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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1355195
審判番号 不服2017-14420  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-29 
確定日 2019-09-11 
事件の表示 特願2015-526748「アクティブなチャネル状態情報基準信号(CSI-RS)構成を示すための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月20日国際公開、WO2014/028346、平成27年 8月24日国内公表、特表2015-524641〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年(平成25年)8月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年8月13日 米国、2013年3月14日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 7月15日 手続補正書の提出
平成28年10月31日 手続補正書の提出
平成29年 1月31日付け 拒絶理由通知書
平成29年 5月 8日 意見書及び手続補正書の提出
平成29年 5月18日付け 拒絶査定
平成29年 9月29日 拒絶査定不服審判の請求及び手続補正書の提出
平成30年10月23日付け 拒絶理由通知書(当審)
平成31年 1月30日 意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明
平成31年1月30日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
ユーザ機器(UE)によって、アクティブなセルの制御チャネルを監視することと、ここにおいて、前記UEは、前記アクティブなセルにおける少なくとも1つの他のUEのアクティブなチャネル状態情報基準信号(CSI-RS)構成を示すための第2のシグナリングを、前記制御チャネルを介して、前記アクティブなセルから受信するように構成される、
前記UEのために構成された複数のCSI-RS構成を示す第1のシグナリングを受信することと、ここにおいて、前記複数のCSI-RS構成は、CSI-RS構成の少なくとも2つのセットを備え、前記CSI-RS構成の少なくとも2つのセットの各セットは、1つまたは複数のそれぞれのCSI-RS構成を含み、
前記制御チャネルを介して、前記UEのためのCSI-RS構成の少なくとも1つのアクティブなセットを示す第2のシグナリングを受信することと、前記CSI-RS構成の少なくとも1つのアクティブなセットは、前記UEのために構成された前記複数のCSI-RS構成の少なくとも1つの前記セットを含む、
前記UEによって、前記少なくとも1つの他のUEの前記アクティブなCSI-RS構成に基づいて、および前記第2のシグナリングによって示される前記CSI-RS構成の少なくとも1つのアクティブなセットに基づいて、1つまたは複数の第1のサブフレームのための最適化されたディレートマッチングプロセスを実行することと、
を備え、
異なるCSI-RSタイプのCSI-RS構成は、前記ディレートマッチングのために異なってシグナリングされ、各CSI-RSタイプは異なる目的に関連付けられる、ワイヤレス通信のための方法。」
(以下「本願発明」という。下線は、前記手続補正書による補正箇所を示す。)

第3 当審の拒絶理由通知書の概要
当審の拒絶理由である、平成30年10月23日付け拒絶理由通知の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、概略、次のとおりのものである。「1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(以下略) 」
というものである。
ここで、理由1,2についての請求項1に関する具体的内容(抜粋)は以下のとおりである。

「第1 理由1(サポート要件)、理由2(明確性)について
・請求項1-19,20-55について
1
(中略)
2
請求項1の「他のUEによって監視されるチャネル状態情報基準信号(CSI-RS)を説明するためのCSI-RS構成を示すための第1のシグナリング」との記載と「前記UEのために構成された複数のCSI-RS構成を示す前記第1のシグナリング」との記載における「第1のシグナリング」は文言上同じものを示すとも解される。しかしながら、前記「第1のシグナリング」をさらに特定する、「他のUEによって監視されるチャネル状態情報基準信号(CSI-RS)を説明するためのCSI-RS構成を示すための」との記載と「前記UEのために構成された複数のCSI-RS構成を示す」との記載は技術的にそれぞれ異なる事項を特定していることから、不明確である。(明確性)
(中略)
3
請求項1において「セット」との用語が用いられているが、発明の詳細な説明には、「セット」の他に類似の概念の用語として「サブセット」、「グループ」、「タイプ」との用語が存在し、請求項1における前記「セット」と発明の詳細な説明の前記用語との対応関係が不明である。(サポート要件)
さらに、請求項1における「セット」との用語の定義も不明なものとなっている。(明確性)
よって、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものでない。また、請求項1に係る発明は明確でない。」

第4 本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。(なお、下線は、当審が付与した。)
「【0035】
[0040] UEは、無線リソース制御(RRC)シグナリングのような上位レイヤシグナリングを介してCSI-RS構成の1つまたは複数のセットで構成されうる。CSI-RS構成の異なるセットは、異なる目的にかなう(serve)ように指定されることができ(designated)、異なる目的は、UEによって実行される異なる通信タスクと関連付けられることができる。UEは、所与の目的のための1つまたは複数のCSI-RS構成で構成されうる。例えば、UEは、CSIフィードバック、協調された(Coordinated)マルチポイント(CoMP)セット管理、無線リンク管理/無線リソース管理(RLM/RRM)等のような目的のための複数のCSI-RS構成で構成されうる。CSIフィードバックは、UEからセルへのCSIの報告を参照しうる。CSIは、チャネル品質インジケータ(CQI)、プリコーディング行列インジケータ(PMI)、ランクインジケータ(RI:rank indicator)等を含みうる。CoMPセット管理は、UEへのCoMP送信に関与(participate)できるセルのセットの管理を参照しうる。RLM/RRMは、ダウンリンクおよび/またはアップリンク上でUEにサービス提供するために選択されることができるセルのセットの管理を参照しうる。UEは、異なる時々において、そのCSI-RS構成の異なるものを使用しうる。CSI-RS構成の使用は、本開示にしたがって、半静的(semi-statically)、または動的にさえ(even)変化(change)しうる。」

「【0037】
[0042] CSI-RS構成は、非ゼロ電力(non-zero-power)送信またはゼロ電力(zero-power)送信と関連付けられうる。例えば、UEは、CSIフィードバックに関連するチャネル測定のための非ゼロ電力CSI-RS構成の第1のセットで構成されうる。UEはまた、(i)干渉測定の目的のためのゼロ電力CSI-RS構成の第2のセットと、(ii)そのCSIフィードバックのために第2のUEによって監視される(monitored)CSI-RSを説明する(account for)ためのゼロ電力CSI-RS構成の第3のセットで構成されうる。」

「【0052】
[0057] シグナリングは、所与のUEのためのアクティブなCSI-RS構成を示すために、さまざまな方法で送られうる。一例において、アクティブなCSI-RS構成を示すユニキャストシグナリングは、具体的にはUEに送られうる。ユニキャストシグナリングは、(i)1つまたは複数のイベントによってトリガされる場合、例えば、UEのためのアクティブなCSI-RS構成において変化がある場合、または(ii)定期的に、例えば、X個のサブフレーム毎に、または(iii)CSI-RSの送信の前に、またはそれと同時に、送られうる。別の例において、アクティブなCSI-RS構成を示すマルチキャストシグナリングは、アクティブなCSI-RS構成によって影響を受けることがある(例えば、同一のセルの中の)UEのグループに送られうる。UEのグループは、アクティブなCSI-RS構成を示すシグナリングについて、(例えば、LTEにおけるPDCCH上で送られたDCI 3/3Aグループ電力制御と同様に)マルチキャスト/グループキャストのチャネルを監視し、このシグナリングに基づいて、ディレートマッチングおよび/または他の通信タスクを実行しうる。さらに別の例において、アクティブなCSI-RS構成を示すブロードキャストのシグナリングは、セルにおけるすべてのUEに送られうる。セルにおけるすべてのUEは、アクティブなCSI-RS構成を示すシグナリングについて、ブロードキャストチャネルを監視しうる。シグナリングは、定期的に、例えば、X個のサブフレーム毎にブロードキャストされることがあり、ここで、Xは、任意の整数値でありうる。」

「【0057】
[0062] UEは、さまざまな方法でCSI-RSを考慮に入れることによって、ディレートマッチングを実行しうる。一例において、UEは、アクティブなCSI-RS構成のみのためにディレートマッチングを実行し、非アクティブなCSI-RS構成のためにはディレートマッチングを実行しないことがありうる。別の例において、UEは、CSI-RSタイプに依存するディレートマッチングを実行しうる。各CSI-RSタイプは、異なる目的に関連付けられうる。例えば、UEは、CSIフィードバックのためのCSI-RS構成の1つまたは複数のセット、CoMPセット管理のためのCSI-RS構成の1つまたは複数のセット、RLM/RRMのためのCSI-RS構成の1つまたは複数のセット、ゼロ電力CSI-RS構成の1つまたは複数のセット、非ゼロ電力CSI-RS構成の1つまたは複数のセット等で構成されうる。異なるタイプのCSI-RS構成は、ディレートマッチングのために異なって(differently)シグナリングされ、および/または、対処され(handled)うる。例えば、UEは、CSIフィードバックおよびCoMPセット管理のためのCSI-RS構成のためのディレートマッチングを実行することがあり、RLM/RRMのためのCSI-RS構成のためのディレートマッチングは実行しないことがありうる。」

「【0075】
[0080] 一例において、UEは、複数のCSI-RS構成のCSI-RSタイプを決定しうる。UEは、第1のCSI-RSタイプのCSI-RS構成を考慮し、第2のCSI-RSタイプのCSI-RS構成を考慮しないことによって通信タスク(例えば、ディレートマッチング)を実行しうる。」

「【0082】
[0087] 一例において、セルは、複数のCSI-RS構成のCSI-RSタイプを決定しうる。セルは、第1のCSI-RSタイプのCSI-RS構成に基づき、第2のCSI-RSタイプのCSI-RS構成には基づかずに通信タスク(例えば、レートマッチング)を実行しうる。」

第5 当審の判断
1 当審拒絶理由「第1 2」について
平成31年1月30日付けの手続補正書による補正により、請求項1の「第1のシグナリング」が「第2のシグナリング」に補正された。
これにより、請求項1の「前記UEは、前記アクティブなセルにおける少なくとも1つの他のUEのアクティブなチャネル状態情報基準信号(CSI-RS)構成を示すための第2のシグナリングを、前記制御チャネルを介して、前記アクティブなセルから受信するように構成される」との発明特定事項における「第2のシグナリング」と、「前記制御チャネルを介して、前記UEのためのCSI-RS構成の少なくとも1つのアクティブなセットを示す第2のシグナリングを受信することと」との発明特定事項における「第2のシグナリング」とは、文言上、同じものを意味すると解される。
ここで、後者の「前記制御チャネルを介して、前記UEのためのCSI-RS構成の少なくとも1つのアクティブなセットを示す第2のシグナリングを受信すること」は、前記された「前記UEのために構成された複数のCSI-RS構成を示す第1のシグナリングを受信することと、ここにおいて、前記複数のCSI-RS構成は、CSI-RS構成の少なくとも2つのセットを備え、前記CSI-RS構成の少なくとも2つのセットの各セットは、1つまたは複数のそれぞれのCSI-RS構成を含み」との発明特定事項を受けたものであり、第1のシグナリングで受信した「CSI-RS構成」のセットの中から、「少なくとも1つのアクティブなセットを示す」、「第2のシグナリング」を受信することを意味すると解される。
一方、前者の「ユーザ機器(UE)によって、アクティブなセルの制御チャネルを監視することと、ここにおいて、前記UEは、前記アクティブなセルにおける少なくとも1つの他のUEのアクティブなチャネル状態情報基準信号(CSI-RS)構成を示すための第2のシグナリングを、前記制御チャネルを介して、前記アクティブなセルから受信するように構成される」との記載からは、第2のシグナリングは「前記アクティブなセルにおける少なくとも1つの他のUEのアクティブなチャネル状態情報基準信号(CSI-RS)構成を示す」ものであり、「他のUE」ではなく「前記UEのために構成された複数のCSI-RS構成を示す第1のシグナリング」とは関係のないものである。すなわち、前者及び後者の記載における「第2のシグナリング」は「第1のシグナリング」、「UE」、及び、「他のUE」との関係において、技術的に大きく異なるものと解される。してみれば、前者及び後者の記載は、それぞれ同じ「第2のシグナリング」に異なる定義を付すものであるから、「第2のシグナリング」の技術的意味が不明確になっている。
したがって、上記補正によっても依然として当審拒絶理由「第1 2」は解消されておらず、請求項1に係る発明は明確でない。

2 当審拒絶理由「第1 3」について
請求項1においては、「前記CSI-RS構成の少なくとも2つのセット」等の「セット」との用語、及び、「CSI-RSタイプ」との用語が用いられている。ここで、発明の詳細な説明の【0057】の「各CSI-RSタイプは、異なる目的に関連付けられうる。例えば、UEは、CSIフィードバックのためのCSI-RS構成の1つまたは複数のセット、CoMPセット管理のためのCSI-RS構成の1つまたは複数のセット、RLM/RRMのためのCSI-RS構成の1つまたは複数のセット、ゼロ電力CSI-RS構成の1つまたは複数のセット、非ゼロ電力CSI-RS構成の1つまたは複数のセット等で構成されうる。」との記載、及び、請求項1の「各CSI-RSタイプは異なる目的に関連付けられる」との記載から、「タイプ」は目的に関連付けられた概念と解される。一方、「セット」との用語については、発明の詳細な説明では特段定義されていないところ、段落【0035】では「CSI-RS構成の異なるセットは、異なる目的にかなう(serve)ように指定されることができ(designated)、異なる目的は、UEによって実行される異なる通信タスクと関連付けられることができる。」と「タイプ」に類似する概念の用語として用いられる一方、請求項1及び【0057】(【0037】)では、「タイプ」とは使い分けられており、両者はそれぞれ異なる概念のものとも解される。してみれば、請求項1及び発明の詳細な説明に記載された「セット」との用語は不統一であり、その結果、両者の対応関係が不明瞭となっている。(サポート要件)
さらに、前記のとおり、「セット」及び「タイプ」との用語の関係は、請求項1、及び、発明の詳細な説明で明確に特定されていないため、請求項1の「CSI-RSタイプ」との用語との関係において、「CSI-RS構成」の「セット」との用語はその技術的意味が不明確となっている。特に、「異なるCSI-RSタイプのCSI-RS構成は、前記ディレートマッチングのために異なってシグナリングされ、各CSI-RSタイプは異なる目的に関連付けられる」との記載との関係において、「CSI-RS構成」の「セット」と「CSI-RSタイプ」の関係が明らかでないため、請求項1に係る発明を明確に把握できない。(明確性)
したがって、上記補正によっても依然として当審拒絶理由「第1 3」は解消されておらず、請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものではなく、また、明確でない。

以上のとおり、本件補正による請求項1の記載は、依然として特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満していない。

(3)請求人の主張について
平成31年1月30日提出の意見書により審判請求人は、
「理由1(1)、理由1(2)、理由1(3)、理由2(1)に対して、審判請求人は、上記「2.補正の説明」の(1)のとおりに補正しました。
この補正の根拠は、例えば本願当初の明細書の段落[0038][0041][0052]の記載です。
よって、この補正は本願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載に基づくものであり、新規事項を追加したものではありません。
また、この補正は、発明の特別な技術的特徴を変更するものではなく、特許法第17条の2第4項の要件を満たすものです。
補正後の請求項に係る発明は、明確であり、発明の詳細な説明に記載されています。
この補正により、理由1(1)、理由1(2)、理由1(3)、理由2(1)は解消したものと思料いたします。」
と主張している。
しかしながら、前記1、2のとおりであって、前記審判請求人の主張にはこれを覆す具体的根拠は認められず、当審拒絶理由の理由1,2のうち前記1、2で指摘した点は、依然として解消していない。

第6 むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第6項第1項及び第2号に規定する要件を満していない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-04-02 
結審通知日 2019-04-09 
審決日 2019-04-24 
出願番号 特願2015-526748(P2015-526748)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深津 始  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 岩間 直純
倉本 敦史
発明の名称 アクティブなチャネル状態情報基準信号(CSI-RS)構成を示すための方法および装置  
代理人 岡田 貴志  
代理人 井関 守三  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  

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