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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E02F
管理番号 1353938
審判番号 不服2018-10857  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-08 
確定日 2019-08-09 
事件の表示 特願2016-215825「ショベルの状態表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年3月23日出願公開、特開2017-57712〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、2013年(平成25年)11月26日(優先権主張 平成25年1月30日 平成25年2月26日)を国際出願日とする出願である特願2014-559508号の一部を、平成28年11月4日に新たな出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成28年11月 4日 :上申書の提出
平成29年 9月 6日付け:拒絶理由通知
平成29年11月13日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年 4月23日付け:拒絶査定
平成30年 8月 8日 :審判請求と同時に手続補正書の提出

第2 平成30年8月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年8月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正(以下、「補正事項」という。下線は補正箇所を示したものであり、請求人が付したもの。)された。
「表示装置を備えるショベルの状態表示装置であって、
前記表示装置は、
複数のショベルの各々の機体識別情報、及び前記ショベルの各々の現在位置を受信し、
前記複数のショベルの少なくとも1つのショベルの現在位置を包含する地図を表示し、
表示された地図上の前記ショベルの現在位置に対応する箇所に、ショベルの部位または部品に係わる異常の有無の判定結果に基づく異常の重要度であって、正常の段階、及び複数の異常の段階で表される異常の重要度を識別可能な態様で識別符号を表示し、
前記表示装置に表示された地図と合わせて、ショベル情報表示領域に複数のショベルの各々の機体番号、異常の重要度を含む機体情報が表示されるショベルの状態表示装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年11月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「表示装置を備えるショベルの状態表示装置であって、
前記表示装置は、
複数のショベルの各々の機体識別情報、及び前記ショベルの各々の現在位置を受信し、
前記複数のショベルの少なくとも1つのショベルの現在位置を包含する地図を表示し、
表示された地図上の前記ショベルの現在位置に対応する箇所に、ショベルの部位または部品に係わる異常の有無の判定結果に基づく異常の重要度であって、正常の段階、及び複数の異常の段階で表される異常の重要度を識別可能な態様で識別符号を表示するショベルの状態表示装置。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「表示装置」について、「表示装置に表示された地図と合わせて、ショベル情報表示領域に複数のショベルの各々の機体番号、異常の重要度を含む機体情報が表示される」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献である特開2006-92017号公報(平成18年4月6日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審にて付与。)。

a 【0019】
「[第一実施形態]
図1には、本発明の第一実施形態の移動機械の管理システム100の概略構成を示す模式図が示されている。この管理システム100は、建設機械(移動機械)1および建設機械1のメンテナンスを行うサービスカー(移動機械)2、GPS(Global Positioning System)衛星3、通信衛星4、衛星地球局5、ネットワーク管制局6、ネットワーク(通信回線)7、およびサーバ8を備え、建設機械1およびサービスカー2から出力される建設機械1およびサービスカー2の現在位置情報、稼働情報等をサーバ8で取得し、サーバ8で管理下にある建設機械1およびサービスカー2のこれらの情報を管理して、必要に応じて顧客に情報提供するシステムである。」

b 段落【0020】
「建設機械1は、道路等の建設現場において、掘削、地均し等の作業を行う機械であり、ブルドーザ、油圧ショベル等が該当する。
この建設機械1は、図2に示すように、駆動部分を電子制御する電子制御コントローラ11と、この電子制御コントローラ11に接続される通信コントローラ12と、この通信コントローラ12に接続されるGPSセンサ13および通信端末14と、GPSセンサ13に接続されるGPSアンテナ15と、通信端末14に接続される衛星通信アンテナ16とを備えている。」

c 段落【0040】
「ステップS16において、サーバ8は、サービスカー検索手段85または絞り込み手段852によって検索された結果、検索条件に合致するサービスカー2があったかどうかを判断する。合致するサービスカー2があった場合には、ステップS18において、サーバ8の表示手段86に、検索されたサービスカー2の端末IDや現在位置、詳細情報などを表示する。検索条件に該当するサービスカー2が複数ある場合には、表示手段86には複数のサービスカー2の情報が表示される。なお、検索条件に該当するサービスカー2が複数ある場合には、対象の建設機械1に最も近い位置にあるサービスカー2の情報を表示手段86に表示するようにしてもよい。また、表示手段86に表示される形態としては、図9に示されるように、地図上に対象の建設機械1を中心に所定半径内のサービスカー2または所定半径内でかつ詳細条件に合致するサービスカー2の現在位置を表示するようにしてもよい。また、表示手段86に表示される他の形態としては、検索条件に合致するサービスカー2の現在位置の住所、詳細情報などをテーブルの形で表示してもよい。
なお、ステップS14において、条件取得手段851で詳細条件が取得されない場合には、絞り込み検索は行われず、ステップS16に進む。」

d 段落【0044】
「サーバ8が、ステップS32において、サービスカー2から送信されたサービスカー情報を取得すると、ステップS33において、建機検索手段88が、サービスカー位置情報蓄積手段825からのサービスカー位置情報および建機位置情報蓄積手段823からの建機位置情報に基づいて、サービスカー2の現在位置から所定範囲内の建設機械1を検索する。ここで、検索の所定範囲内は、サービスカー検索手段85で設定された所定半径が初期設定として設定され、再検索手段853で所定半径を拡大した場合には、拡大した所定半径(所定範囲)が建機検索手段88の所定半径として設定されることが望ましい。」

e 段落【0045】
「サーバ8は、建機検索手段88で検索された建設機械1の現在位置、機械番号などの建機情報をサービスカー2に送信する。これにより、ステップS34において、サービスカー2の画像表示装置27には、図11に示されるように、サービスカー2を中心に所定半径内にある建設機械1が表示される。ここで、メンテナンスが必要な対象の建設機械1は、他の建設機械1とは異なる表示(例えば建設機械1のアイコンの色が異なるなど)とされることが好ましい。これにより、サービスカー2の搭乗者は、建設機械1の現在位置を把握する。
また、サーバ8は、建機詳細情報蓄積手段824から対象の建設機械1の詳細情報をサービスカー2に送信可能にされている。したがって、画像表示装置27上で対象の建設機械1を選択するなどの操作を行うと、サーバ8から対象の建設機械1の詳細情報が送信され、図11に示されるように、対象の建設機械1の故障箇所、稼働状態などが画像表示装置27に表示される。」

f 段落【0046】
「なお、図8のステップS20において、サービスカー2にメンテナンス要請を表示するときに、サーバ8がサービスカー2に建設機械1の現在位置情報および詳細情報を同時に送信することによって、メンテナンス要請と同時に建設機械1の現在位置、詳細情報およびサービスカー2の現在位置を画像表示装置27に表示するように構成してもよい。この場合に、サービスカー2の現在位置から所定範囲内にある全部の建設機械1を表示するものに限らず、サービスカー2の現在位置と、少なくとも対象の建設機械1の現在位置を表示する構成であってもよい。」

g 段落【0047】
「このような第一実施形態によれば、次のような効果が得られる。
(1) サービスカー検索手段85が設けられているので、対象となる建設機械1を中心として所定範囲内に位置するサービスカー2を容易に検索できる。したがって、従来とは異なり、建設機械の近くに位置するサービスカーを地図上で探す必要がなく、サービスカー2を迅速に建設機械1に出向かせることができ、建設機械1およびサービスカー2をより効率的に管理できる。」

h 段落【0050】
「 (4) 建設機械1およびサービスカー2の現在位置をGPS衛星3を用いて検出するので、現在位置を正確かつ簡単に把握できる。また、所定時間毎に建設機械1およびサービスカー2の現在位置を自動的に更新するので、現在位置情報の信頼性をより向上させることができる。さらに、所有者やサービスマンが現在位置を更新する手間も不要となるので、建設機械1およびサービスカー2を簡単に管理できる。」

i 段落【0051】
「 (5) 建機検索手段88が、検索されたサービスカー2の現在位置を基準として所定範囲内の建設機械1を検索するので、サービスカー2では、対象の建設機械1の現在位置を直ちに認識できる。これにより、サービスカー2が建設機械1の現在位置に到着するために最短の経路を即座に判断でき、迅速なサービスが行える。また、画像表示装置27に対象の建設機械1の詳細情報を表示できるので、サービスカー2が対象の建設機械1の現在位置に向かう前に建設機械1の故障状態などを確認できる。したがって、サービスカー2が対象の建設機械1の現在位置に到着するまでに部品や装置の準備などを行うことができ、より迅速なサービスが行える。」

j 図1

k 図3

l 図4

m 図9

n 図11


図11から、建設機械1の各々の建機情報が表示されていること、及び、建設機械の現在位置に対応する箇所にアイコンが表示されていることが読み取れる。また、地図と合わせて、建設機械1の情報を表示する領域(当審にて点線の角丸四角枠を付与)に複数の建設機械1の各々の機械番号やエラー情報等が表示されていることも読み取れる。
また、段落【0040】では図9を「地図」としている(上記c参照)ことからしても、図9と背景が同じ図11も当然地図である。

(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が開示されているものと認められる。
a 上記記載事項(ア)a?c及びeには、画像表示装置27を備える複数建設機械(油圧ショベル等)1の管理システムが開示されている。

b 上記記載事項(ア)d?f及びnには、前記画像表示装置27は、複数の建設機械1の各々の建機情報、及び建設機械1の各々の現在位置を受信し、前記複数の建設機械1の現在位置を含む地図を表示し、表示された地図上の前記建設機械1の現在位置に対応する箇所に、メンテナンスが必要な対象の建設機械1を他の建設機械1とは異なる表示(例えば、アイコンの色が異なるなど)で表示することが開示されている。

c 上記記載事項(ア)e、f及びnには、前記画像表示装置27に表示された地図と合わせて、建設機械1の情報を表示する領域に複数の建設機械1の各々の機械番号、エラー情報、故障箇所、故障状態、稼働状態等の詳細情報が表示されることが開示されている。

(ウ)上記(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「画像表示装置27を備える複数の建設機械(油圧ショベル等)1の管理システムであって、
前記画像表示装置27は、
複数の建設機械1の各々の建機情報、及び建設機械1の各々の現在位置を受信し、
前記複数の建設機械1の現在位置を含む地図を表示し、
表示された地図上の前記建設機械1の現在位置に対応する箇所に、メンテナンスが必要な対象の建設機械1を他の建設機械1とは異なる表示(例えば、アイコンの色が異なるなど)で表示し、
前記画像表示装置27に表示された地図と合わせて、建設機械1の情報を表示する領域に複数の建設機械1の各々の機械番号、エラー情報、故障箇所、故障状態、稼働状態等の詳細情報が表示される建設機械(油圧ショベル等)1の管理システム。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「画像表示装置27」、「複数の建設機械(油圧ショベル等)1」、「管理システム」、「建機情報」、「前記複数の建設機械1の現在位置を含む地図」、「メンテナンスが必要」、「建設機械1の情報を表示する領域」、「機械番号」、「詳細情報」は、それぞれ、本件補正発明の「表示装置」、「ショベル」、「状態表示装置」、「機体識別情報」、「前記複数のショベルの少なくとも1つのショベルの現在位置を包含する地図」、「異常」、「ショベル情報表示領域」、「機体番号」、「機体情報」に相当する。

(イ)引用発明の「メンテナンスが必要な対象の建設機械1」のエラーとしては、例えば、電気系エラーや弁ショート等が該当する(引用文献1の図11参照)から、「部位または部品に係わる」ものと認められ、また、メンテナンスが必要かどうかが判定結果に基づくものであることは自明であるから、上記(ア)で説示した相当関係を踏まえ、引用発明の「メンテナンスが必要な対象の建設機械1」の状態は、本件補正発明の「ショベルの部位または部品に係わる異常の有無の判定結果に基づく異常」に相当する。

(ウ)引用発明の「メンテナンスが必要な対象の建設機械1を他の建設機械1とは異なる表示(例えば、アイコンの色が異なるなど)で表示」する構成は、異常のみならず正常の段階についても表示されていると認められるから、本件補正発明の「正常の段階、及び複数の異常の段階で表される異常の重要度を識別可能な態様で識別符号を表示」する構成と、「正常の段階、及び」「異常」「を識別可能な態様で識別符号を表示」する限度で一致する。

(エ)引用発明の「複数の建設機械1の各々の機械番号、エラー情報、故障箇所、故障状態、稼働状態等の詳細情報が表示される」構成は、本件補正発明の「複数のショベルの各々の機体番号、異常の重要度を含む機体情報が表示される」構成と、「複数のショベルの各々の機体番号、異常」に関する情報「を含む機体情報が表示される」構成の限度で一致する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「表示装置を備えるショベルの状態表示装置であって、
前記表示装置は、
複数のショベルの各々の機体識別情報、及び前記ショベルの各々の現在位置を受信し、
前記複数のショベルの少なくとも1つのショベルの現在位置を包含する地図を表示し、
表示された地図上の前記ショベルの現在位置に対応する箇所に、ショベルの部位または部品に係わる異常の有無の判定結果に基づく異常であって、正常の段階、及び異常を識別可能な態様で識別符号を表示し、
前記表示装置に表示された地図と合わせて、ショベル情報表示領域にショベルの各々の異常に関する情報を含む機体情報が表示されるショベルの状態表示装置。」

【相違点1】
本件補正発明の表示装置は、「ショベルの部位または部品に係わる異常の有無の判定結果に基づく異常の重要度であって、正常の段階、及び複数の異常の段階で表される異常の重要度を識別可能な態様で識別符号を表示」するのに対し、引用発明の表示装置はショベルの部位または部品に係わる異常の有無の判定結果に基づく異常であって、正常の段階、及び異常を識別可能な態様で識別符号を表示するものの、異常の重要度を表示するものではない点。

【相違点2】
本件補正発明の表示装置のショベル情報表示領域に表示される機体情報が「異常の重要度を含む」のに対して、引用発明のショベル情報表示領域に表示される機体情報は、異常に関する情報を含むものの、異常の重要度を含まない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
異常の重要度を識別可能な態様で識別符号を表示することは、原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用された、本願の優先日前に頒布された特開2012-62707号公報(以下、「引用文献3」という。段落【0046】等参照)及び同特開2007-46241号公報(以下、「引用文献4」という。段落【0043】等参照)に記載されるように周知技術である。
また、当該周知技術については、新たに引用する特開2009-107814号公報(以下、「引用文献8」という。段落【0029】-【0035】、【0050】-【0064】、図5、11等参照)、特開平7-225609号公報(以下、「引用文献9」という。段落【0039】、図6、9等参照)、特開2006-59236号公報(以下、「引用文献10」という。段落【0036】、図3、4等参照)及び特開2013-8098号公報(以下、「引用文献11」という。段落【0070】-【0072】、図17等参照)の各々にも示されている。
引用文献1の段落【0051】には、「画像表示装置27に対象の建設機械1の詳細情報を表示できるので、サービスカー2が対象の建設機械1の現在位置に向かう前に建設機械1の故障状態などを確認できる。」(上記(2)ア(ア)i参照)と、建設機械1の現場にいない管理者等が、建設機械1の現場にいるオペレータが持っているのと同様に詳細な情報を表示させることも示唆されており、異常かどうか自体以外の詳細な情報も確認しようとする動機付けが認められる。
一般に、一律に異常とはいっても、どの程度の異常なのか、とりわけ、危険な異常であるのかどうか等は、当事者が考慮する事項であり、どの程度の異常なのかを当事者が詳細情報から判断できるのであれば、加えて重要度なる情報は不要であるし、端的な情報をまずは表示させたいのであれば重要度が表示されるようにするであろうから、重要度を含ませるかどうかは個別の機体の属性や全体の管理状況等に応じて適宜選択し得る。
そして、異常の重要度を識別可能な態様で識別符号を表示することが上述のとおり周知である以上、引用発明に当該周知技術を適用し、異常の重要度をも表示させるよう構成することは、当業者が容易になし得たことである。
その際に、引用発明の画像表示装置27では、上記(3)ア(ウ)のとおり、正常の段階も表示されており、上記適用に際して、正常の段階をあえて表示しないようにする必要性はなく、「正常の段階、及び複数の異常の段階で表される異常の重要度を識別可能な態様で識別符号を表示する」よう構成することは、当業者にとっての格別な困難性は見いだせない。なお、正常の段階、及び複数の異常の段階で表される異常の重要度を識別可能な態様で識別符号を表示することは周知でもある(例えば、上記引用文献8-11参照)。

なお、審判請求人は、審判請求書において、「引用文献1では、画面を確認する対象者は複数台のショベルを管理する管理者であり、サービスカー2及びサーバ8に表示されることを前提としています。
一方、引用文献3及び4は、上述の如く、画面を確認する対象者はショベルのオペレータであり、このため、油圧ショベルの運転室に設けられたモニタに表示されることを前提としています。
このように、引用文献1と引用文献3、4とは用途、作用が明らかに異なります。・・・したがって、引用文献1に引用文献3、4を組み合わせる動機付けがは明らかにありません。・・・更に、仮に引用文献1と引用文献3、4とを組み合わせたとしても、引用文献3、4の表示内容が引用文献1の油圧ショベル(建設機械1)に備えられた画像表示装置17に表示される構成が形成されるだけであり、引用文献1中の「サービスカー2の画像表示装置27」及び「サーバ8の表示手段86」に表示されることへは至りません。 」と主張している(審判請求書第8頁下から6行目?第9頁第13行)。
しかしながら、引用発明に接した当業者が上記周知技術を適用する動機付けが上述のように認められるし、引用文献1と引用文献3-4のいずれも、異常かどうか自体のみならず、異常に関する詳細な情報を当事者に表示させる点で共通しており、上記当事者が管理者等であるかオペレータであるかの相違が、上記適用を阻害するものとは認められない。また、引用発明は画像表示装置27に地図と合わせて異常が発生している建設機械1の詳細情報を表示させることにより、建設機械1の現在位置を正確かつ簡単に認識するとともに、建設機械1の現場にいない当事者であっても事前に建設機械1の故障状態を確認できるというものであるから、上記適用にあたり、油圧ショベル(建設機械1)に備えられた画像表示装置17のみに異常の重要度を表示させるのでは意味がなく、異常を管理しているサービスカー2の画像表示装置27やサーバ8の表示手段86に異常の重要度を表示させることになるのは当然であるから、上記請求の主張には理由がない。

イ 相違点2について
上記のとおり、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、異常の重要度を表示させるよう構成することは容易であるから、その際にショベル情報表示領域にも異常の重要度の情報を含ませるよう構成することも、格別の困難性は認められない。

なお、特許請求の範囲の記載からは読み取れないが、地図に隣接して、ショベル情報表示領域を1箇所にまとめ、そこに複数のショベルに関する機体情報を例えば表として表示させることは、次の理由により格別でない。引用発明の建設機械1に関する情報はデータベースとして保有されていること(引用文献1の図5等参照)、引用発明の画像表示装置27は、複数の建設機械1に関する現在位置、機械番号などの建機情報や詳細情報を表示していること(上記(2)ア(ア)i参照)、異常に関する情報を表として表示することも周知であることから(例えば、原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用された、本願の優先日前に頒布された特開2011-220104号公報(以下、「引用文献2」という。図34等参照)及び上記引用文献11等参照。)、地図に隣接して、ショベル情報表示領域を1箇所にまとめ、そこに複数のショベルに関する機体情報を例えば表として表示させることにも格別の困難性は認められない。

ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記各周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び上記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年8月8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年11月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-8に係る発明は、本願の出願日前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2-7に示された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、などというものである。

引用文献1.特開2006-92017号公報
引用文献2.特開2011-220104号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2012-62707号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4.特開2007-46241号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5.特開2007-278807号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6.特開2005-10091号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7.特開2010-85199号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献等
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・検討
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「表示装置に表示された地図と合わせて、ショベル情報表示領域に複数のショベルの各々の機体番号、異常の重要度を含む機体情報が表示される」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-06-07 
結審通知日 2019-06-11 
審決日 2019-06-24 
出願番号 特願2016-215825(P2016-215825)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E02F)
P 1 8・ 121- Z (E02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 耕作  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 齋藤 健児
平岩 正一
発明の名称 ショベルの状態表示装置  
代理人 小島 誠  

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