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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23K 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F23K |
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管理番号 | 1355376 |
審判番号 | 不服2018-12830 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-09-27 |
確定日 | 2019-09-19 |
事件の表示 | 特願2015- 66807「搬送装置及びガス逆流抑制方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月27日出願公開、特開2016-186395〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年3月27日の出願であって、平成30年4月19日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年6月21日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年6月28日付け(発送日:平成30年7月3日)で拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年9月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成30年9月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年9月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 燃焼炉へ燃料を供給するための搬送路を備えた搬送装置において、 気体を供給して前記搬送路内の圧力を高めることで前記燃焼炉側からのガスの逆流を抑制する圧力状態調整部と、 前記圧力状態調整部より前記搬送路の下流側において当該搬送路へ気体を供給するガス逆流抑制部と、を備えたことを特徴とする搬送装置。」 から、 「【請求項1】 燃焼炉へ燃料を供給するための搬送路を備えた搬送装置において、 気体を供給して前記搬送路内の圧力を大気圧よりも高めることで前記燃焼炉側からのガスの逆流を抑制する圧力状態調整部と、 前記圧力状態調整部より前記搬送路の下流側において当該搬送路へ気体を供給するガス逆流抑制部と、を備えたことを特徴とする搬送装置。」 に補正された(下線は、補正箇所を明示するために請求人が付したものである。)。 2 補正の目的及び新規事項について 本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「圧力状態調整部」に関して、搬送路内の圧力を「大気圧よりも」高めると限定するものであって、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件補正は、本願の願書の最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面における段落【0028】等の記載に基づくものであるから、新規事項を追加するものではない。 3 独立特許要件について そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (1)引用例1 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2004-144387号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付したものである。以下同様。)。 (1-a)「【0009】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上記した手段と異なる手段を用いて、燃料を流動層燃焼炉に供給する際に燃料に含まれる溶融性材料が溶融して燃料シュートの壁部に付着することによる燃料シュートの閉塞を経済的な手段により防止し、円滑な燃料供給を図ることを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため、本発明は、燃料12と流動媒体11とを流動化させて燃焼させる流動層燃焼炉1と、該流動層燃焼炉の壁部に接続された燃料シュート5と、該燃料シュートの上部に設けられ該燃料シュートを介して前記流動層燃焼炉の内部へ燃料を供給する燃料供給部3と、前記流動層燃焼炉の底部に設けられた空気ノズル2を通して該流動層燃焼炉の内部に一次燃焼用空気を供給するとともにこの一次燃焼用空気により前記流動媒体を吹き上げる一次燃焼用空気供給部4と、前記燃料シュート5の上流部に設けられ二次燃焼用空気を該燃料シュートの内部に燃料を供給する二次燃焼用空気供給部6と、を備えたことを特徴とする流動層ボイラである。 【0011】 上記構成によれば、燃料シュート5に設けられた二次燃焼用空気供給部6により供給される燃焼用空気が、燃料シュート5を通過して流動層燃焼炉1に到達する途中で燃料シュート5を冷却するため燃料シュート5の温度上昇を抑制できる。従って、燃料12に溶融性材料が含まれている場合でも、燃料シュート5の温度上昇による溶融性材料の溶融を防止し、溶融付着の進行による燃料シュート5の閉塞を防止することができる。また、二次燃焼用空気供給部6から供給される燃焼用空気の風圧により、流動層燃焼炉1で発生する高温ガスが燃料シュート5の開口部51から流入し燃料供給部へ進入するのを防止することができる。これにより円滑な燃料供給を図ることができる。 【0012】 また、本発明の好ましい実施形態によれば、前記燃料シュート5は、その上流部に二次燃焼用空気を該燃料シュートの内部に供給する二次燃焼用空気供給部と、前記燃料供給部の下部に垂直に接続された垂直部と、該垂直部下端から傾斜して前記流動層燃焼炉に接続された傾斜部とを有し、前記垂直部と該傾斜部との連結部に二次燃焼用空気供給部を備えたことを特徴とする流動層ボイラが提供される。 【0013】 上記構成によれば、燃料シュート5の上流部および垂直部5aと傾斜部5bとの連結部5cに設けられた二次燃焼用空気供給部6から供給される二次燃焼用空気により燃料シュート5の冷却性能をより向上させ、燃料に含まれる溶融性材料の溶融を確実に防止することにより溶融付着による燃焼シュートの閉塞を防止することができる。 ・・・ 【0015】 図1は本発明を実施する流動層ボイラの構成を示す図であり、流動層燃焼炉1の底部には空気ノズル2が設けられ、この空気ノズル2は送風機10から送り込まれてくる燃焼用空気を流動層燃焼炉1の内部へ吹き出すようになっており、この吹き出された燃焼用空気により流動媒体を流動化させるようになっている。燃料バンカ31には燃料となる都市ゴミ、産業廃棄物、汚泥、石炭、RDF等が収容される。燃料バンカ31の下部には燃料を燃料シュート5に搬送するスクリューフィーダ32が接続されている。スクリューフィーダ32の下部には燃料を流動層ボイラに供給する燃料シュート5が接続されている。図中33はロータリーフィーダであり流動層燃焼炉から燃料シュートへ流入してくる高温ガスがスクリューフィーダ32に進入するのを防止するものである。」 (1-b)「【0018】 図2(a)は燃料シュート5の上流部に設けられた二次燃焼用空気供給部6の構造を示した図であり、燃料シュート6の外周には二次燃焼用空気供給部材61が設けられ、二次燃焼用空気供給部材61の下端部にはこの二次燃焼用空気供給部材61と燃料シュート5を連通する空気供給口62が設けられている。二次燃焼用空気供給部6には二次空気ライン14が接続され、前述した送風機10からこの二次空気ライン14を介して二次燃焼用空気を二次燃焼用空気供給部6に供給する。二次燃焼用空気供給部材は、円筒形をなす燃料シュート5より大径の円筒形部材からなり、二次空気ライン14から送り込まれる二次空気は、二次燃焼用空気供給部材61の内部を通り空気供給口62から燃料シュート5へ流入する。これにより、燃料シュート5に流入した二次燃焼用空気は、燃料シュート5を通過して流動層燃焼炉1に到達する途中で燃料シュート5を冷却するため、燃料シュート5の温度上昇を抑制できる。従って、燃料12に溶融性材料が含まれている場合でも、燃料シュート5の温度上昇による溶融性材料の溶融を防止し、溶融付着の進行による燃料シュート5の閉塞を防止することができる。また、二次空気は前述した送風機10から二次空気ラインを介して二次燃焼用空気供給部6に供給するため、水冷による冷却手段のように新たな設備を設ける必要がなく経済的である。 【0019】 二次燃焼用空気供給部材61の下端部は空気供給口62に連通しており、その径は燃料シュート5の下流側に向かって絞り込むように形成されているため、二次燃焼用空気は燃料シュート5の下流側に向かって流入する。これにより、二次燃焼用空気の風圧により、流動層燃焼炉1で発生する高温ガスが燃料シュート5の開口部51から流入しロータリーフィーダ33へ進入するのを防止することができる。 【0020】 図2(b)は、燃料供給部3の下部に垂直に接続された垂直部5aと、この垂直部5aの下端から傾斜して流動層燃焼炉1に接続された傾斜部5bとを有する燃料シュート5において、垂直部5aと傾斜部5bとの連結部5cに設けられた二次燃焼用空気供給部6の構造を示す図である。二次燃焼用空気供給部6は燃料シュート5の内部に燃焼用空気を送り込むものであり、垂直部5aの下端側方で傾斜部5bの延長線上に設置されている。二次燃焼用空気供給部6は二次空気ライン14に接続されており、送風機10から送り込まれる燃焼用空気は二次空気ライン14を介して二次燃焼用空気供給部6に二次燃焼用空気を供給する。二次燃焼用空気供給部6と燃料シュート5とを連通する空気供給口62は、燃料12が燃料シュート5を通過するときに燃料シュート5の壁部と接触する面を二次燃焼用空気で冷却できるよう燃料シュート5の壁部と段差のない位置に設けられている。 【0021】 このように二次燃焼用空気供給部6を構成することにより、二次燃焼用空気が燃料シュート5の壁部を這うように進行するため、燃料シュート下部に進入した燃料はこの二次燃焼用空気に乗るような状態で燃料シュート5の内部を移動するとともに、燃料シュート5を通過し流動層燃焼炉1の内部に到達する途中で燃焼シュート5を冷却し、燃料に含まれる溶融性材料の溶融を防止することができる。これにより、円滑な燃料供給を図ることが可能となる。また、二次燃焼用空気は前述した送風機10から二次空気ライン14を介して二次燃焼用空気供給部6に供給するため、水冷による冷却手段のように新たな設備を設ける必要がなく経済的である。 【0022】 また、上述した燃料シュート5の上流部又は連結部5cに設けた二次燃焼用空気供給部6と同様のものを燃料シュート5の上流部及び連結部5cに設けることも可能であり、二箇所からの二次燃焼用空気の供給により、燃料シュート5の冷却性能をより向上させることができる。」 (1-c)「 」 (1-d)段落【0010】には、「該流動層燃焼炉の壁部に接続された燃料シュート5と、・・・前記燃料シュート5の上流部に設けられ二次燃焼用空気を該燃料シュートの内部に燃料を供給する二次燃焼用空気供給部6と、を備えたことを特徴とする流動層ボイラ」と記載され、段落【0012】には、「垂直部と該傾斜部との連結部に二次燃焼用空気供給部を備えたことを特徴とする流動層ボイラ」と記載されているから、燃料シュート5と、燃料シュート5の上流部に設けられた二次燃焼用空気供給部6と、垂直部5aと傾斜部5bとの連結部5cに設けられた二次燃焼用空気供給部6とを備えたものを「流動層ボイラの構造」ということができる。 (1-e)図1から、燃料シュート5の垂直部と傾斜部との連結部に設けられた二次燃焼用空気供給部6は、燃料シュート5の上流部に設けられた二次燃焼用空気供給部6よりも下流にある点、ロータリーフィーダ33が燃料シュート5の上部に設けらている点が把握できる。 上記(1-a)?(1-e)の事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。 「流動層燃焼炉1の壁部に接続され、流動層燃焼炉1の内部へ燃料を供給する燃料シュート5を備えた流動層ボイラの構造において、 燃料シュート5の上流部に設けられた二次燃焼用空気供給部6と、 燃料シュート5の垂直部5aと傾斜部5bとの連結部5cに設けられた二次燃焼用空気供給部6と、 燃料シュート5の上部に設けられたロータリーフィーダ33とを備え、 燃料シュート5の連結部5cに設けられた二次燃焼用空気供給部6は、燃料シュート5の上流部に設けられた二次燃焼用空気供給部6よりも下流に設けられ、 燃料シュート5の上流部に設けられた二次燃焼用空気供給部6から供給される燃焼用空気の風圧により、流動層燃焼炉1で発生する高温ガスが燃料シュート5の開口部51から流入するのを防止することができ、 燃料シュート5の連結部5cに設けられた二次燃焼用空気供給部6から供給される燃焼用空気は、燃料シュート5を通過し、流動層燃焼炉1の内部に到達するものである流動層ボイラの構造。」 (2)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「流動層燃焼炉1」、「燃料シュート5」は、それぞれ、本願補正発明の「燃焼炉」、「搬送路」に相当する。 よって、引用発明の「流動層燃焼炉1の壁部に接続され、流動層燃焼炉1の内部へ燃料を供給する燃料シュート5を備えた流動層ボイラの構造」は、本願補正発明の「燃焼炉へ燃料を供給するための搬送路を備えた搬送装置」に相当する。 イ 引用発明の「燃料シュート5の上流部に設けられた二次燃焼用空気供給部6から供給される燃焼用空気の風圧により、流動層燃焼炉1で発生する高温ガスが燃料シュート5の開口部51から流入し燃料供給部へ進入するのを防止することができ」る、「燃料シュート5の上流部に設けられた二次燃焼用空気供給部6」と、本願補正発明の「気体を供給して前記搬送路内の圧力を大気圧よりも高めることで前記燃焼炉側からのガスの逆流を抑制する圧力状態調整部」とは、「気体を供給して前記燃焼炉側からのガスの逆流を抑制する部材」である点で共通する。 ウ 引用発明において「燃料シュート5の連結部5cに設けられた二次燃焼用空気供給部6は、燃料シュート5の上流部に設けられた二次燃焼用空気供給部6よりも下流に設けられ」たものである。 また、引用発明の「燃料シュート5の連結部5cに設けられた二次燃焼用空気供給部6」から供給される空気は、「燃料シュート5を通過」するから、燃料シュート5に空気を供給するものといえる。 よって、引用発明の「燃料シュート5の連結部5cに設けられた二次燃焼用空気供給部6は、燃料シュート5の上流部に設けられた二次燃焼用空気供給部6よりも下流に設けられ」、「燃料シュート5の連結部5cに設けた二次燃焼用空気供給部6から供給される燃焼用空気は、燃料シュート5を通過し、流動層燃焼炉内部に到達するものである」、「燃料シュート5の垂直部5aと傾斜部5bとの連結部5cに設けられた二次燃焼用空気供給部6」と、本願補正発明の「前記圧力状態調整部より前記搬送路の下流側において当該搬送路へ気体を供給するガス逆流抑制部」とは、「前記燃焼炉側からのガスの逆流を抑制する部材より前記搬送路の下流側において当該搬送路へ気体を供給する部材」である点で共通する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、 「燃焼炉へ燃料を供給するための搬送路を備えた搬送装置において、 気体を供給して前記燃焼炉側からのガスの逆流を抑制する部材と、 前記燃焼炉側からのガスの逆流を抑制する部材より前記搬送路の下流側において当該搬送路へ気体を供給する部材と、を備えた搬送装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 燃焼炉側からのガスの逆流を抑制する部材に関して、本願補正発明では、「気体を供給して前記搬送路内の圧力を大気圧よりも高める」「圧力状態調整部」であるのに対して、引用発明では、「供給される燃焼用空気の風圧により、流動層燃焼炉1で発生する高温ガスが燃料シュート5の開口部51から流入するのを防止する」「燃料シュート5の上流部に設けられた二次燃焼用空気供給部6」である点。 [相違点2] 搬送路へ気体を供給する部材に関して、本願補正発明では、「ガス逆流抑制部」であるのに対し、引用発明では、「燃料シュート5の連結部5cに設けられた二次燃焼用空気供給部6」である点。 (3)判断 ア 上記[相違点1]について検討する。 本願補正発明の「圧力状態調整部」について、本願明細書の段落【0022】には、「圧力状態調整部25は、気体を供給して搬送路5内の圧力の状態を調整し、これにより、燃焼炉1側からのガスの逆流を抑制する。ここで、搬送路5内の圧力の状態を調整する手法として、第1管路8内と燃焼炉1内、燃料投入路10内、第2管路9内との圧力を縁切りする手法(例えば、下記のロータリーバルブ11を用いた手法)と、搬送路5内の圧力を高める手法(例えば、下記の加圧手段26を用いた手法)と、が挙げられる。圧力状態調整部25は、ロータリーバルブ11と加圧手段26とを有している。なお、圧力状態調整部25は、ロータリーバルブ11又は加圧手段26のいずれか一方のみを有していてもよい。」と記載され、段落【0027】には、「加圧手段26は、第1管路8内に空気等の加圧気体(気体)A3を供給する。これにより、第1管路8内が加圧され、燃焼炉1側と第1管路8との圧力差が小さくなるため、燃焼炉1側から上流側へのガスの逆流が抑制される。」と記載されている。 すなわち、本願補正発明の「圧力状態調整部」とは、第1管路8内に空気等の加圧気体(気体)A3を供給するのみの構造を含むものと解される。 一方、引用発明は、「燃料シュート5の上流部に設けられた二次燃焼用空気供給部6から供給される燃焼用空気の風圧により、流動層燃焼炉1で発生する高温ガスが燃料シュート5の開口部51から流入するのを防止する」ものである。 そして、引用発明においては、燃料シュート5の上流部に設けられた二次燃焼用空気供給部6から供給される燃焼用空気は、ロータリーフィーダ33により上部が閉鎖された燃料シュート5内に供給されるのであるから、燃料シュート5の上流部に設けられた二次燃焼用空気供給部6から供給される二次燃焼用空気により燃料シュート5内の圧力は上昇するといえる。 また、流動層燃焼炉1で発生する高温ガスは、技術常識からみて大気圧以上であるから、燃焼炉ガスの逆流を防止するために燃料シュート5内の圧力を大気圧以上とすることは当業者にとって格別困難なことではない。 さらに、圧力を高めることによってガスの逆流を防ぐ技術については、例えば、実願昭60-101285号(実開昭62-11823号)のマイクロフィルムの第8頁第15?17行に記載された高圧ホッパ内圧力を流動層炉より0.5kg/cm^(2)g程度高く保つため、各バルブにリークが生じても炉側からのガス逆流が防止できる点、特開2006-194501号公報の段落【0027】に記載された圧力調整弁32が開き、加圧空気の吹き込みにより、部屋20の圧力は第3のダンパ23より下方の圧力と同等以上であるため、熱ガスの逆流を確実に防止することができる点に見られるように、本願出願前において周知の技術であるともいえる。 よって、引用発明の「燃料シュート5の上流部に設けられた二次燃焼用空気供給部6」を本願補正発明の「前記搬送路内の圧力を大気圧よりも高める」「圧力状態調整部」として構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。 イ 上記[相違点2]について検討する。 本願補正発明の「ガス逆流抑制部」と引用発明の「連結部5cに設けられた二次燃焼用空気供給部6」とは、両者とも、搬送路へ気体を供給する部材である点において、構造上の違いはない。 そして、引用発明の「燃料シュート5の連結部5cに設けた二次燃焼用空気供給部6」から供給される空気は、「燃料シュート5を通過し、流動層燃焼炉1の内部に到達するもの」であり、流動層燃焼炉1で発生する高温ガスが燃料シュート5に流入した場合には、両者が衝突することは、図面(図2b)からみても明らかであるから、引用発明の「連結部5cに設けた二次燃焼用空気供給部6」はガス逆流抑制部としても機能し得るものといえる。 よって、引用発明の「連結部5cに設けた二次燃焼用空気供給部6」を本願補正発明の「ガス逆流抑制部」として構成することは、当業者が適宜なし得ることである。 そして、本願補正発明は、全体としてみても引用発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 (4)まとめ 以上のように、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成30年6月21日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 燃焼炉へ燃料を供給するための搬送路を備えた搬送装置において、 気体を供給して前記搬送路内の圧力を高めることで前記燃焼炉側からのガスの逆流を抑制する圧力状態調整部と、 前記圧力状態調整部より前記搬送路の下流側において当該搬送路へ気体を供給するガス逆流抑制部と、を備えたことを特徴とする搬送装置。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、次のとおりである。 (1)この出願の請求項1、2、4、5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2)この出願の請求項1、2、4、5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (3)この出願の請求項1?5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2004-144387号公報 引用文献2:特開平6-272835号公報 引用文献3:特表2013-506028号公報 3 刊行物 引用例1及びその記載事項は、上記「第2 3(1)」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「圧力状態調整部」に関して、搬送路内の圧力を「大気圧よりも」高めるとの限定を削除するものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記「第2 3(3)」に記載したとおり、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-07-11 |
結審通知日 | 2019-07-16 |
審決日 | 2019-07-30 |
出願番号 | 特願2015-66807(P2015-66807) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F23K)
P 1 8・ 113- Z (F23K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩▲崎▼ 則昌 |
特許庁審判長 |
松下 聡 |
特許庁審判官 |
槙原 進 平城 俊雅 |
発明の名称 | 搬送装置及びガス逆流抑制方法 |
代理人 | 小島 誠 |