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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B22D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B22D
管理番号 1354078
異議申立番号 異議2017-700732  
総通号数 237 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-09-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-07-25 
確定日 2019-07-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6085571号発明「連続鋳造用鋳型」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6085571号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。 特許第6085571号の請求項1に係る特許を維持する。 特許第6085571号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6085571号の請求項1及び2に係る特許についての出願は,平成26年1月6日に出願され,平成29年2月3日にその特許権の設定登録がされ,同年2月22日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての主な経緯は,次のとおりである。
平成29年 7月25日 :特許異議申立人 倉田政彦(以下
「特許異議申立人」という。)による
特許異議の申立て
同 年10月19日付け:取消理由通知
同 年12月15日 :特許権者による意見書及び
訂正請求書の提出
平成30年 1月19日 :特許異議申立人による意見書の提出 同 年 3月22日付け:取消理由通知(決定の予告)
同 年 5月18日 :特許権者による意見書及び
訂正請求書の提出
同 年 5月25日付け:手続補正指令(方式)の通知
同 年 6月 7日 :特許権者による,同年5月18日に提出
した訂正請求書の「7 請求の理由」欄を
補正するとした手続補正書の提出
同 年 7月17日 :特許異議申立人による意見書の提出
同 年 7月31日付け:取消理由通知(決定の予告)
同 年 9月28日 :特許権者による意見書及び
訂正請求書の提出
同 年10月 3日 :特許権者と合議体との電話応対
同 年11月12日 :特許異議申立人による意見書の提出
平成31年 2月18日付け:取消理由通知(決定の予告)
同 年 4月12日 :特許権者による意見書及び
訂正請求書の提出
令和 元年 6月 3日 :特許異議申立人による意見書の提出

なお,平成31年4月12日の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)がなされたため,特許法第120条の5第7項の規定により,平成29年12月15日,平成30年5月18日及び同年9月28日にした訂正の請求は,いずれも取り下げられたものとみなす。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は,以下のア.ないしケ.のとおりである。
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「前記鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する前記短辺に,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる短辺側傾斜部を形成し,対向する前記短辺に形成した前記チャンファー形成部には,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる傾斜部が形成され,前記チャンファー形成部は,短辺方向の幅が長辺方向の幅よりも長く,該短辺方向の幅が10?30mmであり,前記短辺には,前記チャンファー形成部を冷却する冷却水用通水穴又は冷却水用通水溝が設けられていることを特徴とする」を,
「前記鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する前記短辺に,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる短辺側傾斜部を形成し,対向する前記短辺に形成した前記チャンファー形成部には,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる傾斜部が湯面から鋳型出口まで形成され,前記チャンファー形成部は平断面が三角形となって,その斜辺部を直線状とし,短辺方向の幅が長辺方向の幅よりも長く,該短辺方向の幅が10?30mm,前記長辺方向の幅が3?10mm,かつ,前記鋳型壁の四隅の領域を除いた前記短辺の表面に対する前記斜辺部の立ち上がり角度が10?30度であり,前記短辺には,前記チャンファー形成部を冷却する冷却水用通水溝が設けられ,対向する前記長辺には,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる長辺側傾斜部が形成され,該長辺側傾斜部は,対向する前記短辺の幅方向の両側面に当接していることを特徴とする」と訂正する。
(下線は,訂正箇所を示すために当審で付したものである。以下同じ。)

イ.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

ウ.訂正事項3
特許明細書の【0007】の
「前記鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する前記短辺に,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる短辺側傾斜部を形成し,対向する前記短辺に形成した前記チャンファー形成部には,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる傾斜部が形成され,前記チャンファー形成部は,短辺方向の幅が長辺方向の幅よりも長く,該短辺方向の幅が10?30mmであり,前記短辺には,前記チャンファー形成部を冷却する冷却水用通水穴又は冷却水用通水溝が設けられている」を,
「前記鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する前記短辺に,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる短辺側傾斜部を形成し,対向する前記短辺に形成した前記チャンファー形成部には,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる傾斜部が湯面から鋳型出口まで形成され,前記チャンファー形成部は平断面が三角形となって,その斜辺部を直線状とし,短辺方向の幅が長辺方向の幅よりも長く,該短辺方向の幅が10?30mm,前記長辺方向の幅が3?10mm,かつ,前記鋳型壁の四隅の領域を除いた前記短辺の表面に対する前記斜辺部の立ち上がり角度が10?30度であり,前記短辺には,前記チャンファー形成部を冷却する冷却水用通水溝が設けられ,対向する前記長辺には,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる長辺側傾斜部が形成され,該長辺側傾斜部は,対向する前記短辺の幅方向の両側面に当接している」と訂正する。

エ.訂正事項4
明細書の段落【0009】を削除する。

オ.訂正事項5
明細書の段落【0013】の
「鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する長辺に」を,
「鋳型壁の対向する長辺に」と訂正する。

カ.訂正事項6
明細書の段落【0013】の
「長辺側傾斜部を形成した場合」を,
「長辺側傾斜部を形成したので」と訂正する。

キ.訂正事項7
明細書の段落【0014】の
「冷却する冷却水用通水穴又は冷却水用通水溝」を,
「冷却する冷却水用通水溝」と訂正する。

ク.訂正事項8
明細書の段落【0025】の
「鋳型壁18の四隅の領域Rを除いた対向する長辺13,14にも」を,
「鋳型壁18の対向する長辺13,14にも」と訂正する。

ケ.訂正事項9
明細書の段落【0030】の
「鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する長辺に」を,
「鋳型壁の対向する長辺に」と訂正する。

そして,本件訂正請求は,一群の請求項〔1-2〕に対して請求されたものである。また,明細書に係る訂正は,一群の請求項〔1-2〕について請求されたものである。

(2)訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項1
(ア)訂正事項1は,次のa)?e)の5つを内容とするものである。
a)「短辺」の「短辺側傾斜部」が,「幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる」ことを追加するもの。
b)「チャンファー形成部」の「傾斜部」が,「幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる」ものであり,「湯面から鋳型出口まで」形成されることを追加するもの。
c)「チャンファー形成部」の形状が,「平断面が三角形」であって,「斜辺部を直線状」とし,「長辺方向の幅が3?10mm」であって,「前記鋳型壁の四隅の領域を除いた前記短辺の表面に対する前記斜辺部の立ち上がり角度が10?30度」であることを追加するもの。
d)訂正前の請求項1に記載された「冷却水用通水穴又は」という事項を削除し,「冷却水用通水溝」に限定するもの。
e)「長辺」について,「対向する前記長辺には,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる長辺側傾斜部が形成され,該長辺側傾斜部は,対向する前記短辺の幅方向の両側面に当接している」との事項を追加するもの。
(イ)上記a),b),c),及びe)は,発明を特定するための事項を追加するものであり,d)は,選択的に記載されていた事項を削除して限定するものであるから,訂正事項1は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(ウ)そして,上記a)は明細書の段落【0024】に,上記b)は同【0022】に,上記c)は同【0019】ないし【0021】に,上記d)は同【0027】並びに図1及び3に,上記e)は同【0009】,【0025】及び図4に記載されているから,訂正事項1は,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

イ.訂正事項2
訂正事項2は,特許請求の範囲の請求項2を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

ウ.訂正事項3,4,6及び7
訂正事項3,6及び7は,訂正事項1により請求項1が訂正されたことに整合するように訂正するものであり,訂正事項4は,訂正事項2により請求項2が削除されたことに整合するように訂正するものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

エ.訂正事項5,8及び9
訂正事項5,8及び9は,鋳型壁の長辺に形成される長辺側傾斜部について,訂正前の明細書における「四隅の領域を除いた」長辺に形成する旨の記載を削除するものであるが,図4には,鋳型壁の長辺の四隅の領域にも長辺側傾斜部を形成する旨の図示があり,訂正前の明細書の「四隅の領域を除いた」という記載と整合していなかったものを,当該記載を削除することで図4の記載と整合するように訂正するものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(3)小括
したがって,本件訂正請求に係る訂正事項1ないし9は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので,訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。


3.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
本件訂正請求による訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して,当審が平成31年2月18日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)の要旨は,次のとおりである。

特許法第29条第2項(進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明は,甲第2号証に記載された発明,参考文献B,参考文献1及び参考文献A,及び項第3号証に記載された技術的事項に基いて,また,本件特許の請求項2に係る発明は,甲第2号証に記載された発明,参考文献B,参考文献1,参考文献A及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
甲第2号証:中国実用新案登録第202146982号公報
参考文献B:中国特許公開第102728795号公報
参考文献1:中国実用新案登録第201744629号公報
参考文献A:実公平2-17732号公報
甲第3号証:特許第4764715号公報


4.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての当審の判断
(1)訂正後の請求項1及び2に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1及び2に係る発明は,次に示すとおりのものである。

「【請求項1】
間隔を有して対向配置される一対の短辺と,該短辺を幅方向の両側から挟み,対向する前記短辺の間隔を変更可能な幅を有する一対の長辺とによって囲繞される鋳型空間部に溶鋼を注入して冷却し鋳片として引き抜く連続鋳造用鋳型において,
前記鋳型空間部を形成する鋳型壁の四隅の領域の前記短辺に,前記鋳型空間部側へ向けて膨出するチャンファー形成部を形成し,前記鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する前記短辺に,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる短辺側傾斜部を形成し,対向する前記短辺に形成した前記チャンファー形成部には,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる傾斜部が湯面から鋳型出口まで形成され,
前記チャンファー形成部は平断面が三角形となって,その斜辺部を直線状とし,短辺方向の幅が長辺方向の幅よりも長く,該短辺方向の幅が10?30mm,前記長辺方向の幅が3?10mm,かつ,前記鋳型壁の四隅の領域を除いた前記短辺の表面に対する前記斜辺部の立ち上がり角度が10?30度であり,前記短辺には,前記チャンファー形成部を冷却する冷却水用通水溝が設けられ,対向する前記長辺には,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる長辺側傾斜部が形成され,該長辺側傾斜部は,対向する前記短辺の幅方向の両側面に当接していることを特徴とする連続鋳造用鋳型。

【請求項2】
(削除)」(以下,本件訂正請求により訂正された請求項1に係る発明を「本件発明」という。)

(2)引用文献の記載及び引用発明
本件審理で提出された文献は,以下のとおりである。
甲第1号証:実用新案登録第3176975号公報
甲第2号証:中国実用新案登録第202146982号公報
甲第3号証:特許第4764715号公報
参考文献1:中国実用新案登録第201744629号公報
参考文献A:実公平2-17732号公報
参考文献B:中国特許公開第102728795号公報
参考文献C:特開2013-136081号公報
(以下,上記の各甲号証及び各参考文献をまとめて「全ての引用文献」という。)

ア.甲第2号証の記載及び引用発明
(ア)甲第2号証の記載事項
甲第2号証には,組み合わせ式冷却水路を有する面取鋳造器の短辺銅板と題して,次の事項が記載されている。(なお,括弧内に特許異議申立人が提出した日本語抄訳文を付記する。)



([0010]組み合わされた冷却水路を有する面取鋳造器の短辺銅板,その作用面は平面領域とベベル領域を含み,平面領域は中部に位置し,ベベル領域は両側の隅角部に位置し,銅板断面中心線位置と隅角部の間の厚み差Hは1.4?140mmとして,ベベル領域と平面領域は断面方向に接することで滑らかに接続し,ベベル領域の横断面上の直線長Lは5?150mmとし,短辺銅板内部分布は高さ方向に上下に貫通する円形と矩形の冷却水路があり,そのうちベベル領域の内部分布は1?6個の幅4?8mmの矩形の冷却水路と,1?6個の直径を5?10mmとする円形の冷却水路がある。
[0011]前記銅板の幅は50?480mmとし,高さは700?1200mmとし,平面領域の銅板の厚みは40?100mmとし,その幅は高さ方向に一定を保持する,あるいは平面領域の幅は上から下への線形逓減とし,銅板の上端縁と下端縁の間の幅の差は0?4.0mmとする。
[0012]前記銅板は幅方向については表面中心線を以って対称線とし,対称分布を呈し;高さ方向については,その作用面はシングルテーパー,2段テーパーあるいは多段テーパーのうちの1種類とする。)




(図面の説明
[0026]図1は本実用新案第一実施例の全体構造略図;
[0027]図2aは本実用新案第二実施例の全体構造略図;
[0028]図2bは本実用新案の図2aのA-Aの縦断面模式図;
[0029]図3は本実用新案第一実施例或いは第二実施例の横断面構造概略図;
[0030]図4は本実用新案第三実施例の横断面構造概略図;
[0031]図5は本実用新案第四実施例の横断面構造概略図;
[0032]図6は本実用新案第五実施例の横断面構造概略図。
[0033]符号
[0034]1:鋳造器短辺銅板
[0035]2:ベベル領域
[0036]3:側面
[0037]4:ベベル領域断面にある曲線
[0038]5:矩形の冷却水路
[0039]6:円形の冷却水路」)




([0044]以下,図面によって本実用新案を更に説明する。
[0045]本実用新案が提案する短辺銅板1は主に厚さが50?480mmの鋳造スラブの連続鋳造生産に用いて,連続鋳造機は円弧型あるいは垂直曲げ型とし,鋳型は組立式とし,それは高さ方向に垂直構造とする。この短辺銅板1は漏斗型鋳型の広面銅板と組み合わせてもよいし,あるいはまた平行板式鋳型の広面銅板と組み合わせてもよい。高さ方向に,短辺の銅板幅は一定を保持してもよいし,あるいはまた平面領域の幅を上から下へ線形逓減させても良く,このとき銅板の上端縁と下縁端の間の差は0?4.0mmとする。短辺の銅板の幅が上から下への線形逓減であるとき,鋳造スラブは厚み方向に傾くテーパーを形成し,鋳造スラブ下部の冷却を補強することに有利であり,鋳造スラブの表面品質を高める。
[0046]図1は短辺銅板1の全体構成を示しており,その作用面と溶鋼は互いに接触し,作用面は中部の平面領域と両側のベベル領域2によって構成され,銅板は高さ方向にシングルテーパー構造とする。
[0047]図2aは短辺銅板1のその他の全体構成を示しており,図2bはそのA-Aの縦断面模式図であり,その作用面と溶鋼は互いに接触して,図示された短辺銅板の作用面は高さ方向に2段テーパー構造であり,上部領域は斜面とし,下部領域は直面とし,上部領域の斜面は鋳造器上部領域のテーパーを高めて,凝固初期のシェルと銅壁の間が緊密な程度に接触する作用を増加することを果たし,これによって初期凝固過程の熱伝導を補強して,初期凝固シェルの厚さと強度を高めて,鋳造スラブの表面品質の向上に有利である。面取り構成を採用後,鋳造スラブのコーナーは既存の90°の直角から2個の鈍角に変わり,このように鋳造スラブの隅角部温度を改善でき,且つ湾曲あるいは整直プロセス中の鋳造スラブコーナーの引張応力集中を減らせて,コーナー横割れ抑制の目的に達する。短辺銅板1のベベル領域2は円形の水路と矩形の水路の組み合わせ冷却を採用後,鋳造スラブコーナーの縦裂欠陥は周方向温度の均一性を高めることによって抑制できる。)

(イ)連続鋳造用鋳型の技術分野における技術常識
以下の事項は連続鋳造用鋳型の技術分野における技術常識と認められる。
・間隔を有して対向配置される一対の短辺と,該短辺を幅方向の両側から挟み,対向する前記短辺の間隔を変更可能な幅を有する一対の長辺とによって囲繞される鋳型空間部に溶鋼を注入して冷却し鋳片として引き抜くこと。
・短辺鋳型の形状に用いられる用語として,端部に設けられる膨出した部分を,チャンファー,面取,ベベルと呼称すること。
・甲第2号証の鋳造スラブのコーナーが2個の鈍角であること([0047])から,ベベル領域2は2つの直線で構成されているといえること。

(ウ)引用発明
上記(ア)の記載事項及び上記(イ)の技術常識を併せて見れば,甲第2号証には以下の発明が記載されていると認められる。

「間隔を有して対向配置される一対の短辺銅板1と,該短辺銅板1を幅方向の両側から挟み,対向する前記短辺銅板1の間隔を変更可能な幅を有する一対の広面銅板とによって囲繞される鋳型空間部に溶鋼を注入して冷却し鋳片として引き抜く,連続鋳造生産に用いる平行板式鋳型において,
該短辺銅板1は短辺の両側の隅角部に設けられたベベル領域2であって,短辺厚み方向に膨出するベベル領域2を有し,
該短辺銅板1は,鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まるシングル,2段あるいは多段テーパーとされ,
該ベベル領域2は,2つの直線で構成され,
該短辺銅板1は,短辺銅板1の裏面にある矩形の冷却水路5を有する
平行板式鋳型。」 (以下「引用発明」という。)

イ.参考文献Aの記載事項
参考文献Aの第5及び6図や,第3欄19ないし最終行には,短辺ブロック隅角部に,左右両端水溝2aの基端部より短辺ブロック7隅角部方向にV字状に連通分岐した斜め水溝8を形成することで,鋳型の温度分布を均一としたことが記載されている。

ウ.参考文献Bの記載事項
参考文献Bの図1ないし4,【特許請求の範囲】,説明書には,連続鋳造にてスラブシェルを得るための鋳造器を構成する短辺面取銅板の形状が,上端縁から下端縁にかけて全体に作用面2の間隔が遷移5あるいは6に従うテーパーとし,短辺面取面3,4の平断面が三角形であり,三角形の斜辺は平断面を直線状とし,作用面と斜辺とが成す角度は120ないし160度であるため,作用面から斜辺が立ち上がる角度は20ないし60度の範囲となること,及び,具体的な実施例として,該立ち上がる角度を55度としたものを実施例1とし,同じく35度としたものを実施例2とし,同じく30度としたものを実施例3としたことが,各々記載されている。

エ.参考文献1の記載事項
参考文献1には,連続鋳造用鋳型の短辺銅板1に設けられた面取2の平面形状が,直角三角形であり,平面領域からの立ち上がり角度が15ないし50度(当該角の余角αが,40ないし75度であることから)で,該直角三角形の膨出高さHの寸法は5ないし120mmとすることが記載されている。

オ.甲第3号証の記載事項
甲第3号証には,連続鋳造用鋳型が,間隔を有して対向配置される一対の短辺部材81,82と,この短辺部材81,82を挟み込むように配置される一対の長辺部材83,84とを備えることとした場合,長辺部材も短辺部材も双方の対向面が鋳型の上端から下端にかけて対称に狭くなるテーパ形状を備えることが従来から行われていることが記載されている。

(3)本件発明と引用発明の対比
本件発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「短辺銅板1」が本件発明の「短辺」に相当することは明らかであり,以下同様に「広面銅板」が「長辺」に,「連続鋳造生産に用いる平行板式鋳型」が「連続鋳造用鋳型」に相当する。
そして,引用発明の「短辺の両側の隅角部」が,本件発明の「前記鋳型空間部を形成する鋳型壁の四隅の領域の前記短辺」に相当し,以下同様に,「短辺の両側の隅角部に設けられたベベル領域2であって,短辺厚み方向に膨出するベベル領域2」が,「前記鋳型空間部側へ向けて膨出するチャンファー形成部」に相当し,「該短辺銅板1は,鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まるシングル,2段あるいは多段テーパー」とされていることは,「前記鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する前記短辺に,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる短辺側傾斜部を形成し,対向する前記短辺に形成した前記チャンファー形成部には,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる傾斜部が湯面から鋳型出口まで形成」されていることに相当する。
また,引用発明において「該短辺銅板1は,短辺銅板1の裏面にある矩形の冷却水路5を有」することは,本件発明において「前記短辺には,前記チャンファー形成部を冷却する冷却水用通水溝が設」けられることに相当する。

そうすると,両発明は以下の点で一致し,かつ相違する。
(一致点)
「間隔を有して対向配置される一対の短辺と,該短辺を幅方向の両側から挟み,対向する前記短辺の間隔を変更可能な幅を有する一対の長辺とによって囲繞される鋳型空間部に溶鋼を注入して冷却し鋳片として引き抜く連続鋳造用鋳型において,
前記鋳型空間部を形成する鋳型壁の四隅の領域の前記短辺に,前記鋳型空間部側へ向けて膨出するチャンファー形成部を形成し,前記鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する前記短辺に,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる短辺側傾斜部を形成し,対向する前記短辺に形成した前記チャンファー形成部には,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる傾斜部が湯面から鋳型出口まで形成され,
前記短辺には,前記チャンファー形成部を冷却する冷却水用通水溝が設けられている連続鋳造用鋳型。」

(相違点1)本件発明は「前記チャンファー形成部は平断面が三角形となって,その斜辺部を直線状とし,短辺方向の幅が長辺方向の幅よりも長く,該短辺方向の幅が10?30mm,前記長辺方向の幅が3?10mm,かつ,前記鋳型壁の四隅の領域を除いた前記短辺の表面に対する前記斜辺部の立ち上がり角度が10?30度」であるのに対して,引用発明はチャンファー形成部に相当する「ベベル領域2」が「2つの直線で構成」されている点。

(相違点2)本件発明は「対向する前記長辺には,前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる長辺側傾斜部が形成され,該長辺側傾斜部は,対向する前記短辺の幅方向の両側面に当接」しているのに対して,引用発明は長辺に相当する「広面銅板」の構成が不明な点。

(4)相違点の判断
ア.相違点1について
(ア)引用発明のチャンファー形成部は2つの直線で構成されているが,チャンファー形成部の平断面を三角形とし,斜辺部を直線状とすることは,参考文献Bの記載事項(上記(2)ウ.)や,参考文献1の記載事項(上記(2)エ.)に示すように,本件特許に係る出願前に公然知られている。
(イ)しかし,引用発明のチャンファー形成部を,公然知られた三角形のものに変更する動機は不明であるし,甲第2号証には,チャンファー形成部を2つの直線で構成することにより,鋳造されるスラブのコーナーが2個の鈍角を有することになり,初期凝固過程の熱伝導を補強して,初期凝固シェルの厚さと強度を高めて,鋳造スラブの表面品質の向上に有利となることが示されている(上記(1)ア.の[0047])。そして,このような初期凝固過程の熱伝導を補強する作用については,他の全ての引用文献において記載や示唆はない。そうすると,甲第2号証に接した当業者は,引用発明のチャンファー形成部により,初期凝固過程の熱伝導を補強する作用が生じ,鋳造スラブの表面品質の向上に有利であると認識するのに対して,公然知られた三角形のチャンファー形成部はそのような作用を生じると認識しないから,引用発明のチャンファー形成部を公然知られた三角形のものに置き換えることは想到しない。
(ウ)さらに,本件発明のチャンファー形成部は,「短辺方向の幅が長辺方向の幅よりも長く,該短辺方向の幅が10?30mm,前記長辺方向の幅が3?10mm,かつ,前記鋳型壁の四隅の領域を除いた前記短辺の表面に対する前記斜辺部の立ち上がり角度が10?30度」という数値範囲のものであるが,引用発明のチャンファー形成部を,このような数値範囲のものに変更する動機もない。参考文献1の記載事項に示すように,平面領域からの立ち上がり角度が15ないし50度で,該直角三角形の膨出高さHの寸法を5ないし120mmとすることは,本件特許に係る出願前に公然知られているが,参考文献1の記載事項の数値範囲は,本件発明のチャンファー形成部の数値範囲と部分的に重複するものにすぎず,本件発明に係る数値範囲に完全に含まれるものではない。そして,参考文献1の記載事項の上記5ないし120mmという数値範囲において,本件発明に係る数値範囲に限定するように選択する理由について,全ての引用文献を見ても記載や示唆はないから,引用発明のチャンファー形成部を,本件発明に係る数値範囲のものに変更する動機はない。
(エ)したがって,相違点1に係る構成は,引用発明及び全ての引用文献の記載事項に基づいて当業者が容易に想到できたものとはいえない。

イ.小括
以上のとおり,相違点1に係る構成は,引用発明及び全ての引用文献の記載事項に基づいて当業者が容易に想到できたものとはいえないから,相違点2について検討するまでもなく,本件発明は,引用発明及び全ての引用文献の記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。


5.取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第36条第4項第1号に係る特許異議申立理由
ア.特許異議申立人は,請求項1及び2に係る発明で共通する発明特定事項である「短辺の間隔を変更可能」とした「鋳型」に関して,本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0017】には,「対向配置される一対の短辺11,12の間隔(鋳片と接触する幅)を200mm以上3500mm以下の範囲で変更可能とする」という記載はあるものの,これほど広い範囲にわたって変更可能とさせるため,特に「鋳片シェルの凝固収縮量に追従」させることを可能とする具体的手段について発明の詳細な説明には明確かつ十分な記載がない旨の特許異議申立理由を主張している。

イ.これに対して,特許権者は,平成29年12月15日に提出した意見書の第8及び9ページの「(5)理由1(特許法第36条第4項第1号)について」の欄で,発明の詳細な説明の【0017】は,「単に長辺の幅を記載するもの」である旨を説明し,「鋳片シェルの凝固収縮量に追従」させることについては,「『短辺側傾斜部』と『チャンファー形成部の傾斜部』の形状が異なる複数種類の短辺を用いることにより,『鋳片シェルの凝固収縮量に追従』できる。」との意見を述べている。

ウ.そして,本件特許の明細書の発明の詳細な説明を見ると,鋳片シェルの凝固収縮量に追従させるためのチャンファー形成部の傾斜部の表面形状について,「具体的には,鋳片の形状,鋳片のサイズ,・・・等を用いる」(【0023】)ことで,マルチテーパと呼ぶ形状を決定する旨が記載されている。そうすると,「これにより,例えば,幅が200mm以上3500mm以下程度,厚みが50mm以上500mm以下程度で,角部が面取りされた鋳片を製造できる。」(【0028】)という記載に従って,鋳片の幅のサイズを変更する場合を考えると,「鋳片の形状,鋳片のサイズ,・・・等を用いる」ことで,各形状やサイズに応じたマルチテーパ形状の短辺を複数種類用意することになると解するのが自然であり,特許異議申立人がその旨を主張するように,ある特定形状の1種類の短辺を用いて,その間隔を200?3500mmの広い範囲で変更して,異なるサイズの鋳片を鋳造するものとは考えられない。
また,本件明細書の発明の詳細な説明には,ある特定形状の1種類の短辺を用いて,その間隔を200?3500mmの広い範囲で変更して,異なるサイズの鋳片を鋳造することについて記載されているわけではない。
そうすると,本件特許の明細書には,本件特許の請求項1に係る発明を実施するための具体的記載があるというべきであり,当該特許異議申立理由によって,請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

エ.なお,特許異議申立人は,平成30年1月19日に提出した意見書の第10及び11ページの「(8)訂正により新たに生じた明細書の記載不備について」欄において,訂正により特許請求の範囲が変更されたにもかかわらず,訂正明細書の段落【0021】の末尾が削除されていないため,明細書の記載が不明確なものとなっているとの意見を述べている。しかしながら,上記ウ.で説示するとおり,本件特許の明細書には,本件特許の請求項1に係る発明を実施するための具体的記載があるというべきであり,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,特許法第36条第4項第1号の要件を満たしているから,特許異議申立人の当該主張は採用できない。

(2)特許法第29条第2項に係る特許異議申立理由
ア.特許異議申立人は,特許法第29条第2項に係る特許異議申立理由について,甲第1号証に記載された発明を主引用例とする理由を主張しているので,以下検討する。

イ.甲第1号証には,本件発明のチャンファー形成部に相当する「面取り領域3,4」が記載されているが,その形状は,上端において「凹曲線5,6,7」であり,下端において「直線8,9,10」(甲第1号証の段落【0018】)である。そして,チャンファー形成部の上端の曲線が,下端の直線よりも長いことから,鋳型が上下に移動するときに,凝固中にシェルが収縮しようとする要求を満たし,シェルと鋳型用の銅板間の熱交換を向上させて,凝固シェルの厚みの均一性を強化して,スラブ上のコーナー亀裂の発生を有効に回避できるという作用効果が示されている(同【0018】)。

ウ.引用発明についての相違点1の検討(上記4.(4)ア.)において説示したように,チャンファー形成部の平断面を三角形とし,斜辺部を直線状とすることは,本件特許に係る出願前に公然知られているが,甲第1号証には,上端の曲線が下端の直線よりも長いことにより,上記イ.の作用効果を期待できることが記載されているから,甲第1号証の記載に接した当業者が,甲第1号証の「面取り領域3,4」を公然知られた三角形のものに変更する動機があるとはいえない。

エ.したがって,本件発明は,甲第1号証に記載された発明及び全ての引用文献の記載事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。


6.むすび
以上から,請求項1に係る特許は,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては,取り消すことができない。さらに,他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また,請求項2に係る特許は,上記のとおり,訂正により削除された。これにより,特許異議申立人による特許異議の申立てについて,請求項2に係る申立ては,申立ての対象が存在しないものとなったため,特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
連続鋳造用鋳型
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳片を製造するために使用する連続鋳造用鋳型に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳片は、上下方向に貫通する鋳型空間部が内側に形成された鋳型壁を有する連続鋳造用鋳型(以下、単に鋳型ともいう)を使用し、この鋳型空間部へ供給された溶鋼を鋳型壁で冷却しながら凝固させて鋳造している。
この鋳造した鋳片は更に、鋳造方向下流へと搬送され切断されてスラブとなり、このスラブを圧延機によって圧延している。
【0003】
しかし、スラブは略断面四角形であるため、このスラブの圧延時に、スラブの幅方向端部に折れ曲がりや割れ等が発生し、品質欠陥や歩留り低下を招くおそれがあった。
そこで、例えば、特許文献1に記載の連続鋳造用鋳型(インゴットモールド)が提案されている。具体的には、鋳型壁の各内側角部に、直角三角形の斜辺により形成される突出部(ベベル)を設け、鋳造する鋳片の各角部を鋳造段階で面取り(チャンファー)する鋳型である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3001063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した突出部を形成した鋳型を使用して鋳片を鋳造した場合、鋳片角部の冷却が緩冷却となり、この鋳片角部に健全な鋳片シェル(凝固シェル)を形成できないおそれがあった。このため、例えば、鋳片角部の鋳片シェルが破れ、未凝固の溶鋼が流出するブレークアウトが発生し、鋳造作業の中断や長時間の休止、更には設備損傷のような事故を招く恐れがあった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、良好な品質の鋳片を歩留りよく、しかも作業性よく安定に製造可能な連続鋳造用鋳型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る連続鋳造用鋳型は、間隔を有して対向配置される一対の短辺と、該短辺を幅方向の両側から挟み、対向する前記短辺の間隔を変更可能な幅を有する一対の長辺とによって囲繞される鋳型空間部に溶鋼を注入して冷却し鋳片として引き抜く連続鋳造用鋳型において、
前記鋳型空間部を形成する鋳型壁の四隅の領域の前記短辺に、前記鋳型空間部側へ向けて膨出するチャンファー形成部を形成し、前記鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する前記短辺に、前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる短辺側傾斜部を形成し、対向する前記短辺に形成した前記チャンファー形成部には、前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる傾斜部が湯面から鋳型出口まで形成され、
前記チャンファー形成部は平断面が三角形となって、その斜辺部を直線状とし、短辺方向の幅が長辺方向の幅よりも長く、該短辺方向の幅が10?30mm、前記長辺方向の幅が3?10mm、かつ、前記鋳型壁の四隅の領域を除いた前記短辺の表面に対する前記斜辺部の立ち上がり角度が10?30度であり、前記短辺には、前記チャンファー形成部を冷却する冷却水用通水溝が設けられ、対向する前記長辺には、前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる長辺側傾斜部が形成され、該各長辺側傾斜部は、対向する前記短辺の幅方向の両側面に当接している。
【0008】
【0009】(削除)
【0010】
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る連続鋳造用鋳型は、鋳型壁の四隅の領域の短辺に、鋳型空間部側へ膨出するチャンファー形成部を形成するので、鋳片の幅方向端部の角部をなくすことができる。これにより、例えば、鋳片を切断して得られるスラブの圧延時に、スラブの幅方向端部の折れ曲がりや割れ等の発生を抑制、更には防止できる。
また、鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する短辺に、鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる短辺側傾斜部を形成するので、鋳片と短辺との接触状態を良好にでき、短辺側からの鋳片角部の冷却効率が高められ、鋳片角部に健全な鋳片シェルを形成できる。これにより、ブレークアウトの発生を抑制、更には防止でき、例えば、鋳造作業の中断や長時間の休止、更には設備損傷のような事故等も抑制、更には防止できる。
従って、良好な品質の鋳片を歩留りよく、しかも作業性よく安定に製造できる。
【0012】
また、対向する短辺に形成したチャンファー形成部に、凝固シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる傾斜部を形成したので、鋳片角部の冷却効率が更に高められるため、上記した効果がより顕著になる。
【0013】
そして、鋳型壁の対向する長辺に、凝固シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる長辺側傾斜部を形成したので、鋳片と長辺との接触状態を良好にでき、長辺側からの鋳片角部の冷却効率が高められるため、上記した効果がより顕著になる。
【0014】
更に、短辺に、チャンファー形成部を冷却する冷却水用通水溝が設けられているので、チャンファー形成部の冷却効率が高められ、例えば、連続鋳造時におけるチャンファー形成部の変形や損傷等を抑制、更には防止できる。これにより、チャンファー形成部によって鋳片に安定した形状のチャンファーを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用鋳型の部分平面図、裏面図である。
【図2】(A)、(B)はそれぞれ図1(B)のa-a断面図、b-b断面図である。
【図3】図1(B)のc-c断面図である。
【図4】比較例と実施例に係る連続鋳造用鋳型の構成とこれを用いた凝固シミュレーション結果の説明図である。
【図5】(A)は図4の連続鋳造用鋳型の短辺の表面プロフィールを示すグラフ、(B)は図4の連続鋳造用鋳型の長辺の表面プロフィールを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)、図2(A)、(B)、図3に示すように、本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用鋳型(以下、単に鋳型ともいう)10は、間隔を有して対向配置される一対の短辺11、12と、この短辺11、12を幅方向の両側から挟む一対の長辺13、14とによって囲繞される鋳型空間部15に溶鋼を注入して冷却し鋳片として引き抜くものであり、良好な品質の鋳片を歩留りよく、しかも作業性よく安定に製造可能な鋳型である。以下、詳しく説明する。
【0017】
短辺11、12はそれぞれ、例えば、厚みが5mm以上100mm以下程度、幅が50mm以上500mm以下程度、鋳造方向の長さが600mm以上1200mm以下程度である。この短辺11、12は、鏡面対称で同じ構成となっている。
また、長辺13、14はそれぞれ、例えば、厚みが5mm以上100mm以下程度、対向配置される一対の短辺11、12の間隔(鋳片と接触する幅)を200mm以上3500mm以下の範囲で変更可能とすることのできる幅を有し、鋳造方向の長さは短辺11、12と同程度である。
【0018】
上記した短辺11、12と長辺13、14は、銅又は銅合金で構成され、この短辺11、12と長辺13、14の各裏面に当接し固定されるバックプレート(図示しない)は、ステンレス又は鋼で構成されている。なお、図1(B)の番号16は、短辺11、12とバックプレートとを締結ボルトで締結するためのボルト穴を示している。
短辺11、12の裏面側(バックプレート側)には、多数の導水溝17が鋳造方向(鋳片の引き抜き方向)に設けられている。この多数の導水溝17は、例えば、5mm以上200mm以下程度の範囲内の所定ピッチで、短辺11、12の幅方向に形成されている。
なお、長辺13、14の裏面側にも上記した多数の導水溝が、長辺13、14の幅方向に所定ピッチで、鋳造方向に設けられている。
【0019】
上記した一対の短辺11、12と一対の長辺13、14からなり、鋳型空間部15を形成する鋳型壁18が形成される。
図1(A)、図3に示すように、鋳型壁18の四隅の領域Rの短辺11、12には、鋳型空間部15側へ向けて膨出するチャンファー形成部19、20が形成されている。
チャンファー形成部19、20はそれぞれ、平断面が三角形となっており、その斜辺部21、22が、鋳型空間部15に供給される溶鋼(鋳片シェル)との接触面となっている。即ち、チャンファー形成部19、20は、短辺11、12の幅方向端位置へ向けて、その幅が徐々に広がっている。
なお、チャンファー形成部は、鋳型壁の四隅の領域に設ければよいため、長辺に形成することも考えられるが、この場合、一対の短辺の間隔が調整できなくなる。
【0020】
図3に示すように、チャンファー形成部19(チャンファー形成部20も同様)は、短辺11、12の幅方向(以下、短辺方向ともいう)の幅Xが、長辺13、14の幅方向(以下、長辺方向ともいう)の幅(鋳型空間部15への突出幅)Yよりも、長くなっている。例えば、幅Xは、10?30mm程度、幅Yは、幅Xより短く3?10mm程度、である。
このように、短辺方向の幅Xを長辺方向の幅Yよりも長くすることで、例えば、短辺の製造時は、チャンファー形成部の加工が容易となり、短辺の搬送時や設置時は、チャンファー形成部の損傷(折れ曲がりや割れ)等を防止でき、短辺の使用時(連続鋳造時)は、短辺に形成した導水溝によるチャンファー形成部の冷却効率の低下を抑制し、その変形や損傷を抑制、更には防止できる。なお、チャンファー形成部が変形したり損傷すると、鋳片角部に目的とする形状の面取り(チャンファー)ができなくなる。
【0021】
チャンファー形成部19(チャンファー形成部20も同様)は、鋳型壁18の四隅の領域Rを除いた短辺11、12の表面(溶鋼接触面)23に対する斜辺部21の立ち上がり角度θが、例えば、10?30度程度である。
なお、短辺11、12の表面23と、チャンファー形成部19、20の斜辺部21、22との接続部分は、なだらかな曲面(例えば、曲率半径5?20mm程度)とすることが好ましいが、これに限定されるものではない。
また、チャンファー形成部19、20の斜辺部21、22は、平断面が直線状としているが、例えば、表面側(溶鋼接触面側)が凹んだ曲線状とすることも可能である。
【0022】
対向する短辺11、12に形成したチャンファー形成部19、20には、鋳造方向に鋳片シェル(凝固シェル)の凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる傾斜部が形成されている。この対向するチャンファー形成部19、20の内側断面形状、即ち傾斜部の表面形状は、例えば、特許第4659706号公報に記載の方法で決定できるため、以下、簡単に説明する。
傾斜部の表面形状は、その幅方向に渡って同一形状となっており、メニスカス位置からの距離の増加に伴って、テーパ率の増加率が小さくなる形状、即ち、マルチテーパとなっている。このマルチテーパとは、鋳型内(メニスカス位置(湯面)から鋳型出口まで)での鋳片の凝固収縮プロフィールを、曲線(複数の関数で規定)及び複数の直線のいずれか一方又は双方を使用して近似し、それを傾斜部の表面形状に適用したものである。
【0023】
以下、マルチテーパの決定方法について、簡単に説明する。
マルチテーパは、下記に示す条件を考慮したり、また実際に測定した結果を基にして、3次元の鋳片の凝固収縮及び鋳型の熱変形を考慮したFEM解析(有限要素法を用いた解析、以下同様)により求めている。具体的には、鋳片の形状、鋳片のサイズ、鋳込み条件(例えば、鋳込み温度、引抜き速度、鋳型冷却条件等)、鋳込み鋼種の成分に由来する物理量(例えば、液相温度、固相温度、変態温度、線膨張率、剛性値等)、鋳型と鋳片との間の接触熱移動量(鋳片の収縮量は、この量に大きく影響される)等を用いる。
なお、上記した接触熱移動量は、例えば、鋳造時に使用する潤滑材の種類や鋳片の表面形状(鋼種、オシレーション条件、潤滑材種類に依存)の違いに大きく影響される。従って、各鋳込み条件ごとの実績の接触熱移動量をできるだけ正確に把握することが、マルチテーパの決定には必要とされる。
【0024】
図1(A)、図3に示すように、鋳型壁18の四隅の領域Rを除いた対向する短辺11、12には、鋳造方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる短辺側傾斜部24が形成されている。
対向する短辺11、12の内側断面形状、即ち短辺側傾斜部24の表面23の形状は、その幅方向に渡って同一形状となっており、メニスカス位置からの距離の増加に伴って、テーパ率の増加率が小さくなる形状、即ち、マルチテーパとなっている。
なお、短辺側傾斜部24の表面23の形状は、例えば、上記した特許第4659706号公報に記載の方法で決定できるため、説明を省略する。
【0025】
更に、鋳型壁18の対向する長辺13、14にも、鋳造方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まる長辺側傾斜部、即ち、マルチテーパを形成することが好ましいが、メニスカス位置から鋳型出口まで、同じ割合で傾斜させた形状、即ち、シングルテーパとすることもできる。
なお、マルチテーパとする場合、対向する長辺の内側断面形状、即ち長辺側傾斜部の表面形状を、その幅方向に渡って同一形状とし、メニスカス位置からの距離の増加に伴って、テーパ率の増加率が小さくなる形状とする。なお、長辺側傾斜部の表面形状は、上記した特許第4659706号公報に記載の方法で決定できる。
【0026】
図1(B)、図2(B)、図3に示すように、短辺11、12の幅方向両端部にはそれぞれ、断面円形の冷却水用通水穴(以下、単に通水穴ともいう)25、26が設けられている。
一方の通水穴25はチャンファー形成部19の裏面側に形成され、他方の通水穴26はチャンファー形成部20の裏面側に形成されている。なお、各通水穴25、26は、短辺11、12の鋳造方向一方側(ここでは、下側)から穴を形成し、その開口部に栓27をすることで形成できる。
通水穴25(通水穴26も同様)の鋳造方向両端部には、短辺11、12の幅方向端部に形成された導水溝17に連通する通水流路28、29が形成され、これにより、導水溝17を流れる冷却水を、通水穴25に連続的に流すことができる。
【0027】
なお、短辺には、上記した冷却水用通水穴の代わりに、冷却水用通水溝(以下、単に通水溝ともいう)を形成することもできる。この場合、通水溝は、以下に示す構成で、短辺に形成することができる。
・通水溝の深さ方向底部が、チャンファー形成部の裏面側に位置するように、短辺の幅方向端部に形成された導水溝から分岐させる(断面V字状)。
・短辺の幅方向両端部に形成された導水溝の深さ方向底部が、チャンファー形成部の裏面側に位置するように、導水溝を斜めに形成し、この導水溝を通水溝とする。
【0028】
以上に示した鋳型10の使用にあっては、各導水溝17に、鋳型10の下部から上部へ向けて冷却水を流すことにより、短辺11、12、及び長辺13、14の冷却を行うと共に、鋳型空間部15に供給された溶鋼の冷却を行う。このとき、短辺11、12の幅方向両端部に位置する導水溝17に流れ込んだ冷却水の一部が、通水流路28、29を介して、冷却水用通水穴25、26に連続的に流れるため、チャンファー形成部19、20の冷却効率も高めることができる。
これにより、例えば、幅が200mm以上3500mm以下程度、厚みが50mm以上500mm以下程度で、角部が面取りされた鋳片を製造できる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、チャンファー形成部が鋳片の凝固形態に及ぼす影響について、図4、図5(A)、(B)を参照しながら説明する。
図4に、FEM解析に用いた鋳型の構成(1/4形状)と、この構成の鋳型を用いて溶鋼の凝固シミュレーションを行った結果を示す。また、図5(A)に、凝固シミュレーションに用いた短辺の表面プロフィールを示すグラフを、(B)に、凝固シミュレーションに用いた長辺の表面プロフィールを示すグラフを、それぞれ示す。
【0030】
図4に示すように、比較例と実施例として、鋳型壁の四隅の領域の短辺にチャンファー形成部(幅X:15mm、幅Y:5mm)が形成された鋳型を用いた。なお、チャンファー形成部には、前記した傾斜部を形成している。
この実施例の鋳型には、鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する短辺に前記した短辺側傾斜部が、鋳型壁の対向する長辺に前記した長辺側傾斜部が、それぞれ形成されている。具体的には、図5(A)、(B)に示す表面プロフィールが形成されている。
一方、比較例の鋳型は、短辺側傾斜部と長辺側傾斜部が形成されていない短辺と長辺を用いている。具体的には、短辺が図5(A)に示す傾斜角度1.3(%/m)のシングルテーパ、長辺が図5(B)に示す傾斜角度0.89(%/m)のシングルテーパである。
【0031】
また、凝固シミュレーションは、以下の条件で行った。
・溶鋼:炭素量0.04質量%の特殊鋼
・鋳片の幅:850mm
・鋳造速度:1.5(m/分)
・鋳型の冷却水量:長辺4000(L/分/面)、短辺500(L/分/面)
・冷却水の入出の温度差:長辺6.5℃、短辺7.2℃
【0032】
図4に示すように、比較例では、短辺側傾斜部と長辺側傾斜部が形成されていない鋳型を用いたため、チャンファー形成部により、鋳片角部の冷却が緩冷却となり、鋳片角部の凝固シェルの厚みが、他の部分と比較して薄くなった。このため、鋳片角部の凝固シェルが破れ、未凝固の溶鋼が流出するブレークアウトが発生するおそれがある。
一方、実施例では、短辺側傾斜部と長辺側傾斜部が形成された鋳型を用いたため、チャンファー形成部による鋳片角部の冷却効率の低下を防止でき、鋳片角部の凝固シェルの厚みを、他の部分と同程度にできた。このため、上記したブレークアウトの発生を抑制、更には防止できる。
【0033】
なお、上記した凝固シミュレーションは、チャンファー形成部に傾斜部を形成した場合について行ったが、傾斜部が形成されていない場合でも、比較例より良好な結果が得られた。
また、上記した凝固シミュレーションは、長辺に長辺側傾斜部を形成した場合について行ったが、長辺側傾斜部が形成されていない場合でも、比較例より良好な結果が得られた。
更に、溶鋼の種類を変更(例えば、炭素量0.01?1.25質量%の範囲)して凝固シミュレーションを行っても、上記と略同様の結果が得られた。
従って、本発明の連続鋳造用鋳型を使用することで、良好な品質の鋳片を歩留りよく、しかも作業性よく安定に製造できることを確認できた。
【0034】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の連続鋳造用鋳型を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態に示した連続鋳造用鋳型は、従来使用されている垂直曲げ型の連続鋳造機や湾曲型の連続鋳造機に使用できる。
【0035】
そして、前記実施の形態においては、チャンファー形成部に傾斜部を形成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、チャンファー形成部の断面を、鋳造方向に向けて同一形状とすることもできる。
更に、前記実施の形態においては、短辺に冷却水用通水穴(冷却水用通水溝)を形成した場合について説明したが、冷却水用通水穴は必要に応じて(チャンファー形成部の冷却状態に応じて)形成しなくてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10:連続鋳造用鋳型、11、12:短辺、13、14:長辺、15:鋳型空間部、16:ボルト穴、17:導水溝、18:鋳型壁、19、20:チャンファー形成部、21、22:斜辺部、23:表面、24:短辺側傾斜部、25、26:冷却水用通水穴、27:栓、28、29:通水流路
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を有して対向配置される一対の短辺と、該短辺を幅方向の両側から挟み、対向する前記短辺の間隔を変更可能な幅を有する一対の長辺とによって囲繞される鋳型空間部に溶鋼を注入して冷却し鋳片として引き抜く連続鋳造用鋳型において、
前記鋳型空間部を形成する鋳型壁の四隅の領域の前記短辺に、前記鋳型空間部側へ向けて膨出するチャンファー形成部を形成し、前記鋳型壁の四隅の領域を除いた対向する前記短辺に、前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる短辺側傾斜部を形成し、対向する前記短辺に形成した前記チャンファー形成部には、前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる傾斜部が湯面から鋳型出口まで形成され、
前記チャンファー形成部は平断面が三角形となって、その斜辺部を直線状とし、短辺方向の幅が長辺方向の幅よりも長く、該短辺方向の幅が10?30mm、前記長辺方向の幅が3?10mm、かつ、前記鋳型壁の四隅の領域を除いた前記短辺の表面に対する前記斜辺部の立ち上がり角度が10?30度であり、前記短辺には、前記チャンファー形成部を冷却する冷却水用通水溝が設けられ、対向する前記長辺には、前記鋳片が引き抜かれる方向に鋳片シェルの凝固収縮量に追従して間隔が徐々に狭まり幅方向に渡って表面の形状が同一形状となる長辺側傾斜部が形成され、該各長辺側傾斜部は、対向する前記短辺の幅方向の両側面に当接していることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
【請求項2】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-06-24 
出願番号 特願2014-363(P2014-363)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B22D)
P 1 651・ 536- YAA (B22D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川崎 良平  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 栗田 雅弘
刈間 宏信
登録日 2017-02-03 
登録番号 特許第6085571号(P6085571)
権利者 三島光産株式会社
発明の名称 連続鋳造用鋳型  
代理人 中前 富士男  
代理人 中前 富士男  

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