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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16D
管理番号 1353852
審判番号 不服2018-12624  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-21 
確定日 2019-08-20 
事件の表示 特願2014-263901号「ディスクブレーキ装置のラトル音評価方法及びラトル音評価システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年7月11日出願公開、特開2016-125505号、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月26日の出願であって、平成29年2月3日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年6月5日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年11月9日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年1月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年6月19日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされた。これに対して、平成30年9月21日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、平成30年1月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明12」という。)。
「【請求項1】
車体とは異なる評価試験用の固定台と、付与する加振力を計測可能又は設定可能な打撃具と、測定手段とを備えるラトル音評価装置において、前記固定台に対し、パッドをパッド支持部材に対し軸方向に移動可能に支持して成る組立状態のディスクブレーキ装置のうち、前記パッド支持部材を固定した状態で、前記打撃具から前記固定台に付与される加振力に基づき発生する、前記パッド支持部材と前記パッドとの衝突に基づく応答信号を、前記測定手段により測定するステップと、
前記ラトル音評価装置において、前記測定手段により測定された前記応答信号と所定の閾値とを比較して、前記ディスクブレーキ装置のラトル音に関する評価を行うステップと、
を備えている、ディスクブレーキ装置のラトル音評価方法。
【請求項2】
前記打撃具からロータの周方向に相当する向きの力の成分を含んだ加振力が付与される、請求項1に記載したディスクブレーキ装置のラトル音評価方法。
【請求項3】
前記打撃具からロータの径方向に相当する向きの力の成分を含んだ加振力が付与される、請求項1?2のうちの何れか1項に記載したディスクブレーキ装置のラトル音評価方法。
【請求項4】
前記ディスクブレーキ装置が、前記パッド支持部材であるサポート、及び、前記パッドに加え、このサポートに形成された案内孔に摺動可能に挿入された案内ピンにより、このサポートに対して軸方向に移動可能に支持されたキャリパを備えており、
前記測定手段により、前記案内ピンと前記案内孔との衝突に基づく応答信号も測定する、請求項1?3のうちの何れか1項に記載したディスクブレーキ装置のラトル音評価方法。
【請求項5】
前記打撃具が、インパルスハンマである、請求項1?4のうちの何れか1項に記載したディスクブレーキ装置のラトル音評価方法。
【請求項6】
前記測定手段が加速度センサであり、前記応答信号が加速度信号である、請求項1?5のうちの何れか1項に記載したディスクブレーキ装置のラトル音評価方法。
【請求項7】
前記測定手段が歪みゲージであり、前記応答信号が歪み量を表す信号である、請求項1?5のうちの何れか1項に記載したディスクブレーキ装置のラトル音評価方法。
【請求項8】
前記測定手段が変位計であり、前記応答信号が変位量を表す信号である、請求項1?5のうちの何れか1項に記載したディスクブレーキ装置のラトル音評価方法。
【請求項9】
前記測定手段がマイクロフォンであり、前記応答信号が音圧レベルを表す信号である、請求項1?5のうちの何れか1項に記載したディスクブレーキ装置のラトル音評価方法。
【請求項10】
前記パッド支持部材を、前記固定台に対し、前記車体に固定するのと同様の姿勢に固定する、請求項1?9のうちの何れか1項に記載したディスクブレーキ装置のラトル音評価方法。
【請求項11】
パッド支持部材と、このパッド支持部材に対し軸方向に移動可能に支持されたパッドとを備えたディスクブレーキ装置を対象として、ラトル音に関する評価を行う為のディスクブレーキ装置のラトル音評価システムであって、
組立状態の前記ディスクブレーキ装置のうちの前記パッド支持部材を固定する為の、車体とは異なる評価試験用の固定台と、
この固定台に付与する加振力を計測可能又は設定可能な打撃具と、
前記固定台に付与される加振力に基づき発生する、前記パッド支持部材と前記パッドとの衝突に基づく応答信号を測定する為の測定手段と、
を備えるディスクブレーキ装置のラトル音評価システム。
【請求項12】
前記測定手段により測定される前記応答信号に基づき、前記ディスクブレーキ装置のラトル音に関する評価を行う解析装置を更に備える、請求項11に記載したディスクブレーキ装置のラトル音評価システム。

第3 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願発明1?12は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開昭61-24842号公報
引用文献2:特開2012-211676号公報

第4 当審の判断
1.引用文献1に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開昭61-24842号公報)の第2頁右上欄第11行?同頁右下欄第3行、第3頁左上欄第7行?右上欄第8行及び第3頁左下欄第9行?第18行並びにFIG.1の記載内容から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

[引用発明1]
「車両のブレーキ鳴きを低減させる摩擦パッドを得るために、ホイール及びタイヤが取付けられたデイスクブレーキ装置を含む、車両のハブに固定されている構造体と、慣性動力計と、マイクロホンを含む電子機器を備える、車両のブレーキ鳴きを測定する装置において、車両の作動をシミユレートし、ブレーキからの騒音データを得るステップを備えているデイスクブレーキ装置のブレーキ鳴き測定方法。」

また、引用文献1の上記摘示事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)も記載されているといえる。

[引用発明2]
「車両のブレーキ鳴きを低減させる摩擦パッドを得るためのデイスクブレーキ装置のブレーキ鳴きを測定する装置であって、
ホイール及びタイヤが取付けられたデイスクブレーキ装置を含む、車両のハブに固定されている構造体と、
マイクロホンを含む電子機器と、
を備えるデイスクブレーキ装置のブレーキ鳴きを測定する装置。」

なお、引用発明1及び2の認定にあたっては、引用文献1の第3頁左上欄第7行?右上欄第8行及び第3頁左下欄第9行?第18行並びにFIG.1の記載内容から、ホイール及びタイヤが取付けられたデイスクブレーキ装置を含む構造体は、車両のハブに固定されていることが看取できることを踏まえた。

2.対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1は、車両のブレーキ鳴きを低減させる摩擦パッドを得るためにブレーキからのブレーキ鳴き音(騒音データ)を得ているものであるから、引用発明1の「車両のブレーキ鳴きを測定する装置」が、得られた騒音データから車両のブレーキ鳴きを評価するステップを備えており、車両のブレーキ泣きを評価する装置といえることは明らかである。また、ブレーキ鳴きはラトル音と同様に、ブレーキに関連する騒音であるといえる。
したがって、引用発明1の「車両のブレーキ鳴きを測定する装置」は、本願発明1の「ラトル音評価装置」との対比において、「車両のブレーキに関連する騒音を評価する装置」であるという限度で一致する。
(イ)引用発明1の「ホイール及びタイヤが取付けられたデイスクブレーキ装置を含む、車両のハブに固定されている構造体」は、車両のブレーキ鳴きを評価する試験のために固定台といえる車両のハブに固定されているものであるので、引用発明1は、「車両のブレーキ鳴きを測定する装置」を固定し評価するための評価試験用の固定台を備えているといえる。また、引用発明1の「マイクロホンを含む電子機器」は、音を測定する手段であるといえるから、本願発明1の「測定手段」に相当する。
したがって、上記(ア)を踏まえれば、引用発明1の「車両のブレーキ鳴きを低減させる摩擦パッドを得るために、ホイール及びタイヤが取付けられた構造体と、慣性動力計と、マイクロホンを含む電子機器を備える、車両のブレーキ鳴きを測定する装置」は、本願発明1の「車体とは異なる評価試験用の固定台と、付与する加振力を計測可能又は設定可能な打撃具と、測定手段とを備えるラトル音評価装置」との対比において、「評価試験用の固定台と、測定手段とを備える車用のブレーキに関連する騒音を評価する装置」という限度で一致する。
(ウ)引用発明1の「車両の作動をシミユレートし、ブレーキからの騒音データを得るステップ」では、当該「騒音データ」は、測定手段であるマイクロホンを含む電子機器により測定されるものであるといえるし、また、車両のブレーキ鳴き(ブレーキに関連する騒音)に関するデイスクブレーキ装置の応答信号であるといえる。さらに、デイスクブレーキ装置が摩擦パッドを摩擦パッド支持部材に対し軸方向に移動可能に支持した組立状態であることは明らかである。
したがって、引用発明1の、「車両の作動をシミユレートし、ブレーキからの騒音データを得るステップ」は、本願発明1の「前記固定台に対し、パッドをパッド支持部材に対し軸方向に移動可能に支持して成る組立状態のディスクブレーキ装置のうち、前記パッド支持部材を固定した状態で、前記打撃具から前記固定台に付与される加振力に基づき発生する、前記パッド支持部材と前記パッドとの衝突に基づく応答信号を、前記測定手段により測定するステップ」との対比において、「パッドをパッド支持部材に対し軸方向に移動可能に支持して成る組立状態のディスクブレーキ装置のうち、ブレーキに関連する騒音を、前記測定手段により測定するステップ」の限度で一致する。
(エ)上記(ア)及び(ウ)を踏まえると、引用発明1の「車両のブレーキ鳴きを測定する装置」における、「デイスクブレーキ装置のブレーキ鳴き測定方法」は、本願発明1の「前記ラトル音評価装置において、前記測定手段により測定された前記応答信号と所定の閾値を比較して、前記ディスクブレーキ装置のラトル音に関する評価を行うステップ」との対比において、「ブレーキに関連する騒音を評価する装置において、前記測定手段により測定された前記応答信号に基づいて、前記ディスクブレーキ装置のブレーキに関連する騒音に関する評価を行うステップ」という限度で一致する。
(オ)上記(ア)?(エ)より、引用発明1の「デイスクブレーキ装置のブレーキ鳴き測定方法」は、本願発明1の「ディスクブレーキ装置のラトル音評価方法」との対比において、「ディスクブレーキ装置のブレーキに関連する騒音を評価する方法」の限度で一致する。
(カ)以上のとおりであるから、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
[一致点]
「評価試験用の固定台と、測定手段とを備える車両のブレーキに関連する騒音を評価する装置において、パッドをパッド支持部材に対し軸方向に移動可能に支持して成る組立状態のディスクブレーキ装置のうち、ブレーキに関連する騒音を、前記測定手段により測定するステップと、
前記ブレーキに関連する騒音を評価する装置において、前記測定手段により測定された前記応答信号に基づいて、前記ディスクブレーキ装置のブレーキに関連する騒音に関する評価を行うステップと、
を備えているディスクブレーキ装置のブレーキに関連する騒音を評価する方法。」

[相違点1]
車両のブレーキに関連する騒音を評価する装置について、本願発明1では、評価試験用の固定台が「車体とは異なる」ものであるのに対し、引用発明1では、評価試験用の固定台が、車体と異なるものとはいえない点。
[相違点2]
同じく、車両のブレーキに関連する騒音を評価する装置について、本願発明1は、「付与する加振力を測定可能又は設定可能な打撃具と」を備え、「加振力」が「前記打撃具から前記固定台に付与される」ものである「ラトル音評価装置」であるのに対し、引用発明1は、「車両のブレーキ鳴きを低減させる摩擦パッドを得るために、ホイール及びタイヤが取付けられた構造体と、慣性動力計と」を備える「車両のブレーキ鳴きを測定する装置」である点。
[相違点3]
ブレーキに関連する騒音を、測定手段により測定するステップについて、本願発明1は、「前記固定台に対し、パッドをパッド支持部材に対し軸方向に移動可能に支持して成る組立状態のディスクブレーキ装置のうち、前記パッド支持部材を固定した状態で、前記打撃具から前記固定台に付与される加振力に基づき発生する、前記パッド支持部材と前記パッドとの衝突に基づく応答信号を」測定するものであるのに対し、引用発明1は、「車両の作動をシミユレートし、ブレーキからの騒音データを得る」(騒音データとはブレーキ鳴きに関する騒音データ)ものである点。
[相違点4]
ディスクブレーキ装置のブレーキに関連する騒音に関する評価を行うステップについて、本願発明1は、評価の対象がラトル音に関する、すなわち、パッド支持部材とパッドとの衝突に基づく応答信号であり、評価の内容が、「前記測定手段により測定された前記応答信号と所定の閾値を比較して」「評価を行う」ものであるのに対し、引用発明1は、評価ステップの評価の対象が「ブレーキ鳴き」であり、評価の内容については特定されていない点。

イ 判断
事案に鑑み相違点2について検討する。
引用発明1のブレーキ鳴き評価方法について、引用文献1には、ブレーキに関連する騒音であるラトル音の評価方法に応用ないし適用できるとの記載はないし、示唆もされていない。
また、引用文献2には、ブレーキに関連する騒音としてラトル音が評価の対象であることの記載はあるものの(引用文献2の段落【0002】?【0005】、【0010】、【0029】及び【0031】を参照。)、その評価手段として、パッド支持部材を固定している懸架装置(固定台に相当する)と、付与する加振力を測定可能又は設定可能な打撃具とを備え、加振力を当該打撃具から、パッド支持部材を固定する懸架装置に付与する手段を採用することの記載はないし、示唆もされていない。
したがって、引用発明1において、相違点2に係る本願発明1の構成となすことは、引用文献1及び2に記載の事項に基いて当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1並びに引用文献1及び2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本願発明2?10について
本願発明2?10は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定構成を付加するものである。そして、本願発明1は上記(1)イに説示のとおり、引用発明1並びに引用文献1及び2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本願発明2?10も同様の理由により引用発明1並びに引用文献1及び2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本願発明11について
ア 対比
本願発明11と引用発明2とを対比する。
(ア)引用発明2の「摩擦パッド」及び「デイスクブレーキ装置」は、本願発明11の「パッド」及び「ディスクブレーキ装置」に相当する。
引用発明2は、「車両のブレーキ鳴きを低減させる摩擦パッドを得るためのデイスクブレーキ装置のブレーキ鳴きを測定する」ものであるから、引用発明2の「ブレーキ鳴きを測定する装置」が、測定されたブレーキ鳴きを評価する手段を備えており、デイスクブレーキ装置のブレーキ鳴きを評価する装置といえることは明らかである。
また、引用発明2の「デイスクブレーキ装置」が、摩擦パッドを支持するパッド支持部材と、このパッド支持部材に対し軸方向に移動可能に支持された摩擦パッドを備えることはディスクブレーキ装置の構造上明らかである。
さらに、ブレーキ鳴きはラトル音と同様に、ブレーキに関連する騒音であるといえる。
したがって、引用発明2の「車両のブレーキ鳴きを低減させる摩擦パッドを得るためのデイスクブレーキ装置のブレーキ鳴きを測定する装置」は、本願発明11の「パッド支持部材と、このパッド支持部材に対し軸方向に移動可能に支持されたパッドとを備えたディスクブレーキ装置を対象として、ラトル音に関する評価を行う為のディスクブレーキのラトル音評価システム」との対比において、「パッド支持部材と、このパッド支持部材に対し軸方向に移動可能に支持されたパッドとを備えたディスクブレーキ装置を対象として、ブレーキに関連する騒音を評価を行う為のディスクブレーキ装置のブレーキに関連する騒音を評価する装置」であるという限度で共通する。
(イ)引用発明2の「ホイール及びタイヤが取付けられたデイスクブレーキ装置を含む、車両のハブに固定されている構造体」においては、そのデイスクブレーキ装置(組立状態であることは明らかである)を構成するキヤリパ部材(パッド支持部材といえる)が、車両のブレーキ鳴きを評価するために車両のハブ(固定台といえる)に固定されているものであるので、引用発明2は、組立状態のデイスクブレーキ装置の摩擦パッド支持部材を固定し評価する為の評価試験用の固定台を備えているといえる。
(ウ)引用発明2の「マイクロホンを含む電子機器」は、ブレーキに関連する騒音信号であるブレーキ鳴き音を測定する測定手段であるといえるから、本願発明11の「前記固定台に付与される加振力に基づき発生する、前記パッド支持部材と前記パッドとの衝突に基づく応答信号を測定する測定手段」との対比において、「ブレーキに関連する騒音信号を測定する測定手段」の限度で一致する。
(ウ)以上のとおりであるので、本願発明11と引用発明2との一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「パッド支持部材と、このパッド支持部材に対し軸方向に移動可能に支持されたパッドとを備えたディスクブレーキ装置を対象として、ブレーキに関連する騒音を評価を行う為のディスクブレーキ装置のブレーキに関連する騒音を評価する装置であって、
組立状態のデイスクブレーキ装置の摩擦パッド支持部材を固定する為の評価試験用の固定台と、
ブレーキに関連する騒音信号を測定する測定手段と、
を備えるディスクブレーキ装置のブレーキに関連する騒音を評価する装置。」
[相違点A]
ディスクブレーキ装置のブレーキに関連する騒音を評価する装置のパッド支持部材を固定する為の評価試験用の固定台について、本願発明11では、「車体とは異なる」ものであるのに対し、引用発明2では、車体と異なるものとはいえない点。
[相違点B]
ディスクブレーキ装置のブレーキに関連する騒音を評価する装置に関し、本願発明11は、ブレーキに関連する騒音が「ラトル音」であり、「固定台に付与する加振力を計測可能又は設定可能な打撃具」を「備える」ものであるのに対し、引用発明2は、ブレーキに関連する騒音が、「ブレーキ鳴き」であり、打撃具に相当する構成は具備していない点。

イ 判断
事案に鑑み相違点Bについて検討する。
引用発明2のデイスクブレーキ装置のブレーキ鳴きを測定する装置について、引用文献1には、ブレーキに関連する騒音であるラトル音の評価方法に応用ないし適用できるとの記載はないし、示唆もされていない。
また、引用文献2には、ブレーキに関連する騒音としてラトル音が評価の対象であることの記載はあるものの(引用文献2の段落【0002】?【0005】、【0010】、【0029】及び【0031】を参照。)、その評価手段として、パッド支持部材を固定している懸架装置(固定台に相当する)と、付与する加振力を測定可能又は設定可能な打撃具とを備え、加振力を当該打撃具から、パッド支持部材を固定する懸架装置に付与する手段を採用することの記載はないし、示唆もされていない。
したがって、引用発明2において、相違点Bに係る本願発明11の構成となすことは、引用文献1及び2に記載の事項に基いて当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。
よって、相違点Aについて検討するまでもなく、本願発明11は、引用発明2並びに引用文献1及び2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本願発明12について
本願発明12は、本願発明11の発明特定事項を全て含み、さらに限定構成を付加するものである。そして、本願発明2は上記(3)イに説示のとおり、引用発明2並びに引用文献1及び2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本願発明12も同様の理由により引用発明2並びに引用文献1及び2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1?12は、引用発明1又は2並びに引用文献1及び2に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-08-05 
出願番号 特願2014-263901(P2014-263901)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 谷口 耕之助  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 内田 博之
尾崎 和寛
発明の名称 ディスクブレーキ装置のラトル音評価方法及びラトル音評価システム  
代理人 特許業務法人貴和特許事務所  

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