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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09F |
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管理番号 | 1353857 |
審判番号 | 不服2018-15500 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-22 |
確定日 | 2019-08-20 |
事件の表示 | 特願2013-212137号「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年4月20日出願公開、特開2015-75650号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年10月9日の出願であって、平成29年7月14日付けの拒絶理由通知に対し、同年9月19日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年2月5日付けの最後の拒絶理由通知に対し、同年4月16日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年8月22日付けで平成30年4月16日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ(発送日:同年8月28日)、これに対して、同年11月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成30年8月22日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要 1 平成30年8月22日付けの補正の却下の決定の概要は、以下のとおりである。 平成30年4月16日付けの補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるが、当該補正後の本願請求項1に係る発明は、下記の刊行物に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、独立特許要件を満たさないから、平成30年4月16日付けの手続補正は却下すべきものである。 記 特開2011-199042号公報(以下、「引用文献4」という。) 特開2009-117674号公報(以下、「引用文献2」という。) 特開2000-323865号公報(以下、「引用文献3」という。) なお、引用文献2及び3は、周知技術を示す文献として引用されている。 2 原査定(平成30年8月22日付け拒絶査定)の概要は、以下のとおりである。 本願請求項1に係る発明は、下記の刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 特開2012-212773号公報(以下、「引用文献1」という。) 特開2009-117674号公報(上記引用文献2) 特開2000-323865号公報(上記引用文献3) なお、引用文献2及び3は、周知技術を示す文献として引用されている。 第3 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年11月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 表示画面を有する表示部と、 前記表示部を囲む枠状部を有し、その枠状部の内周に沿って前記表示画面とは反対側に開口する溝状の嵌合溝が設けられたパネル部材と、 その端縁が前記嵌合溝に嵌合されて前記端縁の先端部が前記嵌合溝の底面に当接することで前記パネル部材に取り付けられるカバー部材と、を備え、 前記枠状部は、外側に傾斜するテーパ状をなし、 前記嵌合溝と前記端縁との間の外部に露出する隙間に接着剤が埋め込まれている、表示装置。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定において引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 ア 「【0019】 図1に示す携帯電話機2は、本開示の携帯端末装置およびその製造方法の一例である。この携帯電話機2には、第1の筐体4と第2の筐体6とが備えられ、筐体4、6の間にはたとえば、摺動機構や回転機構が備えられている。筐体4を固定側すなわち、固定筐体とすれば、筐体6は摺動機構により携帯電話機2の長手方向(縦方向)に摺動させることができ、既述の回転機構により横方向に回転させることができる。 【0020】 筐体6には上からタッチパネル8が設置されているとともに、その背面側にはLCDモジュール10(図2)などの部材が設置されている。LCDモジュール10は、画像などを表示する表示装置である。筐体6に被せられた枠部材12は、筐体6の側面を覆う周壁部14と、筐体6の上面の一部を覆うカバー部16、18と、タッチパネル8を露出させる窓部20とを備える。各カバー部16、18は周壁部14を幅方向に橋絡して周壁部14を補強するとともに、筐体6に固定される。カバー部16には集音してマイクロフォンに音を導く集音孔22が形成されている。また、カバー部18にはレシーバ(スピーカ)の音を放音する放音孔24が形成されている。」 イ 「【0022】 筐体6は、図2および図3に示すように、第一のケースとして可動フロントケース26と、第二のケースとして可動リアケース28とを備えている。可動フロントケース26と可動リアケース28はたとえば、PC(ポリカーボネート)、ABS樹脂などの合成樹脂で成形された成形体である。これら可動フロントケース26と可動リアケース28は係合されて既述の筐体6が構成される。可動フロントケース26には、LCDモジュール10の表示画面を露出させるための窓部29が形成されている。この窓部29は既述の窓部20の内側に設定される。 【0023】 可動フロントケース26にはガスケット30が設置される。このガスケット30で包囲された止水領域32の内部には既述のLCDモジュール10、LCDモジュールホルダ34(以下単に「ホルダ34」と称する。)、回路基板36などが設置される。」 ウ 「【0032】 可動フロントケース26には金属枠58がインサート成形されて補強されている。この可動フロントケース26には周壁部60と、ガスケット設置部62と、係合凹部64と、係合突部66と、当接部68とが一体成形によって形成されている。 【0033】 周壁部60は可動フロントケース26の周壁を構成する。ガスケット設置部62は、ガスケット30を設置する部分であり、ガスケット30と密着する。この実施の形態では、ガスケット設置部62に湾曲面部を備えている。 【0034】 可動リアケース28には、止水面部70と、係合突部72と、係合凹部74と、載置面部76とを備えている。止水面部70は金属枠58の上面と平行な平坦面であり、可動フロントケース26に設置されたガスケット30の先端部が当接される。係合突部72は既述の係合凹部64に嵌め込まれ、係合凹部74には可動フロントケース26の係合突部66が嵌め込まれる。載置面部76には当接部68が載置される。これにより、可動フロントケース26と可動リアケース28が係合される。 【0035】 ガスケット30には、接合面部78と、受力部80と、圧潰部82とを備えている。接合面部78はガスケット設置部62の断面形状に合致する断面形状を備えている。受力部80は、落下時などにLCDモジュール10およびホルダ34からの衝撃力を受け止める部分である。この受力部80は衝撃力を受け止める平坦面と、衝撃力を吸収できる十分な厚さWを備えている。圧潰部82は、接合面部78側の面部を放物面に形成して先端側の厚みが受力部80より薄く形成されている。可動フロントケース26と可動リアケース28との既述の係合により、圧潰部82は止水面70に当たって圧潰し、可動フロントケース26と可動リアケース28との間を止水する。これにより、既述の止水領域32が筐体内に形成される。 【0036】 可動リアケース28には背面には筐体4と係合するレール部84が設置されている。このレール部84には、接着テープ86によって背面カバー88が固定されている。この背面カバー88の係合突部90が可動リアケース28の係合凹部92に挿入されている。これにより背面カバー88と可動リアケース28とが固定されている。」 エ 「【図3】 」 オ 「【図4】 」 カ 「【図6】 」 キ 上記ア?ウの記載事項及び上記エ?カの図示内容を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「固定筐体である第1の筐体4と、摺動機構により長手方向(縦方向)に摺動させることができる第2の筐体6とを備えた携帯電話機2において、(上記ア【0019】) 前記第2の筐体6には、上からタッチパネル8が設置されているとともに、その背面側には画像などを表示するLCDモジュール10などの部材が設置されており、(上記ア【0020】) 前記第2の筐体6は、可動フロントケース26と可動リアケース28とを備えており、(上記イ【0022】) 前記可動フロントケース26にはガスケット30が設置され、前記ガスケット30で包囲された止水領域32の内部に前記LCDモジュール10が設置されて、前記LCDモジュール10の周囲は、前記可動フロントケース26により囲まれており、(上記イ【0023】、上記エ【図3】、上記オ【図4】) 前記可動フロントケース26には、係合凹部64と、係合突部66が形成されており、前記可動リアケース28は、係合突部72と、係合凹部74を備えており、前記係合突部72は前記係合凹部64に嵌め込まれ、前記係合凹部74には前記係合突部66が嵌め込まれることにより、前記可動フロントケース26と前記可動リアケース28が、前記可動フロントケース26の内周に沿って係合しており、 (上記ウ【0032】、上記ウ【0034】、上記エ【図3】、上記カ【図6】) 前記可動リアケース28の背面には前記第1の筐体4と係合するレール部84が設置されており、前記レール部84には、接着テープ86によって背面カバー88が固定されており、前記背面カバー88の係合突部90が前記可動リアケース28の係合凹部92に挿入され、これにより前記背面カバー88と前記可動リアケース28とが固定されており、 (上記ウ【0036】、上記カ【図6】) 前記係合凹部92は、前記可動フロントケース26の内周に沿って設けられており、前記LCDモジュール10が設置される側とは反対側に開口部を有し、前記開口部は、前記係合突部90が挿入されて嵌合するためのものである、(上記エ【図3】、上記カ【図6】) 携帯電話機2。(上記ア【0019】)」 2 引用文献4について 平成30年8月22日付けの補正の却下の決定において引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 ア 「【0011】 以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1?図4は、本発明に係る電子機器ユニットの一例を示す斜視図であり、図1は主要部材を組み付けたケース上の斜視図、図2はケース上を背面側から見た斜視図、図3は化粧パネルを取り付けて実際に施工する状態の電子機器ユニットの斜視図、図4は図3を後方から見た斜視図を示している。各図において、1はケース、2は化粧パネルであり、ここで示している電子機器ユニットは、玄関等の屋外に設置されて居住者を呼び出して通話するためインターホン機器を一例として示している。そのため、前面にはカメラ3、マイク部4、スピーカ部5、操作部6、液晶表示部7、呼出ボタン8等が設けられている。 【0012】 ケース1は、操作部6や液晶表示部7等を備えた前面側を構成するケース上1aと、ケース背部を構成するケース下1bとの2部材で構成され、双方を嵌合することで回路基板等を収容するための収容空間を内部に形成している。そして、液晶表示部7は、ケース上1aの略中央に配置され、この液晶表示部7に後述する液晶パネル10が組み付けられている。」 イ 「【0018】 これら各部材は、図5に示すように液晶パネル10、固定フレーム12、パッキン13、パネルカバー14の順にケース上1aの凹部16を中心に組み付けられる。具体的に、液晶パネル10は凹部16に収容され、4箇所ねじ止めされて組み付けられる。図7は、こうして液晶パネル10をネジ止めした状態を示している。 固定フレーム12は、左右夫々2箇所に設けられている爪片20をケース上1aの係止孔21に挿入して係止させる。この固定フレーム12は、液晶パネル10を覆い、液晶パネル10周囲と凹部16の隙間が埋められる。その上からパッキン13を配置し、パッキン13の上にパネルカバー14を配置してねじ止めする。 こうして液晶パネル10はケース上1aに組み付けられ、液晶パネル10の取り付けは完了となる。その後は、後述するようにケース下1bと嵌合して一体化することでケース1の組み立ては完了する。」 ウ 「【0019】 次に、ケース上1aとケース下1bの嵌合構造について説明する。図2に示すように、ケース上1aの裏面には、ケース1の側面を構成する枠部23に沿って帯状のリブ(以下、「上側リブ」とする)25が形成されている。この上側リブ25は、ケース下1bと嵌合したときにケース1内部に雨水の浸入を防止するよう、下方の一部を除き枠部23に沿うように周設されている。この上側リブ25は、ケース上1aとケース下1bとを嵌合した際に、ケース下1bの内底部に接触或いは近接して雨水の浸入を防ぐよう構成されている。 【0020】 一方、ケース下1bの内面には上側リブ25に対応する帯状のリブ(以下、「下側リブ」とする)26が形成されている。具体的に図8、図9に基づいて説明する。図8は、液晶パネル10を組み付けたケース上1aに、ケース下1bを嵌合した状態の断面説明図であり、液晶パネル10取付部の断面を示している。また、図9はこの断面図のA部を拡大した図を示している。 図9に示すように、上側リブ25は凹部16の背面上を通過するように設けられている。そして、ケース下1bには、上側リブ25をケース1の内側と外側の双方において対峙するように配置して2重に形成した下側リブ26(26a,26b)が設けられている。この下側リブ26も、上側リブ25と同様に下方の一部を除きケース下1b内面に周設されている。 尚、図2において、24はケース下1bをねじ止めするネジ止め部であり、嵌合されたケース上1aとケース下1bとは、ネジ止め部24でねじ止めされて嵌合状態が維持される。」 エ 「【0024】 上記実施形態では、屋外に設置するインターホン機器について説明したが、本発明の構造は、液晶パネル等の電子表示手段を備えた屋外に設置する電子機器ユニットに対して好適であるし、屋外でなくとも防水機能を必要とする浴室や厨房等において使用するモニタ機器等にも好適である。」 オ 「【図8】 」 カ 「【図9】 」 キ 上記ア?エの記載事項並びに上記オ及びカの図示内容を総合すると、引用文献4には、以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。 [刊行物発明] 「液晶パネル等の電子表示手段を備えた屋外に設置する電子機器ユニットにおいて、 (上記ア【0011】、上記エ【0024】) 前記電子機器ユニットは、操作部6や液晶表示部7等を備えた前面側を構成するケース上1aと、ケース背部を構成するケース下1bとの2部材で構成されたケース1を備えており、 (上記ア【0011】?【0012】、上記オ【図8】) 前記液晶表示部7は、前記ケース上1aの略中央に配置され、前記ケース上1aの凹部16に液晶パネル10が収容され、4箇所ねじ止めされて組み付けられており、(上記ア【0012】、上記イ【0018】) 前記ケース上1aと前記ケース下1bとは嵌合され、ネジ止め部24でねじ止めされて嵌合状態が維持されるものであり、 (上記ウ【0019】?【0020】) 前記ケース上1aの裏面には、前記ケース1の側面を構成する枠部23に沿って帯状の上側リブ25が形成されており、 (上記ウ【0019】、上記カ【図9】) 前記枠部23と前記上側リブ25により形成される開口部は、前記液晶パネル10が設けられる側とは反対側に開口しており、 (上記オ【図8】) 前記ケース下1bの内面には前記上側リブ25に対応する帯状の下側リブ26が形成されており、 (上記ウ【0020】、上記カ【図9】) 前記上側リブ25は、前記ケース下1bと嵌合したときに前記ケース1内部に雨水の浸入を防止するよう、下方の一部を除き前記枠部23に沿うように周設され、前記ケース下1bの内底部に接触或いは近接して雨水の浸入を防ぐよう構成されており、(上記ウ【0019】、上記カ【図9】) 前記下側リブ26は、前記上側リブ25を前記ケース1の内側と外側の双方において対峙するように配置して2重に形成され(26a、b)、下方の一部を除き前記ケース下1b内面に周設されており、 (上記ウ【0020】、上記カ【図9】) 前記枠部23は、外側に傾斜するテーパ状をなしており、 前記枠部23と前記上側リブ25により形成される開口部に前記下側リブ26bが嵌合した際、当該嵌合部において隙間が生じている、 (上記カ【図9】) 電子機器ユニット。(上記エ【0024】)」 第5 対比・判断 1 引用発明に基づく容易想到性(原査定の進歩性判断について) (1-1)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「画像などを表示するLCDモジュール10」は、本願発明の「表示画面を有する表示部」に相当する。 イ 引用発明の「第2の筐体6」の「可動フロントケース26」に「設置」された「ガスケット30で包囲された止水領域32の内部に前記LCDモジュール10が設置され」ており、「前記LCDモジュール10の周囲は、前記可動フロントケース26により囲まれて」いるから、引用発明の「第2の筐体6」の「可動フロントケース26」は、本願発明の「前記表示部を囲む枠状部」に相当する。 ウ 引用発明の「第2の筐体6」の「可動リアケース28」の「係合凹部92」の「開口部」は、「前記LCDモジュール10が設置される側とは反対側」にあり、「前記開口部」に「背面カバー88」の「係合突部90」が「挿入されて嵌合す」るから、引用発明の「可動リアケース28」の「係合凹部92」は、本願発明の「前記表示画面とは反対側に開口する溝状の嵌合溝」に相当する。 エ 引用発明では、「可動フロントケース26」と「可動リアケース28」は、「係合凹部64」と「係合突部72」、「係合突部66」と「係合凹部74」の「嵌め込」みにより、「可動フロントケース26の内周に沿って」「可動リアケース28」が「係合」しており、「可動リアケース28」の「係合凹部92」は、「可動フロントケース26の内周に沿って設けられて」いる。 そうすると、引用発明の、「可動フロントケース26と可動リアケース28とを備え」た「第2の筐体6」は、本願発明の「前記表示部を囲む枠状部を有し、その枠状部の内周に沿って前記表示画面とは反対側に開口する溝状の嵌合溝が設けられたパネル部材」に相当する。 オ 引用発明の「背面カバー88」は、「第2の筐体6」の「可動リアケース28」に「固定されて」いるから、本願発明の「前記パネル部材に取り付けられるカバー部材」に相当する。 また、引用発明の「背面カバー88の係合突部90」は、本願発明の「カバー部材」の「端縁」に相当し、この「背面カバー88の係合突部90」は、「第2の筐体6」の「可動リアケース28」の「係合凹部92」の「開口部」に「挿入されて嵌合す」る。 そうすると、本願発明と引用発明とは、「その端縁が前記嵌合溝に嵌合されることで前記パネル部材に取り付けられるカバー部材」という構成を有している点で共通する。 カ 引用発明の「携帯電話機2」は、「第2の筐体6」に「画像などを表示するLCDモジュール10」「が設置されて」いるから、本願発明の「表示装置」に相当する。 キ 上記ア?カより、本願発明と引用発明とは、 「表示画面を有する表示部と、 前記表示部を囲む枠状部を有し、その枠状部の内周に沿って前記表示画面とは反対側に開口する溝状の嵌合溝が設けられたパネル部材と、 その端縁が前記嵌合溝に嵌合されることで前記パネル部材に取り付けられるカバー部材と、を備える、 表示装置。」 である点で一致し、以下の相違点1?3で相違する。 [相違点1] 「パネル部材に取り付けられるカバー部材」の「端縁」について、本願発明では、「前記端縁の先端部が前記嵌合溝の底面に当接」しているのに対して、引用発明では、そのような構成を有しているか不明である点。 [相違点2] 「前記枠状部」について、本願発明では、「外側に傾斜するテーパ状をなし」ているのに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。 [相違点3] 本願発明では、「前記嵌合溝と前記端縁との間の外部に露出する隙間」が存在し、当該「隙間」に「接着剤が埋め込まれている」のに対して、引用発明では、そのような「隙間」が存在しているとはいえず、「接着剤が埋め込まれて」はいない点。 (1-2)判断 事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。 ケース部材の溝状の凹部にカバー部材の凸部を嵌合することにより、当該ケース部材を当該カバー部材で蓋をする際に、当該嵌合部に生じる隙間に接着剤を埋め込んで、当該嵌合部を通じて内部に水が浸入しないようにすることは、例えば、引用文献2の段落【0008】?【0009】、【図1】、引用文献3の段落【0013】?【0016】、【図4】に記載されているように周知技術である。 (上記引用文献2については、段落【0008】の「ケース1の開口部11の周囲部には開口部11に沿う溝状の凹部12が形成されている。」、「開口部11を塞ぐ蓋体2には、上記溝状の凹部12に嵌合する凸部21が蓋体2の周囲に沿って凹部12に対向して設けられている」との記載、段落【0009】の「上記凹部12の幅方向(図の左右方向)の中心は、上記凸部21の幅方向中心に対してオフセットされており、ケース1の凹部12に蓋体2の凸部21を嵌合させたときに、図1(b)に示すようにケース1の内部側(図の左側)に幅方向の隙間4が形成されるように構成されている。」、「防水性が要求されるときは、」「該隙間4に図示省略している接着剤を充填または塗布することにより防水性が確保される。」との記載を参照。 上記引用文献3については、段落【0014】の「ハウジング4に設けた接着溝2の全周に接着剤を充填し、カバー3を接着溝2に嵌合させ、接着剤を硬化し、電子回路ケースが完成する。」との記載、段落【0015】の「カバー3の接着は、電子回路ケース内部に水等が進入しないように全周を確実に接着する必要がある。このため、接着剤の塗布は全周過不足なく行うことが望ましい」との記載を参照。) しかしながら、引用文献1の【図6】を見ると(上記「第4」の「1」の「カ」を参照)、「第2の筐体6」の「可動フロントケース26」側では、「ガスケット30」と止水面70により「止水領域32」が形成されているのに対して、「可動リアケース28」側にはそのような止水構造は何ら設けられておらず、「係合凹部92」の部位(「開口部」周辺)に防水性が要求されているとは認められない。 また、引用発明では、「背面カバー88の係合突部90」が「可動リアケース28の係合凹部92」に「挿入」される箇所において、隙間が生じているとはいえないから(上記「第4」の「1」の「カ」の図示内容(【図6】)も参照)、当該挿入箇所に接着剤を埋め込むことはそもそもできないというべきである。 さらに、引用発明では、「背面カバー88」は、「接着テープ86」によって「レール部84」に「固定」されており、「背面カバー88の係合突部90」が「可動リアケース28の係合凹部92」に「挿入」される箇所において、さらに接着剤を用いて固定しようとする動機は見いだせない。 そうすると、上記周知技術を引用発明に適用するには困難性があり、上記相違点3に係る本願発明の構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえない。 したがって、本願発明は、上記相違点1及び2を検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 刊行物発明に基づく容易想到性(独立特許要件の判断について) (2-1)対比 本願発明と刊行物発明とを対比する。 ア 刊行物発明の「液晶パネル10」は、本願発明の「表示画面」に相当し、刊行物発明の「液晶表示部7」は、本願発明の「表示画面を有する表示部」に相当する。 イ 刊行物発明の「前記ケース1の側面を構成する枠部23」は、本願発明の「前記表示部を囲む枠状部」に相当する。 また、刊行物発明では、「前記ケース上1aと前記ケース下1bとは嵌合され、ネジ止め部24でねじ止めされて嵌合状態が維持される」から、刊行物発明の「ケース上1a」及び「ケース上1b」は、それぞれ本願発明の「パネル部材」及び「前記パネル部材に取り付けられるカバー部材」に相当する。 ウ 刊行物発明の「帯状の上側リブ25」は、「前記ケース上1aの裏面」に「前記ケース1の側面を構成する枠部23に沿って」「形成されており」、「前記ケース下1bと嵌合したときに前記ケース1内部に雨水の浸入を防止するよう、下方の一部を除き前記枠部23に沿うように周設され」ており、「前記枠部23と前記上側リブ25により形成される開口部は、前記液晶パネル10が設けられる側とは反対側に開口して」いるから、刊行物発明の「前記枠部23と前記上側リブ25により形成される開口部」は、本願発明の「枠状部の内周に沿って前記表示画面とは反対側に開口する溝状の嵌合溝」に相当する。 エ 刊行物発明の「帯状の下側リブ26」は、「前記ケース下1bの内面」に「前記上側リブ25に対応」して「形成されており」、「前記上側リブ25を前記ケース1の内側と外側の双方において対峙するように配置して2重に形成され(26a、b)、下方の一部を除き前記ケース下1b内面に周設され」ており、「前記枠部23と前記上側リブ25により形成される開口部に前記下側リブ26bが嵌合す」るから、刊行物発明の「下側リブ26b」は、本願発明の「嵌合溝に嵌合」される「カバー部材」の「端縁」に相当する。 オ 刊行物発明の「前記枠部23」は「外側に傾斜するテーパ状をなし」ている。 カ 刊行物発明では、「前記枠部25と前記上側リブ25により形成される開口部に前記下側リブ26bが嵌合した際、当該嵌合部において隙間が生じている」。 キ 刊行物発明の「液晶パネル等の電子表示手段を備えた屋外に設置する電子機器ユニット」は、本願発明の「表示装置」に相当する。 ク 上記ア?キより、本願発明と刊行物発明とは、 「表示画面を有する表示部と、 前記表示部を囲む枠状部を有し、その枠状部の内周に沿って前記表示画面とは反対側に開口する溝状の嵌合溝が設けられたパネル部材と、 その端縁が前記嵌合溝に嵌合されて前記パネル部材に取り付けられるカバー部材と、を備え、 前記枠状部は、外側に傾斜するテーパ状をなし、 前記嵌合溝と前記端縁との間に隙間を有する、表示装置。」 である点で一致し、以下の相違点A及びBで相違する。 [相違点A] 「カバー部材」の「端縁」が「嵌合溝に嵌合され」る際、本願発明では、「前記端縁の先端部が前記嵌合溝の底面に当接」しているのに対して、刊行物発明では、下側リブ26bは、ケース上1aの底面に当接していない点。 [相違点B] 「前記嵌合溝と前記端縁との間」の「隙間」について、本願発明では、「外部に露出する」「隙間」であり、その「隙間に接着剤が埋め込まれている」のに対して、刊行物発明では、「隙間」は「外部に露出」しているか不明であり、その「隙間に接着剤が埋め込まれて」いない点。 (2-2)判断 事案に鑑みて、上記相違点Bについて、先に検討する。 ケース部材の溝状の凹部にカバー部材の凸部を嵌合することにより、当該ケース部材を当該カバー部材で蓋をする際に、当該嵌合部に生じる隙間に接着剤を埋め込んで、当該嵌合部を通じて内部に水が浸入しないようにすることは、例えば、引用文献2の段落【0008】?【0009】、【図1】、引用文献3の段落【0013】?【0016】、【図4】に記載されているように周知技術である。 しかしながら、刊行物発明において、「前記枠部23と前記上側リブ25により形成される開口部に前記下側リブ26bが嵌合した際、当該嵌合部において」生じる「隙間」に接着剤を埋め込むことは、その周囲の構造、配置から考えて困難を伴うものである(上記「第4」の「2」の「カ」【図9】の図示内容を参照)。 そうすると、上記周知技術を刊行物発明に適用するには困難性があり、上記相違点Bに係る本願発明の構成を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものであるとはいえない。 したがって、本願発明は、上記相違点Aを検討するまでもなく、当業者であっても、刊行物発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないから、独立特許要件を満たすものである。 第6 原査定について 上記「第5」の「1」で述べたとおり、本願発明は、当業者であっても、引用発明及び上記周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-07-31 |
出願番号 | 特願2013-212137(P2013-212137) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G09F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 小野 博之 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
濱野 隆 梶田 真也 |
発明の名称 | 表示装置 |
代理人 | 特許業務法人暁合同特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人暁合同特許事務所 |