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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 F03G |
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管理番号 | 1355966 |
異議申立番号 | 異議2018-700613 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-07-24 |
確定日 | 2019-08-28 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6268714号発明「地熱発電システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6268714号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。 特許第6268714号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 |
理由 |
特許第6268714号の請求項1ないし4に係る特許についての発明は、特許権者により平成30年12月19日に提出された訂正請求書に添付した、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。 これに対して、平成31年3月25日付け(発送日:平成31年3月28日)で取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。 そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項1ないし4に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 地熱発電システム 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、地熱発電システムに関する。 【背景技術】 【0002】 地熱発電システムとして、地上から地熱帯まで延びる二重管構造の地熱吸収器を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の地熱発電システムでは、高圧給水ポンプによって加圧された水が地熱吸収器の内管に供給され、この水が、内管を通って地熱帯まで下降して地熱帯から受熱して熱水となり、この熱水が、地熱吸収器の内管と外管との間を通して地上に取り出されて蒸気発生器において蒸気となり、この蒸気が蒸気タービンを回転させることで、発電が行われる。そして、蒸気タービンを回転させた後の蒸気が、蒸気タービンから復水器に送られて復水器において水となり、この水が、上記高圧給水ポンプによって加圧されて地熱吸収器の内管に供給される。 【0003】 ここで、この地熱発電システムでは、地熱帯から熱を吸収するのみで熱水が汲み上げられないため、蒸気発生器や蒸気タービン等に送られる熱水や蒸気に地下のミネラル等が含まれず、蒸気発生器や蒸気タービンや配管等にミネラル等の不純物が付着することがない。また、地熱帯の地下水系に影響を与えることがなく、温泉水を枯渇させる虞もない。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開2011-52621号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 特許文献1に記載の地熱発電システムでは、地熱吸収器で水が蒸気化して熱吸収効率が低下することの抑制を目的として、蒸気タービンの下流側の復水器から地熱吸収器に高圧の水を供給するが、そのために、地熱吸収器に給水するポンプを高圧給水ポンプにする必要があり、給水ポンプのコストが高くなる。また、地熱吸収器やこれに繋がる配管等を耐圧性の高いものにする必要があり、これらのコストも高くなる。 【0006】 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、地熱帯から熱水を汲み上げることなく、蒸気タービンを回転させる蒸気を生成する地熱発電システムにおいて、地熱吸収器に液体を供給するポンプのコスト増を抑制することを課題にするものである。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上記課題を解決するために、本発明に係る地熱発電システムは、第一の液体が地上から地熱帯まで下降して前記地熱帯で熱を吸収して地上まで上昇する地熱吸収器と、前記地熱吸収器を経由した第一の液体が一次側に、前記第一の液体よりも沸点が低い第二の液体が二次側に供給され、前記第一の液体から前記第二の液体へ熱を移動させて前記第二の液体を蒸気化させる熱交換器と、前記熱交換器で生成された蒸気で回転する蒸気タービンとを備える地熱発電システムであって、前記地熱吸収器、前記熱交換器の一次側、及び該熱交換器の一次側の出口と前記地熱吸収器との間に配置される1つのポンプが流路中に設けられ、前記ポンプにより前記第一の液体が、前記地熱吸収器、前記熱交換器の順に循環される循環流路を備え、該第一の液体が液体のまま循環される循環流路は、閉回路であるとともに、前記第一の液体の蒸気圧以上の圧力に設定され、前記循環流路に設けられた前記ポンプ、前記熱交換器の一次側、前記地熱吸収器は、前記第一の液体の蒸気圧以上の圧力に耐えるだけの耐圧性を有する。 【0008】 前記地熱発電システムは、前記熱交換器の二次側、前記蒸気タービン、前記蒸気タービンを経由した前記蒸気を復液する復液器、前記復液器により復液された前記第二の液体が貯留される貯留タンク、及び前記貯留タンクから前記熱交換器の二次側に前記第二の液体を供給する第二のポンプが流路中に設けられ、前記第二の液体が液化したり蒸気化したりしながら循環する第二の循環流路を備えてもよい。 【0009】 前記地熱発電システムにおいて、前記地熱吸収器は、下端において内外が連通した二重管構造であってもよく、前記第一の液体は、外管と内管との間および前記内管の内側の何れか一方を通って下降し、前記外管と前記内管との間および前記内管の内側の何れか他方を通って上昇してもよい。 【0010】 前記地熱発電システムにおいて、前記第一の液体は油であってもよい。 【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、地熱帯から熱水を汲み上げることなく、蒸気タービンを回転させる蒸気を生成する地熱発電システムにおいて、地熱吸収器に液体を供給するポンプのコスト増を抑制することができる。 【図面の簡単な説明】 【0012】 【図1】一実施形態に係る地熱発電システムの概略構成を示す図である。 【図2】地熱吸収器の上部を示す立断面図である。 【発明を実施するための形態】 【0013】 以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る地熱発電システム10の概略構成を示す図である。この図に示すように、地熱発電システム10は、水が地中を経由して循環する第一の循環流路20と、水よりも沸点が低い液体が液化したり蒸気化したりしながら地上で循環する第二の循環流路40と、第二の循環流路40の液体を復液するのに利用される水を供給する流路60とを備えている。ここで、第二の循環流路40で用いられる液体としては、アンモニア水(濃度25%で標準沸点が37.7℃)、ペンタン(標準沸点が36.07℃)等が挙げられる。 【0014】 第一の循環流路20には、ポンプ22と、熱交換器24の一次側と、地熱吸収器30とが設けられている。また、第二の循環流路40には、上記熱交換器24の二次側と、セパレーター42と、蒸気タービン44と、復液器(熱交換器)46の一次側と、復液タンク48と、ポンプ50とが設けられている。蒸気タービン44には発電機70が接続されており、蒸気タービン44の回転により発電機70が作動されて発電が行われる。さらに、流路60には、上記復液器46の二次側が設けられている。 【0015】 地熱吸収器30は、地上から地熱帯まで延びる二重管式の熱交換器であり、底が閉じた外管32と、底が開いた内管34とを備えている。内管34の開口した下端は、外管32の下端に配されており、内管34内の流路と、内管34と外管32との間の流路とは、これらの下端において連通している。外管32は、上端が開口しているのみでその他の部分は閉じており、地熱帯から外管32内に熱水が流入しないようになっている。一方で、外管32の内部と地熱帯との間は熱伝導が良好であり、地熱帯から外管32内の水に熱が移動するようになっている。 【0016】 図2は、地熱吸収器30の上部を示す立断面図である。この図に示すように、内管34は、外管32の上部から上方へ延びており、外管32の上部と内管34とは袋ナット35で締結されている。また、袋ナット35の近傍には、外管32と内管34との間に嵌め込まれたパッキン36が設けられている。外管32の上部におけるパッキン36より下側には、配管26が接続されており、この配管26がポンプ22の吐出口に接続されている。 【0017】 図1に示すように、内管34の上部は、熱交換器24の一次側の入口に接続され、熱交換器24の一次側の出口は、ポンプ22の吸込口に接続されている。第一の循環流路20では、ポンプ22が水を、地熱吸収器30、熱交換器24の一次側の順序で循環させる。地熱吸収器30では、配管26から外管32の上部に供給された水が、外管32と内管34との間を通って下降する際に、地熱帯から受熱して熱水となり、この熱水が、内管34内を通って地上まで上昇する。 【0018】 第一の循環流路20では、120℃?150℃の熱水が熱交換器24の一次側へ供給される。ここで、第一の循環流路20で循環する水の圧力は、120℃?150℃の熱水が蒸気化しないように設定されている。例えば、熱水の温度が120℃であれば、約0.2MPa以上、熱水の温度が150℃であれば、約0.5MPa以上である。また、第一の循環流路20に設けられたポンプ22や熱交換器24や地熱吸収器30や配管は、第一の循環流路20の圧力に耐え得るだけの耐圧性を有するものである。 【0019】 第二の循環流路40では、ポンプ50の吐出口は、熱交換器24の二次側の入口に接続され、熱交換器24の二次側の出口は、セパレーター42の入口に接続されている。また、セパレーター42の出口は、蒸気タービン44の入口と、復液タンク48に接続されている。また、蒸気タービン44の出口は、復液器46の一次側の入口に接続され、復液器46の二次側の出口は、復液タンク48に接続されている。さらに、復液タンク48は、ポンプ50の吸込口に接続されている。 【0020】 以上のような構成の第二の循環流路40では、ポンプ50が、液体を、復液タンク48から、熱交換器24の二次側に供給する。熱交換器24では一次側に供給された120?150℃の熱水から二次側に供給された液体へ熱が移動する。ここで、熱交換器24の二次側に供給された液体は、水よりも沸点が低い低沸点液体(例えば、標準沸点が40℃未満)であるため蒸気化される。 【0021】 熱交換器24の二次側で生成された蒸気は、セパレーター42に送られる。セパレーター42では、蒸気とこれに混じった液体とが分離され、蒸気は蒸気タービン44に送られ、液体は復液タンク48に送られる。第二の循環流路40における蒸気タービン44の下流側には、復液器46の一次側が設けられており、この復液器46の二次側には冷却媒体としての水が供給される。このため、復液器46の一次側に供給された蒸気は冷却・減圧されるため、蒸気タービン44の上流側と下流側との間に圧力差ができる。これによって、高温高圧の蒸気が、蒸気タービン44の上流側から下流側へ移動し、蒸気タービン44を回転させる。 【0022】 復液器46では一次側に供給された蒸気から二次側に供給された水へ熱が移動する。なお、復液器46の二次側に供給された水は、その熱を受けて温水となるが、この温水は排水せずに生活用水等として有効に利用してもよい。一方、復液器46の一次側に供給された蒸気は、冷却・減圧されて液体となり、復液タンク48に送られる。 【0023】 以上説明したように、本実施形態に係る地熱発電システム10は、地熱吸収器30、熱交換器24の一次側、及びポンプ22が設けられ、該ポンプ22により水が循環される第一の循環流路20を備えており、熱交換器24の二次側に供給された水よりも沸点が低い液体を、一次側に供給された熱水からの熱の移動により蒸気化させ、生成した蒸気により蒸気タービン44を回転させる。 【0024】 ここで、蒸気タービン44の下流側で復液された液体を、地熱吸収器30にポンプで供給して蒸気化させることなく熱水として取り出そうとする場合には、該液体をポンプで高圧化して地熱吸収器30に供給しなければならず、高圧ポンプが必要になる。それに対して、本実施形態に係る地熱発電システム10では、閉回路であり、蒸気圧以上の圧力に設定された第一の循環流路20において、ポンプ22で水を地熱吸収器30と熱交換器24の一次側を通るように循環させればよく、ポンプ22は、水を高圧にする高圧ポンプである必要が無く、蒸気圧以上の圧力に耐え得る耐圧性を有していればよい。従って、ポンプ22のコストを抑えることができる。 【0025】 また、本実施形態に係る地熱発電システム10では、第一の循環流路20において、水を気液二相流体ではなく液体として循環させることにより、気液二相流体が持つ熱エネルギーの損失や圧力損失等の様々な問題を解決することができる。また、地熱吸収器30から気液二相流体を取り出す場合に比して、効率よく熱エネルギーを得ることができることにより、地熱吸収器30の径を小さくすることができ、ボーリングの孔径を小さくすることができる。 【0026】 また、本実施形態に係る地熱発電システム10は、第二の循環流路40を備えている。この第二の循環流路40には、熱交換器24の二次側、蒸気タービン44、蒸気タービン44を経由した蒸気を復液する復液器46の一次側、復液された液体が貯留される復液タンク48、及び、復液タンク48から熱交換器24の二次側に液体を供給するポンプ50が設けられており、この第二の循環流路40では、水よりも沸点が低い液体が、液化したり蒸気化したりしながら循環する。これによって、アンモニア水やペンタン等の媒体を、捨てることなく継続して使用できるため、当該媒体の使用量を低減でき、コストを抑えることができる。 【0027】 また、地熱吸収器30は、下端において内外が連通した二重管構造であり、水は、外管32を通って下降し、地熱帯で熱を吸収して熱水となって内管34を通って上昇する。これによって、地熱帯から熱水を汲み上げることなく蒸気を生成することができる。 【0028】 なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、第一の循環流路20で循環させる液体を水としたが、当該液体は、第二の循環流路40で循環させる液体よりも沸点が高いものであればよく、水の他に油等が挙げられる。ここで、油の場合、水に比して沸点が高く蒸気化し難いことから、第一の循環流路20の圧力をより低く抑えることができる。従って、第一の循環流路20の配管や地熱吸収器30や熱交換器24やポンプ22に要求される耐圧性が低くなり、設備のコストを抑えることができる。 【0029】 また、上述の実施形態では、地熱吸収器30において、水を、外管32と内管34との間を通して下降させ、内管34の内側を通して上昇させるが、内管34の内側を通して下降させ、外管32と内管34との間を通して上昇させてもよい。さらに、地熱吸収器30を、下端で内外が連通された二重管構造としたが、地熱吸収器は、液体が地熱帯まで下降して熱を吸収して地上まで上昇する構成であればよく、例えば、U字管構造や、下降部と上昇部とが下端を除いて仕切り板で仕切られた構造等でもよい。 【0030】 さらに、上述の実施形態では、第二の循環流路40において、水よりも沸点が低い液体を液化させたり蒸気化させたりしながら循環させたが、これは必須ではない。また、第二の循環流路40において、セパレーター42を設けて、蒸気と液体とを分離したが、これも必須ではない。 【符号の説明】 【0031】 10 地熱発電システム、20 第一の循環流路、22 ポンプ、24 熱交換器、26 配管、30 地熱吸収器、32 外管、34 内管、35 袋ナット、36 パッキン、40 第二の循環流路、42 セパレーター、44 蒸気タービン、46 復液器、48 復液タンク、50 ポンプ、60 流路、70 発電機 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 第一の液体が地上から地熱帯まで下降して前記地熱帯で熱を吸収して地上まで上昇する地熱吸収器と、 前記地熱吸収器を経由した第一の液体が一次側に、前記第一の液体よりも沸点が低い第二の液体が二次側に供給され、前記第一の液体から前記第二の液体へ熱を移動させて前記第二の液体を蒸気化させる熱交換器と、 前記熱交換器で生成された蒸気で回転する蒸気タービンとを備える地熱発電システムであって、 前記地熱吸収器、前記熱交換器の一次側、及び該熱交換器の一次側の出口と前記地熱吸収器との間に配置される1つのポンプが流路中に設けられ、前記ポンプにより前記第一の液体が、前記地熱吸収器、前記熱交換器の順に循環される循環流路を備え、 該第一の液体が液体のまま循環される循環流路は、閉回路であるとともに、前記第一の液体の蒸気圧以上の圧力に設定され、 前記循環流路に設けられた前記ポンプ、前記熱交換器の一次側、および前記地熱吸収器は、前記第一の液体の蒸気圧以上の圧力に耐えるだけの耐圧性を有することを特徴とする地熱発電システム。 【請求項2】 前記熱交換器の二次側、前記蒸気タービン、前記蒸気タービンを経由した前記蒸気を復液する復液器、前記復液器により復液された前記第二の液体が貯留される貯留タンク、及び前記貯留タンクから前記熱交換器の二次側に前記第二の液体を供給する第二のポンプが流路中に設けられ、前記第二の液体が液化したり蒸気化したりしながら循環する第二の循環流路を備える請求項1に記載の地熱発電システム。 【請求項3】 前記地熱吸収器は、下端において内外が連通した二重管構造であり、前記第一の液体は、外管と内管との間および前記内管の内側の何れか一方を通って下降し、前記外管と前記内管との間および前記内管の内側の何れか他方を通って上昇する請求項1又は請求項2に記載の地熱発電システム。 【請求項4】 前記第一の液体は油である請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の地熱発電システム。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-07-18 |
出願番号 | 特願2013-29003(P2013-29003) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZAA
(F03G)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 西中村 健一 |
特許庁審判長 |
渋谷 善弘 |
特許庁審判官 |
水野 治彦 鈴木 充 |
登録日 | 2018-01-12 |
登録番号 | 特許第6268714号(P6268714) |
権利者 | 株式会社大林組 |
発明の名称 | 地熱発電システム |
代理人 | 横井 直 |
代理人 | 一色国際特許業務法人 |
代理人 | 一色国際特許業務法人 |