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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41F
管理番号 1356398
審判番号 不服2018-2414  
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-20 
確定日 2019-10-24 
事件の表示 特願2013-269514「見当マーク検出ユニット、調整方法、多色刷印刷システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 6日出願公開、特開2015-123658〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月26日の出願であって、平成29年3月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月5日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、同年11月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年2月20日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、当審において、平成31年3月5日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、同年5月10日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成31年5月10日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
分光感度特性の異なる複数の光電変換領域を有する受光素子と、
前記複数の光電変換領域からの信号に基づいてウェブに付された見当マークを検出する見当マーク検出部と、
前記見当マーク検出部に入力されるべき各信号であって前記複数の光電変換領域からの各信号に基づく各信号波形のそれぞれを前記見当マークの検出精度の調整に使用するS/N比が比較可能な視認できる態様で出力する出力部と、を備えることを特徴とする見当マーク検出ユニット。」(以下「本願発明」という。)


第3 引用刊行物等
1.引用刊行物等の記載
(1)引用例1
当審の拒絶の理由に引用し、本願の出願日前である平成9年9月2日に頒布された刊行物である特開平9-226097号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は多色印刷機において印刷された見当マークから印刷見当を検出し調整する技術分野に属する。特に、多種類の印刷インキが用いられるため見当マークの分光特性が多様である場合においても、検出条件の適正な設定を行うことができる印刷見当検出装置および印刷見当調整装置に関するものである。」
イ.「【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明においては、分光感度の異なる複数の検出部分が独立した信号を出力する見当マーク検出器と、その複数の検出部分が出力する信号を所定の係数によって重み付けを行って加算し混合量を出力する混合演算器と、その混合量に基づいて見当ずれ量を出力する見当ずれ演算器と、を有し、上記所定の係数を自由にかつ簡便に設定できるようにしたものである。」
ウ.「【0020】
【実施例】以下、本発明について実施例により説明する。図1は本発明の印刷見当検出装置の構成を示す図である。図1において、1は見当マーク検出器、2は混合演算器、3は見当ずれ演算器、4はイーサネット等のLAN(local area network)、5はパーソナルコンピュータ、ワークステーション等のLAN4に接続されたコンピュータ、6は印刷用紙の走行情報を出力するロータリーエンコーダ、7は印刷用紙の紙面である。また、見当マーク検出器1はさらに細部より構成されており、8は白色光源、9は結像のためのレンズ、10,11はハーフミラー、12は赤色光を透過する光学フィルタR、13は緑色光を透過する光学フィルタG、14は青色光を透過する光学フィルタB、15は赤色光を撮像するCCDラインセンサカメラ、16は緑色光を撮像するCCDラインセンサカメラ、17は青色光を撮像するCCDラインセンサカメラ、18は赤色撮像信号のアンプ、19は緑色撮像信号のアンプ、20は緑色撮像信号のアンプ、21はCCDラインセンサカメラの駆動回路である。
【0021】以上の構成において、次に動作を説明する。印刷用紙の余白部分に印刷される見当マークを検出するため、白色光源8により見当マークが印刷される余白部分(紙面7)を照明する。紙面7の照明される部分は印刷用紙の移送とともに変化している。以下に述べるCCDラインセンサにより主走査が行われ、かつ、この印刷用紙の移送により副走査が行われることにより画像情報が読み取られる。紙面7から反射された光は結像レンズ9を経て、ハーフミラー10とハーフミラー11によって光束が三分割される。分割された光束の一つは赤色光を透過するフィルタR12を介してCCDラインセンサ15において結像し、分割された光束の一つは緑色光を透過するフィルタG13を介してCCDラインセンサ16において結像し、分割された光束の一つは青色光を透過するフィルタB14を介してCCDラインセンサ17において結像する。その結果、CCDラインセンサ15は赤色光に分光感度を有し、CCDラインセンサ16は緑色光に分光感度を有し、CCDラインセンサ17は青色光に分光感度を有する。
【0022】CCDラインセンサ15,16,17はCCDラインセンサ駆動回路21によって駆動されており、CCDラインセンサ駆動回路21はロータリーエンコーダパルスを入力する。ロータリーエンコーダ6は印刷機の原動軸等に接続されており、ロータリーエンコーダ6が出力するロータリーエンコーダパルスは印刷タイミングを与える。すなわち、CCDラインセンサ駆動回路21は、印刷タイミングに同期して、CCDラインセンサ15,16,17が紙面7の読取りを行うようにCCDラインセンサを駆動する。印刷タイミングに同期することにより、印刷速度変動に関係なく、所定のタイミングで所定の印刷部分を読取ることができる。このCCDラインセンサ15,16,17が出力する信号を入力し、アンプ18,19,20は増幅して混合演算器2に出力する。
【0023】混合演算器2はアンプ18,19,20を介してCCDラインセンサ15,16,17が出力する信号を入力し、それらの信号を所定の係数によって重み付けを行って加算し混合量を出力する。混合演算器2は、CCDラインセンサ15,16,17が出力する信号を入力するとそれらのアナログ信号をA/D変換してディジタルデータにし、ラッチ,レジスター等のメモリに記憶する。一方、係数記憶要素(図4参照)に記憶されている係数から所定の係数を選択要素(図4参照)によって選択し、やはりラッチ,レジスター等のメモリに記憶する。メモリに記憶されたCCDラインセンサ15,16,17のディジタルデータと係数との積が3つ演算され、それら3つの積の和が演算されると混合量が得られ、その混合量が出力される。この演算は混合演算器2の演算要素(図4参照)によって行われる。
【0024】混合演算器2の係数記憶要素が記憶する係数はコンピュータ5からLAN4を通じて転送されたデータを設定したものである。また、混合演算器2の選択要素はロータリーエンコーダ6が出力するロータリーエンコーダパルスによって与えられる印刷タイミングによって、特定される係数を選択する。この印刷タイミングによりCCDラインセンサの検出領域に特定の色の見当マークが入ることが判定され、その色の見当マークを検出するのに最適な係数が選択される。この印刷タイミングと選択する係数との関係を記述した選択データ(図4参照)は、上述の係数と同様にコンピュータ5からLAN4を通じて転送されたデータを設定したものである。
【0025】混合演算器2が出力する混合量を見当ずれ演算器3が入力し見当ずれ量を出力する。見当ずれ演算器3はロータリーエンコーダ6が出力するロータリーエンコーダパルスを入力しており、入力した混合量が印刷物のどの部分を撮像して得たものであるかを判別することができる。したがった、見当ずれ演算器3においては、混合量に基づいて見当マークの画像データを再現することができる。混合量は、たとえば1バイトからなる多値データであるから、2値化をして2値の見当マークの画像データを再現し、その重心を演算し、重心の座標を見当マークの位置座標とする。この座標を、1つ上流の印刷ユニットの見当マークの座標と比較して、見当が合っている場合からのずれを演算することにより、見当ずれ量を演算する。」
エ.一般に、「光束」とは、「ある面を通過する光の明るさを表す物理量」を意味するところ、引用例1における「光束」とは、上記ウ.【0021】を参酌すると、「紙面7から反射された光」の意味であると解する。

上記ア乃至エの記載から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「見当マークが印刷される余白部分(紙面7)を照明する白色光源8、紙面7から反射された光を結像レンズ9を経て三分割するハーフミラー10とハーフミラー11、分割された紙面7から反射された光の一つが赤色光を透過するフィルタR12を介して結像される赤色光に分光感度を有するCCDラインセンサ15、分割された紙面7から反射された光の一つが緑色光を透過するフィルタG13を介して結像される緑色光に分光感度を有するCCDラインセンサ16、分割された紙面7から反射された光の一つが青色光を透過するフィルタB14を介して結像される青色光に分光感度を有するCCDラインセンサ17、からなる見当マーク検出器1と、このCCDラインセンサ15,16,17が出力する信号をアンプ18,19,20を介して入力され所定の係数によって重み付けを行って加算し混合量を出力する混合演算器2、混合演算器2が出力する混合量が入力され見当ずれ量を出力する見当ずれ演算器3、からなる印刷見当検出装置であって、見当ずれ演算器3は、混合量である多値データを2値化をして2値の見当マークの画像データを再現し、その重心を演算し、重心の座標を見当マークの位置座標とし、この座標を、1つ上流の印刷ユニットの見当マークの座標と比較して、見当が合っている場合からのずれを演算することにより、見当ずれ量を演算する、印刷見当検出装置。」

(2)引用例2
当審の拒絶の理由に引用し、本願の出願日前である平成5年1月8日に頒布された刊行物である実願平3-56651号(実開平5-441号)のCD-ROM(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案はウエブなどの被測定物上に印されたマークの位置を検出するマーク位置検出装置に関する。」
イ.「【0010】
【考案が解決しようとする課題】
このように受光素子を回転軸回りに回転移動させるため次のような問題点があった。
回転軸の摩擦、ガタなどによる位置決めが不正確となる。
使用中の振動などにより位置ずれが生じる。
受光素子が回転するのでこれに接続されているリード線の切断が生じる可能性がある。
受光素子を回転させるため、オペレータが運転中の装置に近づく必要があり、危険がある。
【0011】
本考案は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、被測定物からの複数の反射光導光位置に受光素子を固定し、安定した性能を有するマーク位置検出装置を提供することを目的とする。」
ウ.「【0015】
次に動作について説明する。
走行する被測定物4からの拡散反射光と正反射光は、それぞれの受光素子5で同時に受光検出するが、拡散反射光受光素子と正反射光受光素子とでは、受光方法が異なるため、当然受光信号の状態も異なる。被測定物4が乱反射する紙などの場合、拡散反射光受光素子の出力を選択する。また、鏡面反射に近いアルミフォイル、フイルム、銀地印刷のような場合は正反射光受光素子の出力を選択する。この選択は被測定物4の種類に応じてオペレータがスイッチによって切り換えればよい。」

上記ア乃至ウの記載から、引用例2には、次の技術事項(以下「引用例2記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「被測定物4からの拡散反射光と正反射光の検出に際し、拡散反射光受光素子の出力を選択するか、正反射光受光素子の出力を選択するかを、被測定物4の種類に応じてオペレータがスイッチによって切り換えて選択してなる、マーク位置検出装置。」

(3)引用例3
当審の拒絶の理由に引用し、本願の出願日前である平成9年2月4日に頒布された刊行物である特開平9-30680号公報(以下「引用例3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内部にモータやリレー等の駆動部を備え、ディスプレイのような表示部を見ながら一定の操作をする装置に設けられ、駆動部の動作を診断するための電流波形を容易に見ることのできる診断結果表示機能付き装置に関する。」
イ.「【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のような従来の装置の診断にあたっては次のような解決すべき課題があった。上記のように精密かつ高い信頼性を要求される駆動部の診断にはオシロスコープ等による出力波形の観察が必要となるが、このためには各種の測定器を用意する必要がある。出荷前の検査は工場において行うため、このような設備は十分に確保できる。ところが、出荷後、例えば銀行の窓口等で実際に使用されている装置の診断にあたっては、サービスマンはシンクロスコープ等の大型測定器を現場に持ち込む必要がある。しかも、比較的作業スペースが狭いことからこの種の測定器の取扱いや操作にも問題が生じていた。」
ウ.「【0014】この実施例では、駆動回路部15、磁気ストライプリード/ライト部16及びバーコードリーダ部17の出力信号波形が取り出され、信号変換部30において適宜選択されて表示処理される構成となっている。信号選択部30に対しては、図5を用いて後で説明するような波形選択信号46が入力し、いずれの波形を表示させるかを選択できる構成となっている。なお、このための波形選択信号46は操作部1から入力される構成となっている。また、信号変換部30で得られた信号波形はディジタル信号化されて記憶部12のRAM14等に一時格納される構成となっている。このデータは表示部3に表示することができるような画像データに変換されて、サービスマン等の要求によって表示部3に表示される。

【0017】図7には、磁気ヘッドの出力波形説明図を示す。磁気ヘッドの前を通帳等が通過すると、その出力信号はこの図の波形36に示すようになる。即ち、出力信号は書き込まれた符号の内容に従って、その書込みピッチに応じた周期で変化する。このような信号を取り込むためには、次のような回路が採用される。

【0021】図9には、スリット信号パルス説明図を示す。DCモータを速度制御しあるいはDCモータによって搬送される媒体の搬送位置を制御する場合、そのサーボ機構を駆動するためにDCモータの回転を検出する。これにはよく知られたロータリエンコーダが使用される。このロータリエンコーダは、DCモータの駆動軸に取り付けられた円板に多数のスリットを設けたものである。モータが回転するとその円板が回転し、スリットを挟んで配置した透過型光センサによってその円板の回転が検出される。即ち、スリットとその間の円板の壁によって光センサはスリット間隔と円板の回転速度に応じた周期でオンオフされる。この信号をスリット信号と呼び、これはモータの速度に比例した周期で検出される。図9に示すスリット信号パルスは、モータの速度あるいは媒体の搬送速度や位置をそのまま表す情報となる。このスリット信号パルスをモータの駆動電流波形と同期するように並べて表示すれば、モータの回転速度とそのときの駆動電流との関係が明確になる。また、このとき、単位時間当りのスリット信号パルスの数やスリット信号パルスの周期を数値化し、同時に表示させたり、加速制御中に目標速度等を表示させたりすることも可能である。」

上記ア乃至ウの記載から、引用例3には、次の技術事項(以下「引用例3記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「選択した出力信号波形をサービスマン等の要求によって表示部に表示する、診断結果表示機能付き装置。」


第4 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、
1.後者の「CCDラインセンサ15,16,17」の各「CCDラインセンサ」は、前者の「光電変換領域を有する受光素子」に相当し、後者の「CCDラインセンサ15」、「CCDラインセンサ16」及び「CCDラインセンサ17」は、互いに分光感度特性が異なるところ、この「CCDラインセンサ15」、「CCDラインセンサ16」及び「CCDラインセンサ17」を総体としてみれば、前者の「分光感度特性の異なる複数の光電変換領域を有する受光素子」に相当する。
2.後者の「CCDラインセンサ15,16,17が出力する信号」は、前者の「複数の光電変換領域からの信号」に相当する。
3.後者の「紙面7」及び「見当マーク」は、それぞれ、前者の「ウェブ」及び「見当マーク」に相当する。
3.後者の「見当マーク検出器1」は、前者の「見当マーク検出部」に相当する。そして、後者の「見当マーク検出器1」は、 見当マークが印刷される紙面7からの反射された光を検出するものであるから、前者の「見当マーク検出部」と、後者の「見当マーク検出器1」とは、「複数の光電変換領域からの信号に基づいてウェブに付された見当マークを検出する」との概念で共通する。
4.以上のことから、前者の「見当マーク検出ユニット」と、後者の「印刷見当検出装置」とは、「受光素子」と「見当マーク検出部」とを備える点で共通する。

したがって、両者は、
「分光感度特性の異なる複数の光電変換領域を有する受光素子と、
前記複数の光電変換領域からの信号に基づいてウェブに付された見当マークを検出する見当マーク検出部と、を備える見当マーク検出ユニット。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明が、「前記見当マーク検出部に入力されるべき各信号であって前記複数の光電変換領域からの各信号に基づく各信号波形のそれぞれを前記見当マークの検出精度の調整に使用するS/N比が比較可能な視認できる態様で出力する出力部」を備えているのに対し、引用発明1は、そのような「出力部」を備えていない点。


第5 判断
上記相違点について検討する。
一般に、認識マーク(本願の見当マークに相当)の検出に際し、確実な認識(正確な検出)をすべく、CCDカメラが撮影した認識マークの信号波を色別に取得して、各信号強度の差の大きさを比較して、信号強度の差が大きい信号を以て、最適な色の信号として選択し、認識マークの検出に用いることは、光学検出装置による認識マーク検出分野において、周知の技術手段(例えば、特開平4-301705号公報(【0016】?【0023】、特に【0022】参照。)、特開2000-97674号公報(【0018】?【0027】、特に【0026】参照。)。以下「周知技術」という。)であって、ここでいう信号強度の差とは、S/N比に相当するものであることは明らかであるから、信号強度の差が大きい信号とは、S/N比が比較可能な信号であるといえる。
そして、見当マークを検出する信号の選択に際し、オペレータ(本願のユーザに相当)が信号の選択を行うことは、引用例2記載の技術事項に照らせば、当業者が適宜なし得ることであって、その際に、対象となる信号を波形表示してサービスマン(本願のユーザに相当)が視認できるようにすることは引用例3記載の技術事項に示されているように常套手段にすぎない。
してみると、引用発明において、上記周知技術を採用し、所定の係数によって重み付けを行って加算した混合量に替えて、信号強度の差が大きい(S/N比が比較可能な)信号を以て、最適な色の信号を選択するようにし、その選択に際し、ユーザが選択できるよう、上記引用例2記載の技術事項及び引用例3記載の技術事項に照らして、視認できる態様で出力するようにすることは当業者が容易になし得ることである。

そうすると、本願発明は、引用発明、上記周知技術、引用例2記載の技術事項及び引用例3記載の技術事項より、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明、上記周知技術、引用例2記載の技術事項及び引用例3記載の技術事項から、当業者が予測し得る範囲内のものである。

請求人は、「本願発明の出力部は、「見当マーク検出部に入力されるべき各信号であって複数の光電変換領域からの各信号に基づく各信号波形のそれぞれを見当マークの検出精度の調整に使用するS/N比が比較可能な視認できる態様で出力する」ことを特徴としています。
引用文献3と本願発明を比較するに、引用文献3には、確かに、視認できるようにすることについての記載はありますが、本願発明のように、「S/N比が比較可能」であることは記載されていません。なお、他の引用文献についても引用文献3と同様に、本願発明のこの特徴について記載や示唆はありません。S/N比はその後の検出精度に影響するものであり、高い精度で見当マークを検出するのに「S/N比が比較可能」であることは重要な特徴です。よって、本願発明の構成に関する記載や示唆がない引用文献から本願発明の構成に想到することは容易ではないと思料致します。」旨主張する。
しかし、上述するように、確実な認識(正確な検出)をすべく、信号強度の差が大きい信号を以て、最適な色の信号として選択し、認識マークの検出に用いることは周知技術であって、見当マークを検出する際においては、本願発明の「S/N比が比較可能な視認できる態様で出力する」ことは、信号強度の差が大きい信号を出力することを以て最適な信号を選択すること以上の作用効果を奏するものではない。

よって、本願発明は、引用発明、上記周知技術、引用例2記載の技術事項及び引用例3記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、上記周知技術、引用例2記載の技術事項及び引用例3記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-08-07 
結審通知日 2019-08-20 
審決日 2019-09-06 
出願番号 特願2013-269514(P2013-269514)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藏田 敦之  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤本 義仁
後藤 亮治
発明の名称 見当マーク検出ユニット、調整方法、多色刷印刷システム  
代理人 小島 誠  

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