• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02C
管理番号 1354927
異議申立番号 異議2018-700392  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-10-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-11 
確定日 2019-07-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6232475号発明「コンタクトレンズケア用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6232475号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕、13、14、15、16について訂正することを認める。 特許第6232475号の請求項1、2、4?16に係る特許を取り消す。 特許第6232475号の請求項3についての異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6232475号の請求項1?16に係る特許についての出願は、2011年(平成23年)7月6日(優先権主張平成22年7月6日)を国際出願日とする特願2012-523908号の一部を平成28年6月17日に新たな特許出願としたものであって、平成29年10月27日にその特許権の設定登録がされ、平成29年11月15日に特許公報が発行されたものである。
その後、その特許について、平成30年5月11日に、特許異議申立人 高橋麻衣子(以下、「特許異議申立人1」という。)による特許異議の申立てと、特許異議申立人 山内生平(以下、「特許異議申立人2」という。)による特許異議の申立てがされ、平成30年8月6日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年10月9日に意見書の提出及び訂正の請求がなされた。さらに、平成30年12月17日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である平成31年2月18日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がなされた。
なお、平成30年10月9日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。また、平成30年10月15日付け及び平成31年3月6日付けで、特許異議申立人1及び特許異議申立人2に対して訂正請求があった旨の通知を送付したが、指定した期間内に特許異議申立人1及び特許異議申立人2からの意見書の提出はなされなかった。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、「特許第6232475号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?12、13、14、15、16について訂正することを求める。」というものである。

2 請求項1?12に係る訂正
(1)訂正の内容
本件訂正による請求項1?12に係る訂正の内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。以下同様である。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「 (A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(D)エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を含有することを特徴とする、コンタクトレンズケア用組成物(但し、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上であるコンタクトレンズケア用組成物、水性媒体中に少なくとも1個以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物、及び、下記式(1)
【化1】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物を除く。)」と記載されているのを、
「 (A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D)エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を含有することを特徴とする、コンタクトレンズケア用組成物(但し、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上であるコンタクトレンズケア用組成物、水性媒体中に少なくとも1個以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物、及び、下記式(1)
【化1】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物を除く。)」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?12も同様に訂正する。)。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1?3のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」と記載されているのを、
「請求項1または2に記載のコンタクトレンズケア用組成物。」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5?12も同様に訂正する。)。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1?4のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」と記載されているのを、
「請求項1?2または4のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5?12も同様に訂正する。)。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1?5のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」と記載されているのを、
「請求項1?2または4?5のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7?12も同様に訂正する。)。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1?6のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」と記載されているのを、
「請求項1?2または4?6のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8?12も同様に訂正する。)。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1?7のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」と記載されているのを、
「請求項1?2または4?7のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9?12も同様に訂正する。)。

ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1?8のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」と記載されているのを、
「請求項1?2または4?8のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10?12も同様に訂正する。)。

ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1?9のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」と記載されているのを、
「請求項1?2または4?9のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」に訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11?12も同様に訂正する。)。

コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11に
「請求項1?10のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」と記載されているのを、
「請求項1?2または4?10のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」に訂正する(請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)。

サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項12に
「請求項1?11のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」と記載されているのを、
「請求項1?2または4?11のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。」に訂正する。

本件訂正請求は、一群の請求項〔1-12〕に対して請求されたものである。

(2)訂正の目的の適否
ア 訂正事項1
訂正事項1による訂正は、本件訂正前の請求項1に記載された発明における「(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種」について、その含有割合を「0.01?0.1w/v%」に減縮するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

イ 訂正事項2
訂正事項2による訂正は、本件訂正前の請求項3を削除するものである。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

ウ 訂正事項3?11
訂正事項3?11による訂正は、訂正事項2により請求項3が削除されたことにともない、記載を引用する請求項群から、請求項3を除いたものである。
したがって、訂正事項3?11は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものといえる。

(3)新規事項の有無
ア 訂正事項1
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0043】に、「本発明のCLケア用組成物において、上記(C)成分の含有割合は、該(C)成分の種類、他の配合成分の種類等に応じて適宜設定されるが、一例として、該CLケア用組成物の総量に対して、該(C)成分が総量で0.01?0.5w/v%、好ましくは0.01?0.3w/v%、更に好ましくは0.01?0.1w/v%が例示される。」と記載されている。
そうしてみると、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。

イ 訂正事項2?11
訂正事項2による訂正は、請求項を削除するものであるから、訂正事項2による訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。また、訂正事項3?11による訂正は、訂正事項2による訂正と整合するように、請求項の記載を改めたものであるから、訂正事項3?11による訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。

(4)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1
訂正事項1による訂正は、本件訂正前の請求項1に記載された発明における「(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種」について、その含有割合を「0.01?0.1w/v%」に減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項2?11
訂正事項2による訂正は、請求項を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。また、訂正事項3?11による訂正は、訂正事項2による訂正と整合するように、請求項の記載を改めたものであるから、当該訂正事項が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

(5)小括
以上のとおりであるから、本件訂正による請求項1?12に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3 請求項13に係る訂正
(1)訂正の内容
本件訂正による請求項13に係る訂正の内容は、以下のとおりである。
特許請求の範囲の請求項13に
「 コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(D) エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、ポリヘキサニド及び/又はその塩の殺菌作用の低下を抑制する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化2】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。」と記載されているのを、
「 コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D) エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、ポリヘキサニド及び/又はその塩の殺菌作用の低下を抑制する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化2】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否
本件訂正の請求項13に係る訂正は、本件訂正前の請求項13に記載された発明における「(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種」について、その含有割合を「0.01?0.1w/v%」に減縮するものである。
したがって、本件訂正の請求項13に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

(3)新規事項の有無
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0043】の上記記載事項に基づけば、本件訂正の請求項13に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。

(4)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件訂正の請求項13に係る訂正は、本件訂正前の請求項13に記載された発明における「(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種」について、その含有割合を「0.01?0.1w/v%」に減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)小括
以上のとおりであるから、請求項13に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

4 請求項14に係る訂正
(1)訂正の内容
本件訂正による請求項14に係る訂正の内容は、以下のとおりである。
特許請求の範囲の請求項14に
「 コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(D) エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、白濁を防止する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化3】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。」と記載されているのを、
「 コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D) エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、白濁を防止する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化3】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否
本件訂正の請求項14に係る訂正は、本件訂正前の請求項14に記載された発明における「(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種」について、その含有割合を「0.01?0.1w/v%」に減縮するものである。
したがって、本件訂正の請求項14に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

(3)新規事項の有無
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0043】の上記記載事項に基づけば、本件訂正の請求項14に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。

(4)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件訂正の請求項14に係る訂正は、本件訂正前の請求項14に記載された発明における「(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種」について、その含有割合を「0.01?0.1w/v%」に減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)小括
以上のとおりであるから、請求項14に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

5 請求項15に係る訂正
(1)訂正の内容
本件訂正による請求項15に係る訂正の内容は、以下のとおりである。
特許請求の範囲の請求項15に
「 コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(D) エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの低分子化を防止する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化4】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。」と記載されているのを、
「 コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D) エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの低分子化を防止する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化4】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否
本件訂正の請求項15に係る訂正は、本件訂正前の請求項15に記載された発明における「(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種」について、その含有割合を「0.01?0.1w/v%」に減縮するものである。
したがって、本件訂正の請求項15に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

(3)新規事項の有無
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0043】の上記記載事項に基づけば、本件訂正の請求項15に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。

(4)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件訂正の請求項15に係る訂正は、本件訂正前の請求項15に記載された発明における「(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種」について、その含有割合を「0.01?0.1w/v%」に減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)小括
以上のとおりであるから、請求項15に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

6 請求項16に係る訂正
(1)訂正の内容
本件訂正による請求項16に係る訂正の内容は、以下のとおりである。
特許請求の範囲の請求項16に
「 コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、(D) エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、コンタクトレンズの硬度の上昇を抑制する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化5】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。」と記載されているのを、
「 コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D) エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、コンタクトレンズの硬度の上昇を抑制する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化5】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否
本件訂正の請求項16に係る訂正は、本件訂正前の請求項16に記載された発明における「(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種」について、その含有割合を「0.01?0.1w/v%」に減縮するものである。
したがって、本件訂正の請求項16に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。

(3)新規事項の有無
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0043】の上記記載事項に基づけば、本件訂正の請求項16に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。

(4)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件訂正の請求項16に係る訂正は、本件訂正前の請求項16に記載された発明における「(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種」について、その含有割合を「0.01?0.1w/v%」に減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)小括
以上のとおりであるから、請求項16に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

7 むすび
以上のとおり、本件訂正は、何れも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の〔1-12〕、13、14、15、16について訂正することを認める。


第3 訂正後の本件発明
前記第2のとおり、本件訂正は認められることとなったので、本件特許の請求項1、2、4?16に係る発明(以下、それぞれ請求項に付された番号に従い、「本件特許発明1」等という。)は、本件訂正による訂正後の特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。なお、請求項3に係る発明は、本件訂正によって削除された。
「 【請求項1】
(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D)エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を含有することを特徴とする、コンタクトレンズケア用組成物(但し、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上であるコンタクトレンズケア用組成物、水性媒体中に少なくとも1個以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物、及び、下記式(1)
【化1】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物を除く。)
【請求項2】
(B)成分の含有割合が、0.01?0.5w/v%である、請求項1に記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項4】
(A)成分の総量1重量部あたり、(B)成分の総量が80?10000重量部である、請求項1または2に記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項5】
(A)成分の総量1重量部あたり、(C)成分の総量が80?10000重量部である、請求項1?2または4のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項6】
更に、(F)塩化ナトリウム及び塩化カリウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含有し、(F)成分の総量100重量部に対して(E)成分が総量で100重量部以上の比率を充足する、請求項1?2または4?5のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項7】
(B)成分が、ポロクサマー407である、請求項1?2または4?6のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項8】
(C)成分が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2208)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2906)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2910)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ1828)よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1?2または4?7のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項9】
更に、(G)モノテルペンを含有する、請求項1?2または4?8のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項10】
pHが6.0?8.0である、請求項1?2または4?9のいずれかに記載のコンタクトレンズケア組成物。
【請求項11】
請求項1?2または4?10のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物が、容器に充填されてなる、コンタクトレンズケア用品。
【請求項12】
FDAの基準によるソフトコンタクトレンズ分類グループIVのレンズに用いられる、請求項1?2または4?11のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項13】
コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D) エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、ポリヘキサニド及び/又はその塩の殺菌作用の低下を抑制する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化2】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。
【請求項14】
コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D) エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、白濁を防止する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化3】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。
【請求項15】
コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D) エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの低分子化を防止する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化4】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。
【請求項16】
コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D) エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、コンタクトレンズの硬度の上昇を抑制する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化5】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。」


第4 取消理由の概要
本件特許発明1、2、4?16に対して、平成30年12月17日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

本件訂正請求による訂正前の請求項1?16に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1?5に記載された発明に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

引用文献1:特開2003-171276号公報
引用文献2:特開2009-209140号公報
引用文献3:特表平9-502029号公報
引用文献4:特開2005-47551号公報
引用文献5:特開2003-137775号公報


第5 引用文献の記載及び引用文献に記載された発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
平成30年12月17日付けの取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前の平成15年6月17日に頒布された刊行物であり、特許異議申立人1が提出した甲第1号証であるとともに特許異議申立人2が提出した甲第1号証である引用文献1(特開2003-171276号公報)には、以下の記載事項がある。なお、公報に下線が付されていた場合は下線を削除し、合議体が引用発明の認定等に用いた箇所に新たに下線を付与した。以下の文献でも同様である。

ア 「【0001】
【技術分野】本発明は、眼科用組成物に係り、特に、眼に対する安全性を充分に備えつつ、VDT作業やコンタクトレンズの装用に起因する眼精疲労を、効果的に改善せしめ得る眼精疲労改善眼科用組成物、中でも点眼薬やコンタクトレンズ用洗浄液等のコンタクトレンズ用剤に関するものである。」

イ 「【0008】
【解決手段】そして、本発明にあっては、かくの如き課題の解決のために、水性媒体中に、少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめたことを特徴とする眼科用組成物を、その要旨とするものである。

(中略)

【0012】加えて、かかる本発明の眼科用組成物にあっては、好ましくは、ヒスチジン誘導体に加えて、更に、増粘剤及び/又は界面活性剤が含有せしめられることにより、眼球の角膜上及び結膜嚢内に、ヒスチジン誘導体がより長時間滞留する状態が形成され得るのであり、以て、より優れた眼精疲労改善効果を発揮され得るのである。
【0013】さらに、本発明に従う眼科用組成物においては、上記の如き各成分以外にも、更に必要に応じて、防腐剤、緩衝剤、キレート化剤、等張化剤、清涼化剤、消炎剤、ビタミン類、及びアミノ酸類のうちの少なくとも1種以上が含有せしめられて、使用され得、それによって、それらの成分に応じた更なる機能、例えばコンタクトレンズの保存機能等が有利に付加されることとなる。

(中略)

【0015】加えて、本発明における望ましい別の態様によれば、上述の如き眼科用組成物は、コンタクトレンズの規格を変化せしめるものではないことから、コンタクトレンズ用洗浄液、コンタクトレンズ用すすぎ液、或いはコンタクトレンズ用保存液等のコンタクトレンズ用剤として用いられることも、望ましいのである。」

ウ 「【0016】
【発明の実施の形態】ところで、かかる本発明に従う眼科用組成物は、その必須の成分として、少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含むものであって、それを水性媒体中に含有せしめることにより、所望の有効な効果が発揮され得るように構成したところに、大きな特徴を有している。

(中略)

【0023】ここにおいて、そのような増粘剤及び界面活性剤は、生体への安全性が高く、なお且つ眼科的に充分に許容され、しかもコンタクトレンズの形状又は物性に対する影響のないものであることが好ましく、また、そういった要件を満たす量的範囲内で用いられることが望ましい。
【0024】具体的には、増粘剤としては、例えば、ムコ多糖類、ヘテロ多糖類等の種々のガム類;ポリビニルアルコール、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド等の合成有機高分子化合物;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;スターチ誘導体等が、好適に用いられるのである。
【0025】また、界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー及びその誘導体や、チロキサポールの如きポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物等のポリエチレングリコール誘導体、ポリソルベート80の如きソルビタンモノオレエート、セスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油等が、有利に用いられることとなる。また、それらの中でも、特に、非イオン性界面活性剤として市販されている、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーたるプルロニック、プルロニックR、テトロニック、テトロニックR(以上、独国:BASF社製)、具体的には、ポロクサマー124、ポロクサマー188、ポロクサマー237、ポロクサマー338、ポロクサマー407、テトロニック904、テトロニック908、テトロニック1103、テトロニック1107や、ソルビタンモノオレエートたるポリソルベート80等を用いることが、望ましいのである。

(中略)

【0029】また、本発明に従う眼科用組成物にあっては、そのpH値や浸透圧が大きくなり過ぎても、逆に小さくなり過ぎても、眼に対して刺激を与えたり、眼障害を招来する恐れがあるところから、通常、そのような眼科用組成物のpH値は、適当なpH調整剤の添加によって、5.3?8.5程度に調整されていることが望ましく、また、浸透圧は、等張化剤を添加せしめることによって、200?400mOsm/kg程度に調整されていることが、好ましいのである。なお、そのようなpHの調整のために用いられるpH調整剤としては、水酸化ナトリウムや塩酸等が利用される一方、浸透圧の調整に用いられる等張化剤として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、糖アルコール、及び多価アルコール若しくはそのエーテル又はそのエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の化合物が、一般に、用いられることとなる。
【0030】さらに、このような眼科用組成物のpHを前記した範囲に有効に且つ眼に対して安全な範囲に保つためには、一般に、少なくとも1種以上の緩衝剤が添加せしめられることとなるが、その緩衝剤としては、従来から公知の各種のものの中から、適宜に選択されて、用いられることとなる。具体的には、例えば、リン酸、ホウ酸、カルボン酸、オキシカルボン酸等の酸や、その塩(例えば、ナトリウム塩等)、更にはGood-Bufferやトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-Tris)、炭酸水素ナトリウム等を、眼に対して安全であり、しかもコンタクトレンズに対する影響を少なくすることが出来るという理由から、挙げることが出来る。
【0031】更にまた、コンタクトレンズ、特にソフトコンタクトレンズには、一般に、涙液からの汚れとして、カルシウム等が沈着乃至は吸着する問題を生ずる可能性があることから、そのような不具合の発生を防止するべく、眼科用組成物には、キレート化剤も、また、有利に添加せしめられることとなるが、そのようなキレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、例えばエチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム(EDTA・2Na)、エチレンジアミン四酢酸・3ナトリウム(EDTA・3Na)等を用いることが出来る。

(中略)

【0039】なお、そのようなコンタクトレンズ用剤は、コンタクトレンズの洗浄、すすぎ、保存等といった単一の用途を目的とするもののみならず、例えば、洗浄したコンタクトレンズのすすぎ及び保存を目的とした、多目的なコンタクトレンズ用剤(マルチパーパスソリューション)としても用いることが出来ることは、言うまでもないところである。
【0040】また、本発明に従う眼科用組成物の対象となるコンタクトレンズとしては、その種類が何等限定されるものではなく、例えば、低含水、高含水等の全てに分類されるソフトコンタクトレンズ、及びハードコンタクトレンズがその対象となり得るものであって、コンタクトレンズの材質等が、本発明の適用に際して何等問われることはない。」

エ 「【0041】
【実施例】以下に、本発明の幾つかの実施例を実験例において示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実験例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実験例に示される実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0042】-実験例1-
先ず、滅菌精製水に対して、所定の添加成分を下記表1乃至表8に示される各種割合においてそれぞれ添加せしめることにより、pHが6.8とされた各種液剤試料(試料No.1?54)を、それぞれ調製した。なお、かかる液剤試料の調製に際しては、本発明における必須の眼精疲労回復成分であるヒスチジン誘導体として、単離したL-カルノシン、或いは、アンセリン及びカルノシンを含有する焼津水産化学工業株式会社製の商品名「マリンアクティブ」(アンセリン含有率:6.3w/w%、カルノシン含有率:0.3w/w%)を、用いた。また、界面活性剤としては、ポロクサマー407(Px407;BASF社製、分子量:8000?12000)、テトロニック1107(BASF社製、平均分子量:15000)、又はポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(ポリソルベート、日光ケミカルズ株式会社製、TO-10M)を用いると共に、増粘剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒアルロン酸ナトリウム、又はコンドロイチン硫酸ナトリウムを、それぞれ用いた。その他にも、キレート化剤であるエチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム(EDTA・2Na)、緩衝剤としてのホウ酸及びホウ砂、殺菌剤(防腐剤)たるソルビン酸カリウム及びポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、等張化剤としての塩化ナトリウム、塩化カリウム、及びプロピレングリコール、更には清涼化剤であるl-メントール及びdl-カンフルを、それぞれ、適宜用いた。そして、得られた各液剤試料について、後述する眼精疲労回復効果試験及びレンズ適合性試験を行なった。

(中略)

【0045】-レンズ適合性試験-
本発明に係る眼科用組成物のコンタクトレンズに対する適合性を調べるために、以下のような試験を行なった。即ち、先ず、市販のソフトコンタクトレンズ(株式会社メニコン製メニコンソフト72、レンズ直径:13.5mm)の複数枚を準備して、それらを、25℃の温度に保持された生理食塩水(ISO 10344規定)中に浸漬せしめた後、その浸漬状態下において、それぞれのコンタクトレンズのレンズ直径を、投影機(株式会社ニコン製万能投影機)を用いて測定し、得られた測定値を、レンズ直径の初期値としてそれぞれ記録した。
【0046】次いで、かくの如くしてレンズ直径の初期値を求めたコンタクトレンズを、上記において準備した液剤試料中に、25℃の温度条件下で、3日間浸漬せしめた後、かかる浸漬状態を維持せしめたまま、そのレンズ直径を前記したものと同様な投影機にて測定するという操作を、各液剤試料につき、それぞれ3枚ずつのコンタクトレンズに対して実施した。
【0047】そして、このようにして得られたレンズ直径の測定値(浸漬後値)と先に得られたレンズ直径の初期値との差(d)を、式:d=浸漬後値-初期値、に従って、個々のコンタクトレンズについて計算し、更にその計算値の平均値を、各液剤試料毎に算出した。そこにおいて、かかるレンズ直径変化量の値が小さいほど、コンタクトレンズに対する適合性に優れることは言うまでもなく、また、特に、レンズ直径変化量の値が±0.2mm以内であることが望ましいとされているところから、レンズ直径変化量の値が±0.2mm以内であった液剤試料を「合格」とする一方、±0.2mmより大きいものを「不合格」と評価して、下記表1乃至表8に、それらの評価を併せて示した。

(中略)

【0055】
【表8】

【0056】かかる表1乃至表8の結果より明らかなように、ヒスチジン誘導体たるカルノシン及び/又はアンセリンが含有せしめられた液剤試料(試料No.1?36)にあっては、ヒスチジン誘導体を含有しない液剤試料(試料No.37?54)に比して、優れた眼精疲労回復効果を発揮し得ることが認められたのであり、それらの中でも、特に、ヒスチジン誘導体に増粘剤及び/又は界面活性剤を添加せしめた液剤試料(試料No.2?36)においては、ヒスチジン誘導体を単独で用いたもの(試料No.1)よりも、眼精疲労回復効果が向上せしめられ得ることが確認された。
【0057】また、ヒスチジン誘導体を含有せしめた液剤試料(試料No.1?36)にあっても、それを含有しない液剤試料(試料No.37?54)と同様に、コンタクトレンズの形状(直径)に影響を与えないものであることが認められるのであり、これより、本発明の眼科用組成物は、コンタクトレンズに対する適合性で有利なものであると解することが出来る。従って、かかる眼科用組成物は、コンタクトレンズの装用の有無を問わず、使用することが出来るのである。」

(2)引用文献1に記載された発明
前記(1)の記載事項エに基づけば、引用文献1には、実験例1の試料No.51として、以下の発明が記載されていると認められる。
「滅菌精製水に対して、ポロクサマー407(Px407)を0.5w/w%、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.15w/w%、エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム(EDTA・2Na)を0.05w/w%、緩衝剤としてのホウ酸を0.5w/w%、ホウ砂を0.05w/w%、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を0.0001w/w%、1-メントールを0.005w/w%、NaClを0.275w/w%、KClを0.055w/w%、それぞれ添加せしめることにより、pHが6.8とされ、コンタクトレンズ適合性試験に合格した液材試料。」(以下、「引用発明1」という。)

2 引用文献2
(1)引用文献2の記載事項
平成30年12月17日付けの取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前の平成21年9月17日に頒布された刊行物であり、特許異議申立人1が提出した甲第2号証である引用文献2(特開2009-209140号公報)には、以下の記載事項がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、亜塩素酸類化合物、並びにメントール、メントン、カンフルおよびボルネオールからなる群から選択される少なくとも1種の成分を含有する水性組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、コンタクトレンズ用殺菌液、コンタクトレンズ用消毒液、コンタクトレンズ用洗浄液、コンタクトレンズ用すすぎ液、またはコンタクトレンズ用保存液である、前記水性組成物に関する。本発明は更に、コンタクトレンズ用多目的溶液(マルチパーパスソリューション)である、前記水性組成物に関する。本発明は更に、前記水性組成物を含有する点眼剤、特にドライアイ用の点眼剤に関する。」

イ 「【0042】
本発明で用いる用語「緩衝剤」としては、薬理学的に許容し得る緩衝剤が挙げられ、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸またはその塩(アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウムなど)、イプシロン-アミノカプロン酸、HEPES、MOPSなどが挙げられ、好ましくはホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤である。ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、炭酸緩衝剤としては、それぞれホウ酸またはその塩(テトラホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ砂、メタホウ酸カリウムなど)、リン酸またはその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、もしくはリン酸二水素カリウム、またはそれらの水和物など)、クエン酸またはその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムなど)、酢酸またはその塩(酢酸カリウム、酢酸ナトリウム)、炭酸またはその塩(炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム)またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。」

ウ 「【0044】
本発明で使用する用語「コンタクトレンズ」とは、特記しない限り、ハード、酸素透過性ハード、ソフト、シリコンハイドロゲルレンズ等のあらゆるタイプのコンタクトレンズを包含する意味で用いる。ソフトコンタクトレンズ、シリコンハイドロゲルレンズが特に好ましい。また、本発明で使用する用語「ソフトコンタクトレンズ分類」とは、平成11年3月31日付医薬審第645号厚生労働省(当時の厚生省)医薬安全局審査管理課長通知「ソフトコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズ用消毒剤の製造(輸入)承認申請に際し添付すべき資料の取り扱い等について」において規定された「ソフトコンタクトレンズの分類方法について」に基づくソフトコンタクトレンズの分類であり、該分類において、グループIVに属するソフトコンタクトレンズは、含水率が50%以上であり、原材料ポリマーの構成モノマーのうち陰イオンを有するモノマーのモル%が1%以上であることを共通の性質として有する。尚、本分類はFDA(米国食品医薬品局)が行なっているソフトコンタクトレンズの分類方法に従っている。」

エ 「【0045】
製造方法
本発明の水性組成物の製造方法は、当該技術分野における常法により、無菌環境下、予めメントール、メントン、カンフルおよびボルネオールからなる群から選択される少なくとも1種の成分、および必要に応じて等張化剤等の他の成分を水性媒質中で配合して調製した溶液に、亜塩素酸類化合物を配合する工程を含む。必要に応じて、pH調整剤を加えることによって、水溶液のpHを生体に許容される範囲内のpHに調製する工程を含む。次いで、得られた溶液を無菌環境下、ろ過滅菌処理し、洗浄滅菌済みの容器に無菌充填する工程により、本発明の水性組成物を製造することができる。但し、この方法に限定されない。
【0046】
本発明の水性組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記の成分に加えて、各種用途に応じて、種々の活性成分または薬効成分(薬理活性成分および生理活性成分を含む)や添加剤(界面活性剤、増粘剤、キレート剤、安定化剤、防腐剤・保存剤、香料等)を組み合わせて含有してもよい。このような成分は、眼刺激等の問題がない濃度範囲内で適宜配合することができ、成分の種類は特に制限されないが具体的には以下のものを例示できる。
【0047】
前記医薬活性成分としては、例えば、充血除去成分、筋調整機能剤、抗炎症・収斂剤、抗ヒスタミン剤、ビタミン類、サルファ剤、抗アレルギー剤、細胞賦活剤、殺菌剤等を挙げることができ、具体的には、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、d l -塩酸メチルエフェドリン等の充血除去成分、メチル硫酸ネオスチグミン等の筋調整機能剤、イプシロン- アミノカプロン酸、アラントイン、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、塩化リゾチーム等の消炎・収斂成分、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、酢酸トコフェロール、リボフラビン等のビタミン類、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウム等のサルファ剤、クロモグリク酸ナトリウム、フマル酸ケトチフェン、アンレキサノクス、ペミロラストカリウム、トラニラスト等の抗アレルギー剤、L - アスパラギン酸カリウム、L - アスパラギン酸マグネシウム、L - アスパラギン酸マグネシウム・カリウム、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等の細胞賦活剤、ポリヘキサメチレンビグアニドや塩化ポリドロニウムなどの殺菌剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
界面活性剤としては、ポロクサマー4 0 7、ポロクサマー2 3 5、ポロクサマー1 8 8などのポリオキシエチレン( 以下、P O E と略す) - ポリオキシプロピレン( 以下、P O P と略す) ブロックコポリマー) 、ポロキサミンなどのエチレンジアミンのP O E -P O P ブロックコポリマー付加物、モノラウリル酸P O E ( 2 0 )ソルビタン( ポリソルベート2 0 )、モノオレイン酸P O E ( 2 0 )ソルビタン( ポリソルベート80) 、ポリソルベート6 0などのP O E ソルビタン脂肪酸エステル類、P O E ( 6 0 )硬化ヒマシ油などのP O E 硬化ヒマシ油類、P O E ( 9 )ラウリルエーテルなどのP O E アルキルエーテル類、P O E ( 2 0 )P O P ( 4 )セチルエーテルなどのP O E ・P O P アルキルエーテル類、P O E ( 1 0 )ノニルフェニルエーテルなどのP O E アルキルフェニルエーテル類、P O E( 1 0 )ノニルフェニルエーテル等のP O E アルキルフェニルエーテル類、ステアリン酸ポリオキシルなどの非イオン性界面活性剤; アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの酢酸ベタイン型、イミダゾリン型などの両性界面活性剤; アルキルエーテルカルボン酸塩、テトラデセンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、N - ココイルメチルタウリンナトリウムなどのN - アシルタウリン塩、P O E ( 1 0 )ラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのP O E アルキルエーテルリン酸及びその塩、ラウロイルメチルアラニンナトリウムなどのN - アシルアミノ酸塩、P O E ( 3 )ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのP O E アルキルエーテル硫酸塩、α - オレフィンスルホン酸塩などの陰イオン性界面活性剤; アルキルアミン塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどのアルキル4 級アンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルピリジニウムなどのアルキルピリジニウム塩などの陽イオン性界面活性剤などが挙げられ、好ましくは非イオン性界面活性剤である。さらに、P O E-P O Pブロックコポリマー、P O E ソルビタン脂肪酸エステル類、P O E 硬化ヒマシ油類が好ましく、中でもポロクサマー4 0 7、ポリソルベート8 0、P O E ( 6 0 )硬化ヒマシ油が好ましく、特に好ましくはポリソルベート8 0である。
【0049】
増粘剤としては、アラビアゴム末、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ソルビトール、デキストラン7 0 、トラガント末、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、マクロゴール4 0 0 0 、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポロクサマー407)、ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0050】
キレート剤としては、エデト酸、エデト酸塩類( エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム)、ニトリロ三酢酸及びその塩、トリヒドロキシメチルアミノメタン、ヘキサメタリン酸ナトリウム、クエン酸、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0051】
安定化剤としては、前記エデト酸、前記エデト酸塩類、亜硫酸水素ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。」

オ 「【実施例】
【0058】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明の範囲を限定するものではない。なお、特に断らない限り、以下の表中、各成分の量は配合量であり、また特に単位の記載のないものについては、すべてw/v%を表す。また、全ての試験例において用いる亜塩素酸ナトリウムは、各表で示される濃度となるように、「シルブライト25FD(日本カーリット(株)製)」を用いて配合した。
【0059】
試験例1 殺菌力試験1
表1に示す組成の水性組成物(実施例1及び比較例1、2)を配合調製し、これらを用いて殺菌力試験を実施した。
具体的には、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans: ATCC 10231)及びスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus: ATCC 6538)を、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト(SCD)寒天平板培地の表面に接種して、33℃で24時間培養を行った。培養菌体を白金耳で無菌的に採取し、適量の滅菌生理食塩液に浮遊させて、約1×10^(8)コロニー形成単位(CFU)/mLの生菌を含む細菌浮遊液を調製した。この細菌浮遊液に対して、各水性組成物を適量添加して、表1に示す初期菌濃度にした後に23℃で静置した。各水性組成物について、保存8時間後の1mL当たりの生菌数を測定した。
【0060】
結果を表1に併せて示す。この結果から、比較例1及び2の水性組成物のいずれにおいても殺菌力が不十分であったのに対して、実施例1の水性組成物は、カンジダ・アルビカンス及びスタフィロコッカス・アウレウスに対して優れた殺菌力を示すことが明らかとなった。この実施例1の水性組成物の殺菌力は、各比較例1-2の試験結果から表される各配合成分の殺菌力をはるかに凌いだ、優れた効果であることは明らかである。また、本試験例で使用した菌種はスタンドアロン試験で通常使用される菌種であることから、本発明の水性組成物は涙液等で汚染されたコンタクトレンズをはじめとしたコンタクトレンズ用殺菌液として優れた効果を有することは明らかである。
【表1】


(中略)

【0064】
製剤例
下記の表に示す処方に従い、常法により、本発明の製剤を調製した。なお表中の製剤実施例は例示であって、これらに限定されない。なお、実施例3から8で表される水性組成物はコンタクトレンズ用多目的溶液(マルチパーパスソリューション)、コンタクレンズ用洗浄液、コンタクトレンズ用すすぎ液、コンタクトレンズ用消毒液またはコンタクトレンズ用保存液として使用できる。また、実施例9から16で表される水性組成物は、点眼剤、洗眼剤またはコンタクトレンズ用点眼剤として使用できる。
【表3】

【表4】



(2)引用文献2に記載された発明
前記(1)の記載事項オに基づけば、引用文献2には、製剤例の実施例5として、以下の発明が記載されていると認められる。
「以下の処方に従い、常法により、調製した、水性組成物であって、コンタクトレンズ用多目的溶液(マルチパーパスソリューション)、コンタクレンズ用洗浄液、コンタクトレンズ用すすぎ液、コンタクトレンズ用消毒液またはコンタクトレンズ用保存液として使用できる製剤。
亜塩素酸ナトリウム 0.0001 w/v%
1-メントール 0.001 w/v%
ホウ酸 0.5 w/v%
ホウ砂 0.05 w/v%
エデト酸ナトリウム 0.005 w/v%
アミノエチルスルホン酸 1 w/v%
塩化ナトリウム 0.15 w/v%
塩化カリウム 0.02 w/v%
ブドウ糖 0.1 w/v%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.2 w/v%
ポロクサマー407 0.1 w/v%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.05 w/v%
ポリヘキサメチレンビグアニド 0.0001 w/v%
塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 残量
全量 100 mL
pH 6.7」(以下、「引用発明2」という。)

3 引用文献3
平成30年12月17日付けの取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前の平成9年2月25日に頒布された刊行物であり、特許異議申立人2が提出した甲第2号証である引用文献3(特表平9-502029号公報)には、以下の記載事項がある。

(1)「【発明の詳細な説明】
コンタクトレンズを清浄および湿潤するための組成物
発明の背景
本発明は、コンタクトレンズを洗浄および湿潤するための組成物に関する。この組成物は、少なくとも約18の親水性親油性バランス(HLB)値を有するポリエチレンオキシド含有物質、コンタクトレンズ沈積物(deposits)に対して清浄活性を有する界面活性剤;および湿潤剤を含む。」(第5頁第1?7行)

(2)「 本発明の組成物は、さらに金属イオン封鎖剤(またはキレート化剤)をさらに含み得る。この試薬は、約2.0重量%まで存在し得る。好ましい金属イオン封鎖剤の例には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩が含まれる。二ナトリウム塩(エデト酸二ナトリウム(disodium edetate))が特に好ましい。」(第12頁第8?11行)

(3)「 実施例1?6
表1A?1Dに示される一連の溶液を調製した。表の量は、別に示さなければ重量部である。実施例1?6は、本発明の多目的溶液を示す。3つのコントロール組成物を調製した。Ctrl-1Aは、眼を刺激する可能性を有する界面活性剤を含んでいない;Ctrl-1Bおよび1Cの各々は、同様にあらゆるこのような洗浄剤を有していないが、少なくとも約18のHLBを有する非アミン系PEO含有物質(BASFからPluronic F108として供給される、ポロキサマー338(poloxamer 338))を含む。比較組成物は、洗浄活性を有する界面活性剤を含んでいた:トリデセス硫酸ナトリウム(sodium trideceth sulfate)(Sipex EST-30、Rhone-Roulenc)またはココアムホプロピオネート(Miranol C2M、Rhone-Poulenc);比較組成物は、高HLB PEO含有物質を含んでいなかった。
組成物が刺激する可能性を、以下の手順で評価した。数滴の各組成物を、被験者の上方の(superior)眼のへりに投与する。被験者に、刺激(ヒリヒリする(stinging)、かゆい(itching)、焼けるようである(burning))の徴候の発生を示すように頼んだ。これらの結果は、「徴候」の下で報告され、ここで、「P」は陽性(被験者が刺激を報告した)を示し、そして「N」は陰性(被験者が刺激を報告しなかった)を示す。さらに、角膜染色を査定するために、組成物の投与前および投与後の両方で被験者の角膜を評価した。これらの結果は、「染色」の下で報告され、ここで、「P」は陽性(角膜の染色が観測された)を示し、そして「N」は陰性(角膜の染色が観測されなかった)を示す。
このデータは、高HLB PEO含有物質が、組成物の刺激の可能性を減少するのに有用であったことを示す。

」(第13頁第11行?第14頁第4行、表1A)

(4)「 コンタクトレンズを洗浄および湿潤するのに適切な、好ましい多目的組成物のさらなる実施例を表16に示す。

」(第36頁第1?2行及び第37頁表16)

4 引用文献4
平成30年12月17日付けの取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前の平成17年2月24日に頒布された刊行物であり、特許異議申立人2が提出した甲第3号証である引用文献4(特開2005-47551号公報)には、以下の記載事項がある。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤としてのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン置換エチレンジアミンと殺菌剤とを組み合わせたコンタクトレンズ用洗浄消毒保存液の保存容器であって、特に該界面活性剤と組み合わせた溶液の消毒効果を維持するための保存容器、および前記容器を用いた殺菌剤の消毒効果の安定化保存方法に関する。」

(2)「【0009】
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン置換エチレンジアミン界面活性剤および消毒有効量の殺菌剤を組み合わせたコンタクトレンズ用洗浄消毒保存液は、消毒効果、安全性の面では、前記多くの従来技術に記載されているように優れた特徴を有する。しかし、当該溶液を長期間保存すると後述するように、消毒効果が低下することが判明した。そこで、本発明者らは前記界面活性剤と殺菌剤の組み合わせの他に、他の添加成分(例えば、緩衝剤、等張化剤、金属封鎖剤など)との関連性を種々検討したのち、当該安定性に影響する原因がそれを保存する容器との関係にあることを突き止め、本発明を完成するに至ったのである。すなわち、現在市場において流通する同種の商品にあって一般に使用されている容器は、すべてポリエチレン製であって、このような容器に前記界面活性剤と殺菌剤を組み合わせて洗浄消毒保存液を保存流通させると、室温においてはともかく、40℃以上の過酷な条件の下では短期間に消毒効果が低下してしまうが、容器をポリプロピレン製のものを用いることによって、長期保存による消毒効果の低下を効果的に防ぐことができるのである。」

(3)「【0012】
さらに、コンタクトレンズ用液剤には、増粘剤、緩衝剤、等張化剤、金属封鎖剤などを添加することができる。増粘剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが好ましい。これらの増粘剤を、一種以上選択し組み合わせることも可能である。増粘効果は、一般に分子量によって異なるため使用濃度で範囲を設定することは困難で、適正な粘度に成るように調整することが必要である。具体的には、洗浄時のレンズの滑り易さと、取り扱い時の容器内からの取り出しやすさを考慮して、通常1?30mm^(2)/s、好ましくは1?10mm^(2)/sの範囲である。
【0013】
緩衝剤としては、通常用いられる緩衝剤、例えば、ホウ酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤などを用いることができ、溶液の使用pH範囲(6?8)における緩衝能からリン酸塩緩衝剤が、溶液の消毒効果を高める観点からホウ酸塩緩衝剤が特に好ましい。これらの緩衝剤は溶液の浸透圧にも影響するので、等張化剤の使用濃度を考慮した濃度とすることが必要であるが、一般に0.05?5(W/V)%、好ましくは0.1?2(W/V)%の濃度になるよう設定される。
【0014】
等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウムなどが例示でき、これらの無機塩類の他に、各種アミノ酸類や、グリセリン、プロピレングリコールなどの非イオン性の化合物を使用しても良い。これらの使用濃度は前記したように緩衝剤との兼ね合いにより決定され、一般に0.01?5(W/V)%、好ましくは0.1?2(W/V)%の範囲で、溶液調製後の浸透圧が200?400mOsmを与えるように設定され、コンタクトレンズの処理後に眼に装用したときに、刺激のないようにする。
【0015】
金属封鎖剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩、エデト酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸塩、クエン酸塩などを例示できる。これらは、コンタクトレンズに無機物の汚れが固着するのを防止するために添加され、一般に0.2(W/V)%以下で使用される。
【0016】
上記のように調製されたコンタクトレンズ洗浄消毒保存液は、ポリプロピレン容器に充填して保存することにより、長期保存後でも消毒効果が安定したものが得られる。プラスチックとしては、他にポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂など多種類の素材がある。しかし、成形加工のし易さ、価格などの面からポリエチレン樹脂が一般的に使用されているのは前述した通りである。ところが、この最も汎用されているポリエチレン樹脂製の容器に前記ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン置換エチレンジアミン界面活性剤および消毒有効量の殺菌剤を組み合わせたコンタクトレンズ用洗浄消毒保存液を保存すると、室温においては消毒効果の低下をきたさないが、高温条件下では急速に消毒効果が低下してしまうのである。この機構は明確ではなく、当初は、このコンタクトレンズ用洗浄消毒保存液固有の問題であって、溶液に含まれている組成物の相互作用に起因すると思われたが、後述の比較例において具体的に例示するように、界面活性剤としてポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体(「プルロニックF87」:BASF社製)を使用した場合には、このような現象を示さないこと等からすると、界面活性剤と容器との組み合わせに相容れない問題があるものと考えられる。」

(4)「【0020】
一方、コンタクトレンズ用洗浄消毒保存液を、下記表1に示される成分組成において4種の処方を調製するとともに、そのpHを調整した。これらの各溶液を、ポリエチレン製又はポリプロピレン製の容器に充填し、25℃または40℃で1ヶ月保存した。こうして得られた各種コンタクトレンズ用液剤の10mlを、それぞれ、別のポリプロピレン製滅菌済試験管に取り、そこへ各種の供試菌液の0.05mlを加えた。その後、それら各種の供試菌液配合液を、23℃の恒温槽中にて保管し、そして該配合液の調製から4時間後に各配合液の一定量を取り出し、それぞれの配合液について、滅菌済DPBST(-)を用いて希釈し、混釈平板法によって生菌数を調べた。この混釈平板法における培養には、黄色ブドウ球菌、セラチア・マルセセンスについてはSCDLP寒天培地(栄研化学)を用いて33℃×3日間の条件で培養し、カンジダ・アルビカンスについてはGPLP寒天培地(和光純薬工業)を用いて、33℃×3日間の条件で培養し、またフザリウム・ソラニについてはGPLP寒天培地を用いて23℃×5日間の条件で培養した。そして、かかる測定にて得られた生菌数から、前記供試菌液の添加された液剤の4時間後の生菌数を算出した後、下記の計算式に従って、対数に換算した菌減少量を求めた。

菌減少量〔対数換算〕=LOG(接種直後の供試菌液配合液1ml中の生菌数)-LOG(処理後の供試菌液配合液1ml中の生菌数)

上記の方法により、接種直後の生菌数と、混合から4時間後の生菌数を求め、ポリプロピレン容器に保存した溶液の消毒効果を表2に、ポリエチレン容器に保存した溶液の消毒効果を表3に示した。
【0021】
【表1】




5 引用文献5
平成30年12月17日付けの取消理由に引用され、本件特許の優先権主張の日前の平成15年5月14日に頒布された刊行物であり、特許異議申立人2が提出した甲第4号証である引用文献5(特開2003-137775号公報)には、以下の記載事項がある。

(1)「【0001】
【技術分野】本発明は、眼科用組成物に係り、特に、優れた洗浄効果を発揮すると共に、眼に対する安全性をも充分に備えた眼科用組成物、中でも点眼薬や、コンタクトレンズ用洗浄液等のコンタクトレンズ用剤に関するものである。」

(2)「【0033】また、本発明において、眼科用組成物の粘度を適度に調整するためには、増粘剤を添加することが出来、例えば、ヘテロ多糖類等の種々のガム類;ポリビニルアルコール、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド等の合成有機高分子化合物;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;スターチ誘導体等の増粘剤が用いられることとなる。」

(3)「【0036】加えて、コンタクトレンズ、特にソフトコンタクトレンズには、一般に、涙液からの汚れとして、カルシウム等が沈着乃至は吸着する可能性があることから、そのような不具合の発生を防止するべく、眼科用組成物には、キレート化剤も、また、有利に添加せしめられることとなるが、そのようなキレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、例えばエチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム(EDTA・2Na)、エチレンジアミン四酢酸・3ナトリウム(EDTA・3Na)等を用いることが出来る。」

(4)「【0044】
【実施例】以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0045】先ず、精製水に対して、所定の添加成分を下記表1乃至表3に示される各種割合においてそれぞれ添加せしめることにより、pHが6.8とされた各種液剤試料(試料No.1?36)を、それぞれ調製した。なお、かかる液剤試料の調製に際しては、本発明における必須の添加成分であるポリオキシアルキレンブロックコポリマー又はその誘導体(A成分)として、ポロクサマー407(Px407;BASF社製、分子量:8000?12000)、テトロニック1107(BASF社製、平均分子量:約15000)、及びポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル(PBC-34;日光ケミカルズ株式会社製)を用いると共に、他の一つの必須添加成分であるカプロン酸又はその誘導体(B成分)としては、ε-アミノカプロン酸(第一化学薬品株式会社製)を用いた。また、前記A成分以外の界面活性剤として、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート(tween80;日光ケミカルズ株式会社製、TO-10M)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(NP-18TX;日光ケミカルズ株式会社製)、及びチロキサポール(4- (1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールとホルムアルデヒドとオキシランとのポリマー;米国Aldrich社製)を用い、さらにその他の添加成分として、増粘剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC2910;信越化学工業株式会社製)、キレート化剤たるエチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム(EDTA・2Na;帝国化学産業製)、緩衝剤としてのホウ酸及びホウ酸ナトリウム、等張化剤である塩化ナトリウム及び塩化カリウムを、それぞれ用いた。そして、得られた各液剤試料について、後述する脂質洗浄効果試験、レンズ適合性試験、及びタンパク質付着抑制効果試験を行なった。」


第6 進歩性(特許法第29条第2項)
1 引用文献1
(1)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と引用発明1とを対比する。

(ア)引用発明1の「ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を0.0001w/w%」は、本件特許発明1の「(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%」に相当する。

(イ)引用発明1の「ポロクサマー407(Px407)」は、本件特許発明1の「(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール」に相当する。

(ウ)引用発明1の「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」は、本件特許発明1の「(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種」に相当する。

(エ)引用発明1の「エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム(EDTA・2Na)を0.05w/w」は、本件特許発明1の「(D)エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%」に相当する。

(オ)引用発明1の「緩衝剤としてのホウ酸」及び「ホウ砂」は、本件特許発明1の「(E)ホウ酸緩衝剤」に相当する。

(カ)引用発明1の「液材試料」は、「コンタクトレンズ適合性試験に合格した」ものである。したがって、引用発明1の「液材試料」は、本件特許発明1の「コンタクトレンズケア用組成物」に相当する。

(キ)引用発明1の「液材試料」に含まれる「ポロクサマー407(Px407)」は、「前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である」との要件を満たしていない。また、「液材試料」は、ヒスチジン誘導体を含有しておらず、本件特許の請求項1における式(1)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有していない。
したがって、引用発明1の「液材試料」は、本件特許発明1の「但し、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上であるコンタクトレンズケア用組成物、水性媒体中に少なくとも1個以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物、及び、下記式(1)
【化1】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物を除く。」とする要件を満たしている。

(ク)以上より、本件特許発明1と引用発明1とは、
「(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D)エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を含有することを特徴とする、コンタクトレンズケア用組成物(但し、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上であるコンタクトレンズケア用組成物、水性媒体中に少なくとも1個以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物、及び、下記式(1)
【化1】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物を除く。)」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-1](C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の含有割合が、本件特許発明1では0.01?0.1w/v%であるのに対し、引用発明1では0.15w/w%である点。

イ 判断
上記[相違点1-1]について検討する。

(ア)引用文献1の記載事項ウの段落【0023】には、「そのような増粘剤及び界面活性剤は、生体への安全性が高く、なお且つ眼科的に充分に許容され、しかもコンタクトレンズの形状又は物性に対する影響のないものであることが好ましく、また、そういった要件を満たす量的範囲内で用いられることが望ましい。」と記載されており、段落【0024】には、「具体的には、増粘剤としては、例えば、・・・等の合成有機高分子化合物;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;スターチ誘導体等が、好適に用いられるのである。」と記載されている。当該記載に基づけば、引用発明1の「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」は、液材試料の粘度について、眼科的に充分に許容され、しかもコンタクトレンズの形状又は物性に対する影響のないものとなるように添加されているものといえる。
そして、引用文献2の記載事項エの段落【0049】には、コンタクトレンズ用の水性組成物に用いられる増粘剤として、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」が挙げられており、記載事項オには、実施例6や実施例7として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(本件特許発明1における(C)成分)の含有割合を「0.05w/v%」や「0.01w/v%」とした事例が記載されている。このように、コンタクトレンズの殺菌、消毒、洗浄、すすぎ、保存に用いる水性組成物において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有割合を0.05?0.01w/v%程度とすることは、通常行われていることであり、そのような含有割合で添加した場合でも、眼科的に許容され、コンタクトレンズの形状及び物性に対する影響がないものといえる。そうすると、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有割合をどの程度とするかは、コンタクトレンズ用の水性組成物の粘度が所望の範囲となるよう、共存成分に応じて適宜調整されるべきものである。
したがって、引用発明1のヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有割合を、0.05?0.01w/v%とすることは、当業者が適宜なし得ることである。また、そのような数値範囲に限定したことにより、格別な効果の差異が生じるとはいえない。

(イ)特許権者は、平成31年2月18日に提出した意見書において、引用文献1には、本件発明の課題が記載されておらず、引用文献2の課題は、本件発明の課題及び引用文献1の課題のいずれとも全く異なるとし、また、試料No.51の組成物は、引用発明1の効果を奏するように各成分を適量ずつ組み合わせたものとして完成されていると理解されるので、引用発明1とは全く別の効果を奏することを期待して調製された、引用文献2の実施例6及び7のヒドロキシプロピルメチルセルロースの数値を引用発明1に採用する動機付けは何らないと主張している。しかしながら、引用発明1の「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」は、上記のとおり、増粘剤として添加されるものであり、コンタクトレンズの形状又は物性に対する影響のないものという要件を満たす量的範囲内で用いられるとされている。そうすると、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」の含有割合は、0.15w/w%でなければならないというものではなく、所望の粘度となるよう適宜調製されるべきものといえる。そして、引用文献2には、同じ「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」を、同じ増粘剤としての効果を期待して添加された実施例として、「0.05w/v%」や「0.01w/v%」とした事例が知られているのであるから、そのような範囲まで調製を試みることは、当業者ならば適宜なし得ることである。
また、特許権者は、本明細書の段落0042に記載された効果が、引用文献1及び2には何ら記載されていないから、相違点1-1を備えることによって奏される効果は、引用文献1及び2からは予測できるはずもない顕著なものであると主張している。しかしながら、引用発明1もヒドロキシプロピルメチルセルロースを有効量含有するものであるから、本件特許発明1と同様の効果を奏するものと考えられる。本件特許の明細書に記載された試験例は、何れもヒドロキシプロピルメチルセルロース2906を、0.05w/v%含むものである。また、本件特許の明細書には、段落0042に記載された効果と同様の効果を、(A)成分(段落0032)、(B)成分(段落0036)、(D)成分(段落0049)を含有することでも奏すると記載されている。そうすると、本件特許の明細書は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有することによって、段落0042に記載された効果を奏することを何ら示していない。したがって、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有割合が0.1w/v%以下である場合と0.15w/w%である場合とで、予測できない顕著な効果を生じると考えることはできない。
さらに、特許権者は、引用発明1は、引用文献1において比較例に相当する記載に基づいて認定されたものであるから、その発明の構成要件の一部を変更して新たな発明をなそうとは、通常思わないと主張している。しかしながら、試料No.51はレンズ適合性試験に合格したものであるから、コンタクトレンズ用組成物として十分実施できるものであることは明らかである。
よって、特許権者の意見は、何れも採用することができない。

(2)本件特許発明2
本件特許発明2と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ポロクサマー407(Px407)を0.5w/w%」は、本件特許発明2の「(B)成分の含有割合が、0.01?0.5w/v%である」とする要件を満たしている。
よって、本件特許発明2と引用発明1とは、上記[相違点1-1]のみで相違し、その余の点で一致している。
そして、上記[相違点1-1]は、前記(1)イにおいて検討したとおり、当業者が適宜なし得たことである。

(3)本件特許発明4
引用発明1は、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を0.0001w/w%に対し、ポロクサマー407(Px407)を0.5w/w%添加していることから、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を1重量部あたり、ポロクサマー407(Px407)を5000重量部添加しているといえる。
したがって、引用発明1は、本件特許発明4の「(A)成分の総量1重量部あたり、(B)成分の総量が80?10000重量部である」とする要件を満たしている。
よって、本件特許発明4と引用発明1とは、上記[相違点1-1]のみで相違し、その余の点で一致している。
そして、上記[相違点1-1]は、前記(1)イにおいて検討したとおり、当業者が適宜なし得たことである。

(4)本件特許発明5
ア 対比
引用発明1は、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を0.0001w/w%に対し、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.15w/w%添加していることから、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)1重量部あたり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを1500重量部、つまり、本件特許発明5の「(A)成分の総量1重量部あたり、(C)成分の総量が80?10000重量部」という要件は満たしているといえる。
そうすると、本件特許発明5と引用発明1とを対比すると、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点1-1’](C)成分について、本件特許発明5は、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の含有割合が、前記[相違点1-1]で挙げたように本件特許発明1では「0.01?0.1w/v%」であることに加えて、(A)成分の総量1重量部あたり、(C)成分の総量が「80?10000重量部」であるのに対し、引用発明1は、「(A)成分の総量1重量部あたり、(C)成分の総量が80?10000重量部」という要件は満たしているものの、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の含有割合が「0.15w/w%」である点。

イ 判断
上記[相違点1-1’]について検討すると、引用文献2の記載事項エの段落【0049】には「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」がコンタクトレンズ用の水性組成物に用いられる増粘剤として挙げられており、記載事項オには、実施例7として、ポリヘキサメチレンビグアニド(本件特許発明における(A)成分)の含有割合を0.00005w/v%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(本件特許発明1における(C)成分)の含有割合を0.01w/v%とした事例が記載されている。このように、コンタクトレンズの殺菌、消毒、洗浄、すすぎ、保存に用いる水性組成物において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有割合を0.01w/v%程度とするとともに、ポリヘキサメチレンビグアニド1重量部あたりのヒドロキシプロピルメチルセルロースを200重量部程度とすることは、通常行われていることであり、コンタクトレンズ用の水性組成物の粘度が所望の範囲となるよう、共存成分に応じて適宜調整されるべきものである。
したがって、引用発明1のヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有割合を、0.01w/v%とするとともに、ポリヘキサメチレンビグアニド1重量部あたりのヒドロキシプロピルメチルセルロースを200重量部とすることは、当業者が適宜なし得ることである。また、そのような数値範囲に限定したことにより、格別な効果の差異が生じるとはいえない。

(5)本件特許発明6
本件特許発明6と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「NaCl」及び「KCl」は、本件特許発明6の「(F)塩化ナトリウム及び塩化カリウムよりなる群から選択される少なくとも1種」に相当する。そして、引用発明1は「緩衝剤としてのホウ酸を0.5w/w%、ホウ砂を0.05w/w%」、「NaClを0.275w/w%、KClを0.055w/w%」それぞれ添加していることから、NaCl及びKClの総量100重量部に対してホウ酸及びホウ砂が総量で約166.7(=100×(0.5+0.05)/(0.275+0.055))重量部の比率で添加されている。
したがって、引用発明1は、本件特許発明6の「更に、(F)塩化ナトリウム及び塩化カリウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含有し、(F)成分の総量100重量部に対して(E)成分が総量で100重量部以上の比率を充足する」との要件を満たしている。
よって、本件特許発明6と引用発明1とは、上記[相違点1-1]のみで相違し、その余の点で一致している。
そして、上記[相違点1-1]は、前記(1)イにおいて検討したとおり、当業者が適宜なし得たことである。

(6)本件特許発明7
本件特許発明7と引用発明1とを対比すると、引用発明1は、「ポロクサマー407(Px407)」を添加しているから、本件特許発明7の「(B)成分が、ポロクサマー407」とする要件を満たしている。
よって、本件特許発明7と引用発明1とは、上記[相違点1-1]のみで相違し、その余の点で一致している。
そして、上記[相違点1-1]は、前記(1)イにおいて検討したとおり、当業者が適宜なし得たことである。

(7)本件特許発明8
ア 対比
本件特許発明8と引用発明1とを対比すると、両者は、[相違点1-1]に加えて以下の点で相違し、その余の点で一致している。
[相違点1-2]本件特許発明8は、(C)成分が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2208)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2906)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2910)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ1828)よりなる群から選択される少なくとも1種であるのに対し、引用発明1は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの置換度タイプを特定していない点。

イ 判断
上記[相違点1-2]について検討すると、引用文献5の記載事項(2)には、眼科用組成物の粘度を適度に調整するために添加する増粘剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の増粘剤が用いられることが記載されており、記載事項(4)には、眼科用組成物の実施例に用いた増粘剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC2910;信越化学工業株式会社製)であったことが記載されている。引用文献5に示されるように、眼科用組成物に用いられるヒドロキシプロピルメチルセルロースとして、置換度タイプ2910であるヒドロキシプロピルセルロースを採用することは、従来より当該分野において知られていたことである。そして、本件特許の明細書の段落【0039】には、「本発明に使用されるヒドロキシプロピルメチルセルロースは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限されるものではない。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースにおけるメトキシ基とヒドロキシプロポキシ基の含有量についても、特に制限されないが、例えば、分子(100重量%)内に、メトキシ基が19?31.5重量%及びヒドロキシプロポキシ基が4?12重量%含まれるものが例示される。本発明に使用されるヒドロキシプロピルメチルセルロースとして、具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2208)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2906)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2910)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ1828)等が挙げられる。」と記載されるのみであり、特定のヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いたことにより、格別な効果の差異が生じるともいえない。
したがって、引用発明1におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースとして、従来より眼科用組成物に用いられていたヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC2910)を採用することは、当業者が適宜なし得ることである。

(8)本件特許発明9
本件特許発明9と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「1-メントール」は、本件特許発明9の「(G)モノテルペン」に相当する。
よって、本件特許発明9と引用発明1とは、上記[相違点1-1]及び[相違点1-2]において相違し、その余の点で一致している。
そして、上記[相違点1-1]は、前記(1)イにおいて検討したとおり、上記[相違点1-2]は、前記(8)イにおいて検討したとおり、何れも、当業者が適宜なし得たことである。

(9)本件特許発明10
本件特許発明10と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「液材試料」は「pHが6.8」とされるものであるから、本件特許発明10の「pHが6.0?8.0である」とする要件を満たしている。
よって、本件特許発明10と引用発明1とは、上記[相違点1-1]及び[相違点1-2]において相違し、その余の点で一致している。
そして、上記[相違点1-1]は、前記(1)イにおいて検討したとおり、上記[相違点1-2]は、前記(8)イにおいて検討したとおり、何れも、当業者が適宜なし得たことである。

(10)本件特許発明11
ア 対比
本件特許発明11と引用発明1とを対比すると、両者は、[相違点1-1]及び[相違点1-2]に加えて、以下の点で相違し、その余の点で一致している。
[相違点1-3]本件特許発明11は、コンタクトレンズケア用組成物が「容器に充填されてなる、レンズケア用品」であるのに対し、引用発明1は、容器に充填されたレンズケア用品ではない点。

イ 判断
上記[相違点1-3]について検討すると、コンタクトレンズに用いる液材を、容器に充填してレンズケア用品として用いることは、例示するまでもなく、周知技術であるといえる。したがって、引用発明1において、液材試料を、容器に充填してレンズケア用品とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(11)本件特許発明12
ア 対比
本件特許発明12と引用発明1とを対比すると、両者は、[相違点1-1]?[相違点1-3]に加えて、以下の点で相違し、その余の点で一致している。
[相違点1-4]本件特許発明12は、コンタクトレンズケア用組成物が、FDAの基準によるソフトコンタクトレンズ分類グループIVのレンズに用いられるものであるのに対し、引用発明1の液材試料は、コンタクトレンズ適合性試験に合格したものであるものの、どのようなコンタクトレンズに用いられるものであるのかを特定していない点。

イ 判断
上記[相違点1-4]について検討すると、どのような分類に属するコンタクトレンズに用いるかは、当業者が適宜選択し得ることである。そして、特許異議申立人2が提出した甲第7号証の第5頁第8?10行に記載されているように、一般に市販されているソフトコンタクトレンズ用消毒溶液は、全ての分類のソフトコンタクトレンズに対して使用できるものである。また、特定の分類グループに属するソフトコンタクトレンズに適用したことにより、格別な効果の差異が生じるとする根拠も見いだせない。
したがって、引用発明1における液材試料を、FDAの基準によるソフトコンタクトレンズ分類グループIVのレンズに用いられるものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(12)本件特許発明13?16
ア 対比
引用発明1は滅菌精製水に対して、それぞれの成分を添加せしめる方法に関する発明として認定することもできる。
本件特許発明13?16に係る発明と引用発明1とを対比すると、前記(1)アにおいて検討したとおり、引用発明1において液体試料に配合される成分は、(C)成分の含有割合が異なるものの、本件特許発明13?16に係る発明のコンタクトレンズケア用組成物に配合される(A)?(E)の成分を包含している。そして、引用発明1の添加せしめる工程は、本件特許発明13?16の「配合する」工程に相当する。
そして、本件特許発明13における「ポリヘキサニド及び/又はその塩の殺菌作用の低下を抑制する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する」こと、本件特許発明14における「白濁を防止する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する」こと、本件特許発明15における「ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの低分子化を防止する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する」こと、本件特許発明16における「コンタクトレンズの硬度の上昇を抑制する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する」ことは、液体試料の上記成分を配合することによって、当然得られる効果であるから、引用発明1も当然に具備している効果である。
そうすると、本件特許発明13?16と引用発明1とは、前記[相違点1-1]と同じ相違点を有し、その余の点で一致している。そして、上記[相違点1-1]は、前記(1)イにおいて検討したとおり、当業者が適宜なし得たことである。

(13)むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2、4?16に係る発明は、引用発明1、引用文献2の記載、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許に係る出願は、特許法第29条第2項の規定を満たしていない。

2 引用文献2
(1)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と引用発明2とを対比する。

(ア)引用発明2の「ポリヘキサメチレンビグアニド 0.0001 w/v%」は、本件特許発明1の「(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%」に相当する。

(イ)引用発明2の「ポロクサマー407」は、本件特許発明1の「(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール」に相当する。

(ウ)引用発明2の「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」は、本件特許発明1の「(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種」に相当する。

(エ)引用発明2の「エデト酸ナトリウム」は、本件特許発明1の「(D)エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種」に相当する。

(オ)引用発明2の「ホウ酸」及び「ホウ砂」は、技術常識を考慮すれば、水性組成物中においてホウ酸緩衝液として作用するものといえる。したがって、引用発明2の「ホウ酸」及び「ホウ砂」は、本件特許発明1の「(E)ホウ酸緩衝剤」に相当する。

(カ)引用発明2の「コンタクトレンズ用多目的溶液(マルチパーパスソリューション)、コンタクレンズ用洗浄液、コンタクトレンズ用すすぎ液、コンタクトレンズ用消毒液またはコンタクトレンズ用保存液として使用できる製剤」は、本件特許発明1の「コンタクトレンズケア用組成物」に相当する。

(キ)引用発明2の「製剤」に含まれる「ポロクサマー407(Px407)」は、「前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である」との要件を満たしていない。また、「液材試料」は、ヒスチジン誘導体を含有しておらず、本件特許の請求項1における式(1)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有していない。
したがって、引用発明2の「製剤」は、本件特許発明1の「但し、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上であるコンタクトレンズケア用組成物、水性媒体中に少なくとも1個以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物、及び、下記式(1)
【化1】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物を除く。」とする要件を満たしている。

(ク)以上より、本件特許発明1と引用発明2とは、以下の点で相違し、その余の点で一致している。
[相違点2-1](C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の含有割合が、本件特許発明1では0.01?0.1w/v%であるのに対し、引用発明2では0.2w/v%である点。
[相違点2-2](D)エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の含有割合が、本件特許発明1では0.04?0.2w/v%であるのに対し、引用発明2では、0.005w/v%である点。

イ 判断
(ア)[相違点2-1]について
引用文献2の記載事項エの段落【0046】には、「本発明の水性組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記の成分に加えて、各種用途に応じて、種々の活性成分または薬効成分(薬理活性成分および生理活性成分を含む)や添加剤(界面活性剤、増粘剤、キレート剤、安定化剤、防腐剤・保存剤、香料等)を組み合わせて含有してもよい。このような成分は、眼刺激等の問題がない濃度範囲内で適宜配合することができ、成分の種類は特に制限されないが具体的には以下のものを例示できる。」と記載されており、段落【0049】には、「増粘剤としては、・・・、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、・・・等が挙げられる。」と記載されている。上記記載に基づけば、引用発明2の「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」は、水性組成物の粘度について、粘度がコンタクトレンズ用多目的溶液(マルチパーパスソリューション)、コンタクレンズ用洗浄液、コンタクトレンズ用すすぎ液、コンタクトレンズ用消毒液またはコンタクトレンズ用保存液の用途に適したものとなるよう、その濃度範囲を適宜調製することができるものといえる。
そして、引用文献2の記載事項オには、実施例6や実施例7として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(本件特許発明1における(C)成分)の含有割合を「0.05w/v%」や「0.01w/v%」とした事例が記載されており、コンタクトレンズの殺菌、消毒、洗浄、すすぎ、保存に用いる水性組成物において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有割合を0.05?0.01w/v%程度とすることは、通常行われていることであり、コンタクトレンズ用の水性組成物の粘度が所望の範囲となるよう、共存成分に応じて適宜調整されるべきものであるといえる。
したがって、引用発明2のヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有割合を、0.05?0.01w/v%とすることは、当業者が適宜なし得ることである。また、そのような数値範囲に限定したことにより、格別な効果の差異が生じるとはいえない。

特許権者は、平成31年2月18日に提出した意見書において、本件発明の課題は、引用文献2の課題とは全く異なる新たな課題であるから、引用文献2に記載されたヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有割合の値を基に、引用発明2に相違点2-1に係る構成を採用する動機付けはないと主張している。しかしながら、引用文献2に記載された実施例5?7は、別の課題を解決しようとするものではなく、上記のとおり、引用文献2には添加剤について、「眼刺激等の問題がない濃度範囲内で適宜配合することができ」るとしている。上記引用文献2の記載に基づけば、実施例6、7を参照してヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有割合を調整する動機付けは、当然存在するといえる。
また、本明細書の段落0042に記載された効果が、引用文献2には何ら記載されていないから、相違点2-1を備えることによって奏される効果は、引用文献2からは予測できるはずもない顕著なものであると主張している。しかしながら、引用発明2もヒドロキシプロピルメチルセルロースを有効量含有するものであるから、本件特許発明1と同様の効果を奏するものと考えられる。そして、本件特許の明細書は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有することによって、段落0042に記載された効果を奏することを何ら示していない。したがって、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有割合が0.1w/v%以下である場合と0.2w/v%である場合とで、予測できない顕著な効果を生じると考えることはできない。
さらに、実施例5、6及び7に係る組成物は、それぞれ、他の処方の組成物とは異なる固有の殺菌力または洗浄力を奏するものとしてそれぞれ完成されているものと理解されるので、実施例6及び7のヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有割合の値を、引用発明2に係る組成物に採用する動機付けは何らないと主張している。また、亜塩素酸類化合物を含む組成物においては、亜塩素酸類化合物の洗浄と殺菌との作用機序の違いを十分に考慮して、他の成分の組み合わせ等の変更を検討する必要が生じるため、このようなことは、適宜調製することによりなし得る範疇を遙かに超えるものと主張している。しかしながら、実施例6及び実施例7も、実施例5と同様に亜塩素酸類化合物を殺菌に用いるものであるから、亜塩素酸類化合物の洗浄と殺菌に基づく組成物において調製し得る範囲を示すものといえる。
よって、特許権者の意見は、何れも採用することができない。

(イ)[相違点2-2]について
引用文献2には、前記(ア)に記載したとおり、記載事項エの段落【0046】に、水性組成物は、キレート剤等の添加剤を組み合わせて含有してもよいこと、このような成分は、眼刺激等の問題がない濃度範囲内で適宜配合することができることが記載されており、記載事項オには、実施例3として、エデト酸ナトリウムを0.05w/v%用いた実施例も開示されている。そして、例えば、引用文献1の記載事項ウの段落【0031】には、「コンタクトレンズ、特にソフトコンタクトレンズには、一般に、涙液からの汚れとして、カルシウム等が沈着乃至は吸着する問題を生ずる可能性があることから、そのような不具合の発生を防止するべく、眼科用組成物には、キレート化剤も、また、有利に添加せしめられることとなるが、そのようなキレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、例えばエチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム(EDTA・2Na)、エチレンジアミン四酢酸・3ナトリウム(EDTA・3Na)等を用いることが出来る。」と記載されており、開示された実施例は、何れも、EDTA・2Naを0.05w/w%添加したものである。また、引用文献3にも、記載事項(2)に、組成物が金属イオン封鎖剤を約2.0重量%まで存在し得ること、エデト酸二ナトリウムが特に好ましいことが記載されており、開示された何れの実験例もエデト酸二ナトリウムを0.05重量部含んでいる。さらに、引用文献4にも、記載事項(3)の段落【0015】に、金属封鎖剤としてエチレンジアミン四酢酸塩、エデト酸ナトリウム等が例示されること、これらは、コンタクトレンズに無機物の汚れが固着するのを防止するために添加され、一般に、0.2(W/V)%以下で使用されることが記載されており、処方1、及び処方2として、0.11w/v%含む実施例も開示されている。そして、引用文献5にも、記載事項(3)に、コンタクトレンズに、涙液からの汚れとして、カルシウム等が沈着乃至は吸着する可能性があり、そのような不具合の発生を防止するために、エチレンジアミン四酢酸等のキレート化剤を用いることが記載されており、開示された何れの実験例も、EDTA・2Naを0.05W/W%含有している。以上の記載に基づけば、コンタクトレンズ用の製剤において、ソフトコンタクトレンズの汚れを防止するために、0.05w/v%程度のエデト酸ナトリウムを添加することは周知技術であるといえる。そうすると、引用発明2のエデト酸ナトリウムについても、ソフトコンタクトレンズの十分な汚れ防止効果を奏するように、実施例3と同様の0.05w/v%程度の濃度とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、特許異議申立人1が提出した甲第3号証及び甲第4号証に基づけば、エデト酸2ナトリウムの濃度の違いによって白濁等の効果に格別の差異が生じるとはいえないものである。したがって、当該相違点に係る効果は、周知技術に基づいて当業者が予測し得たものに過ぎず、格別なものということはできない。

特許権者は、平成31年2月18日に提出した意見書において、引用発明2に係る組成物において、亜塩素酸ナトリウムの含有割合及びエデト酸ナトリウムの含有割合は、塩素ガスの発生を抑制する観点でも慎重に選ばれたものであるから、相違点2-2に係る構成を引用発明2に採用することは、必ずしも容易に行い得ることではないと主張する。しかし、引用発明2は、その組成から理解できるとおり、ホウ酸緩衝液によってpHの値が制御されているものである。一般に次亜塩素酸ナトリウムと酸とを反応させることにより塩素ガスが発生するとしても、引用発明2のコンタクトレンズ用多目的溶液に含有されているのは、亜塩素酸ナトリウムであり、次亜塩素酸ナトリウムの含有割合は、極めて微量であると考えられる上に、エデト酸ナトリウムは弱酸である。エデト酸ナトリウムの含有量を0.05w/v%程度増やしたとしても、ホウ酸緩衝液の作用が阻害されてpHが低下するとは考えがたく、そのような系から塩素ガスが発生するとは考えられない。
したがって、特許権者の意見は採用することができない。

(2)本件特許発明2
本件特許発明2と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「ポロクサマー407 0.1 w/v%」は、本件特許発明2の「(B)成分の含有割合が、0.01?0.5w/v%である」とする要件を満たしている。
よって、本件特許発明2と引用発明2とは、上記[相違点2-1]及び[相違点2-2]で相違し、その余の点で一致している。
そして、上記[相違点2-1]及び[相違点2-2]は、前記(1)イにおいて検討したとおり、当業者が適宜なし得たこと、又は、容易になし得たことである。

(3)本件特許発明4
引用発明2は、ポリヘキサメチレンビグアニド 0.0001 w/v%に対し、ポロクサマー407 0.1 w/v%を含有していることから、ポリヘキサメチレンビグアニドを1重量部あたり、ポロクサマー407を1000重量部含有しているといえる。
したがって、引用発明2は、本件特許発明4の「(A)成分の総量1重量部あたり、(B)成分の総量が80?10000重量部である」とする要件を満たしている。
よって、本件特許発明4と引用発明2とは、上記[相違点2-1]及び[相違点2-2]で相違し、その余の点で一致している。
そして、上記[相違点2-1]及び[相違点2-2]は、前記(1)イにおいて検討したとおり、当業者が適宜なし得たこと、又は、当業者が容易になし得たことである。

(4)本件特許発明5
ア 対比
引用発明2は、ポリヘキサメチレンビグアニド 0.0001 w/v%に対し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.2 w/v%を含有していることから、ポリヘキサメチレンビグアニド1重量部あたり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを2000重量部、つまり、本件特許発明5の「(A)成分の総量1重量部あたり、(C)成分の総量が80?10000重量部である」とする要件を満たしているといえる。
そうすると、本件特許発明5と引用発明2とは、以下の点及び[相違点2-2]で相違し、その余の点で一致している。
[相違点2-1’](C)成分について、本件特許発明5は、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の含有割合が、前記[相違点2-1]で挙げたように本件特許発明1では「0.01?0.1w/v%」であることに加えて、(A)成分の総量1重量部あたり、(C)成分の総量が「80?10000重量部」であるのに対し、引用発明2は、「(A)成分の総量1重量部あたり、(C)成分の総量が80?10000重量部」という要件は満たしているものの、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の含有割合が「0.2w/v%」である点。

イ 判断
上記[相違点2-1’]について検討すると、前記1(4)イに記載したとおり、引用文献2には、ポリヘキサメチレンビグアニド(本件特許発明における(A)成分)の含有割合を0.00005w/v%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(本件特許発明1における(C)成分)の含有割合を0.01w/v%とした事例が記載されており、コンタクトレンズの殺菌、消毒、洗浄、すすぎ、保存に用いる水性組成物において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有割合を0.01w/v%程度とするとともに、ポリヘキサメチレンビグアニド1重量部あたりのヒドロキシプロピルメチルセルロースを200重量部程度とすることは、通常行われていることであり、コンタクトレンズ用の水性組成物の粘度が所望の範囲となるよう、共存成分に応じて適宜調整されるべきものであるといえる。
したがって、引用発明2のヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有割合を、0.01w/v%とするとともに、ポリヘキサメチレンビグアニド1重量部あたりのヒドロキシプロピルメチルセルロースを200重量部とすることは、当業者が適宜なし得ることである。また、そのような数値範囲に限定したことにより、格別な効果の差異が生じるとはいえない。

(5)本件特許発明6
本件特許発明6と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「塩化ナトリウム」及び「塩化カリウム」は、本件特許発明6の「(F)塩化ナトリウム及び塩化カリウムよりなる群から選択される少なくとも1種」に相当する。そして、引用発明2は、ホウ酸緩衝液を構成する「ホウ酸」を「0.5w/v%」及び「ホウ砂」を「0.05w/v%」、F成分である「塩化ナトリウム」を「0.15w/v%」及び「塩化カリウム」を「0.02w/v%」それぞれ含有していることから、塩化ナトリウム及び塩化カリウムの総量100重量部に対してホウ酸及びホウ砂が総量で約324重量部の比率で含有されている。
したがって、引用発明2は、本件特許発明6の「更に、(F)塩化ナトリウム及び塩化カリウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含有し、(F)成分の総量100重量部に対して(E)成分が総量で100重量部以上の比率を充足する」との要件を満たしている。
よって、本件特許発明6と引用発明2とは、上記[相違点2-1]及び[相違点2-2]で相違し、その余の点で一致している。
そして、上記[相違点2-1]及び[相違点2-2]は、前記(1)イにおいて検討したとおり、当業者が適宜なし得たこと、又は、当業者が容易になし得たことである。

(6)本件特許発明7
本件特許発明7と引用発明2とを対比すると、引用発明2は、「ポロクサマー407」を含有していることから、本件特許発明7の「(B)成分が、ポロクサマー407」とする要件を満たしている。
よって、本件特許発明7と引用発明2とは、上記[相違点2-1]及び[相違点2-2]で相違し、その余の点で一致している。
そして、上記[相違点2-1]及び[相違点2-2]は、前記(1)イにおいて検討したとおり、当業者が適宜なし得たこと、又は、当業者が容易になし得たことである。

(7)本件特許発明8
ア 対比
本件特許発明8と引用発明2とを対比すると、両者は、前記[相違点2-1]及び[相違点2-2]に加えて、以下の点で相違し、その余の点で一致している。
[相違点2-3]本件特許発明8は、(C)成分が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2208)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2906)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2910)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ1828)よりなる群から選択される少なくとも1種であるのに対し、引用発明2は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの置換度タイプを特定していない点。

イ 判断
上記[相違点2-3]について検討すると、前記1(7)イに記載したとおり、引用文献5に示されるように、眼科用組成物に用いられるヒドロキシプロピルメチルセルロースとして、置換度タイプ2910であるヒドロキシプロピルセルロースを採用することは、従来より当該分野において知られていたことである。そして、本件特許の明細書の記載を参酌しても、特定のヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いたことにより、格別な効果の差異が生じるともいえない。
したがって、引用発明2におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースとして、従来より眼科用組成物に用いられていたヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC2910)を採用することは、当業者が適宜なし得ることである。

(8)本件特許発明9
本件特許発明9と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「1-メントール」は、本件特許発明9の「(G)モノテルペン」に相当する。
よって、本件特許発明9と引用発明2とは、上記[相違点2-1]?[相違点2-3]で相違し、その余の点で一致している。
そして、上記[相違点2-1]及び[相違点2-2]は前記(1)イにおいて検討したとおり、[相違点2-3]は前記(8)イにおいて検討したとおり、いずれも、当業者が適宜なし得たこと、又は、当業者が容易になし得たことである。

(9)本件特許発明10
本件特許発明10と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「製剤」は「pH 6.7」であるから、本件特許発明10の「pHが6.0?8.0である」とする要件を満たしている。
よって、本件特許発明10と引用発明2とは、上記[相違点2-1]?[相違点2-3]で相違し、その余の点で一致している。
そして、上記[相違点2-1]及び[相違点2-2]は前記(1)イにおいて検討したとおり、[相違点2-3]は前記(8)イにおいて検討したとおり、いずれも、当業者が適宜なし得たこと、又は、当業者が容易になし得たことである。

(10)本件特許発明11
ア 対比
本件特許発明11と引用発明2とを対比すると、両者は、[相違点2-1]?[相違点2-3]に加えて、以下の点で相違し、その余の点で一致している。
[相違点2-4]本件特許発明11は、コンタクトレンズケア用組成物が「容器に充填されてなる、レンズケア用品」であるのに対し、引用発明2は、容器に充填されたレンズケア用品ではない点。

イ 判断
上記[相違点2-4]について検討すると、コンタクトレンズ用多目的溶液(マルチパーパスソリューション)、コンタクレンズ用洗浄液、コンタクトレンズ用すすぎ液、コンタクトレンズ用消毒液またはコンタクトレンズ用保存液として使用できる製剤を、容器に充填してレンズケア用品として用いることは、例示するまでもなく、周知技術であるといえる。また、引用文献2の記載事項エの段落【0045】にも、水性組成物を「得られた溶液を無菌環境下、ろ過滅菌処理し、洗浄滅菌済みの容器に無菌充填する工程」により製造することが記載されている。
したがって、引用発明2において、水性組成物を、容器に充填してレンズケア用品とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(11)本件特許発明12
ア 対比
本件特許発明12と引用発明2とを対比すると、両者は、[相違点2-1]?[相違点2-4]に加えて、以下の点で相違し、その余の点で一致している。
[相違点2-5]本件特許発明12は、コンタクトレンズケア用組成物が、FDAの基準によるソフトコンタクトレンズ分類グループIVのレンズに用いられるものであるのに対し、引用発明2の製剤は、コンタクトレンズ用多目的溶液(マルチパーパスソリューション)、コンタクレンズ用洗浄液、コンタクトレンズ用すすぎ液、コンタクトレンズ用消毒液またはコンタクトレンズ用保存液として使用できるものの、どのようなコンタクトレンズに用いられるものであるのかを特定していない点。

イ 判断
上記[相違点2-5]について検討すると、引用文献2の記載事項ウにおける「本発明で使用する用語「コンタクトレンズ」とは、特記しない限り、ハード、酸素透過性ハード、ソフト、シリコンハイドロゲルレンズ等のあらゆるタイプのコンタクトレンズを包含する意味で用いる。ソフトコンタクトレンズ、シリコンハイドロゲルレンズが特に好ましい。」との記載に基づけば、引用発明2の水性組成物も、様々な分類に属するコンタクトレンズに用いることができるものであり、どのような分類に属するコンタクトレンズに用いるかは、当業者が適宜選択し得ることである。そして、特定の分類グループに属するソフトコンタクトレンズに適用したことにより、格別な効果の差異が生じるとする根拠も見いだせない。
したがって、引用発明2における製剤を、FDAの基準によるソフトコンタクトレンズ分類グループIVのレンズに用いられるものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(12)本件特許発明13?16
ア 対比
引用発明2は、コンタクトレンズ用多目的溶液(マルチパーパスソリューション)、コンタクレンズ用洗浄液、コンタクトレンズ用すすぎ液、コンタクトレンズ用消毒液またはコンタクトレンズ用保存液として使用できる製剤の調整方法に関する発明として認定することもできる。
本件特許発明13?16と引用発明2とを対比すると、前記(1)アにおいて検討したとおり、引用発明2において製剤に配合される成分は、(C)成分及び(D)成分の含有割合が異なるものの、本件特許の請求項13?16に係る発明のコンタクトレンズケア用組成物に配合される(A)?(E)の成分を包含している。そして、引用発明2の「常法により、調整」する工程は、本件特許発明13?16の「配合する」工程に相当する。
そうすると、本件特許発明13?16と引用発明2とは、以下の点で相違し、その余の点で一致している。
[相違点2-6](C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の含有割合が、本件特許発明13?16では0.01?0.1w/v%であるのに対し、引用発明2では0.2w/v%であり、(D)エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の含有割合が、本件特許の請求項13?16に係る発明では0.04?0.2w/v%であるのに対し、引用発明2では、0.005w/v%であり、本件特許発明13では「ポリヘキサニド及び/又はその塩の殺菌作用の低下を抑制する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与」し、本件特許発明14では「白濁を防止する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与」し、本件特許発明15では「ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの低分子化を防止する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与」し、本件特許発明16では「コンタクトレンズの硬度の上昇を抑制する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与」するのに対し、引用発明2はどのような作用を付与するのかを明らかにしていない点。

イ 判断
上記[相違点2-6]について検討すると、(C)成分及び(D)成分の含有割合については、前記(1)イ(ア)及び(イ)において検討したとおり、当業者が適宜なし得ること、又は、当業者が容易に想到し得ることである。そして、本件特許発明13における「ポリヘキサニド及び/又はその塩の殺菌作用の低下を抑制する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する」こと、本件特許発明14における「白濁を防止する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する」こと、本件特許発明15における「ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの低分子化を防止する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する」こと、本件特許発明16における「コンタクトレンズの硬度の上昇を抑制する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する」ことは、製剤の上記(A)?(E)成分を配合することによって、当然得られる効果であるから、引用発明2も当然に具備している効果である。

(13)むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1、2、4?16に係る発明は、引用発明2、引用文献2の記載、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許に係る出願は、特許法第29条第2項の規定を満たしていない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1、2、4?16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件特許発明1、2、4?16に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件請求項3に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項3に対して特許異議申立人1及び特許異議申立人2がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D)エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を含有することを特徴とする、コンタクトレンズケア用組成物(但し、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上であるコンタクトレンズケア用組成物、水性媒体中に少なくとも1個以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物、及び、下記式(1)
【化1】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物を除く。)
【請求項2】
(B)成分の含有割合が、0.01?0.5w/v%である、請求項1に記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
(A)成分の総量1重量部あたり、(B)成分の総量が80?10000重量部である、請求項1または2に記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項5】
(A)成分の総量1重量部あたり、(C)成分の総量が80?10000重量部である、請求項1?2または4のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項6】
更に、(F)塩化ナトリウム及び塩化カリウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含有し、(F)成分の総量100重量部に対して(E)成分が総量で100重量部以上の比率を充足する、請求項1?2または4?5のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項7】
(B)成分が、ポロクサマー407である、請求項1?2または4?6のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項8】
(C)成分が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2208)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2906)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ2910)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換度タイプ1828)よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1?2または4?7のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項9】
更に、(G)モノテルペンを含有する、請求項1?2または4?8のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項10】
pHが6.0?8.0である、請求項1?2または4?9のいずれかに記載のコンタクトレンズケア組成物。
【請求項11】
請求項1?2または4?10のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物が、容器に充填されてなる、コンタクトレンズケア用品。
【請求項12】
FDAの基準によるソフトコンタクトレンズ分類グループIVのレンズに用いられる、請求項1?2または4?11のいずれかに記載のコンタクトレンズケア用組成物。
【請求項13】
コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D)エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、ポリヘキサニド及び/又はその塩の殺菌作用の低下を抑制する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化2】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。
【請求項14】
コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D)エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、白濁を防止する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化3】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。
【請求項15】
コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D)エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの低分子化を防止する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化4】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。
【請求項16】
コンタクトレンズケア用組成物に、(A)ポリヘキサニド及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.00005?0.00012w/v%、(B)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、(C)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.01?0.1w/v%、(D)エチレンジアミン四酢酸及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種0.04?0.2w/v%、並びに(E)ホウ酸緩衝剤を配合することを含む、コンタクトレンズの硬度の上昇を抑制する作用を該コンタクトレンズケア用組成物に付与する方法(但し、コンタクトレンズケア用組成物が、高分子抗菌剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを含有するコンタクトレンズケア用組成物であって、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子中のエチレンオキシドが10?60%、かつ、疎水基分子量が1500以上である場合、水性媒体中に少なくとも1種以上のヒスチジン誘導体を含有せしめた眼科用組成物である場合、及び、下記式(1)
【化5】

(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(3)は、同一または異なっていてもよく、それぞれ、水素原子又は置換されてもよいアルキル基を示す)で表される化合物又はその薬学上許容される塩を含有する組成物である場合を除く)。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-05-29 
出願番号 特願2016-120853(P2016-120853)
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (G02C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 宮澤 浩
高松 大
登録日 2017-10-27 
登録番号 特許第6232475号(P6232475)
権利者 ロート製薬株式会社
発明の名称 コンタクトレンズケア用組成物  
代理人 藤本 昇  
代理人 中谷 寛昭  
代理人 久米 哲史  
代理人 高橋 洋平  
代理人 中谷 寛昭  
代理人 久米 哲史  
代理人 藤本 昇  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ