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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1354949
異議申立番号 異議2019-700407  
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-10-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-05-21 
確定日 2019-08-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第6425928号発明「加熱調理用液体調味料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6425928号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6425928号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成26年7月3日の出願であって、平成30年11月2日に特許権の設定登録がされ、同年11月21日にその特許公報が発行され、令和1年5月21日に、その請求項1?3に係る発明の特許に対し、アクシス国際特許業務法人(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6425928号の請求項1?3に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明3」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
甲殻類及び貝類のうちの少なくとも一方に由来する粉末と、油脂と、を含有する原料を用いて得られた加熱調理用液体調味料であって、
更に、増粘剤を含有しており、
前記増粘剤は、キサンタンガム及びペクチンから選ばれる少なくとも一種を含み、
前記粉末に含まれる窒素分の含有量は、加熱調理用液体調味料中において、90?25000ppm(wt/wt)であり、
前記油脂の含有量は、加熱調理用液体調味料を100質量%とした場合に、0.1?2.0質量%であり、
前記増粘剤の含有量は、加熱調理用液体調味料を100質量%とした場合に、0.06?0.35質量%であることを特徴とする加熱調理用液体調味料。
【請求項2】
前記甲殻類は、エビ及びカニのうちの少なくとも1種であり、前記貝類は、ホタテである請求項1に記載の加熱調理用液体調味料。
【請求項3】
前記原料は酵母エキスを更に含有する請求項1又は2に記載の加熱調理用液体調味料。」

第3 申立理由の概要
特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は、以下のとおりである。

1 特許法第29条第2項(以下「理由1」という。)
本件発明1?3は、その優先日前に日本国内又は外国において、下記の甲第1?9号証に示される、頒布された刊行物に記載された発明及び電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1?3に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:クックパッドの公式ホームページ,「ピリ辛!フカヒレスープ風味ラーメン!!」のレシピ[online],2011年5月22日,[令和1年5月10日検索],インターネットURL:https://cookpad.com/recipe/1409917(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2014-90718号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:Amazonの公式ホームページ,「北海道えびラーメン味噌味1箱(2食入り)東しゃこたん漁協謹製」の購入申込サイト,[online],2013年7月17日Amazon.co.jpでの取り扱い開始日,[平成31年4月25日検索],インターネットURL:https://www.amazon.co.jp/北海道-えびラーメン-味噌味-1箱(2食入り)-東しゃこた漁協謹製/dp/B00E0EIMJI(以下「甲3」という。)
甲第4号証:Rakuten BLOGの公式ホームページ,「世界の山ちゃん うま塩とり鍋の素/興味津々な日々-楽天ブログ」,[online],2012年12月6日,[平成31年4月25日検索],インターネットURL:https://plaza.rakuten.co.jp/moco801/diary/201212060001/(以下「甲4」という。)
甲第5号証:Rakutenレシピの公式ホームページ,「ほどよくトロ?リ、モロヘイヤの中華風スープ レシピ・作り方」[online],2013年8月3日公開日,[令和1年5月10日検索],インターネットhttps://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1880007825(以下「甲5」という。)
甲第6号証:特開平10-42823号公報(以下「甲6」という。)
甲第7号証:特許第2593353号公報(以下「甲7」という。)
甲第8号証:特開2004-89074号公報(以下「甲8」という。)
甲第9号証:特開2008-278894号公報(以下「甲9」という)

2 特許法第36条第4項第1号(以下「理由2」という。)
本件発明1?3については、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

3 特許法第36条第6項第1号(以下「理由3」という。)
本件発明1?3は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
よって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

第4 当審の判断

1 理由1について

(1)甲号各証の記載

ア 甲1

1a「ピリ辛!フカヒレスープ風味ラーメン!!

」(標題及び写真)

1b「 材料(1人前)
緑豆春雨 15g
★干しホタテ(ほぐし) 大さじ1
★干し椎茸 小さいの1個
★干しキクラゲ 1個
★砂糖(てん菜糖) 小さじ1/2
★水 60cc
■干しエビ(粉末) 小さじ1
■丸とりだし(鶏ガラスープ)1パック(260g)
■生姜 薄切1枚
■ネギ(青いとこ) 適量
■水 140cc
■タケノコ 好きな量
■アバロンソース(またはオイスターソース)小さじ1
■XO醤 大さじ1
■ウェイパー 小さじ1
■紹興酒 大さじ1
◆薄口醤油 小さじ1
◆白胡椒 少々
◆塩 適量(今回は小さじ2/3くらい)
中華麺 1人前
水溶き片栗粉 大さじ2(様子みて入れてね)
(ハート)青いもの(今回は香菜) 適量
(ハート)ネギ油 小さじ1/2 」(材料)
(審決注:(ハート)は、黒塗りのハート印を表す。以下同様。)

1c「作り方
1 緑豆春雨を水(分量外)でもどしておく。
2 麺を茹でる湯を沸かしておく。
3 ★の材料を全て耐熱のカップかボールに入れ、600wレンジで2分くらいチン!
4 ■を全て鍋にいれ、灰汁を取りながら煮たら、1と3と◆を入れて更に煮込み、水溶き片栗粉でとろみをつける。
5 2の茹で中華麺を茹でる。
6 4が出来上がったら、丼に4と5を入れ、(ハート)で仕上げをして、出来上がり!」(作り方)

イ 甲2

2a「【請求項1】
白菜キムチを切り刻み、ニンニクを細かく刻むかすり潰して準備する段階と、
前記準備されたニンニクと白菜キムチを、水飴、白砂糖、L-グルタミン酸ナトリウム、クエン酸、精製塩、カプシカム、エゴマ油、炒め胡麻、グレープフルーツ抽出物;豚肉、牛肉、鶏肉を含む食肉;ハム、ベーコン、ソーセージを含む食肉加工品;貝、カキ、イカ、タコ、アワビ、ナマコ、ロブスター、カニ、タラバガニ、ツナ、マグロ、スケトウダラを含む海産物とその加工品;トマト、ジャガイモ、タマネギ、ピーマン、キャベツを含む野菜類;及び新マツタケ、西洋マツタケ、シイタケ、ヒラタケを含むキノコ類から選ばれる少なくとも1つ、あるいはそれの粉末又はエキスと混合して炒める1次加工段階と、
1次加工後の材料に変性澱粉、キサンタンガム又はパプリカ抽出色素を加えて均一に混合して、10?30分加熱することによって、アルファ化させて、粘稠な状態にする2次加工段階と、
2次加工後の材料を摂氏40℃ないし75℃に冷却する段階と、
前記冷却後の材料に発酵食酢及び酒精を加えて均一に混合する段階と、
発酵食酢及び酒精が混合された後の材料を充填器で包装容器に充填する段階と、
包装容器を冷蔵保管する段階と、
を含むことを特徴とするキムチソースの製造方法。」

2b「【0007】
本発明によれば、非常に美味しいキムチソースを包装食品として提供することができて、炒めご飯、サラダ、魚料理、肉料理、バーベキューソース、製菓用ソース、ドレッシングのように一般的に広く活用可能である。また、非常に美味しいキムチソースを包装食品として即席で食べることができて、非常に簡便であり、商品性も非常に優れている。
・・・・・
【0022】
キサンタンガムは、過体重の人に体重減少を起こすことが報告されている。食品に、安定剤、増粘剤、結着剤、乳化剤、固結剤、発泡剤などとして使われ、それ以外にも、低カロリー食品で利用されている。本発明では、食品の安定剤と乳化剤としての目的で使われる。キサンタンガムを前記範囲内の量で使えば、キサンタンガム特有の機能の発揮に適している。したがって、不要に多く使う必要はなく、過度に使った場合には、他の食品の味に悪影響を与えるので、望ましくない。」

2c「【実施例1】
【0031】
白菜キムチ100重量部を基準として、ニンニク1.72重量部、水飴(高果糖)11.6重量部、白砂糖8.32重量部、L-グルタミン酸ナトリウム0.50重量部、クエン酸0.24重量部、パプリカ抽出色素粉1.06重量部、精製塩1.32重量部、変性澱粉2.11重量部、キサンタンガム0.05重量部、牛肉、豚肉、鶏肉のうち何れか1つの粉末またはエキス1.72重量部、発酵食酢1.72重量部、カプシカム0.01重量部、エゴマ油0.4重量部、炒め胡麻0.52重量部、酒精0.79重量部、グレープフルーツ抽出物0.04重量部を使用した。
【0032】
前記牛肉、豚肉、鶏肉のうち何れか1つの粉末またはエキス1.72重量部は、貝、カキ、イカ、タコ、アワビ、ナマコ、ロブスター、カニ、タラバガニ、スケトウダラ、ツナ、マグロを含む海産物、トマト、ジャガイモ、タマネギ、ピーマン、キャベツを含む野菜類、新マツタケ、西洋マツタケ、シイタケ、ヒラタケを含むキノコ類から選ばれる少なくとも1つ、あるいはそれらの粉末またはエキス1.72重量部で置き換えてもよい。
【実施例2】
【0033】
実施例2は、本発明のキムチソースの製造方法における材料の使用量をkg表示した望ましい1つの実施例である。
白菜キムチ75.66kg、ニンニク1.3kg、水飴(高果糖)8.8kg、白砂糖6.3kg、L-グルタミン酸ナトリウム0.38kg、クエン酸0.18kg、パプリカ抽出色素粉(あるいは調味唐辛子粉)0.8kg、精製塩1.00kg、変性澱粉1.60kg、キサンタンガム0.04kg、牛肉、豚肉、鶏肉のうち何れか1つの粉末またはエキス1.30kg、発酵食酢1.30kg、カプシカム0.01kg、エゴマ油0.3kg、炒め胡麻0.4kg、酒精0.6kg、グレープフルーツ抽出物0.03kgを使用した。
【0034】
前記牛肉、豚肉、鶏肉のうち何れか1つの粉末またはエキス1.30kgは、魚を含む海産物や、野菜類とキノコ類の粉末又はエキス1.30kgで置き換えてもよく、あるいは食肉に加えて海産物と野菜の粉末やエキスも混合して使うこともできる。」

ウ 甲3

3a「北海道 えびラーメン
味噌味 1箱(2食入り)東しゃこたん漁協謹製」(標題)

3b「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日 2013/7/17」

3c「原材料・成分
めん:小麦粉、卵白粉、食塩、小麦たん白、かんすい、クチナシ黄色素 スープ:味噌、だし(えび頭)、野菜(玉ねぎ、にんにく、生姜)、ポークエキス、砂糖、香味油、食塩、動物油脂、練りごま、ごま、アーモンド加工品、えび粉末、香辛料、調味料(アミノ酸等)、酒精、増粘剤(加工でん粉、キサンタンガム)、カラメル色素、酸味料、甘味料(甘草)、香料、(原材料の一部に小麦、ゼラチンを含む) えび:南蛮えび(北海道産)」(原材料・成分)

エ 甲4

4a「2012.12.06
世界の山ちゃん うま塩とり鍋の素」(標題)

4b「

」(裏面 写真)

オ 甲5

5a「ほどよくトロ?リ、モロヘイヤの中華風スープ レシピ・作り方
(写真省略)
モロヘイヤのネバネバを活かした簡単スープ。・・・」(標題 写真)

5b「 料理レシピ
材料(3人分)
モロヘイヤ 1/2束
桜海老粉 小さじ1
サラダ油 小さじ1
鶏ガラスープの素(顆粒) 小さじ1
水 600ccくらい
醤油 小さじ1
鷹の爪 少々
ジンジャーパウダー 少々
ごま油 小さじ1
白胡椒 少々 」(料理レシピ)

5c「作り方
□1 モロヘイヤは葉を摘んで除け、茎をみじん切りにします。
□2 鍋にサラダ油を加えて温め、小口切りした鷹の爪と、1のモロヘイヤの茎を加えてさっと炒めます。
□3 2に水を加え、鶏ガラスープの素、桜海老粉、ジンジャーパウダーを加え混ぜます。
□4 3が煮立って来たら、1で摘んだモロヘイヤの葉を千切りして加え、一煮立ちしたら、白胡椒、醤油で味を調えます。
□5 4の仕上げにごま油をたらして火を止めます。
温かいままでも美味しいですが、冷やしても美味しいですよ。」
(作り方)(審決注:□1?□5は、それぞれ1?5の□付き数字を表す。)

カ 甲6

6a「【請求項1】甲殻類、及び/又はその処理物、貝類、及び/又はその処理物、及び酒類及び/又は酒精含有発酵調味液を含有し、pHが3.0?7.0の範囲に調整され、かつ、加熱処理が施されていることを特徴とする調味料。」

6b「【0007】本発明でいう貝類はカキ類、ホタテ貝類、イガイ類、アサリ類、ハマグリ類、アカガイ類、ミルガイ類、アオヤギ類、バイ類、ツブ類、アワビ類、サザエ類の食用可能な貝類でありそれらの肉部、内臓部や貝柱等が利用でき、更に、それぞれ使用する部位や形態は特に限定されず、また、それらの生に限らず、加熱物、焙焼物、裁断物、粉砕物、自己消化物、抽出エキス等の処理物が利用できる。例えば具体的には、ホタテエキスが挙げられる。
・・・・・
【0013】また、カニ、エビ、ホタテ等の組織やエキス等と酒類及び/又は発酵調味液を混合するとタンパク質等のオリが発生することがある。これらオリの沈殿を防止するために、必要により増粘多糖類を用いることができる。本発明でいう増粘多糖類とは、食品に粘性をもたせる、食品中のタンパク質と電気的に結合しタンパク質の沈殿を防止する等品質の向上の目的で使用される添加物のことである。本発明で使用する増粘多糖類としては、食品の製造に一般に使用されている食品添加物及び食品素材が使用でき、例えばカラギーナン、寒天、ゼラチン、ジェランガム、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、デキストラン、アラビアガム、大豆食物繊維、海草抽出物類、デンプン等が挙げられるがこれらの単独又は組合せで使用することができ、また、これらの種類は特に限定されるものではない。増粘多糖類の使用濃度は種類により異なるが一般的に0.1?1.5w/v%の範囲で使用することができる。」

6c「【0020】実施例1
表1の配合でダシAを調製した。まず、8000リットル容のステンレス製タンクに2000リットルのイオン交換水を投入し、始めに酵母エキスを溶解させた。更に、酵母エキス以外の各エキスを順次溶解させた。次に、食塩、梅酢エキスの順に添加してかくはんし充分に溶解させた。別に用意した1000リットル容ステンレス製タンクで、キサンタンガムを95v/v%変性アルコール420リットルに分散させたものを用意し、これを、既にエキスが混合されている8000リットル容タンクへ送液し混合した。その後更に、イオン交換水を投入し全量を5000リットルに調整した。このときのpHは5.0であった。十分にかくはんした後プレートヒーターにより70℃、30秒加温後1000ml容のペットボトルに充てんし、続いて温水シャワーにより70℃、8分間保持した。これを冷却してダシA製品を得た。
【0021】
【表1】



キ 甲7

7a「【請求項1】予め油脂と水、増粘剤、不溶性粉末原料とを混合し、該混合物を粘度の低いソースと混合することを特徴とする低粘度ソースの製造法。
【請求項2】ソース粘度が50cp以下であることを特徴とする請求項(1)の低粘度ソースの製造法。
【請求項3】増粘剤がキサンタンガム又は馬鈴薯澱粉であることを特徴とする請求項(1)の低粘度ソースの製造法。」(特許請求の範囲 請求項1?3)

7b「本発明にいう低粘度ソースとしては、ドレッシング、ラーメンスープ、中華スープ等を例示することができるが、更に具体的に述べると、その粘度が50cp以下のものにおいて、本発明の効果がより顕著に現れる。尚、上記粘度値はB型粘度計で測定した場合の数値である。
こうした低粘度のソースに各種の香味付けをするために、各種香辛料粉末や乾燥野菜粉末等の不溶性粉末原料を添加するが、その添加にあたっては、予め該不溶性粉末原料を油脂、水、増粘剤と混合することが重要である。これにより、不溶性粉末原料は該混合物中に分散した状態で存在することになり、ソース底部に沈降するということがない。
使用し得る油脂としては、特に限定されず、各種動・植物性の油脂を使用することができる。更には、香味油を使用してもよく、これによりソースの香味付けをより効果的に実施することができる。また、増粘剤としては、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム等のガム類、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉等の澱粉類などが例示できるが、本発明の効果をより顕著に発揮させるためにはキサンタンガム、馬鈴薯澱粉を使用する方が好ましく、更には使用する量が少なくて済むという点からはキサンタンガムが最も好ましい。増粘剤の量としては、使用する増粘剤の種類によって異なるが、予め混合する水に対して0.5?3重量%の範囲で適宜決定すればよい。例えば、キサンタンガムの場合は0.3?0.6重量%程度、馬鈴薯澱粉の場合は2?3重量%程度である。」(3欄13?38行)

ク 甲8

8a「【請求項1】
キサンタンガムを0.05?5.0重量%及び固形具材を10?50重量%含有する調味ソース。
【請求項2】
キサンタンガムを0.05?5.0重量%及び未加熱の澱粉を10?50重量%含有する調味ソース。」

8b「【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、調理時に加水する固形具材入りの調味ソース、たとえば、パスタソース、中華あわせ調味料等、また未加熱の澱粉入り液体あんかけの素等の調味ソースに関するものである。また、加水せずに直接食材とからめて使用する固形具材入り調味ソース、たとえば、中華あわせ調味料、炒め物料理用の液状ソースに関するものである。
・・・・・
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明においては調理時に容易に水に分散、あるいは食材にからまる物性を保ったまま、固形具材及び未加熱の澱粉が均一に分散し、風味的にも優れた液状の調理食品を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決しようとする手段】
本発明は、特定量のキサンタンガムを用いることにより、上記問題を解決することができる調味ソースが得られるとの知見に基づいてなされたものである。キサンタンガムは一定した粘度を出すことができ、かつ粘度発現後の安定性も高いため、必要最小量の添加で最大の効果を引き出すことができる。澱粉を使用する場合、粘度にばらつきがある事と、α化した後の安定性がキサンタンガムほどよくない為、添加量を高目にする必要がでてくる。すなわち、本発明はキサンタンガムを0.05?5.0重量%、更に好ましくは0.1?0.5重量%含有し、固形具材あるいは未加熱の澱粉を10?50重量%含有することを特徴とする調味ソースを提供する。」

ケ 甲9

9a「【請求項1】
ストレート換算で、20℃における粘度が130?700cpとなるように粘度調整剤により粘度調整されていることを特徴とする、鍋物調理用調味料。
【請求項2】
鍋物調理時において、とろみを有していることを特徴とする請求項1に記載の鍋物調理用調味料。
【請求項3】
粘度調整剤が、キサンタンガム、加工澱粉、澱粉およびタマリンドガムのうちの少なくとも1種以上のものである、請求項1又は2に記載の鍋物調理用調味料。」

9b「【0008】
上記課題を解決するべく、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、予想外にも鍋物調理用調味料に、ある一定範囲の粘度となるように粘度調整剤を含有させることで、鍋物の長時間煮込みによる煮つまり現象(煮つまりによる味変化)を格段に抑えることができることを見出した。
また、粘度調整剤としては、キサンタンガム、加工澱粉、澱粉およびタマリンドガムのうち少なくともいずれかを用いると、煮つまり防止効果も安定していることを発明者らは見出した。
さらに、粘度調整剤として、キサンタンガム、加工澱粉および澱粉のうち少なくともいずれかを用いると、鍋物料理をした際の食感が良好(とろみの質が滑らか)であることを本発明者らは見出した。
・・・・・
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は、ストレート換算で、20℃における粘度が130?700cpとなるように粘度調整剤により粘度調整されていることを特徴とする、鍋物調理用調味料を提供するものである。
請求項2に記載の発明は、鍋物調理時において、とろみを有していることを特徴とする請求項1に記載の鍋物調理用調味料を提供するものである。
ここで「とろみ」とは、さらさらな水のような性状とは異なり一般に粘性があると感じる程度の性状のことであり、粘度で表現すると50cp以上、好ましくは100cp以上の性状のことである。
・・・・・
【0018】
本発明における粘度調整剤としては、キサンタンガム、加工澱粉、澱粉、タマリンドガム、寒天、ローカストビーンガム、ジェランガム、タラガム、カラギーナン、ペクチンなどの増粘剤を用いることができ、それぞれ単独で用いるだけでなく、2種類以上を併用することもできる。中でも、キサンタンガム、加工澱粉、澱粉、タマリンドガム、寒天、ローカストビーンガム、ジェランガム、タラガムなどのように、鍋物調理の際に高温にした場合でも粘性を保ちやすい粘度調整剤が好ましい。
特に、キサンタンガム、加工澱粉、澱粉は、鍋としての食感が良好(とろみの質が滑らか)である点本発明への適用が好ましく、さらにキサンタンガム、加工澱粉、澱粉、タマリンドガムの4つの粘度調整剤については、以下に記載するような有利な点を有するため本発明への適用が特に好ましい。」

9c「【0034】



(2)甲1に示された発明
甲1は、「ピリ辛!フカヒレスープ風味ラーメン」(1a)に関するものであって、このフカヒレスープ風味ラーメンの材料(1b)及び作り方(1c)が示され、このフカヒレスープ風味ラーメンを実際に製造したことが示されている(1a写真)。
このフカヒレスープ風味ラーメンのラーメンスープに着目すると、材料については、該材料(1b)のうち中華麺を除外した全材料を用い、作り方については、該作り方(1c)のうちラーメンスープを作る作り方(1、3、4)に沿って作ったといえる。
そうすると、フカヒレスープ風味ラーメンのラーメンスープに着目すると、甲1には、
「 材料(1人前)
緑豆春雨 15g
★干しホタテ(ほぐし) 大さじ1
★干し椎茸 小さいの1個
★干しキクラゲ 1個
★砂糖(てん菜糖) 小さじ1/2
★水 60cc
■干しエビ(粉末) 小さじ1
■丸とりだし(鶏ガラスープ)1パック(260g)
■生姜 薄切1枚
■ネギ(青いとこ) 適量
■水 140cc
■タケノコ 好きな量
■アバロンソース(またはオイスターソース)小さじ1
■XO醤 大さじ1
■ウェイパー 小さじ1
■紹興酒 大さじ1
◆薄口醤油 小さじ1
◆白胡椒 少々
◆塩 適量(今回は小さじ2/3くらい)
水溶き片栗粉 大さじ2(様子みて入れてね)
(ハート)青いもの(今回は香菜) 適量
(ハート)ネギ油 小さじ1/2 を用い、

1 緑豆春雨を水(分量外)でもどし、

3 ★の材料を全て[干しホタテ(ほぐし)大さじ1、干し椎茸 小さいの1個、干しキクラゲ1個、砂糖(てん菜糖)小さじ1/2、水60cc]耐熱のカップかボールに入れ、600wレンジで2分くらいチンし、

4 ■を全て[干しエビ(粉末)小さじ1、丸とりだし(鶏ガラスープ)1パック(260g)、生姜 薄切1枚、ネギ(青いとこ)適量、水140cc、タケノコ 好きな量、アバロンソース(またはオイスターソース)小さじ1、XO醤 大さじ1、ウェイパー 小さじ1、紹興酒 大さじ1]を鍋に入れ、灰汁を取りながら煮たら、1と3と◆[薄口醤油 小さじ1、白胡椒 少々、塩 適量(今回は小さじ2/3くらい)]を入れて更に煮込み、水溶き片栗粉でとろみをつける、
ことにより作られた、フカヒレスープ風味ラーメンスープ」
の発明(以下「甲1発明」という。)が示されていると認められる。

(3)対比・判断

ア 本件発明1について

(ア)甲1発明との対比

a 甲1発明の「干しエビ(粉末)」は、甲殻類に由来する粉末であるから、本件発明1の「甲殻類及び貝類のうちの少なくとも一方に由来する粉末」に相当する。

b 甲1発明の「ネギ油」は、本件発明1の「油脂」に相当する。

c 本件発明1の「加熱調理用液体調味料」について、本件特許明細書には「【0007】・・本発明の加熱調理用液体調味料は・・【0008】上記加熱調理用液体調味料(原液)は、希釈せずに使用するストレートタイプのものであってもよいし、適宜希釈して使用する希釈タイプのものであってもよい。」と記載されている。
そうすると、甲1発明の「フカヒレスープ風味ラーメンスープ」は、希釈せずに使用するストレートタイプの加熱調理用液体調味料といえるから、本件発明1の「加熱調理用液体調味料」に相当する。

d 甲1発明の「フカヒレスープ風味ラーメンスープ」は、「干しエビ(粉末)」及び「ネギ油」を含有する原料を用いて得られたものであるから、前記a?cで述べたことを踏まえると、本件発明1の「甲殻類及び貝類のうちの少なくとも一方に由来する粉末と、油脂と、を含有する原料を用いて得られた加熱調理用液体調味料」に相当する。

e 甲1発明の「水溶き片栗粉」は、増粘剤であり、甲1発明の「フカヒレスープ風味ラーメンスープ」は、この「水溶き片栗粉」を更に含有しているものであるから、本件発明1の「更に、増粘剤を含有しており」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「甲殻類及び貝類のうちの少なくとも一方に由来する粉末と、油脂と、を含有する原料を用いて得られた加熱調理用液体調味料であって、
更に、増粘剤を含有していることを特徴とする加熱調理用液体調味料」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:甲殻類及び貝類のうちの少なくとも一方に由来する粉末に含まれる窒素分の含有量が、本件発明1では、加熱調理用液体調味料中において、90?25000ppm(wt/wt)であるのに対し、甲1発明では明らかでない点

相違点2:増粘剤の種類と含有量が、本件発明1では、種類は、キサンタンガム及びペクチンから選ばれる少なくとも一種であり、その含有量は、加熱調理用液体調味料を100質量%とした場合に、0.06?0.35質量%であるのに対し、甲1発明では、種類は、水溶き片栗粉であり、その含有量は、加熱調理用液体調味料全量に対し大さじ2である点

相違点3:油脂の含有量が、本件発明1では、加熱調理用液体調味料を100質量%とした場合に、0.1?2.0質量%であるのに対し、甲1発明では、加熱調理用液体調味料全量に対し小さじ1/2である点

(イ)判断
相違点1について、甲1発明は、甲殻類及び貝類のうちの少なくとも一方に由来する粉末として「干しエビ(粉末)小さじ1」を用いており、甲1には、この「干しエビ(粉末)小さじ1」に含まれる窒素分の含有量が、フカヒレスープ風味ラーメンスープ中において、どのくらいの含有量[ppm(wt/wt)]であるのかについては示されていない。
また、甲2?9を参酌しても、甲1発明の「干しエビ(粉末)小さじ1」に含まれる窒素分の含有量が、甲1発明のフカヒレスープ風味ラーメンスープ中において、90?25000ppm(wt/wt)であるのか明らかでない。

仮に、特許異議申立人が主張するように、「干しエビ(粉末)小さじ1」量)がフカヒレスープ風味ラーメンスープ100質量部中において何質量部[(wt/wt)]であるのかを求めることができたとしても、その質量部[(wt/wt)]であると、「干しエビ(粉末)小さじ1」に含まれる窒素分の含有量が、甲1発明のフカヒレスープ風味ラーメンスープ中において、何ppm(wt/wt)であるのかについては、甲2?9を参酌しても明らかでない以上、甲1発明の「干しエビ(粉末)小さじ1」について、該粉末に含まれる窒素分の含有量が、加熱調理用液体調味料中において、90?25000ppm(wt/wt)」であるとは認められない。

一方、本件発明1に特定される「甲殻類及び貝類のうちの少なくとも一方に由来する粉末」「に含まれる窒素分の含有量は、加熱調理用液体調味料中において、90?25000ppm(wt/wt)」であることについて、本件特許明細書の実験例1?39の結果が示されている表1?表4(【0026】?【0029】)には、加熱調理用液体調味料が含有する原料として、甲殻類及び貝類のうちの少なくとも一方に由来する粉末を含有し、該粉末に含まれる窒素分の含有量が、加熱調理用液体調味料中において、90?2500ppmであることが明示されている。

また、甲1発明において、甲1発明の「干しエビ(粉末)」として、該粉末に含まれる窒素分の含有量が、加熱調理用液体調味料中において、90?25000ppm(wt/wt)」のものを適用しようという動機付けがあるものとも認められない。

したがって、相違点1は実質的な相違点でないとはいえず、また、甲2?9に示される発明を参酌しても、相違点1を当業者が容易に想到し得るとも認められないので、相違点2及び3を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1?9に示される発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
そして、本件発明1は、本件特許明細書に記載された、甲殻類・貝類の風味や味のびに優れ、甲殻類・貝類の味のびを更に強化することができるとともに、生臭みの度合いが低く、香味バランスに優れるという、顕著な効果を奏するものである。

(ウ)特許異議申立人の主張について

a 特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件特許明細書の表1(【0026】)に、「エビ粉末」に含まれる窒素分の含有量が、加熱調理用液体調味料100質量部中、エビ粉末0.08質量部の場合に窒素分量90ppmであり、エビ粉末25質量部の場合に窒素分量25000ppmであることが示されており、本件発明1における「エビ」「粉末に含まれる窒素分の含有量は、加熱調理用液体調味料中において、90?25000ppm(wt/wt)であ」るとは、エビ粉末の質量部としては加熱調理用液体調味料中約0.08?25質量部と解されることを利用し、甲1発明の「干しエビ(粉末)小さじ1」が、加熱調理用液体調味料であるフカヒレスープ風味ラーメンスープ100質量部中において「約0.3質量部」含まれ、明らかに0.08質量部以上であるので、甲1発明の「干しエビ(粉末)小さじ1」に含まれる窒素分の含有量は、加熱調理用液体調味料中において、90?25000ppm(wt/wt)の範囲内であり、相違点1は実質的な相違点ではない旨、主張している。

しかしながら、上記(イ)で検討したとおり、仮に、甲1発明の「干しエビ(粉末)小さじ1」が、フカヒレスープ風味ラーメンスープ100質量部中において「約0.3質量部」含まれるとしても、その「約0.3質量部」であると、「干しエビ(粉末)小さじ1」に含まれる窒素分の含有量が、甲1発明のフカヒレスープ風味ラーメンスープ中において、何ppm(wt/wt)であるのかは、甲2?9を参酌しても明らかでない以上、甲1発明の「干しエビ(粉末)小さじ1」について、該粉末に含まれる窒素分の含有量が、加熱調理用液体調味料中において、90?25000ppm(wt/wt)」であるとは認められない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

b 甲1、2、5に示された「周知発明1」について
特許異議申立人は、特許異議申立書の21頁1?6行において「「甲殻類等粉末と油脂と増粘剤を含有する原料を用いて得られる加熱調理用液体調味料において、該粉末に含まれる窒素分の含有量は、加熱調理用液体調味料中において、90?25000ppm(wt/wt)であり、前記油脂の含有量は、加熱調理用液体調味料を100質量%とした場合に、0.1?2.0質量%である加熱調理用液体調味料」は、甲第1、2及び5号証にも示されているように本件出願前既に周知であったから、「周知発明1」と認定し、本件発明1?3は、周知発明1及び甲1?9に示される発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨、主張している。

しかしながら、甲1、2及び5いずれにも、甲殻類等粉末と油脂と増粘剤を含有する原料を用いて得られる加熱調理用液体調味料において「該粉末に含まれる窒素分の含有量は、加熱調理用液体調味料中において、90?25000ppm(wt/wt)」という技術的特徴を有するものは示されておらず、甲1?9を参酌しても、前記「周知発明1」が周知技術であるとは認められない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

イ 本件発明2及び3について
請求項1を引用する本件発明2及び3も、本件発明1と同じく、甲1発明に対して相違点1を有し、上記アに記載したとおり、相違点1が実質的な相違点ではないとはいえず、また、甲2?9に示される発明を参酌しても、相違点1を当業者が容易に想到し得るとも認められないので、相違点2及び3を検討するまでもなく、本件発明2及び3も、甲1?9に示される発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものではなく、顕著な効果を奏するものである。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明1?3は、甲1?9に示された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 理由2について
特許異議申立人は、特許権者が、平成30年7月5日提出の意見書において、本件特許明細書の表1、表2及び表4(【0026】、【0027】、【0029】)の実験例1?23及び実験例32?39における、キサンタンガムの含有量が[0.6]という記載は、[0.06]の間違えであると主張しているが、錯誤が認められるためには、本件特許明細書の他の記載との整合性を有することが前提であるところ、「実験例2と実験例16」と「実験例26」とは、加熱調理用液体調味料の配合が同一であるにも関わらず、前者と後者では、粘度も評価も異なるから、該[0.6]という記載が[0.06]の間違えであるとは認められず、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない旨、主張している。

しかしながら、たとえ、該[0.6]という記載が[0.06]の間違えであると認められないとしても、本件特許明細書の表3(【0028】)には、この記載がなされている実験例1?23及び実験例32?39‘以外’の実験例である、実験例26?29及び31において、増粘剤の種類が、キサンタンガム又はペクチンであって、その含有量が、加熱調理用液体調味料を100質量%とした場合に、0.06?0.35質量%である、加熱調理用液体調味料が実施され、それらは本件発明の効果(【0006】)を奏していることが確認されていることから、本件発明1並びに本件発明1を直接引用して特定されている本件発明2及び3を実施するには、当業者に通常期待される程度を超える過度の試行錯誤を強いるものとはいえず、当業者がその実施をすることができるものといえる。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている。
よって、特許異議申立人の主張する理由2は理由がない。

3 理由3について
特許異議申立人は、本件発明1の「前記増粘剤は、キサンタンガム及びペクチンから選ばれる少なくとも一種を含み」「前記増粘剤の含有量は、加熱調理用液体調味料を100質量%とした場合に、0.06?0.35質量%である」について、一般に、増粘剤の粘度はその種類によって使用量が異なるから、本件発明1の「前記増粘剤は、キサンタンガム及びペクチンから選ばれる少なくとも一種を含み」「前記増粘剤の含有量は、加熱調理用液体調味料を100質量%とした場合に、0.06?0.35質量%である」という範囲には、粘度が特定の範囲外のものが包含され、そのようなものであっても課題を解決できるかどうかは不明であるから、本件発明1並びに本件発明1を直接引用して特定されている本件発明2及び3は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない旨、主張している。

しかしながら、本件発明1?3は、粘度が特定されている発明ではない。
そして、発明の詳細な説明の記載[特に、実験例25?29及び31の実験結果(表3【0028】)]より、「前記増粘剤は、キサンタンガム及びペクチンから選ばれる少なくとも一種を含み」「前記増粘剤の含有量は、加熱調理用液体調味料を100質量%とした場合に、0.06?0.35質量%であ」れば、甲殻類・貝類の風味や味伸びに優れるとともに、生臭みの度合いが低く、香味バランスに優れた嗜好性の高い加熱調理用液体調味料を提供できるという本件発明の課題(【0004】)を解決できることを合理的に理解できる。
したがって、特許異議申立人の主張する理由3は理由がない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-08-21 
出願番号 特願2014-138073(P2014-138073)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (A23L)
P 1 651・ 537- Y (A23L)
P 1 651・ 121- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小林 薫  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 齊藤 真由美
中島 芳人
登録日 2018-11-02 
登録番号 特許第6425928号(P6425928)
権利者 株式会社Mizkan Holdings 株式会社Mizkan
発明の名称 加熱調理用液体調味料  
代理人 小島 清路  
代理人 平岩 康幸  
代理人 小島 清路  
代理人 平岩 康幸  
代理人 鈴木 勝雅  
代理人 鈴木 勝雅  

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