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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01F
管理番号 1355743
審判番号 不服2017-19339  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-26 
確定日 2019-11-05 
事件の表示 特願2014-195631「複合型リアクトル」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日出願公開、特開2016-66744、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年9月25日の出願であって、平成29年1月16日付けで拒絶理由が通知され、同年3月27日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年3月29日に上申書が提出されたが、同年9月21日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対して、同年12月26日に拒絶査定不服の審判が請求がなされると同時に手続補正がなされた。その後、平成30年7月24日に上申書が提出され、平成31年3月7日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和1年5月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年5月15日に上申書が提出された。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年9月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1、3ないし7に係る発明は、以下の引用文献A又はBに記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、
本願の請求項2ないし7に係る発明は、以下の引用文献A又はBに記載された発明、及び、引用文献C又はDに例示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
本願の請求項8ないし12に係る発明は、以下の引用文献A又はBに記載された発明、及び、引用文献C又はDに例示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
A.特開平6-283363号公報
B.実願平3-65720号(実開平5-20311号)のCD-ROM
C.特開2014-127637号公報(周知技術を示す文献)
D.特開2011-9634号公報(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

[理由1]本願の請求項1ないし12に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[理由2]本願は、特許請求の範囲の請求項1ないし12の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

<引用文献等一覧>
1.特開2014-127637号公報(以下、「引用文献1」という。)
2.特開平6-283363号公報(以下、「引用文献2」という。)

第4 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、令和1年5月13日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし9は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
一端が共通の電源に接続される第1コイル及び第2コイルと、
前記第1コイル及び前記第2コイルが巻回された矩形ループ状の磁性コアと、を備えた、インターリーブ型のDC/DCコンバータに用いられる複合型リアクトルであって、
前記磁性コアは、前記第1コイルの巻線が巻回される略U字状の第1コア部と、前記第2コイルの巻線が巻回される略U字状の第2コア部とが、巻線中心軸方向から見て対向する端面が重なる位置に配置されており、
前記第1コイルは、前記第1コア部の対向する2辺を構成する巻回部に分割巻きされた第1巻線部及び第2巻線部を有し、
前記第2コイルは、前記第2コア部の対向する2辺を構成する巻回部に分割巻きされた第3巻線部及び第4巻線部を有し、
前記第1コア部の前記第1巻線部が巻回された巻回部側の端面と、前記第2コア部の前記第3巻線部が巻回された巻回部側の端面とが重なる位置に配置され、
前記第1コア部の前記第2巻線部が巻回された巻回部側の端面と、前記第2コア部の前記第4巻線部が巻回された巻回部側の端面とが重なる位置に配置され、
前記第1巻線部の一端及び前記第3巻線部の一端は、前記電源に接続され、
前記第1巻線部の他端及び前記第3巻線部の他端は、それぞれ前記第2巻線部の一端及び第4巻線部の一端に接続され、
前記第1コア部は、前記第1巻線部から突出する第1コア端部と、前記第2巻線部から突出する第2コア端部と、を有し、
前記第2コア部は、前記第3巻線部から突出する第3コア端部と、前記第4巻線部から突出する第4コア端部と、を有し、
前記第1巻線部は、巻線中心軸方向の一方向を見て時計回りと反時計回りの内の一方の巻回方向で巻回され、
前記第2巻線部は、巻線中心軸方向の前記一方向を見て時計回りと反時計回りの内の他方の巻回方向で巻回され、
前記第3巻線部は、巻線中心軸方向の前記一方向を見て時計回りと反時計回りの内の前記他方の巻回方向で巻回され、
前記第4巻線部は、巻線中心軸方向の前記一方向を見て時計回りと反時計回りの内の前記一方の巻回方向で巻回された、インターリーブ型のDC/DCコンバータに用いられる複合型リアクトル。
【請求項2】
一端が共通の電源に接続される第1コイル及び第2コイルと、
前記第1コイル及び前記第2コイルが巻回された矩形ループ状の磁性コアと、を備えた、インターリーブ型のDC/DCコンバータに用いられる複合型リアクトルであって、
前記磁性コアは、前記第1コイルの巻線が巻回される略U字状の第1コア部と、前記第2コイルの巻線が巻回される略U字状の第2コア部とが、巻線中心軸方向から見て対向する端面が重なる位置に配置されており、
前記第1コイルは、前記第1コア部の対向する2辺を構成する巻回部に分割巻きされた第1巻線部及び第2巻線部を有し、
前記第1巻線部及び前記第2巻線部は、前記第1コイルの周囲に発生する磁束が互いに打ち消し合う向きにそれぞれ配設され、
前記第2コイルは、前記第2コア部の対向する2辺を構成する巻回部に分割巻きされた第3巻線部及び第4巻線部を有し、
前記第3巻線部及び前記第4巻線部は、前記第2コイルの周囲に発生する磁束が互いに打ち消し合う向きにそれぞれ配設され、
前記第1コア部の前記第1巻線部が巻回された巻回部側の端面と、前記第2コア部の前記第3巻線部が巻回された巻回部側の端面とが重なる位置に配置され、
前記第1コア部の前記第2巻線部が巻回された巻回部側の端面と、前記第2コア部の前記第4巻線部が巻回された巻回部側の端面とが重なる位置に配置され、
前記第1巻線部の一端及び前記第3巻線部の一端は、前記電源に接続され、
前記第1巻線部の他端及び前記第3巻線部の他端は、それぞれ前記第2巻線部の一端及び第4巻線部の一端に接続され、
前記第1コア部は、前記第1巻線部から突出する第1コア端部と、前記第2巻線部から突出する第2コア端部と、を有し、
前記第2コア部は、前記第3巻線部から突出する第3コア端部と、前記第4巻線部から突出する第4コア端部と、を有し、
前記第1巻線部及び前記第3巻線部は、
前記第1巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第1コア部に発生する磁束の向きと、
前記第3巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第2コア部に発生する磁束の向きと、が相反するように巻回され、
前記第2巻線部及び前記第4巻線部は、
前記第2巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第1コア部に発生する磁束の向きと、
前記第4巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第2コア部に発生する磁束の向きと、が相反するように巻回された、インターリーブ型のDC/DCコンバータに用いられる複合型リアクトル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合型リアクトルであって、
前記第1コイルと前記第2コイルとには、互いに位相のずれた電流が入力される、複合型リアクトル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の複合型リアクトルであって、
前記第1巻線部の巻線中心軸と前記第3巻線部の巻線中心軸とが共通し、かつ、前記第2巻線部の巻線中心軸と前記第4巻線部の巻線中心軸とが共通する、複合型リアクトル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の複合型リアクトルであって、
前記第1巻線部の巻線中心軸と前記第2巻線部の巻線中心軸とが互いに平行であり、
前記第3巻線部の巻線中心軸と前記第4巻線部の巻線中心軸とが互いに平行である、複合型リアクトル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の複合型リアクトルであって、
前記第1巻線部、前記第2巻線部、前記第3巻線部及び前記第4巻線部の各巻線中心軸が同一平面上に含まれる、複合型リアクトル。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の複合型リアクトルであって、
前記第1コイルにより生じる磁束の前記磁性コアでの磁路長と、前記第2コイルにより生じる磁束の前記磁性コアでの磁路長とは等しい、複合型リアクトル。
【請求項8】
請求項7に記載の複合型リアクトルであって、
前記第1コイルにより生じる磁束の前記磁性コアでの磁路及び前記第2コイルにより生じる磁束の前記磁性コアでの磁路は、矩形ループ状の共通形状を有する、複合型リアクトル。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の複合型リアクトルであって、
前記第1コア部及び前記第2コア部はそれぞれ同形状に形成され、前記第1コア部と前記第2コア部とを組み合わせて前記磁性コアを構成する、複合型リアクトル。」

第5 当審拒絶理由について
1.引用文献、引用発明等
(1)引用文献1について
当審拒絶理由で引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)

ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車といった車両に搭載されるコンバータや電力変換装置の構成部品などに利用されるリアクトルに関する。特に、小型でかつ結合係数を調整することが可能なリアクトルに関する。」

イ.「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンバータ(電力変換装置)において、更なる小型化が求められている。特に、車載用のコンバータ(電力変換装置)では、設置スペースに厳しい制約があることから、より一層の小型化が望まれる。
【0005】
複数のコイルを同一のコアに配置して互いに磁気的に結合するリアクトルでは、インダクタンスの他、コイル間の結合係数も重要なパラメータになっている。特許文献1に記載のリアクトルでは、上記したように、T形部の中央脚部とその両側に位置する2つの端脚部(I形部)との3つの磁脚部をコアが有し、各端脚部にコイルがそれぞれ配置される構成である。コアには、T形部の基部及び端脚部によりコイル同士を磁気的に結合する結合磁路と、中央脚部により各コイルから生じる磁束が漏れる漏れ磁路とが形成される。そして、このリアクトルでは、中央脚部に設けられたギャップ空間により、インダクタンスや結合係数を調整することが可能である。しかし、このリアクトルでは、コイルが配置される端脚部以外に、結合係数を調整するための中央脚部をコアが有するため、更なる小型化が難しい。
【0006】
本発明の目的の一つは、小型でかつ結合係数を調整することが可能なリアクトルを提供することにある。また、本発明の別の目的は、このリアクトルを備えるコンバータ、このコンバータを備える電力変換装置を提供することにある。」

ウ.「【0020】
ここでは、まず、本発明のリアクトルの基本構成であるコイル及びコアについて説明し、次いで、本発明のリアクトルに備える結合係数調整手段の具体的な態様について説明する。
【0021】
(リアクトルの基本構成)
図1は、本発明のリアクトルの基本構成の一例を示す。リアクトル10は、第1コイル21及び第2コイル22と、これら第1コイル21及び第2コイル22を互いに磁気的に結合する環状のコア30とを備える。なお、図1(A)では、説明の便宜上、コイル21,22及びコア30を高さ方向に略半分に切断した斜視断面図である。
【0022】
第1コイル21及び第2コイル22はそれぞれ、巻線2wを螺旋状に巻回してなり、軸方向が互いに平行で且つ互いの外周面が対向するように並列に配置されている。両コイル21,22は、同一形状のコイルであり、また、両コイル21,22は、軸方向の一端側から他端側に亘って巻ピッチ及び巻径が一様である。巻線2wは、銅又は銅合金やアルミニウム又はアルミニウム合金からなる平角線の表面に、エナメルやポリアミドイミド樹脂などの絶縁被覆を有する被覆平角線である。そして、両コイル21,22は、被覆平角線の巻線2wをエッジワイズ巻きして角筒状に形成されたエッジワイズコイルである。両コイル21,22は、一端同士が電気的に接続される。
【0023】
コア30は、第1コイル21及び第2コイル22を互いに磁気的に結合する。コア30は、各コイル21,22の内側に位置し、各コイル21,22が配置される一対の磁脚部311,312と、これら磁脚部311,312の両端部に配置されると共に、各磁脚部311,312の互いの端部同士を連結する一対の連結部321,322とからなる。コア30は、並列に配置された両磁脚部311,312の各端面にそれぞれ各連結部321,322の内端面が連結されることによって環状に構成されており、これら磁脚部311,312及び連結部321,322により、コイル21,22同士を磁気的に結合する結合磁路が形成される。
【0024】
磁脚部311,312はそれぞれ、角柱状であり、軟磁性材料からなるコア片31mと、コア片31mよりも比透磁率の小さい材料からなるギャップ材31gとを交互に積層して形成されている。コア片31mとギャップ材31gとは、例えば接着剤によって一体化することができる。連結部321,322は、略台形状(磁脚部311,312の端面に連結される内端面から外方に向かって断面積が小さくなる台形状)であり、軟磁性材料からなるコア片である。
【0025】
磁脚部311,312や連結部321,322を構成するコア片は、鉄などの鉄族金属やその合金、鉄を含む酸化物などに代表される軟磁性粉末を用いた成形体や、絶縁被膜を有する磁性薄板(例えば、ケイ素鋼板に代表される電磁鋼板)を複数積層した積層板体などで形成されている。上記成形体としては、圧粉成形体、焼結体、軟磁性粉末と樹脂とを含む混合物を射出成形や注型成形などによって成形した複合材料などが挙げられる。このような成形体、特に複合材料では、例えば軟磁性粉末の含有量を減らすことで、比透磁率が5?50といった低透磁率とすることも可能である。この例では、各コア片(コア片31m及び連結部321,322)は、鉄や鋼などの軟磁性粉末の圧粉成形体で形成されている。
【0026】
ギャップ材31gは、アルミナや不飽和ポリエステルなどの非磁性材料で形成されている。この例では、磁脚部311,312にギャップ材31gを設けることで、磁脚部311,312(コア30)の比透磁率を調整しているが、例えばコア片を低透磁率の複合材料で形成すれば、ギャップ材を設けずに所定の比透磁率を実現したり、磁脚部311,312をそれぞれ1つのコア片で構成することも可能である。また、各コア片を一様な材質で同一の仕様(圧粉成形体)としているが、磁脚部311,312を構成する複数のコア片31mの磁気特性や仕様を異ならせたり、コア片31mと連結部321,322とで磁気特性や仕様を異ならせることも可能である。その他、ギャップ材31gは、コア片31mよりも低透磁率の材料、例えば軟磁性粉末の含有量が少ない複合材料などで形成することも可能である。」

エ.「【0027】
次に、隣り合うコイル間の結合係数を調整する結合係数調整手段の具体的な形態について説明する。なお、以下の実施形態1?4では、リアクトルの基本構成は上記した図1に示すリアクトル10と同じであり、相違点を中心に説明する。
【0028】
[実施形態1:コイル間に磁気遮蔽板を配置する]
実施形態1では、結合係数調整手段として、隣り合うコイル間に配置される磁気遮蔽板を備える形態を説明する。図2に示す実施形態1に係るリアクトル11は、各磁脚部311,312に配置された第1コイル21と第2コイル22との間に、磁気遮蔽板50が配置されている。磁気遮蔽板50は、非磁性の金属材料で形成されており、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金が好適に利用できる。この例では、両コイル21,22間にアルミニウム板(磁気遮蔽板50)を磁脚部311,312の長手方向に沿って配置している。このように、両コイル21,22間に磁気遮蔽板50を配置することで、一方の磁脚部(311又は312)からコイル21,22間を横断して他方の磁脚部(312又は311)に乗り移る漏れ磁束を磁気遮蔽板50により吸収して抑制することができる。これにより、コイル21,22間の結合係数を上げることができる。
【0029】
ここで、結合係数の調整は、磁気遮蔽板50の厚さや面積、若しくは位置を変更することで可能である。磁気遮蔽板50の厚さは、コイル21,22間に配置でき、かつ、漏れ磁束を抑制できる範囲で適宜設定することができる。一般に、コイル21,22間の間隔は2mm程度である。また、磁気遮蔽板50の厚さを厚くするほど、漏れ磁束の抑制効果が向上するが、コイル21,22に流れる電流の周波数に対する表皮厚さの2倍以上厚くしても、漏れ磁束の抑制効果の向上が小さい。よって、磁気遮蔽板50の厚さは、表皮厚さの1倍以上2倍以下であることが好ましく、例えば1mm以上2mm以下とすることが挙げられる。ここで、磁気遮蔽板50の厚さが表皮厚さと同じ(1倍)の場合、磁気遮蔽板50を通過する磁束を1/e(e≒2.71)倍、即ち約63%低減でき、表皮厚さの2倍の場合、磁束を1/e2倍、即ち約87%低減できる。一方、磁気遮蔽板50の長さを長くするほど、漏れ磁束と鎖交する磁気遮蔽板50の面積が増えることから、磁気遮蔽板50による漏れ磁束の吸収量が増え、コイル21,22間の結合係数を上げることができる。また、磁気遮蔽板50の高さを高くしても、漏れ磁束と鎖交する磁気遮蔽板50の面積が増えることから、コイル21,22間の結合係数を上げることができる。
【0030】
さらに、磁気遮蔽板50の位置を変更することでも、結合係数を調整することが可能である。この例のように、磁脚部311,312にギャップ材31gが設けられている場合は、ギャップ材31gからの漏れ磁束が生じ易いことから、磁脚部311,312のギャップ材31gに対応する箇所に磁気遮蔽板50を配置することで、漏れ磁束を効果的に抑制できる。例えば、上記したように磁脚部311,312をそれぞれ低透磁率の複合材料で形成し、1つのコア片で構成した場合などは、磁脚部311,312の長手方向の中央部分で漏れ磁束が生じ易いことから、磁脚部311,312の中央部分に対応する箇所に磁気遮蔽板50を集中的に配置すると、漏れ磁束を効果的に抑制し易い。なお、リアクトル11をケース(図示せず)に収納する場合は、コイル21,22間に磁気遮蔽板50を配置した後、封止樹脂で封止することで、磁気遮蔽板50を固定することができる。或いは、ケースの底板に磁気遮蔽板50を絶縁性の接着剤で予め固定しておいてもよい。」

オ.「【0037】
上記した実施形態1?4で説明した図2?5に示す各結合係数調整手段の形態は、単独で実施する他、組み合わせて実施することも可能である。また、上記した実施形態1?4のリアクトル11?14において、互いに磁気結合されるコイル21,22間の結合係数は、各結合係数調整手段により、例えば0.4?0.9に調整することが挙げられる。」

カ.「【0038】
(コンバータ(電力変換装置)の構成)
実施形態1?4のリアクトル11?14は、例えば、車両などに搭載されるコンバータの構成部品や、このコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用することができる。
【0039】
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車といった車両1200は、図6に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ(負荷)1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジンを具える。なお、図6では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを具える形態とすることもできる。
【0040】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例では、コンバータ1110は、車両1200の走行時、200V?300V程度のメインバッテリ1210の直流電圧(入力電圧)を400V?700V程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。また、コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される直流電圧(入力電圧)をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0041】
コンバータ1110は、図7に示すように、複数のスイッチング素子Q1?Q4と、スイッチング素子Q1?Q4の動作を制御する駆動回路(図示せず)と、リアクトルLとを備え、ON/OFFの繰り返し(スイッチング動作)により入力電圧の変換(ここでは昇降圧)を行う。スイッチング素子Q1?Q4には、FET、IGBTなどのパワーデバイスを利用することができる。リアクトルLは、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。このリアクトルLとして、上述した実施形態1?4のリアクトル11?14を利用しており、実施形態1?4で説明した結合係数調整手段により、互いに磁気結合されるコイル21,22間の結合係数が調整されている。リアクトル11?14は、小型であるので、このリアクトル11?14を備えるコンバータ1110や電力変換装置1100を小型化できる。
【0042】
この例では、リアクトルLを構成するコイル21,22の一端側がメインバッテリ1210の正極側に接続されている。また、一方のコイル21の他端側がスイッチング素子Q1,Q2を直列に接続してなる直列スイッチング回路の中点に接続され、他方のコイル22の他端側がスイッチング素子Q3,Q4を直列に接続してなる直列スイッチング回路の中点に接続されている。そして、駆動回路によりスイッチング素子Q1?Q4をスイッチングすることによって、コイル21,22に流れる電流を互いに180度位相をずらした状態とし、両コイル21,22が互いに磁気的に逆結合されている。」

上記アによれば、引用文献1には、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車といった車両に搭載されるコンバータや電力変換装置の構成部品などに利用されるリアクトルについて記載されている。
また、上記イによれば、複数のコイルを同一のコアに配置して互いに磁気的に結合するリアクトルでは、インダクタンスの他、コイル間の結合係数も重要なパラメータであり、従来のリアクトルでは、T形部の中央脚部とその両側に位置する2つの端脚部との3つの磁脚部をコアが有し、各端脚部にコイルがそれぞれ配置されており、中央脚部により各コイルから生じる磁束が漏れる漏れ磁路とが形成され、当該中央脚部に設けられたギャップ空間により、インダクタンスや結合係数を調整することを可能としている。
そして、上記イによれば、車載用のコンバータ(電力変換装置)では、設置スペースに厳しい制約があることから、より一層の小型化が望まれるところ、従来のリアクトルでは、コイルが配置される端脚部以外に、結合係数を調整するための中央脚部をコアが有し、更なる小型化が難しいため、小型でかつ結合係数を調整することが可能なリアクトルを提供することが解決すべき課題である。
そのような課題を解決し得るリアクトルの基本構成に関して、上記ウ及び図1によれば、次の事項が記載されている。
・リアクトル10は、第1コイル21及び第2コイル22と、これら第1コイル21及び第2コイル22を互いに磁気的に結合する環状のコア30とを備える。(【0021】)
・第1コイル21及び第2コイル22はそれぞれ、巻線2wを螺旋状に巻回してなり、軸方向が互いに平行で且つ互いの外周面が対向するように並列に配置されている。(【0022】)
・コア30は、第1コイル21及び第2コイル22を互いに磁気的に結合する。コア30は、各コイル21,22の内側に位置し、各コイル21,22が配置される一対の磁脚部311,312と、これら磁脚部311,312の両端部に配置されると共に、各磁脚部311,312の互いの端部同士を連結する一対の連結部321,322とからなる。コア30は、並列に配置された両磁脚部311,312の各端面にそれぞれ各連結部321,322の内端面が連結されることによって環状に構成されており、図1からはコア30の形状が矩形であることが看取できる。そして、これら磁脚部311,312及び連結部321,322により、コイル21,22同士を磁気的に結合する結合磁路が形成される。(【0023】)
また、隣り合うコイル間の結合係数を調整する結合係数調整手段の具体的な形態に関して、上記エ及びオ並びに図2によれば、実施形態1として、次の事項が記載されている。
・リアクトル11の基本構成はリアクトル10と同じである。(【0027】)
・リアクトル11は、各磁脚部311,312に配置された第1コイル21と第2コイル22との間に、磁気遮蔽板50が配置されている。(【0028】)
・結合係数の調整は、磁気遮蔽板50の厚さや面積、若しくは位置を変更することで可能である。(【0029】)
・リアクトル11において、互いに磁気結合されるコイル21,22間の結合係数は、結合係数調整手段により、0.4?0.9に調整する。(【0037】)
さらに、上記カ並びに図6及び7には、コンバータ1110を備える電力変換装置1100の回路構成に関して次の事項が記載されている。
・電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例では、コンバータ1110は、車両1200の走行時、200V?300V程度のメインバッテリ1210の直流電圧(入力電圧)を400V?700V程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。(【0040】)
・リアクトルLを構成するコイル21,22の一端側がメインバッテリ1210の正極側に接続されている。また、一方のコイル21の他端側がスイッチング素子Q1,Q2を直列に接続してなる直列スイッチング回路の中点に接続され、他方のコイル22の他端側がスイッチング素子Q3,Q4を直列に接続してなる直列スイッチング回路の中点に接続されている。そして、コイル21,22に流れる電流を互いに180度位相をずらした状態とし、両コイル21,22が互いに磁気的に逆結合されている。(【0042】)

そこで、電力変換装置1100のコンバータ1110に利用されるリアクトルについて、実施形態1のリアクトル11に着目して、上述の各事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「第1コイル21及び第2コイル22を互いに磁気的に結合する矩形で環状のコア30と、
該コア30の一対の磁脚部311,312にそれぞれ配置されている前記第1コイル21及び前記第2コイル22と、
を備えた、直流電圧を昇圧するコンバータ1110に利用されるリアクトル11であって、
前記コア30は、前記一対の磁脚部311,312と、これら磁脚部311,312の両端部に配置されると共に、各磁脚部311,312の互いの端部同士を連結する一対の連結部321,322とからなり、
前記第1コイル21及び第2コイル22はそれぞれ、巻線2wを螺旋状に巻回してなり、軸方向が互いに平行で且つ互いの外周面が対向するように並列に配置されており、
前記第1コイル21と前記第2コイル22との間に、磁気遮蔽板50が配置され、結合係数の調整は、前記磁気遮蔽板50の厚さや面積、若しくは位置を変更することで可能であり、
前記第1コイル21及び第2コイル22の一端側はメインバッテリ1210の正極側に接続され、前記第1コイル21及び第2コイル22の他端側は2つの直列スイッチング回路の中点にそれぞれ接続され、
前記第1コイル21及び前記第2コイル22に流れる電流を互いに180度位相をずらした状態とし、前記第1コイル21及び前記第2コイル22は互いに磁気的に逆結合されている、
直流電圧を昇圧するコンバータ1110に利用されるリアクトル11。」

(2)引用文献2について
当審拒絶理由で引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電子機器等の電圧発生回路、電源及び電源ラインに使用されるチョークコイル及びトランス等のインダクター部品に関するものである。」

イ.「【0003】次に図8に示すものはコ形の2個のコア26を絶縁皮膜を有する導体29を巻回した1個の絶縁ボビン28に挿入し、そのコア26をスプリング金具30または接着剤27等により固定したものである。なおコ形のフェライトコア26の代用としてEE型やEI型、EER型のフェライトコアを用いる場合もある。この構成は巻回方法及び組立作業が、図7の場合と比べて、簡単でしかも工法的には適したものであり、広く一般的に用いられている。しかしながら、1個のボビンにコイル巻線を集中することにより、コアの磁路中における起磁力が偏在してしまい、コイルの両端に磁気モーメントが発生し、これが原因としてコアの磁路から外れて磁束が漏れ出す現象が生じてしまう。この漏れ磁束は上記インダクターの近隣に位置する回路及び部品に電磁ノイズとして影響し、電気回路の誤動作等の原因となっている。
【0004】現在、この漏れ磁束を低減するためにチョークコイルの外周に導体リングを付加または導体薄帯を巻くことにより、導体中に漏れ磁束に相当する誘起電流を生じさせ、これにより漏れ磁束の低減が図られている。しかし導体中に流れる電流は全て導体抵抗により熱として消失し、回路全体として損失となる。また導体リング等は工程及びコストの増大にもつながるという欠点を持つ。
【0005】コモンモードチョークコイルにおいては、従来は図9のように各相に対応したコイルを1個のボビンに作製し、2相分のコイルを磁路方向に対し逆方向になるようコア脚部を挿入し、コアを固定したものが用いられている。この場合、各相のコイルによる起磁力により発生する磁気モーメントの方向が、コア外部では同方向になり、大きい漏れ磁束が生じやすいという欠点を持つ。
【0006】トランスにおいても、従来はノーマルモードチョークコイルと同様にEE型、EI型、等のフェライトの中脚に各次のコイル巻線が形成されているものが多く、上記と同じ理由によりコイルが一ケ所に集中することより漏れ磁束が大きいという欠点を持っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の工法の利便性を損なわずに、上述したインダクター部品の漏れ磁束を低減させ電磁ノイズ等による障害を起こしにくくするインダクター部品を提供することを目的とするものである。」

ウ.「【0010】ここで発明者は図1?図3に示すようにコイルが2個の巻数差を少なく導体を巻回したものからなり、コ型またはロ型コアの双方の脚部に磁路方向に対し巻線方向が同じくなるように同コイルが各々挿入され、直列に電気的結合されていることを特徴としたインダクターを形成することにより、生産工程として簡便であり、かつコア外部に対する漏れ磁束を従来よりも大幅に低減できることを見いだした。
【0011】作用としては図1のインダクターの場合、コ型またはロ型コアの両端に2個の巻数差の少ないコイルが巻かれているため、双方のコア脚部に発生する磁気モーメントは図4のように上下逆になる。このためコア外部の磁界は逆方向の磁気モーメントによって弱められ、結果として漏れ磁束が低減する。このコア外部の磁界の強さは、双方の磁気モーメントの差が巻数差分となり、従来のコイルと比較し同じNターンのインダクターでは巻数差がaターンの時、a/N程度になることが期待できる。一方、この場合でもコア中で発生した磁気モーメントは、磁路方向に対し同方向となり従来技術によるものと同様の磁束が通過し、従来のインダクターと同じく動作する。
【0012】この考え方は図2,図3のコモンモードチョークコイル、トランスにも同じく適用でき、同相のコイルを2つに分割することにより、図5,図6のようにコア外部に影響する磁気モーメントが分散され、漏れ磁束の発生を抑制することが可能となる。ただし漏れ磁束低減の効果は、任意の巻数差のコイルの組み合わせで可能であるが、ここで述べる漏れ磁束は2つのコイルの巻数差に比例することより2つのコイルの巻数差が同数または1ターン差の組み合わせが、漏れ磁束を低減するうえで最も望ましい。」

上記アによれば、引用文献2には、チョークコイル及びトランス等のインダクター部品について記載されている。
また、上記イによれば、インダクター部品の漏れ磁束は、その近隣に位置する回路及び部品に電磁ノイズとして影響し、電気回路の誤動作等の原因となっており、例えば、各相に対応したコイルを1個のボビンに作製し、2相分のコイルを磁路方向に対し逆方向になるようコア脚部を挿入し、コアを固定したコモンモードチョークコイルにおいては、各相のコイルによる起磁力により発生する磁気モーメントの方向が、コア外部では同方向になり、大きい漏れ磁束が生じやすいという欠点を持つことから、インダクター部品の漏れ磁束を低減させ電磁ノイズ等による障害を起こしにくくするインダクター部品を提供することを目的とする。
そして、上記ウによれば、ロ型コアの双方の脚部に磁路方向に対し巻線方向が同じくなるように巻数差の少ないコイルが各々挿入され、直列に電気的結合されていることによって、双方のコア脚部に発生する磁気モーメントは上下逆になり、コア外部の磁界は弱められ、結果としてコア外部に対する漏れ磁束を従来よりも大幅に低減できる。この考え方は、コモンモードチョークコイルにも適用でき、同相のコイルを2つに分割することにより、漏れ磁束の発生を抑制することが可能となる。その際に、図2及び図5によれば、各コア脚部において、一方の相のコイルが発生する磁気モーメントと、他方の相のコイルが発生する磁気モーメントとが上下逆になるように、各相の分割されたコイルはロ型コアの双方の脚部に各々配置される。

そこで、コモンモードチョークコイルに適用した場合(図2及び図5)に着目して、上述の各事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用文献2には次の技術事項が記載されている。

「コモンモードチョークコイルにおいて、コア外部に対する漏れ磁束を大幅に低減するために、
各相のコイルを巻数差の少ない2つのコイルにそれぞれ分割し、ロ型コアの双方の脚部に磁路方向に対し巻線方向が同じくなるように同相の分割された2つのコイルを各々挿入するとともに、直列に電気的結合し、
各コア脚部において、一方の相のコイルが発生する磁気モーメントと、他方の相のコイルが発生する磁気モーメントとが上下逆になるように、各相の分割されたコイルをロ型コアの双方の脚部に各々配置すること。」

2.理由1(特許法第29条第2項)について
(1)本願発明1について
ア.対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)磁性コアについて
引用発明の「コア30」は、「矩形で環状」であるから、「矩形ループ状」であるということができる。また、引用発明の「コア30」は、第1コイル21及び第2コイル22を互いに磁気的に結合するものであるから、「磁性コア」であるといえる。
したがって、引用発明の「第1コイル21及び第2コイル22を互いに磁気的に結合する矩形で環状のコア30」は、本願発明1の「矩形ループ状の磁性コア」に相当する。
また、引用発明の「コア30」は、その一対の磁脚部311,312にそれぞれ第1コイル21及び第2コイル22が配置されている、すなわち、巻回されているから、本願発明1の「磁性コア」と引用発明の「コア30」は、2つのコイルが巻回されている点で共通する。
ただし、本願発明1の「磁性コア」は、「前記第1コイルの巻線が巻回される略U字状の第1コア部と、前記第2コイルの巻線が巻回される略U字状の第2コア部とが、巻線中心軸方向から見て対向する端面が重なる位置に配置されており」、「前記第1コア部の前記第1巻線部が巻回された巻回部側の端面と、前記第2コア部の前記第3巻線部が巻回された巻回部側の端面とが重なる位置に配置され」、「前記第1コア部は、前記第1巻線部から突出する第1コア端部と、前記第2巻線部から突出する第2コア端部と、を有し、前記第2コア部は、前記第3巻線部から突出する第3コア端部と、前記第4巻線部から突出する第4コア端部と、を有し」ているが、引用発明の「コア30」はそもそも略U字状の2つのコア部からなるものではないから、それらの発明特定事項を有していない点で相違する。

(イ)コイルについて
引用発明は「第1コイル21及び第2コイル22」は、それらの「一端側はメインバッテリ1210の正極側に接続され」ているから、本願発明1の「一端が共通の電源に接続される第1コイル及び第2コイル」に相当する。
ただし、本願発明1の第1コイルは「前記第1コア部の対向する2辺を構成する巻回部に分割巻きされた第1巻線部及び第2巻線部を有し」、本願発明1の第2コイルは「前記第2コア部の対向する2辺を構成する巻回部に分割巻きされた第3巻線部及び第4巻線部を有し」ており、「前記第1巻線部の他端及び前記第3巻線部の他端は、それぞれ前記第2巻線部の一端及び第4巻線部の一端に接続され」ているのに対して、引用発明の「第1コイル21及び第2コイル22」は、いずれも本願発明1のような巻き方(以下、「2分割巻き」という。)はされていない点で相違する。

(ウ)巻回方向について
本願発明1は、「前記第1巻線部は、巻線中心軸方向の一方向を見て時計回りと反時計回りの内の一方の巻回方向で巻回され、前記第2巻線部は、巻線中心軸方向の前記一方向を見て時計回りと反時計回りの内の他方の巻回方向で巻回され、前記第3巻線部は、巻線中心軸方向の前記一方向を見て時計回りと反時計回りの内の前記他方の巻回方向で巻回され、前記第4巻線部は、巻線中心軸方向の前記一方向を見て時計回りと反時計回りの内の前記一方の巻回方向で巻回された」ものであるのに対して、引用発明の「第1コイル21及び第2コイル22」は、上記イで説示したとおり2分割巻きされていないから、いずれも本願発明1のような巻回方向で巻回されていない点で相違する。

(エ)リアクトルについて
引用発明の「リアクトル11」は、コア30の一対の磁脚部311,312に第1コイル21及び第2コイル22がそれぞれ配置されたものであるから、「複合型リアクトル」ということができる。
また、引用発明の「直流電圧を昇圧するコンバータ1110」は「DC/DCコンバータ」ということができ、さらに、「前記第1コイル21及び前記第2コイル22に流れる電流を互いに180度位相をずらした状態とし」ているから、「インターリーブ型」であるということもできる。
そうすると、引用発明の「直流電圧を昇圧するコンバータ1110に利用されるリアクトル11」は、本願発明1の「インターリーブ型のDC/DCコンバータに用いられる複合型リアクトル」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。

<一致点>
「一端が共通の電源に接続される第1コイル及び第2コイルと、
前記第1コイル及び前記第2コイルが巻回された矩形ループ状の磁性コアと、を備えた、インターリーブ型のDC/DCコンバータに用いられる複合型リアクトルであって、
前記第1コイルの一端及び前記第2コイルの一端は、前記電源に接続された、
インターリーブ型のDC/DCコンバータに用いられる複合型リアクトル。

<相違点1>
磁性コアに関して、本願発明1は、「前記第1コイルの巻線が巻回される略U字状の第1コア部と、前記第2コイルの巻線が巻回される略U字状の第2コア部とが、巻線中心軸方向から見て対向する端面が重なる位置に配置されており」、「前記第1コア部の前記第1巻線部が巻回された巻回部側の端面と、前記第2コア部の前記第3巻線部が巻回された巻回部側の端面とが重なる位置に配置され、前記第1コア部の前記第2巻線部が巻回された巻回部側の端面と、前記第2コア部の前記第4巻線部が巻回された巻回部側の端面とが重なる位置に配置され、」「前記第1コア部は、前記第1巻線部から突出する第1コア端部と、前記第2巻線部から突出する第2コア端部と、を有し、前記第2コア部は、前記第3巻線部から突出する第3コア端部と、前記第4巻線部から突出する第4コア端部と、を有し」ているのに対して、引用発明は略U字状の2つのコア部からなるものではないから、それらの発明特定事項を有していない点。

<相違点2>
第1コイル及び第2コイルとそれらの巻回方向に関して、本願発明1は、「前記第1コイルは、前記第1コア部の対向する2辺を構成する巻回部に分割巻きされた第1巻線部及び第2巻線部を有し、前記第2コイルは、前記第2コア部の対向する2辺を構成する巻回部に分割巻きされた第3巻線部及び第4巻線部を有し、」「前記第1巻線部の他端及び前記第3巻線部の他端は、それぞれ前記第2巻線部の一端及び第4巻線部の一端に接続され、」「前記第1巻線部は、巻線中心軸方向の一方向を見て時計回りと反時計回りの内の一方の巻回方向で巻回され、前記第2巻線部は、巻線中心軸方向の前記一方向を見て時計回りと反時計回りの内の他方の巻回方向で巻回され、前記第3巻線部は、巻線中心軸方向の前記一方向を見て時計回りと反時計回りの内の前記他方の巻回方向で巻回され、前記第4巻線部は、巻線中心軸方向の前記一方向を見て時計回りと反時計回りの内の前記一方の巻回方向で巻回され」ているのに対して、引用発明は、そのような2分割巻きはされておらず、そのような巻回方向で巻回されていない点。

イ.相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
上記第5の1.(2)で説示したとおり、当審拒絶理由で引用された引用文献2には、
「コモンモードチョークコイルにおいて、コア外部に対する漏れ磁束を大幅に低減するために、
各相のコイルを巻数差の少ない2つのコイルにそれぞれ分割し、ロ型コアの双方の脚部に磁路方向に対し巻線方向が同じくなるように同相の分割された2つのコイルを各々挿入するとともに、直列に電気的結合し、
各コア脚部において、一方の相のコイルが発生する磁気モーメントと、他方の相のコイルが発生する磁気モーメントとが上下逆になるように、各相の分割されたコイルをロ型コアの双方の脚部に各々配置すること。」
という技術事項が記載されている。
そして、当該技術事項におけるコイルの配置について検討すると、2つのコイルをロ型すなわち矩形ループ状のコアに2分割巻きしている点で、上記相違点2に係る本願発明1の第1コイル及び第2コイルの配置と共通する。また、分割された各コイルの巻回方向についても、「各コア脚部において、一方の相のコイルが発生する磁気モーメントと、他方の相のコイルが発生する磁気モーメントとが上下逆になる」ことからみて、本願発明1の第1巻線部ないし第4巻線部と同様の巻回方向で巻回されていると認められる。
そこで、引用発明の第1コイル及び第2コイルに対して、引用文献2に記載の上記技術事項を適用することが、当業者が容易になし得ることであるか否かについてさらに検討する。
上記第5の1.(1)で説示したとおり、引用発明が解決しようとする課題は、直流電圧を昇圧するコンバータに利用されるリアクトルに関して、小型でかつ結合係数を調整することが可能なリアクトルを提供することである。そして、上記第5の1.(1)で説示したとおり、引用文献1の記載(【0037】)によれば、結合係数調整手段によって結合係数は0.4?0.9に調整されるのであって、結合係数を1近辺にすること、すなわち、漏れ磁束0にすること、あるいは、可能な限り小さくすることを課題としているわけではない。
これに対して、引用文献2に記載の技術事項が解決しようとする課題は、上述のとおり、コア外部に対する漏れ磁束を大幅に低減することであるから、結合係数を調整することを可能とするという引用発明の課題とは共通せず、また、コア外部に対する漏れ磁束を大幅に低減してしまうと、引用文献1に記載の上記範囲に結合係数を調整することはできなくなるから、引用発明に引用文献2に記載の上記技術事項を適用する動機付けはないといわざるを得ない。
また、引用文献2に記載の上記技術事項は、そもそもコモンモードチョークコイルに関する技術であって、DC/DCコンバータに用いられる複合型リアクトルに関する技術ではなく、引用文献2に記載のトランスの実施例(【0018】ないし【0019】、図3、図6に記載の実施例3参照。)では、2つのコイルを一般的にいうところの重ね巻きしており、コモンモードチョークコイルのような場合の巻き方をしていないことからみても、DC/DCコンバータに用いられる複合型リアクトルの発明である引用発明に、コモンモードチョークコイルに関する上記技術事項をそのまま適用する動機付けはないといわざるを得ない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本願発明2について
ア.対比
本願発明1においては、第1巻線部ないし第4巻線部に関して、「前記第1巻線部は、巻線中心軸方向の一方向を見て時計回りと反時計回りの内の一方の巻回方向で巻回され、前記第2巻線部は、巻線中心軸方向の前記一方向を見て時計回りと反時計回りの内の他方の巻回方向で巻回され、前記第3巻線部は、巻線中心軸方向の前記一方向を見て時計回りと反時計回りの内の前記他方の巻回方向で巻回され、前記第4巻線部は、巻線中心軸方向の前記一方向を見て時計回りと反時計回りの内の前記一方の巻回方向で巻回された」と特定されているのに対して、本願発明2においては、「前記第1巻線部及び前記第2巻線部は、前記第1コイルの周囲に発生する磁束が互いに打ち消し合う向きにそれぞれ配設され」、「前記第3巻線部及び前記第4巻線部は、前記第2コイルの周囲に発生する磁束が互いに打ち消し合う向きにそれぞれ配設され」、「前記第1巻線部及び前記第3巻線部は、前記第1巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第1コア部に発生する磁束の向きと、前記第3巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第2コア部に発生する磁束の向きと、が相反するように巻回され、前記第2巻線部及び前記第4巻線部は、前記第2巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第1コア部に発生する磁束の向きと、前記第4巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第2コア部に発生する磁束の向きと、が相反するように巻回された」と特定されており、その余の発明特定事項については本願発明1と本願発明2は全て共通している。
したがって、本願発明2と引用発明とを対比すると、本願発明1に対して上記(1)アの(ア)(イ)(エ)で説示した事項については、本願発明2に対しても当てはまる。
そして、巻回方向に関しては、次のことがいえる。

本願発明2は、「前記第1巻線部及び前記第2巻線部は、前記第1コイルの周囲に発生する磁束が互いに打ち消し合う向きにそれぞれ配設され」、「前記第3巻線部及び前記第4巻線部は、前記第2コイルの周囲に発生する磁束が互いに打ち消し合う向きにそれぞれ配設され」、「前記第1巻線部及び前記第3巻線部は、前記第1巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第1コア部に発生する磁束の向きと、前記第3巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第2コア部に発生する磁束の向きと、が相反するように巻回され、前記第2巻線部及び前記第4巻線部は、前記第2巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第1コア部に発生する磁束の向きと、前記第4巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第2コア部に発生する磁束の向きと、が相反するように巻回された」ものであるのに対して、引用発明の「第1コイル21及び第2コイル22」は、上記1.(1)のイで説示したとおり2分割巻きされていないから、いずれも本願発明2のようには巻回されていない点で相違する。

したがって、本願発明2と引用発明との間には、上記(1)アで説示した一致点及び相違点1に加えて、次の相違点3があるといえる。

<相違点3>
第1コイル及び第2コイルとそれらの巻回方向に関して、本願発明2は、「前記第1コイルは、前記第1コア部の対向する2辺を構成する巻回部に分割巻きされた第1巻線部及び第2巻線部を有し、前記第1巻線部及び前記第2巻線部は、前記第1コイルの周囲に発生する磁束が互いに打ち消し合う向きにそれぞれ配設され、前記第2コイルは、前記第2コア部の対向する2辺を構成する巻回部に分割巻きされた第3巻線部及び第4巻線部を有し、前記第3巻線部及び前記第4巻線部は、前記第2コイルの周囲に発生する磁束が互いに打ち消し合う向きにそれぞれ配設され、」「前記第1巻線部の他端及び前記第3巻線部の他端は、それぞれ前記第2巻線部の一端及び第4巻線部の一端に接続され、」「前記第1巻線部及び前記第3巻線部は、前記第1巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第1コア部に発生する磁束の向きと、前記第3巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第2コア部に発生する磁束の向きと、が相反するように巻回され、前記第2巻線部及び前記第4巻線部は、前記第2巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第1コア部に発生する磁束の向きと、前記第4巻線部の前記一端から前記他端へ電流が流れた際に、前記第2コア部に発生する磁束の向きと、が相反するように巻回され」ているのに対して、引用発明は、そのような2分割巻きはされておらず、そのような巻回方向で巻回されていない点。

イ.相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点3について検討する。
当審拒絶理由で引用された引用文献2に記載の技術事項(上記1.(2)参照。)におけるコイルの配置について検討すると、2つのコイルをロ型すなわち矩形ループ状のコアに2分割巻きしている点で、上記相違点3に係る本願発明2の第1コイル及び第2コイルの配置と共通する。また、分割された各コイルの巻回方向についても、「各コア脚部において、一方の相のコイルが発生する磁気モーメントと、他方の相のコイルが発生する磁気モーメントとが上下逆になる」ことからみて、本願発明2の第1巻線部ないし第4巻線部と同様の巻回方向で巻回されていると認められる。
そこで、引用発明の第1コイル及び第2コイルに対して、引用文献2に記載の技術事項を適用することが、当業者が容易になし得ることであるか否かについてさらに検討すると、上記(1)で説示したのと同じ理由で引用発明に引用文献2に記載の技術事項を適用する動機付けはないといわざるを得ない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明2は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本願発明3ないし9について
本願発明3ないし9は、本願発明1又は本願発明2の発明特定事項を全て含む発明であるから、本願発明1又は本願発明2と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.理由2(特許法第36条第6項第2号)について
当審拒絶理由で通知した理由2の概要は、請求項1及び2には、磁性コアの第1コア部及び第2コア部の形状が記載されていないから、複合型リアクトルにおける磁束の流れを把握することができず、したがって、請求項1ないし12に係る発明は明確でないというものである。
これに対して、令和1年5月13日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び2においては、「矩形ループ状の磁性コア」「前記磁性コアは、・・・略U字状の第1コア部と、・・・略U字状の第2コア部とが、巻線中心軸方向から見て対向する端面が重なる位置に配置されており、」のように、磁性コアの第1コア部及び第2コア部の形状が明確に特定されており、それらの記載からみて中央磁脚が無いことも明確であるから、請求項1及び2の記載から、複合型リアクトルにおける磁束の流れを明確に把握することができる。
したがって、上記補正後の請求項1及び2に係る発明(本願発明1及び2)、並びに、従属請求項である請求項3ないし9に係る発明(本願発明3ないし9)はいずれも明確であるから、上記補正によって、当審拒絶理由で通知した理由2の記載不備は解消した。

4.まとめ
以上のとおりであるから、当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第6 原査定について
原査定で引用された引用文献A(上記引用文献2)には、上記第5の1.(2)で説示した事項を総合すると、
「各相のコイルを巻数差の少ない2つのコイルにそれぞれ分割し、ロ型コアの双方の脚部に磁路方向に対し巻線方向が同じくなるように同相の分割された2つのコイルを各々挿入するとともに、直列に電気的結合し、
各コア脚部において、一方の相のコイルが発生する磁気モーメントと、他方の相のコイルが発生する磁気モーメントとが上下逆になるように、各相の分割されたコイルをロ型コアの双方の脚部に各々配置する、コモンモードチョークコイル。」
の発明が記載されている。
しかしながら、引用文献Aに記載された上記発明は、コモンモードチョークコイルに関する発明であって、DC/DCコンバータに用いられる複合型リアクトルに関する発明ではなく、引用文献Aに記載のトランスの実施例では、2つのコイルを一般的にいうところの重ね巻きしており、コモンモードチョークコイルのような場合の巻き方をしていないことからみても、DC/DCコンバータに用いられる複合型リアクトルにそのまま適用することはできないものである。そうすると、DC/DCコンバータに用いられる複合型リアクトルが、原査定で引用された引用文献C(上記引用文献1)及び引用文献Dに記載のように周知であるとしても、DC/DCコンバータに用いられる複合型リアクトルに、コモンモードチョークコイルに関する引用文献Aに記載の発明をそのまま適用する動機付けはないといわざるを得ない。
また、原査定で引用された引用文献Bには、その段落【0012】、【0015】ないし【0018】、図2の記載からみて、
「脚部2a,2bを備える第1のU型コア2と脚部3a,3bを備える第2のU型コア3とを備え、
前記U型コア2,3は対向する脚部2a,3aおよび2b,3bを突き合わせて対向配置され、
第1コイルL1と第2コイルL2は、前記コア2,3の一方の突き合わせ脚部2a,3a側に同軸配置され、第3コイルL3と第4コイルL4は、前記コア2,3の他方の突き合わせ脚部2b,3b側に同軸配置され、
前記第1コイルL1と前記第3コイルL3とが互いに接続されており、一方、前記第2コイルL2と前記第4コイルL4とが互いに接続され、
前記第1コイルL1と前記第2コイルL2、および前記第3コイルL3と前記第4コイルL4とがそれぞれ逆の極性になるように、さらに、前記第1コイルL1と前記第3コイルL3、および前記第2コイルL2と前記第4コイルL4とがそれぞれ同一極性になるように、前記コイルL1?L4は巻回されている、
コモンモードチョークコイル1。」
の発明が記載されている。
しかしながら、引用文献Bに記載された上記発明は、引用文献Aに記載された発明と同様にコモンモードチョークコイルに関する発明であって、DC/DCコンバータに用いられる複合型リアクトルに関する発明ではないから、周知のDC/DCコンバータに用いられる複合型リアクトルに、コモンモードチョークコイルに関する引用文献Bに記載の発明をそのまま適用する動機付けはないといわざるを得ない。
したがって、本願発明1及び2は、当業者であっても引用文献A又は引用文献Bに記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明3ないし9は、本願発明1又は本願発明2の発明特定事項を全て含む発明であるから、本願発明1又は本願発明2と同じ理由により、当業者であっても引用文献A又は引用文献Bに記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、当審で通知した拒絶理由、及び、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-21 
出願番号 特願2014-195631(P2014-195631)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01F)
P 1 8・ 537- WY (H01F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐久 聖子久保田 昌晴  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 須原 宏光
國分 直樹
発明の名称 複合型リアクトル  
代理人 特許業務法人航栄特許事務所  

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