおよびモータ・ジェネレータに対して軸方向に並置した場合に比べて、ロックアップクラッチの幅分だけエンジンおよびトランスミッションの距離を短縮してパワーユニットの軸方向寸法を小型化することができる。しかもロックアップクラッチの締結力に加えて、モータ・ジェネレータの駆動力あるいは制動力でトルクコンバータのスリップ量を制御することで、トルクコンバータの効率が悪い領域での運転を回避してエンジンの燃料消費量を節減することができる。またトルクコンバータやロックアップクラッチがスリップしたときにモータ・ジェネレータのステータおよびロータの相対回転により発電を行い、エネルギー回収を効率的に行うことができる。」 ケ 上記段落【0006】の「トルクコンバータやロックアップクラッチがスリップしたときにモータ・ジェネレータのステータおよびロータの相対回転により発電を行い、エネルギー回収を効率的に行うことができる。」という記載、及び段落【0042】の「トルクコンバータやロックアップクラッチがスリップしたときにモータ・ジェネレータのステータおよびロータの相対回転により発電を行い、エネルギー回収を効率的に行うことができる」という記載から、トルクコンバータ23がスリップしたときにモータ・ジェネレータMGのステータ62およびロータ61の相対回転により発電を行い、エネルギー回収を効率的に行うことができることが分かる。 そして、トルクコンバータ23やロックアップクラッチがスリップするのは、エンジンEの回転が駆動輪WL,WRに完全に伝わっていない場合であるから、エンジンEにつながるクランクシャフト22の回転速度が、駆動輪WL,WRにつながるメインシャフトSmの回転速度よりも高いとき、すなわち、駆動輪WL,WRにつながるモータ・ジェネレータMGのロータ61の回転速度が、エンジンEにつながるモータ・ジェネレータMGのステータ62の回転速度よりも低いときである。 したがって、引用文献1には、トルクコンバータ23やロックアップクラッチがスリップしたときであって、モータ・ジェネレータMGのロータ61の回転速度が、モータ・ジェネレータMGのステータ62の回転速度よりも低いときに、発電を行うモータ・ジェネレータMGが記載されているといえる。 コ また、上記段落【0036】の「エンジンEのアイドリングないし低速運転域では、クラッチ油室94に作用する油圧を解除してロックアップクラッチ85を非係合状態とすることで、ポンプインペラ72およびタービンランナー73の相対回転を許容する。」及び段落【0042】の「モータ・ジェネレータのステータおよびロータの相対回転により発電を行い、エネルギー回収を効率的に行うことができる」という記載から、エンジンEのアイドリングないし低速運転域では、ポンプインペラ72およびタービンランナー73が相対回転するため、ポンプインペラ72に結合されているモータ・ジェネレータMGのステータ62と、タービンランナー73に結合されているモータ・ジェネレータMGのロータ61とが相対回転するから、このときにも、モータ・ジェネレータMGのステータ62およびロータ61の相対回転により発電を行い、エネルギー回収を効率的に行うことができることが分かる。 エンジンEのアイドリング時ないし低速運転域のロックアップクラッチ85非係合状態のときに、駆動輪WL,WRにつながるモータ・ジェネレータMGのロータ61の回転速度が、エンジンEにつながるモータ・ジェネレータMGのステータ62の回転速度よりも低いことは技術常識である。 したがって、引用文献1には、エンジンEのアイドリング時ないし低速運転域のロックアップクラッチ85非係合状態のときであって、モータ・ジェネレータMGのロータ61の回転速度が、モータ・ジェネレータMGのステータ62の回転速度よりも低いときに、発電を行うモータ・ジェネレータMGが記載されているといえる。 サ 請求人は、審判請求書の(3)において、「電気エネルギーを発生する構成に関して引用文献1に開示されているのは、ドライブシャフト側の回転速度がエンジン側の回転速度よりも高いときに電気エネルギーを発生するという技術思想だけです。」と主張しているが、引用文献1には、上記ケ及びコのように、モータ・ジェネレータMGのロータ61(メインシャフトSm側、すなわちドライブシャフト側)の回転速度が、モータ・ジェネレータMGのステータ62(クランクシャフト22側、すなわちエンジン側)の回転速度よりも低いときに、発電を行うという技術思想も開示されている。 (2)引用発明 上記(1)の記載及び図面の記載を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 〔引用発明〕 「エンジンEおよび駆動輪WL,WRを駆動するためのカウンタシャフトScを有するハイブリッド車両のためのエネルギー回収システムであって、 クランクシャフト22およびメインシャフトSmを有し、前記クランクシャフト22は前記エンジンEに機械的に結合され、前記メインシャフトSmは前記カウンタシャフトScに機械的に結合される、トルクコンバータ23と、 ステータ62およびロータ61を有するモータ・ジェネレータMGであって、 前記ステータ62は、前記トルクコンバータ23の前記クランクシャフト22に機械的に結合され、前記ロータ61は、前記トルクコンバータ23の前記メインシャフトSmに機械的に結合され、 前記モータ・ジェネレータMGの前記ロータ61の回転速度が、前記モータ・ジェネレータMGの前記ステータ62の回転速度よりも低いとき、発電を行うように動作可能であるモータ・ジェネレータMGと、 前記モータ・ジェネレータMGに電気的に結合され、かつ前記発電した電力の少なくとも一部分を貯蔵されるエネルギーとして回収するように動作可能であるバッテリと、 前記カウンタシャフトScに機械的に結合され、かつ電力を受け取るように動作可能であるモータ・ジェネレータMGとを含むシステム。」 第5 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「エンジンE」は本願発明における「エンジン」に相当し、以下同様に、「駆動輪WL,WR」は「車輪」に、「カウンタシャフトSc」は「ドライブシャフト」に、「ハイブリッド車両」は「車両」に、「エネルギー回収システム」は「エネルギー採取システム」に、「クランクシャフト22」は「入力シャフト」に、「メインシャフトSm」は「出力シャフト」に、「トルクコンバータ23」は「トルクコンバータ]に、「ロータ61」は「第2の部分」に、「ステータ62」は「第1の部分」に、「発電を行う」ことは「電気エネルギーを発生する」ことに、「発電した電力」及び「電力」は「電気エネルギー」に、「回収する」ことは「貯蔵する」ことに、「バッテリ」は「蓄電装置」に、「発電」は「発生」に、それぞれ相当する。 また、引用発明における「モータ・ジェネレータMG」は、発電機の機能を有するものであるから、「発電機」という限りにおいて、本願発明における「発電機」と共通する。 そして、引用発明における「前記モータ・ジェネレータMGの前記ロータ61の回転速度が、前記モータ・ジェネレータMGの前記ステータ62の回転速度よりも低いとき」は、「前記発電機の前記第2の部分の回転速度が、前記発電機の前記第1の部分の回転速度よりも低いとき」という限りにおいて、本願発明における「前記発電機の前記第2の部分の回転速度が、前記発電機の前記第1の部分の回転速度よりも低いとき」と共通する。 また、引用発明における「前記カウンタシャフトScに機械的に結合され、かつ電力を受け取るように動作可能であるモータ・ジェネレータMG」は、「前記ドライブシャフトに機械的に結合され、かつ電気エネルギーを受け取るように動作可能であるモータ」という限りにおいて、本願発明における「前記ドライブシャフトに機械的に結合され、かつ前記発電機によって発生された電気エネルギーを受け取るように動作可能である補助モータ」と共通する。 以上のことから、本願発明と引用発明とは、 「エンジンおよび車輪を駆動するためのドライブシャフトを有する車両のためのエネルギー採取システムであって、 入力シャフトおよび出力シャフトを有し、前記入力シャフトは前記エンジンに機械的に結合され、前記出力シャフトは前記ドライブシャフトに機械的に結合される、トルクコンバータと、 第1の部分および第2の部分を有する発電機であって、 前記第1の部分は、前記トルクコンバータの前記入力シャフトに機械的に結合され、前記第2の部分は、前記トルクコンバータの前記出力シャフトに機械的に結合され、 前記発電機の前記第2の部分の回転速度が、前記発電機の前記第1の部分の回転速度よりも低いとき、電気エネルギーを発生するように動作可能である発電機と、 前記発電機に電気的に結合され、かつ前記電気エネルギーの少なくとも一部分を貯蔵される電気エネルギーとして貯蔵するように動作可能である蓄電装置と、 前記ドライブシャフトに機械的に結合され、かつ電気エネルギーを受け取るように動作可能であるモータとを含むシステム。」 という点で一致し、以下の点で相違する。 〔相違点1〕 「発電機」について、本願発明においては、第1の部分および第2の部分を有する「発電機」であるのに対し、引用発明においては、ステータ62およびロータ61を有する「モータ・ジェネレータMG」である点。 〔相違点2〕 本願発明においては、前記ドライブシャフトに機械的に結合され、かつ「前記発電機によって発生された」電気エネルギーを受け取るように動作可能である「補助モータ」を含むのに対し、引用発明においては、前記カウンタシャフトScに機械的に結合され、かつ電力を受け取るように動作可能である「モータ・ジェネレータMG」を含む点。 上記相違点について判断する。 (1)相違点1について 上記第4(1)の段落【0041】の「実施例のモータ・ジェネレータMGはモータおよびジェネレータの両方の機能を発揮するものであるが、モータおよびジェネレータの何れか一方の機能を発揮するものであっても良い。」という記載(以下、「引用文献1の記載事項」という。)から、引用文献1に記載されたハイブリッド車両の動力伝達装置のモータ・ジェネレータMGは、モータおよびジェネレータの何れか一方の機能、例えばジェネレータ(発電機)の機能のみを発揮するものとすることも想定されていることが分かるから、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、引用文献1の記載事項から自明なものである。 したがって、引用発明において、引用文献1の記載事項により、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2)相違点2について 引用発明は、カウンタシャフトScに機械的に結合され、かつ電力を受け取るように動作可能であるモータ・ジェネレータMGを含むものである。 ところで、ハイブリッド車両の技術分野において、ドライブシャフトに機械的に結合され、かつ発電機によって発生され、蓄電装置に蓄電された電気エネルギーを受け取るように動作可能である補助モータを設けることは、周知技術(例えば、特開平8-322108号公報(特に、段落【0002】及び図13を参照。)及び特開2002-250436号公報(特に、段落【0035】ないし【0037】、【0096】ないし【0100】、図1、図4、及び図9のS27?S34を参照。)である。 してみれば、引用発明の「前記カウンタシャフトScに機械的に結合され、かつ電力を受け取るように動作可能であるモータ・ジェネレータMG」において、引用文献1の記載事項、及び周知技術により、相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明、引用文献1の記載事項及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 したがって、本願発明は、引用発明、引用文献1の記載事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-02-20 |
結審通知日 | 2019-02-21 |
審決日 | 2019-03-05 |
出願番号 | 特願2016-541079(P2016-541079) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 将一 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
粟倉 裕二 金澤 俊郎 |
発明の名称 | 車両のためのエネルギー採取システム |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 土屋 徹雄 |
代理人 | 稲葉 良幸 |