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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1354452 |
審判番号 | 不服2018-9870 |
総通号数 | 238 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-10-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-19 |
確定日 | 2019-09-03 |
事件の表示 | 特願2016-151406「タッチ検出器、タッチ検出チップ及びタッチ入力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日出願公開、特開2017- 33567、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年8月1日(パリ条約による優先権主張2015年8月3日,韓国)の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 5月29日付け 拒絶理由通知書 平成29年11月27日 意見書,手続補正書の提出 平成30年 3月16日付け 拒絶査定 平成30年 7月19日 審判請求書,手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(平成30年3月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 この出願の請求項1ないし21に係る発明は、その優先権主張日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2014-191779号公報 第3 補正の適否 1 審判請求時の補正(平成30年7月19日提出。以下,「本件補正」という。)によって補正前の請求項1及び14に 「前記駆動信号を伝達するための複数の出力端子を含み、 前記複数の出力端子のうちの少なくとも一つは、圧力検出のためだけの圧力検出用出力端子であり、 前記駆動信号が印加される前記少なくとも2つ以上の電極は、少なくとも一つの圧力検出用駆動電極とn個の位置検出用駆動電極を含み、 前記駆動部は、前記n個の位置検出用駆動電極に駆動信号を印加する時間区間の間に、前記少なくとも一つの圧力検出用駆動電極に駆動信号を印加するように構成され、 前記nは自然数である、」 という事項を追加する補正は,「前記nは自然数である、」とした上で,「駆動信号」について,「前記駆動信号を伝達するための複数の出力端子を含」むとし,その「出力端子」について,「前記複数の出力端子のうちの少なくとも一つは、圧力検出のためだけの圧力検出用出力端子であり、前記駆動信号が印加される前記少なくとも2つ以上の電極は、少なくとも一つの圧力検出用駆動電極とn個の位置検出用駆動電極を含み」との限定を加え,さらに,「駆動信号を印可する駆動部」について,「前記n個の位置検出用駆動電極に駆動信号を印加する時間区間の間に、前記少なくとも一つの圧力検出用駆動電極に駆動信号を印加するように構成され」るとの限定を加えているから,この補正は,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。 また,上記事項は,当初明細書【0043】,【0044】,【0053】ないし【0057】並びに【図5】,【図7】に記載されているから,この補正は新規事項を追加するものではない。 2 本件補正によって補正前の請求項9の「位置検出用駆動電極」について「n個の位置検出用駆動電極を含み」とし,さらに,「駆動部」について,「前記駆動部は、前記n個の位置検出用駆動電極に駆動信号を印加する時間区間の間に、前記少なくとも一つの圧力検出用駆動電極に駆動信号を印加するように構成され、前記nは自然数であり、」との限定を加えているから,この補正は,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。 また,上記事項は,当初明細書【0043】,【0044】,【0053】ないし【0057】並びに【図5】,【図7】に記載されているから,この補正は新規事項を追加するものではない。 3 本件補正により補正前の請求項2及び15の 「前記駆動信号が印加される前記少なくとも2つ以上の電極のうち、少なくとも一つは圧力検出用駆動電極であり、」 という事項を削除する補正は,補正前の請求項2及び15に係る発明が引用する補正前の請求項1及び14に係る発明に,前記削除した事項を更に限定した,上記1で検討した技術的事項が追加したことに伴い,重複する記載を削除するものであるから,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであり,又,新規事項を追加するものではない。 4 本件補正により補正前の請求項7,12及び20の 「前記駆動信号が印加される前記少なくとも2つ以上の電極は、少なくとも一つの圧力検出用駆動電極とn個の位置検出用駆動電極とを含み、」 及び, 「前記駆動部は、前記n個の位置検出用駆動電極に所定の時間区間の間に駆動信号を印加し、前記少なくとも一つの圧力検出用駆動電極に前記所定の時間区間の間に駆動信号を印加する、」 という事項を削除する補正は,補正前の請求項7,12及び20が引用する補正前の請求項1,9及び14に係る発明に,前記削除した事項を更に限定した,上記1及び2で検討した,技術的事項が追加したことに伴い,重複する記載を削除するものであるから,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであり,又,新規事項を追加するものではない。 5 本件補正により補正前の請求項3及び16を削除する補正は,請求項の削除を目的とするものである。 6 したがって,本件補正は,特許請求の範囲の減縮もしくは請求項の削除を目的とし,当初明細書等に記載された事項であり,又,補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1ないし19に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1ないし19に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明19」という。)は,本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 複数の電極のうち少なくとも2つ以上の電極に駆動信号を印加する駆動部と、 前記複数の電極のうち少なくとも2つ以上の電極から複数の感知信号を受信して、タッチ位置及びタッチ圧力を検出する感知部と、 前記複数の感知信号を受信するための複数の入力端子と、 を含み、 前記複数の入力端子は、前記タッチ圧力のみを検出するための1つ以上の圧力検出用入力端子及び前記タッチ位置のみを検出するための1つ以上の位置検出用入力端子を含み、 前記駆動信号を伝達するための複数の出力端子を含み、 前記複数の出力端子のうちの少なくとも一つは、圧力検出のためだけの圧力検出用出力端子であり、 前記駆動信号が印加される前記少なくとも2つ以上の電極は、少なくとも一つの圧力検出用駆動電極とn個の位置検出用駆動電極を含み、 前記駆動部は、前記n個の位置検出用駆動電極に駆動信号を印加する時間区間の間に、前記少なくとも一つの圧力検出用駆動電極に駆動信号を印加するように構成され、 前記nは自然数である、 タッチ検出チップ。 【請求項2】 前記複数の感知信号を受信するための前記少なくとも2つ以上の電極のうち、少なくとも一つは圧力検出用受信電極である、 請求項1に記載のタッチ検出チップ。 【請求項3】 前記圧力検出用駆動電極と前記圧力検出用受信電極とは、同一の圧力検出用電極であり、 前記感知部は、前記圧力検出用入力端子を介して、前記圧力検出用電極と離隔された基準電位層と前記圧力検出用電極との間の相対的な距離によって変わる前記圧力検出用電極と前記基準電位層との間の静電容量に対する情報を含む信号を受信し、 前記圧力検出用電極に印加される前記駆動信号は、前記駆動部と前記圧力検出用電極との間に位置する第1インピーダンスを通過した後に前記圧力検出用電極に印加され、且つ、前記圧力検出用電極から受信される前記信号は、前記感知部と前記圧力検出用電極との間に位置する第2インピーダンスを通過した後に前記感知部に受信される、 請求項2に記載のタッチ検出チップ。 【請求項4】 前記圧力検出用駆動電極と前記圧力検出用受信電極とは、同一の圧力検出用電極であり、 前記感知部は、前記圧力検出用入力端子を介して、前記圧力検出用電極と離隔された基準電位層と前記圧力検出用電極との間の相対的な距離によって変わる前記電極と前記基準電位層との間の静電容量に対する情報を含む信号を受信し、 前記駆動部と前記圧力検出用出力端子との間に第1インピーダンス、及び前記感知部と前記圧力検出用入力端子との間に第2インピーダンスをさらに含む、 請求項2に記載のタッチ検出チップ。 【請求項5】 前記第1インピーダンス及び前記第2インピーダンスは、静電容量性素子である、 請求項3または4に記載のタッチ検出チップ。 【請求項6】 前記複数の感知信号を受信するための前記少なくとも2つ以上の電極は、少なくとも一つの圧力検出用受信電極とm個の位置検出用受信電極とを含む、 請求項1に記載のタッチ検出チップ。 【請求項7】 前記感知部は、増幅器と、前記増幅器の負入力端と出力端との間に連結された帰還キャパシタとを含み、 前記感知部は、前記所定の時間区間の間に前記m個の位置検出用受信電極から検出されたn*m個のタッチ位置データ、及び前記少なくとも一つの圧力検出用受信電極から検出された少なくとも一つのタッチ圧力データを出力できるように構成された、 請求項6に記載のタッチ検出チップ。 【請求項8】 複数の電極のうち少なくとも2つ以上の電極に駆動信号を印加する駆動部と、 前記複数の電極のうち少なくとも2つ以上の電極から複数の感知信号を受信して、タッチ位置及びタッチ圧力を検出する感知部と、 を含み、 前記駆動信号が印加される前記少なくとも2つ以上の電極は、少なくとも一つの圧力検出用駆動電極とn個の位置検出用駆動電極を含み、 前記駆動部は、前記n個の位置検出用駆動電極に駆動信号を印加する時間区間の間に、前記少なくとも一つの圧力検出用駆動電極に駆動信号を印加するように構成され、 前記nは自然数であり、 前記複数の感知信号を受信するための前記少なくとも2つ以上の電極は、少なくとも一つの圧力検出用受信電極及び少なくとも一つの位置検出用受信電極を含む、 タッチ検出器。 【請求項9】 前記圧力検出用駆動電極と前記圧力検出用受信電極とは、同一の圧力検出用電極であり、 前記感知部は、前記圧力検出用電極と離隔された基準電位層と前記圧力検出用電極との間の相対的な距離によって変わる前記圧力検出用電極と前記基準電位層との間の静電容量に対する情報を含む信号を受信し、 前記圧力検出用電極に印加される前記駆動信号は、前記駆動部と前記圧力検出用電極との間に位置する第1インピーダンスを通過した後に前記圧力検出用電極に印加され、且つ、前記圧力検出用電極から受信される前記信号は、前記感知部と前記圧力検出用電極との間に位置する第2インピーダンスを通過した後に前記感知部に受信される、 請求項8に記載のタッチ検出器。 【請求項10】 前記第1インピーダンス及び前記第2インピーダンスは、静電容量性素子である、請求項9に記載のタッチ検出器。 【請求項11】 前記複数の感知信号を受信するための前記少なくとも2つ以上の電極は、前記少なくとも一つの圧力検出用受信電極とm個の位置検出用受信電極とを含む、 請求項8に記載のタッチ検出器。 【請求項12】 前記感知部は、増幅器と、前記増幅器の負入力端と出力端との間に連結された帰還キャパシタを含み、 前記感知部は、前記所定の時間区間の間に前記m個の位置検出用受信電極から検出されたn*m個のタッチ位置データ、及び前記少なくとも一つの圧力検出用受信電極から検出された少なくとも一つのタッチ圧力データを出力できるように構成された、 請求項11に記載のタッチ検出器。 【請求項13】 複数の電極と、 タッチ検出チップと、 を含み、 前記タッチ検出チップは、 前記複数の電極のうち少なくとも2つ以上の電極に駆動信号を印加する駆動部と、 前記複数の電極のうち少なくとも2つ以上の電極から複数の感知信号を受信して、タッチ位置及びタッチ圧力を検出する感知部と、 前記複数の感知信号を受信するための複数の入力端子と、 を含み、 前記複数の入力端子は、前記タッチ圧力のみを検出するための1つ以上の圧力検出用入力端子及び前記タッチ位置のみを検出するための1つ以上の位置検出用入力端子を含み、 前記駆動信号を伝達するための複数の出力端子を含み、 前記複数の出力端子のうちの少なくとも一つは、圧力検出のためだけの圧力検出用出力端子であり、 前記駆動信号が印加される前記少なくとも2つ以上の電極は、少なくとも一つの圧力検 出用駆動電極とn個の位置検出用駆動電極を含み、 前記駆動部は、前記n個の位置検出用駆動電極に駆動信号を印加する時間区間の間に、前記少なくとも一つの圧力検出用駆動電極に駆動信号を印加するように構成され、 前記nは自然数である、 タッチ入力装置。 【請求項14】 前記複数の感知信号を受信するための前記少なくとも2つ以上の電極のうち、少なくとも一つは圧力検出用受信電極である、 請求項13に記載のタッチ入力装置。 【請求項15】 前記圧力検出用駆動電極と前記圧力検出用受信電極とは、同一の圧力検出用電極であり、 前記感知部は、前記圧力検出用入力端子を介して、前記圧力検出用電極と離隔された基準電位層と前記圧力検出用電極との間の相対的な距離によって変わる前記圧力検出用電極と前記基準電位層との間の静電容量に対する情報を含む信号を受信し、 前記圧力検出用電極に印加される前記駆動信号は、前記駆動部と前記圧力検出用電極との間に位置する第1インピーダンスを通過した後に前記圧力検出用電極に印加され、且つ、前記圧力検出用電極から受信される前記信号は、前記感知部と前記圧力検出用電極との間に位置する第2インピーダンスを通過した後に前記感知部に受信される、 請求項14に記載のタッチ入力装置。 【請求項16】 前記圧力検出用駆動電極と前記圧力検出用受信電極とは、同一の圧力検出用電極であり、 前記感知部は、前記圧力検出用入力端子を介して、前記圧力検出用電極と離隔された基準電位層と前記圧力検出用電極との間の相対的な距離によって変わる前記圧力検出用電極と前記基準電位層との間の静電容量に対する情報を含む信号を受信し、 前記駆動部と前記圧力検出用出力端子との間に第1インピーダンス、及び前記感知部と前記圧力検出用入力端子との間に第2インピーダンスをさらに含む、 請求項14に記載のタッチ入力装置。 【請求項17】 前記第1インピーダンス及び前記第2インピーダンスは、静電容量性素子である、 請求項15または16に記載のタッチ入力装置。 【請求項18】 前記複数の感知信号を受信するための前記少なくとも2つ以上の電極は、少なくとも一つの圧力検出用受信電極とm個の位置検出用受信電極とを含む、 請求項13に記載のタッチ入力装置。 【請求項19】 前記感知部は、増幅器と、前記増幅器の負入力端と出力端との間に連結された帰還キャパシタを含み、 前記感知部は、前記所定の時間区間の間に前記m個の位置検出用受信電極から検出されたn*m個のタッチ位置データ、及び前記少なくとも一つの圧力検出用受信電極から検出された少なくとも一つのタッチ圧力データを出力できるように構成された、 請求項18に記載のタッチ入力装置。」 第5 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、入力機能付き表示装置、および電子機器に関する。 【背景技術】 【0002】 従来から、例えば、入力操作を検出するための検出電極を含む入力板と、画像を表示するための表示電極を含む表示板とが互いに対向して配置された入力機能付き表示装置が知られている。入力板のうち表示板と対向する面上には、導電層が設けられている。このような表示装置では、使用者における指等と検出電極との間の容量に基づいて入力操作を検出するとともに、導電層と表示電極との間の容量に基づいて入力板に対する押圧操作を検出することができる。ここで、導電層は、例えば、表示電極から検出電極に対して電気的ノイズが混入する可能性を低減する目的で、入力板のうち表示板と対向する全面上に設けられている(例えば、特許文献1参照)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開平7-64725号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、上記従来の表示装置では、例えば、導電層の面積が相対的に大きいため、押圧操作を検出する際に、表示電極から導電層に混入する電気的ノイズが相対的に大きくなる可能性があった。表示電極から導電層に混入する電気的ノイズが相対的に大きくなると、押圧操作の検出精度が低下してしまう可能性があった。 【0005】 本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、検出精度が低下してしまう可能性を低減することができる入力機能付き表示装置、および電子機器に関する。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明に係る入力機能付き表示装置の一態様は、中央領域および該中央領域を取り囲むように位置する周縁領域を有しており、入力操作を検出するための検出電極を含む入力板と、該入力板上に設けられており、平面視して前記検出電極と重なる導電層と、該導電層と対向して配置されており、画像を表示するための表示電極を含む表示板と、前記導電層と前記表示板とを離間させるように前記周縁領域において前記入力板を支持する支持部材と、を備え、前記導電層は、少なくとも一部が前記中央領域に位置する第1導電層と、少なくとも一部が前記周縁領域に位置しており、前記第1導電層とは離間した第2導電層と、を有している。 【0007】 本発明に係る電子機器は、本発明に係る入力機能付き表示装置と、該入力機能付き表示装置が収容された筺体と、を備える。 【発明の効果】 【0008】 本発明の入力機能付き表示装置、および電子機器は、検出精度が低下してしまう可能性を低減することができる、という効果を奏する。」 「【0013】 図1?図5に示すように、表示装置X1は、入力機能付き表示装置である。表示装置X1は、入力板2、導電層3、表示板4、支持部材5、バックライト6、回路基板7、および第1筺体8を備えている。なお、図1では、バックライト6および回路基板7の図示は省略する。 【0014】 入力板2は、入力機能を有している。入力板2は、基体21、検出電極22、第1絶縁層23、および第2絶縁層24を有している。 【0015】 基体21は、検出電極22、第1絶縁層23、および第2絶縁層24を支持する役割を有する。基体21は、第1主面21Aおよび第2主面21Bを有する。第1主面21Aは、第2主面21Bよりも使用者側に位置している。第2主面21Bは、第1主面21Aの反対側に位置している。具体的には、第2主面21Bは、第1主面21Aよりも使用者から遠い側に位置している。なお、本実施形態では、基体21は、平面視して矩形状であるが、これに限らない。基体21は、平面視して円形状あるいは多角形状等であってもよい。入力板2の構成材料としては、例えば、ガラスあるいはプラスチック等の透明樹脂材料が挙げられる。 【0016】 検出電極22は、入力操作を検出する役割を有する。検出電極22は、基体21の第2主面21B上に設けられている。ここで、表示装置X1の使用者が指F1を第1主面21Aに接触あるいは近接した場合に、基体21を介して検出電極22と指F1との間に容量が生じる。表示装置X1では、当該容量の変化を捉えることによって、入力操作を検出することができる。 【0017】 検出電極22は、入力電極22aおよび出力電極22bを有する。 【0018】 入力電極22aは、制御IC71に含まれる第1電圧供給部111(図9参照)から電圧が印加される電極である。入力電極22aは、基体21の第2主面21B上において、X方向に並んで複数設けられている。なお、本実施形態では、入力電極22aは、平面視してY方向に伸びる略矩形状である。すなわち、入力電極22aの長手方向は、Y方向である。なお、入力電極22aの平面視形状は、表示装置X1の使用態様に応じて適宜変更することができる。 【0019】 出力電極22bは、入力電極22aに印加された電圧に基づいて、制御IC71に含まれる第1受信部112(図9参照)に対して信号を出力する電極である。出力電極22bは、基体21の第2主面21B上において、Y方向に並んで複数設けられている。具体的には、出力電極22bは、第1絶縁層23上に設けられている。ここで、第1絶縁層23は、入力電極22aを被覆して、基体21の第2主面21B上に設けられている。第1絶縁層23の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、あるいはウレタン系樹脂等の樹脂材料が挙げられる。 【0020】 なお、本実施形態では、出力電極22bは、平面視してX方向に伸びる略矩形状である。すなわち、出力電極22bの長手方向は、X方向である。なお、出力電極22bの平面視形状は、表示装置X1の使用態様に応じて適宜変更することができる。ここで、X方向とY方向とは、互いに異なる方向である。このため、出力電極22bは、平面視して入力電極22aと交差している。また、複数の出力電極22bは、複数の出力電極群22Bに群別されている。本実施形態では、出力電極群22Bは、3つの出力電極22bを含んでおり、3群設けられている。」 「【0027】 導電層3は、入力板2上に設けられている。具体的には、導電層3は、第2絶縁層24上に設けられている。また、導電層3は、平面視して検出電極22と重なっている。導電層3は、第1導電層31および第2導電層32を有している。 【0028】 第1導電層31は、表示板4の表示電極45との間において容量を発生する役割を有する。本実施形態では、第1導電層31は、入力電極22aの長手方向であるY方向に沿って設けられている。すなわち、第1導電層31の長手方向は、Y方向である。第1導電層31は、第1部位31aおよび第2部位31bを有している。第1部位31aは、中央領域E1に位置している。第2部位31bは、第1部位31aと制御IC71に含まれる第2制御部130(図9参照)とを電気的に接続するための部位である。第2部位31bは、第1部位31aと連続しており、周縁領域E2に位置している。 【0029】 第2導電層32は、表示板4の表示電極45から発生した電気的ノイズが、検出電極22に混入する可能性を低減する役割を有する。第2導電層32は、周縁領域E2に位置しており、第1導電層31とは離間している。具体的には、第2導電層32は、中央領域E1に位置する第1部位31aを取り囲むように位置している。本実施形態では、第2導電層32は、第2部位31bが設けられていない周縁領域E2の略全体に亘って設けられている。」 「【0039】 具体的には、表示装置X1では、第1導電層31と第1表示電極45aとの間における容量の変化を捉えて押圧操作を検出する。すなわち、例えば、第1導電層31に電圧が印加されることによって、第1導電層31と第1表示電極45aとの間には、第1導電層31と第1表示電極45aとの離間距離D1に応じた容量が生じる。ここで、図6に示すように、指F1によって入力板2が第1主面21Aから第2主面21Bへと押圧された場合、離間距離D1が変化する。このため、当該離間距離の変化に伴って、第1導電層31と第1表示電極45aとの間に生じる容量が変化する。表示装置X1では、当該容量の変化を捉えて押圧操作を検出する。 【0040】 ここで、従来の表示装置では、導電層は、第1導電層と第2導電層とに分かれていなかった。具体的には、導電層は、中央領域から周縁領域に亘って設けられていた。このような表示装置では、導電層によって、第1表示電極との間における容量の変化を捉えて押圧操作を検出するとともに、第1表示電極から検出電極に電気的ノイズが混入する可能性を低減していた。しかしながら、導電層は、中央領域から周縁領域に亘って設けられているために、押圧操作を検出する際に、第1表示電極から生じた電気的ノイズが混入する可能性が高かった。また、入力板は周縁領域において支持部材に支持されているために、指によって入力板が第1主面から第2主面へと押圧された場合、周縁領域に位置する導電層と第1表示電極との離間距離の変化が相対的に小さくなる。このため、周縁領域に位置する導電層は、導電層と第1表示電極との間における容量の変化に寄与しない可能性が低かった。 【0041】 そこで、表示装置X1では、導電層3は、第1導電層31および第2導電層32を有している。第1導電層31の一部は、中央領域E1に位置している。ここで中央領域E1は、指F1による入力板2の押圧によって、導電層3と第1表示電極45aとの離間距離D1に変化が生じやすい領域である。表示装置X1では、中央領域E1に第1導電層31の少なくとも一部を設けるとともに、周縁領域E2には第1導電層31と離間した第2導電層32を設けている。このため、第1導電層31は、従来の表示装置における導電層に比して平面視における面積を小さくすることができるとともに、第1導電層31と第1表示電極45aとの間における容量の変化が小さくなってしまう可能性を低減することができる。そのため、押圧操作の検出精度が低下してしまう可能性を低減することができる。また、周縁領域E2においては、第2導電層32によって第1表示電極45aから検出電極22に電気的ノイズが混入する可能性を低減することができる。このため、入力操作の検出精度が低下してしまう可能性を低減することができる。 【0042】 なお、本実施形態のように、第1部位31aの平面視幅W1は、第2部位31bの平面視幅W2よりも大きいことが好ましい。このような構成によれば、指F1による入力板2の押圧によって、離間距離D1が変化しやすい中央領域E1に位置する第1部位31aにおいて、第1表示電極45aとの間において生じる容量をより大きくすることができる。 【0043】 また、本実施形態では、第1導電層31は、第1部位31aおよび第2部位31bを有する例について説明したが、これに限らない。第1導電層31は、例えば、図7に示すように、中央領域E1および周縁領域E2において略同一の平面視幅を有していてもよい。また、第1導電層31は、例えば、図8に示すように、第2導電層32を2つに分断するように設けられていてもよい。このように、第1導電層31の平面視形状は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。 【0044】 また、第2導電層32は、基準電位に設定されていることが好ましい。第2導電層32が基準電位に設定されていると、当該第2導電層32によって第1表示電極45aから検出電極22に電気的ノイズが混入する可能性をより低減することができる。」 「【0046】 回路基板7は、バックライト6の下方に配置されており、その下面には、制御IC71が設けられている。制御IC71は、例えば、入力操作の検出および押圧操作の検出を行う役割を有する。検出制御IC71は、図示しないフレキシブルプリント配線基板等を介して、検出電極22および第1導電層31に電気的に接続されている。 【0047】 制御IC71は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびメモリから構成されており、図9に示すように、第1制御部110、動作制御部120、第2制御部130、および基準電位設定部140を含んでいる。なお、本実施形態では、第1制御部110、動作制御部120、第2制御部130、および基準電位設定部140は、物理的に1つの制御IC71に含まれているが、これに限らず、回路基板7上において、第1制御部110、動作制御部120、第2制御部130、および基準電位設定部140毎に、それぞれ個別に制御ICが設けられていてもよい。」 「【0052】 次に、図9を参照しながら、制御IC71が備える第1制御部110、動作制御部120、第2制御部130、および基準電位設定部140について、具体的に説明する。 【0053】 ここで、上記の第1制御部110、動作制御部120、第2制御部130、および基準電位設定部140の各機能は、コンピュータが備えるCPU等の演算装置が所定のプログラムを実行することによって実現される。 【0054】 第1制御部110は、第1電圧供給部111および第1受信部112を有する。 【0055】 第1電圧供給部111は、入力電極22aに対して入力信号Vinを供給する役割を有する。本実施形態では、入力信号Vinは、所定周波数の波形を有する電圧V1である。第1受信部112は、入力信号Vinに対応した出力信号Ioutを、出力電極22bから受信する役割を有する。すなわち、指F1によって入力操作が行われていない場合、出力信号Ioutとして、電流量I_(1)が検出される。ここで、指F1が基体21の第1主面21Aに接触あるいは近接することで入力操作が行われた場合、指F1と検出電極22との間に容量C1が生じる。このため、第1受信部112が受信した電流量I_(1)は、電流量I_(2)へと変化する。なお、本実施形態では、第1受信部112は、出力電極群22B毎に出力信号Ioutを検出している。すなわち、第1受信部112は、1つの出力電極群22Bに含まれる3つの出力電極22bから同時に出力信号Ioutを受信する。 【0056】 動作制御部120は、比較部121および切替部122を有する。 【0057】 比較部121は、図示しない閾値記録部に記録された閾値Ixを参照し、当該閾値Ixと出力信号Ioutとを比較する。比較部121は、出力信号Ioutが閾値Ixに達した場合に、入力操作が行われたと判断し、当該入力操作を検出する。閾値Ixは、例えば、電流量I_(1)と電流量I_(2)との間の値とすることができる。なお、本実施形態では、第1部位31aは、1つの出力電極群22Bのみと重なっている。このため、比較部121は、当該第1部位31aと重なる1つの出力電極群22Bから受信した出力信号Ioutと閾値Ixとを比較する場合に、電気的ノイズを考慮して出力信号Ioutを校正することで、検出精度が低下してしまう可能性を低減することができる。 【0058】 切替部122は、第1制御部110と第2制御部130との動作を切り替える役割を有する。切替部122は、比較部121が入力操作を検出した場合に、第1制御部110の動作を停止するとともに、第2制御部130の動作を開始する。また、切替部122は、比較部121が押圧操作を検出した場合に、第2制御部130の動作を停止するとともに、第1制御部110の動作を開始する。すなわち、本実施形態では、第1制御部110と第2制御部130とは、同時に動作していない。なお、第1制御部110と第2制御部130とは、同時に動作する期間があってもよい。 【0059】 第2制御部130は、第2電圧供給部131および第2受信部132を有する。 【0060】 第2電圧供給部131は、第1導電層31に対して入力信号Vinを供給する役割を有する。本実施形態では、入力信号Vinは、所定周波数の波形を有する電圧V2である。第2受信部132は、入力信号Vinに対応した出力信号Ioutを受信する役割を有する。すなわち、指F1によって押圧操作が行われていない場合、出力信号Ioutとして、電流量I_(3)が検出される。ここで、指F1が基体21を第1主面21Aから第2主面21Bへと押圧した場合、第1導電層31と表示電極45との間の容量C2が変化する。このため、第2受信部132が受信した電流量I_(3)は、電流量I_(4)へと変化する。ここで、比較部121は、図示しない閾値記録部に記録された閾値Iyを参照し、当該閾値Iyと出力信号Ioutとを比較する。比較部121は、出力信号Ioutが閾値Iyに達した場合に、押圧操作が行われたと判断し、当該押圧操作を検出する。このように、本実施形態では、1つの比較部121によって、入力操作および押圧操作を検出することができる。 【0061】 基準電位設定部140は、検出電極22または第1導電層31を基準電位に設定する役割を有する。基準電位設定部140は、第1制御部110が動作している場合は、第1導電層31を基準電位に設定する。このため、表示装置X1の使用者が入力操作を行う際に、第1表示電極45aから検出電極22に電気的ノイズが混入する可能性をより低減することができる。また、基準電位設定部140は、第2制御部130が動作している場合は、検出電極22を基準電位に設定する。このため、表示装置X1の使用者が押圧操作を行う際に、当該使用者の指F1から第1導電層31に電気的ノイズが混入する可能性を低減することができる。 【0062】 なお、上記では、第1制御部110、動作制御部120、第2制御部130、および基準電位設定部140は、ソフトウェアによって実現される例を説明したが、これに限らない。第1制御部110、動作制御部120、第2制御部130、および基準電位設定部140は、ハードウェアによって実現されていてもよい。また、第1制御部110、動作制御部120、第2制御部130、および基準電位設定部140の一部の機能がソフトウェアによって実現され、第1制御部110、動作制御部120、第2制御部130、および基準電位設定部140の残部の機能がハードウェアによって実現されていてもよい。」 「【0063】 次に、図10?図12を参照しなから、表示装置X1の動作について説明する。 【0064】 まず、図10を参照しながら、入力操作の検出を行う際の動作について説明する。図10に示すように、まず、第1電圧供給部111は、入力電極22aに対して入力信号Vinを供給する(Op1)。そして、第1受信部112は、入力信号Vinに対応する出力信号Ioutを、出力電極22bから常時受信している(Op2)。ここで、指F1が基体21の第1主面21Aに接触あるいは近接した場合、出力信号Ioutが変化する。比較部121は、閾値記録部に記録された閾値Ixを参照し、当該閾値Ixと第1受信部112が受信した出力信号Ioutとを比較し(Op3)、出力信号Ioutが閾値Ix以上であるか否かを判定する(Op4)。比較部121は、出力信号Ioutが閾値Ix以上であると判定すれば(Op4にてYES)、指F1によって入力操作が行われたと判断し、当該入力操作を検出する(Op5)。一方、比較部121は、出力信号Iutが閾値Ixに達していないと判定すれば(Op4にてNO)、Op3に戻って出力信号Ioutと閾値Ixとの比較を続ける。なお、上述したOp1?Op5において、第1導電層31は、基準電位に設定されている。 【0065】 次に、図11(a)を参照しながら、入力操作の検出後の動作について説明する。図11(a)に示すように、比較部121が入力操作を検出した後(Op5)、比較部121は、切替部122に対して検出完了信号を送出する。検出完了信号を受信した切替部122は、第1制御部110の動作を停止させる(Op6)。そして、切替部122は、基準電位設定部140に対して、切替信号を送出する。切替信号を受信した基準電位設定部140は、検出電極22を基準電位に設定するとともに(Op7)、第1導電層31を基準電位から解放する(OP8)。そして、切替部122は、第2制御部130の動作を開始させる(Op9)。なお、Op6?Op8の順序は任意である。 【0066】 次に、図12を参照しながら、押圧操作の検出を行う際の動作について説明する。図12に示すように、第2電圧供給部131は、第1導電層31に対して入力信号Vinを供給する(Op10)。そして、第2受信部132は、入力信号Vinに対応する出力信号Ioutを、第1導電層31から受信する(Op11)。ここで、指F1が入力板2を第1主面21Aから第2主面21Bへ押圧した場合、出力信号Ioutが変化する。比較部121は、閾値記録部に記録された閾値Iyを参照し、当該閾値Iyと出力信号Ioutとを比較し(Op12)、出力信号Ioutが閾値Iy以上であるか否かを判定する(Op13)。そして、比較部121は、出力信号Ioutが閾値Iyに達したと判定すれば(Op13にてYES)、指F1によって押圧操作が行われたと判断し、当該押圧操作を検出する(Op14)。一方、比較部121は、検出信号Voutが閾値Vyに達していないと判断すれば(Op13にてNO)、Op12に戻って出力信号Ioutと閾値Iyとの比較を続ける。なお、使用者の指F1が基体21の第1主面21Aから離れた時点で、図12の処理を終了してもよい。 【0067】 次に、図11(b)を参照しながら、押圧操作の検出後の動作について説明する。図11(b)に示すように、比較部121が押圧操作を検出した後(Op14)、比較部121は、切替部122に対して検出完了信号を送出する。検出完了信号を受信した切替部122は、第2制御部130の動作を停止させる(Op15)。そして、切替部122は、基準電位設定部140に対して、切替信号を送出する。切替信号を受信した基準電位設定部140は、第1導電層31を基準電位に設定するとともに(Op16)、検出電極22を基準電位から解放する(OP17)。そして、切替部122は、第1制御部110の動作を開始させる(Op18)。なお、Op15?Op17の順序は任意である。 【0068】 以上のように、表示装置X1では、検出精度が低下してしまう可能性を低減することができる。」 上記記載から,引用文献1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「入力操作の検出および押圧操作の検出を行う制御IC71であって, 制御IC71は,第1制御部110,動作制御部120,第2制御部130,および基準電位設定部140を含み, 第1制御部110は,第1電圧供給部111および第1受信部112を有し, 第1電圧供給部111は,入力電極22aに対して入力信号Vinを供給し, 第1受信部112は,入力信号Vinに対応した出力信号Ioutを,出力電極22bから受信し, 指F1が基体21の第1主面21Aに接触あるいは近接することで入力操作が行われた場合,指F1と検出電極22との間に容量C1が生じ,第1受信部112が受信した電流量I_(1)は,電流量I_(2)へと変化し, 第2制御部130は,第2電圧供給部131および第2受信部132を有し, 第2電圧供給部131は,第1導電層31に対して入力信号Vinを供給し, 第2受信部132は,入力信号Vinに対応した出力信号Ioutを受信し, 指F1が基体21を第1主面21Aから第2主面21Bへと押圧した場合,第1導電層31と表示電極45との間の容量C2が変化し,第2受信部132が受信した電流量I_(3)は,電流量I_(4)へと変化し, 動作制御部120は,比較部121および切替部122を有し, 比較部121は,出力信号Ioutが閾値Ixに達した場合に,入力操作が行われたと判断し,当該入力操作を検出し, 比較部121は,出力信号Ioutが閾値Iyに達した場合に,押圧操作が行われたと判断し, 切替部122は,第1制御部110と第2制御部130との動作を切り替える役割を有し, 切替部122は,比較部121が入力操作を検出した場合に,第1制御部110の動作を停止するとともに,第2制御部130の動作を開始し, 切替部122は,比較部121が押圧操作を検出した場合に,第2制御部130の動作を停止するとともに,第1制御部110の動作を開始し, 基準電位設定部140は,第1制御部110が動作している場合は,検出電極22に電気的ノイズが混入する可能性をより低減するために,第1導電層31を基準電位に設定し, 基準電位設定部140は,第2制御部130が動作している場合は,第1導電層31に電気的ノイズが混入する可能性を低減するために,検出電極22を基準電位に設定する, 制御IC71。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明の「制御IC71」は,「第1電圧供給部111は,入力電極22aに対して入力信号Vinを供給し」,加えて,「第2電圧供給部131は,第1導電層31に対して入力信号Vinを供給し」ているから,このことは,本願発明1の「複数の電極のうち少なくとも2つ以上の電極に駆動信号を印加する」と同様の動作を行っていると認められる。 そうすると,引用発明の「入力信号Vin」は,本願発明1の「駆動信号」に相当し,さらに,引用発明の「第1電圧供給部111」及び「第2電圧供給部131」は,本願発明1の「複数の電極のうち少なくとも2つ以上の電極に駆動信号を印加する駆動部」に相当する。 さらに,引用発明の「入力信号Vin」は,「入力電極22a」及び「第1導電層31」に供給されているから,引用発明の「入力電極22a」及び「第1導電層31」は,本願発明1の「前記駆動信号が印加される前記少なくとも2つ以上の電極」に相当し,本願発明1の「前記nは自然数である」ことから,引用発明の「入力電極22a」及び「第1導電層31」は,本願発明1の「少なくとも一つの圧力検出用駆動電極とn個の位置検出用駆動電極」を含むものと同様の構成であると認められる。 イ 引用発明の「第1受信部112」は,「入力信号Vinに対応した出力信号Ioutを,出力電極22bから受信し,指F1が基体21の第1主面21Aに接触あるいは近接することで入力操作が行われた場合,指F1と検出電極22との間に容量C1が生じ,第1受信部112が受信した電流量I_(1)は,電流量I_(2)へと変化し」,「比較部121」で,「出力信号Ioutが閾値Ixに達した場合に,入力操作が行われたと判断し,当該入力操作を検出し」,加えて,「第2受信部132」は,「入力信号Vinに対応した出力信号Ioutを受信し,指F1が基体21を第1主面21Aから第2主面21Bへと押圧した場合,第1導電層31と表示電極45との間の容量C2が変化し,第2受信部132が受信した電流量I_(3)は,電流量I_(4)へと変化し,」「比較部121」で,出力信号Ioutが閾値Iyに達した場合に,押圧操作が行われたと判断し」ているから,引用発明の「比較部121」は,入力操作及び押圧操作を検知していると認められる。 そうすると,引用発明の「比較部121」は,本願発明1の「前記複数の電極のうち少なくとも2つ以上の電極から複数の感知信号を受信して、タッチ位置及びタッチ圧力を検出する感知部」に相当する。 ウ 引用発明の「制御IC71」は,入力操作及び押圧操作を検知しているから,本願発明1の「タッチ検出チップ」に相当する。 エ そうすると,本願発明1と引用発明とは,以下の点で一致し,又相違する。 [一致点] 「複数の電極のうち少なくとも2つ以上の電極に駆動信号を印加する駆動部と, 前記複数の電極のうち少なくとも2つ以上の電極から複数の感知信号を受信して,タッチ位置及びタッチ圧力を検出する感知部と, を含み, 前記駆動信号が印加される前記少なくとも2つ以上の電極は,少なくとも一つの圧力検出用駆動電極とn個の位置検出用駆動電極を含み, 前記nは自然数である, タッチ検出チップ。」 [相違点1] 本願発明1は,「前記複数の感知信号を受信するための複数の入力端子」を含み,「前記複数の入力端子は、前記タッチ圧力のみを検出するための1つ以上の圧力検出用入力端子及び前記タッチ位置のみを検出するための1つ以上の位置検出用入力端子を含」んでいるのに対して,引用発明は対応する構成の明示がない点。 [相違点2] 本願発明1は,「前記駆動信号を伝達するための複数の出力端子を含み」,「前記複数の出力端子のうちの少なくとも一つは、圧力検出のためだけの圧力検出用出力端子であ」るのに対して,引用発明は対応する構成の明示がない点。 [相違点3] 本願発明1は,「前記駆動部は、前記n個の位置検出用駆動電極に駆動信号を印加する時間区間の間に、前記少なくとも一つの圧力検出用駆動電極に駆動信号を印加するように構成され」ているのに対して,引用発明はそのように構成されていない点。 (2)相違点についての判断 以下,[相違点3]について検討する。 引用発明は,「第1制御部110と第2制御部130との動作を切り替える役割を有」する「切替部122」を有し,「比較部121」が「入力操作を検出した場合に,第1制御部110の動作を停止するとともに,第2制御部130の動作を開始し」,「押圧操作を検出した場合に,第2制御部130の動作を停止するとともに,第1制御部110の動作を開始し」ているから,例えば,「第1制御部110」が動作を開始した際に,「入力操作」を検出しない場合は,「第2制御部130」に動作が切り替わることはないから,[相違点3]に係る「前記駆動部は、前記n個の位置検出用駆動電極に駆動信号を印加する時間区間の間に、前記少なくとも一つの圧力検出用駆動電極に駆動信号を印加する」と同様の構成にはなっていない。 そして,[相違点3]に係る構成は,周知の構成とはいえず,さらに,引用発明は,「基準電位設定部140」を有し,「第1制御部110が動作している場合は,検出電極22に電気的ノイズが混入する可能性をより低減するために,第1導電層31を基準電位に設定し」,「第2制御部130が動作している場合は,第1導電層31に電気的ノイズが混入する可能性を低減するために,検出電極22を基準電位に設定」しているから,電気的ノイズの混入を避けることを考慮すると,引用発明の入力操作の検出と押圧操作の検出は同時に行えないから,[相違点3]に係る構成により,入力操作の検出と押圧操作の検出を同じ時間区間で行う構成を採用することには,阻害要因があるといる。そうすると,引用発明に[相違点3]に係る構成を採用することは,当業者であっても容易であるとはいえない。 したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明することができたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし7について 本願発明2ないし7は,本願発明1の,「前記駆動部は、前記n個の位置検出用駆動電極に駆動信号を印加する時間区間の間に、前記少なくとも一つの圧力検出用駆動電極に駆動信号を印加するように構成され」ていると同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明することができたものであるとはいえない。 3 本願発明8ないし12及び13ないし19について 本願発明8ないし12及び13ないし19は,本願発明1の,「前記駆動部は、前記n個の位置検出用駆動電極に駆動信号を印加する時間区間の間に、前記少なくとも一つの圧力検出用駆動電極に駆動信号を印加するように構成され」ていると同一の構成を備える「タッチ検出器」及び「タッチ入力装置」であるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明することができたものであるとはいえない。 第7 原査定について 審判請求時の補正により,本願発明1ないし19は,「前記駆動部は、前記n個の位置検出用駆動電極に駆動信号を印加する時間区間の間に、前記少なくとも一つの圧力検出用駆動電極に駆動信号を印加するように構成され」という事項を有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-08-19 |
出願番号 | 特願2016-151406(P2016-151406) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | ▲はま▼中 信行、若林 治男 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
小田 浩 稲葉 和生 |
発明の名称 | タッチ検出器、タッチ検出チップ及びタッチ入力装置 |
代理人 | 重森 一輝 |
代理人 | 飯野 陽一 |
代理人 | 市川 祐輔 |
代理人 | 小野 誠 |
代理人 | 岩瀬 吉和 |
代理人 | 川嵜 洋祐 |
代理人 | 青木 孝博 |
代理人 | 坪倉 道明 |
代理人 | 今藤 敏和 |
代理人 | 城山 康文 |
代理人 | 櫻田 芳恵 |
代理人 | 市川 英彦 |
代理人 | 五味渕 琢也 |
代理人 | 金山 賢教 |
代理人 | 安藤 健司 |