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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1354519
審判番号 不服2017-17540  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-28 
確定日 2019-08-14 
事件の表示 特願2016-543312「無線ネットワーク調整方法、無線ネットワーク調整装置、プログラム及び記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月25日国際公開、WO2016/026276、平成28年11月10日国内公表、特表2016-535551〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)1月29日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2014年8月19日 中国)を国際出願日とする出願であって、その出願の経緯は以下のとおりである。

平成27年3月27日 手続補正書の提出
平成28年10月25日付け 拒絶理由通知書
平成29年1月20日 意見書、手続補正書の提出
平成29年7月26日付け 拒絶査定
平成29年11月28日 拒絶査定不服審判の請求
平成30年10月26日付け 拒絶理由通知書(当審)
平成31年1月29日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
平成31年1月29日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1は、以下のとおりである。

「無線ルータに用いられる無線ネットワーク調整方法において、
無線ネットワーク状態が無線ネットワーク調整条件を満たすか否かをモニタリングするステップと、
上記無線ネットワーク状態が上記無線ネットワーク調整条件を満たす場合、無線ネットワークの調整に同意するか否かを問い合わせるための調整プロンプトを無線端末に送信するステップと、
上記無線端末から返信した調整許可指令を受信すると、無線ネットワークの状態を調整するステップと、
上記無線端末から返信した調整拒否指令を受信すると、現在の無線ネットワークの状態を維持するステップとを含み、
上記無線ネットワーク調整条件は、
現在使用中の無線ネットワークのチャネル品質が所定チャネル品質より低いこと、または、
モニタリングした無線端末の信号強度が所定信号強度より低いこと、または、
モニタリングした上記無線ルータより発信されるネットワーク発信信号強度が所在空間に必要な最小のネットワーク発信信号強度より大きいこと、を含み、
上記調整プロンプトは、更に、無線ネットワーク状態情報及び/又は調整結果情報を含み、
上記無線ネットワーク状態情報は、現在使用中のチャネル番号、現在の発信信号強度、所在空間の大きさ、無線端末の信号強度のうちのいずれか1つ又は複数の情報を含み、
上記調整結果情報は、切替え後のチャネル番号、調整後の発信信号強度のうちのいずれか1つ又は複数の情報を含む
ことを特徴とする無線ネットワーク調整方法。」

そして、「または」「又は」「いずれか1つ」との択一的選択肢を考慮すると、請求項1に係る発明は、

「無線ルータに用いられる無線ネットワーク調整方法において、
無線ネットワーク状態が無線ネットワーク調整条件を満たすか否かをモニタリングするステップと、
上記無線ネットワーク状態が上記無線ネットワーク調整条件を満たす場合、無線ネットワークの調整に同意するか否かを問い合わせるための調整プロンプトを無線端末に送信するステップと、
上記無線端末から返信した調整許可指令を受信すると、無線ネットワークの状態を調整するステップと、
上記無線端末から返信した調整拒否指令を受信すると、現在の無線ネットワークの状態を維持するステップとを含み、
上記無線ネットワーク調整条件は、
現在使用中の無線ネットワークのチャネル品質が所定チャネル品質より低いことを含み、
上記調整プロンプトは、更に、調整結果情報を含み、
上記調整結果情報は、切替え後のチャネル番号の情報を含む
ことを特徴とする無線ネットワーク調整方法。」

との発明(以下、「本願発明」という。)を含むと認める。

第3 拒絶の理由
当審が平成30年10月26日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)のうちの理由4は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、以下の6.を主引用例とし、7.?12.及び1.を周知例として引用している。

1.特開2014-131285号公報
6.特表2008-512952号公報
7.特開2011-205489号公報
8.特開2012-222719号公報
9.特開2007-281829号公報
10.特開2012-253805号公報
11.特開2014-120871号公報
12.国際公開第2010/007743号

第4 引用発明、周知事項
1 引用発明
当審拒絶理由に引用された特表2008-512952号公報(以下、「引用例6」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN:Wireless Local Area Network)に関連し、より詳細にはWLANにおけるシームレスなチャンネル変更のための方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
インフラストラクチャ・モードにて動作するWLANシステムにおいて、基本サービス・セット(BSS:Basic Service Set)に関連付けられたアクセスポイント(AP:Access Point)は、通常それに関連付けられた1つまたは複数の端末(STA:station)を有する。APおよびそれに関連付けられたSTAは、所与のチャンネル上でパケットを送受信することにより互いに通信する。このチャンネルが輻輳した(すなわち、そのチャンネルにおいて提供されたトラフィックが高い)ときには、BSSのノードがそれほど輻輳していないチャンネルを使用することが望ましいことがあり得る。同様にまた、免許不要周波数帯においては珍しいことではないが、そのチャンネルがシステムの外部からの干渉により影響を受けるなら、BSSのノードが別のチャンネルを使用することも望ましく、かつ必要でさえある場合がある。
【0003】
BSSがチャンネルを変更する通常的な方法は、特定の瞬間にAPがそのフレーム(管理、制御、およびデータ)のすべてを伝送するチャンネルを変更することである。これはSTAにとって、そのAPからのいずれのフレームを受信することもが突然止まり、そして自身がAPに送信しているすべてのフレームが無応答のままになっているように見えるであろうことを意味する。サービス品質(QoS:Quality-of-Service)に敏感なサービスに対しては、このサービスの不連続性は結果としてユーザを不満にさせる。
(中略)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、WLANにおいてシームレスなチャンネル変更のための方法および装置に対して、必要性が存在する。
【0007】
このように、本発明は従来技術の制約に取り組み、サービス中断なしでかつ無線媒体の効率の劇的な減少なしで、WLANにおけるシームレスなチャンネル変更を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
STAおよびAPを有するWLANにおけるシームレスなチャンネル変更のための方法は、APからSTAにチャンネル変更企図メッセージ(channel change intention message)を送信することから開始する。STAからAPには、チャンネル変更応答メッセージ(channel change response message)が送信され、STAがそのチャンネル変更に追随しようとするか否かをAPに通知する。APは、チャンネル変更を続けるかを判定し、かつその判定が肯定的であるなら、変更を実行する。
(中略)
【0011】
WLANにおいてシームレスなチャンネル変更を実行するシステムにはAPおよびSTAが含まれる。APは、チャンネル変更企図メッセージをSTAに送信するように構成される。STAが新規チャンネルにてAPに追随しようとするかの表示を含む、チャンネル変更応答メッセージをAPに送信するように、STAは構成される。さらにAPは、チャンネル変更応答メッセージを受信した後に、自身がチャンネル変更を続けようとするか否かを判定するように、かつその判定が肯定的であるなら、そのチャンネル変更を実行するように構成される。APは、STAからの応答メッセージを考慮しようとはするが、チャンネル変更を続行するかの決定は、その応答メッセージに従う必要はない。」(5?7ページ)

(2)「【0016】
本発明は、APがチャンネルを切り換えるという企図を関連付けられたSTAに伝達し、かつそのSTAが新規チャンネルにてAPに追随しようとする、またはしようとしないことを肯定応答するための、APおよびSTAの間でのハンドシェイク手順を確立することにより、上で記述された問題を解決する。この手順は、すべてのSTAが、チャンネルを切り替えるというAPの企図を承知し、かつAPが、新規チャンネルにどのSTAが追随することができ、かつAPがそのチャンネル変更を進めると決定した場合に新規チャンネルにどのSTAが追随するであろうか、を承知することを確実にする。本発明はまた、STAがチャンネル変更を要求することを可能とし、その結果ハンドシェイク手順をトリガし、問題を解決する。
【0017】
本発明のハンドシェイク手順100を起動させたAPについて図1において例証する。本発明の図面および議論を簡素化する目的のため、以下の記述は単独のSTAについてのみ言及する。本発明の原理は、複数のSTAを有するシステムに対して等しく適用することが可能である。
【0018】
APは、自身のチャンネルをチャンネルXに変更するという自身の企図を示すチャンネル変更企図メッセージをSTAに送信する(ステップ102)。ここで、Xはチャンネル識別子を表す。このメッセージにはまた、チャンネル変更のタイミングに関連する情報が含まれる。このメッセージは、ブロードキャスト・フレームまたはユニキャスト・フレームを使用して送信可能である。ブロードキャスト・フレームを使用することの利点は、APに複数のSTAが関連付けられている場合に無線媒体上で送信されるメッセージの数を限定することである。ユニキャスト・フレーム(関連付けられたSTAのそれぞれに対して1つ)を使用することの利点は、STAがメッセージを正しく受信したか否かを示すSTAからのMAC ACKをAPが予期するため、信号方式の頑強さを増加させる傾向があることである。あるSTAからACKが全く受信されない場合には、APはチャンネル変更企図メッセージを再送することが可能である。
【0019】
チャンネル変更企図メッセージを受信するとSTAは、自身の能力、自身の位置から感知する無線周波数環境、およびシステムにおける他のAPの可用性および負荷に基づき、自身のチャンネルを新規チャンネルに変更しようとするかを判定する(ステップ104)。この判定は、多評価基準意思決定処理を伴う。例えばSTAが考慮できる第1の評価基準は、APにより送信されたチャンネル変更企図メッセージにおいて告知されたような、チャンネルXに変更する能力が自身にあるか(ハードウェアおよび構成制限を考慮して)ということがある。STAが考慮することが適当な第2および第3の評価基準には、STAがチャンネルXについて感知する干渉および負荷の水準が含まれる。そのような評価基準に基づき、そのチャンネル変更が望ましいか否かをSTAは決定する。予め決定された水準に対比しての重み付けに基づく計算から獲得された得点を比較する任意の形態の多評価基準分析を使用して、この結論に到達することが可能である。
【0020】
決定が為されると、メッセージを受信したという通知(チャンネル変更企図メッセージがブロードキャストを使用して送信された場合に適用可能)、およびそのSTAがその新規チャンネルにてAPに追随しようとするか否かに関する表示を含むチャンネル変更応答メッセージをSTAが送信する(ステップ106)。
【0021】
チャンネル変更応答メッセージにおける表示には、限定するものではないが、以下の様々な予め定義された応答が含まれる。すなわち:
1)STAが、新規チャンネルにてAPに追随しようとすること。
2)STAが、新規チャンネルに追随しようとせず、同一チャンネルにてAPにより対応され続けることを好むであろう、ということ。この状況は、STAの走査が、新規チャンネルが自身の性能を低下させようとすることを示すなら、STAがチャンネルを変更する能力を欠いているなら、またはチャンネルを変更することによってユーザのアプリケーションのQoS要件をSTAが満足させることができなくなるであろうとSTAが判定するなら、生ずる場合がある。
3)STAが、新規チャンネルにてAPに追随しようとはしないが、APが同一チャンネル上に留まるようには要求しない、ということ。この状況は、自身が決定した別の候補APが、新規チャンネル上の現在のAPより良好な性能を提供可能であるとSTAが識別したなら、生ずる場合がある。
【0022】
STAがチャンネル変更判定を実行できるための技法の範囲には、新規チャンネルに関する測定されたまたは報告された品質指標(例、信号対雑音比(SNR:Signal to Noise Ratio)、信号対干渉・雑音比(SINR:Signal to Interference and Noise Ratio)、パケット誤り率(PER:Packet Error Rate)など)を使用すること、および現在のチャンネル上で測定された品質指標と、または予め定められた水準と、これらの指標を比較することが含まれる。STAはまた、新規チャンネルに関する測定されたまたは報告された負荷指標(例、チャンネル占有率、媒体アクセス遅延など)を使用し、かつ現在のチャンネル上で測定された負荷指標と、または予め定められた水準と、それらを比較することができる。また、新規チャンネルに関して獲得された、上記指標のいくつかの重み付けに基づく組み合わせを現在のチャンネル上で獲得された同一の指標に対比して、または予め定められた水準に対比して、比較するべく使用することも可能である。
【0023】
ブロードキャストを使用してチャンネル変更企図メッセージをAPが送信するなら、STAにより送信されたチャンネル変更応答メッセージはまた、チャンネル変更企図メッセージの受信に対する肯定応答の目的を果たすこととなる。チャンネル変更企図メッセージをユニキャスト・メッセージとして送信すること(これによりACKを要求することになる)には、それによりチャンネル変更企図メッセージを受信しなかったSTAと、チャンネル変更企図メッセージは受信したが、チャンネル変更応答メッセージを送信しなかったSTAとをAPが区別することが可能であるため、いくつかの利点がある。APは、すべてのSTAからすべての応答(肯定的または否定的な)が来るまで、またはタイムアウトが発生するまで待ち、そしてそれからそのチャンネル変更を進めようとするか否かにつき決定する。APは、STAが示唆したことを実行するように束縛されることはない。
【0024】
STAから受信されたチャンネル変更応答通知に基づき、APは次に、チャンネルを変更するか否かにつき決定をする(ステップ108)。このステップではAPは、チャンネルを切り替えるという自身の企図を再考することが可能である。例えば、APが単一のSTAのみに対応しており、このSTAが新規チャンネルにてAPに追随することができないことを示す場合には、APはチャンネル変更を実行しないよう決定するかもしれない。またこれは、APが、自身がより良い決定をするために測定報告が役立つであろうと信じるなら、STAからの測定値を要求する機会でもある。
【0025】
一般に、APがそのチャンネル変更を進めようとするか否かに関する判定は、それぞれの型のチャンネル変更メッセージで応答したユーザの相対数と対比しての、チャンネル変更を実行しなかった場合のサービス品質への影響の予測に基づく。チャンネル切り換えの予測された性能利得に従って変動する目標に対比してそれぞれの型の応答の相対数を比較する意思決定処理は、可能性のあるいくつかの実施方法のうちの1つである。
【0026】
APがチャンネルを変更しないと決定するなら手順100は終了する(ステップ110)。そして、APが、チャンネル変更を推し進めると決定した場合(ステップ108)には、次にチャンネル変更通知メッセージを関連付けられたSTAに送信する(ステップ112)。メッセージにはまた、チャンネル変更のタイミングに関連する情報が含まれる。このメッセージはブロードキャスト・フレームまたはユニキャスト・フレームを使用して送信することが可能であり、それぞれのフレーム型の利点は上での記述と同一である。
【0027】
APが、チャンネル変更を推し進めることを決定するなら、STAから受信されたチャンネル変更応答メッセージ中に含まれた情報を使用することが可能であり、新規チャンネルにてAPに追随しないであろうと応答したSTAに固有のバッファされたパケットのすべてを除去することが可能である。これにより、STAに、それが新規チャンネルにてAPに追随しないなら、不成功になるパケットを伝送することによりAPが相当量の帯域幅を浪費することを回避する。APは新規チャンネルに変更し(ステップ114)、そしてSTAがAPに追随しようというなら新規チャンネルに変更する(ステップ116)。
【0028】
ハンドシェイク手順に対するオプションのステップには、チャンネルを切り換えた後に、STAにチャンネル変更実行済みメッセージをAPに送信させることがある(ステップ118)。この情報はまた、新規チャンネルにてAPに追随しようとしたが、そうすることに失敗したことを(そのチャンネル変更応答メッセージ中に)示していたであろうSTAに、不成功になるパケットを伝送することにより相当量の帯域幅をAPが浪費することを回避するために使用される場合がある。そして、手順は終了する(ステップ110)。」(8?10ページ)

(3)


上記(1)?(3)の各記載及び当該技術分野の技術常識を考慮すると、
a 上記(1)の段落0001及び上記(3)の図1の記載によれば、引用例6には、「アクセスポイント(AP)により実行される無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)のチャンネル変更のための方法」が記載されているといえる。

b 上記(2)の段落0018及び上記(3)の図1の記載によれば、アクセスポイント(AP)は、自身のチャンネルをチャンネル識別子がXであるチャンネルXに変更するという自身の企図を示すチャンネル変更企図メッセージを端末(STA)に送信する。
ここで、上記(1)の段落0002の記載によれば、アクセスポイントがチャンネル変更企図メッセージを送信するのは、チャンネルを変更することが望ましい場合が含まれることは明らかであり、当該場合には、「チャンネルが輻輳したときや干渉により影響を受けるとき」が含まれると解される。
したがって、引用例6には、「チャンネルが輻輳したときや干渉により影響を受けるとき、アクセスポイント(AP)は、自身のチャンネルをチャンネル識別子がXであるチャンネルXに変更するという自身の企図を示すチャンネル変更企図メッセージを端末(STA)に送信するステップ」が記載されていると認められる。

c 上記(2)の段落0019及び上記(3)の図1の記載によれば、チャンネル変更企図メッセージを受信したSTAは、自身のチャンネルを新規チャンネルに変更しようとするかを判定する。そして、上記(2)の段落0020、段落0021の1)、2)及び上記(3)の図1の記載によれば、STAは、STAが、新規チャンネルにてAPに追随しようとする表示や、STAが、新規チャンネルに追随しようとせず、同一チャンネルにてAPにより対応され続けることを好むであろうという表示を含む、チャンネル変更応答メッセージを送信する。
そして、上記(2)の段落0024及び上記(3)の図1の記載によれば、STAから受信されたチャンネル変更応答通知に基づき、APは、チャンネルを変更するか否かを決定するところ、APが単一のSTAのみに対応しており、このSTAが新規チャンネルにてAPに追随することができないことを示す場合には、APはチャンネル変更を実行しないように決定する。
また、上記(2)の段落0018、段落0025?0027及び上記(3)の図1の記載によれば、チャンネル変更企図メッセージを送信するのは、アクセスポイントがチャンネルを変更する企図を有する場合であるから、アクセスポイントが単一のSTAのみに対応しており、当該STAから、新規チャンネルにてAPに追随しようとする表示を含むチャンネル変更応答メッセージを受信すると、アクセスポイントがチャンネルを変更することは明らかである。
よって、引用例6には、「アクセスポイント(AP)が単一の端末(STA)のみに対応しており、当該端末(STA)から、新規チャンネルにてアクセスポイント(AP)に追随しようとする表示を含むチャンネル変更応答メッセージを受信すると、チャンネルを変更するステップ」、及び、「アクセスポイント(AP)が単一の端末(STA)のみに対応しており、当該端末(STA)から、新規チャンネルに追随しようとせず、同一チャンネルにてアクセスポイント(AP)により対応され続けることを好むであろうという表示を含むチャンネル変更応答メッセージを受信すると、チャンネル変更を実行しないステップ」が記載されていると認められる。

d 上記(2)の段落0018の記載によれば、チャンネル変更企図メッセージは、自身のチャンネルをチャンネルXに変更するという自身の企図を示すものであり、Xはチャンネル識別子を表すから、変更後のチャンネル識別子Xを含むといえる。
よって、引用例6には、「チャンネル変更企図メッセージは、変更後のチャンネル識別子Xを含む」ことが記載されている。

以上を総合すると、引用例6には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「アクセスポイント(AP)により実行される無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)のチャンネル変更のための方法において、
チャンネルが輻輳したときや干渉により影響を受けるとき、アクセスポイント(AP)は、自身のチャンネルをチャンネル識別子がXであるチャンネルXに変更するという自身の企図を示すチャンネル変更企図メッセージを端末(STA)に送信するステップと、
アクセスポイント(AP)が単一の端末(STA)のみに対応しており、当該端末(STA)から、新規チャンネルにてアクセスポイント(AP)に追随しようとする表示を含むチャンネル変更応答メッセージを受信すると、チャンネルを変更するステップと、
アクセスポイント(AP)が単一の端末(STA)のみに対応しており、当該端末(STA)から、新規チャンネルに追随しようとせず、同一チャンネルにてアクセスポイント(AP)により対応され続けることを好むであろうという表示を含むチャンネル変更応答メッセージを受信すると、チャンネル変更を実行しないステップとを含み、
前記チャンネル変更企図メッセージは、変更後のチャンネル識別子Xを含む、方法。」

2 周知事項1
当審拒絶理由に引用された特開2011-205489号公報(以下、「周知例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0005】
ネットワーク制御装置32は高速モデム31に接続され、インターネットと宅内ネットワークの接続機能を提供する。ネットワーク制御装置32の代表例はルータであり、IPアドレスの制御や、通信セキュリティ管理を行う。宅内ネットワークを有線で構成する場合には、ネットワーク制御装置32に複数の情報機器が有線で接続される。
【0006】
宅内ネットワークなどを無線で構成する場合には、ネットワーク制御装置32にさらに無線通信の親機として機能するアクセスポイント33を接続する。現在、市場ではネットワーク制御装置32とアクセスポイント33が一体化された無線ルータ34が一般的であるが、以後の説明においては、機能を明確化するため、個別のアクセスポイント33が存在するという場合を想定して述べる。(後略)」(3ページ)

当審拒絶理由に引用された特開2012-222719号公報(以下、「周知例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(2)「【0002】
現在、無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイント機能を有する中継装置である無線ルータ装置の普及が進んできている。無線ルータ装置は、PC(パーソナルコンピュータ)等の無線通信装置と無線により接続し、無線通信装置とWAN(Wide Area Network)等のネットワークとの通信を中継する。」(3ページ)

上記(1)?(2)の記載及び当該技術分野の技術常識を考慮すると、
「無線ルータがアクセスポイント機能を有する。」ことは周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。

3 周知事項2
当審拒絶理由に引用された特開2014-131285号公報(以下、「周知例3」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0042】
AP100においては、チャネル更新トリガ発生部110が、使用するチャネルの更新(再設定)動作の実行条件が満たされたかどうかを監視している。条件が満たされた場合には、チャネル更新トリガが周囲AP測定部104に対して出力され、使用するチャネルの変更動作を開始する。チャネル更新トリガは、例えば、AP100での内部タイマ満了時、ユーザが使用チャネルの変更要求操作を行ったとき、スループット低下や再送率の増加などが閾値以上になったとき、などを条件として出力する。」(8ページ)

当審拒絶理由に引用された国際公開第2010/007743号(以下、「周知例4」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(2)「【0003】
図13は、従来の無線通信システム10を示す図である。図13において、無線通信システム10は、制御装置(AP:Access Point)11と、第1?第3の通信端末(STA:Station)12-1?12-3とを備える。(後略)」(1ページ)

(3)「【0123】
図9は、制御装置110の制御フローを示す図である。ステップS101において、制御装置110は、現在使用しているチャネルから使用チャネルを切り替える可能性のある切り替え候補チャネルを選択する。ここで、切り替え候補チャネルは1つであっても複数であっても構わない。また、切り替え候補チャネルを複数選択した場合は、当該複数の切り替え候補チャネルに優先順位を付けることが好ましい。
(中略)
【0126】
ステップS104において、制御装置110は、ステップS103における通信処理の状態を判断する。制御装置110は、各通信端末との間での通信処理に関して、通信誤り数が所定の閾値を超えたか否かを判定する。通信誤り数が所定の閾値を超えている場合(ステップS104のYes)、ステップS109の処理に移動し、通信誤り数が所定の閾値以下の場合(ステップS104のNo)、ステップS105の処理に移動する。
【0127】
ステップS105において、制御装置110は、通信誤り数以外の情報に基づいて、他のネットワークシステムからの干渉を検出したか否かを判断する。例えば、通信が行われなかった時間スロットで受信レベルまたはノイズレベルが予め定めておいた閾値を超えた場合、何らかの干渉信号が存在すると判定しても構わない。干渉を検出した場合(ステップS105のYes)、ステップS109の処理に移動し、干渉を検出しなかった場合(ステップS105のNo)、ステップS106の処理に移動する。
(中略))
【0130】
一方、ステップS109において、制御装置110は、使用チャネルを切り替えると判断して、実際に切り替えるチャネルを決定する。そして、ステップS110において、制御装置110は、チャネルムーブフィールドに「1」を設定する。ここで、実際にどのチャネルに切り替えるかは、様々な方法によって決定され、例えば、インアクティブ期間中にチャネルセンスを行い、干渉がより少ないチャネルを選択しても構わない。」(29?30ページ)

上記(1)?(3)の記載及び当該技術分野の技術常識を考慮すると、
上記(1)の記載によれば、アクセスポイントは使用するチャネルのスループット低下や再送率の増加が閾値以上となったかどうかを監視し、閾値以上となると、使用するチャネルの変更動作を開始する。
また、上記(2)?(3)の記載によれば、アクセスポイントは使用するチャネルの通信誤り数や干渉が閾値を超えたか否かを判定し、閾値を超えると、使用チャネルを切り替えると判断する。そして、上記判定のためには、使用するチャネルの通信誤り数や干渉をモニタリング(監視)していると解される。
ここで、「使用するチャネルのスループットや再送率」や「使用するチャネルの通信誤り数や干渉」は、「現在使用中の無線ネットワークのチャネル品質」といえ、「無線ネットワーク状態」に含まれる。
そして、「使用するチャネルのスループット低下や再送率の増加が閾値以上」であることや「使用するチャネルの通信誤り数や干渉が閾値を超えた」ことは、「現在使用中の無線ネットワークのチャネル品質が所定チャネル品質より低い」ことといえ、「チャネル変更の条件」といえる。

よって、「アクセスポイントは、無線ネットワーク状態が、チャネル変更の条件を満たすか否かをモニタリングし、現在使用中の無線ネットワークのチャネル品質が所定チャネル品質より低いことをチャネル変更の条件とする。」こと(以下、「周知技術2」という。)は、周知技術である。

4 周知事項3
当審拒絶理由に引用された特開2007-281829号公報(以下、「周知例5」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0055】
この状態で、端末400aが8Mbpsの帯域を要求したとする。図7の端末管理テーブル700に示すように、端末400aのポリシーレベルは「通常」となっているので、処理はステップS1004からステップS1008へ進む。そして、切り換え対象のチャネル(この例ではチャネル1,6)において動作中の無線端末が存在しているので、ステップS1009へ処理が進む。ステップS1009では、例えば、動作中の無線端末400b、400cの表示器にチャネル切り換えの要求があることを表示して、利用者が許可を意味する操作をおこなった後、チャネル切り換えをおこなうように制御する。
【0056】
即ち、ステップS1009においてシステム管理端末200から送信されたチャネル切り換え指示は、チャネルの通常の切り換えを指示するものであり、アクセスポイントの処理は、ステップS1601、S1602、S1603を経て、ステップS1607へ進む。ステップS1607では、動作中の無線端末の表示器にチャネル切り換えの要求があることを表示させる。利用者が許可を意味する操作をおこなうと、ステップS1608からステップS1609へ進み、次にビーコン信号から切り換え後のチャネルを用いた通信が開始される。尚、複数の端末が動作している場合は、全ての端末から許可が得られた場合にチャネル切り換えが実行される。」(11ページ)

当審拒絶理由に引用された特開2012-253805号公報(以下、「周知例6」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(2)「【0101】
この処理について図15?図17を参照しながら以下に説明する。図15は、モニタ10のチャンネル切替指示部11eがワイヤレス通信に使用するチャンネルを切り替える動作を示すフローチャート図である。
(中略)
【0104】
一方、「CH変更しない」フラグが“0”であると判定された場合(S41においてYES)には、UI画面表示部11aは、図16(a)に示すような「CH変更確認」コーションUI1をディスプレイ19に表示する(S42)。その後、チャンネル切替指示部11eは、「CH変更確認」コーションUI1においてユーザが「はい」を選択したか「いいえ」を選択したかを判定する(S43)。
【0105】
ユーザが「いいえ」を選択したと判定された場合には(S43においてNO)、「CH変更しない」フラグを“1”に設定し(S44)、処理を終了する。
【0106】
一方、ユーザが「はい」を選択したと判定された場合には(S43においてYES)、チャンネル切替指示部11eは図17にフローチャート図が示されている全チャンネルAFSの処理をSTB20に実行させる指示コマンドを無線LANモジュール12aに供給し、無線LANモジュール12aは、その指示コマンドをSTB20に送信する(S45)。全チャンネルAFSの処理の詳細については後述する。」(17ページ)

(3)


当審拒絶理由に引用された特開2014-120871号公報(以下、「周知例7」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(4)「【0030】
次に、通信制御部107は、算出された統計値に基づいて、自装置において使用するチャネルを選択する。例えば、通信制御部107は、算出された統計値のうち最も小さい統計値に対応するチャネルを選択する(ステップS303)。通信制御部107は、現在使用中のチャネル(以下、「使用中チャネル」という。)と、ステップS303の処理において選択されたチャネル(以下、「選択チャネル」という。)とが異なるか否か判定する(ステップS304)。
【0031】
使用中チャネルと選択チャネルとが一致する場合(ステップS304-NO)、通信制御部107は、特にその後の処理を行うことなく図5に示される処理を終了する。一方、使用中チャネルと選択チャネルとが異なる場合(ステップS304-YES)、通信制御部107は、チャネル変更処理を行う(ステップS305)。通信制御部107は、チャネル変更処理を開始すると、接続端末の有無を確認し、接続端末が無くなった時点でチャネルを選択チャネルに変更する。そして、通信制御部107は図5に示される処理を終了する。
(中略)
【0037】
<変形例>
無線中継装置100の通信制御部107は、ステップS304の処理においてYESに進んだ場合、以下のように動作しても良い。
まず、通信制御部107は、予め設定されているメールアドレスに対して、チャネルの設定変更を促す内容のメールを送信する。図7は、通信制御部107によって送信されるメールの具体例を示す図である。メール本文には、チャネルの設定変更を行うことが可能なウェブサイトへのリンクが含まれていても良い。メールを受信したユーザが、通信端末においてリンクをクリック又はタップすると、通信端末はチャネルの設定変更を行うためのウェブサイトにアクセスする。
【0038】
図8は、チャネルの設定変更を行うためのウェブサイトにおける表示例を示す図である。ウェブサイトの画面には、チャネルの設定を変更することを指示するためのボタン(“はい”ボタン)と、チャネルの設定を変更しないことを指示するためのボタン(“いいえ”ボタン)とが表示される。メールを受信したユーザが、通信端末において“はい”ボタンをクリック又はタップすると、無線中継装置100の通信制御部107は、ステップS305に示されるチャネル変更処理を実行する。」(6?7ページ)

(5)


上記(1)?(5)の記載及び当該技術分野の技術常識を考慮すると、
「無線端末の表示器に無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)のチャンネル変更に同意するか否かをユーザに決定させるための入力画面を表示させる。」ことは、周知技術(以下、「周知技術3」という。)である。

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 本願発明の「無線ルータ」と引用発明の「アクセスポイント(AP)」はいずれも無線中継装置である点で共通する。
本願発明は「調整結果情報は、切替え後のチャネル番号を含む」ものであり、本願明細書の段落0020?0021等によれば、無線ネットワークを調整することはチャネルを切替えることを含むから、本願発明の「無線ネットワーク調整」は、チャネル切替えを含むことが明らかである。よって、引用発明の「無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)のチャンネル変更」は、本願発明の「無線ネットワーク調整」に含まれる。
したがって、本願発明の「無線ルータに用いられる無線ネットワーク調整方法」と引用発明の「アクセスポイント(AP)により実行される無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)のチャンネル変更のための方法」は、「無線中継装置に用いられる無線ネットワーク調整方法」といえる点で共通する。

2 引用発明の「チャンネルが輻輳したときや干渉により影響を受けるとき」は、チャンネル変更の条件を満たす場合といえるから、「無線ネットワーク状態が無線ネットワーク調整条件を満たす場合」に含まれる。
また、本願明細書の段落0018の「一実施の形態において、調整プロンプトは、例えば、「ユーザが無線ネットワークの調整に同意しますか」又は「引き続き無線ネットワークを調整しますか」のような問い合わせメッセージであってもよい。」との記載から、本願発明の「調整プロンプト」は、「問い合わせるためのメッセージ」であることを含むということができる。
一方、引用発明の「チャンネル変更応答メッセージ」に含まれる、「新規チャンネルにてアクセスポイント(AP)に追随しようとする表示」はチャンネル変更に同意する表示といえ、「新規チャンネルに追随しようとせず、同一チャンネルにてアクセスポイント(AP)により対応され続けることを好むであろうという表示」はチャンネル変更に同意しない表示といえるところ、当該「チャンネル変更応答メッセージ」は「チャンネル変更企図メッセージ」を受信した端末(STA)から送信されるものであるから、「自身のチャンネルをチャンネル識別子がXであるチャンネルXに変更するという自身の企図を示すチャンネル変更企図メッセージ」も、「無線ネットワークの調整に同意するか否かを問い合わせるためのメッセージ」ということができる。
したがって、本願発明の「上記無線ネットワーク状態が上記無線ネットワーク調整条件を満たす場合、無線ネットワークの調整に同意するか否かを問い合わせるための調整プロンプトを無線端末に送信するステップ」と、引用発明の「チャンネルが輻輳したときや干渉により影響を受けるとき、アクセスポイント(AP)は、自身のチャンネルをチャンネルXに変更するという自身の企図を示すチャンネル変更企図メッセージを端末(STA)に送信するステップ」は、「無線ネットワーク状態が無線ネットワーク調整条件を満たす場合、無線ネットワークの調整に同意するか否かを問い合わせるためのメッセージを無線端末に送信するステップ」といえる点で共通する。

3 引用発明の「新規チャンネルにてアクセスポイント(AP)に追随しようとする表示」は、チャンネル変更に同意する表示といえるから、当該表示を含む引用発明の「チャンネル変更応答メッセージ」は、本願発明の「調整許可指令」に含まれる。
本願発明は、無線端末が1つであること、すなわち、無線ルータが単一の無線端末のみに対応する場合を含むから、引用発明の「アクセスポイント(AP)が単一の端末(STA)のみに対応しており、当該端末(STA)から、新規チャンネルにてアクセスポイント(AP)に追随しようとする表示を含むチャンネル変更応答メッセージを受信すると、チャンネルを変更するステップ」は、本願発明の「上記無線端末から返信した調整許可指令を受信すると、無線ネットワークの状態を調整するステップ」に含まれる。

4 引用発明の「新規チャンネルに追随しようとせず、同一チャンネルにてアクセスポイント(AP)により対応され続けることを好むであろうという表示」は、チャンネル変更に同意しない表示といえるから、当該表示を含む引用発明の「チャンネル変更応答メッセージ」は、本願発明の「調整拒否指令」に含まれる。
本願発明は、無線端末が1つであること、すなわち、無線ルータが単一の無線端末のみに対応する場合を含むから、引用発明の「アクセスポイント(AP)が単一の端末(STA)のみに対応しており、当該端末(STA)から、新規チャンネルに追随しようとせず、同一チャンネルにてアクセスポイント(AP)により対応され続けることを好むであろうという表示を含むチャンネル変更応答メッセージを受信すると、チャンネル変更を実行しないステップ」は、本願発明の「上記無線端末から返信した調整拒否指令を受信すると、現在の無線ネットワークの状態を維持するステップ」に含まれる。

5 引用発明の「変更後のチャンネル識別子X」は、本願発明の「切替え後のチャネル番号」に相当する。
よって、本願発明の「上記調整プロンプトは、更に、調整結果情報を含み、上記調整結果情報は、切替え後のチャネル番号の情報を含む」と、引用発明の「前記チャンネル変更企図メッセージは、変更後のチャンネル識別子Xを含む」は、「前記問い合わせるためのメッセージは、更に、調整結果情報を含み、前記調整結果情報は、切替え後のチャネル番号の情報を含む」といえる点で共通する。

以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「無線中継装置に用いられる無線ネットワーク調整方法において、
無線ネットワーク状態が無線ネットワーク調整条件を満たす場合、無線ネットワークの調整に同意するか否かを問い合わせるためのメッセージを無線端末に送信するステップと、
上記無線端末から返信した調整許可指令を受信すると、無線ネットワークの状態を調整するステップと、
上記無線端末から返信した調整拒否指令を受信すると、現在の無線ネットワークの状態を維持するステップとを含み、
無線ネットワーク調整条件は、現在使用中の無線ネットワークのチャネル品質に基づいており、
上記問い合わせるためのメッセージは、更に、調整結果情報を含み、
上記調整結果情報は、切替え後のチャネル番号の情報を含む
無線ネットワーク調整方法。」

(相違点1)
無線ネットワーク調整方法が用いられる「無線中継装置」が、本願発明は「無線ルータ」であるのに対して、引用発明は「アクセスポイント(AP)」である点。

(相違点2)
本願発明は、「無線ネットワーク状態が無線ネットワーク調整条件を満たすか否かをモニタリングするステップ」及び「上記無線ネットワーク調整条件は、現在使用中の無線ネットワークのチャネル品質が所定チャネル品質より低いことを含み」との発明特定事項を有するのに対して、引用発明は当該発明特定事項を有していない点。

(相違点3)
一致点の「無線ネットワークの調整に同意するか否かを問い合わせるためのメッセージ」が、本願発明では「調整プロンプト」であるのに対して、引用発明では「プロンプト」ではない点。

第6 判断
上記各相違点について判断する。
(相違点1について)
上記「第4 引用発明、周知事項」「2 周知事項1」のとおり、「無線ルータがアクセスポイント機能を有する。」ことは周知技術(周知技術1)であるから、引用発明に上記周知技術1を適用し、引用発明の「アクセスポイント(AP)」を「無線ルータ」とすることは、当業者であれば適宜成し得た事項である。

(相違点2について)
引用発明の「チャンネルが輻輳したときや干渉により影響を受けるとき」は、その前提として、無線ネットワーク状態をモニタリングしているといえる。
そして、引用発明の「チャンネルが輻輳したときや干渉により影響を受けるとき」は、「チャネル品質が低い」といえ、その判断のために所定値と比較することは常套手段である。
してみると、相違点2は、引用発明が暗黙的に有している構成であり、実質的な相違点ではない。
仮にそうでないとしても、上記「第4 引用発明、周知事項」「3 周知事項2」のとおり、「アクセスポイントは、無線ネットワーク状態がチャネル変更の条件を満たすか否かをモニタリングし、現在使用中の無線ネットワークのチャネル品質が所定チャネル品質より低いことをチャネル変更の条件とする。」こと(周知技術2)は、周知技術である。
よって、引用発明において、上記周知技術2を適用し、「無線ネットワーク状態が無線ネットワーク調整条件を満たすか否かをモニタリングするステップ」を有し、「上記無線ネットワーク調整条件は、現在使用中の無線ネットワークのチャネル品質が所定チャネル品質より低いことを含」むようにすることは、当業者が容易になしうることである。

(相違点3について)
本願発明の「無線ネットワークの調整に同意するか否かを問い合わせるための調整プロンプト」は、無線ネットワークの調整に同意するか否かをユーザに決定させるための入力画面であるところ、上記「第4 引用発明、周知事項」「4 周知事項4」のとおり、「無線端末の表示器に、チャンネル変更に同意するか否かをユーザに決定させるために入力画面を表示させる。」ことは、周知技術(周知技術4)であるから、引用発明に上記周知技術4を適用することで、引用発明の「自身のチャンネルをチャンネル識別子がXであるチャンネルXに変更するという自身の企図を示すメッセージ」を、「無線ネットワークの調整に同意するか否かを問い合わせるための調整プロンプト」とすることは、当業者が容易に想到しうるものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-03-15 
結審通知日 2019-03-19 
審決日 2019-04-03 
出願番号 特願2016-543312(P2016-543312)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桑原 聡一  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 本郷 彰
羽岡 さやか
発明の名称 無線ネットワーク調整方法、無線ネットワーク調整装置、プログラム及び記憶媒体  
代理人 家入 健  

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