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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1355862
審判番号 不服2018-10674  
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-03 
確定日 2019-11-05 
事件の表示 特願2017-500062「ニードルパッサーを備えた止血クリップ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月 7日国際公開、WO2016/004046、平成29年 7月27日国内公表、特表2017-520329、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)6月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年(平成26年)7月1日、米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年11月20日付け:拒絶理由通知書
平成30年 2月28日 :意見書・手続補正書の提出
平成30年 3月28日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成30年 8月 3日 :審判請求書の提出

第2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1ないし9に係る発明は、その優先日前に外国において頒布された下記の引用文献に記載の発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献 米国特許出願公開第2010/0049219号明細書

第3 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、平成30年2月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
組織の開口を処置する為の装置であって、
近位端から遠位端まで長軸方向に延び、かつ内部全長に亘って延びる管腔を備えるカプセルと、
開放姿勢と閉鎖姿勢の間で移行可能となるように前記カプセルの前記管腔内に進退可能に収納される一対のアームであって、前記カプセルに対して遠位方向に動かされた際、同一対のアームの遠位末端が同遠位末端間に標的組織を受入れるように互いに離間された開放姿勢に向かって付勢され、かつ閉鎖姿勢において前記カプセルに対してロックされる一対のアームと、
前記一対のアームの第1アームに離脱可能に連結されたニードルであって、前記一対のアームの第2アームに向かって内側に横方向に延びその一部に沿って延びる連結構造体を含むニードルと、前記一対のアームの第2アームが、開口を備え、前記一対のアームが閉鎖姿勢に移行された際、前記連結構造体が前記開口に係合されることと、
前記ニードルの一部から前記カプセルを通って近位方向に延びる縫合糸と、
からなる装置。
【請求項2】
前記ニードルは、ニードルの連結構造体が前記開口に係合した際、壊れるように設計された脆弱なリンクを介して前記一対のアームの第1アームに連結され、かつ同ニードルは前記一対のアームが開放姿勢に移行された際、前記第1アームから離脱する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記連結構造体は、かかり返しを有する請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記一対のアームの第2アームの開口はかかり返しを備え、かつ前記連結構造体は同かかり返しを受入れる為に前記ニードルの一部の周囲に延在する溝である請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、前記一対のアームを開放姿勢と閉鎖姿勢の間で動かす為の同一対のアームに連結された制御部材をさらに備える請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、前記カプセルに離脱可能に連結された可撓性に富む部材を介して同カプセルに連結されたハンドルアセンブリをさらに備え、これにより前記制御部材は可撓性に富む部材を通ってハンドルアセンブリまで延在する請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、前記カプセル内の一対のアームを閉鎖姿勢にロックするためのロック機構をさらに備える請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、前記一対のアームがカプセル内にロックされた際、遠位方向の並進移動を抑制するように縫合糸は挟持される請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、前記縫合糸の挟持された部分の近位に延在する縫合糸の一部を切断する切断要素をさらに備える請求項8に記載の装置。」

第4 引用文献及び引用発明
1 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された上記引用文献には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
「【0002】The present invention relates generally to suturing devices and methods and, more specifically, to a suturing device for use through an endoscope.」
(当審訳:
本発明は、縫合装置及び方法、より具体的には、内視鏡を通して使用する縫合装置に関する。)

「【0036】One of the main challenges in flexible endoscopic surgery is reported to be the development of suturing and anastomatic devices. Embodiments of the present invention include a suturing device that can be used in endoscopic surgery. While the present invention may be used through a working channel of an endoscope in NOTES procedures, those of skill will recognize that the present invention is not limited to use with an endoscope or to NOTES procedures. ・・・」
(当審訳:
可撓性の内視鏡手術の主な課題の一つは、縫合及び吻合装置の開発であると報告されている。本発明の実施形態は、内視鏡手術で使用できる縫合装置を含む。本発明は、経管腔的内視鏡手術において、内視鏡の作業チャネルに通して使用される一方で、当業者であれば、本発明は、内視鏡との併用または経管腔的内視鏡手術に限定されるものではないことを認識するであろう。・・・)

「【0050】In the embodiment of the present invention illustrated in FIGS. 2 , 4 and 5 , the suturing device 10 further includes a first needle locking element 80 interacting with the first needle receiver 60 for selectively locking the suturing needle 70 in the first needle receiver 60 . Similarly, a second needle locking element 82 is provided and interacts with the second needle receiver 62 for selectively locking the suturing needle 70 in the second needle receiver. The needle locking elements may take a variety of forms. In the illustrated embodiment, the first needle locking element 80 has an elongated flexible base portion 84 which extends adjacent the flexible base member 22 and a working portion 86 that is disposed adjacent the first suturing arm 26 . The first needle locking element 80 has a working end 88 that engages the end of the suturing needle 70 . Similarly, the second needle locking element 82 has an elongated flexible base portion 90 which extends adjacent the flexible base member 22 and a working portion 92 that is disposed adjacent the second suturing arm 28 and terminates in a working end 94 .
【0051】The design of the needle locking elements depends on the design of the needle. Referring to FIG. 11 , one embodiment of the suturing needle 70 is illustrated in more detail. The suturing needle 70 has a needle body 96 which extends between a first pointed end 98 and a second pointed end 100 . Flattened areas 102 and 104 are defined in the outer surface of the needle body 96 adjacent the ends 98 and 100 , respectively. In some embodiments, the flattened areas have corresponding flattened areas on the other side of the body such that the flattened areas are provided in opposed pairs. A suture receiving slot 106 is defined in the needle body 96 between the ends. As shown, the suture receiving slot has a narrow opening 108 that opens into a larger slot. This allows threading or rethreading of the needle 70 . The suturing material can be ''caught'' by the opening 108 to place the suturing material into the slot 106 . FIG. 13 illustrates a piece of suturing material 160 being received through the narrow opening 108 into the suture receiving slot 106 . As shown in FIG. 16 , the suturing material 160 may move away from the opening 108 and deeper into the slot 106 .
【0052】For the embodiment of the suturing needle 70 with pairs of opposed flattened areas adjacent each end, the working ends 88 and 94 of the needle locking elements 80 and 82 may be forked, as shown in FIG. 2 and in the detail view of FIG. 3 . One arm of the forked end 88 is positioned so as to engage each flattened area adjacent one end of the suturing needle, thereby locking the suturing needle in the needle receiver. Each needle locking element has an extended position wherein the working end engages the needle and a retracted position wherein the needle is released. In operating, with the needle engaging both needle receivers, one needle locking element is moved to engage the needle while the other is move to release the needle, thereby moving the needle from one arm to the other.」
(当審訳:
【0050】 図2、4及び5に示す本発明の実施形態において、縫合デバイス10は、さらに、縫合針70を第1の針受部60に選択的に係止するための第1の針受部60と相互作用する第1の針係止部材80を含む。同様に、第2針係止部材82が提供され、第2の針受部に縫合針70を選択的に係止するための第2の針受部62と相互作用する。これらの針係止部材は、様々な形態をとることができる。図示の実施形態では、第1の針係止部材80は、第1の縫合アーム26に隣接して配置された可撓性ベース部材22および作業部86に隣接して延在する細長い可撓性基部84を有している。第1の針係止部材80は、縫合針70の端部に係合する作業端部88を有している。同様に、第2の針係止部材82は、第2の縫合アーム28に隣接して配置される可撓性基材22と作業部92に隣接して延び、作業端部94で終端する細長い可撓性基部90を有する。
【0051】 針係止要素のデザインは、針のデザインに依存する。図11を参照すると、縫合針70の一実施形態がより詳細に示されている。縫合針70は、第1端部98と第2端部100との間に延在する針本体96を有する。平坦化された領域102および104は、端部98および100に隣接した針本体96の外面のそれぞれに定められている。いくつかの実施形態において、平坦化された領域は、本体の裏側にそれと対応する平坦化された領域を、その平坦化された領域が互いに向き合った対となるように有している。縫合糸受容スロット106は、当該両端部の間の針本体96に定められる。図示されたように、縫合糸受容スロットは、狭い開口部108を有し、当該開口部はそれよりも大きなスロットに開口する。これにより、針70に糸を通したり、または糸を通し直すことができる。縫合用材料は、スロット106内に配置するよう開口部108によって「捕捉」される。図13は、狭い開口部108を通して縫合糸受容スロット106内に受け入れられた縫合用材料160の部分片を示す。図16に示されるように、縫合用材料160は開口部108から取り外すことも、スロット106内へとより深く移動させることもできる。
【0052】 各端部に隣接して対向する平坦化された領域の対を有する縫合針70の実施態様として、針係止部材80及び82の作業端部88及び94は、図2に示されたように、そして図3の詳細図にあるように二股に分かれている。二股端部88の一方のアームは、縫合針の一方の端部に隣接する平坦化された領域と係合するように配置され、それにより針受部に縫合針を係止する。各針係止部材は、作業端が針と係合する延伸位置と、針が開放される後退位置を有している。針を両方の針受部に係合するよう操作すると、一方の針係止部材が針と係合するよう移動され、他方の針係止部材が針を解放するよう移動し、それにより針が一方のアームから他方に移動する。)

「We claim
1 . A suturing device for suturing with a suturing needle having a first end and a second end, the suturing device comprising:
an elongated sheath having a working end for insertion through
a working channel in an endoscope, the sheath having an
inner passage defined through at least a portion of the sheath
adjacent the working end;
a suturing assembly comprising:
an elongated flexible base member having a working end
and a handle end;
a first suturing arm having a proximal end interconnected
with the working end of theelongated flexible base member
and an opposite distal end, a first needle receiver disposed
at the distal end of the first suturing arm;
a second suturing arm having a proximal end interconnected
with the working end of theelongated flexible base
member and an opposite distal end, a second needle
receiver disposed at the distal end of the second suturing
arm;
the suturing arms being movable between an open position
wherein the distal ends are spaced apart by a first distance
and a closed position wherein the distal ends are
spaced apart by a second distance less than the first
distance;
wherein the first and second suturing arms are formed of a
flexible and resilient materialsuch that moving the suturing
arms between the open and closed positions flexes the suturing
arms, the suturing arms being biased towards the open position;
the suturing assembly disposed through the inner passage of
the sheath, the sheath being movable relative to the suturing
assembly between a retracted position and an extended
position, the sheath in the extended position engaging the
suturing arms and urging the suturing arms towards the
closed position.

2 . The suturing device according to claim 1 , further comprising a first needle locking element interacting with the first needle receiver to selectively lock the suturing needle in the first needle receiver and a second needle locking element interacting with the second needle receiver to selectively lock the suturing needle in the second needle receiver.
(当審訳:
1.第1の端部および第2の端部を有する、縫合針で縫合するための縫合装置であって、前記縫合装置は、
内視鏡内の作業チャネルを通して挿入するための作業端部を有する細長いシースであって、前記シースは、作業端部に隣接するシースの少なくとも一部分を貫通する内側通路を有する細長いシース、及び縫合アセンブリを備えるものであり、前記縫合アセンブリは、
作業端部とハンドル端部を有する細長い柔軟なベース部材、
細長い柔軟なベース部材の作業端部と相互接続された近位端と、その反対側の遠位端を有し、第1の針受部がその遠位端に配置される第1の縫合アームと、
細長い柔軟なベース部材の作業端部と相互接続された近位端と、その反対側の遠位端を有し、第2の針受部がその遠位端に配置される第2の縫合アームと、
遠位端同士が第1の距離だけ離れている開位置と、遠位端が同士が第1の距離よりも短い第2の距離だけ離れている閉位置との間で移動可能である両方の縫合アームとを備えているものにおいて、
前記、第1及び第2の縫合アームは、開位置と閉位置との間で前記これらの縫合アームを動かすと、撓むように可撓性及び弾性材料で形成され、前記これらの縫合アームは開位置向かって付勢されており、
前記縫合アセンブリは、シースの内側通路を通って配置され、シースは、縫合アセンブリに対して後退位置と延伸位置との間で移動可能であり、シースは延伸位置で縫合アームに係合し、縫合アームを閉位置に向かって付勢するものである縫合装置。
2.第1の針受部と相互作用して縫合針を第1の針受部に選択的に係止する第1の針係止部材と、第2の針受部と相互作用して縫合針を第2の針受部に選択的に係止する第2の針係止部材とをさらに備える請求項1に記載の縫合装置。)

「図1、2


「図4



「図5




「図11




「図13


【0050】の「縫合針70を第1の針受部60に選択的に係止するための第1の針受部60と相互作用する第1の針係止部材80を含む。同様に、第2針係止部材82が提供され、第2の針受部に針70を選択的に係止するための第2の針受部62と相互作用する。」との記載から、「針70」は、「第2の針受部」に係止されているときは、「第1の針受部60」から離脱することから、第1の縫合アームに離脱可能に連結されているといえる。
2 上記摘記事項及び図面から、以下のことが看取できる。
図4及び13から、縫合針は、一方の縫合アームから他方の縫合アームに向かって内側に横方向に延びるように配置されていること及び他方の縫合アームは開口を備えていることが看取できる。
図4及び5から、縫合針は、第1及び第2の縫合アームが閉位置に移動したとき、他方の縫合アームの開口に係合されることが看取できる。
図13から、縫合針から縫合糸が近位端に延びていることが看取できる。

3 上記記載事項から、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「第1の端部および第2の端部を有する、縫合針で縫合するための縫合装置であって、
内視鏡内の作業チャネルを通して挿入するための作業端部及び内側通路を有する細長いシースは、作業端部に隣接するシースの少なくとも一部分を貫通する内側通路を有し、作業端部とハンドル端部を有する細長い柔軟なベース部材と、縫合針で縫合するための縫合アセンブリであって、細長い柔軟なベース部材の作業端部及び反対側の遠位端と相互接続された近位端を有する第1の縫合アームと、第1の縫合アームの遠位端に配置される第1の針受部と、細長い柔軟なベース部材の作業端及び反対側の遠位端と相互接続された近位端を有する第2の縫合アームと、第2の縫合アームの遠位端に配置される第2の針受部とを備え、
第1及び第2の縫合アームは、遠位端同士が第1の距離だけ離れている開位置と、遠位端同士が第1の距離よりも短い第2の距離だけ離れている閉位置との間で移動可能であり、
両方の縫合アームは、開位置と閉位置との間で両方の縫合アームを動かすと、両方の縫合アームが撓むように可撓性及び弾性材料で形成され、両方の縫合アームは開位置向かって付勢されており、
縫合アセンブリは、シースの内側通路を通って配置され、シースは、縫合アセンブリに対して後退位置と延伸位置との間で移動可能であり、シースは延伸位置で両方の縫合アームに係合し、両方の縫合アームを閉位置に向かって付勢され、
縫合針は、第1の縫合アームに離脱可能に連結されており、第1の端部と第2の端部との間に延在する針本体を有し、一方の縫合アームから他方の縫合アームに向かって内側に横方向に延びる針本体を備え、他方の縫合アームは開口を備え、第1及び第2の縫合アームが閉位置に移動したとき他方の縫合アームの開口に係合され、縫合針から縫合糸が近位端に延びている、
縫合装置。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「内視鏡内の作業チャネルを通して挿入するための作業端部及び内側通路を有する細長いシース」はその機能及び構造からみて、本願発明1の「近位端から遠位端まで長軸方向に延び、かつ内部全長に亘って延びる管腔を備えるカプセル」に相当し、以下同様に、「遠位端」は「遠位末端」に、「開位置向かって付勢されて」いる「両方の縫合アーム」は「一対のアーム」に、「第1の縫合アーム」は「第1アーム」に、「第2の縫合アーム」は「第2アーム」に、「縫合針」は「ニードル」に、「開位置」は「開放姿勢」に、「閉位置」は「閉鎖姿勢」に、「一方の縫合アームから他方の縫合アームに向かって内側に横方向に延びる針本体」は「一対のアームの第2アームに向かって内側に横方向に延びその一部に沿って延びる連結構造体」に、「縫合糸」は「縫合糸」にそれぞれ相当する。
引用発明の「第1及び第2の縫合アームは、遠位端同士が第1の距離だけ離れている開位置と、遠位端同士が第1の距離よりも小さい第2の距離だけ離れている閉位置との間で移動可能であり、
両方の縫合アームは、開位置と閉位置との間で両方の縫合アームを動かすと、両方の縫合アームが撓むように可撓性及び弾性材料で形成され、両方の縫合アームは開位置向かって付勢されて」いる態様は、本願発明1の「開放姿勢と閉鎖姿勢の間で移行可能となるように前記カプセルの前記管腔内に進退可能に収納される一対のアームであって、前記カプセルに対して遠位方向に動かされた際、同一対のアームの遠位末端が同遠位末端間に標的組織を受入れるように互いに離間された開放姿勢に向かって付勢され」ている態様に相当する。
引用発明の「縫合針」が「第1の縫合アームに離脱可能に連結されて」いる態様は、本願発明1の「ニードル」が「前記一対のアームの第1アームに離脱可能に連結され」ている態様に相当する。
引用発明の「縫合針」の「針本体」が「他方の縫合アームは開口を備え、第1及び第2の縫合アームが閉位置に移動したとき他方の縫合アームの開口に係合され」る態様は、本願発明1の「前記一対のアームの第2アームが、開口を備え、前記一対のアームが閉鎖姿勢に移行された際、前記連結構造体が前記開口に係合される」態様に相当する。
引用発明の「縫合針で縫合するための縫合装置」は、本願発明1の「組織の開口を処置する為の装置」と「組織を処置する為の装置」の限りで一致する。
してみると、本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりとなる。

(一致点)
組織を処置する為の装置であって、
近位端から遠位端まで長軸方向に延び、かつ内部全長に亘って延びる管腔を備えるカプセルと、
開放姿勢と閉鎖姿勢の間で移行可能となるように前記カプセルの前記管腔内に進退可能に収納される一対のアームであって、前記カプセルに対して遠位方向に動かされた際、同一対のアームの遠位末端が同遠位末端間に標的組織を受入れるように互いに離間された開放姿勢に向かって付勢される一対のアームと、
前記一対のアームの第1アームに離脱可能に連結されたニードルであって、前記一対のアームの第2アームに向かって内側に横方向に延びその一部に沿って延びる連結構造体を含むニードルと、前記一対のアームの第2アームが、開口を備え、前記一対のアームが閉鎖姿勢に移行された際、前記連結構造体が前記開口に係合されることと、
前記ニードルの一部から近位方向に延びる縫合糸と、
からなる装置。」

(相違点1)
本願発明1は「組織の開口を処置する為の装置」であるのに対して、引用発明の「縫合装置」は「組織の開口を処置する為の装置」であるか不明な点。
(相違点2)
「一対のアーム」について、本願発明1は、「閉鎖姿勢において前記カプセルに対してロックされる」のに対して、引用発明は、そのような構成を有するか不明な点。
(相違点3)
「縫合糸」について、本願発明1では、「ニードルの一部から前記カプセルを通って近位方向に延び」ているのに対して、引用発明では、そのような構成を有するか不明な点。

(判断)
事案に鑑み、先ず、相違点2について検討する。
上記「第4」の「1」に記載のとおり、引用発明は、縫合の際に一対のアームが閉位置であるときに、縫合アームをシースに対してロックするものではなく、またそのようにすることについて、引用文献には示唆もなく、本願優先日前に技術常識であったという証拠もない。
してみると、引用発明において、相違点2に係る本願発明1の構成を想到することはできない。
そうすると、相違点1及び3の検討をするまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし9について
本願発明2ないし9は、本願発明1を直接的又は間接的に引用し、本願発明1の発明特定事項のすべてを含み、上記相違点2に係る本願発明1の「閉鎖姿勢において前記カプセルに対してロックされる一対のアーム」という構成を備えるものであるから、上記1のとおり、本願発明1と同じ理由により、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし9は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-10-23 
出願番号 特願2017-500062(P2017-500062)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 沼田 規好  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 関谷 一夫
莊司 英史
発明の名称 ニードルパッサーを備えた止血クリップ  
代理人 恩田 誠  
代理人 本田 淳  
代理人 恩田 博宣  

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