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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1354877
審判番号 不服2017-3049  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-01 
確定日 2019-09-06 
事件の表示 特願2015-525768「ユーザ機器特性」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月13日国際公開、WO2014/023400、平成27年 9月28日国内公表、特表2015-528654〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、パリ条約による優先権主張を伴って2013年(平成25年)7月31日に欧州特許庁に対してなされた国際出願による特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 2月12日付け 拒絶理由通知書
平成28年 5月16日 意見書、手続補正書の提出
平成28年10月26日付け 拒絶査定
平成29年 3月 1日 拒絶査定不服審判の請求
平成30年 1月22日付け 拒絶理由通知書(当審)
平成30年 6月22日 意見書、手続補正書の提出
平成30年 8月24日付け 拒絶理由通知書(当審)
平成31年 2月26日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?15に係る発明は、平成31月2月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「無線通信ネットワーク内のネットワーク制御ノードにユーザ機器の環境動作特性の表示を提供する方法であって、
RRC idle及びRRC connectedの両モードにおける前記ユーザ機器によって訪問された最後のN個のセルの各セルのセル情報を、前記ネットワーク制御ノードに提供するために、前記ユーザ機器内に記録するステップと、
環境動作特性の前記表示として前記訪問された最後のN個のセルの前記セル情報を前記ユーザ機器から前記ネットワーク制御ノードに通信するステップと、
を含み、
前記セル情報は、
RRC idleモードの前記ユーザ機器及びRRC connectedモードの前記ユーザ機器によって訪問されたセルの情報、及び、
前記ユーザ機器が前記訪問された最後のN個のセルのそれぞれ内にどれほど長くいたかの表示、
を含む、方法。」

第3 当審における拒絶の理由
平成30年8月24日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして、請求項1に係る発明に対してITRI、 "Providing Mobility Assistance Information Based on MSE and History Record", 3GPP TSG-RAN WG2 Meeting#79 Tdoc R2-123614,2012年8月7日(利用可能日),URL: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_79/Docs/R2-123614.zip、が引用されている。

第4 優先権の主張について
1 本願は、受理官庁としての欧州特許庁に対し2013年7月31日を国際出願日としてなされた国際出願による特許出願(以下、「国際特許出願」という。)であって、当該国際特許出願には、2012年8月6日を出願日とする欧州特許出願(出願番号:EP 12360061.1)に基づいて、パリ条約による優先権主張がなされている。

2 特許協力条約に基づく国際特許出願については、特許法第184条の3第2項の規定により、優先権主張手続に関して、特許法第43条の規定は適用されず、特許協力条約及び特許協力条約に基づく規則が適用されるところ、同規則17.1(本願の国際出願日時点の2013年7月31日時点のもの。)には、優先権書類について次のとおり規定されている。

「17.1 先の国内出願又は国際出願の謄本を提出する義務
(a) 第8条の規定により先の国内出願又は国際出願に基づく優先権の主張を伴う場合には、当該先の国内出願又は国際出願を受理した当局が認証したその出願の謄本(「優先権書類」)は、既に優先権書類が優先権を主張する国際出願とともに受理官庁に提出されている場合並びに(b)及び(bの2)の規定に従う場合を除くほか、優先日から十六箇月以内に出願人が国際事務局又は受理官庁に提出する。ただし、当該期間の満了後に国際事務局が受理した当該先の出願の写しは、その写しが国際出願の国際公開の日前に到達した場合には、当該期間の末日に国際事務局が受理したものとみなす。
(b) 優先権書類が受理官庁により発行される場合には、出願人は、優先権書類の提出に代えて、受理官庁に対し、優先権書類を、作成し及び国際事務局に送付するよう請求することができる。その請求は、優先日から十六箇月以内にするものとし、また、受理官庁は、手数料の支払を条件とすることができる。
(bの2) 国際事務局が優先権書類を実施細則に定めるところにより国際出願の国際公開の日前に電子図書館から入手可能である場合には、出願人は、優先権書類の提出に代えて、国際事務局に対し、国際公開の日前に、当該優先権書類を当該電子図書館から入手するよう請求することができる。
(c) (a)、(b)及び(bの2)の要件のいずれも満たされない場合には、指定官庁は、(d)の規定に従うことを条件として、優先権の主張を無視することができる。ただし、指定官庁は、事情に応じて相当の期間内に出願人に優先権書類を提出する機会を与えた後でなければ、優先権の主張を無視することはできない。
(d) 指定官庁は、(a)に規定する先の出願が国内官庁としての当該指定官庁に出願されている場合又は当該指定官庁が実施細則に定めるところにより優先権書類を電子図書館から入手可能な場合は、(c)の規定により優先権の主張を無視することはできない。」

3 そこで、本願の手続が、上記規則17.1を満たしているか否かについて検討する。
(1) 規則17.1(a)について
WIPO国際事務局が2014年5月8日付けで出願人に対して発送し、その写しを指定国である日本国特許庁に送付した、「優先権主張の書類提出に関する通知(NOTIFICATION CONCERNING SUBMISSION、 OBTENTION OR TRANSMITTAL OF PRIORITY DOCUMENT)」(PCT/IB/304(July 2012))には、優先日(Priority date)を「06 August 2012(06.08.2012)」とする優先権の主張に関して、優先権書類の受領日(Date of receipt of priority document)は「23 April 2014(23.04.2014)*」(アスタリスクが付されていることに留意。)と記載されており、これらの優先権書類は、特許協力条約に基づく規則17.1(a)で規定する提出期限である優先日から16箇月を経過した後にWIPO国際事務局により受領されたものであると認められる。
また、上記受領日(2014年4月23日)は、本件国際特許出願の国際公開の日(2014年2月13日)前ではないから、本願の手続は、同規則17.1(a)のただし書には該当しない。
したがって、本願については、規則17.1(a)を満たしていない。

(2) 規則17.1(b)及び(bの2)について
規則17.1(b)又は(bの2)の請求に関し、WIPOのHPのPATENTSCOPEにより書類を参照すると、出願書類「REQUEST 」(PCT/RO/101(second sheet)(16 September 2012))のFurnishing the priority document(s)の欄の上段及び下段のボックスにチェックはなく、アクセスコードも記載されていない。そして、同規則17.1(b)又は(bの2)の請求が、優先日から16箇月以内になされた事実も認められない。

また、優先権書類の受領日に付された上記アスタリスク("*")について、上記通知(PCT/IB/304(July 2012))には以下のように記載されている。
「An asterisk "*" next to a date of receipt、 denotes a priority documents submitted or transmitted to or obtained by the International Bureau but not in compliance with Rule 17.1(a)、(b)or(b-bis)(the priority document was received after the time limit prescribed in Rule 17.1(a); the request to prepare and transmit the priority document was submitted to the receiving Office after the applicable time limit under Rule 17.1(b) or the request to the International Bureau to obtain the priority document was made after the applicable time limit under Rule 17.1(b-bis)). Even though the priority document was not furnished in compliance with Rule 17.1(a)、(b)or(b-bis)、 the International Bureau will nevertheless transmit a copy of the document to the designated Offices、 for their consideration. In case such a copy is accepted by the designated Officce as the priority document、 Rule 17.1(c) provides that no designated Office may disregard the priority claim concerned before giving the applicant an oppotunity、 upon entry into the national phase、 to furnish the priority document within a time limit which is reasonable under circumstances. 」
([当審仮訳]:
受領の日付の次のアスタリスク「*」は、優先権書類は、国際事務局に提出、送付され、又は国際事務局により獲得されたが、規則17.1(a)、(b)又は(bの2)を満たしていない(優先権書類が、規則17.1(a)に規定されている期限の後に受領された;優先権書類を作成し送付する請求が、規則17.1(b)の下の適切な期限の後に、受理官庁に提出された、又は、国際事務局に対する優先権書類獲得の請求が、規則17.1(bの2)の下の適切な期限の後になされた。)。優先権書類の提供が規則17.1(a)、(b)又は(bの2)を満たしていなくとも、国際事務局は、指定官庁に、検討のために優先権書類の写しを送付する。規則17.1(c)は、指定官庁は、国内段階で、事情に応じて相当の期間内に出願人に優先権書類を提出する機会を与えた後でなければ、優先権の主張を無視することはできないとしており、そのような場合には、写しは指定官庁により優先権書類として受け付けられる。)
してみると、WIPO国際事務局は、本願について同規則17.1(a)、(b)、及び(bの2)の要件を満たしていないとしていることは明らかである。

したがって、本願については、規則17.1(b)、(bの2)の要件のいずれも満たしていない。

(3) 規則17.1(c)について
上記ア、イで検討したとおり、本願は、規則17.1(a)、(b)又は(bの2)のいずれも満たしていないから、規則17.1(c)第1文に規定された優先権の主張を無視することができる条件のひとつである「規則17.1(a)、(b)又は(bの2)のいずれも満たされない場合」に該当する。

次に、規則17.1(c)のただし書の規定について検討すると、国際特許出願についての優先権主張の手続について、上記規則17.1(c)ただし書の規定には特許法施行規則第38条の14が対応しており、その第1項に、優先権の主張を伴う国際特許出願をする者は、上記規則17.1(a)に規定する優先権書類を、国内書面提出期間が満了する時の属する日後2月以内に特許庁長官に提出することができる旨規定され、国際段階で優先権書類の提出がない場合においても、特許庁に対して優先権書類を提出する機会が与えられている。そして、同第2項は「前項の規定による優先権書類の提出は、様式第三十六によりしなければならない。」としている。
しかしながら、本願において、上記施行規則の規定に基づいて、国内書面提出期間が満了する時の属する日(本願においては、優先権主張日から30箇月、すなわち、2015年2月6日)後2月以内(2015年4月6日まで)に、特許庁に対して様式第三十六により優先権証明書の提出がなされた事実は認められない。
したがって、本願については、規則17.1(c)のただし書きに規定する、優先権の主張を無視することができない場合に該当しない。

規則17.1(c)第1文には、優先権の主張を無視することができる条件として、規則17.1(a)、(b)又は(bの2)のいずれも満たされない場合に該当することの他に、規則17.1(d)に従うことを条件とする旨が規定されているので、最終的に規則17.1(c)の規定により優先権の主張を無視することができるか否かについては、次のエで、規則17.1(d)について検討した後に判断する。

(4) 規則17.1(d)について
本願については、優先権主張の基礎とされた先の出願は欧州特許庁への特許出願であって、日本国特許庁への特許出願を優先基礎出願とするものではないから、規則17.1(d)の「(a)に規定する先の出願が国内官庁としての当該指定官庁に出願されている場合」には該当しない。

次に、規則17.1(d)の「当該指定官庁が実施細則に定めるところにより優先権書類を電子図書館から入手可能な場合」に該当するかを検討すると、規則17.1(d)における電子図書館からの優先権書類の入手の可能性については、実施細則715号(インターネット<URL http://www.wipo.int/pct/en/texts/ai/s715.html>より入手可能。)に以下のとおり規定されている。
「Section 715
Availability of Priority Documents from Digital Libraries
(a) For the purposes of Rules 17.1(b-bis)、 17.1(d) (where appropriate、 as applicable by virtue of Rules 17.1(c) and 82ter.1(b))、 66.7(a) (where appropriate、 as applicable by virtue of Rule 43bis.1(b)) and 91.1(e)、 a priority document shall be considered to be available from a digital library to the International Bureau、 a designated Office、 the International Searching Authority or the International Preliminary Examining Authority、 as the case may be:
(i) if the Office or Authority concerned has notified the International Bureau、 or the International Bureau has declared、 as the case may be、 that it is prepared to obtain priority documents from that digital library; and
(ii) the priority document concerned is held in that digital library and the applicant has、 to the extent required by the procedures for accessing the relevant digital library、 authorized the Office or Authority concerned or the International Bureau、 as the case may be、 to access that priority document. 」
([当審仮訳]:
実施細則715
電子図書館からの優先権書類の入手の可能性
(a)規則17.1(bの2)、17.1(d)(該当する場合には、規則17.1(c)及び82の3.1(b)の規定によって適用する17.1(d)、66.7(a)(該当する場合には、規則43の2.1(b)の規定によって適用する66.7(a))及び91.1(e)の規定の適用上、次の場合には、国際事務局、指定官庁、国際調査機関又は国際予備審査機関が優先権書類を電子図書館から入手可能であるとみなす:
(i)当該官庁又は機関が国際事務局に対し優先権書類を当該電子図書館から入手する用意があることを通知したか、又は国際事務局がその旨を宣言しており、かつ、
(ii)当該優先権書類が当該電子図書館において保有されており、出願人が当該電子図書館へのアクセスに関する手続において必要とされる範囲内で当該官庁もしくは機関又は国際事務局による当該優先権書類へのアクセスを承諾している場合)

そして、本願における特許法施行規則第38条の14に規定された国内書面提出期間が満了する時の属する日(本願においては、優先権主張日から30箇月、すなわち、2015年2月6日)後2月以内(2015年4月6日まで)において、日本国特許庁が指定官庁として国際事務局に対し実施細則715号(a)(i)に定める通知をした事実はなく、国際事務局がその旨の宣言した事実もない。また、本願の優先権書類が電子図書館に保有され、出願人が該実施細則715号(a)(ii)に定める承諾をしていた事実も、認められない。
よって、日本国特許庁が、実施細則に定めるところにより、本願の優先権書類を電子図書館から入手可能であったとする事実は無いから、本願について、上記規則17.1(d)に規定の適用はない。

4 小活
以上によれば、本願については、特許協力条約に基づく規則17.1(a)、(b)及び(bの2)の要件のいずれも満たされない場合であって、同規則17.1(c)のただし書により与えられた提出機会にも優先権書類の提出がなされておらず、また、上記規則17.1(d)の規定の適用もないため、同規則17.1(c)本文の規定により、上記優先権主張の効力を認めることはできない。

本願は、2013年7月31日を国際出願日としてなされた、パリ条約による優先権主張の効力が認められない出願であるから、以下、新規性進歩性の要件についての判断は、上記国際出願日を基準日として行う。

第5 引用発明
当審拒絶理由に引用されたITRI, "Providing Mobility Assistance Information Based on MSE and History Record"(当審訳:MSE及び履歴記録に基づく移動性支援情報の提供),3GPP TSG-RAN WG2 Meeting#79 Tdoc R2-123614,2012年8月7日(利用可能日),URL: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_79/Docs/R2-123614.zip(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

1 「The major problem is that a UE does not know the deployment of cells or other related knowledge (e.g., cell size) to make the decision. Therefore, due to the unreliability of current MSE in HetNet environment, a UE shall also provide the raw history record, i.e., history information, as the complement of MSE for the eNB to process if necessary. The history information could include the visited cell ID and the corresponding stayed time. The history information could be then utilized for MSE enhancements [3]. This history information is much similar to the “UE history information” IE which is exchanged during handover preparation over both S1 and X2. The difference is that this history information is maintained by UE itself and the information about the latest n visited cells (in both RRC connected and IDLE states) are recorded. The major concern is that history information could be a large amount of data. However, we could represent the stayed time by using pre-defined levels. Moreover, it depends on the network to decide the number of cells to be reported (one or more). In these ways, the size of history information to be reported from UE could be significantly reduced.
Proposal 1: The MSE information and history information could be used as the mobility assistance information.」(2葉4行?15行)
(当審訳:
2.1 モビリティのシナリオ
主な問題は、UEが決定をするためのセルの配置又は他の関連する知識(例えばセルサイズ)を知らないことである。このため、HetNet環境下での現在のMSEの低信頼性のため、必要であればeNBが処理するためのMSEの補足として、UEは生の履歴記録、すなわち履歴情報、も提供すべきである。履歴情報は滞在したセルIDと対応する滞在時間とを含むことができる。履歴情報はMSEの増進のために利用することができる。この履歴情報は、ハンドオーバ準備の間にS1及びX2上で交換される”UE履歴情報”IEとよく類似している。違いは、履歴情報はUE自身により維持されるものであり、直近のn個の(RRC connected及びIDLE状態の両方における)滞在セルに関する情報が記録されることである。主な問題は履歴情報が大量のデータとなり得ることである。しかし、予め定められたレベルを使用することにより滞在時間を示すことができる。さらに、報告すべきセルの数(1又は複数)を決定することはネットワークに依存する。これらの手段によって、UEから報告される履歴情報のサイズはかなり削減されることができる。
提案1:MSE情報及び履歴情報は移動性支援情報として使用されることができる。)

2


Figure 2 Procedure of sending mobility assistance information.
(当審訳:図2 移動性支援情報を送信する手続き)

(1)上記2によれば、タイトルが示すとおり図2で示される手続きは移動性支援情報を送信する手続きであり、当該手続きの中で移動性支援情報はUEからeNBへ送信されている。そして、UEとeNBとにより構成されるネットワークが無線通信ネットワークであることは明らかである。よって、引用例には、無線通信ネットワーク内のeNBにUEの移動性支援情報を送信する方法が示されているといえる。

(2)上記1によれば、UEは履歴情報を記録しており、記録される履歴情報は直近のn個のRRC connected及びIDLE状態の両方における滞在セルに関する情報であり、かつ滞在したセルIDを含むので、RRC connected及びIDLE状態の両方における直近のn個の滞在セルに関するセルIDを含む情報をUEに記録するステップを有しているといえる。

(3)上記2によれば、履歴情報は移動性支援情報としてUEからeNBに送信されている。そして、上記(2)にある通り、履歴情報は直近のn個の滞在セルに関する情報である。よって、移動性支援情報として直近のn個の滞在セルに関する情報をUEからeNBに送信するステップを有しているといえる。

(4)上記(2)にある通り、履歴情報として記録される滞在セルに関する情報は、RRC connected及びIDLE状態の両方における滞在セルに関する情報である。また、上記1によれば、履歴情報は滞在したセルにおける滞在時間を含んでいる。よって、滞在セルに関する情報は、RRC connected及びIDLE状態の両方における滞在セルに関する情報、及び、滞在したセルにおける滞在時間を含んでいる。

以上を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「無線通信ネットワーク内のeNBにUEの移動性支援情報を送信する方法であって、
RRC connected及びIDLE状態の両方における直近のn個の滞在セルに関するセルIDを含む情報をUEに記録するステップと、
移動性支援情報として直近のn個の滞在セルに関する情報をUEからeNBに送信するステップと、
を含み、
滞在セルに関する情報は、RRC connected及びIDLE状態の両方における滞在セルに関する情報、及び、滞在したセルにおける滞在時間を含む、方法。」

第6 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「eNB」は、ネットワーク側においてUEの制御を行う装置(ノード)であるので、本願発明の「ネットワーク制御ノード」に含まれる。また、引用発明の「UE」は、本願発明の「ユーザ機器」に相当する。
引用発明において移動性支援情報を「送信」することは、この情報をeNBに与えているので、本願発明において環境動作特性の表示を「提供」することに相当する。
よって、引用発明の「無線通信ネットワーク内のeNBにUEの移動性支援情報を送信する方法」は、本願発明と、「無線通信ネットワーク内のネットワーク制御ノードにユーザ機器の情報を提供する方法」といえる点で、一致する。

(2)引用発明の「RRC connected及びIDLE状態」は、両者が対として記載されていることからそれぞれ「RRC connected状態」及び「RRC IDLE状態」であると認められるところ、両者はそれぞれ本願発明の「RRC connectedモード」及び「RRC idleモード」に相当する。
引用発明の「直近のn個の滞在セル」は、UEが滞在(訪問)した直近(最後)のn個のセルであるので、本願発明の「ユーザ機器によって訪問された最後のN個のセル」に相当する。そして、引用発明の「n個の滞在セルに関するセルID」は、n個のセルそれぞれのセルIDであり、セルIDがセル情報の一種であることは明らかであるので、本願発明の「N個のセルの各セルのセル情報」に含まれる。
また、(1)で示したとおり、引用発明において、履歴情報はUEからeNBに送信される情報であるので、ネットワーク制御ノードに提供するために記録されていることは明らかである。
よって、引用発明の「RRC connected及びIDLE状態の両方における直近のn個の滞在セルに関するセルIDを含む情報をUEに記録するステップ」は、本願発明の「RRC idle及びRRC connectedの両モードにおける前記ユーザ機器によって訪問された最後のN個のセルの各セルのセル情報を、前記ネットワーク制御ノードに提供するために、前記ユーザ機器内に記録するステップ」に含まれる。

(3)(1)及び(2)で示した事項に基づけば、引用発明の「移動性支援情報として直近のn個の滞在セルに関する情報をUEからeNBに送信するステップ」は、本願発明と、「情報として前記訪問された最後のN個のセルの前記セル情報を前記ユーザ機器から前記ネットワーク制御ノードに通信するステップ」である点で一致する。

(4)(1)及び(2)で示した事項に基づけば、引用発明の「RRC connected及びIDLE状態の両方における滞在セルに関する情報」は、本願発明の「RRC idleモードの前記ユーザ機器及びRRC connectedモードの前記ユーザ機器によって訪問されたセルの情報」に相当するといえる。
また、引用発明の「滞在したセルにおける滞在時間」に関して、ここでの「滞在したセル」が直近のn個の滞在セルに関する情報であること、及び「滞在時間」がセル内にどれほど長くいたかを示す情報であることはそれぞれ明らかである。よって、引用発明の「滞在したセルにおける滞在時間」は、本願発明の「ユーザ機器が前記訪問された最後のN個のセルのそれぞれ内にどれほど長くいたかの表示」といえる。
したがって、引用発明の「滞在セルに関する情報は、RRC connected及びIDLE状態の両方における滞在セルに関する情報、及び、滞在したセルにおける滞在時間を含む」ことは、本願発明の「前記セル情報は、RRC idleモードの前記ユーザ機器及びRRC connectedモードの前記ユーザ機器によって訪問されたセルの情報、及び、前記ユーザ機器が前記訪問された最後のN個のセルのそれぞれ内にどれほど長くいたかの表示、を含む」ことに相当するといえる。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「無線通信ネットワーク内のネットワーク制御ノードにユーザ機器の情報を提供する方法であって、
RRC idle及びRRC connectedの両モードにおける前記ユーザ機器によって訪問された最後のN個のセルの各セルのセル情報を、前記ネットワーク制御ノードに提供するために、前記ユーザ機器内に記録するステップと、
前記情報として前記訪問された最後のN個のセルの前記セル情報を前記ユーザ機器から前記ネットワーク制御ノードに通信するステップと、
を含み、
前記セル情報は、
RRC idleモードの前記ユーザ機器及びRRC connectedモードの前記ユーザ機器によって訪問されたセルの情報、及び、
前記ユーザ機器が前記訪問された最後のN個のセルのそれぞれ内にどれほど長くいたかの表示、
を含む、方法。」

(相違点)
本願発明は、無線通信ネットワーク内のネットワーク制御ノードに「ユーザ機器の環境動作特性の表示を提供する」方法であり、「環境動作特性の前記表示として」前記訪問された最後のN個のセルの前記セル情報を前記ユーザ機器から前記ネットワーク制御ノードに通信しているのに対し、引用発明では、無線通信ネットワーク内のeNBに「UEの移動性支援情報を送信する」方法であり、「移動性支援情報として」直近のn個の滞在セルに関する情報をUEからeNBに送信しているが、当該移動性支援情報が「環境動作特性の表示」であることは特定されていない点。

第7 判断

(相違点について)
引用発明の「移動性支援情報」はUEにおける直近のn個の滞在セルに関する情報を含むものであり、当該情報はUEがどのように移動したかというUEの環境動作の特性を示す情報といえる。よって、引用発明の「移動性支援情報」は、実質的に本願発明の「環境動作特性の表示」であるといえる。
したがって、上記相違点は、実質的な相違点ではなく、本願発明は引用例に記載されたものであり、引用例に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条1項3号及び特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-03-28 
結審通知日 2019-04-02 
審決日 2019-04-17 
出願番号 特願2015-525768(P2015-525768)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (H04W)
P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桑江 晃  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 倉本 敦史
本郷 彰
発明の名称 ユーザ機器特性  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  

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