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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05B |
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管理番号 | 1354837 |
審判番号 | 不服2017-17121 |
総通号数 | 238 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-10-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-11-20 |
確定日 | 2019-09-04 |
事件の表示 | 特願2015-209572「プロセスモデルの高速同定および生成」拒絶査定不服審判事件〔平成28年2月25日出願公開、特開2016-28349〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年2月22日(パリ条約による優先権主張 2010年3月2日(US)アメリカ合衆国、2010年12月3日(US)アメリカ合衆国)に出願された特願2011-35277号(以下「原出願」という。)の一部を平成27年10月26日に新たな特許出願としたものであり、その手続の主な経緯は、以下のとおりである。 平成28年 8月31日付け:拒絶理由通知書 平成29年 2月 6日 :意見書、手続補正書の提出 平成29年 7月11日付け:拒絶査定 平成29年11月20日 :審判請求書と同時に手続補正書(以下、こ の手続補正書による手続補正を「本件補正 」という。) の提出 平成30年12月10日付け:拒絶理由通知書 平成31年 3月11日 :意見書の提出 第2 本願発明 本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)及び請求項2ないし9は、以下のとおりである。 「【請求項1】 プロセスに対するプロセスモデルを生成する方法であって、 前記プロセス内のプロセス変数および操作された変数に関するプロセスデータを収集することと、 期間内のみに生成される前記収集されたプロセスデータから、前記操作された変数の変化後の前記プロセス変数に関連付けられたランプ速度を決定することであって、前記期間は、前記プロセスに関連付けられた無駄時間の期間の直後でありかつ前記無駄時間の10倍以下の長さである、ランプ速度を決定することと、 前記決定されたランプ速度を使用して、前記プロセスに対するプロセスモデルを生成することと、 を含む、方法。 【請求項2】 前記期間は、前記無駄時間以上の長さである、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記期間は、前記無駄時間の2倍の長さである、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記期間は、複数のサブ期間を含み、前記複数のサブ期間は、非連続の期間である、請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記プロセスは、非積分プロセス以外のプロセスである、請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記ランプ速度を決定することは、 等しい長さの異なる期間にわたるプロセス変数ランプ速度の複数の値を決定することと、 前記プロセス変数ランプ速度の前記複数の値の統計的測定値として、前記ランプ速度を決定することと、 を含む、請求項1に記載の方法。 【請求項7】 前記期間は、前記無駄時間の6倍以下の長さである、請求項1に記載の方法。 【請求項8】 前記期間は、前記無駄時間以上の長さである、請求項7に記載の方法。 【請求項9】 前記期間は、前記無駄時間の2倍の長さである、請求項7に記載の方法。」 第3 拒絶の理由 平成30年12月10日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。 本願発明及び請求項2ないし9に係る発明は、原出願の優先権主張の基礎となる日前(以下単に「優先日前」という。)に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開平3-220417号公報 第4 引用文献1の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 (1)第2ページ左上欄第4ないし12行 「<従来技術> プロセス制御を行う場合に、プロセスに100%のステップ状の操作量を与え、その時のプロセス量の応答特性を観測して制御パラメータを同定するステップ応答法が用いられている。すなわち、プロセス量の変化の勾配及び無駄時間を算出し、ジークラーニコラス法により比例・積分・微分定数を求めて、これらの制御定数によりPID制御を行うようにしている。」 (2)第2ページ左下欄第19行ないし同右下欄第2行 「さらに、プロセス量があらかじめ定められた所定の値に達したときに前記プロセス量の変化率データΔPV及び時間幅データΔtの更新を停止するようにしたものである。」 (3)第3ページ左上欄第7及び8行 「プロセス量の勾配は変化率データΔPVと時間幅データΔtから求められる。」 (4)第3ページ左下欄第17ないし20行 「次に、この実施例の動作を第5図に基づいて説明する。第5図の1?26の点はサンプリング点を表わし、この点でプロセス量PVがサンプリングされる。」 (5)第5図 (6)第4ページ左上欄第9行ないし同右上欄第4行 「第6図にプロセス量PV及びこの様にして求めたプロセス量の変化率ΔPV及び時間幅データΔtの変化を示す、プロセス量PVはノイズの為に細かい変化が大きいが、時刻T1以降はΔPV及びΔtはほぼ一定値になる。また、直線13?15はそれぞれ時刻T2?T4におけるΔPVとΔtからプロセス量PVの勾配を求め、無駄時間tLの位置に配置したものである。直線13?15のいずれもほぼ同じ傾きを有している。つまり、時刻T1?T4のいずれの時刻でΔPVとΔtの演算を中止して制御パラメータを求めても、はぼ同じ制御パラメータが得られる事を示している。この特性図では、時刻T4でプロセス量PVがフルスケールの16%程度、PVOが0%、第5図の黒丸1点でのCPVがフルスケールの1%である。」 (7)第6図 また、上記記載事項(1)ないし(7)から、以下の事項(8)及び(9)が認められる。 (8)記載事項(1)からすれば、プロセスにステップ状の操作量を与え、その応答特性を観測して、プロセス量の変化の勾配を算出し、当該プロセス量の変化の勾配を使用して、比例ゲイン、微分ゲイン及び積分ゲイン等の制御定数を求めて、プロセスに対するプロセスモデルを生成することは、明らかである。 (9)記載事項(3)、(6)及び(7)からすれば、プロセス量PVの勾配は、変化率データΔPVを時間幅データΔtで除する(ΔPV÷Δt)ことにより求められることは、明らかである。 2 引用発明 上記1からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「プロセスに対するプロセスモデルを生成する方法であって、 プロセスにステップ状の操作量を与えた後の、プロセス量PVの変化率データΔPV及び時間幅データΔtをサンプリングすることと、 所定期間内のみにサンプリングされた変化率データΔPV及び時間幅データΔtから、変化率データΔPVを時間幅データΔtで除することにより、プロセス量PVの勾配を求めることであって、前記所定期間は、無駄時間tLの後である、時刻T1?T4であり、 前記プロセス量の変化の勾配を使用して、比例ゲイン、微分ゲイン及び積分ゲイン等の制御定数を求めて、プロセスに対するプロセスモデルを生成する方法。」 第5 対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「プロセス量PV」は本願発明の「プロセス変数」に相当する。 以下同様に、引用発明の「操作量」は本願発明の「操作された変数」に、引用発明の「変化率データΔPV」は本願発明の「プロセスデータ」に、引用発明の「プロセス量PVの勾配」は本願発明の「ランプ速度」に、引用発明の「無駄時間tL」は本願発明の「無駄時間」に、それぞれ相当する。 また、引用発明は「プロセスにステップ状の操作量を与えた後の、プロセス量PVの変化率データΔPV及び時間幅データΔtをサンプリングする」ものであるから、変化率データΔPV及び時間幅データΔtに加えて、ステップ状の操作量に関するデータを収集していることは明らかであり、本願発明の「プロセス内のプロセス変数および操作された変数に関するプロセスデータを収集する」事項に相当する。 また、引用発明の「所定期間内のみにサンプリングされた変化率データΔPV及び時間幅データΔtから、変化率データΔPVを時間幅データΔtで除することにより、プロセス量PVの勾配を求める」事項は、本願発明の「期間内のみに生成される前記収集されたプロセスデータから、前記操作された変数の変化後の前記プロセス変数に関連付けられたランプ速度を決定する」事項に相当する。 また、引用発明の「プロセス量の変化の勾配を使用して、比例ゲイン、微分ゲイン及び積分ゲイン等の制御定数を求めて、プロセスに対するプロセスモデルを生成する」事項は、本願発明の「決定されたランプ速度を使用して、前記プロセスに対するプロセスモデルを生成する」事項に相当する。 したがって、本願発明と引用発明は以下の点で一致する。 【一致点】 プロセスに対するプロセスモデルを生成する方法であって、 前記プロセス内のプロセス変数および操作された変数に関するプロセスデータを収集すること、 期間内のみに生成される前記収集されたプロセスデータから、前記操作された変数の変化後の前記プロセス変数に関連付けられたランプ速度を決定すること、 前記決定されたランプ速度を使用して、前記プロセスに対するプロセスモデルを生成すること、 を含む、方法。 また、本願発明と引用発明は以下の点でのみ相違する。 【相違点】 プロセスデータを収集する期間について、本願発明は、プロセスに関連付けられた無駄時間の期間の直後でありかつ無駄時間の10倍以下の長さであるのに対し、引用発明は、無駄時間tLの後である、時刻T1?T4であるものの、時刻T1?T4が無駄時間tLの10倍以下の範囲内であるか否か不明な点。 第6 判断 1 相違点について 上記相違点について、検討する。 引用文献1の記載事項(2)及び(6)からすれば、引用発明が、プロセスが定常値に達するまで待つことなく、その途中の時刻T1?T4のいずれかの時刻において演算を中止して、プロセス量PVの勾配を求めるものであることは明らかであるから、引用発明において、演算を中止する時刻を無駄時間tLの10倍以下の範囲内とすることは、求められたプロセス量PVの勾配が使用するのに十分な精度であるか否か等を考慮した上で、当業者が発明の実施に際し適宜なし得る設計事項に過ぎない。 2 効果について 上記のとおり、引用発明はプロセスが定常状態に達するまで待つことなく、プロセス量の変化の勾配を算出し、制御定数を求めるものであることは、明らかであるから、引用文献1に接した当業者にとって、本願発明の効果は、予測し得る範囲内のものである。 3 請求人の主張について 請求人は、平成31年3月11日提出の意見書において「引用文献1の図6から理解できるように、時刻T1は無駄時間tLの直後ではない、時刻T1は、無駄時間tLが終了した後しばらくした時点です。・・・よって、引用文献1には、本願発明の上記特徴は開示されていません。さらに、時刻T1前に収集されたプロセスデータは大部分がノイズであることを教示するので、D1(当審注記:引用文献1)の方法では、当業者は、時刻T1の前に収集されたプロセスデータを使用してランプ速度を決定しようとはせず、する理由はありません。」と主張しているので、当該主張についても検討する。 本願発明の発明特定事項である「期間内のみに生成される前記収集されたプロセスデータから、前記操作された変数の変化後の前記プロセス変数に関連付けられたランプ速度を決定することであって、前記期間は、前記プロセスに関連付けられた無駄時間の期間の直後でありかつ前記無駄時間の10倍以下の長さである」という記載からすれば、本願発明は、無駄時間の期間の直後から無駄時間の10倍の長さの期間に生成されるプロセスデータのみを用いて、ランプ速度を決定するものであるものの、その期間のどの時刻のプロセスデータを用いてランプ速度を決定するかは特定されていないから、本願発明は、前記期間内の全部のプロセスデータを用いてランプ速度を決定するもの、又は、無駄時間の直後のプロセスデータを必ず用いてランプ速度を決定するものには限定されているとは解されない。むしろ、前記期間の一部のデータのみを使用するか、前記期間の全部のデータを使用するかに関係なく、前記期間内のプロセスデータを(一部であれ全部であれ何らかの形で)用いるものを包括的に特許請求している、と認められるから、無駄時間が終了した後、しばらく経った時刻のプロセスデータを用いてランプ速度を決定するものも含まれているといえる。 このことは、本願発明を引用する請求項4に係る発明の発明特定事項「前記期間は、複数のサブ期間を含み、前記複数のサブ期間は、非連続の期間である」からも裏付けられる。上記発明特定事項に鑑みれば、本願発明は、前記期間内のプロセスデータを非連続的に複数用いる場合も、その技術的範囲に含む、といえる。 してみれば、引用発明が無駄時間tLの後である、時刻T1?T4において、プロセス量PVの変化率データΔPVをサンプリングするものである以上、引用発明は、本願発明の技術的範囲に含まれる。 したがって、請求人の、引用発明は無駄時間tLの直後のプロセスデータを用いるものではないので本願発明と相違する旨の上記主張は、本願発明の発明特定事項に正確に基づいたものとはいえないから、採用できない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-03-29 |
結審通知日 | 2019-04-02 |
審決日 | 2019-04-16 |
出願番号 | 特願2015-209572(P2015-209572) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G05B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 稲垣 浩司、藤島 孝太郎 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
平岩 正一 篠原 将之 |
発明の名称 | プロセスモデルの高速同定および生成 |
代理人 | 加藤 和詳 |
代理人 | 中島 淳 |