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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60K |
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管理番号 | 1353990 |
審判番号 | 不服2018-2389 |
総通号数 | 237 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-02-20 |
確定日 | 2019-08-08 |
事件の表示 | 特願2014-188806「シフト装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年4月25日出願公開、特開2016-60326〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成26年9月17日の出願であって、平成29年9月13日付けで拒絶理由が通知され、同年11月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月21日付けで拒絶査定され(発送日:同年11月28日)、これに対し、平成30年2月20日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、その後、当審において、平成31年3月7日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年4月15日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 そして、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成31年4月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 移動可能にされるシフト体と、 前記シフト体が複数方向に移動されて第1シフト位置から第2シフト位置に配置される第1移動路と、 前記シフト体のシフト位置が自動的に変更される際に前記シフト体が単一方向に移動されることで前記シフト体が第2シフト位置から第1シフト位置に復帰されて停止される第2移動路と、 を備えたシフト装置。」 第2 拒絶の理由 平成31年3月7日付けで当審が通知した拒絶の理由4は、次のとおりのものである。 本願の請求項1ないし4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された特開2010-228643号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第3 引用文献 1 引用文献1 当審が通知した拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2010-228643号公報(以下「引用文献1」という。)には、「前後進切換操作装置」に関して、図面(特に、図11参照。)とともに、次の事項が記載されている。下線は当審が付した。 (1)「【0001】 本発明は、相対的に移動する操作部及び基部から構成され、車両等の前進モード、中立モード及び後進モードを切り換える前後進切換操作装置に関する。」 (2)「【0021】 本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、車両等における中立モードから後進モードへの切換操作を、直線状のシフトパターンを用いた切換操作から、二次元的なシフトパターンを用いた切換操作へ変更することが可能な前後進切換操作装置を提供することを目的としている。」 (3)「【0083】 次に、本発明に係る前後進切換操作装置をコラムスイッチタイプの操作レバー148に適用した実施形態について図11を用いて説明する。図11に示す実施形態では、R-N-D-2-Lのシフトパターンを備えた車両の前後進切換操作装置212において、後進モードの切換位置(図11に示す実施形態では、Rと記載。)と中立モードの切換位置(図11に示す実施形態では、Nと記載。)との間に、出没可能な経路変更部材270を配置した実施形態を示してある。 【0084】 なお、経路変更部材270は、経路変更用操作部260の摺動動作と連動している。また、図11に示す実施形態では、R-N-D-2-Lのシフトパターンを用いた例を示してあるが、R-N-Dのみのシフトパターンにも適用することが可能である。なお、シフトパターンとして記載されている記号の「R」は後進モードの切換位置を表し、「N」は中立モードの切換位置を表し、「D」は3速以上の自動変速を許可する前進モードの切換位置を表し、「2」は2速までの自動変速を許可する前進モードの切換位置を表し、「L」は1速保持の前進モードの切換位置を表す。 【0085】 例えば、前進の走行が主となる運転状況においては、運転者は経路変更用操作部260を把持して、経路変更用操作部260を図11に示す左側に摺動させておく。そうすると、経路変更部材270が操作レバー148の直線経路における中立後進区間上に進出した状態となり、操作レバー148の直線経路の使用が阻害された状態となる。 【0086】 これにより、前進モードから、簡単に後進モードに入ってしまうことを防止することができる。なお、この状態であっても、操作レバー148の二次元経路の使用は許可されているので、運転者は操作レバー148の先端に配されている操作部120を操作して、前後進切換操作装置212のコの字形の二次元経路を経由して、後進モードの切換位置に移動させることができる。 【0087】 また、車庫入れや、雪道、泥濘地における脱出等の運転状態において、前進モードと後進モードとを頻繁に切り換える操作が要求される場合には、運転者は経路変更用操作部260を把持して、経路変更用操作部260を図11に示す右側に摺動させておく。そうすると、経路変更部材270が操作レバー148の直線経路における中立後進区間上から退避した状態となり、操作レバー148の直線経路の使用が確保される。この場合には、前進モードと後進モードとの切り換えを素早く行うことが可能となる。 【0088】 上記に説明したように、経路変更部材70、170、270を操作レバー48の直線経路における中立後進区間上に進出させた状態にしたり、直線経路における中立後進区間上から退避させた状態にすることによって、操作レバー48、148による前進モードの切換位置と後進モードの切換位置との間のシフトパターンを変更することができる。」 これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「移動可能にされる操作レバー148と、 前記操作レバー148が複数方向に移動されてN切換位置からR切換位置に配置される二次元経路と、 経路変更部材270が退避した際、前記操作レバー148が直線に移動されることで前記操作レバー148がR切換位置からN切換位置に移動されて停止される直線経路と、 を備えた前後進切換操作装置。」 2 引用文献2 本願の出願前に頒布された特開2001-80380号公報(以下「引用文献2」という。)には、「作業車の走行変速構造」に関して、図面(特に、図12参照。)とともに、次の事項が記載されている。 (1)「【0028】図6及び図7に示すように、変速レバー26及び操作アーム33を図7の紙面反時計方向(ピン37aが操作アーム35から離間する方向)(変速レバー26が図12に示すレバーガイド38の第1前進変速経路38a及び中立位置Nに移動する第2方向A2)に付勢するバネ39が備えられており、変速レバー26をレバーガイド38の中立位置N側に付勢するバネ43が、支持板28と操作アーム33とに亘って接続されている。」 (2)「【0051】図7及び図11に示すように、カムボス部材29に長孔29cが斜めに形成され、ボス部27bのピン56がカムボス部材29の長孔29cに挿入されているので、前述のようにカム板29aが図6の紙面時計方向に回転操作されると、ボス部27bのピン56とカムボス部材29の長孔29cとのカム作用により、バネ40に抗してカム板29aが、リング部材31aから図7の紙面左方に離間して、変速レバー26を所望の変速位置に保持する摩擦力が消える。これにより、バネ39,43の付勢力によって変速レバー26がレバーガイド38の中立位置Nに戻るのであり、図3に示すアーム21によって無段変速装置7(トラニオン軸12)及び変速ペダル13が中立位置Nに付勢される作用により、変速ペダル13及び無段変速装置7(トラニオン軸12)が中立位置Nに戻る。」 3 引用文献3 本願の出願前に頒布された特開2007-326549号公報(以下「引用文献3」という。)には、「シフトレバー装置」に関して、図面(特に、図2、図4、図6参照。)とともに、次の事項が記載されている。 (1)「【0021】 図4に示すように、前記ベースブラケット12と前記支持部材30との間には、HPポジションからBポジション、あるいは、HPポジションからRポジション又はDポジションにシフト操作されたシフトレバー体14をHPポジション又はNポジションに復帰するためのシフト用リターン機構46が設けられている。シフト用リターン機構46は、ベースブラケット12側に設けられたシフト用カム面47と、そのカム面47に摺動及び/又は転動可能なボール48と、ボール48をシフト用カム面47に押圧するコイルスプリングからなるリターンスプリング49とを備えている。リターンスプリング49及びボール48は、支持部材30の後面に突出された円筒状のホルダ部50内に順に組込まれている。また、シフト用カム面47は、カム部材52にV字溝状に形成されており、下側の斜面47aと上側の斜面47bとを有している。カム部材52は、ベースブラケット12の後板部17に形成された取付孔53(図5参照。)にその内側より嵌合されており、その外周に形成されたフランジ部52aが取付孔53の口縁部に係止されている(図4参照。)。シフト用リターン機構46は、通常は、ボール48がリターンスプリング49の弾性によりシフト用カム面47の溝底部に位置されることにより、シフトレバー体14をHPポジション又はNポジションに保持する。また、シフトレバー体14(詳しくは、ノブ35)のシフト操作時には、ボール48がリターンスプリング49の弾性を利用してシフト用カム面47の下側の斜面47a又は上側の斜面47b上を摺動及び/又は転動することにより、シフト操作されたシフトレバー体14にリターンスプリング49の弾性復元力をもってHPポジション又はNポジションへ復帰する力が付与される。」 (2)「【0027】 また、Nポジションにセレクト操作されたシフトレバー体14(詳しくは、ノブ35)がRポジションへシフト操作されたときには、ガイド枠部37及び支持部材30がシフト軸25を支点として図4において左回り方向へ回動される。このとき、シフト用リターン機構46のボール48がリターンスプリング49の弾性を利用してシフト用カム面47の上側の斜面47b上を摺動及び/又は転動することにより、シフト操作されたシフトレバー体14にリターンスプリング49の弾性復元力をもってNポジションへ復帰させる力が付与される。 【0028】 また、シフト操作されたシフトレバー体14(詳しくは、ノブ35)に対するDポジション又はRポジションへのシフト操作力を解除すると、リターンスプリング49の弾性復元力をもってシフトレバー体14がNポジションへ復帰される。さらに、Nポジションへ戻されたシフトレバー体14は、前に述べたように、セレクト用リターン機構55のリターンスプリング58の弾性復元力をもってHPポジションへ復帰される。」 第4 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「操作レバー148」は前者の「シフト体」に相当し、以下同様に、「N切換位置」は「第1シフト位置」に、「R切換位置」は「第2シフト位置」に、「二次元経路」は「第1移動路」に、「前記操作レバー148が直線に移動される」ことは「前記シフト体が単一方向に移動される」ことに、「前記操作レバー148がR切換位置からN切換位置に移動されて停止される」ことは「前記シフト体が第2シフト位置から第1シフト位置に復帰されて停止される」ことに、「直線経路」は「第2移動路」に、「前後進切換操作装置」は「シフト装置」にそれぞれ相当する。 したがって、両者は、 「移動可能にされるシフト体と、 前記シフト体が複数方向に移動されて第1シフト位置から第2シフト位置に配置される第1移動路と、 前記シフト体が単一方向に移動されることで前記シフト体が第2シフト位置から第1シフト位置に復帰されて停止される第2移動路と、 を備えたシフト装置。」 で一致し、次の点で相違する。 〔相違点〕 本願発明は、「前記シフト体のシフト位置が自動的に変更される際に」シフト体が単一方向に移動されることでシフト体が第2シフト位置から第1シフト位置に復帰されて停止されるのに対し、 引用発明は、経路変更部材270が退避した際、操作レバー148が直線に移動されることで操作レバー148がR切換位置からN切換位置に移動されて停止される点。 第5 当審の判断 そこで、相違点を検討する。 本願の出願時に、シフト体を付勢力を用いて自動的にN切換位置に移動させて停止させることは、周知技術(例えば、引用文献2の「バネ39,43の付勢力によって変速レバー26がレバーガイド38の中立位置Nに戻る」(段落【0051】)との記載、及び引用文献3の「リターンスプリング49の弾性復元力をもってシフトレバー体14がNポジションへ復帰される。」(段落【0028】)との記載参照。)である。 そうすると、引用発明は、操作レバー148がR切換位置からN切換位置に直線に移動されて停止されるものであるから、引用発明に上記周知技術を適用して、「前記シフト体のシフト位置が自動的に変更される」ようにして、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 また、本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-06-05 |
結審通知日 | 2019-06-11 |
審決日 | 2019-06-24 |
出願番号 | 特願2014-188806(P2014-188806) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B60K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 塚本 英隆 |
特許庁審判長 |
金澤 俊郎 |
特許庁審判官 |
冨岡 和人 鈴木 充 |
発明の名称 | シフト装置 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 福田 浩志 |
代理人 | 中島 淳 |