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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01L
管理番号 1355453
審判番号 不服2018-9389  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-06 
確定日 2019-10-15 
事件の表示 特願2013-129094「圧力検知モジュールおよびこのような圧力検知モジュールを備えた圧力センサ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月16日出願公開、特開2014- 6254、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月20日の出願(パリ条約による優先権主張:平成24年6月25日、独国)であって、平成29年9月27日に手続補正がされ、平成30年2月15日に拒絶査定(原査定)がされ、同年3月14日に査定の謄本が送達された。これに対し、同年7月6日に拒絶査定不服審判の請求がされた。
その後、平成31年4月11日に拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和元年7月9日に手続補正がされたものである。


第2 本願発明
本願請求項1-13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は、令和元年7月9日に補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
支持基板(200)を受容するための受容部分(110)を含んでいる圧力検知モジュール(100)であって、前記支持基板(200)が第1の側(210)に圧力検知機構(240)を備え、前記支持基板(200)が前記第1の側(210)とは逆の側の第2の側(220)でもって前記受容部分(110)に挿着され、前記支持基板(200)が前記第1の側(210)とは逆の側の前記第2の側(220)でもって受容窪み(112)の底部(120)に固定されている前記圧力検知モジュール(100)において、
前記受容部分(110)が、前記受容窪み(112)と該受容窪み(112)を周回するように取り囲んでいるフランジ(114)とを備えて皿状に形成され、前記底部(120)が接触穴(130)を有し、該接触穴を通じて、前記支持基板(200)の、該接触穴において露出している接触面(208)が、電気接触可能であり、
前記支持基板(200)が密封材(150)を用いて、前記受容窪み(112)の前記底部(120)に固定されていて、
前記密封材(150)が密封接着材(152)であり、該密封接着材(152)は、前記受容窪みの、前記底部(120)に設けられている前記接触穴(130)が、前記密封接着材(152)と前記支持基板(200)とによって密封されるように、前記支持基板(200)の前記第2の側(220)と前記受容窪み(112)の内面との間に塗布されていて、
前記受容部分(110)が前記底部(120)とは反対の側で仕切り膜(140)で密閉され、該仕切り膜(140)と前記受容部分(110)とによって画成され、且つ前記支持基板(200)と前記密封接着材(152)とにより前記底部(120)の前記接触穴(130)に対し密封されている空間が、液体で充填されていることを特徴とする圧力検知モジュール。」

なお、本願発明2-13は本願発明1を減縮した発明である。


第3 原査定の概要
原査定(平成30年2月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-14に係る発明は、以下の引用文献1-7に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2003-287472号公報
2.実願平02-032842号(実開平03-125219号)のマイクロフィルム
3.特開平01-244325号公報
4.特開平10-332516号公報
5.特開2008-070241号公報
6.特開平07-326770号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2005-345300号公報


第4 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

請求項2-14に係る発明は明確でないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧力センサに関し、特に圧力検出素子を収容した間接受圧室に液体を封入するとともに、ハウジングとコネクタケースとを具備した圧力センサの構造に関する。」

「【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、受圧空間と加圧空間を簡単な構成により実現し、しかも漏れのない圧力センサを提供することを目的とする。」

「【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかる圧力センサの第1の実施の形態について、図1を用いて説明する。図1は第1の実施の形態にかかる圧力センサの構成を示す縦断面図である。
【0007】本発明の第1の実施の形態にかかる圧力センサは、蓋部材1と、ダイヤフラム2と、ホルダー3と、ホルダー3の内部に形成された受圧空間31に配置された圧力検出素子41と、コネクタケース5と、蓋部材1およびダイヤフラム2およびホルダ3ならびにコネクタケース5を一体に固定するカラー6とから構成される。
・・・<略>・・・
【0010】ホルダ3は、例えばステンレススチールからなり、周囲に外側に広がる鍔部が形成された鍋形に構成され、内部に形成された空間が、液体を充填された受圧空間31として働く。ホルダ3の底部には、液体注入孔32と、複数のピン引出孔33が形成される。ホルダ3の受圧空間31の底部には、プリント配線基板43が接着され、プリント配線基板43の表面には、表面に半導体圧力センサ素子41が固定されたガラス製の台座42が固着される。
【0011】ホルダ3のピン引出孔33にピン71が挿入され、ハーメチックシール79によって気密に固定される。
・・・<略>・・・
【0013】さらに、圧力センサ素子22の上面に設けたランド部とプリント配線基板43の上面に設けたランド部とがボンディングワイヤによって接続されている。さらに、プリント配線基板43の表面に設けたランド部とピン71はボンディングワイヤによって接続される。
・・・<略>・・・
【0015】接合されたホルダ3とダイヤフラム2によって形成される受圧空間31内に、液体注入孔32を経由して液体が充填された後、封止ボール39を溶接して密封される。」
・・・<略>・・・
【0018】ターミナル8の他端部に設けた通電接続部81には、ピン71がカシメまたはスポット溶接などによって接続されている。
・・・<略>・・・
【0020】圧力導入管11を開口にロー付けした蓋部材1の上にダイヤフラム2を位置させる。さらにその上に、内部空間31内に半導体圧力センサ素子41を配置するとともにピン引出孔33にピン71をハーメチックシールによって固定したホルダー3を配置させた仮組立体の周囲を、TIG溶接またはプラズマ溶接もしくはレーザー溶接によって気密に溶接して一体化して圧力センサ本体部を形成する。
・・・<略>・・・
【0022】この圧力センサ本体部を、カラー6内に挿入しターミナル台座89をホルダ3の上に載置し、ピン71とターミナル8の通電接続部81をかしめもしくはスポット溶接などにより接続する。その後、この上からコネクタケース5のターミナル貫通孔53にターミナル8を挿入して、Oリング受面52にOリング95を配置したコネクタケース5をホルダ3の上に設置し、カラー6のかしめ部62をかしめて圧力センサを構成する。」

引用文献1には以下の図が示されている。

【図1】



また、上記記載事項及び図示内容によれば、以下の事項が認められる。

「プリント配線基板43が第1の側に半導体圧力センサ素子41を備え、プリント配線基板43が第1の側とは逆の側の第2の側でもってホルダ3の底部に固定されている」(図1参照。)

「ホルダ3がホルダ3の底部とは反対の側でダイヤフラム2に接続され、ダイヤフラム2とホルダ3とによって受圧空間31が画成されている。」(図1参照。)

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ホルダ3の受圧空間31の底部にプリント配線基板43が接着された圧力センサであって(段落【0007】、【0010】)、前記プリント配線基板43が第1の側に半導体圧力センサ素子41を備え、前記プリント配線基板43が第1の側とは逆の側の第2の側でもって前記ホルダ3の底部に固定されている圧力センサにおいて(段落【0010】、【図1】)、
前記ホルダ3が、前記底部と周囲に外側に広がる鍔部とを備えて鍋形に構成され(段落【0010】)、ホルダ3の底部には複数のピン引出孔33が形成され、ピン引出孔33に挿入されたピン71がプリント配線基板43の表面に設けたランド部とターミナル8の他端部に設けた通電接続部81に接続されており(段落【0010】、【0011】、【0013】、【0018】)、
ホルダ3がホルダ3の底部とは反対の側でダイヤフラム2に接続され、ダイヤフラム2とホルダ3とによって受圧空間31が画成されており(【図1】)、ホルダ3とダイヤフラム2によって形成される受圧空間31内に、液体が充填され、密封されている(段落【0015】)ことを特徴とする圧力センサ。」


2.引用文献2について
原査定の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「〔産業上の利用分野〕
本考案は、圧力と温度を測定するための複合センサユニットの構造に関するものである。」(第2頁第1-3行)

「5は該温度検出素子4と圧力センサ体3が収納される収納部6及び該収納部6の反体側にある下部7を有するパッケージで、例えばセラミックスから形成されており、パッケージ5の収納部6は有底状の第1凹部6aと該第1凹部6aに連なって形成された開口状の第2凹部6bを備えている。」(第7頁第8行-同頁第14行)

「61、62、63、64、65、66はパッケージ5の第2凹部6bに形成された電極部、71、72、73、74、75、76は下部7に形成された電極部であり、共に印刷等により形成されている。そして、電極部61と電極部71、電極部62と電極部72、電極部63と電極部73、電極部64と電極部74、電極部65と電極部75、電極部66と電極部76はそれぞれスルーホール8a、8b、8c、8d、8e、8fにより電気的に接続されている。」(第8頁第11行-同頁第20行)

「11、12はポッティング樹脂であって、前記圧力センサ体3と温度検出素子4がパッケージ5の第1凹部6aの底部67、68に固着され、ワイヤーボンドすることにより圧力センサ体3と温度検出素子4がパッケージ5の第2凹部6bに形成された電極部61、62、63、64、65、66と電気的に接続された後、圧力センサ体3と温度検出素子4の表面に充填硬化され、圧力センサ体3と温度検出素子4の表面の電気的、機械的保護を行っており、こうして複合センサユニット10が構成されている。」(第9頁第1行-同頁第11行)

「15はバネ、16は回路基板であって、複合センサユニット10のパッケージ5の下部7の電極部71、72、73、74、75、76と回路基板16の図示されていない電極部はそれぞれバネ15を介して電気的に接続され、図示されていない測定装置の電気回路と電気的に接続される。」(第10頁第8行-同頁第13行)

引用文献2には以下の図が示されている。

第1図


第4図



また、上記記載事項及び図示内容によれば、以下の事項が認められる。

「パッケージ5が収納部6の底部とは反対の側でポッティング樹脂12で密封され、ポッティング樹脂12とパッケージ5とによって画成されている空間がポッティング樹脂11で充填硬化されていること」(第1、4図参照)

「パッケージ5には第2凹部6bと底部との間を貫通するスルーホール8a、8b、8c、8d、8e、8fが形成されており、ケース14の底部が穴を有し、該穴を通じて、パッケージ5の、該穴において露出している面の電極部72、75が電気接触可能であること」(第1、4図参照)

したがって、上記引用文献2には、複合センサユニット10において、パッケージ5が収納部6の底部とは反対の側でポッティング樹脂12で密封され、ポッティング樹脂12とパッケージ5とによって画成されている空間がポッティング樹脂11で充填硬化されており、パッケージ5には第2凹部6bと底部との間を貫通するスルーホール8a、8b、8c、8d、8e、8fが形成されており、ケース14の底部が穴を有し、該穴を通じて、パッケージ5の、該穴において露出している面の電極部72、75が電気接触可能であるという技術的事項が記載されていると認められる。

3.その他の引用文献について
原査定の理由に引用された引用文献3には、圧力センサユニットにおいて、基板13が圧力センサチップ11を実装し、ポッティング樹脂15が基板13内部に充填され、圧力センサチップ11上で硬化され、ポッティング樹脂14が基板13内部に充填され、ポッティング樹脂14がポッティング樹脂15の上で硬化されているという技術的事項(第4頁左上欄第12行-同頁右下欄第7行、第5図参照)が記載されている。

原査定の理由に引用された引用文献4には、基板11と、この基板の一面にガラス封止層19によって接着固定されたセラミクスからなるダイヤフラム12とから構成され、上面に検出回路14を搭載した圧力検出素子10を、内部空間25に有した圧力センサモジュール15という技術的事項(段落【0015】、【0016】、【図1】、【図2】参照)が記載されている。

原査定の理由に引用された引用文献5には、弾性材料としての第1の材料から成るダイヤフラム2と、ダイヤフラム2と接続されてダイヤフラムとの間に真空室(気密空間)Sを形成する第2の材料から成る基台10と、ダイヤフラム2によって支持され且つ圧電材料を主材として構成された応力感応素子20と、を備えている圧力センサ1という技術的事項(段落【0010】、【図1】参照)が記載されている。

原査定の理由に引用された引用文献6には、センサチップ1は受圧ダイアフラム部2を有し、シリコン台座3の上部にろう材4で接着されており、シリコン台座3の下部には被測定圧力用の導圧管5が同じくろう材で接続されており、この導圧管5は容器の底部6を貫通しており、また、容器の底部6と気密に結合された蓋部9とによって形成される容器内空間10は、通気管11によって大気と連通している半導体圧力センサという技術的事項(段落【0003】、【図5】参照)が記載されている。

原査定の理由に引用された引用文献7には、圧力センサ素子本体21と、圧力センサ素子本体21に所定間隔を有して対向して配置されるダイアフラム22と、圧力センサ素子本体21とダイアフラム22との間に設けられる接合部材23とを備えている圧力センサ素子2という技術的事項(段落【0016】、【図1】参照)が記載されている。


第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明における「プリント配線基板43」、「ホルダ3」、「半導体圧力センサ素子41」は、本願発明1における「支持基板(200)」、「受容部分(110)」、「圧力検知機構(240)」に相当するので、引用発明における、「ホルダ3の受圧空間31の底部にプリント配線基板43が接着された圧力センサ」が、本願発明1における、「支持基板(200)を受容するための受容部分(110)を含んでいる圧力検知モジュール(100)」に相当する。
引用発明において、プリント配線基板43をホルダ3の受圧空間31の底部に固定する際には、プリント配線基板43をホルダ3の受圧空間31に挿入して固定することになることは明らかであるから、引用発明における、「前記プリント配線基板43が第1の側に半導体圧力センサ素子41を備え、前記プリント配線基板43が第1の側とは逆の側の第2の側でもって前記ホルダ3の底部に固定されている」が、本願発明1における、「前記支持基板(200)が第1の側(210)に圧力検知機構(240)を備え、前記支持基板(200)が前記第1の側(210)とは逆の側の第2の側(220)でもって前記受容部分(110)に挿着され、前記支持基板(200)が前記第1の側(210)とは逆の側の前記第2の側(220)でもって受容窪み(112)の底部(120)に固定されている」に相当する。
引用発明における、「前記ホルダ3が、前記底部と周囲に外側に広がる鍔部とを備えて鍋形に構成され」ることが、本願発明1における、「前記受容部分(110)が、前記受容窪み(112)と該受容窪み(112)を周回するように取り囲んでいるフランジ(114)とを備えて皿状に形成され」ていることに相当する。
引用発明における、「ホルダ3の底部には複数のピン引出孔33が形成され、ピン引出孔33に挿入されたピン71がプリント配線基板43の表面に設けたランド部とターミナル8の他端部に設けた通電接続部81に接続されて」いることが、本願発明1における、「前記底部(120)が接触穴(130)を有し、該接触穴を通じて」「電気接触可能であ」ることに相当する。
引用発明における、「前記プリント配線基板43が・・・前記ホルダ3の底部に固定されている」ことが、本願発明1における、「前記支持基板(200)が」「前記受容窪み(112)の前記底部(120)に固定されてい」ることに相当する。
引用発明における、「ホルダ3がホルダ3の底部とは反対の側でダイヤフラム2に接続され、ダイヤフラム2とホルダ3とによって受圧空間31が画成されており、ホルダ3とダイヤフラム2によって形成される受圧空間31内に、液体が充填され、密封されている」ことが、本願発明1における、「前記受容部分(110)が前記底部(120)とは反対の側で仕切り膜(140)で密閉され、該仕切り膜(140)と前記受容部分(110)とによって画成され」、「密封されている空間が、液体で充填されている」ことに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「支持基板(200)を受容するための受容部分(110)を含んでいる圧力検知モジュール(100)であって、前記支持基板(200)が第1の側(210)に圧力検知機構(240)を備え、前記支持基板(200)が前記第1の側(210)とは逆の側の第2の側(220)でもって前記受容部分(110)に挿着され、前記支持基板(200)が前記第1の側(210)とは逆の側の前記第2の側(220)でもって受容窪み(112)の底部(120)に固定されている前記圧力検知モジュール(100)において、 前記受容部分(110)が、前記受容窪み(112)と該受容窪み(112)を周回するように取り囲んでいるフランジ(114)とを備えて皿状に形成され、前記底部(120)が接触穴(130)を有し、該接触穴を通じて電気接触可能であり、
前記支持基板(200)が、前記受容窪み(112)の前記底部(120)に固定されていて、
前記受容部分(110)が前記底部(120)とは反対の側で仕切り膜(140)で密閉され、該仕切り膜(140)と前記受容部分(110)とによって画成され、密封されている空間が、液体で充填されていることを特徴とする圧力検知モジュール。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は「前記底部(120)が接触穴(130)を有し、該接触穴を通じて、前記支持基板(200)の、該接触穴において露出している接触面(208)が、電気接触可能であ」るという構成を備えるのに対し、引用発明は、「前記底部(120)が接触穴(130)を有し、該接触穴を通じて電気接触可能であ」る構成を備えている点で本願発明1と共通するものの、「前記支持基板(200)の、該接触穴において露出している接触面(208)」が該接触穴を通じて電気接触可能である構成を備えていない点。

(相違点2)本願発明1は「前記支持基板(200)が密封材(150)を用いて、前記受容窪み(112)の前記底部(120)に固定されていて、前記密封材(150)が密封接着材(152)であり、該密封接着材(152)は、前記受容窪みの、前記底部(120)に設けられている前記接触穴(130)が、前記密封接着材(152)と前記支持基板(200)とによって密封されるように、前記支持基板(200)の前記第2の側(220)と前記受容窪み(112)の内面との間に塗布されてい」るという構成を備えるのに対し、引用発明は、「前記支持基板(200)が、前記受容窪み(112)の前記底部(120)に固定されてい」る構成を備えている点で本願発明1と共通するものの、「前記支持基板(200)が、前記受容窪み(112)の前記底部(120)に固定されてい」ることが、「密封材(150)を用いて」行われており、「前記密封材(150)が密封接着材(152)であり、該密封接着材(152)は、前記受容窪みの、前記底部(120)に設けられている前記接触穴(130)が、前記密封接着材(152)と前記支持基板(200)とによって密封されるように、前記支持基板(200)の前記第2の側(220)と前記受容窪み(112)の内面との間に塗布されてい」る構成を備えていない点。

(相違点3)本願発明1は「前記受容部分(110)が前記底部(120)とは反対の側で仕切り膜(140)で密閉され、該仕切り膜(140)と前記受容部分(110)とによって画成され、且つ前記支持基板(200)と前記密封接着材(152)とにより前記底部(120)の前記接触穴(130)に対し密封されている空間が、液体で充填されている」という構成を備えるのに対し、引用発明は、「前記受容部分(110)が前記底部(120)とは反対の側で仕切り膜(140)で密閉され、該仕切り膜(140)と前記受容部分(110)とによって画成され、密封されている空間が、液体で充填されている」構成を備えている点で本願発明1と共通するものの、「該仕切り膜(140)と前記受容部分(110)とによって画成され、密封されている空間」が、「前記支持基板(200)と前記密封接着材(152)とにより前記底部(120)の前記接触穴(130)に対し密封されている空間」である構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討する。
本願発明1における、「受容部分(110)」、「仕切り膜(140)」、「該仕切り膜(140)と前記受容部分(110)とによって画成されている空間」それぞれに対応するものは、引用発明1では、「ホルダ3」、「ダイヤフラム2」、「受圧空間31」であり、引用文献2に記載された技術的事項では、「パッケージ5」、「ポッティング樹脂12」、「収納部6」である。また、引用発明における「ピン71」は、引用文献2に記載された技術的事項における「スルーホール8a、8b、8c、8d、8e、8f」に対応するものである。そして、引用文献2に記載された技術的事項は、本願発明1の「支持基板(200)」に相当する部材を有していない。
引用文献2に記載された技術的事項は、「パッケージ5には第2凹部6bと底部との間を貫通するスルーホール8a、8b、8c、8d、8e、8fが形成されており、ケース14の底部が穴を有し、該穴を通じて、パッケージ5の、該穴において露出している面の電極部72、75が電気接触可能である」構成を有しているものの、この穴は、支持基板を露出させるものではなく、電気接触可能である支持基板の接触面を露出させるものでもない。それゆえ、引用文献2に記載された技術的事項は、本願発明1の上記相違点1に係る構成を含むものではない。
また、引用文献3-7には、上記相違点1に係る構成は記載されていない。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-13について
本願発明2-13も、本願発明1の上記相違点1に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定についての判断
令和元年7月9日の補正により、補正後の請求項1-13は、「前記受容部分(110)が前記底部(120)とは反対の側で仕切り膜(140)で密閉され、該仕切り膜(140)と前記受容部分(110)とによって画成され、且つ前記支持基板(200)と前記密封接着材(152)とにより前記底部(120)の前記接触穴(130)に対し密封されている空間が、液体で充填されている」という技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献1-7には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-13は、当業者であっても、原査定における引用文献1-7に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。


第8 当審拒絶理由について
特許法第36条第6項第2号について

(1)当審では、請求項2の「前記密封材(150)が密封接着材(152)または蝋材(154)である」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、令和元年7月9日に提出された手続補正書において、該請求項2の記載内容が削除された結果、この拒絶の理由は解消した。

(2)当審では、請求項2-8、10に係る発明(すなわち、請求項1を引用する請求項に係る発明)が、「装置」を対象とした発明であるのか、それとも、「圧力検知モジュール」を対象とした発明であるのかが不明であるとの拒絶の理由を通知しているが、令和元年7月9日に提出された手続補正書において、請求項1を直接的又は間接的に引用する全ての請求項(すなわち、請求項2-9)で、「装置」という記載を「圧力検知モジュール」に補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(3)当審では、請求項4の「金属深絞り部分」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、令和元年7月9日に提出された手続補正書において、「金属深絞り部分」が「金属深絞り部材」に補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(4)当審では、請求項12の「特に」という記載が、具体的にどのような条件のときにその任意付加的事項又は選択的事項が必要であるのが不明であるとの拒絶の理由を通知しているが、令和元年7月9日に提出された手続補正書において、「、特に気密に密封結合され」という箇所が削除された結果、この拒絶の理由は解消した。


第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-09-26 
出願番号 特願2013-129094(P2013-129094)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01L)
P 1 8・ 537- WY (G01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 公文代 康祐大森 努  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 小林 紀史
梶田 真也
発明の名称 圧力検知モジュールおよびこのような圧力検知モジュールを備えた圧力センサ装置  
代理人 八島 剛  
代理人 高橋 始  
代理人 大場 玲児  

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