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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1355639
審判番号 不服2018-359  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-11 
確定日 2019-10-01 
事件の表示 特願2014-510248「LTE-Aシステムにおける搬送波集約を用いたランダムアクセス手順のための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月15日国際公開、WO2012/153960、平成26年 7月24日国内公表、特表2014-518041〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2012年(平成24年)5月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年5月6日 米国, 2011年7月26日 米国, 2011年9月23日 米国, 2012年3月14日 米国, 2012年5月2日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成25年11月7日 :手続補正書の提出
平成28年3月24日付け :拒絶理由通知書
平成28年7月4日 :意見書,手続補正書の提出
平成28年12月26日付け:拒絶理由通知書(最後の拒絶理由)
平成29年4月4日 :意見書の提出
平成29年9月7日付け :拒絶査定
平成30年1月11日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提出
平成30年12月5日付け :拒絶理由通知書(当審)
平成31年3月11日 :意見書,手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?9に係る発明は,平成31年3月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるところ,その請求項1には,以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
無線環境(wireless environment)におけるユーザ端末(user equipment)の方法において、
基地局からランダムアクセス手順開始のためのPDCCH(physical downlink control channel)命令(order)を受信する段階と、
前記ユーザ端末に対して第1(primary)タイミングアドバンスグループ(TAG、timing advance group)及び第2(secondary)TAGを含む複数のTAGsが適用されている場合、前記受信されたPDCCH命令に含まれたCIF(carrier indicator field)値に基づいてランダムアクセスプリアンブルの送信のためのサービングセルを決定する段階と、
前記決定されたサービングセルに対するランダムアクセス手順を開始するために前記決定されたサービングセルで前記ランダムアクセスプリアンブルを送信する段階と、を含み、
前記CIF値は、
前記ユーザ端末に対して前記複数のTAGsが適用されている場合に前記PDCCH命令が送信されるDCI(downlink control information)フォーマットに導入されたCIFに格納された値であり、
前記PDCCH命令は、C-RNTI(cell-radio network temporary identifier)とスクランブルされたDCI(downlink control information)フォーマットA1を用いて構成され(configured)、
前記PDCCH命令を構成する前記DCIフォーマットA1は、
DCIフォーマット区分(differentiation)フラグ(flag)、 「0」に設定された局部/分散(localized/distributed)VRB(virtual resource block)割り当て(assignment)フラグ、
すべてのビットが「1」に設定されたリソースブロック割り当て(resource block assignment)、及び
6ビットの大きさのプリアンブルインデックスを含む方法。」
([当審注]:下線部は補正箇所を示す。)

上記下線部の補正は補正前の請求項5の発明特定事項をさらに限定し明確化するためのものである。

ここで,「DCI(downlink control information)フォーマットA1」は,明細書段落【0056】の記載及び技術常識に照らして「DCI(downlink control information)フォーマット1A」の誤記であることが明らかである。

したがって,請求項1に係る発明は次のとおりのものと認める(以下,「本願発明」という。)。

「【請求項1】
無線環境(wireless environment)におけるユーザ端末(user equipment)の方法において、
基地局からランダムアクセス手順開始のためのPDCCH(physical downlink control channel)命令(order)を受信する段階と、
前記ユーザ端末に対して第1(primary)タイミングアドバンスグループ(TAG、timing advance group)及び第2(secondary)TAGを含む複数のTAGsが適用されている場合、前記受信されたPDCCH命令に含まれたCIF(carrier indicator field)値に基づいてランダムアクセスプリアンブルの送信のためのサービングセルを決定する段階と、
前記決定されたサービングセルに対するランダムアクセス手順を開始するために前記決定されたサービングセルで前記ランダムアクセスプリアンブルを送信する段階と、を含み、
前記CIF値は、
前記ユーザ端末に対して前記複数のTAGsが適用されている場合に前記PDCCH命令が送信されるDCI(downlink control information)フォーマットに導入されたCIFに格納された値であり、
前記PDCCH命令は、C-RNTI(cell-radio network temporary identifier)でCRCがスクランブルされたDCI(downlink control information)フォーマット1Aを用いて構成され(configured)、
前記PDCCH命令を構成する前記DCIフォーマット1Aは、
DCIフォーマット区分(differentiation)フラグ(flag)、 「0」に設定された局部/分散(localized/distributed)VRB(virtual resource block)割り当て(assignment)フラグ、
すべてのビットが「1」に設定されたリソースブロック割り当て(resource block assignment)、及び
6ビットの大きさのプリアンブルインデックスを含む方法。」

第3 当審の拒絶理由通知の概要

当審拒絶理由の概要は,「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,補正前の請求項1を引用する補正前の請求項5に対して以下の4,2,5,6が引用されている。

<引用文献等一覧>
2.Panasonic,Time Alignment in case of multiple TA,3GPP TSG-RAN WG2#74 R2-112819,[online],2011年 5月 2日(アップロード),URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_74/Docs/R2-112819.zip
4.Fujitsu,PDCCH order and RA selection,3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #70 R2-103083,[online],2010.05.04(アップロード),URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg2_rl2/TSGR2_70/Docs/R2-103083.zip
5.Nokia Siemens Networks,Nokia Corporation,Multiple Timing Advance,3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #73bis R2-111897,[online],2011.04.05(アップロード),URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg2_rl2/TSGR2_73bis/Docs/R2-111897.zip
6.Technical Specification Group Radio Access Network;Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRAN);Multiple and Channel coding(Release 10),3GPP TS36.212 v10.0.0(2010-12),[online],2010.12.22(アップロード),URL:http://www.3gpp.org/ftp//Specs/archive/36_series/36.212/36212-a00.zip

第4 引用発明等

1 引用発明

当審拒絶理由に引用されたFujitsu,PDCCH order and RA selection,3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #70 R2-103083,[online],2010.05.04(アップロード),URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg2_rl2/TSGR2_70/Docs/R2-103083.zip(以下,「引用例4」という。)には,以下の事項が記載されている。

(1)「
2.1 UL SCC selection by the PDCCH order
DL data arrival with contention-free access
The discussion point is whether a PRACH selection is allowed by a PDCCH order, i.e. the inclusion of a carrier indicator in Msg0 transmission is allowed or not. Specifically, if UE receives the carrier indicator in Msg0, it has to send Msg1 (preamble) corresponding to a carrier indicator in Msg0.
As can be seen from proposals in past meetings [2-4], we believe that a carrier indication in Msg0 transmission could in general technically work. We would note that, RAN1 agreed the following in the past meeting: a 3bit CIF field will be introduced in DCI Format 1A for UE-specific search space. Since Msg0 can be sent on PDCCH with DCI format 1A in UE-specific search, using this 3bit field as a carrier indication in Msg0 is possible although RAN1 didn’t discuss all the details of this special case of DCI format 1A when RAN1 reached this agreement.
(中略)
However, considering the multiple TA will be likely introduced in Rel-10 or later, and the newly introduced 3bit can be used as a carrier indication of Msg0 transmission, we think it is better to allow a carrier indication in Msg0 transmission in the case of DL data arrival with contention-free access.
One use case of this method is a case where an instantaneous amount of dedicated preamble vacant resource may differ across the UL CCs. And it is likely the UL PCC is running out of the resource. In this case, the eNB indicates to the UE to transmit a dedicated preamble on an UL SCC. This method is also useful for delay reduction because the eNB is able to indicate an UL SCC where the PRACH resource is immediately available.
(中略)
With above discussions, we propose
Proposal 1: For RA access by the PDCCH order, RACHs corresponding activated DL CCs have to be selected if a carrier indicator is included in Msg0.」(1ページ?2ページ)

(当審訳:
2.1 PDCCH命令によるUL SCC選択
非競合アクセスのDLデータ到着
議論のポイントは,PRACH選択がPDCCH命令によって許可されるかどうか,すなわちMsg0送信におけるキャリア表示の包含が許可されるか否かである。具体的には,UEがMsg0でキャリア表示を受信した場合,UEはMsg0のキャリア表示に対応するMsg1(プリアンブル)を送信しなければならない。
過去の会議の提案[2-4]から分かるように,我々はMsg0伝送におけるキャリア表示は一般的に技術的に動作すると考えている。RAN1は,過去の会議で次のように合意した:3ビットのCIFフィールドが,UE固有のサーチスペース用のDCIフォーマット1Aに導入される。Msg0は,UE固有のサーチのDCIフォーマット1Aを有するPDCCH上で送信することができるので,この3ビットフィールドをMsg0のキャリア表示として使用することは可能ですが,RAN1がこの合意に達したとき,RAN1はDCIフォーマット1Aのこの特別なケースの詳細をすべて論じていない。
(中略)
しかしながら,複数のTAがRel-10以降で導入される可能性が高いことを考慮すると,新たに導入された3ビットはMsg0伝送のキャリア表示として使用することができ,非競合アクセスのDLデータの到着の場合,Msg0伝送にキャリア表示を許可するほうがよいと考える。
この方法の1つの使用例は,複数のUL CCにわたって,固有プリアンブル空きリソースの瞬時量が異なる場合がある。そして,UL PCCがリソースを使い果たしている可能性がある。この場合,eNBは,UL SCC上で固有プリアンブルを送信するようにUEに指示する。この方法は,eNBがPRACHリソースがすぐに利用可能なUL SCCを示すことができるので,遅延低減にも有用である。
(中略)
上記議論とともに,我々は提案する
提案1:PDCCH命令によるRAアクセスについて,キャリア表示がMsg0に含まれる場合,アクティブ化されたDL CCに対応するRACHが選択されなければならない。)

引用例4の上記記載及びこの分野における技術常識を考慮すると,次のことがいえる。

ア 引用例4には,PDCCH命令によるUL SCC選択に関して,UEがMsg0でキャリア表示を受信すること,Msg0はUE固有のサーチのDCIフォーマット1Aを有するPDCCH上で送信され,DCIフォーマット1Aの3ビットのCIFフィールドをMsg0のキャリア表示として使用されること、eNBはUL SCC上で固有プリアンブルを送信するようにUEに指示することが記載されている。ここで,Msg0は,PDCCH上で送信されるPDCCH命令であり,UEがeNBから受信するものであることは技術常識である。よって,引用例4には「eNBからMsg0のキャリア表示を受信する段階と,ここで,Msg0は,キャリア表示として使用されるCIFフィールドを有するDCIフォーマット1Aを備えるUE固有サーチのPDCCH上でPDCCH命令として送信され」ることが記載されているといえる。

イ eNBは,UL SCC上で固有プリアンブルを送信するようにUEに指示するのだから,UEは受信されたキャリア表示に基づいて固有プリアンブルの送信のためのUL SCCを決定するものといえる。よって,引用例4には、「前記受信されたキャリア表示に基づいて固有プリアンブルの送信のためのUL SCCを決定する段階」が記載されているといえる。

ウ 引用例4の「UEがMsg0でキャリア表示を受信した場合,UEはMsg0のキャリア表示に対応するMsg1(プリアンブル)を送信しなければならない」及び「eNBは,UL SCC上で固有プリアンブルを送信するようにUEに指示する」の記載によれば,Msg1(プリアンブル)は決定されたUL SCCで送信されると解することができる。そして,Msg1(プリアンブル)の送信がランダムアクセス手順を開始するためのものであることは技術常識であるから,引用例4には「前記決定されたUL SCCに対するランダムアクセス手順を開始するために前記決定されたUL SCCで固有プリアンブルを送信する段階」が記載されているといえる。

エ 引用例4には,複数のTAを考慮するとMsg0伝送にキャリア表示を許可するほうがよい旨記載されているから,引用例4に記載された事項は複数のTAが導入された無線環境を前提とすることを含むといえる。そして,上記ア,イ,ウで述べた各段階はUEで行われるものであるから,引用例4には「複数のTAが導入された無線環境におけるUEの方法」が記載されているといえる。

以上を総合すると,引用例4には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数のTAが導入された無線環境におけるUEの方法において,
eNBからMsg0のキャリア表示を受信する段階と,ここでMsg0は,キャリア表示として使用されるCIFフィールドを有するDCIフォーマット1Aを備えるUE固有サーチのPDCCH上でPDCCH命令として送信され,
前記受信されたキャリア表示に基づいて固有プリアンブルの送信のためのUL SCCを決定する段階と,
前記決定されたUL SCCに対するランダムアクセス手順を開始するために前記決定されたUL SCCで固有プリアンブルを送信する段階と,を含む方法」

2 周知技術1

本件の優先日前に公開された,Panasonic,Time Alignment in case of multiple TA,3GPP TSG-RAN WG2#74 R2-112819,[online],2011年 5月 2日(アップロード),URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_74/Docs/R2-112819.zip(以下,「引用例2」という。)には以下の事項が記載されている。

(1)「
(前略)
2.1 Multiple timing advance and timing advance groups
In Rel-10 there is only support for one timing advance applied to all UL component carriers which are active in the UE. While in Rel-10 only intra-band aggregation is allowed for the uplink, Rel-11 will support inter-band aggregation as well. Furthermore, deployment scenarios including Remote Radio Head (RRH) and Frequency Selective Repeater (FSR) make it necessary to consider the aggregation of UL carriers in the UE that are determined by different propagation delays.




In order to support such scenarios it is necessary to support more than one timing advance.
However, deployment scenarios will consist mostly of co-located cells. It is a realistic assumption that in the case that an UE aggregates the maximum number of uplink cells, the number of locations these uplink cells are received at will be lower. Therefore, it is not necessary to support a separate timing advance for each UL of an aggregated cell in the UE. Since cells in the same frequency band which are received at the same location experience the same propagation delay, such cells, when aggregated in a UE, can be grouped together and share a timing advance. While the concept of TA groups will require the indication of the UL carrier - TA group relations, we propose to adopt such concept for the simplicity and robustness in the UE and eNB since this concept reduces the number of timing advances that need to be handled simultaneously. This also allows the synchronization to the cell with difficult condition of the timing synchronization purely from individual cell because of HetNet usage.
Proposal 1: More than one UL cell can share the same timing advance by forming TA groups
(後略)」(1?2ページ)

(当審訳:
(前略)
2.1 複数のタイミングアドバンスおよびタイミングアドバンスグループ
Rel-10では,UEにおいてアクティブであるすべてのULコンポーネントキャリアに適用される1つのタイミングアドバンスのサポートのみが存在する。Rel-10では,アップリンクにはイントラバンドアグリゲーションのみが許可されるが,Rel-11はバンド間アグリゲーションもサポートする。さらに,RRH(Remote Radio Head)およびFSR(Frequency Selective Repeater)を含む展開シナリオでは,異なる伝播遅延によって決定されるUE内のULキャリアの集約を考慮する必要がある。
図1
このようなシナリオをサポートするには,複数のタイミング・アドバンスをサポートする必要がある。
ただし,展開シナリオは大部分が同じ場所にあるセルで構成される。UEがアップリンクセルの最大数を集約する場合,これらのアップリンクセルが受信される位置の数はより少なくなるという現実的な仮定である。したがって,UE内のアグリゲートされたセルの各ULに対して個別のタイミングアドバンスをサポートする必要はない。同じ位置で受信された同じ周波数帯域のセルは同じ伝搬遅延を経験するので,そのようなセルは,UEに集約されるとき,一緒にグループ化され,タイミング・アドバンスを共有することができる。TAグループの概念は,ULキャリア-TAグループ関係の表示を必要とするが,この概念は,同時に処理される必要があるタイミングの進歩の数を減少させるので,UEおよびeNBにおける単純さおよび堅牢性のためにこのような概念を採用することを提案する。これはまた,HetNetの使用のために,個々のセルからのタイミング同期の困難な状態でのセルへの同期も可能にする。
提案1:複数のULセルは,TAグループを形成することによって同じタイミングアドバンスを共有することができる
(後略))

本件の優先日前に公開された,Nokia Siemens Networks,Nokia Corporation,Multiple Timing Advance,3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #73bis R2-111897,[online],2011.04.05(アップロード),URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/wg2_rl2/TSGR2_73bis/Docs/R2-111897.zip(以下,「引用例5」という。)には以下の事項が記載されている。

(2)「
(前略)
2.1 Need of TA group?
(中略)
Proposal 1: Support TA group when multiple TA is introduced.
(中略)
Proposal 5: At most two TA groups are supported per UE.
(後略)」(1ページ)

(当審訳:
(前略)
2.1 TAグループの必要性
(中略)
提案1:複数のTAが導入されたときにTAグループをサポートする。
(中略)
提案5:UEあたり最大2つのTAグループがサポートされる。
(後略))

上記摘記事項(1)(2)より,「複数のTAが導入されたときに,TAグループを形成する。」ことは、周知技術(以下,「周知技術1」という。)であるといえる。

3 周知技術2

本件の優先日前に公開された,Technical Specification Group Radio Access Network;Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRAN);Multiple and Channel coding(Release 10),3GPP TS36.212 v10.0.0(2010-12),[online],2010.12.22(アップロード),URL:http://www.3gpp.org/ftp//Specs/archive/36_series/36.212/36212-a00.zip(以下,「引用例6」という。)には以下の事項が記載されている。

(1)「
(前略)
5.3.3.1.3 Format 1A
DCI format 1A is used for the compact scheduling of one PDSCH codeword in one cell and random access procedure initiated by a PDCCH order.
The following information is transmitted by means of the DCI format 1A:
- Carrier indicator - 0 or 3 bits. This field is present according to the definitions in [3].
- Flag for format0/format1A differentiation - 1 bit, where value 0 indicates format 0 and value 1 indicates format 1A
Format 1A is used for random access procedure initiated by a PDCCH order only if format 1A CRC is scrambled with C-RNTI and all the remaining fields are set as follows:
- Localized/Distributed VRB assignment flag - 1 bit is set to ‘0’
- Resource block assignment -(数式省略)bit, where all bit shall be set to 1
- Preamble Index - 6 bits
- PRACH Mask Index - 4 bits, [5]
- All the remaining bits in format 1A for compact scheduling assignment of one PDSCH codeword are set to zero
(後略)」(53ページ)

(当審訳:
(前略)
5.3.3.1.3 フォーマット1A
DCIフォーマット1Aは,1つのセル内の1つのPDSCHコードワードのコンパクトなスケジューリング及びPDCCH命令によって開始されるランダムアクセス手順に使用される。
次の情報はDCIフォーマット1Aによって送信される。
-キャリアインジケータ-0又は3ビット このフィールドは[3]の定義に従って与えられる。
-フォーマット0/フォーマット1A区別(differentiation)フラグ-1ビット。 値0はフォーマット0を示し,値1はフォーマット1Aを示す。
フォーマット1AのCRCがC-RNTIでスクランブルされ,残りのすべてのフィールドが以下のように設定されている場合にのみ,フォーマット1AはPDCCH命令によって開始されるランダムアクセス手順に使用される。
-局部/分散VRB割り当てフラグ-1ビットが「0」に設定される
-リソースブロック割り当て (数式省略)ビット すべてのビットは1に設定される
-プリアンブルインデックス-6ビット
-PRACHマスクインデックス-4ビット,[5]
-1つのPDSCHコードワードのコンパクトスケジューリング割り当てのためのフォーマット1Aの残りのすべてのビットはゼロに設定される
(後略))

上記摘記事項から,3GPPの標準規格文書である引用例6には「PDCCH命令は,C-RNTIでCRCがスクランブルされたDCIフォーマット1Aを用いて構成され,PDCCH命令を構成するDCIフォーマット1Aは,フォーマット0/フォーマット1A区別(differentiation)フラグ,「0」に設定された局部/分散VRB割り当てフラグ,すべてのビットが「1」に設定されたリソースブロック割り当て,及び6ビットの大きさのプリアンブルインデックスを含む。」ことが記載されており,該事項は3GPPの標準規格文書に記載された事項であるから当業者にとって技術常識といえる周知技術(以下,「周知技術2」という。)である。

5 対比

本願発明と引用発明とを対比すると,以下のことがいえる。

ア 本願発明の「ユーザ端末」,「基地局」と引用発明の「UE」、「eNB」は,表記が異なるのみであって差違はないから、両者は「無線環境(wireless environment)におけるユーザ端末(user equipment)の方法」である点で共通している。
そして、引用発明の「Msg0」はランダムアクセス手順開始のためのPDCCH命令といえるから,引用発明の「eNBからMsg0のキャリア表示を受信する段階」は,本願発明の「基地局からランダムアクセス手順開始のためのPDCCH(physical downlink control channel)命令(order)を受信する段階」に相当する。

イ 引用発明は「複数のTAが導入された無線環境におけるUEの方法」であるから,UEに対して複数のTAが適用されている場合の無線環境におけるUEの方法ということができる。そして,引用発明は,UL SCCに対するランダムアクセス手順を開始するものであるから,PCCに対するTAとSCCに対するTAとの複数のTAがUEに対して適用されることは明らかであり,PCCに対するTAを「第1(primary)タイミングアドバンス(TA、timing advance)」と称し,SCCに対するTAを「第2(secondary)TA」と称することは任意である。
一方、本願発明の「第1(primary)タイミングアドバンスグループ(TAG、timing advance group)」、「第2(secondary)TAG」は、それぞれ「第1(primary)タイミングアドバンス(TA、timing advance」を有するグループ、「第2(secondary)TA」を有するグループであることは自明である。
また、引用発明の「キャリア表示」はPDCCH命令のCIFフィールドを使用して示されるものであり、「固有プリアンブル」は「ランダムアクセスプリアンブル」に含まれるものであり、「UL SCC」はサービングセルといえるから、引用発明の「受信されたキャリア表示に基づいて固有プリアンブルの送信のためのUL SCCを決定する」は,本願発明と「受信されたPDCCH命令に含まれたCIF値に基づいてランダムアクセスプリアンブルの送信のためのサービングセルを決定する」に相当する。
そうすると,本願発明と引用発明は、「前記ユーザ端末に対して第1(primary)タイミングアドバンス(TA、timing advance)及び第2(secondary)TAを含む複数のTAsが適用されている場合、前記受信されたPDCCH命令に含まれたCIF(carrier indicator field)値に基づいてランダムアクセスプリアンブルの送信のためのサービングセルを決定する段階」を含む点で共通している。

ウ 引用発明の「前記決定されたUL SCCに対するランダムアクセス手順を開始するために前記決定されたUL SCCで固有プリアンブルを送信する段階」は,本願発明と「前記決定されたサービングセルに対するランダムアクセス手順を開始するために前記決定されたサービングセルで前記ランダムアクセスプリアンブルを送信する段階」に相当する。

以上を総合すると,補正後の発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。

(一致点)
「無線環境(wireless environment)におけるユーザ端末(user equipment)の方法において、
基地局からランダムアクセス手順開始のためのPDCCH(physical downlink control channel)命令(order)を受信する段階と、
前記ユーザ端末に対して第1(primary)タイミングアドバンス(TA、timing advance)及び第2(secondary)TAを含む複数のTAsが適用されている場合、前記受信されたPDCCH命令に含まれたCIF(carrier indicator field)値に基づいてランダムアクセスプリアンブルの送信のためのサービングセルを決定する段階と、
前記決定されたサービングセルに対するランダムアクセス手順を開始するために前記決定されたサービングセルで前記ランダムアクセスプリアンブルを送信する段階と、を含み、
前記CIF値は、
前記ユーザ端末に対して前記複数のTAGsが適用されている場合に前記PDCCH命令が送信されるDCI(downlink control information)フォーマットに導入されたCIFに格納された値である、
方法。」

(相違点1)
一致点の「前記ユーザ端末に対して第1(primary)タイミングアドバンス(TA、timing advance)及び第2(secondary)TAを含む複数のTAsが適用されている場合」に関し、本願発明は「前記ユーザ端末に対して第1(primary)タイミングアドバンスグループ(TAG、timing advance group)及び第2(secondary)TAGを含む複数のTAGsが適用されている場合」であるのに対し、引用発明はタイミングアドバンス(TA)の「グループ」について言及していない点。

(相違点2)
本願発明は,PDCCH命令が「C-RNTI(cell-radio network temporary identifier)でCRCがスクランブルされたDCIフォーマット1A」であって,PDCCH命令を構成するDCIフォーマット1Aは,「DCIフォーマット区分(differentiation)フラグ(flag),「0」に設定された局部/分散(localized/distributed)VRB(virtual resource block)割り当て(assignment)フラグ,すべてのビットが「1」に設定されたリソースブロック割り当て(resource block assignment),及び 6ビットの大きさのプリアンブルインデックスを含む」との発明特定事項を有しているのに対し,引用発明では,上記発明特定事項を有していない点。

6 判断

(相違点1について)
周知技術1のとおり,「複数のTAが導入されたときに,TAグループを形成する。」ことは,周知技術であるから,引用発明の「複数のTA」を第1TAG及び第2TAGを含む複数のTAGsとすることは,格別困難なことでない。

(相違点2について)
周知技術2のとおり,「PDCCH命令は,C-RNTIでCRCがスクランブルされたDCIフォーマット1Aを用いて構成され,PDCCH命令を構成するDCIフォーマット1Aは,フォーマット0/フォーマット1A区別(differentiation)フラグ,「0」に設定された局部/分散VRB割り当てフラグ,すべてのビットが「1」に設定されたリソースブロック割り当て,及び6ビットの大きさのプリアンブルインデックスを含む。」ことは,当業者にとって技術常識といえる周知技術であるから,相違点2の事項は,引用発明のPDCCH命令も当然に有している,或いは当業者が容易になし得ることにすぎない。

そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び周知技術1,2に基づいて当業者が予測できる範囲のものにすぎず,格別顕著なものとはいえない。

したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術1,2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

第5 むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術1,2に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-04-22 
結審通知日 2019-05-07 
審決日 2019-05-20 
出願番号 特願2014-510248(P2014-510248)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久慈 渉廣川 浩  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 本郷 彰
羽岡 さやか
発明の名称 LTE-Aシステムにおける搬送波集約を用いたランダムアクセス手順のための方法及び装置  
代理人 阿部 達彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 崔 允辰  
代理人 木内 敬二  

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