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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1354601
審判番号 不服2017-16749  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-10 
確定日 2019-08-20 
事件の表示 特願2016-510917「アクセス制御方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月 6日国際公開、WO2014/176863、平成28年 7月28日国内公表、特表2016-522615〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2013年(平成25年)9月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年5月3日 中国(CN))を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年12月11日 :手続補正書の提出
平成28年11月21日付け:拒絶理由通知書
平成29年2月20日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年7月6日付け :拒絶査定
平成29年11月10日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
平成30年11月9日付け :拒絶理由通知書(当審)
平成31年2月12日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項に係る発明は、平成31年2月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるものであると認められるところ,請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「ユーザ機器(UE)により、ネットワークデバイスによって送信されるアクセス制御メッセージを受信するステップであって、前記アクセス制御メッセージがアクセス制御パラメータと範囲指示情報とを含み、前記アクセス制御パラメータが、トラフィッククラスに基づくものであり、前記範囲指示情報は、前記アクセス制御パラメータが適用可能であるユーザグループのグループ識別子を示す、ステップと、
前記UEにより、前記範囲指示情報に従って、前記アクセス制御パラメータが適用可能である前記ユーザグループを決定するステップと、
前記UEにより、前記アクセス制御パラメータに従って、前記トラフィッククラスに対応するトラフィックへのアクセスを開始するステップと
を有するアクセス制御方法。」

第3 拒絶の理由

平成30年11月9日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。また,この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして,請求項1に対して特開2009-105758号公報が引用されている。

第4 引用例の記載及び引用発明について

1 引用例1の記載

当審拒絶理由で引用された特開2009-105758号公報(以下「引用例1」という。)には,以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)

(1)「【0025】
本実施形態において、「接続要求」には、発信要求や、当該移動局UEによって受信された着信信号に対する応答信号(着信応答)や、位置登録信号や、Attach信号等が含まれる。
【0026】
ここで、無線基地局eNBは、特定セルに在圏している移動局に対して、アクセスクラスごとの規制率及びトラヒッククラスごとの規制率を通知する報知情報を送信するように構成されている。」

(2)「【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る移動局UEは、報知情報受信部11と、規制率決定部12と、アクセスクラス管理部13と、トラヒッククラス管理部14と、乱数発生部15と、比較部16と、抑止期間管理部17と、送信処理部18とを具備している。
【0029】
報知情報受信部11は、アクセスクラスごとの規制率及びトラヒッククラスごとの規制率を通知する報知情報を受信するように構成されている。
【0030】
具体的には、報知情報受信部11は、受信した報知情報から、アクセスクラスとトラヒッククラスとの組み合わせごとの規制率を取得するように構成されていてもよい。
【0031】
図2の例では、報知情報受信部11は、アクセスクラス「AC-A」とトラヒッククラス「TC-A」との組み合わせの規制率「80%」と、アクセスクラス「AC-A」とトラヒッククラス「TC-B」との組み合わせの規制率「80%」と、アクセスクラス「AC-A」とトラヒッククラス「TC-C」との組み合わせの規制率「0%」と、アクセスクラス「AC-B」とトラヒッククラス「TC-A」との組み合わせの規制率「0%」と、アクセスクラス「AC-B」とトラヒッククラス「TC-B」との組み合わせの規制率「0%」と、アクセスクラス「AC-B」とトラヒッククラス「TC-C」との組み合わせの規制率「0%」と、アクセスクラス「AC-C」とトラヒッククラス「TC-A」との組み合わせの規制率「0%」と、アクセスクラス「AC-C」とトラヒッククラス「TC-B」との組み合わせの規制率「0%」と、アクセスクラス「AC-C」とトラヒッククラス「TC-C」との組み合わせの規制率「0%」とを取得している。」

(3)「【0036】
アクセスクラス管理部13は、当該移動局UEのアクセスクラスを管理するように構成されている。
【0037】
本実施形態では、図5に示すように、アクセスクラスとして、「0」乃至「15」の16種類が想定されており、アクセスクラス「0」乃至「9」の移動局UEに対して、上述の接続要求の送信処理の規制(アクセス規制)を行うように構成されているものとする。
【0038】
トラヒッククラス管理部14は、当該移動局UEのトラヒッククラスを管理するように構成されている。
(中略)
【0042】
また、図6(b)に示すように、トラヒッククラス管理部14は、当該移動局UEによる接続要求(例えば、発信要求や着信応答)の送信処理によって開始される通信サービス(PSドメイン内で行われる通信サービス)の種類を示す通信サービス種類情報と当該移動局UEのトラヒッククラスとを関連付けて管理するように構成されていてもよい。
【0043】
かかる場合、通信サービス種類情報が「音声通信」を示す場合(すなわち、上述の接続要求の送信処理によって開始される通信サービスが「音声通信」である場合)、トラヒッククラス管理部14は、当該移動局UEのトラヒッククラスが「TC-A」であることを出力し、通信サービス種類情報が「パケット通信」を示す場合(すなわち、上述の接続要求の送信処理によって開始される通信サービスが「パケット通信」である場合)、トラヒッククラス管理部14は、当該移動局UEのトラヒッククラスが「TC-B」であることを出力し、通信サービス種類情報が「TV電話」を示す場合(すなわち、上述の接続要求の送信処理によって開始される通信サービスが「TV電話」である場合)、トラヒッククラス管理部14は、当該移動局UEのトラヒッククラスが「TC-A」であることを出力し、通信サービス種類情報が「それ以外」を示す場合(すなわち、上述の接続要求の送信処理によって開始される通信サービスが「それ以外」である場合)、トラヒッククラス管理部14は、当該移動局UEのトラヒッククラスが「TC-C」であることを出力する。
【0044】
また、図6(c)に示すように、トラヒッククラス管理部14は、当該移動局UEによる接続要求の送信処理によって開始される通信サービス(PSドメイン内で行われる通信サービス)に要求されるQoS情報を示すQoS情報と当該移動局UEのトラヒッククラスとを関連付けて管理するように構成されていてもよい。
【0045】
かかる場合、QoS情報が「Conversational」を示す場合(すなわち、上述の接続要求の送信処理によって開始される通信サービスに対応するQoS情報が「Conversational」に分類されている場合)、トラヒッククラス管理部14は、当該移動局UEのトラヒッククラスが「TC-A」であることを出力し、QoS情報が「Streaming」を示す場合(すなわち、上述の接続要求の送信処理によって開始される通信サービスに対応するQoS情報が「Streaming」に分類されている場合)、トラヒッククラス管理部14は、当該移動局UEのトラヒッククラスが「TC-B」であることを出力し、QoS情報が「Interactive」を示す場合(すなわち、上述の接続要求の送信処理によって開始される通信サービスに対応するQoS情報が「Interactive」に分類されている場合)、トラヒッククラス管理部14は、当該移動局UEのトラヒッククラスが「TC-C」であることを出力し、QoS情報が「Back Ground」を示す場合(すなわち、上述の接続要求の送信処理によって開始される通信サービスに対応するQoS情報が「Back Ground」に分類されている場合)、トラヒッククラス管理部14は、当該移動局UEのトラヒッククラスが「TC-C」であることを出力する。」

(4)「【0048】
規制率決定部12は、報知情報受信部11によって受信された報知情報と、アクセスクラス管理部13によって管理されている当該移動局UEのアクセスクラスと、トラヒッククラス管理部14によって管理されている当該移動局UEのトラヒッククラスとに基づいて、当該移動局UEの規制率を決定するように構成されている。
【0049】
規制率決定部12は、報知情報受信部11によって取得されたアクセスクラスとトラヒッククラスとの組み合わせごとの規制率(図2又は図3参照)を用いて、当該移動局UEの規制率を決定するように構成されていてもよい。
【0050】
例えば、規制率決定部12は、報知情報受信部11から図2又は図3に示す規制率を取得し、アクセスクラス管理部13から当該移動局UEのアクセスクラスとして「AC-A」を取得し、トラヒッククラス管理部14から当該移動局UEのトラヒッククラスとして「TC-A」を取得した場合、当該移動局UEの規制率を「80%」と決定する。
(中略)
【0055】
比較部16は、乱数発生部15によって生成された乱数と規制率決定部12によって決定された移動局UEの規制率とを比較するように構成されている。
(中略)
【0059】
送信処理部18は、接続要求の送信処理を行うように構成されている。
【0060】
具体的には、送信処理部18は、比較部16による比較結果に応じて、かかる接続要求の送信処理を抑止するか否かについて判定するように構成されている。
【0061】
例えば、図7に示すように、送信処理部18は、乱数発生部15によって生成された乱数が、規制率決定部12によって決定された移動局UEの規制率を超えていないと判断された場合、抑止期間管理部17によって管理されている抑止期間を管理する送信不可タイマT(s)を起動し、かかる送信不可タイマT(s)が起動しているの間(抑止期間の間)、新たに発生した接続要求の送信処理を抑止するように構成されている。」

(5)

2 引用発明

(1)上記1(1)の段落【0026】の記載によれば,無線基地局eNBは,特定セルに在圏している移動局に対して,報知情報を送信するものであり,上記1(2)段落【0028】,【0029】の記載によれば,移動局UEが備える報知情報受信部は,報知情報を受信するものであるから,引用例1には「移動局UEにより,無線基地局eNBによって送信される報知情報を受信する」ステップが記載されているといえる。

(2)また、上記(1)の段落【0026】の記載によれば,報知情報はアクセスクラスごとの規制率及びトラフィッククラスごとの規制率とを含むものであり,「トラフィッククラスごとの規制率」は,トラフィッククラスによって規制率が定められていることから,「トラフィッククラスごとの規制率」は,「トラフィッククラスに基づくものである」といえる。
そうすると,「報知情報はアクセスクラスごとの規制率及びトラフッククラスごとの規制率を含み,トラフィッククラスごとの規制率が,トラフッククラスに基づくものであ」るといえる。

(3)上記1(3)の段落【0037】によれば,アクセスクラスとして「0」乃至「15」の16種類が想定され,アクセスクラスの移動局UEに対して接続要求の送信処理の規制(アクセス規制)を行うものであり,上記1(2)段落【0029】,【0030】,【0031】の記載によれば,報知情報としてアクセスクラスごとの規制率及びトラフィックごとの規制率を取得し,図2のアクセスクラスとトラフィッククラスとの組み合わせごとの規制率が移動局UEで取得され,トラフィッククラス及びアクセスクラスを用いて上記アクセスクラスの移動局UEに対する規制率が決定される。
そして,当該送信処理の規制(アクセス規制)は,図2を参照すると,アクセスクラスによって,アクセスクラスとトラフィッククラスとの組み合わせごとの規制率がどのアクセスクラスの移動局UEに対して適用可能であるかを表しているともいえることから,「アクセスクラスごとの規制率に含まれるアクセス規制に用いられるアクセスクラスは,アクセスクラスごとの規制率及びトラフッククラスごとの規制率によって取得されるアクセスクラスとトラフィッククラスとの組み合わせごとの規制率が適用可能であるアクセスクラスを示す,」といえる。

そうすると,引用例1には「移動局UEにより,無線基地局eNBによって送信される報知情報を受信するステップであって,報知情報はアクセスクラスごとの規制率及びトラフッククラスごとの規制率とを含み,トラフィッククラスごとの規制率が,トラフッククラスに基づくものであり,アクセスクラスごとの規制率に含まれるアクセス規制に用いられるアクセスクラスは,アクセスクラスごとの規制率及びトラフッククラスごとの規制率によって取得されるアクセスクラスとトラフィッククラスとの組み合わせごとの規制率が適用可能であるアクセスクラスを示す,」ステップが記載されているといえる。

(4)上記1(2)の段落【0028】の記載によれば,報知情報受信部,規制率決定部はそれぞれ,移動局UEが具備するものであり,上記1(4)の段落【0050】の記載によれば,規制率決定部は,アクセスクラスおよびトラフィッククラスに対応する規制率を報知情報受信部から取得することによって,該移動局UEの規制率を決定するものであるから,当該移動局の規制率の決定は移動局UEにおいて実施されるものであるといえる。
そして、図2を参照してアクセスクラスとトラフィッククラスとの組み合わせごとの規制率を決定するするためには,規制率を適用するアクセスクラスを決定することは明らかである。
そうすると,引用例1には,「移動局UEにより,アクセスクラスごとの規制率に含まれるアクセス規制に用いられるアクセスクラスに従って,アクセスクラスとトラフィッククラスとの組み合わせごとの規制率が適用可能であるアクセスクラスを決定する」ステップが記載されているといえる。

(5)上記1(4)の段落【0048】,【0049】,【0055】,【0059】-【0061】の記載によれば,アクセスクラス管理部及びトラフィック管理部からの該移動局UEのアクセスクラス及びトラフィッククラスに基づいて規制率を決定し,送信処理を抑止するものが記載されているといえる。
そうすると,引用例1には,「移動局UEにより,アクセスクラスとトラフィッククラスとの組み合わせごとの規制率に従って,トラフィッククラスに対応した送信処理を実施する」ステップが記載されているといえる。

(6)そして,上記(1)?(5)を総合すると,移動局UEが通信サービスの種類を表すトラフィッククラス及び移動局UEのアクセスクラスに基づいてトラフィッククラスに対応するトラフィックに対応した送信処理の方法が記載されているといえるから,引用例1には「送信処理方法」が記載されているといえる。

以上を踏まえると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「移動局UEにより,無線基地局eNBによって送信される報知情報を受信するステップであって,前記報知情報はアクセスクラスごとの規制率及びトラフッククラスごとの規制率とを含み,前記トラフィッククラスごとの規制率が,トラフッククラスに基づくものであり,前記アクセスクラスごとの規制率に含まれるアクセス規制に用いられるアクセスクラスは,アクセスクラスごとの規制率及びトラフッククラスごとの規制率によって取得されるアクセスクラスとトラフィッククラスとの組み合わせごとの規制率が適用可能であるアクセスクラスを示す,ステップと,
前記移動局UEにより,前記アクセスクラスごとの規制率に含まれるアクセス規制に用いられるアクセスクラスに従って,前記アクセスクラスとトラフィッククラスとの組み合わせごとの規制率が適用可能である前記アクセスクラスを決定するステップと,
前記移動局UEにより,前記アクセスクラスとトラフィッククラスとの組み合わせごとの規制率に従って,前記トラフィッククラスに対応した送信処理を実施するステップと
を有する送信処理方法。」

第5 対比

本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。

1 引用発明の「移動局UE」は、本願発明の「ユーザ機器(UE)」に相当する。
引用発明の「無線基地局eNB」は本願発明の「ネットワークデバイス」に含まれる。
そして,引用発明の「トラフィッククラス」は,本願発明の「トラフィッククラス」に相当する。
引用発明の「アクセスクラスごとの規制率及びトラフィッククラスごとの規制率」とを含む報知情報はアクセスを制御するメッセージといえるので、引用発明の「報知情報」は「アクセス制御メッセージ」であるといえる。
また,引用発明の「トラフィッククラスごとの規制率」は,アクセスを制御する「アクセスクラスとトラフッククラスとの組み合わせごとの規制率」を求めるためのパラメータであるから,本願発明の「アクセス制御パラメータ」に含まれるといえる。
そして、引用発明の「アクセスクラスごとの規制率」の情報の中にはアクセスクラスと規制率が含まれていることは明らかであり、引用発明の「アクセスクラスごとの規制率に含まれるアクセス規制に用いられるアクセスクラス」は,アクセスクラスの移動局UEのうち,通信サービスの送信処理が可能な移動局UEの範囲を指示するものであるから,引用発明の「アクセス規制に用いられるアクセスクラス」は本願発明の「範囲指示情報」に含まれるといえる。
また、アクセスクラスごとの規制率の情報の中にある規制率の部分も,アクセスを制御する「アクセスクラスとトラフッククラスとの組み合わせごとの規制率」を求めるためのパラメータであるから,「アクセス制御パラメータ」といえる。
よって、引用発明の「アクセスクラスごとの規制率及びトラフィッククラスごとの規制率」は「アクセス制御パラメータ」であるアクセスクラスとトラフッククラスとの組み合わせごとの規制率を求めるためのパラメータであるアクセスクラスごとの規制率の情報の中にある規制率の部分及び「トラフィッククラスごとの規制率」と「範囲指示情報」といえる「アクセスクラス」を有するものであるといえる。
さらに,引用発明の「アクセス規制に用いられるアクセスクラス」は,「アクセス制御パラメータ」から取得されるアクセスクラスとトラフッククラスとの組み合わせごとの規制率を適用可能である対象であるかを示すことから、「アクセス制御パラメータが適用可能である」対象を示すものといえ,引用発明と本願発明は「範囲指示情報は,アクセス制御パラメータが適用可能である対象を示す」点で共通しているといえる。

してみると,引用発明の「移動局UEにより,無線基地局eNBによって送信される報知情報を受信するステップであって,前記報知情報はアクセスクラスごとの規制率及びトラフッククラスごとの規制率とを含み,前記トラフィッククラスごとの規制率が,トラフッククラスに基づくものであり,前記アクセスクラスごとの規制率に含まれるアクセス規制に用いられるアクセスクラスは,前記トラフィッククラスごとの規制率が適用可能であるアクセスクラスを示す,ステップ」は,本願発明と「ユーザ機器(UE)により,ネットワークデバイスによって送信されるアクセス制御メッセージを受信するステップであって,アクセス制御メッセージがアクセス制御パラメータと範囲指示情報とを含み,前記アクセス制御パラメータが,トラフィッククラスに基づくものであり,前記範囲指示情報は,前記アクセス制御パラメータが適用可能である対象を示す,ステップ」である点で共通する。

2 また上記1で述べたとおりであるから,引用発明の「前記移動局UEにより,前記アクセスクラスごとの規制率に含まれるアクセス規制に用いられるアクセスクラスに従って,前記アクセスクラスとトラフィッククラスとの組み合わせごとの規制率が適用可能であるアクセスクラスを決定するステップ」は,本願発明と「前記UEにより、前記範囲指示情報に従って、前記アクセス制御パラメータが適用可能である対象を決定するステップ」である点で共通する。

3 「アクセスを開始する」には,送信処理も含まれていることは明らかであるから,引用発明の「トラフィッククラスに対応した送信処理を実施する」ことは,本願発明の「トラフィッククラスに対応するトラフィックへのアクセスを開始する」ことに含まれる。
そうすると,引用発明の「前記移動局UEにより,前記アクセスクラスとトラフィッククラスとの組み合わせごとの規制率に従って,前記トラフィッククラスに対応した送信処理を実施するステップ」は,本願発明と「前記UEにより、前記アクセス制御パラメータに従って、前記トラフィッククラスに対応するトラフィックへのアクセスを開始するステップ」といえる点で共通する。

以上を踏まえると、本願発明と引用発明とは以下の点で一致し、相違する。

(一致点)
「ユーザ機器(UE)により,ネットワークデバイスによって送信されるアクセス制御メッセージを受信するステップであって,前記アクセス制御メッセージがアクセス制御パラメータと範囲指示情報とを含み,前記アクセス制御パラメータが,トラフィッククラスに基づくものであり,前記範囲指示情報は,前記アクセス制御パラメータが適用可能である対象を示す,ステップと,
前記UEにより、前記範囲指示情報に従って、前記アクセス制御パラメータが適用可能である対象を決定するステップと,
前記UEにより,前記アクセス制御パラメータに従って,前記トラフィッククラスに対応するトラフィックへのアクセスを開始するステップと
を有するアクセス制御方法。」

(相違点) 一致点である「前記範囲指示情報」は,本願発明では「ユーザグループのグループ識別子を示す」ものであるのに対し、引用発明では,「アクセスクラスを示す」ものであって,「ユーザグループのグループ識別子を示す」と特定されていない点。

第6 判断

相違点について

「範囲指示情報」が示すアクセスクラスは,移動局UEのグループを表すことは当業者にとって技術常識であり,移動局UEはユーザによって利用されるものであるから,当該アクセスクラスはユーザグループを表しているといえ,またアクセスクラスはユーザグループのグループ識別子であるともいえる。

そうすると,上記相違点は実質的な相違ではないので、本願発明と引用発明とは同一である。

また仮に同一と言えないとしても、引用発明においてアクセスクラスをグループ識別子として管理することは当業者が容易になし得る事項である。

したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-03-18 
結審通知日 2019-03-25 
審決日 2019-04-05 
出願番号 特願2016-510917(P2016-510917)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
P 1 8・ 113- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久慈 渉廣川 浩  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 山本 章裕
本郷 彰
発明の名称 アクセス制御方法および装置  
代理人 実広 信哉  
代理人 木内 敬二  

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